説明

パワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法

【課題】回路層上に搭載された電子部品等からの熱を効率よく放散できるとともに、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制できるパワーモジュール用基板を提供する。
【解決手段】絶縁基板11と、この絶縁基板11の一方の面に形成された回路層12と、絶縁基板11の他方の面に形成された金属層13と、を備えたパワーモジュール用基板10であって、回路層12は、絶縁基板11の一方の面に銅板が接合されて構成され、金属層13は、絶縁基板11の他方の面にアルミニウム板が接合されて構成されており、回路層12を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の中でも電力供給のためのパワーモジュールは、発熱量が比較的高いため、これを搭載する基板としては、例えば、AlN(窒化アルミ)、Al(アルミナ)、Si(窒化ケイ素)などからなる絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面側に第一の金属板が接合されて構成された回路層と、絶縁基板の他方の面側に第二の金属板が接合されて構成された金属層と、を備えたパワーモジュール用基板が用いられる。
このようなパワーモジュール基板では、回路層の上に、はんだ材を介してパワー素子等の半導体素子が搭載される。
【0003】
例えば、特許文献1には、第一の金属板(回路層)及び第二の金属板(金属層)としてアルミニウム板を用いてなるパワーモジュール用基板が提案されている。
また、特許文献2、3には、第一の金属板(回路層)及び第二の金属板(金属層)を銅板とし、この銅板をDBC法によって絶縁基板に直接接合してなるパワーモジュール用基板が提案されている。また、特許文献2の第1図には、上述のパワーモジュール用基板に、有機系耐熱性接着剤用いてアルミニウム製のヒートシンクを接合したヒートシンク付パワーモジュール用基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3171234号公報
【特許文献2】特開平04−162756号公報
【特許文献3】特許第3211856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたパワーモジュール用基板においては、回路層を構成する第一の金属板としてアルミニウム板が用いられている。ここで、銅とアルミニウムとを比較すると、アルミニウムの熱伝導率が低いことから、回路層としてアルミニウム板を用いた場合には、銅板を用いた場合に比べて回路層上に搭載された電気部品等の発熱体からの熱を拡げて放散することができない。このため、電子部品の小型化や高出力化により、パワー密度が上昇した場合には、熱を十分に放散することができなくなるおそれがあった。
【0006】
ここで、特許文献2,3においては、回路層を銅板で構成していることから、回路層上に搭載された電気部品等の発熱体からの熱を効率的に放散することが可能となる。
しかしながら、上述のパワーモジュール用基板においては、その使用環境において冷熱サイクルが負荷されることになるが、特許文献2,3に記載されているように回路層及び金属層を銅板で構成した場合には、上述の冷熱サイクルによって絶縁基板と銅板との熱膨張係数の差に起因するせん断応力が銅板に作用し、銅板が加工硬化してしまい、絶縁基板に割れ等が発生するといった問題があった。
また、特許文献2に記載されたヒートシンク付パワーモジュール用基板においては、アルミニウム製のヒートシンクと絶縁基板との間に銅板が配設されていることから、ヒートシンクと絶縁基板との熱膨張係数の差に起因する熱歪みを、この銅板において十分に緩和することができず、冷熱サイクル負荷時に絶縁基板に割れ等が生じやすいといった問題があった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、回路層上に搭載された電子部品等からの熱を効率よく放散できるとともに、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制できるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明のパワーモジュール用基板は、絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁基板の他方の面に形成された金属層と、を備えたパワーモジュール用基板であって、前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成され、前記金属層は、前記絶縁基板の他方の面にアルミニウム板が接合されて構成されており、前記回路層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴としている。
【0009】
この構成のパワーモジュール用基板においては、電子部品等が搭載される回路層が銅板で構成されているので、電子部品等から発生する熱を十分に拡げることができ、熱の放散を促進することができる。
また、前記回路層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされているので、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素が、不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。よって、冷熱サイクル時の特に高温域で、回路層において回復・再結晶化が進み、絶縁基板と回路層との熱膨張率の差に起因するせん断応力によって加工硬化された回路層の歪みが減少されることになり、冷熱サイクル時において絶縁基板に負荷される応力が低減される。これにより、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0010】
なお、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が1molppm未満である場合、又は、ボロンの含有量が100molppm未満である場合には、銅中に存在するSの影響を十分に抑制することができなくなるおそれがある。また、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が100molppm超える場合、又は、ボロンの含有量が1000molppm超える場合には、これらの元素によって回路層(銅板)が硬化したり、熱伝導度が低下してしまうおそれがある。
よって、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下の範囲に設定している。
【0011】
ここで、前記回路層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることが好ましい。
この場合、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が3molppm以上、又は、ボロンの含有量が300molppm以上とされているので、銅中のSの影響を抑制することができ、再結晶温度が低くなり、加工硬化を確実に抑制することが可能となる。また、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素の含有量の合計が50molppm以下、又は、ボロンの含有量が1000molppm以下とされているので、銅板の硬化や熱伝導度の低下を抑制することができる。
【0012】
また、前記回路層を構成する銅板は、酸素含有量が1質量ppm以下とされていることが好ましい。
この場合、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素が、酸素と反応して酸化物となることが抑制され、確実にSと反応し、硫化物を生成することができる。よって、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素又はボロンのうち少なくとも1種以上の元素の含有量が少なくても、Sの影響を十分に抑制することが可能となる。
