説明

パン用可塑性油脂組成物及びそれを用いたパン類の製造法

【課題】本発明の目的は低含油タイプパン類(フランスパン様、又はベーグル、もしくはチャバタ)において、本発明のパン用可塑性油脂組成物を使用することで、経時で小麦粉の風味が残り、食感も良いものが出来るパン用可塑性油脂組成物及びそのパン類の製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、添加物を使用していないで小麦粉本来の風味が出て、食感も良く、焼成して冷凍しても同様の効果の出るパン用可塑性油脂組成物及びそのパン類の製造法を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン用可塑性油脂組成物及びそれを用いたパン類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
パン類には様々な種類があるが俗にフランスパンのようなハードロールと称されるタイプや、ベーグルと呼ばれるタイプのように、生地に油脂を添加することなしに、あるいは添加してもオリーブオイルなどの液油を香味向上の目的で小麦粉100部に対し油脂として1〜5重量%添加で焼成されるタイプのものがある。(本願ではそういったパン類を低含油タイプパン類と称する。)
パンの原料としての油脂には「容量の増大」や「食感の改良」、「すだちの改良」、「クラム、クラストのソフト化」、「保存性の向上」、「生地機械耐性の向上」などの効果があることは広く認められている。(たとえば非特許文献1)
一方、特に低含油タイプパン類は焼成後時間が経つとともにその内層が硬く、パサパサした食感を示す(「老化」と称される)状態になり、原因としては乾燥とデンプンの老化とグルテンの固化が挙げられる。数日経過しても焼き立ての食感を持続することが要望される。
ただ、包装したパンにおいても老化は起こる点から見て、乾燥は老化の主要因ではなく、デンプンの老化(加熱によって消失・糊化したデンプンの結晶が加熱の停止に伴い結晶性が回復し組織の硬化、吸水性の低下、アミラーゼ抵抗性の増大などを引き起こすこと)と、グルテンの固化(焼成中に不可逆的に変性し保水力が著しく低下すると焼成後グルテンからデンプンに水分が移行することおこる)が主要因であるとされている(非特許文献2)。
【0003】
油脂を生地に練りこんだ場合、油脂はパン生地中でグルテン層とデンプン層との接触面に沿って延び拡がって分散しており、グルテンからデンプンへの水分移行を防止し、グルテンの固化を防止するためパンの老化を防止するとされている。(非特許文献3)
ただし、油脂は、パンの風味・食感や物性に及ぼす影響が大きく、単にパン生地に油脂を練りこむと、本来のフランスパンやベーグルらしさが損なわれてしまう。パンの老化を防ぐために、従来より様々な研究がなされてきた。
たとえば、食用油脂に化工澱粉、糖質分解酵素および食用酸化剤を含有してなることを特徴とする食用油脂組成物とその食用油脂組成物を含んでなる製パン用冷凍生地といった発明が為されている(特許文献1)。これにより、パンの食感、その老化等の品質を改善することができるとされている。
しかしながら、近年では製パン業界においても自然志向が高まり、この種の添加剤の使用が敬遠される傾向が強まってきた点もマイナス要因であった。
上記発明の食用乳化剤を除いた発明もためされている(特許文献2)。
だが、本来油脂を含んでいない、或いはごく少量しか使わない低含油タイプのパン類に対しては、油脂を用いることでの風味・食感や物性に対する影響に対する考慮がためされておらず、さらに老化の防止に一定の機能を持つことが期待できる化工澱粉、糖質分解酵素および食用乳化剤は、風味・食感や物性への影響が大きく、本願課題に対しては十分に効果を発揮できない。
【非特許文献1】田中康夫・松本博 編、「製パンの化学<II>製パン材料の科学」平成4年9月30日発行(106頁)
【非特許文献2】田中康夫・松本博 編、「製パンの化学<I>製パンプロセスの科学」平成3年3月15日発行(249〜253頁)
【非特許文献3】中江利昭 編、「改定版パン化学ノート」2004年年3月18日7刷発行(122頁)
【特許文献1】特開平09−094052号公報
