説明

パン類生地

【課題】フレンチトーストのような卵黄風味としっとりした食感を有するパン類を、卵黄類を含むバッター液を用いることなく、簡単に得ることができるパン類生地を提供すること。
【解決手段】穀粉類を主体とする生地原料に、上記穀粉類100質量部に対し、卵黄類を10〜50質量部、α結晶ゲル構造の乳化剤を0.05〜5質量部混練してなることを特徴とするパン類生地。特に、好ましくは、卵黄類を中種生地に、α結晶ゲル構造の乳化剤を本捏生地にそれぞれ配合する中種法により得られたパン類生地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成するだけで、フレンチトーストのような卵黄風味としっとりした食感を有するパン類を得ることができる、パン類生地に関する。
【背景技術】
【0002】
卵黄を多く含有するパン類として、フレンチトーストが挙げられる。
フレンチトーストとは、特に定義はないが、老化して硬くなったパンを、再生する一方法として古くから食されてきたもので、パン全体に卵黄類を含むバッター液を染み込ませ後に加熱調理し、しっとりと柔らかくさせた加工食品である。
【0003】
フレンチトーストの一般的な製法は、卵黄類を含むバッター液に、厚さ10mm〜20mm程度にスライスした食パン、あるいはフランスパンを20〜60分浸漬し、さらに必要に応じ、砂糖やシナモンを振り掛け、これをフライパン、あるいはオーブンで焼成する、というものである。
【0004】
ただし、この方法は手間と時間がかかるため、家庭内のお菓子や小規模の生産の場合は問題ないが、大規模な工場生産には不適である。
また、バッター液の主要原料である卵黄類は大変保存性の悪いものであるため、使用の度に割卵や、冷凍卵の解凍などの作業が必要であり、また、長時間バッター液を保存しておいておくことも不可能であるため、大変作業性が悪い。
【0005】
さらに、フレンチトーストは、液状成分を大量に染み込んで重量が増加している上に、パンの物性を失っているため、手にとって食すには保型性が足りず、よって、サンドイッチにしたり、パンの売り場で販売するには不適当であった。
【0006】
このような問題点を解決し、簡便にフレンチトーストを得るためにさまざまな検討が行われ、紹介されてきた。
【0007】
たとえば、卵類、乳類を含有し、熱により融解するシート状卵加工食品をパンに積載し、焼成する方法(たとえば特許文献1参照)、卵黄成分を固形分換算で2〜15%含むスラリーをパンの厚みに対し2/5〜4/5吸収してなり、かつ、該スラリーを吸収していない部分が1/5〜3/5であるフレンチトースト(たとえば特許文献2参照)、油脂中に糖類、乾燥卵黄及び粉乳を分散させた油脂食品をパンに塗布してからオーブントースター等で焼成する方法(たとえば特許文献3参照)などの提案がなされてきた。
【0008】
卵液に増粘多糖類を添加してシート状加工食品とする方法は、シート状加工食品が冷蔵保存、もしくは常温で保存する場合に、卵液がシート状を保つためには多量の増粘多糖類を含有させることが必要であり、そのため、パンへの染み込みが悪かったり、得られたフレンチトーストの食感が劣ったものになってしまうおそれがある。シート状加工食品が冷凍品である場合はこの問題はないが、上記同様、冷凍工程を経るために全体としての製造時間が長く煩雑になるという問題が残る。
【0009】
また、卵黄成分を固形分換算で2〜15%含むスラリーをパンの厚みに対し2/5〜4/5吸収してなり、かつ、該スラリーを吸収していない部分が1/5〜3/5であるフレンチトーストの製造方法は、卵黄液を用い、染み込ませるバッター液量をある程度制限することにより大量生産性と卵味の風味性のバランスをとっているが、卵黄類が染み込まない層を必ず残さねばならない点において、製造の際に大変気を使う必要がある。また、生卵黄を大量に用いる点において従来のフレンチトースト同様、卵黄類の保存性の問題は残る。
【0010】
また、油脂中に糖類、乾燥卵黄及び粉乳を分散させた油脂食品をパンに塗布してからオーブントースター等で焼成する方法では、べたつきの激しい食感となってしまう問題があった。
【特許文献1】特開平11−206343号公報
【特許文献2】特開平11−215947号公報
【特許文献3】特開2003−180245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、フレンチトーストのような卵黄風味としっとりした食感を有するパン類を、卵黄類を含むバッター液を用いることなく、簡単に得ることができるパン類生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、各種検討を行なった結果、卵黄類を焼成後のパン類に含浸させるのではなく、パン生地に直接配合し、且つ、特定の結晶型の乳化剤を同時に配合したパン生地を焼成すると、あたかも焼成後のパンに卵黄を含浸させてから焼成したかのような内相と食感を呈することを知見した。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、穀粉類を主体とする生地原料に、上記穀粉類100質量部に対し、卵黄類を10〜50質量部、α結晶ゲル構造の乳化剤を0.05〜5質量部混練してなることを特徴とするパン類生地を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、卵黄類を含むバッター液を用いることなく、フレンチトーストのような卵黄風味としっとりした食感を有するパン類を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のパン類生地について詳述する。
