パーキンソン病を治療するための組成物
本発明は、アポモルフィンの投与による中枢神経系の疾患及び障害の治療の改善に関する。特に、投与は肺内吸入による。本発明は、パーキンソン病を含む多くの状態の治療を改善する手段を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン病を含む中枢神経系の疾患及び障害の治療を改善する、アポモルフィンを含む組成物に関する。特に、アポモルフィンは、肺内吸入により投与されるものである。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病
パーキンソン病は、1817年に英国で、James Parkinson博士により初めて説明された。該疾患は、1,000人当たり約2人が罹患し、50歳を超える人々において発生することが最も多く、男女共に罹患する。該疾患は、老齢者の最も一般的な神経障害の1つであり、若齢成人において発生する場合もある。場合によって、若齢者が罹患する場合はとりわけ、パーキンソン病は家族内で発生する。老齢で発生する症例の大半は、原因が知られていない。
【0003】
個体が経験する症状の詳細は多様であるが、手、腕、足、顎、及び顔面の振戦;四肢及び体幹の硬直または硬化;動作緩慢(bradykinesiaまたはslowness of movement);姿勢の不安定またはバランス及び協調動作の障害のほか、重度の抑鬱も含み得る。治療しないと、パーキンソン病は、すべての脳機能の全般的な劣化を伴うことが多い全面的な機能障害へと進行し、早期の死亡をもたらし得る。
【0004】
パーキンソン病の症状は、脳幹上部の黒質におけるドーパミン分泌(ドーパミン作動性)細胞の喪失から生じる。これらの細胞を失う正確な理由は知られていないが、遺伝的因子及び環境的因子が重要であることが知られている。
【0005】
パーキンソン病の治癒は知られていない。治療の目標は症状をコントロールすることであり、薬剤は、主に脳内におけるドーパミンレベルを上昇させることにより、このコントロールを行うことを目的とする。最も広く用いられる治療は、各種の形態におけるL-ドーパである。しかし、この治療は欠点が多く、その最も重大なものは、フィードバックの阻害により、L-ドーパが、L-ドーパ(したがって、また、ドーパミン)の内因的形成の低下を結果としてもたらし、このため、最終的に、逆効果となることである。時間経過と共に、患者は、運動性の低下状態である「オフ」時間と、薬剤が作用して症状がコントロールされる「オン」時間または「オン」期との間で振動する運動変動を発生させ始める。パーキンソン病患者の40%は発症から4〜6年以内に運動変動を経験し、その後毎年10パーセントずつ増加する。
【0006】
平均的なパーキンソン病患者は、毎日2〜3時間の「オフ時間」を経験する。これらは、筆記時の問題、全般的な動作緩慢、嗅覚の喪失、活力の喪失、筋肉の硬化、歩行時の問題、睡眠障害、バランス困難、椅子からの起立困難、ならびに感覚症状(例えば、疼痛、疲労、及び運動性不穏状態)、自律神経症状(例えば、尿失禁及び多汗)、及び精神障害(例えば、抑鬱、不安、及び精神症)など、運動機能と関連しない他の多くの症状を含む。
【0007】
1つの治療法は、モルヒネ誘導体であり、ドーパミン作動性アゴニストであるアポモルフィンの投与を伴う。早くも1951年にはパーキンソン病の治療として初めて論じられたアポモルフィンの最初の臨床使用が報告されたのはCotziasらによる1970年であるが、その催吐性及び半減期の短さから、経口使用は非実用的であった。
【0008】
パーキンソン病の治療にアポモルフィンの使用が有効なのは、この薬剤の強力なドーパミン作動性作用のためである。しかし、経口投与されるアポモルフィンは発効時間が約30〜45分間であり、この間、患者は無用の苦痛を受ける。今日、より一般的な投与経路は皮下注射である。皮下注射されると、アポモルフィンは、常に7〜10分間で「オン」時間をもたらし、約60分間にわたって変動の全領域-運動、感覚、及び精神-に対する効果を維持することが示されている。
【0009】
アポモルフィンはL-ドーパと組み合わせて用いることができるが、該疾患の後期段階までに患者はおそらくオフ期に由来する重大な不快感を経験しているので、該段階における通常の意図は、患者をL-ドーパから引き離すことである。
【0010】
アポモルフィンは、神経精神問題の発生率が低く、このため、経口の抗パーキンソン病薬による重度の神経精神合併症を有する患者において用いられている。アポモルフィンの注射により、それ以外の理由ではアポモルフィンの治療候補者とはなり得ない選択された患者におけるオフ期の疼痛、おくび、絶叫、便秘、夜間頻尿、ジストニア、勃起不能、及び手術後状態などの特異的な症状を緩和することができる。
【0011】
皮下投与の場合、アポモルフィンの通常の用量は1回の送達当たり2mg(容量0.2ml中で与えられる)であり、より高用量の有益性はアポモルフィンに対する感作の危険性を上回らないため、単一のオフ期間において6mgを超えることは推奨されない。英国医学会薬学会共同編集処方集(BNF)では、皮下注射の(開始後における)通常の範囲を1日当たり3〜30mgとし、用量を分割して投与することを推奨している。1日当たり10回を超える注射の分割を要する患者においては、皮下注入が好ましい場合がある。単回の最高用量は10mgであり、皮下経路(または経路の組合せ)による1日当たりの総用量は100mgを超えないものである。
【0012】
持続的な皮下注入の推奨用量は、当初毎日1mg/時間であり、一般に効果に応じて(4時間ごとを超えない頻度で)、最高500μg/時間ずつのステップで、1〜4mg/時間(14〜60μg/kg/時間)の通常速度まで増量する。注入部位は12時間ごとに変更し、注入は覚醒時間に限って行い、患者が重度の夜間症状を経験しない限り、24時間の注入は勧められない。断続的なボーラスによる追加投与もまた必要であり得る。
【0013】
しかし、低用量のアポモルフィンの頻繁な注射は該疾患症状をコントロールするのに不十分であることが多く、注射の反復により引き起こされる疼痛に加えて、これらの注射の反復は患者にとって不都合であり、服薬遵守違反を結果としてもたらすことが多い。
【0014】
アポモルフィンは、患者が携帯する小型ポンプを用いて、皮下注入により投与することができる。1日を通じて低用量を自動的に投与して、一定用量のドーパミン作動性刺激を与えることにより、運動症状の変動が軽減される。しかし、付添者(配偶者(spouseまたはpartner)であることが多い)が該ポンプの維持管理の責任を負わなくてはならず、この介護者の重荷となる。
【0015】
アポモルフィンの投与について観察される有害作用のうちでは、悪心及び嘔吐、ならびに低血圧が最も重大である。これらの有害作用に照らして、BNFは、アポモルフィン治療を開始する3日前から患者に制吐予防剤を施すことが多く、アポモルフィン治療の終了後8週間にわたりこれを継続することが推奨されることを報告している。さらに、眠気(突発的な睡眠を含む)、精神錯乱、幻覚、注射部位反応(結節形成及び潰瘍形成を含む)、一般にはあまり見られない立ちくらみ、呼吸困難、「オン」期における運動障害、レボドパによる溶血性貧血、まれに好酸球増多、病理学的な賭博行為、性欲亢進及び異常性欲もまた報告されている。
【0016】
用い得る制吐治療は、ドンペリドンまたはトリメトベンザミド(商標名:Tigan)を含む。
【0017】
「パーキンソニズム」という用語は、パーキンソン病においてみられる種類の運動変化の組合せを伴い、特定の薬剤使用または有毒な化学物質への頻繁な曝露などの特定の原因を有することが多い任意の状態を指す。一般に、パーキンソニズムの症状は、パーキンソン病に適用されるのと同じ治療法により治療することができる。
【0018】
アポモルフィンの鼻腔内送達に適する乾燥粉末製剤が、欧州特許第0689438号明細書の焦点である。該粉末製剤は、偶発的な肺内沈着を回避するため、直径が50〜100μmの範囲にあるアポモルフィン粒子を含む。Britannia Pharmaceuticals社により公表された研究で、経鼻投与されたこの種のアポモルフィン組成物の使用について検討したところ、皮下送達されたアポモルフィンとオフ期時間の短縮百分率の点で比較した場合、これらの薬剤の薬学的効果の発現は遅れ、その有効性は低下することが示された。さらに、鼻刺激感が報告されることもあった。
【0019】
アポモルフィンの鼻用製剤は、勃起障害(ED)及び女性性機能障害(FSD)の治療に関して、Nastech社により評価されている。この状態を治療する場合、この投与経路は、アポモルフィンを投与する従来の舌下経路を上回る利点をもたらすが、鼻腔内投与の欠点が多いことは確かである。
【0020】
鼻腔は、得られる表面積が肺と比較して著明に小さい(200m2に対して1.8m2)。鼻腔はまた、15〜20分ごとに生じることが典型的な自然の清浄化も受け、このとき、絨毛細胞により粘液及び残屑が鼻咽頭の後方へと追いやられる。この作用の結果、鼻へと投与されるアポモルフィンの一部は嚥下され、これと同時に初回通過代謝を受ける。これに対し、アポモルフィンは、肺胞膜を介する移送により迅速に全身循環に到達するので、肺における清浄化機構が吸収に影響する可能性は最小限である。
【0021】
うっ血または鼻「血」など、鼻粘膜に対する負荷もまた、経鼻投与後における薬剤の吸収に対して負の影響を与える。さらに、鼻腔経路の形状及び大きさも、薬剤吸収に影響を与える。該経路は患者間で異なるだけでなく、患者内においても、形状及び大きさが1日の異なる時間で変化する。結果として、経鼻送達デバイスは、再現可能で標的化された薬剤送達を確保するために、この大きな難題を克服しなければならない。標的部位への送達を確保するため、鼻用デバイスは、「推進力のある」スプレーを用いることが典型的であり、この結果として望ましくない感覚がもたらされ得る。逆に、Vectura社製の能動的吸入用デバイスであるAspirair(登録商標)または同社製の受動的デバイスであるGyrohaler(登録商標)などの乾燥粉末吸入器を含む吸入器は、口腔及び咽喉における沈着を最小限とする、患者保護的な薬剤「クラウド」をもたらす。
【0022】
さらに、広範な文献により、鼻腔内投与後におけるアポモルフィンに起因する局所的刺激感が説明されており、多数の患者が、試験治療の早期中断をもたらす、鼻刺激感、鼻痂皮形成、鼻づまり、鼻血、投与直後における鼻炎症及び鼻前庭炎を含む、重度であるかまたは機能障害を引き起こす鼻合併症の発作を報告している。
【0023】
以上にも関わらず、Britannia Pharmaceuticals社により開発されたアポモルフィンの鼻用粉末は、皮下注射と同等であり、経口投与よりもはるかに迅速な発効のほか、また、皮下投与経路とも同等なバイオアベイラビリティーももたらすといわれている。
【0024】
今日では、肺内吸入によるアポモルフィンの送達が、送達効率の上昇、バイオアベイラビリティーの増大、及び安定的な吸収をもたらし、他の投与経路と比較して、最終的により迅速でより予測可能な臨床効果を伴うことが発見されている。
【0025】
米国特許第6,193,954号明細書(Abbott Laboratories社)は、ドーパミンアゴニストの肺内送達用製剤に関する。ドーパミンアゴニストは、微粒子または粉末の形態であり、液体媒体中に分散されて肺へと送達されるものである。
【0026】
米国特許第6,514,482号明細書(Advanced Inhalation Research社)は、アポモルフィンの粒子が肺系統へと送達される、パーキンソン病治療における「レスキュー療法」を提供する方法を主張する。レスキュー療法とは通常、生死に関わる状況における非外科的な医学的治療を指す。しかし、パーキンソン病の不快さに反して、該症状は生死に関わることがなく、したがって、この特許は、オフ期の症状からの「レスキュー」に関すると考えられる。米国特許第6,514,482号明細書において用いられる「レスキュー療法」とは、患者に対する薬剤のオンデマンドで迅速な送達により、疾患の症状を軽減またはコントロールする一助となることを意味する。
【0027】
先行技術において、パーキンソン病を治療するドーパミンアゴニストによる組成物及び方法は、オフ期の開始時における固定用量のアポモルフィン投与を伴う。これは、最適の治療を提供しない。個々の患者の具体的な必要に見合うアポモルフィンの適切な用量を容易に決定できれば、極めて有益であろう。これにより、必要最小用量の投与が確保される。このような自己増減システムは柔軟であり、異なる力価を提示する必要なく、患者に合わせた用量の調整を可能にするとされる。該システムはまた、患者がその症状及び必要を満たすアポモルフィンの用量を常に変化させ得る、自己増減の継続も可能にするとされる。これは多くの理由で、特に治療と関連する有害な副作用(嘔吐を含む)を最小化し、アポモルフィン感作の危険性を低下させるために望ましい。
【0028】
患者が経験する「オフ期」を可能な限り軽減し、このようなオフ期全体を回避することがさらなる目的である。過度に高用量のアポモルフィン(とりわけ、24時間で患者に投与される1日当たりの用量に関して)を投与する必要なしに、これを達成することが望ましい。
【0029】
患者が自分で投与して介護者に対する負担を軽減し得る、組成物または治療のレジメンを提供することもまた、明らかに望ましい。定期的で頻繁な注射または恒久的な注入ポンプよりも、安全かつ簡便で疼痛のない投与経路の方が明らかに好ましい。アポモルフィンの頻繁な投与のための容易な送達を可能とする一方で、この依存性を緩和する薬剤が明らかに有利であろう。
【0030】
効果の長期持続を維持することが可能な製剤は、患者が次回の用量を自分で投与することが可能であり、したがって介護者の介助が不要となり得る治療域を患者に提供する。
【0031】
アポモルフィンの催吐作用を軽減する投与法が、明らかに有利であろう。
【0032】
また、期限切れ薬剤の処分に関連する無視できない費用を回避するため、通常の保存条件下である期間にわたり安定なアポモルフィン組成物を提供することも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】欧州特許第0689438号明細書
【特許文献2】米国特許第6,193,954号明細書
【特許文献3】米国特許第6,514,482号明細書
【特許文献4】国際公開第1997/03649号
【特許文献5】国際公開第2002/43701号
【特許文献6】国際公開第1996/23485号
【特許文献7】国際公開第2002/00197号
【特許文献8】国際公開第2005/025536号
【特許文献9】国際公開第2005/025535号
【特許文献10】米国特許第6,257,233号明細書
【特許文献11】国際公開第2001/00262号
【特許文献12】国際公開第2002/07805号
【特許文献13】国際公開第2002/89880号
【特許文献14】国際公開第2002/89881号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、特に、薬剤レベルの自己増減及び最適化を容易にする程度に十分に嘔吐の誘発が低度であり、薬理学的効果の発効が迅速な、低用量の薬剤の容易な投与に適する安定な乾燥粉末でのアポモルフィンを含む組成物が必要である。
【0035】
アポモルフィンの経鼻投与は、結果として約15分間のTmaxをもたらす。肺内投与は、一部の患者では、結果として1分間未満のTmaxをもたらす。これは、皮下投与後に観察されるTmaxと同等であると考えられる。肺内投与は、経鼻投与よりもバイオアベイラビリティーが大きい。これは、より低いバイオアベイラビリティーを補うため、経鼻用量は増量が必要であることを意味する。
【0036】
2004年4月付のApokyn(登録商標)の情報シートでは、塩酸アポモルフィンが、腹壁内への皮下投与後において迅速に吸収される(ピーク濃度までの時間は10〜60分間の範囲にある)凍結乾燥化合物であることが記載されている。皮下投与後において、アポモルフィンは、静脈内投与の場合と同等のバイオアベイラビリティーを有すると考えられる。アポモルフィンは、特発性パーキンソン病を有する患者の腹壁内へのアポモルフィンの単回皮下投与後において、2〜8mgの用量範囲にわたって直線的な薬物動態を示す。
【0037】
皮下投与されたアポモルフィンのバイオアベイラビリティーが、静脈内投与されたアポモルフィンのバイオアベイラビリティーと同等であることに基づけば、肺内吸入により投与されたアポモルフィンのバイオアベイラビリティーが、皮下注射後におけるバイオアベイラビリティーより大きくはないにせよ、これと同等であることは驚くべきことである。これは、極めて予測外である。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の第1の態様では、パーキンソン病(PD)を含む中枢神経系の状態を治療する、肺内吸入による投与のためのアポモルフィンを含む乾燥粉末組成物が提供される。
【0039】
肺の病態生理及び吸入されるアポモルフィンの特性が組み合わされる結果、迅速で予測可能な治療効果へと置き換えられる迅速で安定的な全身曝露がもたらされるが、PD治療の改善を考える場合、これらは共に重要な要件である。1分間の短いTmaxが観察されることが好ましい。患者の大半は、アポモルフィンの吸入後10分間以内に転換(すなわち、治療効果の発効)を達成した。一部の患者は、「オフ」状態から「オン」状態への転換が、肺内吸入によるアポモルフィン投与後2分間の速さであることを報告した。
【0040】
一実施形態において、組成物は、患者に投与される最大15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、または最大5mgの用量のアポモルフィンを含む。用量は、少なくとも1mg、2mg、3mg、または4mgであることが好ましい。用量は、任意の高用量値を伴う任意の低用量値により定義される範囲内、例えば、少なくとも1mgかつ最大15mg、少なくとも2mgかつ最大15mg、少なくとも3mgかつ最大15mg、少なくとも1mgかつ最大14mg、少なくとも1mgかつ最大13mgなどに含まれる数字であり得る。
【0041】
一態様において、用量は名目用量である。名目用量(ND)は、容器により計量された薬剤量(計量用量としても知られる)である。これは、送達用量と称する、患者に送達される薬剤量とは異なる。
【0042】
微粒子画分(FPF)は通常、デバイスから放出される用量である放出用量(ED)で除したFPD(<5μgの用量)として定義される。FPFは、百分率として表される。本明細書では、ED中のFPFをFPF(ED)と称し、FPF(ED)=(FPD/ED)×100%として計算する。
【0043】
微粒子画分(FPF)はまた、ブリスターまたはカプセル中における用量である計量用量(MD)で除したFPDとして定義し、百分率として表すこともできる。本明細書では、MD中のFPFをFPF(MD)と称し、FPF(MD)=(FPD/MD)×100%として計算する。
【0044】
好ましい実施形態において、用量は、1回だけの吸入を必要とする単回用量として患者に投与される。一実施形態において、用量は、ブリスターまたはカプセルにより提供し、乾燥粉末吸入用デバイスを用いてこれを分注するものであることが好ましい。代替的に、用量は、加圧式定量吸入器(pMDI)を用いて分注することもできる。本発明による組成物用量の投与は、結果として約2〜6mgの微粒子用量(FPD)、また好ましくは約4mgのアポモルフィンをもたらすことが典型的である。これらの用量を肺内粘膜に投与すると、アポモルフィンが吸収される。
【0045】
さらに別の実施形態では、アポモルフィン組成物の用量を必要に応じて、すなわち、患者がオフ期の開始を経験するかまたはこれを疑うときに患者に投与するものである。これにより、「オンデマンドの」治療が提供される。この実施形態では、アポモルフィンの単回有効用量を投与することができる。代替的に、小用量ずつを複数回にわたり逐次的に投与することもでき、各投与の効果は、次回用量を投与する前に患者が評価する。これにより、用量の自己増減及び最適化が可能となる。
【0046】
別の実施形態において、組成物は、24時間にわたり投与される約30〜110mgの用量である1日当たりの用量を提供する。1日当たりの用量は、多数回の投与に分割されることが多い。1日当たりの用量は約50〜約80mgであることが好ましい。これらの1日当たりの用量は、単回(通常、複数回の吸入を伴う)で投与され得るが、1回当たり11mgずつ10回の投与を1日当たりの限度として、すなわち24時間で110mgを限度として、1日当たりの用量を24時間にわたって拡散させ、一部の患者には5〜6回の投与を受けさせる場合もあるが、患者に平均で2〜3回の個別の単回投与を受けさせることを予期する。医療機関により推奨用量が異なることに注意することが重要であり、欧州及び米国ではそれぞれ、10mg及び6mgの単回用量、ならびに1日当たり100mg及び約25mgの最高用量が推奨されている。