【0013】
さらに、前記金属層のうち前記絶縁基板との接合界面には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、前記金属層のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されていることが好ましい。
この場合、前記金属層に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga及びLiのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しているので、前記金属層の接合界面側部分が固溶強化することになる。これにより、金属層部分での破断を防止することができる。
【0014】
また、前記金属層のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上とされているので、金属層の接合界面側部分を確実に固溶強化することができる。また、前記金属層のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が5質量%以下とされているので、金属層の接合界面近傍の強度が過剰に高くなることを防止でき、このパワーモジュール用基板に熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを金属層で緩和することが可能となり、絶縁基板の割れの発生を抑制できる。
【0015】
さらに、前記金属層のうち前記絶縁基板との接合界面には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素の濃度が、前記金属層中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されていることが好ましい。
この場合、金属層の接合界面に、前記添加元素の濃度が前記金属層中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されているので、界面近傍に存在する前記添加元素原子により、金属層の接合強度の向上を図ることが可能となる。なお、金属層中の前記添加元素の濃度とは、金属層のうち接合界面から一定距離(例えば、5nm以上)離れた部分における前記添加元素の濃度である。
【0016】
本発明のヒートシンク付パワーモジュール用基板は、前述のパワーモジュール用基板と、前記金属層の他方の面側に配設されたヒートシンクと、備えたことを特徴としている。
この構成のヒートシンク付パワーモジュール用基板によれば、アルミニウム板からなる金属層にヒートシンクが接合されているので、冷熱サイクル負荷時の熱歪みを金属層の変形によって緩和することができ、絶縁基板の割れを抑制することができる。
【0017】
本発明のパワーモジュールは、前述のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴としている。
また、本発明のパワーモジュールは、前述のパワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴としている。
これらの構成のパワーモジュールによれば、回路層上に搭載された電子部品からの熱を効率的に放散することができ、電子部品のパワー密度(発熱量)が向上した場合であっても、十分に対応することができる。
【0018】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁基板の他方の面に形成された金属層と、を備えたパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成され、前記金属層は、前記絶縁基板の他方の面にアルミニウム板が接合されて構成され、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、前記絶縁基板の一方の面に銅板を接合して前記回路層を形成する回路層形成工程と、前記絶縁基板の他方の面にアルミニウム板を接合して前記金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、前記金属層形成工程においては、前記アルミニウム板の接合界面にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配置し、前記アルミニウム板を接合することを特徴としている。
【0019】
この構成のパワーモジュール用基板の製造方法によれば、前述したパワーモジュール用基板を製造することができる。また、前記金属層形成工程においては、前記第二の金属板の接合界面にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配置し、前記アルミニウム板を接合する構成としているので、前記アルミニウム板と前記絶縁基板とを強固に接合することができる。また、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liといった元素は、アルミニウムの融点を降下させる元素であるため、比較的低温な条件においても、前記アルミニウム板の接合界面に溶融金属領域を形成することができる。なお、これらの添加元素は、前記アルミニウム板等の接合面に固着させてもよいし、接合面にこれらの添加元素を含む金属箔(ろう材箔)を配設してもよい。
【0020】
ここで、前記金属層形成工程においては、前記添加元素が前記アルミニウム板側に向けて拡散することにより、接合界面に溶融金属領域を形成し、この溶融金属領域を凝固させることによって接合することが好ましい。
この場合、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を前記アルミニウム板側に拡散させることにより、前記アルミニウム板の接合界面に前記溶融金属領域を形成し、この溶融金属領域を凝固させることで、前記アルミニウム板を接合する、いわゆるTransient Liquid Phase Diffusion Bondingによって接合しているので、比較的低温条件でおいても、接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板を製造することができる。
【0021】
また、前記アルミニウム板の接合界面に配置される前記添加元素量が、0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、前記アルミニウム板の接合界面に配置される前記添加元素量を0.01mg/cm以上としているので、前記アルミニウム板の接合界面に、溶融金属領域を確実に形成することができる。
【0022】
さらに、前記アルミニウム板の接合界面に配置される前記添加元素量を10mg/cm以下としているので、前記添加元素が過剰に前記アルミニウム板側に拡散して接合界面近傍の前記金属層の強度が過剰に高くなることを防止できる。よって、パワーモジュール用基板に冷熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを金属層で緩和することができ、絶縁基板の割れ等を防止できる。
また、前記アルミニウム板の接合界面に配置される前記添加元素量が、0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされているので、前記金属層のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内とされたパワーモジュール用基板を製造することができる。
【0023】
さらに、前記回路層形成工程の前に、前記絶縁基板の少なくとも一方の面にAl層を形成するアルミナ層形成工程を行うことが好ましい。