上記のパン類とは、食パン・バラエティブレッド、菓子パン、フランスパン、ライ麦パン、デニッシュ・ペストリー、イングリッシュマフィン、グリッシーニ、コーヒーケーキ、ブリオッシュ、シュトーレン、パネトーネ、クロワッサン、イーストパイ、ピタ、ナン、マフィン、蒸しパン、イーストドーナツ、ワッフル、パイ、スナックなどがあげられ、なかでも食パンが好ましい。
【0016】
本発明のパン類生地で用いる穀粉類としては、特に限定されるものではないが、小麦粉、薄力粉、中力粉、強力粉、小麦胚芽、全粒粉、小麦ふすま、デュラム粉、大麦粉、米粉、ライ麦粉、ライ麦全粒粉、大豆粉、ハトムギ粉等をあげることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いるのがよい。本発明では、好ましくは強力粉を用いるのがよい。
【0017】
本発明で用いる卵黄類としては、全卵、卵黄、加糖全卵、加糖卵黄、乾燥全卵、乾燥卵黄、凍結全卵、凍結卵黄凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄、酵素処理全卵、酵素処理卵黄などの、卵黄成分を含有する食品素材を用いることができ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明における卵黄類の添加量は、パン類に使用する全穀粉類100質量部に対し、10〜50質量部、好ましくは10〜35質量部である。10質量部未満であると、卵風味を付与することができず、また、50質量部を超えると、得られるパン類生地がべたつき、分割・丸め、さらには成形時に扱いにくくなり、さらには得られるパン類がべたついた食感になってしまう。
【0019】
次に、本発明で用いるα結晶ゲル構造の乳化剤について説明する。
【0020】
上記のα結晶ゲル構造の乳化剤は、水と乳化剤を共存させ、温度をあげていき、ゲル−液晶転移温度より高い温度とし、液晶構造の乳化剤を形成させる。そしてこの液晶構造の乳化剤をゲル−液晶転移温度よりも低い温度に冷却することにより、水を含んだままのα結晶ゲル構造の乳化剤を得ることができる。
【0021】
本発明のパン類生地において、α結晶ゲル構造の乳化剤を配合することが必要である。パン類生地にα結晶ゲル構造の乳化剤を配合しないと、本発明の効果は得られない。
【0022】
上記のα結晶ゲル構造の乳化剤の配合量は、パン類に使用する全穀粉類100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜3質量部、最も好ましくは0.2〜1質量部である。
【0023】
α結晶ゲル構造となる乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、HLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウムがあげられ、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いる。これらの中では、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、HLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの中から選ばれた1種または2種以上を用いるのが好ましい。さらに好ましくはモノグリセリド、HLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルの中から選ばれた1種または2種以上を用いるのがよく、最も好ましくはモノグリセリドとHLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用するのがよい。
【0024】
上記のモノグリセリドは、グリセリンと脂肪酸とのエステルであり、市販されている構成脂肪酸の炭素数が12〜24の飽和脂肪酸からなるものが好ましい。
上記の有機酸モノグリセリドの有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、ジアセチル酒石酸、コハク酸、酒石酸などがあげられる。
【0025】
上記のHLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンの重合度が平均で6以下のポリグリセリンと、炭素数12〜24の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸とのエステルであるのが好ましい。具体的には、テトラグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンジステアレート、テトラグリセリントリステアレート、テトラグリセリンテトラステアレート、テトラグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンセスキステアレート、ヘキサグリセリンジステアレート、ヘキサグリセリントリステアレート、ヘキサグリセリンテトラステアレート、ヘキサグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンヘキサステアレート、テトラグリセリンモノオレエート、テトラグリセリンジオレエート、テトラグリセリントリオレエート、テトラグリセリンテトラオレエート、テトラグリセリンペンタオレエート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンセスキオレエート、ヘキサグリセリンジオレエート、ヘキサグリセリントリオレエート、ヘキサグリセリンテトラオレエート、ヘキサグリセリンペンタオレエート、ヘキサグリセリンヘキサオレエートが挙げられる。一般に、ポリグリセリンは単一の組成ではなく、重合度の異なったポリグリセリンの混合物であるので、その重合度は水酸基価の測定値等から算出された平均重合度によって表される。理論的にはグリセリンの重合度が平均で6以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、水酸基価が972以上になるように重合された平均重合度6以下のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである。