【0047】
別の実施形態において、組成物は、定期的で頻繁な間隔、例えば、約60分間、約45分間、約30分間、約20分間、約15分間、または約10分間の間隔での用量の投与を可能とすることで、患者がオフ期の経験を回避するように、上述の注入ポンプの効果と同等の維持療法を提供する。このような実施形態では、患者に症状の十分な緩和を提供することを願う一方で、1日当たりの量を安全な限界内に収めるように、選択された間隔で投与される個々の用量を調整する。例えば、各個別の微粒子用量は、好ましくはアポモルフィン約0.5mg〜約7mg、より好ましくは2mg〜6mg、より好ましくは3mg〜5mg、また最も好ましくは約4.5mg程度で提供される。この範囲内にある微粒子用量は、それぞれ、約0.8mg〜11.5mg、3mg〜10mg、及び約7mgの名目用量により可能となる。一態様において、各個別の微粒子用量は、アポモルフィン約0.5mg〜約3mg程度で提供され、一態様では、約1.6mgで提供される。11.5時間(患者の覚醒時)にわたり10分間隔で投与する場合、これにより、1日当たり110mgの用量が提供される。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、アポモルフィンを含む組成物であって、肺内吸入による投与が、約10分間未満のうちに、また、好ましくは投与から約5分間以内に、投与から約2分間以内に、さらにまたは投与から約1分間以内にCmaxをもたらす組成物が提供される。Cmaxは、1から5分以内に提供されることが好ましい。
【0049】
本発明のさらなる実施形態において、肺内吸入による組成物の投与は、用量依存的なCmaxをもたらす。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、アポモルフィンの用量は肺内に吸入され、前記用量は約10分間以内に治療効果をもたらすのに十分である。場合によって、治療効果は、投与から約5分間、約2分間、さらにまたは約1分間の短時間内で経験される。
【0051】
本発明の別の実施形態において、肺内吸入による組成物の投与は、30〜70分間の終末相消失半減期をもたらす。
【0052】
さらに別の実施形態において、肺内吸入による組成物の投与は、少なくとも45分間、好ましくは少なくとも60分間持続する治療効果をもたらす。臨床試験では、平均75分間持続する治療効果が観察された。
【0053】
さらなる実施形態において、組成物は、少なくとも約70%(質量で)のアポモルフィン、または少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%(質量で)のアポモルフィンを含む。
【0054】
またさらなる実施形態において、本発明による組成物は、パーキンソン病の症状を治療するか、または該症状全体を予防するのに用いられる。患者は用量を投与し、約10分間以内に、その投与した用量がパーキンソン病の症状を治療または予防するのに十分であるかどうかを確認し得ることが好ましい。さらなる用量が必要であると感じられる場合は、これを安全に投与し、所望の治療効果が達成されるまで該手順を反復することができる。
【0055】
このアポモルフィン用量の自己増減は、治療効果の迅速な発効、正確で比較的少ない用量のアポモルフィン、及び嘔吐を含む副作用の低発症率の結果として可能となる。また、投与方式が無痛かつ簡便であり、無用の不快感または不都合のない投与の反復を可能とすることも重要である。
【0056】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による組成物の用量を含む、ブリスター、カプセル、レザバーによる分注システムなどが提供される。
【0057】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による組成物の用量を分注する吸入用デバイスが提供される。本発明の一実施形態では、乾燥粉末吸入器(DPI)により、吸入可能な組成物が投与される。代替的な実施形態では、加圧式定量吸入器(pMDI)または噴霧システムにより組成物が投与される。
【0058】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による組成物を調製する工程が提供される。
【0059】
本発明の第5の態様によれば、パーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する方法であって、該治療が、本発明の第1の態様による組成物の用量を肺内吸入により投与するステップを伴う方法が提供される。
【0060】
代替的に、パーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する薬剤の製造におけるアポモルフィンの使用であって、アポモルフィンが肺内吸入により投与されるものである使用が提供される。好ましい実施形態において、アポモルフィンは、本発明の第1の態様による組成物の形態である。
【0061】
パーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する新規の方法であって、肺内吸入により投与されるアポモルフィンを含む新規の医薬組成物を用いる方法が提供される。これらの方法は、とりわけ、パーキンソン病などの状態の治療と通常関連する比較的高用量においてアポモルフィンを投与する場合にアポモルフィンの投与と関連する副作用を回避する一方で、所望の治療効果を達成する。
【0062】
本明細書で説明される特定の実施形態は、本発明の例示を目的として示されるものであり、その限定として示されるものではない。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、各種の実施形態で用いることができる。当業者は、日常的な試験だけを用いて、本明細書で説明される特定の手順に対する多くの同等物を認識するか、またはこれを確認することができる。このような同等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲の対象となる。本明細書において言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関連する当技術分野における当業者のレベルを示す。すべての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が、参照により具体的かつ個別に組み込まれると示されたと仮定する場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。特許請求の範囲及び/または本明細書において「含む」という用語と共に用いられる場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という語は、「1つの(one)」を意味し得るが、これはまた、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、及び「1つまたは1つを超える」の意味とも符合する。特許請求の範囲における「または」という用語は、代替物だけを指すことが顕示的に示されるか、または該代替物が互いに排除的でない限り、「及び/または」を意味するのに用いられるが、本開示は、代替物のみ、及び「及び/または」を指す定義を支持する。本出願全体にわたり、「約」という用語は、ある値が、デバイス、該値を決定するのに用いられる方法に固有の誤差のばらつき、または被験対象間に存在するばらつきを含むことを示すのに用いる。
【0063】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」など、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」及び「有する(has)」など、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」及び「含む(include)」など、含む(including)の任意の形態)、「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」など、「含有する(containing)」の任意の形態)という語は、包含的またはオープンエンドであり、列挙されていないさらなるエレメントまたは方法ステップを除外しない。
【0064】
本明細書で用いられる「またはこれらの組合せ」という用語は、該用語に先行して列挙される項目に対するすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはこれらの組合せ」とは、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つを含み、特定の文脈において順序が重要である場合はまた、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACE、BAC、またはCABの少なくとも1つも含むことを意図する。この例を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1項目もしくは複数項目またはこれらの1項もしくは複数項の反復を含有する組合せが顕示的に含まれる。当業者は、文脈から別段に明らかでない限り、任意の組合せにおける項目数または項数に対する制限がないことが典型的であると理解するであろう。
【0065】
本明細書で開示及び主張される組成物及び/または方法のすべては、本開示に照らして不要な実験なしに作製及び実施することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態との関係で説明してきたが、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱しない限りにおいて、本明細書で説明される組成物及び/または方法に対して、また、該方法のステップまたはステップの連鎖において変更を適用し得ることは、当業者に明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換及び改変のすべては、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、及び概念内にあるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】製剤1、2、及び3:振とうの5秒後を示す図である。
【図2】製剤1、2、及び3:振とうの10秒後を示す図である。
【図3】製剤1、2、及び3:振とうの15秒後を示す図である。
【図4】製剤1、2、及び3:振とうの30秒後を示す図である。
【図5】製剤4、5、及び6:振とうの5秒後を示す図である。
【図6】製剤4、5、及び6:振とうの10秒後を示す図である。
【図7】製剤4、5、及び6:振とうの15秒後を示す図である。
【図8】製剤4、5、及び6:振とうの30秒後を示す図である。
【図9】製剤8:振とうの5秒後を示す図である。
【図10】製剤8:振とうの10秒後を示す図である。
【図11】製剤8:振とうの15秒後を示す図である。
【図12】製剤8:振とうの30秒後を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、既に用いられている投与法式を上回る多数の重要で思いがけない利点を有する、アポモルフィンの高性能の吸入送達に関する。本発明の投与法式及び組成物により、この優れた性能が可能となる。しかし、予測可能な治療効果をもたらす正確で安定的な量のアポモルフィンの迅速な吸収を可能とする形でアポモルフィンを送達することが重要である。これは、比較的高量の薬剤を投与しなければならないためにいっそう困難である。
【0068】
この肺内投与経路の利点は、安全性の改善、曝露量のばらつきの低下であり、この結果、皮下投与経路及び非侵襲的な投与経路と比較した運動障害の発症率の低下、より迅速な作用の開始がもたらされる。
【0069】
肺内吸入のためのアポモルフィン組成物
PDの有効な治療は比較的高用量のアポモルフィンの送達を必要とするので、大きな技術的困難を克服しなければならない。現在のところ、乾燥粉末吸入用デバイスは、最大3mg、または場合によって最大20mgの用量の粉末を送達する傾向がある。加圧式定量吸入器により送達される用量は、1μg〜3mg程度である。これに対し、PDに対する有効で使用者保護的な治療を行うためには、アポモルフィンを含む11mgほどの用量の乾燥粉末組成物を単回吸入で提供することが意図される。吸入により投与される本発明による乾燥粉末製剤の容量(用量)は、40mgの高用量であり得、一態様では50mgの高用量であり得る。粉末組成物の用量はこのように高用量であるが、名目用量は7mgの領域であり、FPDは約4mgであることが想定される。
【0070】
かつて、市販される乾燥粉末吸入器の多くは投与効率が極めて低く、それが治療効果を有し得るように使用者に適正な形で実際に送達される用量中に存在する活性作用物質の10%という少量にとどまる場合もあった。所望の治療効果に高用量の活性作用物質が必要とされる場合、この低効率は単純に許容外である。
【0071】
投与効率が低いことの理由は、粉末が送達デバイスからの駆出から肺内における沈着まで移動する各段階において、乾燥粉末用量中かなりの比率の活性作用物質が失われる傾向があることである。例えば、かなりの量の材料がデバイスのブリスター/カプセル内に残存し得る。材料は、過度のプルーム速度により対象の咽喉で失われる可能性がある。しかし、送達される用量のかなりの比率が、必要とされる空気動力学径を超える粒子形態で存在する場合が頻繁である。
【0072】
対象の上気道における粒子の埋伏は、いわゆる埋伏パラメータにより予測される。埋伏パラメータは、粒子速度にその空気動力学径の2乗を乗じた量として定義される。結果として、上気道領域を介する作用標的部位への粒子の送達に関連する確率は、その空気動力学径の2乗と関係する。したがって、下気道または肺深部への送達はその空気動力学径の2乗に依存し、小さなエアゾール粒子の方が使用者における投与の標的部位に到達する可能性がはるかに高く、したがって、所望の治療効果を有し得る。
【0073】
空気動力学径が10μm未満の粒子は、肺内に沈着する傾向がある。空気動力学径が2μm〜5μmの範囲にある粒子が一般に細気管支内に沈着するのに対し、空気動力学径が0.05〜3μmの範囲にあるより小さな粒子は肺胞内に沈着する傾向がある。したがって、例えば、肺胞を標的とする粒子の高用量効率は、3μm未満の粒子用量により予測され、該標的部位に到達する可能性が最も高いのは、より小さな粒子である。
【0074】
本発明の一実施形態において、組成物は、アポモルフィンを含む活性粒子を含み、活性粒子の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%が、約10μm以下の空気動力学質量中央径(MMAD)を有する。別の実施形態では、活性粒子の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%が、約2μm〜約5μmのMMADを有する。さらに別の実施形態では、活性粒子の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%が、約0.05μm〜約3μmの範囲にある空気動力学径を有する。本発明の一実施形態では、アポモルフィン粒子の少なくとも約90%が、5μm以下の粒子サイズを有する。
【0075】
しかし、直径が約10μm未満の粒子は、容量に対する表面積比が大きいために熱力学的に不安定であり、これにより、著名に過剰な表面自由エネルギーが提供され、粒子の凝集が促進される。乾燥粉末吸入器において、小粒子の凝集及び吸入器内壁への粒子の付着は、活性粒子が大型の凝集体として吸入器から放出されるか、または吸入器から放出されずにデバイスの内側に付着して残留するか、さらにまたは吸入器を詰まらせるかもしくは遮断する結果をもたらす問題である。
【0076】
安定的な粒子凝集体の形成度が、吸入器の各作動間、ならびにまた、異なる吸入器間、及び異なる粒子バッチ間において不確定であると、用量再現性が低下する。さらに、凝集体の形成は、活性粒子のMMADが大きく増大し、活性粒子の凝集体が肺の必要とされる部分に到達しないことも意味する。結果として、本発明では、投与効率及び用量再現性が良好であり、正確で予測可能な用量を送達する粉末製剤を提供することが不可欠である。
【0077】
サイズが10μm未満である活性粒子を含む乾燥粉末システムの投与効率を改善するために多大な努力がなされ、送達の各段階における薬学的に活性な作用物質の喪失が低減している。過去において、投与効率を上昇させ、より大きな投与再現性を得るための努力は、活性作用物質の微粒子による凝集体の形成を防止することに焦点を当てる傾向があった。このような凝集体は、これらの粒子の有効サイズを増大させ、したがって、活性粒子がその所望の治療効果を及ぼすために沈着すべき下気道または肺深部に到達することを妨げる。提起された方策は、比較的大型の担体粒子の使用を含んでいた。活性作用物質の微粒子は、ファンデルワールス力などの粒子間力の結果として、担体粒子の表面に付着する傾向がある。吸入用デバイスの作動時において、活性粒子は、担体粒子から解離し、次いで、吸入可能な形態でエアゾールクラウド中に存在すると想定されている。加えて、または代替法として、粒子間における凝集及び付着を改変する力制御作用物質として作用する添加剤材料の組み入れも提起されている。
【0078】
しかし、送達される薬剤が極めて高用量である場合、とりわけ、組成物の少なくとも70%が本発明において好ましいアポモルフィンからなる場合、粉末組成物に材料を添加する選択肢は限られている。それにもかかわらず、乾燥粉末組成物が良好な流動特性及び分散特性を示し、良好な投与効率を保証することが不可欠である。
【0079】
本明細書では、「超微粒子用量」(UFPD)という用語を用いて、3μm以下の直径でデバイスにより送達される活性材料の総質量を意味する。本明細書では、「超微粒子画分」という用語を用いて、3μm以下の直径でデバイスにより送達される活性材料総量の百分率を意味する。本明細書では、超微粒子用量百分率(%UFPD)という用語を用いて、3μm以下の直径で送達される総計量用量の百分率を意味する(すなわち、%UFPD=100×UFPD/総計量用量)。
【0080】
本明細書では、「送達用量」及び「放出用量」または「ED」という用語を互換的に用いる。これらは、吸入生成物についての現行のEPモノグラフに記載の通りに測定される。
【0081】
「吸入器の作動」とは、ある用量の粉末を、吸入器におけるその静止位置から取り出す過程を指す。このステップは、使用準備のできた吸入器内に粉末が充填された後で実行される。
【0082】
本発明の一実施形態において、パーキンソン病を含む中枢神経系の状態を吸入により治療するのに用いられる組成物は、FPD用量で約1.5mgのアポモルフィン(すなわち、その塩酸塩質量に基づくアポモルフィン、アポモルフィン遊離塩基、薬学的に許容されるその塩またはエステル)を含む。用量は、FPDで約100〜1500μgの前記アポモルフィンを含み得る。
【0083】
本発明の別の実施形態において、パーキンソン病を含む中枢神経系の状態を吸入により治療するのに用いられる組成物は、名目用量で約4mgのアポモルフィン(すなわち、その塩酸塩質量に基づくアポモルフィン、アポモルフィン遊離塩基、薬学的に許容されるその塩またはエステル)を含み、前記用量は、受動的な乾燥粉末吸入器から送達する場合、FPDで2.5〜3.5mgなど、FPDで約1.5〜3.5mgの前記アポモルフィンを達成し得る。
【0084】
本発明の別の実施形態において、粉末組成物の用量は、米国薬局方第26部、第601章、装置4(2003)の多段式液体インピンジャーである、アンダーセンカスケードインパクターまたは次世代インパクターにより測定する場合、微粒子用量で約400μg〜約4000μgのアポモルフィンなど、約400μg〜約6000μgのアポモルフィン(その塩酸塩質量に基づく)をin vitroで送達する。該用量は、in vitroにおいて、微粒子用量で約400〜約5000μgのアポモルフィン、また、一態様において、微粒子用量で約400〜約4000μgのアポモルフィンを送達することが好ましい。