この場合、絶縁基板の一方の面にAl層を形成することにより、銅板と絶縁基板とをDBC法を用いて接合することが可能となる。なお、形成するAl層の厚さは、1μm以上とすることが好ましい。Al層の厚さが1μm未満の場合、銅板と絶縁基板とを良好に接合できなくなるおそれがあるためである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回路層上に搭載された電子部品等からの熱を効率よく放散できるとともに、冷熱サイクル負荷時における絶縁基板の割れの発生を抑制できるパワーモジュール用基板、ヒートシンク付パワーモジュール用基板、パワーモジュール及びパワーモジュール用基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板及びパワーモジュールの概略説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板における金属層の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の金属層及びヒートシンク(放熱板)の添加元素の濃度分布を示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の金属層とセラミックス基板との接合界面の模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図6】本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図7】図6におけるセラミックス基板と金属層(アルミニウム板)との接合界面近傍を示す説明図である。
【図8】図6におけるヒートシンク(放熱板)と金属層(アルミニウム板)との接合界面近傍を示す説明図である。
【図9】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板及びパワーモジュールの概略説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態であるパワーモジュール用基板の回路層(銅板)とセラミックス基板との接合界面に拡大説明図である。
【図11】本発明の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図12】本発明の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法及びヒートシンク付パワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態であるパワーモジュール用基板の概略説明図である。
【図14】本発明の第3の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法のフロー図である。
【図15】本発明の第3の実施形態であるパワーモジュール用基板の製造方法を示す説明図である。
【図16】本発明の他の実施形態であるパワーモジュール用基板及びパワーモジュールの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1に本発明の第1の実施形態であるパワーモジュール用基板10、ヒートシンク付パワーモジュール用基板40及びパワーモジュール1を示す。
このパワーモジュール1は、回路層12が配設されたパワーモジュール用基板10と、回路層12の搭載面12Aにはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、ヒートシンク41とを備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる無鉛はんだ材)とされている。なお、本実施形態では、回路層12の搭載面12Aとはんだ層2との間に、Niめっき膜(図示なし)が設けられていてもよい。
【0027】
パワーモジュール用基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に形成された金属層13と、を備えている。
【0028】
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAl(アルミナ)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0029】
回路層12は、図6に示すように、セラミックス基板11の一方の面(図6において上面)に、銅板22が接合されることにより形成されている。回路層12の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。また、この回路層12には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図1において上面)が、半導体素子3が搭載される搭載面12Aとされている。
【0030】
そして、この銅板22(回路層12)は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、酸素含有量が1質量ppm以下とされている。
本実施形態においては、銅板22(回路層12)は、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にMgを15molppm添加したMg−Doped銅とされている。
【0031】
金属層13は、図6に示すように、セラミックス基板11の他方の面(図6において下面)に、アルミニウム板23が接合されることにより形成されている。
このアルミニウム板23(金属層13)は、純度が99質量%以上で、耐力が30N/mm以下のアルミニウム又はアルミニウム合金の圧延板とされている。
本実施形態においては、アルミニウム板23(金属層13)は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板とされている。
【0032】
ここで、図2に示すように、セラミックス基板11と金属層13との接合界面30においては、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
金属層13の接合界面30近傍には、接合界面30から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層31が形成されている。また、この濃度傾斜層31の接合界面30側(金属層13の接合界面30近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、金属層13の接合界面30近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面30から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図2のグラフは、金属層13の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0033】
ヒートシンク41は、前述のパワーモジュール用基板10を冷却するためのものである。本実施形態におけるヒートシンク41は、図1に示すように、パワーモジュール用基板10の金属層13の他方の面側に接合された放熱板42を備えている。なお、放熱板42は、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上のものとされており、本実施形態では、A6063合金(アルミニウム合金)で構成されたものとされている。
【0034】
ここで、図3に示すように、金属層13と放熱板42との接合界面35においては、金属層13及び放熱板42に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶している。
ここで、金属層13及び放熱板42の接合界面35近傍には、接合界面35から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が低下する濃度傾斜層36、37が形成されている。また、この濃度傾斜層36、37の接合界面35側(金属層13及び放熱板42の接合界面35近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。
なお、この金属層13及び放熱板42の接合界面35近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面35から50μmの位置で5点測定した平均値である。また、図3のグラフは、金属層13及び放熱板42の中央部分において積層方向にライン分析を行い、前述の50μm位置での濃度を基準として求めたものである。
【0035】
