説明

パン又は菓子用添加剤、パン又は菓子用穀粉組成物及びパン又は菓子の製造方法

【課題】公知の発明により得られるパンよりももっちり感、しっとり感に優れた湯種パンを製造することができるパン用の添加剤、穀粉組成物並びにパンの製造方法、さらに公知の発明のケーキよりも優れた商品価値を有し、かつしっとり感に優れたケーキ等の菓子を製造することが可能な菓子用添加剤、穀粉添加剤、穀粉組成物並びにケーキ等の菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)アルファ化米粉及び(b)コーンスターチ、タヒ゜オカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉を(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて含有するパン又は菓子用添加剤とする。パン又は菓子用穀粉組成物は、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)を(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部及び(c)原料穀粉70〜90重量部を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小麦粉パン、米粉パン又はケーキなどの菓子の製造において使用する用添加剤、前記パン又は菓子用の添加剤に穀粉を所定比率で添加した組成を有するパン又は菓子の製造に使用可能なパン又は菓子用の穀粉組成物、並びにパン又は菓子用パン又は菓子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦粉を原料とするパン、米粉を原料とするパンは公知であり、小麦粉、米粉を使用したケーキも公知である。これらのパンやケーキについては、さらに美味しいものとするべく日々改良が行なわれている。パンに関しては、とりわけフランスパンやデニッシュパンについては表皮層がサクサク感を有するものが好まれる一方で、食パンなどではもっちり感、しっとり感を有するものが求められている。食パンやコッペパンなどについて、もっちり感、しっとり感とともに優れた旨みを有するパンを製造する技術として、小麦粉を熱水処理してアルファ化して湯種とし、該湯種と小麦粉を混合してパンを製造する湯種法が公知である。該湯種法によれば、パンの製造に際して熱湯を使用するか、又は加熱を行なう必要があって製造が危険で手間がかかるものであるために、これを改善する技術として予めアルファ化して粉末としたアルファ化小麦粉を使用するパンの製造方法が公知である(特許文献1、2など)。小麦粉に代えて米粉とグルテンを使用して湯種を製造し、この湯種を使用してパンを製造する方法も公知である(特許文献3)。
【0003】
スポンジケーキについては、従来は薄力粉を使用したケーキが一般的であるが、より高級で美味しいものとして、しっとり感のあるケーキが求められている。オーブンを使用せずに電子レンジを使用してボリューム感のあるケーキを製造するためのプレミックス組成物であって、穀粉として澱粉とアルファ化澱粉を使用したプレミックス組成物も公知である(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-180233号公報
【特許文献2】特開2003-199482号公報
【特許文献3】特開2003-235439号公報
【特許文献4】特許第3443105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献3記載の発明は、パンの製造に際して熱湯を使用しなければならないか、あるいは加熱工程を設けて湯種を製造する必要があって手間のかかるものであり、特許文献1,2記載の従来技術に相当するものである。また発明1、2記載の発明によれば、得られるパンはもっちり感、しっとり感を有するものではあるが、伸び、即ち焼成時の膨らみが大きく、表皮層のサクサク感が十分ではなく、もっちり感、しっとり感の点においてもさらに改善が求められる。
【0006】
また、特許文献4に記載のスポンジケーキは、確かに電子レンジを使用して製造できるものの、ケーキなどとして市販品とするには不十分な品質のものしか得られない。
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題に鑑みて、湯種パンの製造に際して熱湯を使用したり、あるいは加熱工程を設けて湯種を製造する必要がなく、特許文献1ないし2に記載の発明により得られるパンよりももっちり感、しっとり感に優れた湯種パンを製造することができるパン用の添加剤、穀粉組成物並びにパンの製造方法を提供することにある。また本発明は、特許文献4記載の発明のケーキよりも優れた商品価値を有し、しかも従来の薄力粉を使用したケーキよりも高級感を与えるしっとり感に優れたケーキ等の菓子を製造することが可能な菓子用添加剤、穀粉組成物並びにケーキ等の菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパン又は菓子用添加剤は、(a)アルファ化米粉及び(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉を(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて含有することを特徴とする。