【0085】
本発明の文脈において、アポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの用量(例えば、マイクログラム単位の)は、その塩酸塩(塩酸アポモルフィン)の質量に基づいて記載される。
【0086】
微粒子が凝集する傾向は、所与の用量のFPFがまったく予測不能であり得、結果として、肺、または肺の適正な部分へと投与される微粒子の比率にばらつきがあることを意味する。これは、例えば、純粋な薬剤を微粒子形態で含む製剤中において観察される。このような製剤は流動特性が低く、FPFが低い。
【0087】
この状況を改善し、安定的なFPF及びFPDを提供しようとする試みにおいて、本発明による乾燥粉末組成物は、抗付着材料であり、組成物中における粒子間の凝集を低下させる、添加剤材料を含み得る。
【0088】
乾燥粉末組成物中の粒子間における凝集を低下させる添加剤材料が選択される。該添加剤材料は、小粒子間における弱い結合力に干渉し、該粒子の分離を保つ一助となり、このような粒子の互いに対する付着、存在する場合は製剤中の他の粒子に対する付着、及び吸入用デバイスの内面に対する付着を低下させると考えられる。粒子の凝集体が形成される場合は、吸入用デバイスの作動時において創出される乱気流中においてこれらの凝集体がより分解されやすくなり、このため、該粒子がデバイスから駆出されて吸入されるように、添加剤材料粒子を添加してこれらの凝集体の安定性を低下させる。凝集体が分解されると、活性粒子は、肺下部に到達することが可能な個々の小粒子の形態または少数の粒子による凝集体の形態に復帰し得る。
【0089】
添加剤材料は、国際公開第1997/03649号で開示される通り、活性粒子の表面に付着する傾向がある粒子の形態であり得る。代替的に、添加剤材料は、例えば、国際公開第2002/43701号で開示される共製粉法により活性粒子表面を被覆することができる。
【0090】
添加剤材料は、抗付着物質であり、粒子間の凝集を低下させる傾向があり、微粒子が吸入用デバイスの内面に付着することも防止することが好ましい。添加剤材料は、減摩剤または潤滑剤であり、吸入器内における粉末製剤に、より良好な流動特性を与えることが有利である。このような形で用いられる添加剤材料は通常、必ずしも抗付着剤または減摩剤と称するわけではないが、粒子間における凝集を低下させるか、または粉末の流動を改善する効果を及ぼす。添加剤材料は、力制御作用物質(FCA)と称することがあり、通常、より良好な用量再現性及びより高いFPFをもたらす。
【0091】
したがって、本明細書で用いられる添加剤材料またはFCAとは、他の粒子の存在下において、また、該粒子が曝露される表面との関係において、粒子表面上におけるその存在により、該粒子が受ける付着表面力及び凝集表面力を改変し得る物質である。一般に、その機能は、付着力及び凝集力を共に低下させることである。
【0092】
互いに対して、またはデバイス自体に対して、粒子が強力に結合する傾向が低下すると、粉末の凝集及び付着が低下するだけでなく、より良好な流動特性も促進され得る。これは、投与ごとに計量される粉末量のばらつきを低下させ、デバイスからの粉末の放出を改善するため、用量再現性の改善をもたらす。これはまた、デバイスから実際に放出される活性材料が患者の肺下部に到達する可能性も増大させる。
【0093】
粉末が吸入用デバイス内に存在する場合は、粒子の不安定な凝集体が粉末内に存在することが好ましい。上記で示した通り、粉末が吸入用デバイスから効率的かつ再現的に放出されるために、このような粉末の粒子は大きく、好ましくは約40μmよりも大きいものである。このような粉末は、サイズが約40μm以上である個別の粒子、及び/またはより微小な粒子の凝集体、サイズが約40μm以上の凝集体の形態であり得る。形成される凝集体のサイズは、製剤を分注するのに用いられるデバイスの種類に応じて100μmまたは200μmであり得、凝集体は最大約1000μmであり得る。添加剤材料の添加により、これらの凝集体は、吸入時に創出される乱気流内において効率的に分解されやすくなる。したがって、粉末中における粒子の不安定であるかまたは「もろい」凝集体の形成は、実質的に凝集体が存在しない粉末と比較して好ましい場合がある。このような不安定な凝集体は、粉末がデバイス内にある間は安定であるが、次いで、吸入時には破壊され分割される。
【0094】
添加剤材料はアミノ酸を含むことが特に有利である。アミノ酸が添加剤材料として存在すると、活性材料の吸入可能画分が大きくなり、また、粉末の流動特性が上昇する。好ましいアミノ酸はロイシン、特にL-ロイシン、ジロイシン、及びトリロイシンである。一般にアミノ酸のL-形態が好ましいが、D-形態及びDL-形態もまた用いることができる。添加剤材料は、以下の任意のアミノ酸:アスパラターム、ロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、メチオニン、システイン、及びフェニルアラニンの1つまたは複数を含み得る。添加剤はまた、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸金属、リン脂質、レシチン、コロイド状の二酸化ケイ素、及びフマル酸ステアリルナトリウムも含む場合があり、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第1996/23485号においてより詳細に説明されている。
【0095】
粉末は、粉末質量に基づく質量で少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のアポモルフィン(またはその薬学的に許容される塩)を含むことが有利である。添加剤材料の最適量は、添加剤材料の正確な性質、及びそれが組成物中に組み込まれる方式に基づく。一部の実施形態において、粉末は、粉末質量に基づく質量で8%以下の添加剤材料を含むことが有利であり、同5%以下の添加剤材料を含むことがより有利である。上記で示した通り、場合によって、粉末が質量で約1%の添加剤材料を含有することが有利である。
【0096】
他の実施形態において、添加剤材料またはFCAは、質量で約0.1%〜約10%、また好ましくは約0.15%〜5%、最も好ましくは約0.5%〜約2%の量で提供することができる。
【0097】
添加剤材料が微粉化されたロイシンまたはレシチンである場合、質量で約0.1%〜約10%の量で提供することが好ましい。添加剤材料は、質量で約3%〜約7%、好ましくは約5%の微粉化されたロイシンを含むことが好ましい。質量で少なくとも95%の微粉化されたロイシンは、粒子直径が150μm未満であることが好ましく、好ましくは100μm未満、また最も好ましくは50μm未満である。微粉化されたロイシンの質量中央径は、10μm未満である。
【0098】
ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムを添加剤材料として用いる場合、必要とされる最終用量に応じて、約0.05%〜約10%、約0.15%〜約5%、約0.25%〜約3%、または約0.5%〜約2.0%の量で提供することが好ましい。
【0099】
分注デバイスからの乾燥粉末の抽出を改善し、安定的なFPF及びFPDをもたらそうとするさらなる試みにおいて、本発明による乾燥粉末組成物は、担体粒子として作用する不活性の賦形剤材料を含み得る。これらの担体粒子は、活性材料の微粒子及び存在する任意の添加剤材料と混合される。吸入用デバイス内にある間、活性微粒子は、互いに対して粘着することなく、担体粒子表面に付着する傾向があるが、分注デバイスが作動すると放出及び分散され、気道内に吸入されて微小な懸濁体をもたらす。
【0100】
担体粒子は、粉末組成物の容量を著明に増大させる傾向があるため、極めて高用量の活性作用物質を送達する場合、その含有はあまり好ましくない。それにもかかわらず、本発明の一部の実施形態において、組成物は担体粒子を含む。このような実施形態において、組成物は、少なくとも約10%(質量で)のアポモルフィン、または少なくとも約15%、17%、もしくは18%、もしくは18.5%(質量で)のアポモルフィンを含む。担体粒子は、全組成物中の質量で90%以下、好ましくは85%、より好ましくは83%、より好ましくは80%(この場合、アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウムの総含量は、それぞれ、質量で約18.5%及び1.5%となる)などの少量で存在することが好ましい。
【0101】
担体粒子は、任意の許容される不活性の賦形剤材料の場合もあり、材料の組合せの場合もある。例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール、及び結晶糖から選択される1種または複数種の材料からなる場合がある。他の適切な担体は、塩化ナトリウム及び炭酸カルシウムなどの無機塩、乳酸ナトリウムなどの有機塩、ならびに多糖及びオリゴ糖など他の有機化合物を含む。担体粒子は、ポリオールを含むことが有利である。特に、担体粒子は、結晶糖、例えば、マンニトール、トレハロース、メレジトース、デキストロース、またはラクトースの粒子であり得る。担体粒子はラクトースからなることが好ましい。
【0102】
こうして、本発明の一実施形態において、組成物は、アポモルフィンを含む活性粒子及び担体粒子を含む。担体粒子は、平均粒子サイズが約5〜約1000μm、約4〜約40μm、約60〜約200μm、または約150〜約1000μmであり得る。担体粒子に有用な他の平均粒子サイズは、約20〜約30μmまたは約40〜約70μmである。
【0103】
代替的な実施形態において、担体粒子は、全組成物の質量で80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下などの小量で存在する。担体が80%の量で存在する場合、一態様において、アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウムの総含量は、それぞれ、質量で約18%及び2%となる。これらの製剤中における担体量が変化するにつれて、添加剤及びアポモルフィンの量もまた変化するが、これらの成分比は、依然として約1:9〜約1:13であることが好ましい。
【0104】
代替的な実施形態において、製剤は担体粒子を含有せず、アポモルフィン及び添加剤を含み、全組成物の質量で少なくとも30%、好ましくは60%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、また最も好ましくは97%などが薬学的に活性な作用物質を含む。活性作用物質は、アポモルフィン単独の場合もあり、アポモルフィンと制吐剤との組合せの場合もあり、パーキンソン病患者に有益である他の薬剤との組合せの場合もある。残りの成分は、上記で論じた添加剤材料など、1種または複数種の添加剤材料を含む場合がある。
【0105】
さらなる実施形態において、製剤は担体粒子を含有する場合があり、アポモルフィン及び添加剤を含み、全組成物の質量で少なくとも30%、好ましくは60%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、また最も好ましくは97%などが薬学的に活性な作用物質を含み、残りの成分は、添加剤材料及びより大型の粒子を含む。より大型の粒子は、担体として作用し、また、粉末の流動も促進する二重の作用をもたらす。
【0106】
好ましい実施形態において、組成物は、アポモルフィン(30% w/w)と、平均粒子サイズが45〜65μmのラクトースとを含む。
【0107】
アポモルフィン及び担体粒子を含む組成物は、1種または複数種の添加剤材料をさらに含み得る。添加剤材料は、国際公開第1997/03649号で開示される通り、活性粒子表面に付着する傾向がある粒子の形態であり得る。代替的に、添加剤材料は、例えば、国際公開第2002/43701号で開示される通り、共製粉法により活性粒子表面を被覆することもでき、国際公開第2002/00197号で開示される通り、担体粒子表面を被覆することもできる。
【0108】
一実施形態において、添加剤は、担体粒子表面を被覆する。この被覆形成は、担体及び添加剤のブレンドの結果として、担体粒子表面に付着する(ファンデルワールス力などの粒子間力により)添加剤材料粒子の形態であり得る。代替的に、担体粒子表面に添加剤材料を塗布してこれに融合させ、これにより、不活性の担体物質を核として、その表面に添加剤材料を伴う合成粒子を形成することもできる。例えば、担体粒子に対する添加剤材料のこのような融合は、添加剤材料粒子及び担体粒子に対する共ジェットミル処理により達成することができる。一部の実施形態では、添加剤が担体粒子及び活性粒子の両方に付着または融合するように、3種の粉末成分(活性成分、担体成分、及び添加剤成分)すべてを共に処理する。例示的な一実施形態において、組成物は、アポモルフィン粒子と共に、かつ/またはラクトースと共にジェットミル処理される、ステアリン酸マグネシウム(最大10% w/w)またはロイシンなどの添加剤材料を含む。
【0109】
本発明の一部の実施形態において、アポモルフィン製剤は「担体を含まない」製剤であり、これは、アポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステル及び1種または複数種の添加剤材料のみを含む。
【0110】
これらの「担体を含まない」製剤中では、粉末粒子の質量で少なくとも90%が63μm未満、好ましくは30μm未満、またより好ましくは10μm未満の粒子サイズを有することが有利である。上記で示した通り、肺下部への有効な送達のためには、粉末のアポモルフィン(またはその薬学的に許容される塩)の粒子サイズは、約0.1μm〜5μmの範囲内にあるものである。添加剤材料が粒子形態である場合、これらの添加剤粒子は、サイズが肺下部への送達に好ましい範囲の外にあることが有利であり得る。
【0111】
粉末は、粉末質量に基づくアポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で少なくとも60%を含み得る。粉末は、粉末質量に基づくアポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で少なくとも70%、または少なくとも80%を含むことが有利である。粉末は、粉末質量に基づくアポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97%を含むことが最も有利である。肺には可能な限り少量の粉末、特に、患者に投与される有効成分以外の材料を導入することが生理学的に有益であると考えられる。したがって、添加剤材料の添加量は、可能な限り少量であることが好ましい。したがって、一態様において、粉末は、アポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で99%超を含む。
【0112】
アポモルフィンは、遊離塩基形態で、または酸添加塩として存在し得る。本発明の目的には、塩酸アポモルフィン及びアポモルフィンの遊離塩基形態が好ましいが、アポモルフィンの他の薬学的に許容される形態もまた用いることができる。本明細書で用いられる「アポモルフィン」という用語は、この化合物の遊離塩基形態のほか、その薬学的に許容される塩またはエステルも含む。好ましい実施形態では、アポモルフィンの少なくとも一部がアモルファス形態である。アモルファスのアポモルフィンを含有する製剤は、好ましい溶出特性を有する。アモルファスアポモルフィンの安定形態は、トレハロース及びメレジトースなどの適切な糖を用いて調製することができる。
【0113】
塩酸塩に加えて、他の許容される酸添加塩は、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩などを含む。
【0114】
本明細書で用いられるアポモルフィンの「薬学的に許容されるエステル」という用語は、第10位及び第11位におけるヒドロキシル官能基の一方または両方により形成され、in vivoで加水分解されるエステルを指し、ヒト体内で容易に分解されて親化合物またはその塩から放出されるエステルを含む。適切なエステル基は、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、環状アルカン酸、及びアルカンジオール酸に由来するエステル基を含み、その中の各アルキル部分またはアルケニル部分は6を超える炭素原子を有さないことが有利である。具体的なエステルの例は、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、及びエチルコハク酸エステルを含む。
【0115】
アポモルフィンの遊離塩基は、肺内障壁を極めて容易に超え、それで、肺内吸入によるその投与が治療効果の極めて迅速な発効を示すことが期待されるため、本発明の文脈では特に好ましい。こうして、アポモルフィンの遊離塩基を用いて、本明細書で開示される任意の組成物を調合することができる。代替的に、塩酸アポモルフィンの半水和物もまた、好ましい形態である。
【0116】
薬物動態
「オフ」期を回避する場合、所望の時間内におけるバイオアベイラビリティーの概念が治療的に重要となる。これが達成されると、迅速な治療的症状緩和が確保される。
【0117】
本発明の一実施形態において、名目用量は、約400〜約1600μgの塩酸アポモルフィンを含み、該用量は、in vivoにおいて、約3.03±0.71ng/ml〜約11.92±1.17ng/mlの平均Cmaxをもたらす。任意の用量のアポモルフィンに対するCmaxは、肺内吸入による投与の1〜30分間後、好ましくは0.1〜5分間後、また最も好ましくは0.1〜2分間後にもたらされる。該薬剤の終末相消失は、任意の用量に対して約1時間である。勃起機能障害の治療のために肺内投与により送達されるアポモルフィン用量に対する消失半減期は、約60分間であることが報告されている。本明細書で開示されるパーキンソン病の治療のために肺内投与により送達されるアポモルフィン用量に対する消失半減期は、約20〜60分間であった。
【0118】
こうして、本発明による、アポモルフィンを含む組成物は、肺内吸入による該組成物の投与から1〜5分間以内にCmaxをもたらす。Cmaxは用量依存的である。吸入時におけるアポモルフィンのこの迅速な吸収は、これらの組成物の投与により約10分間以内に治療効果がもたらされることを可能とする。
【0119】
本発明による組成物はまた、肺内吸入後における終末相消失半減期が30〜70分間でもある。
【0120】
本発明の組成物に関するこれらの薬物動態の重要性は、アポモルフィン組成物を吸入する結果、患者間のばらつきが極めて小さい、1〜3分間の安定的なTmaxがもたらされることをこれらが示すことである。これは、10〜60分間で変化して患者間のばらつきが大きい、アポモルフィンの皮下投与後において観察されるTmaxとは対照的である。
【0121】
乾燥粉末吸入器用製剤の調製
本発明の組成物が添加剤材料を含む場合、これが組み込まれる方式は、添加剤材料がFPF及びFPDを含む粉末性能に対して及ぼす効果に大きな影響を与える。
【0122】
一実施形態において、本発明による組成物は、選択された適切なサイズのアポモルフィン粒子を、添加剤材料の粒子及び/または担体粒子とブレンドするだけで調製される。粉末成分は、例えば、Turbula(商標)などの回転式ミキサー内における静かな混合工程によりブレンドすることができる。このような静かな混合工程では一般に、混合される粒子サイズは実質的に減少しない。加えて、粉末粒子は、互いに対して融合する傾向がなく、むしろファンデルワールス力などの凝集力の結果として凝集する。これらの緩やかであるかまたは不安定な凝集物は、組成物を分注するのに用いられる吸入用デバイスの作動時において容易に分解される。
【0123】
圧縮製粉工程
本発明による組成物を調製する代替的な工程では、粉末成分を、メカノフュージョン(「機械的化学結合」としても知られる)及びサイクロミックス処理と称する工程などの圧縮製粉工程にかける。
【0124】
名称が示唆する通り、メカノフュージョンとは、第1の材料を第2の材料に機械的に融合させることを目的とする乾燥被覆工程である。「メカノフュージョン」及び「メカノフュージョン処理した」という用語の使用は、特定の装置において実施される製粉工程ではなく、特定の種類の製粉工程を指すものとして解釈されることが想定されていることに注意されたい。該圧縮製粉工程は、内部要素と容器壁面との間における特定の相互作用に依拠することで他の製粉法とは異なる原理に従い作用し、制御されたかなりの大きさの圧縮力によりエネルギーを提供することに基づいている。該工程は、材料の1つが他の材料よりも一般に小さく、かつ/または軟質である場合に特に良好に作用する。