また、セラミックス基板11と金属層13との接合界面30を透過電子顕微鏡において観察した場合には、図4に示すように、接合界面30に添加元素(Cu)が濃縮した添加元素高濃度部32が形成されている。この添加元素高濃度部32においては、添加元素の濃度(Cu濃度)が、金属層13中の添加元素の濃度(Cu濃度)の2倍以上とされている。なお、この添加元素高濃度部32の厚さHは4nm以下とされている。
【0036】
なお、ここで観察する接合界面30は、金属層13の格子像の界面側端部とセラミックス基板11の格子像の接合界面30側端部との間の中央を基準面Sとする。また、金属層13中の添加元素の濃度(Cu濃度)は、金属層13のうち接合界面30から一定距離(本実施形態では5nm)離れた部分における添加元素の濃度(Cu濃度)である。
【0037】
以下に、前述の構成のパワーモジュール用基板10及びヒートシンク付パワーモジュール用基板40の製造方法について、図5から図8を参照して説明する。
【0038】
まず、図5及び図6に示すように、回路層12となる銅板22と、セラミックス基板11とを接合する(回路層形成工程S01)。ここで、セラミックス基板11がAlで構成されていることから、銅板22とセラミックス基板11とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法(Direct Bonding Copper)により接合する。具体的には、銅板22とセラミックス基板11とを接触させ、酸素が微量添加された窒素ガス雰囲気中において1075℃で10分加熱することで、銅板22とセラミックス基板11とが接合されることになる。
【0039】
次に、セラミックス基板11の他方の面側に、金属層13となるアルミニウム板23を接合する(金属層形成工程S02)とともに、アルミニウム板23とヒートシンク41の放熱板42とを接合する(ヒートシンク接合工程S03)。本実施形態では、これら金属層形成工程S02と、ヒートシンク接合工程S03と、を同時に実施することになる。
【0040】
アルミニウム板23の一方の面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第1固着層51を形成するとともに、アルミニウム板23の他方の面にスパッタリングによって添加元素(Cu)を固着して第2固着層52を形成する(固着層形成工程S11)。ここで、第1固着層51及び第2固着層52における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層51及び第2固着層52におけるCu量が0.08mg/cm以上2.7mg/cm以下に設定されている。
【0041】
次に、図6に示すように、アルミニウム板23をセラミックス基板11の他方の面側に積層する。さらに、アルミニウム板23の他方の面側に放熱板42を積層する(積層工程S12)。
このとき、図6に示すように、アルミニウム板23の第1固着層51が形成された面がセラミックス基板11を向くように、かつ、アルミニウム板23の第2固着層52が形成された面が放熱板42を向くようにして、これらを積層する。すなわち、アルミニウム板23とセラミックス基板11との間に第1固着層51(添加元素:Cu)を介在させ、アルミニウム板23と放熱板42との間に第2固着層52(添加元素:Cu)を介在させているのである。
【0042】
次に、銅板22及びセラミックス基板11、アルミニウム板23、放熱板42をその積層方向に加圧(圧力1〜35kgf/cm)した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する(加熱工程S13)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−3〜10−6Paの範囲内に設定し、加熱温度は550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
【0043】
すると、図7に示すように、アルミニウム板23とセラミックス基板11との界面に第1溶融金属領域55が形成されることになる。この第1溶融金属領域55は、第1固着層51の添加元素(Cu)がアルミニウム板23側に拡散することによって、アルミニウム板23の第1固着層51近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
また、図8に示すように、アルミニウム板23と放熱板42との界面に第2溶融金属領域56が形成される。この第2溶融金属領域56は、第2固着層52の添加元素(Cu)がアルミニウム板23側及び放熱板42側に拡散することによって、アルミニウム板23及び放熱板42の第2固着層52近傍の添加元素の濃度(Cu濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0044】
次に、第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56が形成された状態で温度を一定に保持しておく(溶融金属凝固工程S14)。
すると、第1溶融金属領域55中のCuが、さらにアルミニウム板23側へと拡散していくことになる。これにより、第1溶融金属領域55であった部分のCu濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、セラミックス基板11とアルミニウム板23とが接合される。
同様に、第2溶融金属領域56中のCuが、さらにアルミニウム板23側及び放熱板42側へと拡散し、第2溶融金属領域56であった部分のCu濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、アルミニウム板23と放熱板42とが接合される。
【0045】
つまり、セラミックス基板11とアルミニウム板23、及び、アルミニウム板23と放熱板42は、いわゆるTransient Liquid Phase Diffusion Bondingによって接合されているのである。
【0046】
このようにして、銅板22、セラミックス基板11、アルミニウム板23、ヒートシンク41の放熱板42とが接合され、本実施形態であるパワーモジュール用基板10及びヒートシンク付パワーモジュール用基板40が製造されることになる。
【0047】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板10によれば、半導体素子3が搭載される搭載面12Aを有する回路層12が、銅板22で構成されているので、半導体素子3から発生する熱を十分に拡げることができ、この熱の放散を促進することができる。よって、パワー密度の高い半導体素子3等の電子部品を搭載することができ、半導体パッケージの小型化、高出力化を図ることが可能となる。
【0048】
そして、回路層12を構成する銅板22が、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされ、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、本実施形態においては、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にMgを15molppm添加したMg−Doped銅とされているので、Mgが不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。これにより、銅板22(回路層12)の再結晶温度が低くなり、加工硬化が抑制されることになる。よって、冷熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板11の割れの発生を抑制することが可能となる。
さらに、銅板22(回路層12)の酸素含有量が1質量ppm以下とされているので、Mgが酸素と反応して消費されることが抑制され、MgとSとを確実に反応させることができる。
【0049】
また、本実施形態では、セラミックス基板11がAlで構成されているので、上述のように、銅板22とセラミックス基板11とを、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法(Direct Bonding Copper)によって接合することができる。よって、セラミックス基板11と回路層12(銅板22)との接合強度を確保することができ、接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板10を構成することができる。