【特許文献2】特開平09−233993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、本来油脂を用いない、あるいはごく少量しか使用しないタイプのパン類において、そのタイプのパン本来の小麦粉風味を残しつつも、油脂による生地の物性、風味・食感の改善を行うことが可能なパン類の製造法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以上の点に鑑み鋭意研究した結果、乳化剤、香料、着色料、酸化防止剤といった添加物の添加量を極力使用していない可塑性油脂組成物をもちいることで上記課題を解決することができるという知見を得、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は
(1)としては、配合が小麦粉100重量部に対し、水15〜80重量部及び可塑性油脂組成物3〜22重量部である事を特徴とし、且つ可塑性油脂組成物中に、食用油脂70〜97重量%及び醗酵乳3〜30重量%を含有することを特徴とするパン類。(2)としては、(1)記載のパン用可塑性油脂組成物が、醗酵乳に乳脂低融点画分を使用する請求項1記載のパン類である。(3)としては焼成冷凍する請求項1及び請求項2記載のパン類の製造法である。(4)としては、パン類がフランスパン様パンまたは、ベーグル、チャバタである請求項1記載のパン類の製造法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって、パン類が、フランスパン様もしくはベーグル、チャバタパンにおいて、その本来の小麦粉風味とパンの歯切れの食感を生かすため、可塑性油脂組成物を配合し冷凍しても焼きたて時の風味、食感を有することが出来る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明におけるパン類とは、前述の通り、パン類の組成に関しては本来油脂を使用しない、又はオリーブ油を少量添加する程度の油脂配合量の少ないタイプのパン類を指し、特に限定はされないが一例としては、フランスパン様などの低含油タイプパン類と称されるタイプやベーグル、チャバタと称されるタイプのパン類が挙げられる。本発明における低含油タイプのパン類の製法は特定に油脂組成物を用いること以外は特に限定はなく、従来の低含油タイプのパン類の配合や製法をそのまま用いることができる。
本願発明において従来のものと唯一違うのは、本来なら全く用いない、あるいはオリーブ油などの液油を少量用いていた程度のものであったものを、可塑性油脂組成物を用いる点にある。
可塑性油脂組成物は、通常乳化剤配合のマーガリン、ファットスプレッドでも良いが、パン類の本来の小麦粉風味を損なわない乳化剤なしの無添加のマーガリン、ファットスプレッドの方がパン類の小麦粉風味の出方やパン類の食感が良好である。
【0008】
醗酵種は小麦粉(準強力粉)20部、インスタントドライイースト0.05部、水20部を捏ね合わせ、室温(25℃)で4時間程度放置後、冷蔵庫に保管したものを醗酵種とする。インスタントドライイーストは醗酵時間にもよるが、醗酵種は小麦粉100部に対しインスタントドライイーストは、望ましくは0.03部〜0.08部範囲である。
【0009】
本捏生地は小麦粉(準強力粉)80部、インスタントドライイースト0.4部、食塩2部、モルトエキス0.5部、水55部をミキサー「マイティ30」(株式会社愛工舎製作所製)に投入、捏ね上げ温度24℃で、まず低速で5分、中低速4分、予め作成した油脂組成物Aを10部添加し、さらに低速で3分、中低速5分のミキシングを行ったものを発酵工程に供する。発酵工程は30分でパンチ(ガス抜き)をおこない、さらに60分後にもう一回パンチを行い、60分間発酵をした。
その後250gずつ分割し、24℃のホイロ(株式会社栄和製作所製)で20分間寝かした。焼成オーブン(株式会社栄和製作所製)で上火230℃下火230℃にて20分間加熱処理して得られる。インスタントドライイーストは小麦粉100部に対し望ましくは0.3部〜0.8部の範囲である。
【0010】
本発明の油脂原料としても特に限定はされないが、一例を挙げると、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独または混合油脂あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂(融点15〜40℃程度のもの)が挙げられる。