【0026】
モノグリセリドとHLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを併用する場合、モノグリセライドとHLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとの質量比率は、特に制限されないが、好ましくは(モノグリセライド)/(HLB7以下のポリグリセリン脂肪酸エステル)の比が80/20〜20/80、更に好ましくは60/40〜40/60である。
【0027】
本発明において、α結晶ゲル構造の乳化剤は、α結晶ゲル構造の乳化剤を含有し、油脂を含有しない起泡剤(以下起泡剤という)、またはα結晶ゲル構造の乳化剤を含有し、油脂を含有する起泡性乳化油脂(以下起泡性乳化油脂という)として、パン類生地に添加するのが好ましく、さらに好ましくは起泡剤としてパン類生地に添加するのがよい。
【0028】
上記の起泡剤または起泡性乳化油脂の配合は次の通りである。
【0029】
上記の起泡剤または起泡剤乳化油脂中に配合するα結晶ゲル構造となる乳化剤としては上記で説明したものを用いることができ、その配合量は好ましくは3〜35質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、最も好ましくは7〜27質量%である。
【0030】
また上記の起泡剤または起泡性乳化油脂では、重合度10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。重合度10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンの重合度が平均で10以上のポリグリセリンと、炭素数12〜24の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸とのエステルで、冷水に均一に溶解又は均一に分散するものが好ましい。この様なポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、親水性の強いモノエステルが適しており、特にデカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレート、デカグリセリンジステアレート、デカグリセリンジオレエートとして市販されているものが好ましく、これらの一種又は二種以上を用いることができる。一般に、ポリグリセリンは単一の組成ではなく、重合度の異なったポリグリセリンの混合物であるので、その重合度は水酸基価の測定値等から算出された平均重合度によって表される。理論的にはグリセリンの重合度が平均で10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとは、水酸基価が888以下になるように重合された平均重合度10以上のポリグリセリンと脂肪酸とのエステルである。
【0031】
上記の起泡剤または起泡性乳化油脂において、重合度10以上のポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.7〜8質量%、最も好ましくは1〜6質量%である。
【0032】
上記の起泡剤または起泡性乳化油脂において、水、エチルアルコール、多価アルコール類、糖類中から選ばれた1種又は2種以上を用いてもよい。
【0033】
上記の多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコールがあげられる。
上記の糖類としては、例えば上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、還元水飴、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、はちみつ等が挙げられ、これらの中から選ばれた1 種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
上記の起泡剤または起泡性乳化油脂において、水、エチルアルコール、多価アルコール類、糖類中から選ばれた1種又は2種以上の配合量の合計で、好ましくは40〜96.5質量%、さらに好ましくは50〜94質量%、最も好ましくは60〜89質量%である。
【0035】
上記の起泡性乳化油脂において、油脂を配合することができ、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油、バター、バターオイル等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種または2種以上の油脂を用いることができ、これらの中では、常温で液体の植物性油脂を用いるのが好ましい。
【0036】
上記の起泡性乳化油脂における油脂の配合量は、好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0037】
さらに上記の起泡剤または起泡性乳化油脂において、必要により、着色料、保存料、防カビ剤、酸化防止剤、増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料、pH調整剤等を適宜加えても良い。また、必要に応じて、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びリン脂質などの乳化剤を用いても良い。
