説明

パンチ型

【課題】プリント配線板の打ち抜き加工において、パンチ型の寿命を確保しつつ、打ち抜きバリの発生を抑止するパンチ型を提供する。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板50Aの打ち抜き加工に用いられるパンチ型11であって、該パンチ型11の下面には側面視で波形状の凹凸部12が連続的に形成され、かつ、該凹凸部12を前記下面の全面に及んで下面視斜め平行に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパンチ型に関するものであり、特に、プリント配線板の打ち抜き加工に使用されるパンチ型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されるプリント配線板、特に、部品実装部同士をケーブル部にて接続した多層のフレキシブルプリント配線板では、可撓性を有するケーブル部と部品実装部では部分的に厚みが異なる箇所を有するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような層構成の異なる箇所を有するフレキシブルプリント配線板において、製品外形を一般的なパンチ型で打ち抜く工程の一例を、図9〜図14にて説明する。図9はフレキシブルプリント配線板50に複数の同一回路パターンが連続して形成された状態を示し、破線で示す製品外形51をパンチ型で打ち抜いて分離する。
【0004】
図10は図9のA部拡大図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は(a)のB−B線断面図である。それぞれのフレキシブルプリント配線板50Aは、第1ベースフィルム52aと第2ベースフィルム52bとの間に接着部材53が介装されている。図示例では、上下2層の構成となっているが、前記接着部材53の部分に回路パターンを複数層配置した多層の構成であってもよい。本実施例では、簡略化のため、回路パターンの図示を省略してある。
【0005】
前記フレキシブルプリント配線板50Aの製品外形51は3つの部分からなり、上下にシールド層54,54を有する部品実装部55と、上下ともにシールド層のない部品実装部56が、ケーブル部57にて接続されている。ケーブル部57には上下にシールド層54,54が設けられ、上下のベースフィルム52a,52bの間には中空部58が設けられている。
【0006】
ここで、符号59は部品実装部56へ機器を組み込むための開口部を設ける領域であり、該開口部59もパンチ型で打ち抜く。なお、54bは隣接する回路のシールド層を示している。
【0007】
図11はパンチ型で打ち抜く箇所を示し、製品外形51の外側部分でハッチングを施した部分60が1回の工程で打ち抜かれ、打ち抜き箇所60の外側部分が捨て部61となる。また、打ち抜き箇所60,60間に数箇所の連結部62を残存させておく。この連結部62は、フレキシブルプリント配線板50Aにおける種々の処理が完了した後に、製品として個々に分割する際に切断除去する。
【0008】
図12はフレキシブルプリント配線板50Aがダイス型70の上に載置された状態を示し、図11におけるC−C線部位の断面図である。ダイス型70の上方にパンチ型71がセットされ、該パンチ型71が下降して、図11に示す打ち抜き箇所60を打ち抜く。
【0009】
図13は製品外形51の平面を示し、同図にて打ち抜き工程を説明すれば、図13(a)に示すように、前記パンチ型71が下降して、先ず、厚みが一番厚いシールド層ありの部品実装部55から裁断が始まる。ケーブル部57は、見かけ上は部品実装部55と同じ厚みであるが、中空部58があるのでパンチ型71で下方に押され、ケーブル部57は遅れて裁断が始まる。
【0010】
したがって、図13(b)に示すように、部品実装部55の裁断が進むと、次にシールド層なしの部品実装部56の裁断が始まる。そして、前記パンチ型71がさらに下降して、部品実装部55と部品実装部56の裁断が終わると、ケーブル部57の両側から裁断が進むが、図13(c)に示すように、裁断の進行方向がずれると打ち抜きのバリが発生する。
【0011】