【0050】
また、金属層13とセラミックス基板11との接合界面30、及び、金属層13とヒートシンク41の放熱板42との接合界面35には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてCuが固溶されているので、金属層13の接合界面30、35側部分が固溶強化することになり、金属層13部分での破断を防止することができる。
【0051】
ここで、金属層13のうち接合界面30、35近傍における添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されているので、金属層13の接合界面30、35近傍の強度が過剰に高くなることを防止でき、このパワーモジュール用基板10に冷熱サイクルが負荷された際に、熱歪みを金属層13で緩和することが可能となり、セラミックス基板11の割れの発生を抑制できる。
【0052】
また、金属層13とセラミックス基板11との接合界面30には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素の濃度(本実施形態ではCu濃度)が、金属層13中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部32が形成されているので、界面近傍に存在する添加元素原子(Cu原子)により、金属層13の接合強度の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また、ヒートシンク41の放熱板42を、耐力が100N/mm以上の金属材料で構成され、その厚さが2mm以上のものとしており、本実施形態では、A6063合金(アルミニウム合金)で構成されたものとしていることから、剛性が高く、取扱いが容易となる。
【0054】
さらに、ヒートシンク41の放熱板42とセラミックス基板11との間に、耐力が30N/mm以下のアルミニウム(本実施形態では、純度99.99%以上の純アルミニウム)からなる金属層13が配設されているので、ヒートシンク41の放熱板42の剛性が高くても、ヒートシンク41の放熱板42とセラミックス基板11との熱膨張係数の差に起因する熱歪みを金属層13で十分に緩和することができ、セラミックス基板11の割れの発生を抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、金属層形成工程S02及びヒートシンク接合工程S03において、添加元素(Cu)がアルミニウム板23側及び放熱板42側に向けて拡散することにより、接合界面30、35に第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を形成し、この第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を凝固させることによって接合する、いわゆるTransient Liquid Phase Diffusion Bondingによって接合しているので、比較的低温条件で強固に接合することができ、接合信頼性に優れたパワーモジュール用基板10及びヒートシンク付パワーモジュール用基板40を製造することが可能となる。
【0056】
また、アルミニウム板23の接合面に形成される第1固着層51及び第2固着層52における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてCuを用いており、第1固着層51及び第2固着層52におけるCu量が0.08mg/cm以上2.7mg/cm以下に設定されているので、アルミニウム板23の接合界面30、35に、第1溶融金属領域55、第2溶融金属領域56を確実に形成することができる。また、添加元素(Cu)が過剰にアルミニウム板23側に拡散して接合界面30、35近傍の金属層13(アルミニウム板23)の強度が過剰に高くなることを防止できる。
【0057】
また、本実施形態では、金属層形成工程S02とヒートシンク接合工程S03とを同時に行う構成としているので、アルミニウム板23の両面の接合工程を1回で行うことができ、このヒートシンク付パワーモジュール用基板40の製造コストを大幅に削減することができる。さらに、セラミックス基板11に不要な熱負荷が作用することがなく、反り等の発生を抑制することができる。
また、スパッタリングにより、アルミニウム板23の接合面に添加元素(Cu)を固着させることで、第1固着層51及び第2固着層52を形成しているので、アルミニウム板23の接合界面30、35に確実に添加元素(Cu)を配置することができる。
【0058】
次に、本発明の第2の実施形態について、図9から図12を参照して説明する。
図9に示すパワーモジュール101は、回路層112が配設されたパワーモジュール用基板110と、回路層112の搭載面112Aにはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、ヒートシンク141とを備えている。
【0059】
パワーモジュール用基板110は、セラミックス基板111と、このセラミックス基板111の一方の面(図9において上面)に接合された回路層112と、セラミックス基板111の他方の面(図9において下面)に接合された金属層113と、を備えている。
【0060】
セラミックス基板111は、絶縁性の高いAlN(窒化アルミ)で構成されている。また、セラミックス基板111の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0061】
回路層112は、図12に示すように、セラミックス基板111の一方の面に銅板122が接合されることにより形成されている。回路層112の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。
そして、この銅板122(回路層112)は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされ、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、酸素含有量が1質量ppm以下とされている。
本実施形態においては、銅板122(回路層112)は、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にZrを10molppm添加したZr−Doped銅とされている。
【0062】
金属層113は、図12に示すように、セラミックス基板111の他方の面にアルミニウム板123が接合されることにより形成されている。
このアルミニウム板123(金属層113)は、純度が99質量%以上で、耐力が30N/mm以下のアルミニウム又はアルミニウム合金の圧延板とされている。本実施形態においては、アルミニウム板123(金属層113)は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板とされている。
【0063】
ヒートシンク141は、パワーモジュール用基板110と接合される天板部142と、冷却媒体(例えば冷却水)を流通するための流路144と、を備えている。
ここで、ヒートシンク141(天板部142)は、熱伝導性が良好な材質で構成されることが望ましく、かつ、構造材としての剛性を確保する必要がある。そこで、本実施形態においては、ヒートシンク141の天板部142は、A6063(アルミニウム合金)で構成されている。
【0064】
セラミックス基板111と金属層113との接合界面においては、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてAgが固溶している。
金属層113の接合界面近傍には、接合界面から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではAg濃度)が低下する濃度傾斜層が形成されている。また、この濃度傾斜層の接合界面側(金属層113の接合界面近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではAg濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。なお、金属層113の接合界面近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面から50μmの位置で5点測定した平均値である。