【0038】
上記の起泡剤または起泡性乳化油脂は、適当な温度に調節した各原料を適当な順序で加えて、加熱し、均一に混合後、適当な温度に冷却することにより製造できる。原料混合時の加熱温度は、使用する油脂や乳化剤その他原料の融点以上の温度(例えば65℃)が好ましく、一般的には60〜90℃の範囲が好適である。必要ならば、加熱殺菌や、急冷を行っても良い。加熱殺菌を行う場合には、80〜150℃で1秒〜2分程度保持すれば良い。また、原料を均一に混合するために、ホモジナイザー等の均質化機を用いても良い。
原料の添加順序によっては製造時に分離したり、固化する等の支障をきたす場合もあるが、混合機、乳化機、加熱温度、加熱時間、冷却温度等の条件を適当に選ぶことによって、均質な起泡剤または起泡性乳化油脂を得ることができる。この様にして得られた起泡剤または起泡性乳化油脂は、各原料の配合割合にもよるが、一般に粘稠な液体状〜ペースト状〜ゼリー状〜ゲル状乃至固体状である。
【0039】
本発明のパン類生地において、上記の起泡剤または起泡性乳化油脂の配合量は、パン類生地で用いる穀粉類100質量部に対して、好ましくは0.4〜42質量部、さらに好ましくは0.8〜25質量部、最も好ましくは1.6〜8質量部である。
【0040】
本発明のパン類生地では、上記穀粉類、卵黄類、及び、α結晶ゲル構造の乳化剤以外のその他の成分を配合することができる。
【0041】
上記その他の成分としては、コーンスターチ・ワキシーコーンスターチ・タピオカ澱粉・馬鈴薯澱粉・甘藷澱粉・小麦澱粉・米澱粉等の澱粉類、澱粉類を酵素処理、酸処理、アルカリ処理、エステル化、リン酸架橋化、加熱、湿熱等の物理的、化学的処理を行った化工澱粉類、澱粉類を水に溶解し易いように予め加熱処理により糊化させた糊化澱粉類、マーガリン・ショートニング・バター・液状油等の油脂類、カゼイン・ホエー・クリーム・脱脂粉乳・発酵乳・牛乳・全脂粉乳・ヨーグルト・練乳・加糖練乳・全脂練乳・脱脂練乳・濃縮乳・純生クリーム・ホイップ用クリーム(コンパウンドクリーム)・植物性ホイップ用クリーム等の乳や乳製品、上白糖・グラニュー糖・粉糖・ブドウ糖・果糖・蔗糖・麦芽糖・乳糖・酵素糖化水飴・還元澱粉糖化物・異性化液糖・蔗糖結合水飴・はちみつ・オリゴ糖・還元糖ポリデキストロース・還元乳糖・還元水飴・ソルビトール・トレハロース・キシロース・キシリトール・マルチトール・エリスリトール・マンニトール・フラクトオリゴ糖・大豆オリゴ糖・ガラクトオリゴ糖・乳果オリゴ糖・ラフィノース・ラクチュロース・パラチノースオリゴ糖・ステビア・アスパルテーム・アセスルファムカリウム等の糖類や甘味料、キサンタンガム・アルギン酸ナトリウム・グアーガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・アラビアガム・ペクチン・プルラン・タマリンドシードガム・結晶セルロース・カルボキシメチルセルロース・メチルセルロース・寒天・グルコマンナン・ゼラチン・ファーセルラン・タラガム・カラヤガム・トラガントガム・ジェランガム・大豆多糖類等の増粘安定剤、βカロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、呈味剤、イースト菌、食塩、デキストリン、アルコール類、無機塩類、ベーキングパウダー、イーストフード、生地改良剤、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類・肉類・魚介類等の食品素材、コンソメ・ブイヨン等の植物及び動物エキス、食品添加物等を挙げることができ、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
【0042】
本発明のパン類生地は、上記穀粉類100質量部に対し、上記卵黄類を10〜50質量部、及び、上記α結晶ゲル構造の乳化剤を0.005〜5質量部、さらに必要に応じその他の成分を添加し、混練してなるものである。
【0043】
なお、パン類生地の製造方法については、上記卵黄類を10〜50質量部、上記α結晶ゲル構造の乳化剤を0.005〜5質量部配合する以外は、一般のパン類の製造方法と同様でよく、ストレート法、中種法、湯種法、液種法、など公知の製パン法を求めるパン類の種類に応じ、適宜選択することができる。
【0044】
なお、本発明では、上記パン類生地の製造方法の中でも、特に、中種法であると、卵黄類を多く含有するにも係わらず、よりしっとりとして老化しづらいパン類を得ることができるため好ましい。
【0045】
さらに、中種法においては、卵黄類は本捏時に添加するよりも中種生地の製造時に添加することが好ましく、また、α結晶ゲル構造の乳化剤は中種生地に配合するよりも本捏生地に添加することが好ましい。すなわち、本発明では、卵黄類は中種生地の製造時に添加し、且つ、α結晶ゲル構造の乳化剤は本捏生地に添加することが好ましい。
最後に本発明のパン類について述べる。
【0046】
本発明のパン類は、上記本発明のパン類生地を焼成して得られるものであり、良好な卵黄風味を有し、卵黄を多く含有するにも係わらずソフトでしっとりした食感を呈する、という特徴を有する。
【0047】
なお、焼成する機器や時間、温度については、パン生地の種類により適宜選択可能である。
【実施例】
【0048】
(起泡剤A)
α結晶ゲル構造となる乳化剤であるグリセリンモノステアレート12質量%、テトラグリセリンモノステアレート4質量%、ヘキサグリセリントリステアレート4質量%を混合し、65℃に調温し、油相とした。一方、水44質量%、エチルアルコール10質量%、70%ソルビトール水溶液20質量%、デカグリセリンモノオレート6質量%を混合し、65℃に調温し、水相とした。そして上記の65℃に調温した油相と65℃に調温した水相を、65℃に保持しつつ混合、均質化後、室温に冷却し、起泡剤Aを製造した。