【0125】
微小な活性粒子及び添加剤粒子をメカノフュージョン装置(Mechano-fusionシステムまたはNobilta装置もしくはNanocular装置(ホソカワミクロン株式会社製)など)の容器内にフィードし、それらに遠心力をかけ、容器内壁に対して押圧する。粉末は、両者の間に高相対速度を有するドラム内壁と曲線状の内部要素との間の固定クリアランス内で圧縮される。内壁及び曲線状要素は一緒になって、粒子が一体で押圧されるギャップまたはニップを形成する。結果として、粒子は、ドラム内壁と内部要素(ドラム内壁よりも曲率が大きい)との間に捕捉される際に、極めて大きなせん断力及び極めて強い圧縮応力を受ける。添加剤粒子を局所的に加熱し、軟化させ、破断させ、変形し、平板化して、該粒子に核となる粒子を包み込ませることで被覆を形成するのに十分なエネルギーにより、粒子は互いに対して押圧される。エネルギーは凝集体を破砕するのに一般に十分であり、両成分のある程度のサイズの減少が起こり得る。
【0126】
これらのメカノフュージョン工程及びサイクロミックス処理工程では、活性粒子表面に対する添加剤材料の効果的な混合及び効果的な適用が達成されるように、活性材料の個々の粒子を分離し、これらの粒子の緻密に結合した凝集体を分解するのに十分な程度に大きな力が加えられる。該工程のとりわけ望ましい態様は、添加剤材料が製粉時において変形し、活性粒子表面上に塗布されるかまたはこれに融合し得ることである。
【0127】
しかし、実のところ、これらの圧縮製粉工程において、とりわけ、薬剤粒子が既に微粉化形態(<10μm)にある場合、これらのサイズの減少はほとんどまたはまったく生じない。観察され得る唯一の物理的変化は、粒子のより丸い形状への塑性変形である。
【0128】
他の製粉工程
製粉工程はまた、本発明による乾燥粉末組成物を調合するのにも用いることができる。製粉による微粒子の製造は、従来の技法を用いて達成することができる。語の従来の使用において、「製粉」とは、粗粒子(例えば、MMADが100μmを超える粒子)を微粒子(例えば、MMADが50μm以下の粒子)に分解することが可能な程度に十分な力を活性材料の粒子に加える任意の機械工程の使用を意味する。本発明において、「製粉」という用語はまた、粒子サイズの減少を伴う場合であれ伴わない場合であれ、製剤中における粒子の脱凝集化も指す。製粉される粒子は、製粉するステップの前に大型の場合もあり、微細な場合もある。広範にわたる製粉機及び製粉条件が、本発明の組成物の作製における使用に適する。適切な製粉条件、例えば、製粉の強度及び持続を選択して必要とされる程度の力を提供することは、当業者の能力内にある。
【0129】
添加剤材料を伴う場合であれ伴わない場合であれ、衝撃製粉工程を用いて、本発明によるアポモルフィンを含む組成物を調製することができる。このような工程は、ボール製粉及びホモジナイザーの使用を含む。
【0130】
ボール製粉は、先行技術の共製粉工程で用いるのに適する製粉法である。遠心ボール製粉及び遊星型ボール製粉が、とりわけ好ましい方法である。
【0131】
代替的に、高せん断及び高乱流の条件をもたらす高圧で粒子を含有する流体をバルブから押し出す、高圧ホモジナイザーを用いることができる。粒子に対するせん断力、粒子と機械表面との間または他の粒子との間の衝撃、及び流体の加速化によるキャビテーションのすべてが、粒子の破砕に寄与し得る。適切なホモジナイザーは、最大4000バールの圧力に対応可能なEmulsiFlex高圧ホモジナイザー、Niro Soavi高圧ホモジナイザー(2000バールの圧力に対応可能な)、及びMicrofluidics社製のMicrofluidiser(最大圧力:2750バール)を含む。製粉工程を用いて、上記で定めた空気動力学質量中央径を有する微粒子を提供することができる。合成活性粒子の大規模な調製で用いるには、ボール製粉よりもホモジナイザーの方がより適切であり得る。
【0132】
代替的に、製粉するステップは、高エネルギー媒体ミル、または撹拌ビーズミル、例えば、Netzsch社製高エネルギー媒体ミルまたはDYNOミル(スイス、Willy A. Bachofen AG社製)も伴い得る。
【0133】
粒子サイズの著明な低減も必要な場合は、国際公開第2005/025536号として公表されたより早期の特許出願で開示される通り、共ジェットミル処理が好ましい。共ジェットミル処理工程の結果、直径が低値のミクロン単位またはミクロン未満の合成活性粒子をもたらすことができ、これらの粒子は、受動的DPIを用いて分注する場合も、特に良好なFPF及びFPDを示す。
【0134】
製粉工程では、微粒子または超微粒子の表面に対する添加剤材料の有効な混合及び有効な適用が達成されるように、これらの粒子の緻密に結合した凝集体を分解するのに十分な程度に大きな力が加えられる。
【0135】
これらの衝撃工程により、媒体と粒子との間または粒子間において、高エネルギーの衝撃がもたらされる。実のところ、これらの工程は極めて小型の粒子を作製するのに優れる一方、ボールミルまたはホモジナイザーのいずれも、圧縮工程について観察される形では、結果として得られる薬剤粉末の分散の改善をもたらすのに特に有効ではなかったことが分かっている。各粒子に対する添加剤材料の被覆を作製するのに、第2の衝撃工程はそれほど有効でないと考えられる。
【0136】
活性材料の添加剤材料との共製粉を含む従来の方法(国際公開第2002/43701号で説明される)は、ある量の添加剤材料をその表面上に伴う活性材料の微粒子である合成活性粒子を結果としてもたらす。添加剤材料は、活性材料の粒子表面に対する被覆の形態であることが好ましい。被覆は、非連続的被覆であり得る。添加剤材料は、活性材料の粒子表面に付着する粒子の形態であり得る。活性作用物質の粒子及び添加剤(FCA)または賦形剤の粒子に対する共製粉または共微粉化の結果、添加剤または賦形剤が変形し、活性微粒子表面に塗布されるかまたはこれに融合し、両方の材料からなる合成粒子が作製される。これらの結果として得られる、添加剤を含む合成活性粒子は、製粉処理後における凝集性が低下することが分かっている。
【0137】
少なくとも一部の合成活性粒子は、凝集体の形態であり得る。しかし、合成活性粒子が医薬組成物中に含まれる場合、添加剤材料は、吸入器の作動による患者への該組成物の投与時において、合成活性粒子の分散を促進する。
【0138】
製粉はまた、活性作用物質の放出に対する遅延または制御が可能な材料の存在下で実施することもできる。
【0139】
活性粒子及び添加剤粒子の共製粉または共微粉化は、メカノフュージョン、サイクロミックス処理、及びHybridizerまたはNobiltaの使用を伴う方法などの関連する方法など、圧縮型工程を伴い得る。これらの工程の背後にある原理は、これらが、内部要素と容器壁面との間の特定の相互作用を伴うこと、及びこれらが制御されたかなりの大きさの圧縮力、好ましくは所定の幅のギャップ内における圧縮によるエネルギーの提供に基づくことにおいて、代替的な製粉法の原理とは異なる。
【0140】
一実施形態において、必要な場合、製粉するステップにより作製された微粒子は、次いで、追加の賦形剤と調合され得る。これは、噴霧乾燥工程、例えば、賦形剤を伴う共噴霧乾燥により達成することができる。この実施形態では、粒子を溶媒中に懸濁させ、追加の賦形剤の溶液または懸濁液と共に共噴霧乾燥させる。好ましい追加の賦形剤は、トレハロース、メレジトース、及び他の多糖を含む。薬学的に有効な追加の賦形剤もまた用いることができる。
【0141】
別の実施形態では、多段階工程を用いて、粉末組成物を作製することができる。まず、物質を製粉またはブレンドする。次に、メカノフュージョンにかける前に、粒子を篩にかける。さらなる最適なステップは、担体粒子の添加を伴う。メカノフュージョンステップは、合成活性粒子を「研磨」し、添加剤材料を活性材料内にさらに擦り込むと考えられる。これにより、ジェットミル処理により可能となる極めて小さな粒子サイズと組み合わせて、メカノフュージョンにより粒子に賦与される有益な特性を享受することができる。
【0142】
活性粒子間における凝集及び付着の低減により、凝集体サイズの減少、さらにまたは個別の粒子と同等の性能をもたらすことができる。
【0143】
高せん断ブレンディング
医薬品製造のスケールアップは、1台の装置を用いて複数の機能を実行することを必要とする場合が多い。この例は、生成物を混合及び造粒することができ、これにより、生成物を複数の装置間で移送する必要をなくすミキサー-造粒機の使用である。このようにすることで、粉末偏析の可能性が最小化される。高せん断ブレンディングでは高せん断ローター/ステーターミキサー(HSM)を用いることが多く、混合への適用で用いられるようになっている。ホモジナイザーまたは「高せん断材料処理機」は、材料に対して高圧を発生させ、次いで、これにより、混合物を極めて微細なオリフィスを介して移送するか、または鋭角部分と接触させる。チャンバーを介する流動は、処理される材料に応じて、逆流または並流であり得る。チャンバー数を増加させて、より良好な性能を達成することができる。生成される粒子サイズを最適化するように、オリフィスサイズまたは衝撃角もまた変更することができる。粒子がオリフィス及びチャンバーを通過する際に高せん断材料処理機により発生する高せん断のために、粒子サイズの減少がもたらされる。強力なせん断及び混合サイクルの短縮を適用する能力により、これらのミキサーは、凝集した粉末の均一なブレンドを必要とする適用に対する広範な適性を獲得する。さらに、従来のHSMはまた、高強度の混合、分散、分解、乳化、及び均質化にも広く用いることができる。
【0144】
高電力で高せん断のミキサーによる場合でも、小粒子が完全に分散するには、比較的長時間の「老化」が必要とされ、この時間は、混合力の増大、または撹拌器の回転速度の増大によりせん断速度を増大させても、あまり短縮されないことは粉末製剤の製造において、当業者によく知られている。高せん断ミキサーはまた、薬剤粒子の自己付着特性が、表面エネルギーを低下させる粒子被覆または粒子膜を形成する力制御作用物質の使用と共に高せん断力も必要とする程度である場合にも用いることができる。
【0145】
噴霧乾燥及び超音波ネブライザー
噴霧乾燥を用いて、アポモルフィンを含む吸入可能なサイズの粒子を作製することができる。噴霧乾燥工程は、活性作用物質と、粒子の凝集及び粉末性能を制御する添加剤材料とを含む噴霧乾燥粒子の作製に適応させることができる。噴霧乾燥工程はまた、制御放出特性をもたらす材料中で分散させるかまたは懸濁させた活性作用物質を含む噴霧乾燥粒子を作製するのにも適応させることができる。さらに、賦形剤材料中における活性材料の分散または懸濁は、活性化合物にさらなる安定性を賦与し得る。好ましい実施形態において、アポモルフィンは、主にアモルファス状態で存在し得る。アモルファスのアポモルフィンを含有する製剤は、好ましい溶出特性を有する。これは、粒子が、固溶体または固体分散体であり得る糖ガラス中に懸濁するために可能となる。好ましい追加の賦形剤は、トレハロース、メレジトース、及び他の多糖を含む。
【0146】
噴霧乾燥は、吸入可能なサイズの活性材料粒子を作製するのによく知られて広く用いられる技法である。DPIから分注されるとき、活性粒子が、従来の噴霧乾燥法を用いて形成される粒子よりも良好な性能を示すように、従来の噴霧乾燥法を改善して、化学物理的特性が増強された活性粒子を作製することができる。このような改善は、国際公開第2005/025535号として公開されたより早期の特許出願において詳細に説明されている。
【0147】
特に、特定の条件下において活性作用物質をFCAと共に共噴霧乾燥する結果、肺内吸入用のDPIにより投与される場合に極めて良好な性能を示す優れた特性を有する粒子をもたらし得ることが開示されている。
【0148】
噴霧乾燥工程を操作または調整する結果、粒子表面上に主に存在するFCAをもたらすことができることが分かっている。すなわち、FCAは、粒子全体に一様に分布するのではなく、粒子表面において濃縮される。これは、FCAにより、粒子が凝集する傾向を低下させ得ることを明らかに意味する。これは、DPIの作動時において容易かつ確実に分解する不安定な凝集体の形成を補助する。
【0149】
所与のサイズの飛沫及び分布サイズの狭い飛沫が形成されるように、噴霧乾燥工程における飛沫形成を制御することが有利であり得ることが分かっている。さらに、飛沫形成の制御により、飛沫周囲の気流の制御を可能とすることができ、これを用いて、飛沫の乾燥及び、特に、該乾燥速度を制御することができる。飛沫形成の制御は、従来の2流体ノズルに対する代替品を用いることにより、とりわけ、高速気流の使用を回避することにより達成することができる。
【0150】
特に、制御された速度で移動し、所定の飛沫サイズを有する飛沫を作製する手段を含む噴霧乾燥器を用いることが好ましい。飛沫の速度は、それらが噴霧される気体の本体に対して制御されたものであることが好ましい。これは、飛沫の初期速度及び/またはそれらが噴霧される気体本体の速度を制御することにより、例えば、超音波ネブライザー(USN)を用いて飛沫を作製することにより達成することができる。電気噴霧ノズルまたは振動型オリフィスノズルなどの代替的なノズルも用いることができる。
【0151】
一実施形態では、噴霧ミスト中の飛沫を形成するのにUSNを用いる。USNでは、液体中に浸漬された超音波トランスデューサーを用いる。超音波トランスデューサー(圧電結晶)は、超音波周波数で振動して、液体の噴霧化に必要とされる短波長をもたらす。USNの一般的な一形態では、直接にまたは通常水である液体を組み合わせることにより、振動がその表面から噴霧用液体へと伝達されるように、結晶の土台を保持する。超音波振動が十分に強力である場合、ネブライザーチャンバー内における液体表面において液体の湧出が形成される。先端部から飛沫が発せられ、「霧」が放出される。
【0152】
USNは既知であるが、従来は薬剤を含有する溶液の直接的な吸入のための吸入用デバイスにおいて用いられ、これらが噴霧乾燥器で広く用いられることはかつてなかった。噴霧乾燥におけるこのようなネブライザーの使用は多くの重要な利点を有することが発見されているが、これらが認知されることはかつてなかった。好ましいUSNは粒子の速度を制御し、したがって、粒子が乾燥する速度を制御し、これにより、結果として得られる粒子の形状及び密度に影響を与える。USNの使用はまた、2流体ノズルなど、飛沫を作製するのに用いられる従来型のノズルを伴う従来の噴霧乾燥器を用いて可能となるよりも大きな規模において噴霧乾燥を実施する可能性ももたらす。
【0153】
微粒子乾燥粉末を作製するのに好ましいUSNの特性は、噴霧速度が低速であること、ネブライザーを作動させるのに必要な担体気体の量が少ないこと、比較的小さな飛沫サイズ及び分布サイズの狭い飛沫が生成されること、USNの構成が単純であること(疲労、汚染などの可能性がある移動部分を有さないこと)、飛沫周囲の気流を正確に制御することができ、これにより乾燥速度を制御すること、作製速度が高速であり、従来の2流体ノズル配置を用いる場合には困難であり高額な形での、USNを用いる乾燥粉末の作製を市販可能とすることを含む。
【0154】
USNは、液体の速度を増大させることにより液体を飛沫に分離するわけではない。そうではなくて、超音波ネブライザーにより引き起こされる振動により必要なエネルギーが提供される。
【0155】
さらなる実施形態は、超音波ネブライザー(USN)、回転式噴霧器、または電気流体力学(EHD)噴霧器を用いて粒子を発生させる。
【0156】
送達デバイス
本発明に従う吸入可能な組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)により投与することが好ましいが、また、加圧式定量吸入器(pMDI)によっても、さらに噴霧システムによっても投与することができる。
【0157】
乾燥粉末吸入器の場合、投与される用量は、非加圧乾燥粉末の形態で保持され、吸入器の作動時において、粉末粒子が、患者により吸入され得る微細に分散した粒子クラウドの形態でデバイスから駆出される。
【0158】
乾燥粉末吸入器は、患者の吸気が、デバイス内に起動力を提供する唯一の気体提供源である「受動的」デバイスであり得る。「受動的」乾燥粉末吸入用デバイスは、Rotahaler及びDiskhaler(GlaxoSmithKline社製)、Monohaler(MIAT社製)、Gyrohaler(商標)(Vectura社製)、Turbohaler(Astra-Draco社製)、及びNovolizer(商標)(Viatris GmbH社製)を含む。代替的に、圧縮気体の提供源または代替的なエネルギー提供源を用いる「能動的」デバイスも用いることができる。適切な能動的デバイスの例は、Aspirair(商標)(Vectura社製)及びNektar Therapeutics社製の能動的吸入用デバイス(米国特許第6,257,233号明細書が対象とする)を含む。
【0159】
受動型吸入器及び能動型吸入器を用いて分散させる場合、異なる組成物は異なる性能を示すと一般に考えられる。受動的デバイスは、デバイス内においてより小さな乱流を創出し、粉末粒子は、デバイスから放出されるときによりゆっくりと移動する。これにより、計量用量の一部がデバイス内に残留するが、これは、組成物の性質、作動時における脱凝集化が低度であることによる。しかし、ゆっくりと移動するクラウドが吸入される場合、咽喉において観察される沈着は減少することが多い。これに対して、能動的デバイスは、作動時においてより大きな乱流を創出する。この結果、粉末をより大きなせん断力下に置くので、計量用量のより多くがブリスターまたはカプセルから抽出され、より良好な脱凝集化がもたらされる。しかし、粒子は、受動的デバイスによる場合よりも速く移動しながらデバイスから放出され、これにより、咽喉沈着は増大する可能性がある。
【0160】
驚くべきことに、高比率のアポモルフィンを有する本発明の組成物は、能動的デバイス及び受動的デバイスのいずれも用いて分注する場合も良好な性能を示すことが分かっている。異なる種類の吸入用デバイスについて上記で予測した通り、一部が失われる傾向もあるが、この喪失は最小限であり、計量用量のアポモルフィンの大部分が肺内に沈着することをやはり可能とする。肺に到達すると、アポモルフィンは迅速に吸収され、優れたバイオアベイラビリティーを示す。
【0161】
本明細書では、特に好ましい「能動的」乾燥粉末吸入器としてAspirair(登録商標)吸入器を挙げるが、これは、それらの内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2001/00262号、国際公開第2002/07805号、国際公開第2002/89880号、及び国際公開第2002/89881号においてより詳細に説明されている。しかし、本発明の組成物は、受動的吸入用デバイスによって投与することもでき、能動的吸入用デバイスによって投与することもできることを理解されたい。
【0162】
代替的な実施形態において、組成物は溶液または懸濁液であり、これは、加圧式定量吸入器(pMDI)を用いて分注される。この実施形態による組成物は、HFA 134aまたはHFA 227などの液体高圧ガスと混合するかまたはこの中に溶解させた、上記で論じた乾燥粉末組成物を含み得る。
【0163】
またさらなる実施形態において、組成物は溶液または懸濁液であり、加圧式定量吸入器(pMDI)、ネブライザー、またはソフトミスト吸入器を用いて投与される。適切なデバイスの例は、Modulite(登録商標)(Chiesi社製)、SkyeFine(商標)、及びSkyeDry(商標)(SkyePharma社製)などのpMDIを含む。Porta-Neb(登録商標)、Inquaneb(商標)(Pari社製)、及びAquilon(商標)などのネブライザー、ならびにeFlow(商標)(Pari社製)、Aerodose(商標)(Aerogen社製)、Respimat(登録商標)吸入器(Boehringer Ingelheim GmbH社製)、AERx(登録商標)吸入器(Aradigm社製)、及びMystic(商標)(Ventaira Pharmaceuticals社製)などのソフトミスト吸入器。
【0164】