【0065】
また、金属層113と天板部142との接合界面においては、金属層113及び天板部142に、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、本実施形態では、添加元素としてAgが固溶している。
金属層113及び天板部142の接合界面近傍には、接合界面から積層方向に離間するにしたがい漸次添加元素の濃度(本実施形態ではAg濃度)が低下する濃度傾斜層が形成されている。また、この濃度傾斜層の接合界面側(金属層113及び天板部142の接合界面近傍)の添加元素の濃度(本実施形態ではAg濃度)が、0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されている。なお、この金属層113及び天板部142の接合界面近傍の添加元素の濃度は、EPMA分析(スポット径30μm)によって、接合界面から50μmの位置で5点測定した平均値である。
【0066】
また、セラミックス基板111と金属層113との接合界面を透過電子顕微鏡において観察した場合には、接合界面に添加元素(Ag)が濃縮した添加元素高濃度部が形成されている。この添加元素高濃度部においては、添加元素の濃度(Ag濃度)が、金属層113中の添加元素の濃度(Ag濃度)の2倍以上とされている。この添加元素高濃度部の厚さHは4nm以下とされている。
なお、ここで観察する接合界面は、金属層113の格子像の界面側端部とセラミックス基板111の格子像の接合界面側端部との間の中央を基準面とする。また、金属層113中の添加元素の濃度(Ag濃度)は、金属層113のうち接合界面から一定距離(本実施形態では5nm)離れた部分における添加元素の濃度(Ag濃度)である。
【0067】
以下に、前述の構成のパワーモジュール用基板110の製造方法及びヒートシンク付パワーモジュール用基板140の製造方法について説明する。
【0068】
まず、図11及び図12に示すように、AlNからなるセラミックス基板111の表面に、Al層125を形成する(アルミナ層形成工程S100)。このアルミナ層形成工程S100においては、AlNの酸化処理を1200℃以上でAr−O混合ガス雰囲気にて行った。酸素分圧PO2を10kPaとし、水蒸気分圧PH2Oを0.05kPaに調整した。このように、高酸素分圧/低水蒸気分圧雰囲気にてAlNの酸化処理を行うことにより、AlNとの密着性に優れた緻密なAl層125が形成されることになる。ここで、Al層125の厚さは1μm以上とされている。
なお、高純度のArガスを脱酸処理した後に酸素ガスを混合することによって酸素分圧を調整した。また、この雰囲気ガスをシリカゲルと五酸化二リンを充填した乾燥系に通すことで脱水処理を行った後に所定温度に調整された水中を通過させることによって水蒸気分圧を調整した。
【0069】
次に、回路層112となる銅板122と、セラミックス基板111とを接合する(回路層形成工程S101)。ここで、AlNからなるセラミックス基板111の一方の面にAl層125が形成されていることから、銅板122とAl層125とが、銅(Cu)と亜酸化銅(CuO)の共晶域での液相を利用したDBC法(Direct Bonding Copper)により接合されることになる。具体的には、銅板122とAl層125とを接触させ、窒素ガス雰囲気中で1075℃で10分加熱することで、銅板122とAl層125とを接合するのである。
【0070】
次に、セラミックス基板111の他方の面側に、金属層113となるアルミニウム板123を接合する(金属層形成工程S102)とともに、アルミニウム板123とヒートシンク141(天板部142)とを接合する(ヒートシンク接合工程S103)。本実施形態では、金属層形成工程S102と、ヒートシンク接合工程S103と、を同時に実施することになる。
【0071】
アルミニウム板123の一方の面にスパッタリングによって添加元素を固着して第1固着層151を形成するとともに、アルミニウム板123の他方の面にスパッタリングによって添加元素を固着して第2固着層152を形成する(固着層形成工程S111)。ここで、第1固着層151及び第2固着層152における添加元素量は0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされており、本実施形態では、添加元素としてAgを用いており、第1固着層151及び第2固着層152におけるAg量が0.01mg/cm以上10mg/cm以下に設定されている。
【0072】
次に、図12に示すように、アルミニウム板123をセラミックス基板111の他方の面側に積層する。さらに、アルミニウム板123の他方の面側に天板部142を積層する(積層工程S112)。
このとき、図12に示すように、アルミニウム板123の第1固着層151が形成された面がセラミックス基板111を向くように、かつ、アルミニウム板123の第2固着層152が形成された面が天板部142を向くようにして、これらを積層する。すなわち、アルミニウム板123とセラミックス基板111との間に第1固着層151(添加元素:Ag)を介在させ、アルミニウム板123と天板部142との間に第2固着層152(添加元素:Ag)を介在させているのである。
【0073】
次に、銅板122及びセラミックス基板111、アルミニウム板123、天板部142をその積層方向に加圧した状態で真空加熱炉内に装入して加熱する(加熱工程S113)。ここで、本実施形態では、真空加熱炉内の圧力は10−3〜10−6Paの範囲内に、加熱温度は550℃以上650℃以下の範囲内に設定している。
【0074】
すると、アルミニウム板123とセラミックス基板111との界面に第1溶融金属領域が形成されることになる。この第1溶融金属領域は、第1固着層151の添加元素(Ag)がアルミニウム板123側に拡散することによって、アルミニウム板123の第1固着層151近傍の添加元素の濃度(Ag濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
また、アルミニウム板123と天板部142との界面に第2溶融金属領域が形成される。この第2溶融金属領域は、第2固着層152の添加元素(Ag)がアルミニウム板123側及び天板部142側に拡散することによって、アルミニウム板123及び天板部112の第2固着層152近傍の添加元素の濃度(Ag濃度)が上昇して融点が低くなることにより形成されるものである。
【0075】
次に、第1溶融金属領域、第2溶融金属領域が形成された状態で温度を一定に保持しておく(溶融金属凝固工程S114)。
すると、第1溶融金属領域中のAgが、さらにアルミニウム板123側へと拡散していくことになる。これにより、第1溶融金属領域であった部分のAg濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、セラミックス基板111とアルミニウム板123とが接合される。
同様に、第2溶融金属領域中のAgが、さらにアルミニウム板123側及び天板部142側へと拡散し、第2溶融金属領域であった部分のAg濃度が徐々に低下していき融点が上昇することになり、温度を一定に保持した状態で凝固が進行していく。これにより、アルミニウム板123と天板部142とが接合される。
【0076】
つまり、セラミックス基板111とアルミニウム板123、及び、アルミニウム板123と天板部142とは、いわゆるTransient Liquid Phase Diffusion Bondingによって接合されているのである。このようにして凝固が進行した後に、常温にまで冷却を行う。
【0077】
このようにして、銅板122、セラミックス基板111、アルミニウム板123、ヒートシンク141(天板部142)とが接合され、本実施形態であるパワーモジュール用基板110及びヒートシンク付パワーモジュール用基板140が製造されることになる。
【0078】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板110によれば、回路層112が銅板122で構成されているので、回路層112の搭載面112A上に搭載される半導体素子3等の発熱体からの熱を効率良く促進することができる。
