説明

パワーステアリング装置

【課題】シリンダチューブ内周面の真円度を向上させることで、パワーシリンダの両圧力室間における作動油のリークを少なくとも抑制するようにしたパワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】シリンダチューブ3に当該シリンダチューブ3を車体に固定するためのブラケット9を溶接した後に、シリンダチューブ3のうち軸方向でブラケット9の溶接部W1,W2を含むように設定した切削加工領域A2において、シリンダチューブ内周面3aに切削加工を施し、当該シリンダチューブ内周面3aに溶接ひずみによって形成された凸部を除去する。これにより、シリンダチューブ内周面3aの真円度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるパワーステアリング装置に関し、特に、操舵アシスト用のパワーシリンダを有するパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されているように、パワーステアリング装置のパワーシリンダには、当該パワーシリンダを車体側に固定するためのブラケットが設けられている。そして、特許文献1に記載の技術では、上記ブラケットのうちパワーシリンダを抱持する略筒状のシリンダ保持部に、径方向内側に突出する凸部を周方向で等ピッチに複数設け、そのシリンダ保持部の凸部をシリンダチューブの外周面に溶接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−18692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上記ブラケットをシリンダチューブに溶接しているため、シリンダチューブの周壁に溶接ひずみが生じ、シリンダチューブ内周面の真円度が大きく低下してしまう。その結果、シリンダチューブと当該シリンダチューブ内を軸方向に摺動するピストンとの間のシール性が低下し、パワーシリンダの両圧力室間で作動油がリークしてしまう虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、シリンダチューブ内周面の真円度を向上させることで、パワーシリンダの両圧力室間における作動油のリークを少なくとも抑制するようにしたパワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記シリンダチューブのうち上記ブラケットの溶接部を含む軸方向の所定領域を切削加工領域とし、その切削加工領域において、上記シリンダチューブの内周面が、上記シリンダチューブの軸心に直交する断面上で、所定の直径に予め設定した仮想の基準円から内方に突出しないように、当該シリンダチューブの内周面に切削加工を施してあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明によれば、シリンダチューブ内周面の真円度を向上し、パワーシリンダの両圧力室間における作動油のリークを少なくとも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態を示すパワーステアリング装置の斜視図。
【図2】図1におけるパワーシリンダの要部を示す部分断面図。
【図3】図2におけるピストンの詳細を示す拡大図。
【図4】図2におけるパワーシリンダを単体で示す平面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】図4のB矢視図。
【図7】図4のC−C線に沿った断面上におけるシリンダチューブ内周面の詳細を示す図であって、ブラケット溶接直後の状態を示す図。
【図8】図7におけるシリンダチューブ内周面に切削加工を施した状態を示す図。
【図9】シリンダチューブ内周面の切削加工に用いるクランプ治具を示す分解図。
【図10】図9におけるクランプ治具をシリンダチューブに装着した状態を示す側面図。
【図11】図10のD矢視図。
【図12】シリンダチューブ内周面の切削加工手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明のより好適な第1の実施の形態として、本発明にかかるパワーステアリング装置を示す斜視図である。また、図2は図1の要部を示す部分断面図である。
【0010】