pMDIを用いて組成物を分注する場合、アポモルフィンを含む組成物は、高圧ガスをさらに含むことが好ましい。本発明の実施形態において、高圧ガスは、CFC-12もしくは1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC 134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)、HCFC-22(ジフルオロクロロメタン)、HFA-152(ジフルオロエタン及びジフルオロイソブテン)などのオゾン保護的な非CFC型高圧ガス、またはこれらの組合せである。このような製剤は、活性作用物質及び/または他の成分を懸濁させ、溶解させ、保湿し、乳化させるためであり、MDIのバルブ部材を潤滑化するためのポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、プロポキシル化ポリエチレングリコール、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルなどの極性界面活性剤の含有を必要とし得る。
【0165】
要約
結論として、肺内送達の利点を以下の通りにまとめることができる。
【0166】
肺内送達による送達効率及びバイオアベイラビリティーの増大は、鼻腔内送達の場合の約3分の1のアポモルフィン用量レベルで、必要とされる有効性を達成する可能性と、最終的により優れた危険性:有益性プロファイルとをもたらす。
【0167】
経口吸入による肺内送達は、経鼻投与にまつわる一部の複雑さを免れる結果、より迅速で安定的な全身曝露をもたらし、これが、加速化され、極めて予測可能な治療効果に置き換えられる。これらのパラメータは、多くの中枢神経系障害、また特にパーキンソン病の治療を考える場合に満たされていない重要な臨床的必要である。
【0168】
アポモルフィンの肺内送達は、より患者保護的な投与経路を構成し、これは、より優れた局所的忍容性プロファイルと関連するが、鼻腔内送達について報告される、投与部位における有害事象の証拠とは関連しない。
【0169】
(実施例)
(実施例1)
アポモルフィンの噴霧乾燥
実現可能性バッチ:塩酸アポモルフィン(5.04g、バッチ番号:GRN 0436)を250mlの精製水中で溶解させる結果として、2% w/vの全固体原液を得た。特注のMini Spray Dryerを155℃の注入温度及び3バールの噴霧化圧力で用いて、該原液を噴霧乾燥させた。Sympatec社製Particle Size Analyserを用いて、結果として得られる噴霧乾燥粉末(バッチ番号:RDD/07/095)の幾何学的な粒子サイズを決定したところ、3回の解析の平均は以下の通りであった:
×10(μm):1.05
×50(μm):1.91
×90(μm):3.15
×99(μm):4.12
【0170】
スケールアップバッチ:塩酸アポモルフィン(14.9g、バッチ番号:GRN 0436)を750mlの精製水中で溶解させる結果として、2% w/vの全固体原液を得た。特注のMini Spray Dryerを155℃の注入温度及び3バールの噴霧化圧力で用いて、該原液を噴霧乾燥させた。Sympatec社製Particle Size Analyserを用いて、結果として得られる噴霧乾燥粉末(バッチ番号:RDD/07/096)の幾何学的な粒子サイズを決定したところ、3回の解析の平均は以下の通りであった:
×10(μm):1.10
×50(μm):2.10
×90(μm):3.49
×99(μm):4.43
【0171】
(実施例2)
pMDI
pMDIの準備:純粋な微粉化された塩酸アポモルフィンを含む粉末を測定して、pMDIの専用缶に入れた。該缶に計量バルブを取り付け、これらにHFA 134a高圧ガスを再充填した。各缶を十分に振とうし、分散させた。
【0172】
in vitroにおけるpMDIの測定:アンダーセンカスケードインパクターを用いて、各pMDIから発生したエアゾールプルームを特徴づけた。毎分28.3リットルの気流をインパクター内に引き入れ、10回の反復ショットを噴射した。各作動の間には、各pMDIを振とうして質量を測定した。インパクターの各ステージ上に沈着した薬剤のほか、デバイス、咽喉、及びゴム製のマウスピースアダプター上に沈着した薬剤も溶媒中に回収してHPLCにより定量した。
【0173】
エタノールベースのHFA 134aによるpMDI製剤中における塩酸アポモルフィンの溶解度が低いため、高量の薬剤充填時(600μg/回)におけるアポモルフィンには、溶液pMDI法を用いることができない。かつて、低用量(<25μg/50μl)のHFA134a/HFA 227溶液製剤を作製したが、高エタノール含量(50% w/w)時に限られた。アポモルフィン類似体を用いて、100〜500μg/50μlの所望の用量範囲で高効率の溶液製剤を調合することができる。
【0174】
9種類の製剤(表1及び表2を参照されたい)を作製した。
【0175】
600μg/50μl製剤に対する目視評価(図1〜4を参照されたい)により、アポモルフィンが純粋なHFA 134a中で急速に沈殿し、少量の絶対エタノール(5% w/w)及びオレイン酸(0.04% w/w)の添加では沈殿速度が顕著には遅くならないことが分かった。
【0176】
製剤4〜6(図5〜8を参照されたい)では、薬剤濃度を低下させて(300μg/50μl)検討した。ここでもまた、アポモルフィンは純粋なHFA 134a中で急速に沈殿することが観察された。少量の絶対エタノール(2.5% w/w)及びオレイン酸(0.02% w/w)の添加では沈殿速度が顕著には遅くならなかった。
【0177】
HFA 227によるアポモルフィン(264μg/50μl)懸濁液を作製したところ(表2を参照されたい)、アポモルフィンはクリーム状となる(浮く)ことが観察され(図9〜12を参照されたい)、これは、アポモルフィン粒子の密度がHFA134a(1.226g/ml)とHFA 227(1.415g/ml)との間のあるレベルであることを示す。HFA 227懸濁液へのHFA 134aの添加により、約60(% w/w)HFA 227及び40(%w/w)HFA134aによる組成物の場合にアポモルフィンの密度を釣り合せ得ることは、アポモルフィンの密度が約1.33g/mlであることを示す。
【0178】
60:40(% w/w)の比率におけるHFA 227及びHFA 134aの組合せを用いて、高揮発性の懸濁液製剤を開発することが可能であり得る。製剤を高揮発性とすることにより、高効率の噴霧化及び良好な<5μmの送達をもたらし得る。閉塞(問題である場合)に対処し得るように、アクチュエーターオリフィス付近での高圧ガスの急激なフラッシングを抑制するのに少量のエタノール(2% w/w)を必要とし得るが、該製剤は、Bespak社製BK630シリーズの0.22〜0.30mmアクチュエーターと適合する。3Mで被覆(Dupont社製、3200 200型)した缶及びValois社製DF31型50μlバルブの使用は、この種の製剤と共に良好に機能し、缶の寿命にわたり安定的な送達性能を促進する。賦形剤を欠いても、良好な製剤安定性がもたらされ得る。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
(実施例3)
受動的/能動的DPI:アポモルフィンをステアリン酸マグネシウムと共にメカノフュージョン処理し、次いで混合した製剤
混合製剤、すなわち、異なる粒子を含む製剤:
(a)ステアリン酸マグネシウムで被覆した塩酸アポモルフィン:
微粉化した塩酸アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウムを、75:25の質量比で混合した。次いで、このブレンド(約20g)を、以下のメカノフュージョン工程により製粉した。900rpmで5分間にわたり粉末をあらかじめ混合した。次いで、30分間にわたり、機械の速度を約4,800rpmまで増大させた。製粉処理時には、要素と容器内壁との間のクリアランスを1mmとし、冷却用ジャケットにより冷却水を適用しながらメカノフュージョン装置を作動させた。次いで、ドラム容器から合成活性粒子を回収した。
【0183】
(b)より少量のステアリン酸マグネシウムで被覆した塩酸アポモルフィン:
同じ手順を用いて実験を繰り返したが、活性粒子及び均質化させたステアリン酸マグネシウムを95:5の比率で混合し、4,800rpmで60分間にわたり製粉した。
【0184】
(c)製剤(a)及び(b)を混合して、製剤(b)に由来する迅速な発効と、製剤(a)に由来する遅延溶出とを得る:
塩酸アポモルフィン製剤(a)及び(b)の試料を、Turbulaミキサーにおいて、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
(d)アポモルフィン粒子表面上に粒子間の凝集を低下させる微粒子添加剤を伴い、作動時において乾燥粉末吸入器から放出されるアポモルフィン製剤により、大量吸入用ボーラスが結果としてもたらされる。
【0185】
(実施例4)
ラクトース製剤:70%のラクトース(45〜63μm)を伴う30%の微粉化されたアポモルフィンHCl
ラクトースを篩にかけ、直径が45〜63μmの範囲の粒子を有する試料を得た。初回に用いられた篩スクリーンのサイズは63μmであった。約500mlずつの試料を逐次、5分間ずつ機械による篩にかけた。2回目に用いられた篩スクリーンのサイズは45μmであった。約250mlずつの試料を逐次、10分間ずつ機械による篩にかけた。ラクトース粒子による篩の目詰まりを防止するため、2つの試料を篩にかけた後、45μmのスクリーンを真空吸引した。63μmの篩は通過したが、45μmの篩上には残留する粒子から試料を採取した。これらの粒子は、直径が45〜63μmであると考えることができよう。
【0186】
ラクトース粒子を塩酸アポモルフィンの活性粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)と混合することにより、上記のステップで得られたラクトース粒子の試料を処理した。約50%のラクトースを移し、すべての塩酸アポモルフィンを添加し、活性粒子を挟む上部に残りの50%を入れることにより、210gのラクトース粒子の試料及び90gの活性塩酸アポモルフィン粒子の試料を容量2LのDiosna社製ボールに入れた。
【0187】
214rpmでチョッパーを30rpmに設定したDiosna社製ミキサーを用いて72秒間にわたり、ラクトース粒子及び塩酸アポモルフィン粒子をあらかじめ混合した。次いで、857rpmでチョッパーを30rpmに設定して7分間にわたり粒子を混合し、この工程を1分間隔で停止させ、ボールの側面をすくい取った。手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。混合物をDiosna社製ミキサーに戻し、214rpmでチョッパーを30rpmに設定して72秒間にわたり混合した。
【0188】
【表4】
【0189】
薬物動態結果:アポモルフィンは迅速に吸収され、アポモルフィンのピーク血漿濃度は、吸入の1〜3分間後に観察された。AUC(0〜t)、AUC(0〜∞)、及びCmaxについて、用量比例関係が観察された。
【0190】
【表5】
【0191】
これらの結果は、アポモルフィン血漿濃度が用量に比例して3〜5.7倍に増大することを示唆する。
【0192】
安全性結果:治療時に発生した有害事象(TEAE)を経験する患者は少数であり、TEAEの発症数または種類に顕著な治療群間差は見られなかった。400μg、1000μg、及び1600μgの名目用量に対する忍容は良好であった。投与の<24時間後において最も一般的なTEAEは、神経系障害であった。
【0193】
(実施例5)
10%のステアリン酸マグネシウムを伴う90%の微粉化された塩酸アポモルフィン:受動的/能動的DPI
塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウムを添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0194】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をジェットミルに通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0195】
【表6】
【0196】
(実施例6)
ジェットミル処理した50%の塩酸アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウム(実施例2)を、ステアリン酸マグネシウムと共にメカノフュージョン処理した50%のラクトースと混合する
(a)ホソカワミクロン株式会社製Nanocularを用いて、超微粒ラクトース(粒子サイズd0.5が約30μmである)を、5%ステアリン酸マグネシウムと共にメカノフュージョン処理した。
【0197】
(b)ラクトースと、質量で5%のステアリン酸マグネシウム粒子とを含有する、ステップ(a)で作製された担体粒子の試料(5g)を、10分間にわたる高せん断混合により、実施例5による混合物の試料5gと混合した。混合物の試料12mgほどを、Aspirair(登録商標)ブリスターに移し、Aspirair(登録商標)乾燥粉末吸入器を用いてin vitro評価を行った。
【0198】
【表7】
【0199】
(実施例7)
98%の微粉化塩酸アポモルフィンを2%のロイシンと共に共ジェットミル処理する
塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ロイシン粒子と混合することにより処理した。147gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に3gのロイシン粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0200】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をジェットミルに通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0201】
6mgほどの混合物試料をAspirair(登録商標)ブリスターに移し、Aspirair(登録商標)乾燥粉末吸入器を用いてin vitroにおける評価を行った。
【0202】
【表8】
【0203】
(実施例8)
Diosna社製ミキサーによるブレンド
ホソカワミクロン株式会社製AS100型Jet Millを用いてアポモルフィン粒子を調製した結果、1.9μmのD0.5が得られた。18.5%(w/w)のアポモルフィン、1.5%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、及び80%(w/w)のラクトース(Respitose SV003)を含む最終製剤を作製するため、813μmのスクリーンサイズを用いるQuadro(登録商標)Comil(登録商標)により、完了するまで1000rpmの速度で3種の成分を個別にスクリーニングした。1500rpmで1分間にわたりDiosna社製ミキサーを用いて、ラクトース及びステアリン酸マグネシウムからなるプレブレンドを作製した。
【0204】
約50%のラクトース及びステアリン酸マグネシウムのプレブレンドをDiosna社製ボールから取り出し、残りのラクトース及びステアリン酸マグネシウムのプレブレンド上に活性塩酸アポモルフィンの試料を入れた。次いで、取り出したラクトース及びステアリン酸マグネシウムのプレブレンドを塩酸アポモルフィン層の上に入れ直し、これにより、活性粒子を「挟んだ」。次いで、この製剤を600rpmで6分間にわたって処理した。
【0205】
完成した製剤を、Omnidose充填器によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0206】
【表9】
【0207】
(実施例9)
PowderHale用製剤:共ジェットミル処理後にMCBを行う
塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウム粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0208】
(a)315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をJet Mill(ホソカワミクロン株式会社製AS50S型)に通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0209】
(b)共ジェットミル処理された製剤(a)の試料(80mL)を、以下のメカノフュージョン工程により製粉した。まず、最高速度の5%で5分間にわたり機械を作動させた。次いで、5分間にわたり機械速度を最高速度の20%まで増大させた。最後に、最高速度の80%で10分間にわたり機械を作動させた。製粉処理時には、要素と容器内壁との間のクリアランスを3mmとし、冷却用ジャケットにより冷却水を適用しながらメカノフュージョン装置を作動させた。ドラム容器から結果として得られる活性粒子を回収した。
【0210】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これをAspirair(登録商標)デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、60L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0211】
【表10】
【0212】
(実施例10)
共ジェットミル処理後にラクトースとの高せん断ブレンディングを行う
(a)塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウム粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0213】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をJet Mill(ホソカワミクロン株式会社製AS50S型)に通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0214】
(b)約50%のラクトースを移し、(a)のすべてを添加し、残りの50%を共ジェット処理した粒子上にこれを挟んで入れることにより、33gの共ジェットミル処理した製剤(a)及び117gのラクトース粒子の試料を容量1LのDiosna社製ボールに入れた。214rpmでチョッパーを30rpmに設定したDiosna社製ミキサーを用いて、1分間にわたりラクトース粒子及び(a)をあらかじめ混合した。次いで、1000rpmでチョッパーを30rpmに設定して6分間にわたり粒子を混合し、この工程を1分間隔で停止させ、ボールの側面をすくい取った。手作業により混合物を160μmの篩スクリーンに通した。混合物をDiosna社製ミキサーに戻し、250rpmでチョッパーを30rpmに設定して1分間にわたり混合した。
【0215】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0216】
【表11】
【0217】
(実施例11)
共ジェットミル処理後にMCBを行い、次いで、ラクトースとの高せん断ブレンディングを行う
(a)塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウム粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0218】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をJet Mill(ホソカワミクロン株式会社製AS50S型)に通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0219】
(b)共ジェットミル処理された製剤(a)の試料(80ml)を、以下のメカノフュージョン工程により製粉した。まず、最高速度の5%で5分間にわたり機械を作動させた。次いで、5分間にわたり機械速度を最高速度の20%まで増大させた。最後に、最高速度の80%で10分間にわたり機械を作動させた。製粉処理時には、要素と容器内壁との間のクリアランスを3mmとし、冷却用ジャケットにより冷却水を適用しながらメカノフュージョン装置を作動させた。次いで、ドラム容器から結果として得られる活性粒子を回収した。
【0220】