【0009】
上記の添加剤を原料穀粉と混合してパン又はケーキなどの菓子を製造すると、パンの場合には湯種パンの製造に際して熱湯を使用したり、あるいは加熱工程を設けて湯種を製造する必要がなく、特許文献1ないし2に記載の発明により得られるパンよりももっちり感、しっとり感に優れた湯種パンを製造することができる。また菓子の場合には、特許文献4記載の発明のケーキよりも優れた商品価値を有し、しかも従来の薄力粉を使用したケーキよりも高級感を与えるしっとり感に優れたケーキ等の菓子を製造することができる。本発明では、(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の米澱粉以外の澱粉のアルファ化澱粉の2種以上を使用する点に特徴があり、係る構成により1種のアルファ化澱粉を使用した場合より、優れた効果が得られる。
【0010】
上記の添加剤は、原料穀粉に添加混合してパン又は菓子用の穀粉組成物とし、パン又は菓子の製造に使用する。上記の添加剤と原料穀粉の混合比率は、原料穀粉70〜90重量部に対して添加剤30〜10重量部(合計100重量部)である。添加剤における(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉重量比が2/1よりもアルファ化米粉が少ない場合も、また20/1よりもアルファ化米粉が多い場合にも、パンの場合にはもっちり感としっとり感、ケーキなどにおいてはしっとり感付与効果が十分ではなくなる。アルファ化米粉/アルファ化澱粉重量比の下限は5/1以上であることが好ましく、8/1以上であることがより好ましい。アルファ化米粉/アルファ化澱粉重量比の上限は15/1以下であることが好ましく、12/1以下であることがより好ましい。
【0011】
上記のパン又は菓子用添加剤は、小麦粉パンや小麦粉を使用したスポンジケーキ等の菓子用には、さらに(c)原料穀粉として(d)小麦粉を、好ましくは該添加剤と1/1(重量比)以下を配合して希釈してもよい。また米粉パンを製造する場合には、さらに(c)原料穀粉として(e)米粉とグルテンを米粉/グルテン=75/25〜85/15(重量比)となるように米粉とグルテンとを含有する米粉組成物又は米粉とグルテンとを、好ましくは該添加剤と1/1(重量比)以下を配合して希釈してもよい。
【0012】
かかる構成とすることにより、原料穀粉に対する添加剤の重量が少ないことによるパンや菓子の製造時の計量の誤差を小さくすることができ、その結果パンや菓子の品質のばらつきを低減することができる。
【0013】
本発明のパン又は菓子用穀粉組成物は、(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉を、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)合計量として(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部及び(c)原料穀粉70〜90重量部(合計100重量部)を含有することを特徴とする。
【0014】
上記のパン又は菓子用穀粉組成物を使用してパン又はケーキなどの菓子を製造すると、パンの場合には湯種パンの製造に際して熱湯を使用したり、あるいは加熱工程を設けて湯種を製造する必要がなく、特許文献1ないし2に記載の発明により得られるパンよりももっちり感、しっとり感に優れた湯種パンを製造することができる。また菓子の場合には、特許文献4記載の発明のケーキよりも優れた商品価値を有し、かつしっとり感に優れたケーキ等の菓子を製造することができる。
【0015】
上記の(c)原料穀粉が強力粉ないし準強力粉の場合には、小麦粉を使用した湯種パンを製造することができ、(c)原料穀粉が薄力粉又は米粉の場合には、小麦粉又は米粉を使用したスポンジケーキなどを製造することができ、(c)原料穀粉が米粉とグルテンを米粉/グルテン=75/25〜85/15(重量比)にて含有するものである場合には、湯種タイプのもっちり感のある米粉パンを製造することができる。
【0016】
(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)配合比が10重量部未満の場合には、得られるパンや菓子のもっちり感、しっとり感が不十分であり、30重量部を超えると得られるパンや菓子に弾力感が発生して食感が低下する。上記本発明のパン又は菓子用の穀粉組成物並びにパン又は菓子の製造方法においては、アルファ化米粉とアルファ化澱粉は、原料穀粉と別々に添加、混合してもよく、アルファ化米粉とアルファ化澱粉とを予め混合して製造した本発明のパン又は菓子用の添加剤として原料穀粉に添加、混合してもよい。