本発明における油中水型油脂組成物を製造するには、油脂成分と醗酵乳の混合乳化物をボテーター、パーフェクター又はコンビネーターのような従来公知の混捏機を用いて急冷捏和することによって得ることが出来る。
本発明においては、水性成分として醗酵乳を使用することができる。醗酵乳はパン類の歯切れを良くする等、食感を改良する効果を有する。
醗酵乳は乳固形分を含む水溶液を乳酸菌で醗酵させたものであれば何でもよく、例えばバターミルクパウダー10重量部と乳脂低融点画分12重量部と水78重量部をpH4.0〜5.7になるまで乳酸菌スターターを用いて乳酸醗酵させたものが適当である。醗酵乳の添加量は可塑性油脂組成物全量に対し3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%が適当である。
以上の如く、これまでのパン用可塑性油脂組成物には従来より蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよび酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド等各種有機酸モノグリセリドのような合成乳化剤が使用されるが、パンの風味が乳化剤臭がしたり、乳化剤が多いとソフトになるがネトツキのある食感となる。本発明においてはこのような合成乳化剤を使用することなく、小麦粉の風味が出て、ソフトで歯切れの良い食感を呈したパン類を製造することができる。特に、醗酵乳を配合した可塑性油脂組成物をパン生地に使用することにより、食感等品質の良好なパン類を製造することができる。
【0011】
本発明のパン用可塑性油脂組成物は、小麦粉100重量部に対して、3〜22重量部添加するのが好ましい。好ましくは4〜18重量部、最も好ましくは8〜12重量部である。1重量部未満の場合は十分な効果が得られず、また23重量部を超えると生地の伸展性が低下し、パン類のボリュームは小さくなる。このようにして本発明により、小麦粉風味が残り且つ歯切れが良い良好な食感を有するパン類を製造できる。
【0012】
醗酵乳の製造法としては、乳脂の低融点画分及びバターミルクパウダーを含む水中油型乳化物を乳酸醗酵し、pHを4.0〜5.7で20℃の範囲に調整する方法を採用するのであるが、水中油型乳化物は、通常、予備乳化、均質化、殺菌、冷却の工程を経て、乳酸醗酵に供される。乳酸醗酵は、乳酸菌スターターを用い、通常15〜45℃でpHが4.0〜5.7、好ましくは4.6〜5.0になるまで行う。本発明の乳酸醗酵に用いられる乳酸菌スターターは、醗酵乳製品の良好な風味及び香気成分といわれているジアセチル、アセとイン、酪酸等を生成するものが好ましい。代表的には、ラクトコッカス属の単独菌、あるいはラクトバチルス属の単独菌、ロイコノストック属の単独菌、ストレプトコッカス属の単独菌、あるいはそれらを数種組み合わせた混合物菌が例示出来る。乳酸醗酵で一定の風味を醸成した後は有機酸を用いてpHを調整することもできる。
【0013】
乳脂の低融点画分とは、牛乳やバターから得られた油脂即ち乳脂を分別により融点の高い部分と低い部分に分けた低い部分であって融点として10〜25℃の範囲の物が好ましい。油脂を分別する方法として、乾式法。乳化分別法、溶剤分別法の何れかの方法も採用することが出来る。コスト、品質の点から乾式法が好ましく、代表的な方法としてTirtiaux法が例示できる。乳脂の低融点画分はオレイン画分ともいわれている。
【0014】
バターミルクパウダーとは牛乳からバターを製造する際に副生するバターミルクであり、このバターミルクを濃縮、乾燥して粉末化したバターミルクパウダーやバターミルクパウダーを水等に溶解・分散されたバターミルクパウダー液を含むものである。そしてバターミルクパウダーは一般的に市販されているものを使用できる。
【0015】
モルトエキスとは麦芽抽出物とも呼ばれ、天然の一般食品に属するものであり、大麦、小麦などの麦に適度な温湿度および酵素を与え、発芽させた麦粒を粉砕したものをベースとし、多少の澱粉、適当な水量を加え、それを酵素糖化し、糖化液を濾過、濃縮したものをいい、形状は液状であっても乾燥粉末状であっても良い。本発明において、糖源として使用するモルトエキスは製菓、製パン用に市販されている一般的なBrix(ブリックス)76〜84のものが使用され、Brix80のものが好ましいが適宜選択して使用すれば良い。さらに、モルトエキスの製造時の濃縮温度により色相に差異が発生し、色相が淡いタイプ、濃いタイプ、中間タイプなどができるが適宜選択し使用すればよい。また、モルトエキス、モルトエキスパウダー、モルトフラワーなどが挙げられ適宜選択し使用できる。本発明では小麦粉又はその他の穀類100重量部に対して、糖源としてモルトエキスのみを使用することにあり、0.3〜0.8重量部を使用することが好ましい。モルトエキスを0.2重量部未満では、十分な効果が得られず、1重量部を越えると風味に悪影響を与えと共に老化の早いパンになる。