(c)約50%のラクトースを移し、(a)のすべてを添加し、残りの50%を共ジェット処理した粒子上にこれを挟んで入れることにより、33gの共ジェットミル処理した製剤(a)及び117gのラクトース粒子による試料を容量1LのDiosna社製ボールに入れた。214rpmでチョッパーを30rpmに設定したDiosna社製ミキサーを用いて、1分間にわたりラクトース粒子及び(a)をあらかじめ混合した。次いで、1000rpmでチョッパーを30rpmに設定して6分間にわたり粒子を混合し、この工程を1分間隔で停止させ、ボールの側面をすくい取った。手作業により混合物を160μmの篩スクリーンに通した。混合物をDiosna社製ミキサーに戻し、250rpmでチョッパーを30rpmに設定して1分間にわたり混合した。
【0221】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0222】
【表12】
【0223】
(実施例12)
ラクトース及びステアリン酸マグネシウム
(a)ラクトース粒子及びステアリン酸マグネシウム粒子の試料を、Quadro(登録商標)Comil(登録商標)を1000rpmで用いて、813μmのスクリーンによりスクリーニングした。約50%のラクトースを移し、すべてのステアリン酸マグネシウムを添加し、残る50%のラクトースをステアリン酸マグネシウム上にこれを挟んで入れることにより、480gのラクトース粒子の試料及び12gのステアリン酸マグネシウム粒子の試料を容量2LのDiosna社製ボールに入れた。Diosna社製ミキサーを用いて、1500rpmで1分間にわたりラクトース粒子及びステアリン酸マグネシウム粒子を混合した。
【0224】
(b)活性塩酸アポモルフィン粒子の試料を、Quadro(登録商標)Comil(登録商標)を1000rpmで用いて、813μmのスクリーンによりスクリーニングした。約50%の(a)をDiosna社製ボールから取り出し、108gの活性塩酸アポモルフィン粒子の試料をDiosna社製ボールに入れ、取り出した材料(a)を活性粒子の上にこれを挟んで入れた。Diosna社製ボールの内容物を500rpmで6分間にわたって混合した。次いで、Diosna社製のボールから結果として得られる混合物を回収した。
【0225】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0226】
【表13】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン病を含む中枢神経系の疾患及び障害の治療を改善する、アポモルフィンを含む組成物に関する。特に、アポモルフィンは、肺内吸入により投与されるものである。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病
パーキンソン病は、1817年に英国で、James Parkinson博士により初めて説明された。該疾患は、1,000人当たり約2人が罹患し、50歳を超える人々において発生することが最も多く、男女共に罹患する。該疾患は、老齢者の最も一般的な神経障害の1つであり、若齢成人において発生する場合もある。場合によって、若齢者が罹患する場合はとりわけ、パーキンソン病は家族内で発生する。老齢で発生する症例の大半は、原因が知られていない。
【0003】
個体が経験する症状の詳細は多様であるが、手、腕、足、顎、及び顔面の振戦;四肢及び体幹の硬直または硬化;動作緩慢(bradykinesiaまたはslowness of movement);姿勢の不安定またはバランス及び協調動作の障害のほか、重度の抑鬱も含み得る。治療しないと、パーキンソン病は、すべての脳機能の全般的な劣化を伴うことが多い全面的な機能障害へと進行し、早期の死亡をもたらし得る。
【0004】
パーキンソン病の症状は、脳幹上部の黒質におけるドーパミン分泌(ドーパミン作動性)細胞の喪失から生じる。これらの細胞を失う正確な理由は知られていないが、遺伝的因子及び環境的因子が重要であることが知られている。
【0005】
パーキンソン病の治癒は知られていない。治療の目標は症状をコントロールすることであり、薬剤は、主に脳内におけるドーパミンレベルを上昇させることにより、このコントロールを行うことを目的とする。最も広く用いられる治療は、各種の形態におけるL-ドーパである。しかし、この治療は欠点が多く、その最も重大なものは、フィードバックの阻害により、L-ドーパが、L-ドーパ(したがって、また、ドーパミン)の内因的形成の低下を結果としてもたらし、このため、最終的に、逆効果となることである。時間経過と共に、患者は、運動性の低下状態である「オフ」時間と、薬剤が作用して症状がコントロールされる「オン」時間または「オン」期との間で振動する運動変動を発生させ始める。パーキンソン病患者の40%は発症から4〜6年以内に運動変動を経験し、その後毎年10パーセントずつ増加する。
【0006】
平均的なパーキンソン病患者は、毎日2〜3時間の「オフ時間」を経験する。これらは、筆記時の問題、全般的な動作緩慢、嗅覚の喪失、活力の喪失、筋肉の硬化、歩行時の問題、睡眠障害、バランス困難、椅子からの起立困難、ならびに感覚症状(例えば、疼痛、疲労、及び運動性不穏状態)、自律神経症状(例えば、尿失禁及び多汗)、及び精神障害(例えば、抑鬱、不安、及び精神症)など、運動機能と関連しない他の多くの症状を含む。
【0007】
1つの治療法は、モルヒネ誘導体であり、ドーパミン作動性アゴニストであるアポモルフィンの投与を伴う。早くも1951年にはパーキンソン病の治療として初めて論じられたアポモルフィンの最初の臨床使用が報告されたのはCotziasらによる1970年であるが、その催吐性及び半減期の短さから、経口使用は非実用的であった。
【0008】
パーキンソン病の治療にアポモルフィンの使用が有効なのは、この薬剤の強力なドーパミン作動性作用のためである。しかし、経口投与されるアポモルフィンは発効時間が約30〜45分間であり、この間、患者は無用の苦痛を受ける。今日、より一般的な投与経路は皮下注射である。皮下注射されると、アポモルフィンは、常に7〜10分間で「オン」時間をもたらし、約60分間にわたって変動の全領域-運動、感覚、及び精神-に対する効果を維持することが示されている。
【0009】
アポモルフィンはL-ドーパと組み合わせて用いることができるが、該疾患の後期段階までに患者はおそらくオフ期に由来する重大な不快感を経験しているので、該段階における通常の意図は、患者をL-ドーパから引き離すことである。
【0010】
アポモルフィンは、神経精神問題の発生率が低く、このため、経口の抗パーキンソン病薬による重度の神経精神合併症を有する患者において用いられている。アポモルフィンの注射により、それ以外の理由ではアポモルフィンの治療候補者とはなり得ない選択された患者におけるオフ期の疼痛、おくび、絶叫、便秘、夜間頻尿、ジストニア、勃起不能、及び手術後状態などの特異的な症状を緩和することができる。
【0011】
皮下投与の場合、アポモルフィンの通常の用量は1回の送達当たり2mg(容量0.2ml中で与えられる)であり、より高用量の有益性はアポモルフィンに対する感作の危険性を上回らないため、単一のオフ期間において6mgを超えることは推奨されない。英国医学会薬学会共同編集処方集(BNF)では、皮下注射の(開始後における)通常の範囲を1日当たり3〜30mgとし、用量を分割して投与することを推奨している。1日当たり10回を超える注射の分割を要する患者においては、皮下注入が好ましい場合がある。単回の最高用量は10mgであり、皮下経路(または経路の組合せ)による1日当たりの総用量は100mgを超えないものである。
【0012】
持続的な皮下注入の推奨用量は、当初毎日1mg/時間であり、一般に効果に応じて(4時間ごとを超えない頻度で)、最高500μg/時間ずつのステップで、1〜4mg/時間(14〜60μg/kg/時間)の通常速度まで増量する。注入部位は12時間ごとに変更し、注入は覚醒時間に限って行い、患者が重度の夜間症状を経験しない限り、24時間の注入は勧められない。断続的なボーラスによる追加投与もまた必要であり得る。
【0013】
しかし、低用量のアポモルフィンの頻繁な注射は該疾患症状をコントロールするのに不十分であることが多く、注射の反復により引き起こされる疼痛に加えて、これらの注射の反復は患者にとって不都合であり、服薬遵守違反を結果としてもたらすことが多い。
【0014】
アポモルフィンは、患者が携帯する小型ポンプを用いて、皮下注入により投与することができる。1日を通じて低用量を自動的に投与して、一定用量のドーパミン作動性刺激を与えることにより、運動症状の変動が軽減される。しかし、付添者(配偶者(spouseまたはpartner)であることが多い)が該ポンプの維持管理の責任を負わなくてはならず、この介護者の重荷となる。
【0015】
アポモルフィンの投与について観察される有害作用のうちでは、悪心及び嘔吐、ならびに低血圧が最も重大である。これらの有害作用に照らして、BNFは、アポモルフィン治療を開始する3日前から患者に制吐予防剤を施すことが多く、アポモルフィン治療の終了後8週間にわたりこれを継続することが推奨されることを報告している。さらに、眠気(突発的な睡眠を含む)、精神錯乱、幻覚、注射部位反応(結節形成及び潰瘍形成を含む)、一般にはあまり見られない立ちくらみ、呼吸困難、「オン」期における運動障害、レボドパによる溶血性貧血、まれに好酸球増多、病理学的な賭博行為、性欲亢進及び異常性欲もまた報告されている。
【0016】
用い得る制吐治療は、ドンペリドンまたはトリメトベンザミド(商標名:Tigan)を含む。
【0017】
「パーキンソニズム」という用語は、パーキンソン病においてみられる種類の運動変化の組合せを伴い、特定の薬剤使用または有毒な化学物質への頻繁な曝露などの特定の原因を有することが多い任意の状態を指す。一般に、パーキンソニズムの症状は、パーキンソン病に適用されるのと同じ治療法により治療することができる。
【0018】
アポモルフィンの鼻腔内送達に適する乾燥粉末製剤が、欧州特許第0689438号明細書の焦点である。該粉末製剤は、偶発的な肺内沈着を回避するため、直径が50〜100μmの範囲にあるアポモルフィン粒子を含む。Britannia Pharmaceuticals社により公表された研究で、経鼻投与されたこの種のアポモルフィン組成物の使用について検討したところ、皮下送達されたアポモルフィンとオフ期時間の短縮百分率の点で比較した場合、これらの薬剤の薬学的効果の発現は遅れ、その有効性は低下することが示された。さらに、鼻刺激感が報告されることもあった。
【0019】
アポモルフィンの鼻用製剤は、勃起障害(ED)及び女性性機能障害(FSD)の治療に関して、Nastech社により評価されている。この状態を治療する場合、この投与経路は、アポモルフィンを投与する従来の舌下経路を上回る利点をもたらすが、鼻腔内投与の欠点が多いことは確かである。
【0020】
鼻腔は、得られる表面積が肺と比較して著明に小さい(200m2に対して1.8m2)。鼻腔はまた、15〜20分ごとに生じることが典型的な自然の清浄化も受け、このとき、絨毛細胞により粘液及び残屑が鼻咽頭の後方へと追いやられる。この作用の結果、鼻へと投与されるアポモルフィンの一部は嚥下され、これと同時に初回通過代謝を受ける。これに対し、アポモルフィンは、肺胞膜を介する移送により迅速に全身循環に到達するので、肺における清浄化機構が吸収に影響する可能性は最小限である。
【0021】
うっ血または鼻「血」など、鼻粘膜に対する負荷もまた、経鼻投与後における薬剤の吸収に対して負の影響を与える。さらに、鼻腔経路の形状及び大きさも、薬剤吸収に影響を与える。該経路は患者間で異なるだけでなく、患者内においても、形状及び大きさが1日の異なる時間で変化する。結果として、経鼻送達デバイスは、再現可能で標的化された薬剤送達を確保するために、この大きな難題を克服しなければならない。標的部位への送達を確保するため、鼻用デバイスは、「推進力のある」スプレーを用いることが典型的であり、この結果として望ましくない感覚がもたらされ得る。逆に、Vectura社製の能動的吸入用デバイスであるAspirair(登録商標)または同社製の受動的デバイスであるGyrohaler(登録商標)などの乾燥粉末吸入器を含む吸入器は、口腔及び咽喉における沈着を最小限とする、患者保護的な薬剤「クラウド」をもたらす。
【0022】
さらに、広範な文献により、鼻腔内投与後におけるアポモルフィンに起因する局所的刺激感が説明されており、多数の患者が、試験治療の早期中断をもたらす、鼻刺激感、鼻痂皮形成、鼻づまり、鼻血、投与直後における鼻炎症及び鼻前庭炎を含む、重度であるかまたは機能障害を引き起こす鼻合併症の発作を報告している。
【0023】
以上にも関わらず、Britannia Pharmaceuticals社により開発されたアポモルフィンの鼻用粉末は、皮下注射と同等であり、経口投与よりもはるかに迅速な発効のほか、また、皮下投与経路とも同等なバイオアベイラビリティーももたらすといわれている。
【0024】
今日では、肺内吸入によるアポモルフィンの送達が、送達効率の上昇、バイオアベイラビリティーの増大、及び安定的な吸収をもたらし、他の投与経路と比較して、最終的により迅速でより予測可能な臨床効果を伴うことが発見されている。
【0025】
米国特許第6,193,954号明細書(Abbott Laboratories社)は、ドーパミンアゴニストの肺内送達用製剤に関する。ドーパミンアゴニストは、微粒子または粉末の形態であり、液体媒体中に分散されて肺へと送達されるものである。
【0026】
米国特許第6,514,482号明細書(Advanced Inhalation Research社)は、アポモルフィンの粒子が肺系統へと送達される、パーキンソン病治療における「レスキュー療法」を提供する方法を主張する。レスキュー療法とは通常、生死に関わる状況における非外科的な医学的治療を指す。しかし、パーキンソン病の不快さに反して、該症状は生死に関わることがなく、したがって、この特許は、オフ期の症状からの「レスキュー」に関すると考えられる。米国特許第6,514,482号明細書において用いられる「レスキュー療法」とは、患者に対する薬剤のオンデマンドで迅速な送達により、疾患の症状を軽減またはコントロールする一助となることを意味する。
【0027】
先行技術において、パーキンソン病を治療するドーパミンアゴニストによる組成物及び方法は、オフ期の開始時における固定用量のアポモルフィン投与を伴う。これは、最適の治療を提供しない。個々の患者の具体的な必要に見合うアポモルフィンの適切な用量を容易に決定できれば、極めて有益であろう。これにより、必要最小用量の投与が確保される。このような自己増減システムは柔軟であり、異なる力価を提示する必要なく、患者に合わせた用量の調整を可能にするとされる。該システムはまた、患者がその症状及び必要を満たすアポモルフィンの用量を常に変化させ得る、自己増減の継続も可能にするとされる。これは多くの理由で、特に治療と関連する有害な副作用(嘔吐を含む)を最小化し、アポモルフィン感作の危険性を低下させるために望ましい。
【0028】
患者が経験する「オフ期」を可能な限り軽減し、このようなオフ期全体を回避することがさらなる目的である。過度に高用量のアポモルフィン(とりわけ、24時間で患者に投与される1日当たりの用量に関して)を投与する必要なしに、これを達成することが望ましい。
【0029】
患者が自分で投与して介護者に対する負担を軽減し得る、組成物または治療のレジメンを提供することもまた、明らかに望ましい。定期的で頻繁な注射または恒久的な注入ポンプよりも、安全かつ簡便で疼痛のない投与経路の方が明らかに好ましい。アポモルフィンの頻繁な投与のための容易な送達を可能とする一方で、この依存性を緩和する薬剤が明らかに有利であろう。
【0030】
効果の長期持続を維持することが可能な製剤は、患者が次回の用量を自分で投与することが可能であり、したがって介護者の介助が不要となり得る治療域を患者に提供する。
【0031】
アポモルフィンの催吐作用を軽減する投与法が、明らかに有利であろう。
【0032】
また、期限切れ薬剤の処分に関連する無視できない費用を回避するため、通常の保存条件下である期間にわたり安定なアポモルフィン組成物を提供することも望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】欧州特許第0689438号明細書
【特許文献2】米国特許第6,193,954号明細書
【特許文献3】米国特許第6,514,482号明細書
【特許文献4】国際公開第1997/03649号
【特許文献5】国際公開第2002/43701号
【特許文献6】国際公開第1996/23485号
【特許文献7】国際公開第2002/00197号
【特許文献8】国際公開第2005/025536号
【特許文献9】国際公開第2005/025535号
【特許文献10】米国特許第6,257,233号明細書
【特許文献11】国際公開第2001/00262号
【特許文献12】国際公開第2002/07805号
【特許文献13】国際公開第2002/89880号
【特許文献14】国際公開第2002/89881号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、特に、薬剤レベルの自己増減及び最適化を容易にする程度に十分に嘔吐の誘発が低度であり、薬理学的効果の発効が迅速な、低用量の薬剤の容易な投与に適する安定な乾燥粉末でのアポモルフィンを含む組成物が必要である。
【0035】
アポモルフィンの経鼻投与は、結果として約15分間のTmaxをもたらす。肺内投与は、一部の患者では、結果として1分間未満のTmaxをもたらす。これは、皮下投与後に観察されるTmaxと同等であると考えられる。肺内投与は、経鼻投与よりもバイオアベイラビリティーが大きい。これは、より低いバイオアベイラビリティーを補うため、経鼻用量は増量が必要であることを意味する。
【0036】
2004年4月付のApokyn(登録商標)の情報シートでは、塩酸アポモルフィンが、腹壁内への皮下投与後において迅速に吸収される(ピーク濃度までの時間は10〜60分間の範囲にある)凍結乾燥化合物であることが記載されている。皮下投与後において、アポモルフィンは、静脈内投与の場合と同等のバイオアベイラビリティーを有すると考えられる。アポモルフィンは、特発性パーキンソン病を有する患者の腹壁内へのアポモルフィンの単回皮下投与後において、2〜8mgの用量範囲にわたって直線的な薬物動態を示す。
【0037】
皮下投与されたアポモルフィンのバイオアベイラビリティーが、静脈内投与されたアポモルフィンのバイオアベイラビリティーと同等であることに基づけば、肺内吸入により投与されたアポモルフィンのバイオアベイラビリティーが、皮下注射後におけるバイオアベイラビリティーより大きくはないにせよ、これと同等であることは驚くべきことである。これは、極めて予測外である。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明の第1の態様では、パーキンソン病(PD)を含む中枢神経系の状態を治療する、肺内吸入による投与のためのアポモルフィンを含む乾燥粉末組成物が提供される。
【0039】
肺の病態生理及び吸入されるアポモルフィンの特性が組み合わされる結果、迅速で予測可能な治療効果へと置き換えられる迅速で安定的な全身曝露がもたらされるが、PD治療の改善を考える場合、これらは共に重要な要件である。1分間の短いTmaxが観察されることが好ましい。患者の大半は、アポモルフィンの吸入後10分間以内に転換(すなわち、治療効果の発効)を達成した。一部の患者は、「オフ」状態から「オン」状態への転換が、肺内吸入によるアポモルフィン投与後2分間の速さであることを報告した。
【0040】
一実施形態において、組成物は、患者に投与される最大15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mg、または最大5mgの用量のアポモルフィンを含む。用量は、少なくとも1mg、2mg、3mg、または4mgであることが好ましい。用量は、任意の高用量値を伴う任意の低用量値により定義される範囲内、例えば、少なくとも1mgかつ最大15mg、少なくとも2mgかつ最大15mg、少なくとも3mgかつ最大15mg、少なくとも1mgかつ最大14mg、少なくとも1mgかつ最大13mgなどに含まれる数字であり得る。
【0041】
一態様において、用量は名目用量である。名目用量(ND)は、容器により計量された薬剤量(計量用量としても知られる)である。これは、送達用量と称する、患者に送達される薬剤量とは異なる。
【0042】
微粒子画分(FPF)は通常、デバイスから放出される用量である放出用量(ED)で除したFPD(<5μgの用量)として定義される。FPFは、百分率として表される。本明細書では、ED中のFPFをFPF(ED)と称し、FPF(ED)=(FPD/ED)×100%として計算する。
【0043】