裁断の進行方向がずれる原因としては、ケーブル部57には中空部58があり、図14に示すように、該中空部58が撓むことにより、裁断の進行方向がずれてしまう。
【0012】
パンチ型による打ち抜きのバリを抑制する構成としては、刃の先端から斜めに延びるように刃先を鋭角な形状とし、時間差をつけて刃先が当たるように裁断する穿孔用パンチ型が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0013】
また、型打ポンチ(パンチ型)の断面をV字形あるいは半楕円形にし、刃先の押し抜き角度を90°未満、好ましくは45°にした押し抜き装置も知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3176858号公報
【特許文献2】特開平9−150399号公報
【特許文献3】特表2003−533362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1記載のプリント配線板のように、可撓性を有するケーブル部と部品実装部で厚みが異なる箇所を有するフレキシブルプリント配線板は、図9〜図14にて説明したように、パンチ型で打ち抜いたときに、ケーブル部の中空部が撓むことにより、裁断の進行方向がずれてバリが発生する。
【0015】
特許文献2記載の穿孔用パンチ型は、パンチ型の切れ味を良くして打ち抜きのバリを抑制しようとするものであるが、厚みが異なるケーブル部を打ち抜く場合には、時間差をつけてパンチ型が当たると打ち抜きずれが生じてしまう。特に、ケーブル部は屈曲特性のよい材料が求められており、やわらかい材料で形成されたケーブル部が先にパンチ型の刃先に当たると、打ち抜きずれによる糸状バリが発生しやすい。また、パンチ型の刃先に鋭角な部分があると、刃こぼれが生じやすく金型の寿命が短くなる。
【0016】
特許文献3記載の押し抜き装置は、型打ポンチ(パンチ型)の断面をV字形あるいは半楕円形にしてあるが、前述した穿孔用パンチ型と同様に、刃先が直線状であると、時間差による糸状バリの発生を抑止できず、先端に鋭角な部分があると金型の寿命が短くなる。また、抜きかすが刃先のみで押し出される構成であるため、柔軟性の高い材料を打ち抜くと、弾性反発によって抜きかすがプリント配線板の上部に跳ね上がることがある。さらに、刃先が側面視波形に形成されている形状が開示されているが、この場合は刃先に鋭角な部分が多くなり、機械的強度が脆弱となって、刃こぼれが生じやすく寿命が短くなる。
【0017】
そこで、本発明はプリント配線板の打ち抜き加工において、パンチ型の寿命を確保しつつ、打ち抜きバリの発生を抑止するパンチ型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、プリント配線板の打ち抜き加工に用いられるパンチ型であって、該パンチ型の下面には側面視で同一形状の傾斜辺または湾曲辺を有する凹凸部が連続的に形成され、かつ、該凹凸部を前記下面の全面に及んで下面視斜め平行に設けたことを特徴とするパンチ型を提供する。
【0019】
この構成によれば、パンチ型の下面に側面視で同一形状の凹凸部が連続的に形成されているので、パンチ型が下降して凹凸部の凸部がプリント配線板に当たると、先ずプリント配線板が破線状に裁断される。パンチ型の下降に伴い、刃先に押圧されて破線状の裁断部分が接続されるように裁断されていく。したがって、裁断の進行方向がずれようとしても、破線状裁断部分間の未裁断部分が引き裂かれるように裁断されて、裁断の進行方向のずれが吸収され、バリの発生を防止できる。また、該凹凸部は前記下面の全面に及んで下面視斜め平行に設けられているので、打ち抜きラインがどの方向であっても、すべての辺に対しても凹凸部が均等に接触し、上記作用が現出される。
【0020】
請求項2記載の発明は、上記凹凸部は波形状であることを特徴とする請求項1記載のパンチ型を提供する。
【0021】