また、回路層112が、Zrを10molppm含有する銅板122で構成されているので、Zrが不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。これにより、銅板122(回路層112)の再結晶温度が低くなり、加工硬化が抑制されることになる。よって、冷熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板111の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態では、AlNからなるセラミックス基板111の表面に、Al層125を形成し、このAl層125を利用して銅板122とセラミックス基板111とをDBC法によって接合していることから、銅板122とセラミックス基板111とを強固に接合することができる。このように、AlNからなるセラミックス基板111であっても、DBC法を利用して銅板122を接合することが可能となる。
【0080】
さらに、アルミナ層形成工程S100において、形成するAl層125の厚さを1μm以上としているので、銅板122とセラミックス基板111とを確実に接合することが可能となる。
また、本実施形態では、高酸素分圧/低水蒸気分圧雰囲気にてAlNの酸化処理を行うことにより、AlNとの密着性に優れた緻密なAl層125を形成しているので、AlNからなるセラミックス基板111とAl層125との間での剥離の発生を防止することが可能となる。
【0081】
次に、本発明の第3の実施形態について、図13から図15を参照して説明する。
図13に示すパワーモジュール用基板210は、セラミックス基板211と、このセラミックス基板211の一方の面(図13において上面)に形成された回路層212と、セラミックス基板211の他方の面(図13において下面)に形成された金属層213と、を備えている。
【0082】
セラミックス基板211は、回路層212と金属層213との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いAlNで構成されている。また、セラミックス基板211の厚さは、0.2〜1.5mmの範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0083】
回路層212は、図15に示すように、セラミックス基板211の一方の面(図15において上面)に、銅板222が接合されることにより形成されている。回路層212の厚さは0.1mm以上1.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.3mmに設定されている。また、この回路層212には、回路パターンが形成されており、その一方の面(図13において上面)が、半導体素子3が搭載される搭載面212Aとされている。
【0084】
そして、この銅板222(回路層212)は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされ、さらに好ましくは、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有しており、酸素含有量が1質量ppm以下とされている。
本実施形態においては、銅板222(回路層212)は、純度99.99質量%以上の無酸素銅(OFC)にLaを7molppm添加したLa−Doped銅とされている。
【0085】
金属層213は、図15に示すように、セラミックス基板211の他方の面(図15において下面)に、アルミニウム板223が接合されることにより形成されている。
このアルミニウム板223(金属層213)は、純度が99質量%以上で、耐力が30N/mm以下のアルミニウム又はアルミニウム合金の圧延板とされている。
本実施形態においては、アルミニウム板223(金属層213)は、純度が99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板とされている。
【0086】
以下に、前述の構成のパワーモジュール用基板210の製造方法について説明する。
まず、図14及び図15に示すように、回路層212となる銅板222とセラミックス基板211とを接合する(回路層形成工程S201)。ここで、セラミックス基板211と銅板222とは、いわゆる活性金属法によって接合されている。この活性金属法は、図15に示すように、セラミックス基板211と銅板222との間に、Ag−Cu−Tiからなるろう材225を配設して、セラミックス基板211と銅板222とを接合するものである。
本実施形態では、Ag−27.4質量%Cu−2.0質量%Tiからなるろう材225を用いて、10−3Paの真空中にて、積層方向に加圧した状態で850℃で10分加熱することによって、セラミックス基板211と銅板222とを接合している。
【0087】
次に、セラミックス基板211の他方の面側に金属層213となるアルミニウム板223を接合する(金属層形成工程S202)。ここで、セラミックス基板211とアルミニウム板223とは、Al−Si系のろう材を用いて接合されている。
本実施形態では、図15に示すように、セラミックス基板211とアルミニウム板223との間に、15〜30μm(本実施形態では20μm)のろう材箔226を配設し、積層方向に加圧した状態でNガス雰囲気の加熱炉内に装入して550℃以上650℃以下の範囲内に加熱することによって、アルミニウム板223とセラミックス基板211とを接合している。
【0088】
このようにして、銅板222、セラミックス基板211、アルミニウム板223、が接合され、本実施形態であるパワーモジュール用基板210が製造されることになる。
【0089】
以上のような構成とされた本実施形態であるパワーモジュール用基板210によれば、回路層212が銅板222で構成されているので、回路層212の搭載面212A上に搭載される半導体素子等の発熱体からの熱を効率良く促進することができる。
また、回路層212が、Laを7molppm含有する銅板222で構成されているので、Laが不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)と反応して硫化物を生成し、Sの影響を抑制することが可能となる。これにより、銅板222(回路層212)の再結晶温度が低くなり、加工硬化が抑制されることになる。よって、冷熱サイクル負荷時におけるセラミックス基板211の割れの発生を抑制することが可能となる。
【0090】
また、Ag−Cu−Tiのろう材225を用いた活性金属法によって、銅板222とセラミックス基板211とを接合しているので、銅板222及びセラミックス基板211の界面に酸素を介在させることなく、パワーモジュール用基板210を構成することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、セラミックス基板を、Al、AlNで構成したもので説明したが、これに限定されることはなく、Si等で構成されたものであってもよい。
また、金属層を構成するアルミニウム板を、純度99.99%以上の純アルミニウムの圧延板としたものとして説明したが、これに限定されることはない。
【0092】
また、第2の実施形態において、AlNを酸化処理することによってAl層を形成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の手段によってセラミックス基板の表面にAl層を形成してもよい。
さらに、第1の実施形態及び第2の実施形態における固着層形成工程において、スパッタによって添加元素を固着するものとして説明したが、これに限定されることはなく、蒸着、CVD、めっき又はペーストの塗布によって添加元素を固着させてもよい。
【0093】
さらに、図16に示すように、金属層313を、複数のアルミニウム板313A、313Bを積層した構造としてもよい。なお、図16では、2枚のアルミニウム板313A、313Bを積層させたものとしているが、積層する枚数に制限はない。また、図16に示すように、積層するアルミニウム板同士の大きさ、形状が異なっていても良いし、同じ大きさ、形状に調整されたものであってもよい。さらに、これらの金属板の組成が異なっていても良い。