微粒子画分(FPF)はまた、ブリスターまたはカプセル中における用量である計量用量(MD)で除したFPDとして定義し、百分率として表すこともできる。本明細書では、MD中のFPFをFPF(MD)と称し、FPF(MD)=(FPD/MD)×100%として計算する。
【0044】
好ましい実施形態において、用量は、1回だけの吸入を必要とする単回用量として患者に投与される。一実施形態において、用量は、ブリスターまたはカプセルにより提供し、乾燥粉末吸入用デバイスを用いてこれを分注するものであることが好ましい。代替的に、用量は、加圧式定量吸入器(pMDI)を用いて分注することもできる。本発明による組成物用量の投与は、結果として約2〜6mgの微粒子用量(FPD)、また好ましくは約4mgのアポモルフィンをもたらすことが典型的である。これらの用量を肺内粘膜に投与すると、アポモルフィンが吸収される。
【0045】
さらに別の実施形態では、アポモルフィン組成物の用量を必要に応じて、すなわち、患者がオフ期の開始を経験するかまたはこれを疑うときに患者に投与するものである。これにより、「オンデマンドの」治療が提供される。この実施形態では、アポモルフィンの単回有効用量を投与することができる。代替的に、小用量ずつを複数回にわたり逐次的に投与することもでき、各投与の効果は、次回用量を投与する前に患者が評価する。これにより、用量の自己増減及び最適化が可能となる。
【0046】
別の実施形態において、組成物は、24時間にわたり投与される約30〜110mgの用量である1日当たりの用量を提供する。1日当たりの用量は、多数回の投与に分割されることが多い。1日当たりの用量は約50〜約80mgであることが好ましい。これらの1日当たりの用量は、単回(通常、複数回の吸入を伴う)で投与され得るが、1回当たり11mgずつ10回の投与を1日当たりの限度として、すなわち24時間で110mgを限度として、1日当たりの用量を24時間にわたって拡散させ、一部の患者には5〜6回の投与を受けさせる場合もあるが、患者に平均で2〜3回の個別の単回投与を受けさせることを予期する。医療機関により推奨用量が異なることに注意することが重要であり、欧州及び米国ではそれぞれ、10mg及び6mgの単回用量、ならびに1日当たり100mg及び約25mgの最高用量が推奨されている。
【0047】
別の実施形態において、組成物は、定期的で頻繁な間隔、例えば、約60分間、約45分間、約30分間、約20分間、約15分間、または約10分間の間隔での用量の投与を可能とすることで、患者がオフ期の経験を回避するように、上述の注入ポンプの効果と同等の維持療法を提供する。このような実施形態では、患者に症状の十分な緩和を提供することを願う一方で、1日当たりの量を安全な限界内に収めるように、選択された間隔で投与される個々の用量を調整する。例えば、各個別の微粒子用量は、好ましくはアポモルフィン約0.5mg〜約7mg、より好ましくは2mg〜6mg、より好ましくは3mg〜5mg、また最も好ましくは約4.5mg程度で提供される。この範囲内にある微粒子用量は、それぞれ、約0.8mg〜11.5mg、3mg〜10mg、及び約7mgの名目用量により可能となる。一態様において、各個別の微粒子用量は、アポモルフィン約0.5mg〜約3mg程度で提供され、一態様では、約1.6mgで提供される。11.5時間(患者の覚醒時)にわたり10分間隔で投与する場合、これにより、1日当たり110mgの用量が提供される。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、アポモルフィンを含む組成物であって、肺内吸入による投与が、約10分間未満のうちに、また、好ましくは投与から約5分間以内に、投与から約2分間以内に、さらにまたは投与から約1分間以内にCmaxをもたらす組成物が提供される。Cmaxは、1から5分以内に提供されることが好ましい。
【0049】
本発明のさらなる実施形態において、肺内吸入による組成物の投与は、用量依存的なCmaxをもたらす。
【0050】
本発明の別の実施形態によれば、アポモルフィンの用量は肺内に吸入され、前記用量は約10分間以内に治療効果をもたらすのに十分である。場合によって、治療効果は、投与から約5分間、約2分間、さらにまたは約1分間の短時間内で経験される。
【0051】
本発明の別の実施形態において、肺内吸入による組成物の投与は、30〜70分間の終末相消失半減期をもたらす。
【0052】
さらに別の実施形態において、肺内吸入による組成物の投与は、少なくとも45分間、好ましくは少なくとも60分間持続する治療効果をもたらす。臨床試験では、平均75分間持続する治療効果が観察された。
【0053】
さらなる実施形態において、組成物は、少なくとも約70%(質量で)のアポモルフィン、または少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%(質量で)のアポモルフィンを含む。
【0054】
またさらなる実施形態において、本発明による組成物は、パーキンソン病の症状を治療するか、または該症状全体を予防するのに用いられる。患者は用量を投与し、約10分間以内に、その投与した用量がパーキンソン病の症状を治療または予防するのに十分であるかどうかを確認し得ることが好ましい。さらなる用量が必要であると感じられる場合は、これを安全に投与し、所望の治療効果が達成されるまで該手順を反復することができる。
【0055】
このアポモルフィン用量の自己増減は、治療効果の迅速な発効、正確で比較的少ない用量のアポモルフィン、及び嘔吐を含む副作用の低発症率の結果として可能となる。また、投与方式が無痛かつ簡便であり、無用の不快感または不都合のない投与の反復を可能とすることも重要である。
【0056】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による組成物の用量を含む、ブリスター、カプセル、レザバーによる分注システムなどが提供される。
【0057】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様による組成物の用量を分注する吸入用デバイスが提供される。本発明の一実施形態では、乾燥粉末吸入器(DPI)により、吸入可能な組成物が投与される。代替的な実施形態では、加圧式定量吸入器(pMDI)または噴霧システムにより組成物が投与される。
【0058】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による組成物を調製する工程が提供される。
【0059】
本発明の第5の態様によれば、パーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する方法であって、該治療が、本発明の第1の態様による組成物の用量を肺内吸入により投与するステップを伴う方法が提供される。
【0060】
代替的に、パーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する薬剤の製造におけるアポモルフィンの使用であって、アポモルフィンが肺内吸入により投与されるものである使用が提供される。好ましい実施形態において、アポモルフィンは、本発明の第1の態様による組成物の形態である。
【0061】
パーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する新規の方法であって、肺内吸入により投与されるアポモルフィンを含む新規の医薬組成物を用いる方法が提供される。これらの方法は、とりわけ、パーキンソン病などの状態の治療と通常関連する比較的高用量においてアポモルフィンを投与する場合にアポモルフィンの投与と関連する副作用を回避する一方で、所望の治療効果を達成する。
【0062】
本明細書で説明される特定の実施形態は、本発明の例示を目的として示されるものであり、その限定として示されるものではない。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱しない限りにおいて、各種の実施形態で用いることができる。当業者は、日常的な試験だけを用いて、本明細書で説明される特定の手順に対する多くの同等物を認識するか、またはこれを確認することができる。このような同等物は、本発明の範囲内にあると考えられ、特許請求の範囲の対象となる。本明細書において言及されるすべての刊行物及び特許出願は、本発明が関連する当技術分野における当業者のレベルを示す。すべての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が、参照により具体的かつ個別に組み込まれると示されたと仮定する場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。特許請求の範囲及び/または本明細書において「含む」という用語と共に用いられる場合の「1つの(a)」または「1つの(an)」という語は、「1つの(one)」を意味し得るが、これはまた、「1つまたは複数の」、「少なくとも1つの」、及び「1つまたは1つを超える」の意味とも符合する。特許請求の範囲における「または」という用語は、代替物だけを指すことが顕示的に示されるか、または該代替物が互いに排除的でない限り、「及び/または」を意味するのに用いられるが、本開示は、代替物のみ、及び「及び/または」を指す定義を支持する。本出願全体にわたり、「約」という用語は、ある値が、デバイス、該値を決定するのに用いられる方法に固有の誤差のばらつき、または被験対象間に存在するばらつきを含むことを示すのに用いる。
【0063】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる「含む(comprising)」(ならびに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」など、含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(ならびに「有する(have)」及び「有する(has)」など、有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(ならびに「含む(includes)」及び「含む(include)」など、含む(including)の任意の形態)、「含有する(containing)」(ならびに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」など、「含有する(containing)」の任意の形態)という語は、包含的またはオープンエンドであり、列挙されていないさらなるエレメントまたは方法ステップを除外しない。
【0064】
本明細書で用いられる「またはこれらの組合せ」という用語は、該用語に先行して列挙される項目に対するすべての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、またはこれらの組合せ」とは、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCの少なくとも1つを含み、特定の文脈において順序が重要である場合はまた、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACE、BAC、またはCABの少なくとも1つも含むことを意図する。この例を続けると、BB、AAA、MB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどの1項目もしくは複数項目またはこれらの1項もしくは複数項の反復を含有する組合せが顕示的に含まれる。当業者は、文脈から別段に明らかでない限り、任意の組合せにおける項目数または項数に対する制限がないことが典型的であると理解するであろう。
【0065】
本明細書で開示及び主張される組成物及び/または方法のすべては、本開示に照らして不要な実験なしに作製及び実施することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態との関係で説明してきたが、本発明の概念、精神、及び範囲から逸脱しない限りにおいて、本明細書で説明される組成物及び/または方法に対して、また、該方法のステップまたはステップの連鎖において変更を適用し得ることは、当業者に明らかであろう。当業者に明らかなこのような類似の置換及び改変のすべては、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神、範囲、及び概念内にあるとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】製剤1、2、及び3:振とうの5秒後を示す図である。
【図2】製剤1、2、及び3:振とうの10秒後を示す図である。
【図3】製剤1、2、及び3:振とうの15秒後を示す図である。
【図4】製剤1、2、及び3:振とうの30秒後を示す図である。
【図5】製剤4、5、及び6:振とうの5秒後を示す図である。
【図6】製剤4、5、及び6:振とうの10秒後を示す図である。
【図7】製剤4、5、及び6:振とうの15秒後を示す図である。
【図8】製剤4、5、及び6:振とうの30秒後を示す図である。
【図9】製剤8:振とうの5秒後を示す図である。
【図10】製剤8:振とうの10秒後を示す図である。
【図11】製剤8:振とうの15秒後を示す図である。
【図12】製剤8:振とうの30秒後を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、既に用いられている投与法式を上回る多数の重要で思いがけない利点を有する、アポモルフィンの高性能の吸入送達に関する。本発明の投与法式及び組成物により、この優れた性能が可能となる。しかし、予測可能な治療効果をもたらす正確で安定的な量のアポモルフィンの迅速な吸収を可能とする形でアポモルフィンを送達することが重要である。これは、比較的高量の薬剤を投与しなければならないためにいっそう困難である。
【0068】
この肺内投与経路の利点は、安全性の改善、曝露量のばらつきの低下であり、この結果、皮下投与経路及び非侵襲的な投与経路と比較した運動障害の発症率の低下、より迅速な作用の開始がもたらされる。
【0069】
肺内吸入のためのアポモルフィン組成物
PDの有効な治療は比較的高用量のアポモルフィンの送達を必要とするので、大きな技術的困難を克服しなければならない。現在のところ、乾燥粉末吸入用デバイスは、最大3mg、または場合によって最大20mgの用量の粉末を送達する傾向がある。加圧式定量吸入器により送達される用量は、1μg〜3mg程度である。これに対し、PDに対する有効で使用者保護的な治療を行うためには、アポモルフィンを含む11mgほどの用量の乾燥粉末組成物を単回吸入で提供することが意図される。吸入により投与される本発明による乾燥粉末製剤の容量(用量)は、40mgの高用量であり得、一態様では50mgの高用量であり得る。粉末組成物の用量はこのように高用量であるが、名目用量は7mgの領域であり、FPDは約4mgであることが想定される。
【0070】
かつて、市販される乾燥粉末吸入器の多くは投与効率が極めて低く、それが治療効果を有し得るように使用者に適正な形で実際に送達される用量中に存在する活性作用物質の10%という少量にとどまる場合もあった。所望の治療効果に高用量の活性作用物質が必要とされる場合、この低効率は単純に許容外である。
【0071】
投与効率が低いことの理由は、粉末が送達デバイスからの駆出から肺内における沈着まで移動する各段階において、乾燥粉末用量中かなりの比率の活性作用物質が失われる傾向があることである。例えば、かなりの量の材料がデバイスのブリスター/カプセル内に残存し得る。材料は、過度のプルーム速度により対象の咽喉で失われる可能性がある。しかし、送達される用量のかなりの比率が、必要とされる空気動力学径を超える粒子形態で存在する場合が頻繁である。
【0072】
対象の上気道における粒子の埋伏は、いわゆる埋伏パラメータにより予測される。埋伏パラメータは、粒子速度にその空気動力学径の2乗を乗じた量として定義される。結果として、上気道領域を介する作用標的部位への粒子の送達に関連する確率は、その空気動力学径の2乗と関係する。したがって、下気道または肺深部への送達はその空気動力学径の2乗に依存し、小さなエアゾール粒子の方が使用者における投与の標的部位に到達する可能性がはるかに高く、したがって、所望の治療効果を有し得る。
【0073】
空気動力学径が10μm未満の粒子は、肺内に沈着する傾向がある。空気動力学径が2μm〜5μmの範囲にある粒子が一般に細気管支内に沈着するのに対し、空気動力学径が0.05〜3μmの範囲にあるより小さな粒子は肺胞内に沈着する傾向がある。したがって、例えば、肺胞を標的とする粒子の高用量効率は、3μm未満の粒子用量により予測され、該標的部位に到達する可能性が最も高いのは、より小さな粒子である。
【0074】
本発明の一実施形態において、組成物は、アポモルフィンを含む活性粒子を含み、活性粒子の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%が、約10μm以下の空気動力学質量中央径(MMAD)を有する。別の実施形態では、活性粒子の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%が、約2μm〜約5μmのMMADを有する。さらに別の実施形態では、活性粒子の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%が、約0.05μm〜約3μmの範囲にある空気動力学径を有する。本発明の一実施形態では、アポモルフィン粒子の少なくとも約90%が、5μm以下の粒子サイズを有する。
【0075】
しかし、直径が約10μm未満の粒子は、容量に対する表面積比が大きいために熱力学的に不安定であり、これにより、著名に過剰な表面自由エネルギーが提供され、粒子の凝集が促進される。乾燥粉末吸入器において、小粒子の凝集及び吸入器内壁への粒子の付着は、活性粒子が大型の凝集体として吸入器から放出されるか、または吸入器から放出されずにデバイスの内側に付着して残留するか、さらにまたは吸入器を詰まらせるかもしくは遮断する結果をもたらす問題である。
【0076】
安定的な粒子凝集体の形成度が、吸入器の各作動間、ならびにまた、異なる吸入器間、及び異なる粒子バッチ間において不確定であると、用量再現性が低下する。さらに、凝集体の形成は、活性粒子のMMADが大きく増大し、活性粒子の凝集体が肺の必要とされる部分に到達しないことも意味する。結果として、本発明では、投与効率及び用量再現性が良好であり、正確で予測可能な用量を送達する粉末製剤を提供することが不可欠である。
【0077】
サイズが10μm未満である活性粒子を含む乾燥粉末システムの投与効率を改善するために多大な努力がなされ、送達の各段階における薬学的に活性な作用物質の喪失が低減している。過去において、投与効率を上昇させ、より大きな投与再現性を得るための努力は、活性作用物質の微粒子による凝集体の形成を防止することに焦点を当てる傾向があった。このような凝集体は、これらの粒子の有効サイズを増大させ、したがって、活性粒子がその所望の治療効果を及ぼすために沈着すべき下気道または肺深部に到達することを妨げる。提起された方策は、比較的大型の担体粒子の使用を含んでいた。活性作用物質の微粒子は、ファンデルワールス力などの粒子間力の結果として、担体粒子の表面に付着する傾向がある。吸入用デバイスの作動時において、活性粒子は、担体粒子から解離し、次いで、吸入可能な形態でエアゾールクラウド中に存在すると想定されている。加えて、または代替法として、粒子間における凝集及び付着を改変する力制御作用物質として作用する添加剤材料の組み入れも提起されている。
【0078】
しかし、送達される薬剤が極めて高用量である場合、とりわけ、組成物の少なくとも70%が本発明において好ましいアポモルフィンからなる場合、粉末組成物に材料を添加する選択肢は限られている。それにもかかわらず、乾燥粉末組成物が良好な流動特性及び分散特性を示し、良好な投与効率を保証することが不可欠である。
【0079】
本明細書では、「超微粒子用量」(UFPD)という用語を用いて、3μm以下の直径でデバイスにより送達される活性材料の総質量を意味する。本明細書では、「超微粒子画分」という用語を用いて、3μm以下の直径でデバイスにより送達される活性材料総量の百分率を意味する。本明細書では、超微粒子用量百分率(%UFPD)という用語を用いて、3μm以下の直径で送達される総計量用量の百分率を意味する(すなわち、%UFPD=100×UFPD/総計量用量)。
【0080】
本明細書では、「送達用量」及び「放出用量」または「ED」という用語を互換的に用いる。これらは、吸入生成物についての現行のEPモノグラフに記載の通りに測定される。