この構成に寄れば、上記凹凸部が波形状であるので、刃先の押圧による裁断が円滑に行われ、裁断の進行方向のずれの吸収も良好となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、パンチ型の下面に側面視で同一形状の凹凸部、例えば波形状が連続的に形成されているので、プリント配線板が破線状に裁断され、破線状の裁断部分が接続されるように裁断されていくので、裁断の進行方向がずれるのを吸収することにより、バリの発生を防止できる。また、パンチ型の下面の全面に及んで波形状の凹凸部を斜め平行に設けてあるので、打ち抜きラインがどの方向であっても、バリの発生を防止できる。さらに、機械的強度が確保され、金型の寿命を長く維持できる。また、パンチ型の下面全体で抜きかすを押し出すので、抜きかすが確実にダイス型の開口に落下し、抜きかすの排出性も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るパンチ型について、好適な実施例をあげて説明する。プリント配線板の打ち抜き加工において、パンチ型の寿命を確保しつつ、打ち抜きバリの発生を抑止するパンチ型を提供するという目的を達成するために、本発明は、プリント配線板の打ち抜き加工に用いられるパンチ型であって、該パンチ型の下面には側面視で同一形状の傾斜辺または湾曲辺を有する凹凸部が連続的に形成され、かつ、該凹凸部を前記下面の全面に及んで下面視斜め平行に設けたことにより実現した。
【実施例1】
【0024】
図1はパンチ型の正面図、図2は図1のα−α矢視図、図3は図1のβ−β矢視図である。なお、フレキシブルプリント配線板50および打ち抜かれる個々のフレキシブルプリント配線板50Aの製品外形51は、図9〜図11に示した形状とまったく同一であるので、重複説明は省略する。
【0025】
図1〜図3に示すように、ダイス型10の上方にパンチ型11がセットされ、該パンチ型11が下降して、図11に示すフレキシブルプリント配線板50Aの打ち抜き箇所60を打ち抜く。該パンチ型11の下面には側面視で同一形状の傾斜辺または湾曲辺を有する凹凸部12が連続的に形成されている。本実施例では、前記凹凸部12が同一形状の湾曲辺を有する波形状に形成されており、かつ、該凹凸部12は前記パンチ型下面の全面に及んで下面視斜め平行に設けられている。
【0026】
図3に示すように、該凹凸部12の凹部12aを破線で表し、凸部12bを実線で表せば、パンチ型11のX方向(図3で左右方向)の各辺11aおよびY方向(上下方向)の各辺11bの何れに対しても、前記凹部12aと凸部12bが略45°の傾斜角度で平行に形成されている。
【0027】
このように、前記凹凸部12の形成方向を下面視斜め平行にすることにより、X方向またはY方向のどちらの辺11a,11bに対しても、凹凸部12の端面形状(本実施例では波形状)が均等に現出される。上記凹凸部12の各辺11a,11bに対する傾斜角度は、必ずしも45°でなくてもよく、一方の辺に対して40°あるいは35°など任意の傾斜角度であってもよい。
【0028】
図4はフレキシブルプリント配線板50Aがダイス型10の上に載置された状態を示し、上下にシールド層54,54を有する部品実装部55と、上下ともにシールド層のない部品実装部56が、ケーブル部57にて接続されている。これら打ち抜き箇所60の外側部分が捨て部61である。
【0029】
図5は製品外形51の打ち抜き工程を説明する平面図、図6は裁断部分の変化を示す説明図である。前記パンチ型11が下降すると、図5(a)に示すように、該パンチ型11の下面に形成されている凹凸部12の凸部12bが、先ず、厚みの一番厚いシールド層ありの部品実装部55に当接し、部品実装部55の裁断予定線Lが前記凸部12bに押圧され、図6(a)に示すように、裁断予定線Lの一部L1が破線状に裁断される。
【0030】
パンチ型11の下降に伴い、前記凸部12bで裁断予定線Lがさらに押圧され、図6(b)に示すように、破線状の裁断部分L1同士が接続されるように延び、未裁断部分L2が引き裂かれて裁断されていく。そして、図6(c)に示すように、破線状の裁断部分が接続されて裁断完了L3となる。
【0031】