【0017】
本発明のパン又は菓子の製造方法は、少なくとも穀粉、及び水成分、卵成分の少なくとも1種とを混合して生地を製造する混合工程、前記生地を成形して成形生地とする成形工程、及び前記成形生地を焼成してパン又は菓子とする焼成工程を有し、
前記穀粉は、(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉とを、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)として、(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部及び(c)原料穀粉70〜90重量部を含有するものであることを特徴とする。
【0018】
上述の製造方法によれば、パンの場合には湯種パンの製造に際して熱湯を使用したり、あるいは加熱工程を設けて湯種を製造する必要がなく、特許文献1ないし2に記載の発明により得られるパンよりももっちり感、しっとり感に優れた湯種パンを製造することができる。また菓子の場合には、特許文献4記載の発明のケーキよりも優れた商品価値を有し、かつしっとり感に優れたケーキ等の菓子を製造することができる。
【0019】
上記のパン又は菓子の製造方法には、製造するパンの種類により種々の工程が付加される。小麦粉パンの場合には混合工程後に1次発酵工程(フロアタイム)、生地を分割する分割工程、分割した生地を休ませるベンチ工程(ベンチタイム)を設け、成形後、焼成前には2次発酵工程(ホイロタイム)を設ける。米粉パンの場合には上記の小麦粉パンの製造工程とほぼ同じ工程を有する製造方法により製造できるが、小麦粉パンの製造における1次発酵工程を省略することができる。ケーキなどの菓子の場合は通常発酵工程は設けない。また成形工程は単に型に流し込む場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
アルファ化米粉、アルファ化コーンスターチ、アルファ化タピオカ澱粉、アルファ化小麦粉澱粉、アルファ化馬鈴薯澱粉は、市販品を使用することができる。小麦粉は市販品を使用する。
【0021】
本発明で米粉パンの場合に使用する米粉組成物を構成する米粉は、生米を粉砕、粉末化したものである。米としては、粳米、もち米などを使用する。粉砕する前の生米は、精白米、玄米、屑米、古米など特に制限されるものではないが、精白米であることが好ましい。米粉の粒度は、80メッシュ、好ましくは100メッシュをパスするものであれば特にその粒度、粒度分布は限定されないが、200メッシュをパスする割合が50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがさらに好ましい。ただし、少量の粗い粒子が混在しても問題はなく、100メッシュオンの量が5重量%以下であることが好ましい。生米を粉砕して米粉とする方法は、公知の方法が使用でき、胴搗き製粉、ロール製粉、石臼製粉、気流粉砕製粉、高速回転打撃製粉等が例示される。
【0022】
本発明のパンの製造方法において使用する酵母としては、天然酵母、生イースト、ドライイースト、冷凍用イースト等の公知の酵母を例示することができる。
【0023】
本発明の穀粉組成物並びにパンないし菓子の製造方法においては、製造するパンや菓子の種類に応じて、砂糖、液糖、食塩、乳成分、卵成分、油脂、無機塩類などの公知の配合成分から選択される少なくとも1種をさらに配合することが好ましい。
【0024】
糖類としては、特に限定されるものではなく、砂糖などの糖、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、フルクトース等のオリゴ糖、マルチトール、ソルビト−ル、キシリトール、水添水飴などの糖アルコールがあげられ、これらの糖類は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。糖類は砂糖などの易発酵性の糖とオリゴ糖や糖アルコールなどの難発酵性糖類を併用することが好ましく、オリゴ糖や糖アルコールは、本発明のパン又は菓子用添加剤ないし穀粉組成物に添加してもよく、パンの製造において混合工程で添加してもよい。麦芽糖はモルトとして添加してもよい。
【0025】
本発明において使用する乳成分としては粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等があげられ、前記卵成分としては、卵黄、卵白、全卵その他の卵に由来する成分があげられる。また前記油脂としては、バター、マーガリン、ショートニング、ラード、オリーブ油、サラダ油等があげられる。
【0026】
前記無機塩類としては、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、焼成カルシウム、アンモニウムミョウバン等があげられる。
【0027】