【0049】
(起泡性乳化油脂A)
ナタネ油20質量%に、α結晶ゲル構造となる乳化剤であるグリセリンモノステアレート4質量%、テトラグリセリンモノステアレート3質量%、ヘキサグリセリンモノステアレート1質量%、ヘキサグリセリンセスキステアレート1質量%を添加、混合し、65℃に調温し、油相とした。一方、水21.5質量%、70%ソルビトール水溶液46質量%、デカグリセリンモノステアレート3.5質量%を混合し、65℃に調温し、水相とした。そして上記の65℃に調温した油相と65℃に調温した水相を、65℃に保持しつつ混合、均質化後、室温に冷却し、起泡性乳化油脂Aを製造した。
【0050】
〔実施例1〕
強力粉70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部、卵黄20質量部、水26質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速2分、中速2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵をおこなった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉30質量部、食塩1.2質量部、上白糖20質量部、起泡剤A2質量部、3倍濃縮乳10質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖5質量部、バニラオイル0.2質量部を添加し、低速3分、中速3分ミキシングした。ここで無塩バター10質量部、練込油脂(マーガリン)5質量部を投入し、フックを使用し、低速3分、中速2分、高速1分ミキシングをおこない、本発明のパン類生地である、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを30分とった後、380gに分割・丸目をおこなった。分割・丸目時の生地はべたつかず作業性は良好であった。次いでベンチタイムを20分とった後、モルダーを使用し、ワンローフ成形し、ワンロ―フ型に入れ、38℃、相対湿度85%、40分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成し、本発明のパン類である、食パンを得た。得られた食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、良好な卵黄風味を有し、卵黄を多く含有するにも係わらずソフトでしっとりした食感であった。
【0051】
〔実施例2〕
実施例1では本捏時に添加した起泡剤Aを、中種生地に配合した以外は実施例1と同様の配合・製法で、実施例2のパン類生地およびパン類を得た。
得られた食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、良好な卵黄風味を有し、卵黄を多く含有するにも係わらずソフトでしっとりした食感であったが、得られた食パン生地がややべたついていたため、分割・丸め、及び、成形時にやや扱いづらいものであった。
【0052】
〔実施例3〕
実施例1では中種生地に添加した卵黄を本捏生地に配合した以外は実施例1と同様の配合・製法で、実施例3のパン類生地およびパン類を得た。
得られた食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、良好な卵黄風味を有し、卵黄を多く含有するにも係わらずソフトでしっとりした食感であったが、得られた食パン生地がややべたついていたため、分割・丸め、及び、成形時にやや扱いづらいものであった。
【0053】
〔実施例4〕
実施例1で使用した起泡剤A2質量部を、起泡性乳化油脂A6質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合・製法で、実施例4のパン類生地およびパン類を得た。
得られた食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、良好な卵黄を有し、卵黄を多く含有するにも係わらずソフトでしっとりした食感であったが実施例1で得られた食パンに比べ、ややソフト感が弱いものであった。
【0054】
〔比較例1〕
実施例1で使用した起泡剤A2質量部を無添加とした以外は、実施例1と同様の配合・製法で、比較例1のパン類生地およびパン類を得た。
得られた食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、良好な卵黄風味を有していたが、べたついた食感であった。
【0055】
〔比較例2〕
実施例3で使用した起泡剤A2質量部を無添加とした以外は、実施例3と同様の配合・製法で、比較例2のパン類生地およびパン類を得た。
得られた食パンを袋に詰めて25℃で3日静置したのち、厚さ15mmにスライスし、試食したところ、良好な卵黄風味を有していたが、比較例1の食パンよりもさらにべたつきが強い不良な食感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉類を主体とする生地原料に、上記穀粉類100質量部に対し、卵黄類を10〜50質量部、α結晶ゲル構造の乳化剤を0.05〜5質量部混練してなることを特徴とするパン類生地。
【請求項2】
中種製パン法によって得られたものであることを特徴とする請求項1記載のパン類生地。
【請求項3】
卵黄類を中種生地に、α結晶ゲル構造の乳化剤を本捏生地にそれぞれ配合したことを特徴とする請求項2記載のパン類生地。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のパン類生地を焼成して得られたパン類。