図5(b)に示すように、部品実装部55の裁断破線が繋がって裁断が完了すると、ケーブル部57の一部が裁断され始めて破線状の裁断が進み、これと同時に、シールド層なしの部品実装部56の裁断が始まる。ケーブル部57の裁断および部品実装部56の裁断は、部品実装部55の裁断と同様に、図6(a)〜(c)に示すように、破線状の裁断部分L1同士が接続されるように延び、未裁断部分L2が引き裂かれて裁断されていく。
【0032】
図5(c)に示すように、ケーブル部57は部品実装部55側からの裁断の進行と、部品実装部56側からの裁断の進行により、最終的には破線状の裁断同士が繋がって裁断完了となる。
【0033】
このとき、ケーブル部57の撓みなどで裁断L1の進行方向がずれようとした場合でも、図6(d)に示すように、破線状の裁断L1が材料の機械的強度が弱い部分を求めて、破線状裁断部分間の未裁断部分L2を引き裂くように裁断するため、裁断の進行方向のずれが吸収されて、バリの発生を防止できる。
【0034】
図7は前記凹凸部12の寸法を示し、裁断の実験結果によれば、凹凸部12の深さについては、深さが0.3mmより浅いとケーブル部57での破線状の裁断ができず、バリが発生しやすくなる。一方、深さが0.8mmより深いとパンチ型11の刃先の高さが増加するため、パンチ型11の寿命が短くなる。したがって、凹凸部12の深さは0.3〜0.8mmがよい。
【0035】
また、凹凸部12のピッチについては、ピッチが1.0mmより短いと深さ0.3mmを確保すべく凸部12bの先端形状をより一層鋭角にするため、パンチ型11の寿命確保が困難となる。一方、ピッチが2.0mmより長いとケーブル部57での破線状の裁断が両側から進行したときに、裁断方向にずれを生じてバリが発生する。したがって、凹凸部12のピッチは1.0〜2.0mmがよい。
【0036】
図8は凹凸部12の形状の変形例を示し、同図(a)は山形状の凹凸部13を設けてあり、同図(b)はさざなみ形状(逆半円状)の凹凸部14を設けてある。何れの形状でも、前述した波形状の凹凸部12と同様の作用効果を奏する。
【0037】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係るパンチ型の正面図。
【図2】図1のα−α矢視図。
【図3】図1のβ−β矢視図。
【図4】フレキシブルプリント配線板がダイス型上に載置された状態の正面図。
【図5】製品外形の打ち抜き工程を説明する平面図。
【図6】裁断部分の変化を示す説明図。
【図7】パンチ型の凹凸部の寸法を示す説明図。
【図8】パンチ型の凹凸部の形状の変形例を示す説明図。
【図9】複数の回路パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板の平面図。
【図10】図9のA部拡大図。
【図11】パンチ型で打ち抜く箇所を示す説明図。
【図12】従来例を示し、フレキシブルプリント配線板がダイス型上に載置された状態の正面図。
【図13】従来例を示し、製品外形の打ち抜き工程を説明する平面図。
【図14】従来例を示し、中空部58が撓んだ状態のケーブル部の断面図。
【符号の説明】
【0039】
10 ダイス型
11 パンチ型
12 凹凸部
12a 凹部
12b 凸部
13 凹凸部
14 凹凸部
50 フレキシブルプリント配線板
50A (個々の)フレキシブルプリント配線板
51 製品外形
52a 第1フィルムベース
52b 第2フィルムベース
53 接着部材
54 シールド層
55 部品実装部(シールド層あり)
56 部品実装部(シールド層なし)
57 ケーブル部
58 中空部
59 開口部
60 打ち抜き箇所
61 捨て部
62 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板の打ち抜き加工に用いられるパンチ型であって、該パンチ型の下面には側面視で同一形状の傾斜辺または湾曲辺を有する凹凸部が連続的に形成され、かつ、該凹凸部を前記下面の全面に及んで下面視斜め平行に設けたことを特徴とするパンチ型。
【請求項2】
上記凹凸部は波形状であることを特徴とする請求項1記載のパンチ型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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