また、本発明のパン又は菓子には、各種の食品または食品添加物を配合してもよく、例えば、植物の果実、種子もしくは枝葉、またはイーストフード、乳化剤などがあげられる。
【0028】
本発明における米粉パンには、製造するパンに応じて小麦粉パンのような香味を付与するために香味成分を添加することは好ましい態様であって、該香味成分の添加により米粉パンでありながら小麦粉パンの風味を有するパンが得られる。係る香味成分としては、ルヴァンリキッド及びフレーバーがあり、フレーバーとしてはクレームドルヴァン、パン用酒種フレッシュ等が例示される。ルヴァンリキッドは天然酵母を使用して製造され、パンの製造において生地を発酵させるための酵母として使用されるものであるが、実際にパン生地の発酵に使用すると発酵に長時間を必要とし、短時間で発酵させる米粉パンには、発酵のために使用することができないものである。本発明においては、酵母は別に使用し、ルヴァンリキッドは発酵作用を奏さずに香味成分として作用する。
【0029】
上記の米粉パンに添加する香味成分は、ルヴァンリキッドを使用する場合、その添加量は穀粉100重量部に対して5〜20重量部であり、クレームドルヴァン、パン用酒種フレッシュ等のフレーバーの場合には1〜7重量部である。これらの香味成分の添加量が少なすぎる場合には香りが十分に得られず、多すぎると香りが強くなりすぎる。
【0030】
本発明において小麦粉パンを製造する製造方法は、少なくとも穀粉(小麦粉、アルファ化米粉及びアルファ化澱粉)、酵母及び水成分を混合して生地を製造する混合工程、前記生地を発酵させる1次発酵工程(フロアタイム)、発酵した生地を分割する分割工程、分割した生地を休ませるベンチ工程、分割した生地を成形して成形生地とする成形工程、前記成形生地を2次発酵させるホイロ工程及び前記2次発酵させた成形生地を焼成してパンとする焼成工程を有し、
前記穀粉は、100重量部中に原料穀粉として強力粉又は準強力粉70〜90重量部、及び(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉とを、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)量として、(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部含有するものであることを特徴とする。
【0031】
上記製造方法において、フロアタイム、ベンチタイム、ホイロタイムは、当業者において適宜設定するが、一般的には、フロアタイムは30〜120分、ベンチタイムは10〜50分、ホイロタイムは、30〜120分程度である。
【0032】
上記のパンの製造に際しては、穀粉は、原料穀粉である小麦粉とアルファ化米粉及びアルファ化澱粉を予め混合して組成物として使用してもよく、混合工程でアルファ化米粉及びアルファ化澱粉を予め混合して添加剤組成物として添加、混合してもよく、混合工程で他の成分とともに個別に添加して混合してもよい。
【0033】
本発明の米粉パンの製造方法は、少なくとも穀粉(米粉、グルテン、アルファ化米粉、アルファ化澱粉)、酵母及び水成分を混合して生地を製造する混合工程、前記生地を分割する分割工程、分割した前記生地を休ませるベンチ工程、休ませた前記生地を成形して成形生地とする成形工程、前記成形生地を発酵させる発酵工程(ホイロ工程)及び前記発酵した成形生地を焼成してパンとする焼成工程を有し、
前記穀粉は、100重量部中に原料穀粉として米粉とグルテンとを米粉/グルテン=75/25〜85/15(重量比)にて70〜90重量部、及び(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉とを、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)として、(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部含有するものであることを特徴とする。
【0034】
上記の米粉パンの製造方法における穀粉は、米粉、グルテン、アルファ化米粉、アルファ化澱粉を予め混合した穀粉組成物を使用して該穀粉組成物に他の成分を添加、混合してもよく、米粉とグルテンを混合した米粉組成物とアルファ化米粉とアルファ化澱粉とを予め混合した添加剤を混合工程で混合してもよく、米粉、グルテン、アルファ化米粉、アルファ化澱粉を他の成分と個々別々に混合してもよい。
【0035】
上記の米粉パンの製造方法においては、1次発酵時間(小麦粉パンの製造におけるフロアタイムに相当する)はなしで行なうことができる。従って、小麦粉パンの製造方法の場合よりも短時間でパンを製造することができる。ただし、1次発酵時間を設けてもよく、その場合、1次発酵時間(フロアタイム)は30分以下、好ましくは20分以下である。
【0036】
米粉パンの場合には、成形後には生地を休ませるベンチ工程を設ける。ベンチタイムは5〜30分であることが好ましく、10〜20分であることがより好ましい。ベンチ工程についで成形工程を設け、成形した生地は焼成を行なうが,焼成の前に発酵させるホイロ工程を設ける。ホイロタイムは、20〜100分であることが好ましく、30〜80分であることがより好ましく、30〜70分であることがさらに好ましい。