図1,2に示すように、パワーステアリング装置1は、操舵アシスト用のパワーシリンダ2と、そのパワーシリンダ2のうちシリンダチューブ3の軸方向一端に接続され、内部にピニオン軸4を収容するギヤケース5と、パワーシリンダ2のうちラック軸6の両端にそれぞれ接続された一対のタイロッド7,7と、パワーシリンダ2およびギヤケース5内への塵埃の進入を防止するための一対のブーツ8,8と、を備えている。そして、このパワーステアリング装置1のうち、シリンダチューブ3に溶接されたブラケット9と、ギヤケース5のブラケット部5aと、が図示外のボルトによって車体側の連結部に固定されることになる。
【0011】
パワーシリンダ2のシリンダチューブ3は、例えば鋼管材によって円筒状に形成されたものであって、その内部にはラック軸6が挿通している。ラック軸6の外周にはピストン11が固定されており、このピストン11は、予め定めたピストン摺動領域A1内において、ラック軸6とともにシリンダチューブ3の軸方向で移動可能になっている。また、シリンダチューブ3のうちピストン摺動領域A1の軸方向両側には一対の環状シール部材10a,10bが圧入固定され、これら両環状シール部材10a,10bの内周面が、ラック軸6の外周面に対してそれぞれ摺動可能に接触している。これにより、両環状シール部材10a,10b同士の間に、ピストン11によって仕切られた一対の圧力室12a,12bが隔成されている。
【0012】
図3は、ピストン11の詳細を示す拡大図である。
【0013】
ピストン11は、図3に示すように、略円環状に形成され、ラック軸6の外周面に嵌着されたピストン本体11aと、そのピストン本体11aの外周面に凹設された溝部11bに嵌着され、ピストン本体11aの外周面とシリンダチューブ内周面3aとの間をシールするピストンシール11cと、を有している。そして、ピストンシール11cは、径方向に圧縮変形しつつシリンダチューブ内周面3aに弾性的に当接している。すなわち、ピストンシール11cがシリンダチューブ内周面3aに摺動しつつ、ピストン11がラック軸6とともにシリンダチューブ3内を軸方向に移動することにより、両圧力室12a,12bの容積が増減するようになっている。
【0014】
一方、図1に示すピニオン軸4は、周知のように、ギヤケース5の内部でラック軸6と噛合しており、当該ピニオン軸4とラック軸6とをもっていわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤ13が転舵機構として構成されている。すなわち、ピニオン軸4が回転すると、ラック軸6が両タイロッド7,7とともに軸方向に移動し、それら両タイロッド7,7に接続される図示外の転舵輪が転向するようになっている。
【0015】
さらに、シリンダチューブ3aの周壁のうちピストン摺動領域A1の両端に相当する部分には、両圧力室12a,12bにそれぞれ連通する一対のポート14a,14bが設けられ、これら両ポート14a,14bと図示外のコントロールバルブとが一対の配管15a,15bによってそれぞれ接続されている。そして、図示外のコントロールバルブによって両圧力室12a,12bへ供給する油圧を制御することにより、ピストン11を介してラック軸6に操舵アシスト力を付与するようになっている。
【0016】
図4〜6はシリンダチューブ3を単体で示す図であって、そのうち図4はシリンダチューブ3の平面図、図5は図4のA−A断面図、図6は図4のB矢視図である。
【0017】
図4〜6に示すように、ブラケット9は、シリンダチューブ3の外周面に沿って、当該シリンダチューブ3の半周以上を抱持するように設けられた略不完全円筒状のシリンダ保持部9aと、そのシリンダ保持部9aの周方向両端から径方向外側に向けて互いに平行に延出した一対のカラー保持部9b,9bと、それら両カラー保持部9bをそれぞれ挿通し、それら両カラー保持部9b,9bに溶接されたカラー9cと、を備えている。そして、カラー9cの内周側にブッシュ16(図2参照)が装着され、当該ブッシュ16を挿通する図示外のボルトによってシリンダチューブ3が車体に締結されることになる。
【0018】
シリンダ保持部9aは、その軸方向の中間部に略矩形状の窓部9dが開口形成されている一方、当該シリンダ保持部9aのうち軸方向両端縁部にそれぞれ設定した両溶接部W1,W2をもって、シリンダチューブ3のうちピストン摺動領域A1に相当する部分の外周に溶接されている。なお、両溶接部W1,W2は、シリンダ保持部9aの軸方向両端縁部のうち周方向の略全域にわたって設定されている。
【0019】
図7,8は、シリンダチューブ3のうち図4のC−C線に沿った断面上におけるシリンダチューブ内周面3aの詳細を示す断面図であって、そのうち図7はシリンダチューブ3にブラケット9を溶接した直後におけるシリンダチューブ内周面3aを示す図、図8はシリンダチューブ3にブラケット9を溶接した後、後述する切削加工を施した最終製品状態におけるシリンダチューブ内周面3aを示す図である。