【0094】
また、本実施形態では、ヒートシンクをA6063合金で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、A1100合金、A3003合金、A5052合金、A7N01合金等の他の金属材料で構成されたものであってもよい。
さらに、ヒートシンクの構造は、本実施形態に限定されることはなく、他の構造のヒートシンクを採用してもよい。
【0095】
また、本実施形態では、ヒートシンクの上に一つのパワーモジュール用基板が接合された構成として説明したが、これに限定されることはなく、一つのヒートシンクの上に複数のパワーモジュール用基板が接合されていてもよい。
【実施例】
【0096】
本発明の有効性を確認するために行った比較実験について説明する。
AlNからなる厚さ0.635mmのセラミックス基板と、表1に示す組成の無酸素銅に任意の元素を添加したDoped銅、無酸素銅(OFC)、タプピッチ銅(TPC)からなる厚さ0.3mmの銅板と、純度99.99質量%のアルミニウム(4NAl)からなる厚さ1.6mmのアルミニウム板と、を準備した。
これらのセラミックス基板、銅板、アルミニウム板を、第3の実施形態に記載された方法により接合した。なお、回路層形成工程S201における加圧圧力を0.5gf/cm、加熱温度を850℃とした。また、金属層形成工程S202における加圧圧力を5kgf/cm、加熱温度を640℃とした。
【0097】
そして、これらのパワーモジュール用基板に、冷熱サイクル(−40℃←→110℃)を所定回数だけ負荷し、セラミックス基板の割れの有無について確認した。
【0098】
【表1】

【0099】
タフピッチ銅を用いた従来例1及び無酸素銅(OFC)を用いた従来例2においては、冷熱サイクルを1000回から2000回負荷するまでに、セラミックス基板にクラックが認められた。
【0100】
これに対して、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有する本発明例1〜14においては、冷熱サイクルを2000回負荷した時点でセラミックス基板に割れは認められなかった。特に、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有する本発明例1〜3、7〜13では、冷熱サイクルを3000回負荷した時点でもセラミックス基板に割れは認められなかった。
さらに、酸素含有量が異なる本発明例5と本発明例6とを比較すると、酸素含有量が1質量ppm以下とされた本発明例5の方がセラミックス基板の割れ防止効果が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0101】
1、101、301 パワーモジュール
3 半導体素子(電子部品)
10、110、210、310 パワーモジュール用基板
11、111、211、311 セラミックス基板(絶縁基板)
12、112、212、312 回路層
13、113、213、313 金属層
22、122、222 銅板
23、123、223 アルミニウム板
30 接合界面(セラミックス基板/金属層)
32 添加元素高濃度部
35 接合界面(金属層/ヒートシンク)
40、140、340 ヒートシンク付パワーモジュール用基板
41、141、341 ヒートシンク
125 Al

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁基板の他方の面に形成された金属層と、を備えたパワーモジュール用基板であって、
前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成され、前記金属層は、前記絶縁基板の他方の面にアルミニウム板が接合されて構成されており、
前記回路層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴とするパワーモジュール用基板。
【請求項2】
前記回路層を構成する銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で3molppm以上50molppm以下、又は、ボロンを300molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされていることを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項3】
前記回路層を構成する銅板は、酸素含有量が1質量ppm以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項4】
前記金属層のうち前記絶縁基板との接合界面には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素が固溶しており、前記金属層のうち接合界面近傍における前記添加元素の濃度の合計が0.01質量%以上5質量%以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項5】
前記金属層のうち前記絶縁基板との接合界面には、Si,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素の濃度が、前記金属層中の前記添加元素の濃度の2倍以上とされた添加元素高濃度部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、前記金属層の他方の面側に配設されたヒートシンクと、を備えたことを特徴とするヒートシンク付パワーモジュール用基板。
【請求項7】
請求項6に記載のヒートシンク付パワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板と、前記回路層上に搭載された電子部品と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項9】
絶縁基板と、この絶縁基板の一方の面に形成された回路層と、前記絶縁基板の他方の面に形成された金属層と、を備えたパワーモジュール用基板の製造方法であって、
前記回路層は、前記絶縁基板の一方の面に銅板が接合されて構成され、前記金属層は、前記絶縁基板の他方の面にアルミニウム板が接合されて構成され、前記銅板は、接合される前において、少なくとも、アルカリ土類元素、遷移金属元素、希土類元素のうちの1種以上を合計で1molppm以上100molppm以下、又は、ボロンを100molppm以上1000molppm以下のいずれか一方を含有し、残部が銅及び不可避不純物とされた組成とされており、
前記絶縁基板の一方の面に銅板を接合して前記回路層を形成する回路層形成工程と、前記絶縁基板の他方の面にアルミニウム板を接合して前記金属層を形成する金属層形成工程と、を備え、
前記金属層形成工程においては、前記アルミニウム板の接合界面にSi,Cu,Ag,Zn,Mg,Ge,Ca,Ga,Liのうちのいずれか1種又は2種以上の添加元素を配置し、前記アルミニウム板を接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項10】
前記金属層形成工程においては、前記添加元素が前記アルミニウム板側に向けて拡散することにより、接合界面に溶融金属領域を形成し、この溶融金属領域を凝固させることによって接合することを特徴とする請求項9に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項11】
前記アルミニウム板の接合界面に配置される前記添加元素量が、0.01mg/cm以上10mg/cm以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項9または請求項10に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項12】
前記回路層形成工程の前に、前記絶縁基板の少なくとも一方の面にAl層を形成するアルミナ層形成工程を行うことを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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