【0037】
上記の小麦粉パン並びに米粉パンの製造方法において穀粉と混合する水成分は水であってもよく、牛乳のようなものであってもよく、製造目的のパンに応じて適宜選定することができる。混合は手で行なってもよいが、市販のミキサーを使用して行なうことが好ましい。混合条件はパンの製造における当業者の技術常識により適宜設定することができる。
【0038】
上記のパンの製造方法における焼成は公知の方法で行なうことができるが、焼き色が優れている点で通常のパンの焼成を行なうオーブンを使用することがより好ましい。本発明のパンの製造は、個々の工程を手作業で行なってもよく、また混合工程、分割工程、ベンチ工程、ホイロ工程、焼成工程等の必要な一連の工程を行なう装置を備えた連続製造装置を使用して行なってもよい。
【0039】
本発明の菓子の製造方法は、少なくとも穀粉と水成分、卵成分の少なくとも1種とを混合して生地を製造する混合工程、前記生地を成形して成形生地とする成形工程、前記成形生地を焼成して菓子とする焼成工程を有し、
前記穀粉は、100重量部中に原料穀粉である薄力粉又は米粉70〜90重量部、及び(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉とを、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)として(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部含有するものであることを特徴とする。
【0040】
上記の製造方法により得られたケーキ等の菓子は、特にベーキングパウダー(膨らし粉)、メレンゲ卵白の少なくとも一種を使用したケーキ、スポンジケーキ、ロールケーキ、シフォンケーキ等のパティスリーである洋生菓子の場合に、ふっくらし、かつしっとり感のある菓子を製造することができる。
【0041】
上記の製造方法においては、ケーキなどの場合、穀粉、砂糖、卵成分としての卵黄、マーガリン等を混合し、卵白を使用する場合はメレンゲ状態にし、これらを混ぜ合わせて生地として型に入れて焼成して製造する。
【0042】
菓子としては特に限定されるものではないが、膨らし粉を使用したスポンジケーキ、ロールケーキ、マフィン等のふっくらし、かつしっとり感を求められる洋菓子であることが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
(実施例1)
強力粉80重量部、アルファ化米粉とアルファ化コーンスターチを20/2(重量比)にて含有する添加剤22重量部、砂糖8重量部、食塩2重量部、無塩バター6重量部、ベーカリークリーム4重量部、生イースト3重量部、イーストフード0.1重量部、se−600(液糖)1重量部を、パン生地混合機を使用して仕上がり生地温度24〜27℃となるように混合し、パン生地を製造した。得られたパン生地はフロアタイム(1次発酵時間)35分を設けた後に分割してベンチタイムを15分設けて休ませた。次いで成形を行なった後にホイロタイム(2次発酵時間)65分(ホイロ条件:温度38〜40℃、湿度75〜80%)を設けた後に焼成を行なって山食パンを製造した。焼成はオーブン(上火180℃、下火200℃)にて45分行なった。
【0044】
(比較例1)
α化コーンスターチを使用せず、かつアルファ化米粉代えてα化小麦粉を使用した以外は実施例1と同様にして山食パンを製造した。
【0045】
(評価)
実施例1,2並びに比較例1,2にて得られた山食パンについて、膨らみ、焼き色、食感、臭気及び内相について官能試験を行い、膨らみ、焼き色については小麦粉を使用した従来の山食パンの良好なものと同レベルの場合を◎、やや良好なものと同レベルの場合を○、従来の山食パンの良好なものと比較してレベルが低い場合を△とした。また、食感、臭気については10人のパネラーによる5段階評価の結果の平均を求め、結果を表1に示した。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例2)
米粉(100メッシュパス100重量%で200メッシュパスの割合が75重量%)67.2重量部、グルテン12.8重量部(米粉/グルテン=85/15(重量比))、アルファ化米粉とアルファ化コーンスターチを20/2(重量比)にて含有する添加剤22重量部、砂糖8重量部、食塩2重量部、無塩バター6重量部、ベーカリークリーム4重量部、生イースト3重量部、イーストフード0.1重量部、se−600(液糖)1重量部を、パン生地混合機を使用して生地温度26〜28℃にて混合し、パン生地を製造した。得られたパン生地はフロアタイム(1次発酵時間)を設けることなく分割してベンチタイムを15分設けて休ませた。次いで成形を行なった後にホイロタイム(2次発酵時間)50分(ホイロ条件:温度38〜40℃、湿度75〜80%)を設けた後に焼成を行なって山食パンを製造した。焼成はオーブン(上火190℃、下火200℃)にて15〜30分行なった。