【0020】
ここで、このようにブラケット9をシリンダチューブ3に溶接すると、図7に示すように、シリンダチューブ内周面3aの真円度が溶接ひずみによって低下することになる。これにより、シリンダチューブ内周面3aのうち溶接部W1,W2に相当する部分には、後述する非切削加工領域A3,A4(図5参照)におけるシリンダチューブ内周面3aの断面形状と略同一形状に設定した仮想の基準円Rと比較して、内周側に向かって突出した凸部17と、外周側に窪んだ凹部18と、が形成される。なお、基準円Rについてより詳しく説明すると、当該基準円Rはシリンダチューブ内周面3a成形時の基本となる真円であって、その径はシリンダチューブ内周面3aの基準寸法に設定してある。また、図7,8では、シリンダチューブ内周面3aの凸部17および凹部18を便宜上誇張して描いている。
【0021】
そして、このようにシリンダチューブ内周面3aに溶接ひずみが発生すると、シリンダチューブ内周面3aの凸部17とピストンシール11cとの摺動抵抗が大きくなり、ピストン11のスムーズな移動が阻害されてしまう虞がある。また、場合によっては、凸部17とピストンシール11cとの摺動抵抗が過大となって当該ピストンシール11cが破損し、両圧力室12a,12b間で作動油がリークしてしまう虞もある。なお、ピストン11は、シリンダチューブ内周面3aの凹部18に対してはピストンシール11cの弾性によって追従することから、当該凹部18との間の液密性は確保されることになる。
【0022】
そのため、本実施の形態では、図5に示すように、シリンダチューブ3のうち両溶接部W1,W2を含む軸方向の所定領域を切削加工領域A2とし、シリンダチューブ3にブラケット9を溶接した後に、溶接ひずみによって発生した凸部17を除去すべく、切削加工領域A2においてシリンダチューブ内周面3aに切削加工を施している。換言すれば、ピストン摺動領域A1のうち溶接ひずみが比較的大きく発生する領域を切削加工領域A2とする一方、ピストン摺動領域A1のうち切削加工領域A2の軸方向両側の領域では溶接ひずみの影響が比較的少ないことから、その領域を一般領域たる非切削加工領域A3,A4としている。これにより、図8に示すように、シリンダ内周面3aの凸部17を除去してある。
【0023】
以下、シリンダチューブ内周面3aの切削加工手順について説明する。
【0024】
図9〜11は、シリンダチューブ内周面3aの切削加工時に用いるクランプ治具を示す図であって、そのうち図9は、当該クランプ治具の分解図、図10はシリンダチューブ3にクランプ治具を装着した状態を示す側面図、図11は図10のD矢視図である。また、図12は、シリンダチューブ内周面3aの切削加工時における切削工具の移動軌跡を示す説明図であって、シリンダチューブ3の軸方向半断面図である。
【0025】
図9〜11に示すように、上述したようなシリンダチューブ内周面3aの切削加工は、ブラケット9溶接時の溶接ひずみによって真直度が低下したシリンダチューブ3の軸心の曲がりを、矯正治具であるクランプ治具19によって矯正しつつ行うことになる。
【0026】
クランプ治具19は、略半割円筒形状にそれぞれ形成された第1治具片20と第2治具片21とからなるいわゆる半割構造のものであって、これら両治具片20,21をもって形成される略円筒状の受容空間19aにシリンダチューブ3を受容することになる。
【0027】
第1治具片20の内周面は、シリンダチューブ外周面3bのうち反カラー9c側の半部を径方向外側から拘束する略半割円筒状の第1クランプ面20aとして形成されており、その第1クランプ面20aのうちブラケット9に相当する軸方向位置には、そのブラケット9のシリンダ保持部9aを受容する第1逃げ凹部20bが凹設されている。
【0028】
また、第2治具片21の内周面は、シリンダチューブ外周面3bのうちカラー9c側の半部を径方向外側から拘束する略半割円筒形状の第2クランプ面21aとして形成されており、その第2クランプ面21aのうちブラケット9に相当する軸方向位置には、そのブラケット9のシリンダ保持部9aを受容する第2逃げ凹部21bが凹設されているとともに、その第2逃げ凹部21bにはブラケット9のカラー保持部9bが挿通する窓部21cが開口形成されている。
【0029】