【0016】
インスタントドライイーストは小麦粉100重量部に対して、インスタントドライイースト添加量は0.3〜0.8重量部となる。
インスタントドライイースト添加量が少な過ぎると、パン生地が充分に膨らまず、消化に悪いパンが出来てしまう。そして、製品としてのパン類の味が良くない。
反対に、インスタントドライイースト添加量が多過ぎると、発酵臭が出てしまい、パン類の味が損なわれてしまう。またイーストは生イーストや粒状の冷凍イーストであっても良い。
【実施例】
【0017】
以下に本発明の実施例を示し本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実 施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は、いずれも重量基準を意味す る。
本願発明の方法で焼成したパンを室温23℃に保管後経時で当日、2日目、3日目の風味、食感評価と焼成したパンを冷凍保存(−15℃)14日後に室温にて解凍し、当日、2日目、3日目の風味、食感評価を行った。
風味
◎:焼き立て直後の小麦粉の風味が発現している。
○:小麦粉の良い風味が発現している。
△:油脂臭・乳化剤臭に阻害され、パン本来の小麦粉の良い風味をやや感じる。
×:油脂臭・乳化剤臭を強く感じ、パン本来の小麦粉の良い風味がしない。
食感
◎:焼き立て直後の歯切れ感の良さが維持されている。
○:歯切れの良さが維持されている。
△:やや硬く、引きの強い食感が発現しているが、充分に市場性が認められる。
×:経時に従い硬く引きの強い食感が発現する。
【0018】
実施例1
以下の通り、チャバタと称されるパン類を製造した。
[可塑性油脂組成物Aの作成]
パン用可塑性油脂組成物Aを作成する。
大豆硬化油(融点42℃)13重量%、大豆硬化油(融点34℃)49重量%、大豆油16%、乳脂肪2重量%からなる油脂成分80部に対し、バターミルクパウダー10重量%と乳脂肪12重量%、水78重量%をpH4.5になるまで予備乳化、均質化、殺菌、冷却の工程を経て、乳酸醗酵させた醗酵乳20部に食塩0.1部を溶解し加え、40℃でホモミキサーにて混合乳化させた後、コンビネーターで殺菌後急冷捏和して可塑性油脂組成物Aを得た。
[パン生地の作成・焼成]
続いて、パン生地を作成する。パン生地はハードロール系のパンでよく用いられるポーリッシュ法を用いる。
まず醗酵種を作成する。小麦粉(商品名:テロワール 日清製粉株式会社製 準強力粉)20部、インスタントドライイースト(商品名:safインスタントドライイースト(赤) フランス S.I.Lesaffre社製)0.05部、水20部を捏ね合わせ、室温(25℃)で4時間程度放置後、冷蔵庫に保管したものを発酵種とする。
続いて本捏工程は、まず、小麦粉(商品名:テロワール 日清製粉株式会社製 準強力粉)80部インスタントドライイースト0.4部、食塩2部、モルトエキス(商品名:ユーロモルト 日仏商事株式会社)0.5部、水55部をミキサー「マイティ30」(株式会社愛工舎製作所製)に投入、捏ね上げ温度24℃で、まず低速で5分、中低速4分、予め作成した可塑性油脂組成物Aを10部添加し、さらに低速で3分、中低速5分のミキシングを行ったものを発酵工程に供する。発酵工程は30分でパンチ(ガス抜き)をおこない、さらに60分後にもう一回パンチを行い、60分間発酵した。
その後250gずつ分割し、24℃のホイロ(株式会社栄和製作所製)で20分間寝かした。焼成オーブン(株式会社栄和製作所製)で上火230℃、下火230℃にて20分間加熱処理して得られたパンを実施例1とした。保存したパンの風味3日後でも1日目に良く出ていた小麦粉風味が残り、風味、食感の良いパンが出来た。これらの結果を表1に纏めた。
【0019】
実施例2、実施例3、実施例4