【0048】
(比較例2)
α化コーンスターチを使用せず、かつアルファ化米粉代えてα化小麦粉を使用した以外は実施例1と同様にして山食パンを製造した。
【0049】
【表2】

【0050】
(実施例3)
薄力粉100重量部に対してアルファ化米粉25重量部、アルファ化コーンスターチ2.5重量部を混合してケーキ用の穀粉組成物とする。ケーキ(バナナシフォンケーキ)は、以下の手順で製造した。
(1)卵黄96重量部にグラニュー糖53重量部を加え混合し、ホイッパーでやや白っぽくなるまで良くすり合わせる。
(2)上記(1)の混合物に水105重量部、サラダ油96重量部、バナナピューレ80重量部、及びコンパウンドバナナ26重量部を加えて混合して穀粉混合物とする。
(3)冷蔵庫で冷やしておいた卵白230重量部にグラニュー糖95重量部加え、撹拌してメレンゲとする。
(4)上記(2)の穀粉混合物と(3)のメレンゲを、ゴムべらを使用してメレンゲのだまが無くなるまで混合して生地とする。
(5)生地をシフォン型に流し込み、180℃のオーブンで30〜35分焼成する。
【0051】
(比較例3)
アルファ化米粉とアルファ化コーンスターチの合計27.5重量部を薄力粉とした以外は実施例3と同様にしてバナナシフォンケーキを製造した。
【0052】
(評価)
実施例3、比較例3のバナナシフォンケーキを比較すると、比較例3のケーキのほうがわずかに膨らみが良かったが、食感については、実施例4のケーキがしっとりした食感を有し、明らかに優れた商品価値を有するものであった。
【0053】
(実施例4)
実施例3のバナナシフォンケーキの製造における薄力粉に代えて米粉(100メッシュパス100重量%で200メッシュパスの割合が80重量%)を使用した以外は実施例3と同様にしてバナナシフォンケーキを製造した。
【0054】
(比較例4)
アルファ化米粉とアルファ化コーンスターチを全量米粉に変更し、アルファ化澱粉を一切使用しなかった以外は実施例3と同様にしてバナナシフォンケーキを製造した。
【0055】
(評価)
実施例4、比較例4のバナナシフォンケーキを比較すると、実施例4のケーキのほうが比較例4のケーキよりもしっとりした食感を有し、明らかに優れた商品価値を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルファ化米粉及び(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉を(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて含有するパン又は菓子用添加剤。
【請求項2】
(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉とを、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)として、(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部及び(c)原料穀粉70〜90重量部を含有するパン又は菓子用穀粉組成物。
【請求項3】
前記(c)原料穀粉が強力粉又は準強力粉である請求項2記載のパン用穀粉組成物。
【請求項4】
前記(c)原料穀粉が薄力粉又は米粉である請求項2に記載の菓子用穀粉組成物。
【請求項5】
前記(c)原料穀粉は米粉とグルテンとを米粉/グルテン=75/25〜85/15(重量比)にて含有するものである請求項2記載のパン用穀粉組成物。
【請求項6】
少なくとも穀粉、及び水成分、卵成分の少なくとも1種とを混合して生地を製造する混合工程、前記生地を成形して成形生地とする成形工程、及び前記成形生地を焼成してパン又は菓子とする焼成工程を有し、
前記穀粉は、(a)アルファ化米粉と(b)コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦粉澱粉及び馬鈴薯澱粉からなる群から選択される少なくとも一種の澱粉のアルファ化澱粉とを、(アルファ化米粉+アルファ化澱粉)として、(a)アルファ化米粉/(b)アルファ化澱粉=2/1〜20/1(重量比)にて10〜30重量部及び(c)原料穀粉70〜90重量部を含有するものであることを特徴とするパンの製造方法。

【公開番号】特開2010−263869(P2010−263869A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120006(P2009−120006)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【特許番号】特許第4418017号(P4418017)
【特許公報発行日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(503067502)株式会社福盛ドゥ (13)
【Fターム(参考)】