そして、両クランプ面20a,21a間に形成される受容空間19aにシリンダチューブ3を受容し、複数のボルト22によって両治具片20,21同士を両者の接近・離間方向で締結することにより、シリンダチューブ外周面3bが両クランプ面20a,21aによって径方向外側から拘束され、当該シリンダチューブ3の軸心の曲がりが矯正される。
【0030】
このようにしてシリンダチューブ3をクランプ治具19に取り付けたならば、当該クランプ治具19を図示外のNC旋盤のチャックにいわゆる片持ち状態で装着し、シリンダチューブ3をその軸心回りでクランプ治具19とともに回転させながら、図示外の切削工具である中ぐりバイトをシリンダチューブ3内に挿入し、シリンダチューブ内周面3aの切削加工を行うことになる。なお、クランプ治具19を図示外のNC旋盤のチャックに装着する際には、当該クランプ治具19の軸方向一端面を図示外のチャックの端面に突き当てることにより、そのクランプ治具19を軸方向で位置決めすることになる。
【0031】
シリンダチューブ内周面3aの切削加工は、図12に示すように、予めプログラミングされた所定の軌跡に沿って図示外の中ぐりバイトを移動させる複数回の送り操作パスP1〜P4により、シリンダチューブ3の径方向で所定の切り込みを与えつつ当該シリンダチューブ3の軸方向へ図示外の切削工具を送り移動させることでなされる。なお、図12のP1〜P4は、各送り操作パスにおける切削工具の刃部の移動軌跡を示している。
【0032】
詳しくは、図示外の中ぐりバイトとして荒削りバイトを用いた3回の荒削り操作パスP1〜P3によって粗削り加工を行った上で、図示外の中ぐりバイトとして仕上げバイトを用いた仕上げ操作パスP4によって仕上げ加工を行うことになる。つまり、シリンダチューブ内周面3aの荒削り加工を3回の荒削り操作パスP1〜P3に分け、1回の荒削り操作パス毎の切り込み量を比較的少量にすることにより、切削抵抗によってシリンダチューブ3および図示外の荒削りバイトが径方向に撓む、いわゆる逃げを抑制するとともに、その荒削りバイトの長寿命化を図っている。また、このようにシリンダチューブ内周面3aを旋削すると、当該シリンダチューブ内周面3aに周方向に沿った図示外の条痕が加工模様として残ることになるが、上記荒削り加工後の仕上げ加工により、上記条痕を細かくしてシリンダチューブ内面3aの表面粗さを改善し、上記条痕によるピストンシール11cへの攻撃性を低下させている。
【0033】
さらに詳しくは、各送り操作パスP1〜P4では、両非切削加工領域A3,A4と切削加工領域A2との境界部分において、図示外の中ぐりバイトの刃部の軌跡を、切削加工領域A2側に向かってシリンダチューブ3の径方向外側に傾斜するように設定している。これにより、図示外の中ぐりバイトの刃部を仮想の円錐面に沿った螺旋状の軌跡をもってシリンダチューブ内周面3aに対して相対移動させ、シリンダチューブ内周面3aが、切削加工領域A2と両非切削加工領域A3,A4との境界部分で段差を生じることなく滑らかに連続するようにしている。
【0034】
また、仕上げ操作パスP4では、シリンダチューブ3の軸心に直交する断面上で、図示外の仕上げバイトの刃部が基準円Rに沿ってシリンダチューブ3に対して相対移動するように設定してある。これにより、図8に示すように、シリンダチューブ内周面3aの凸部17が基準円Rに沿って除去されることになる。
【0035】
そして、このようにシリンダチューブ内周面3aの凸部17を除去したならば、シリンダチューブ3からクランプ治具19を取り外し、当該シリンダチューブ3内の切粉を完全に除去すべく十分な洗浄を行う。なお、シリンダチューブ3からクランプ治具19を取り外すと、溶接ひずみによって生じたシリンダチューブ3の軸心の曲がりは元に戻ることになるが、ピストン11の移動時にはこの軸心の曲がりがピストンシール11cの弾性によって吸収され、当該ピストン11のスムーズな移動が阻害されることはない。
【0036】
したがって、本実施の形態によれば、シリンダチューブ内周面3aの真円度が向上し、ピストン11がシリンダチューブ3内でスムーズに動作できるようになって操舵フィーリングが向上する上、パワーシリンダ2の両圧力室12a,12b間における作動油のリークを防止することができる。
【0037】
また、切削加工時にクランプ治具19をシリンダチューブ3に装着することにより、シリンダチューブ3の軸心と当該シリンダチューブ3の回転中心との同軸性が高まり、シリンダチューブ内周面3aを高精度に切削加工できるようになる。その上、切削加工時にシリンダチューブ3の真直度の製品毎のばらつきが少なくなり、シリンダチューブ3内に図示外の中ぐりバイトを挿入する際に、当該中ぐりバイトを非切削加工領域A3,A4でシリンダチューブ内周面3aに干渉させることなく容易に切削加工領域A2まで移動させることができるから、切削加工の作業性が向上するメリットがある。