可塑性油脂組成物Aを15部、20部、5部添加する以外はすべて実施例1と同様の配合・操作で得られたパンを順に実施例2、実施例3、実施例4とした。これらの結果を表1に纏めた。
実施例2
表1に示した配合に従って、実施例1と同様な方法により実施例2のパンを得た。実施例1と同様に評価しこれらを表1に纏めた。実施例1より可塑性油脂組成物Aが多い分、パン自体ソフトで風味として小麦粉風味が残ったパンになった。これらの結果を表1に纏めた
実施例3
表1に示した配合に従って、実施例1と同様な方法により実施例3のパンを得た。実施例1と同様に評価しこれらを表1に纏めた。実施例1より可塑性油脂組成物Aが多い分、パン自体ソフトで、風味として小麦粉風味が残ったパンになった。これらの結果を表1に纏めた。
実施例4
表1に示した配合に従って、実施例1と同様な方法により実施例4のパンを得た。実施例1と同様に評価しこれらを表1に纏めた。実施例1より可塑性油脂組成物Aが少ない分、パン自体硬くなった。これらの結果を表1に纏めた。
【0020】
比較例1
表1に示した配合に従って油脂組成物をまったく添加しない以外はすべて実施例1と同様の配合・操作で得られたパンを比較例1とした。可塑性油脂組成物Aがない分経時で2日目、3日目になるにつれ食感が硬く、小麦粉風味がしなかった。これらの結果を表1に纏めた。
比較例2
表1に示した配合に従って、実施例1と同様の評価しこれらを表1に纏めた。経時に従い2日目、3日目で食感が硬く、小麦粉風味がしないパンになった。これらの結果を表1に纏めた。
[可塑性油脂組成物B]
大豆硬化油(融点42℃)13重量%、大豆硬化油(融点34℃)49重量%、大豆油16%、乳脂肪2重量%からなる油脂成分83部に対し、乳化剤グリセリン脂肪酸エステル0.3重量%、レシチン0.2重量%に水相部17部(脱脂粉乳5重量%と水95重量%)、に食塩0.1部を溶解し加え、40℃でホモミキサーにて混合乳化させた後、コンビネーターで殺菌後急冷捏和して可塑性油脂組成物Bを得た。表1に示した配合に従って、実施例1と同様な方法により比較例2のパンを得た。実施例1と同様に評価しこれらを表1に纏めた。
【0021】
比較例3
表1に示した配合に従って可塑性油脂組成物の代わりに市販のオリーブオイルを10重量%配合しすべて実施例1と同様のパンの製法で得られたパンを比較例3とした。油脂がオリーブ油ゆえオリーブ油の味が出すぎ2日目、3日目で油臭を感じた。またパン自体もボリュームもなく扁平状のパンになった。これらの結果を表1に纏めた。
【0022】
【表1】

【0023】
本願発明の方法で焼成したパンを室温23℃に保管後余熱をなくしすぐに冷凍保存(−15℃)し、14日後に室温にて解凍して、当日、2日目、3日目の風味、食感評価を行った。
実施例1は実施例5、実施例2は実施例6、実施例3は実施例7、実施例4は実施例8、比較例1は比較例4、比較例2は比較例5、比較例3は比較例5に相当し実施例1〜4、比較例1〜3は、室温23℃保管での1日目、2日目。3日目のパンの官能評価であり、実施例5〜8、比較例4〜6は、室温23℃に保管後余熱をなくしすぐに冷凍保存(−15℃)し、14日後に室温にて解凍して、当日、2日目、3日目の風味、食感評価を行った。これらの結果を表2に纏めた。焼成したパンを冷凍(−15℃)して14日間保存して解凍したパンは経時で、通常の焼成によるパンと同様に小麦粉風味があり、出来立てのパンの食感を有したパンが出来あがった。
【0024】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、低含油タイプパン類(フランス様パン又は、ベーグル、もしくはチャバタ)において、その本来の小麦粉風味を生かしつつ、食感の良いパン用可塑性油脂組成物及びパン類の製造法に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合が小麦粉100重量部に対し、水15〜80重量部及び可塑性油脂組成物3〜22重量部である事を特徴とし、且つ可塑性油脂組成物中に、食用油脂70〜97重量%及び醗酵乳3〜30重量%を含有することを特徴とするパン類。
【請求項2】
醗酵乳に乳脂低融点画分を使用する請求項1記載のパン類。
【請求項3】
焼成冷凍する請求項1及び請求項2記載のパン類の製造法。
【請求項4】
パン類がフランスパン様または、ベーグルもしくはチャバタである請求項1記載のパン類の製造法。