【0038】
さらに、NC旋盤を用いてシリンダチューブ3のピストン摺動領域A1のうち切削加工領域A2のみを旋削し、非切削加工領域A3,A4には切削加工を施さないようにしているため、シリンダチューブ3のうちピストン摺動領域A1の全域を切削加工する場合と比較し、コスト的に有利になるメリットもある。
【0039】
ここで、上記各実施の形態から把握される技術的思想であって、特許請求の範囲に記載していないものを、その効果とともに以下に記載する。
(1)上記基準円は、上記シリンダチューブのうち上記切削加工領域を除く一般領域の内径と略同径に設定してあることを特徴とする請求項1に記載のパワーステアリング装置。
(1)に記載の技術的思想では、上記一般領域と切削加工領域との境界部分で、上記シリンダチューブの内周面に段差を生じることを防止し、上記ピストンをスムーズに作動させることができるようになる。
(2)上記切削加工領域において、上記シリンダチューブの内周面を切削工具によって旋削してあることを特徴とする請求項1または(1)に記載のパワーステアリング装置。
(2)に記載の技術的思想では、上記シリンダチューブのうち切削加工領域のみを切削加工することができるから、上記シリンダチューブの内周面のうち軸方向の全域に切削加工を施す場合と比べ、コストを削減することができる。
(3)上記切削加工領域の軸方向両端部のうち少なくとも一方と一般領域との間の境界部分において、上記切削加工領域側に向かって上記シリンダチューブの径方向外側に傾斜する軌跡をもって切削工具を送り運動させることにより、上記切削加工領域に切削加工を施してあることを特徴とする(2)に記載のパワーステアリング装置。
(3)に記載の技術的思想では、上記一般領域と切削加工領域との境界部分で、上記シリンダチューブの内周面を滑らかに連続させることができるから、上記ピストンをよりスムーズに作動させることができるようになる。
(4)上記切削加工領域において、上記シリンダチューブの軸心の曲がりを矯正する矯正治具を上記シリンダチューブに装着した状態で、当該シリンダチューブの内周面を切削加工してあることを特徴とする請求項1または(1)〜(3)のいずれかに記載のパワーステアリング装置。
(4)に記載の技術的思想では、上記矯正治具によって上記シリンダチューブの軸心の真直度を高めた状態で切削加工を施すことで、上記シリンダチューブの内周面をより高精度に切削加工することができるほか、その切削加工時に切削工具を上記シリンダチューブ内へ容易に挿入することができるようになるから、切削加工の作業性を高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1…パワーステアリング装置
2…パワーシリンダ
3…シリンダチューブ
3a…シリンダチューブ内周面
4…ピニオン軸
6…ラック軸
9…ブラケット
11…ピストン
12a,12b…圧力室
13…ステアリングギヤ(転舵機構)
A2…切削加工領域
W1,W2…ブラケットの溶接部
R…基準円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオン軸の回転運動をラック軸の直線運動に変換する転舵機構と、
シリンダチューブと、そのシリンダチューブ内に一対の圧力室を隔成するピストンと、上記シリンダチューブを車体側に固定するためのブラケットと、を有するパワーシリンダと、
を備えていて、上記パワーシリンダによって上記転舵機構に操舵アシスト力を付与するようになっているパワーステアリング装置において、
上記ブラケットが上記シリンダチューブに溶接されている一方、上記シリンダチューブのうち上記ブラケットの溶接部を含む軸方向の所定領域を切削加工領域とし、その切削加工領域において、上記シリンダチューブの内周面が、上記シリンダチューブの軸心に直交する断面上で、所定の直径に予め設定した仮想の基準円から内方に突出しないように、当該シリンダチューブの内周面に切削加工を施してあることを特徴とするパワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−126479(P2011−126479A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288918(P2009−288918)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】