【0081】
「吸入器の作動」とは、ある用量の粉末を、吸入器におけるその静止位置から取り出す過程を指す。このステップは、使用準備のできた吸入器内に粉末が充填された後で実行される。
【0082】
本発明の一実施形態において、パーキンソン病を含む中枢神経系の状態を吸入により治療するのに用いられる組成物は、FPD用量で約1.5mgのアポモルフィン(すなわち、その塩酸塩質量に基づくアポモルフィン、アポモルフィン遊離塩基、薬学的に許容されるその塩またはエステル)を含む。用量は、FPDで約100〜1500μgの前記アポモルフィンを含み得る。
【0083】
本発明の別の実施形態において、パーキンソン病を含む中枢神経系の状態を吸入により治療するのに用いられる組成物は、名目用量で約4mgのアポモルフィン(すなわち、その塩酸塩質量に基づくアポモルフィン、アポモルフィン遊離塩基、薬学的に許容されるその塩またはエステル)を含み、前記用量は、受動的な乾燥粉末吸入器から送達する場合、FPDで2.5〜3.5mgなど、FPDで約1.5〜3.5mgの前記アポモルフィンを達成し得る。
【0084】
本発明の別の実施形態において、粉末組成物の用量は、米国薬局方第26部、第601章、装置4(2003)の多段式液体インピンジャーである、アンダーセンカスケードインパクターまたは次世代インパクターにより測定する場合、微粒子用量で約400μg〜約4000μgのアポモルフィンなど、約400μg〜約6000μgのアポモルフィン(その塩酸塩質量に基づく)をin vitroで送達する。該用量は、in vitroにおいて、微粒子用量で約400〜約5000μgのアポモルフィン、また、一態様において、微粒子用量で約400〜約4000μgのアポモルフィンを送達することが好ましい。
【0085】
本発明の文脈において、アポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの用量(例えば、マイクログラム単位の)は、その塩酸塩(塩酸アポモルフィン)の質量に基づいて記載される。
【0086】
微粒子が凝集する傾向は、所与の用量のFPFがまったく予測不能であり得、結果として、肺、または肺の適正な部分へと投与される微粒子の比率にばらつきがあることを意味する。これは、例えば、純粋な薬剤を微粒子形態で含む製剤中において観察される。このような製剤は流動特性が低く、FPFが低い。
【0087】
この状況を改善し、安定的なFPF及びFPDを提供しようとする試みにおいて、本発明による乾燥粉末組成物は、抗付着材料であり、組成物中における粒子間の凝集を低下させる、添加剤材料を含み得る。
【0088】
乾燥粉末組成物中の粒子間における凝集を低下させる添加剤材料が選択される。該添加剤材料は、小粒子間における弱い結合力に干渉し、該粒子の分離を保つ一助となり、このような粒子の互いに対する付着、存在する場合は製剤中の他の粒子に対する付着、及び吸入用デバイスの内面に対する付着を低下させると考えられる。粒子の凝集体が形成される場合は、吸入用デバイスの作動時において創出される乱気流中においてこれらの凝集体がより分解されやすくなり、このため、該粒子がデバイスから駆出されて吸入されるように、添加剤材料粒子を添加してこれらの凝集体の安定性を低下させる。凝集体が分解されると、活性粒子は、肺下部に到達することが可能な個々の小粒子の形態または少数の粒子による凝集体の形態に復帰し得る。
【0089】
添加剤材料は、国際公開第1997/03649号で開示される通り、活性粒子の表面に付着する傾向がある粒子の形態であり得る。代替的に、添加剤材料は、例えば、国際公開第2002/43701号で開示される共製粉法により活性粒子表面を被覆することができる。
【0090】
添加剤材料は、抗付着物質であり、粒子間の凝集を低下させる傾向があり、微粒子が吸入用デバイスの内面に付着することも防止することが好ましい。添加剤材料は、減摩剤または潤滑剤であり、吸入器内における粉末製剤に、より良好な流動特性を与えることが有利である。このような形で用いられる添加剤材料は通常、必ずしも抗付着剤または減摩剤と称するわけではないが、粒子間における凝集を低下させるか、または粉末の流動を改善する効果を及ぼす。添加剤材料は、力制御作用物質(FCA)と称することがあり、通常、より良好な用量再現性及びより高いFPFをもたらす。
【0091】
したがって、本明細書で用いられる添加剤材料またはFCAとは、他の粒子の存在下において、また、該粒子が曝露される表面との関係において、粒子表面上におけるその存在により、該粒子が受ける付着表面力及び凝集表面力を改変し得る物質である。一般に、その機能は、付着力及び凝集力を共に低下させることである。
【0092】
互いに対して、またはデバイス自体に対して、粒子が強力に結合する傾向が低下すると、粉末の凝集及び付着が低下するだけでなく、より良好な流動特性も促進され得る。これは、投与ごとに計量される粉末量のばらつきを低下させ、デバイスからの粉末の放出を改善するため、用量再現性の改善をもたらす。これはまた、デバイスから実際に放出される活性材料が患者の肺下部に到達する可能性も増大させる。
【0093】
粉末が吸入用デバイス内に存在する場合は、粒子の不安定な凝集体が粉末内に存在することが好ましい。上記で示した通り、粉末が吸入用デバイスから効率的かつ再現的に放出されるために、このような粉末の粒子は大きく、好ましくは約40μmよりも大きいものである。このような粉末は、サイズが約40μm以上である個別の粒子、及び/またはより微小な粒子の凝集体、サイズが約40μm以上の凝集体の形態であり得る。形成される凝集体のサイズは、製剤を分注するのに用いられるデバイスの種類に応じて100μmまたは200μmであり得、凝集体は最大約1000μmであり得る。添加剤材料の添加により、これらの凝集体は、吸入時に創出される乱気流内において効率的に分解されやすくなる。したがって、粉末中における粒子の不安定であるかまたは「もろい」凝集体の形成は、実質的に凝集体が存在しない粉末と比較して好ましい場合がある。このような不安定な凝集体は、粉末がデバイス内にある間は安定であるが、次いで、吸入時には破壊され分割される。
【0094】
添加剤材料はアミノ酸を含むことが特に有利である。アミノ酸が添加剤材料として存在すると、活性材料の吸入可能画分が大きくなり、また、粉末の流動特性が上昇する。好ましいアミノ酸はロイシン、特にL-ロイシン、ジロイシン、及びトリロイシンである。一般にアミノ酸のL-形態が好ましいが、D-形態及びDL-形態もまた用いることができる。添加剤材料は、以下の任意のアミノ酸:アスパラターム、ロイシン、イソロイシン、リシン、バリン、メチオニン、システイン、及びフェニルアラニンの1つまたは複数を含み得る。添加剤はまた、例えば、ステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸金属、リン脂質、レシチン、コロイド状の二酸化ケイ素、及びフマル酸ステアリルナトリウムも含む場合があり、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第1996/23485号においてより詳細に説明されている。
【0095】
粉末は、粉末質量に基づく質量で少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%のアポモルフィン(またはその薬学的に許容される塩)を含むことが有利である。添加剤材料の最適量は、添加剤材料の正確な性質、及びそれが組成物中に組み込まれる方式に基づく。一部の実施形態において、粉末は、粉末質量に基づく質量で8%以下の添加剤材料を含むことが有利であり、同5%以下の添加剤材料を含むことがより有利である。上記で示した通り、場合によって、粉末が質量で約1%の添加剤材料を含有することが有利である。
【0096】
他の実施形態において、添加剤材料またはFCAは、質量で約0.1%〜約10%、また好ましくは約0.15%〜5%、最も好ましくは約0.5%〜約2%の量で提供することができる。
【0097】
添加剤材料が微粉化されたロイシンまたはレシチンである場合、質量で約0.1%〜約10%の量で提供することが好ましい。添加剤材料は、質量で約3%〜約7%、好ましくは約5%の微粉化されたロイシンを含むことが好ましい。質量で少なくとも95%の微粉化されたロイシンは、粒子直径が150μm未満であることが好ましく、好ましくは100μm未満、また最も好ましくは50μm未満である。微粉化されたロイシンの質量中央径は、10μm未満である。
【0098】
ステアリン酸マグネシウムまたはフマル酸ステアリルナトリウムを添加剤材料として用いる場合、必要とされる最終用量に応じて、約0.05%〜約10%、約0.15%〜約5%、約0.25%〜約3%、または約0.5%〜約2.0%の量で提供することが好ましい。
【0099】
分注デバイスからの乾燥粉末の抽出を改善し、安定的なFPF及びFPDをもたらそうとするさらなる試みにおいて、本発明による乾燥粉末組成物は、担体粒子として作用する不活性の賦形剤材料を含み得る。これらの担体粒子は、活性材料の微粒子及び存在する任意の添加剤材料と混合される。吸入用デバイス内にある間、活性微粒子は、互いに対して粘着することなく、担体粒子表面に付着する傾向があるが、分注デバイスが作動すると放出及び分散され、気道内に吸入されて微小な懸濁体をもたらす。
【0100】
担体粒子は、粉末組成物の容量を著明に増大させる傾向があるため、極めて高用量の活性作用物質を送達する場合、その含有はあまり好ましくない。それにもかかわらず、本発明の一部の実施形態において、組成物は担体粒子を含む。このような実施形態において、組成物は、少なくとも約10%(質量で)のアポモルフィン、または少なくとも約15%、17%、もしくは18%、もしくは18.5%(質量で)のアポモルフィンを含む。担体粒子は、全組成物中の質量で90%以下、好ましくは85%、より好ましくは83%、より好ましくは80%(この場合、アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウムの総含量は、それぞれ、質量で約18.5%及び1.5%となる)などの少量で存在することが好ましい。
【0101】
担体粒子は、任意の許容される不活性の賦形剤材料の場合もあり、材料の組合せの場合もある。例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール、及び結晶糖から選択される1種または複数種の材料からなる場合がある。他の適切な担体は、塩化ナトリウム及び炭酸カルシウムなどの無機塩、乳酸ナトリウムなどの有機塩、ならびに多糖及びオリゴ糖など他の有機化合物を含む。担体粒子は、ポリオールを含むことが有利である。特に、担体粒子は、結晶糖、例えば、マンニトール、トレハロース、メレジトース、デキストロース、またはラクトースの粒子であり得る。担体粒子はラクトースからなることが好ましい。
【0102】
こうして、本発明の一実施形態において、組成物は、アポモルフィンを含む活性粒子及び担体粒子を含む。担体粒子は、平均粒子サイズが約5〜約1000μm、約4〜約40μm、約60〜約200μm、または約150〜約1000μmであり得る。担体粒子に有用な他の平均粒子サイズは、約20〜約30μmまたは約40〜約70μmである。
【0103】
代替的な実施形態において、担体粒子は、全組成物の質量で80%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下などの小量で存在する。担体が80%の量で存在する場合、一態様において、アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウムの総含量は、それぞれ、質量で約18%及び2%となる。これらの製剤中における担体量が変化するにつれて、添加剤及びアポモルフィンの量もまた変化するが、これらの成分比は、依然として約1:9〜約1:13であることが好ましい。
【0104】
代替的な実施形態において、製剤は担体粒子を含有せず、アポモルフィン及び添加剤を含み、全組成物の質量で少なくとも30%、好ましくは60%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、また最も好ましくは97%などが薬学的に活性な作用物質を含む。活性作用物質は、アポモルフィン単独の場合もあり、アポモルフィンと制吐剤との組合せの場合もあり、パーキンソン病患者に有益である他の薬剤との組合せの場合もある。残りの成分は、上記で論じた添加剤材料など、1種または複数種の添加剤材料を含む場合がある。
【0105】
さらなる実施形態において、製剤は担体粒子を含有する場合があり、アポモルフィン及び添加剤を含み、全組成物の質量で少なくとも30%、好ましくは60%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、より好ましくは95%、また最も好ましくは97%などが薬学的に活性な作用物質を含み、残りの成分は、添加剤材料及びより大型の粒子を含む。より大型の粒子は、担体として作用し、また、粉末の流動も促進する二重の作用をもたらす。
【0106】
好ましい実施形態において、組成物は、アポモルフィン(30% w/w)と、平均粒子サイズが45〜65μmのラクトースとを含む。
【0107】
アポモルフィン及び担体粒子を含む組成物は、1種または複数種の添加剤材料をさらに含み得る。添加剤材料は、国際公開第1997/03649号で開示される通り、活性粒子表面に付着する傾向がある粒子の形態であり得る。代替的に、添加剤材料は、例えば、国際公開第2002/43701号で開示される通り、共製粉法により活性粒子表面を被覆することもでき、国際公開第2002/00197号で開示される通り、担体粒子表面を被覆することもできる。
【0108】
一実施形態において、添加剤は、担体粒子表面を被覆する。この被覆形成は、担体及び添加剤のブレンドの結果として、担体粒子表面に付着する(ファンデルワールス力などの粒子間力により)添加剤材料粒子の形態であり得る。代替的に、担体粒子表面に添加剤材料を塗布してこれに融合させ、これにより、不活性の担体物質を核として、その表面に添加剤材料を伴う合成粒子を形成することもできる。例えば、担体粒子に対する添加剤材料のこのような融合は、添加剤材料粒子及び担体粒子に対する共ジェットミル処理により達成することができる。一部の実施形態では、添加剤が担体粒子及び活性粒子の両方に付着または融合するように、3種の粉末成分(活性成分、担体成分、及び添加剤成分)すべてを共に処理する。例示的な一実施形態において、組成物は、アポモルフィン粒子と共に、かつ/またはラクトースと共にジェットミル処理される、ステアリン酸マグネシウム(最大10% w/w)またはロイシンなどの添加剤材料を含む。
【0109】
本発明の一部の実施形態において、アポモルフィン製剤は「担体を含まない」製剤であり、これは、アポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステル及び1種または複数種の添加剤材料のみを含む。
【0110】
これらの「担体を含まない」製剤中では、粉末粒子の質量で少なくとも90%が63μm未満、好ましくは30μm未満、またより好ましくは10μm未満の粒子サイズを有することが有利である。上記で示した通り、肺下部への有効な送達のためには、粉末のアポモルフィン(またはその薬学的に許容される塩)の粒子サイズは、約0.1μm〜5μmの範囲内にあるものである。添加剤材料が粒子形態である場合、これらの添加剤粒子は、サイズが肺下部への送達に好ましい範囲の外にあることが有利であり得る。
【0111】
粉末は、粉末質量に基づくアポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で少なくとも60%を含み得る。粉末は、粉末質量に基づくアポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で少なくとも70%、または少なくとも80%を含むことが有利である。粉末は、粉末質量に基づくアポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも97%を含むことが最も有利である。肺には可能な限り少量の粉末、特に、患者に投与される有効成分以外の材料を導入することが生理学的に有益であると考えられる。したがって、添加剤材料の添加量は、可能な限り少量であることが好ましい。したがって、一態様において、粉末は、アポモルフィンまたはその薬学的に許容される塩もしくはエステルの質量で99%超を含む。
【0112】
アポモルフィンは、遊離塩基形態で、または酸添加塩として存在し得る。本発明の目的には、塩酸アポモルフィン及びアポモルフィンの遊離塩基形態が好ましいが、アポモルフィンの他の薬学的に許容される形態もまた用いることができる。本明細書で用いられる「アポモルフィン」という用語は、この化合物の遊離塩基形態のほか、その薬学的に許容される塩またはエステルも含む。好ましい実施形態では、アポモルフィンの少なくとも一部がアモルファス形態である。アモルファスのアポモルフィンを含有する製剤は、好ましい溶出特性を有する。アモルファスアポモルフィンの安定形態は、トレハロース及びメレジトースなどの適切な糖を用いて調製することができる。
【0113】
塩酸塩に加えて、他の許容される酸添加塩は、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、グルコン酸塩などを含む。
【0114】
本明細書で用いられるアポモルフィンの「薬学的に許容されるエステル」という用語は、第10位及び第11位におけるヒドロキシル官能基の一方または両方により形成され、in vivoで加水分解されるエステルを指し、ヒト体内で容易に分解されて親化合物またはその塩から放出されるエステルを含む。適切なエステル基は、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、環状アルカン酸、及びアルカンジオール酸に由来するエステル基を含み、その中の各アルキル部分またはアルケニル部分は6を超える炭素原子を有さないことが有利である。具体的なエステルの例は、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、及びエチルコハク酸エステルを含む。
【0115】
アポモルフィンの遊離塩基は、肺内障壁を極めて容易に超え、それで、肺内吸入によるその投与が治療効果の極めて迅速な発効を示すことが期待されるため、本発明の文脈では特に好ましい。こうして、アポモルフィンの遊離塩基を用いて、本明細書で開示される任意の組成物を調合することができる。代替的に、塩酸アポモルフィンの半水和物もまた、好ましい形態である。
【0116】
薬物動態
「オフ」期を回避する場合、所望の時間内におけるバイオアベイラビリティーの概念が治療的に重要となる。これが達成されると、迅速な治療的症状緩和が確保される。
【0117】
本発明の一実施形態において、名目用量は、約400〜約1600μgの塩酸アポモルフィンを含み、該用量は、in vivoにおいて、約3.03±0.71ng/ml〜約11.92±1.17ng/mlの平均Cmaxをもたらす。任意の用量のアポモルフィンに対するCmaxは、肺内吸入による投与の1〜30分間後、好ましくは0.1〜5分間後、また最も好ましくは0.1〜2分間後にもたらされる。該薬剤の終末相消失は、任意の用量に対して約1時間である。勃起機能障害の治療のために肺内投与により送達されるアポモルフィン用量に対する消失半減期は、約60分間であることが報告されている。本明細書で開示されるパーキンソン病の治療のために肺内投与により送達されるアポモルフィン用量に対する消失半減期は、約20〜60分間であった。
【0118】
こうして、本発明による、アポモルフィンを含む組成物は、肺内吸入による該組成物の投与から1〜5分間以内にCmaxをもたらす。Cmaxは用量依存的である。吸入時におけるアポモルフィンのこの迅速な吸収は、これらの組成物の投与により約10分間以内に治療効果がもたらされることを可能とする。
【0119】
本発明による組成物はまた、肺内吸入後における終末相消失半減期が30〜70分間でもある。
【0120】
本発明の組成物に関するこれらの薬物動態の重要性は、アポモルフィン組成物を吸入する結果、患者間のばらつきが極めて小さい、1〜3分間の安定的なTmaxがもたらされることをこれらが示すことである。これは、10〜60分間で変化して患者間のばらつきが大きい、アポモルフィンの皮下投与後において観察されるTmaxとは対照的である。
【0121】
乾燥粉末吸入器用製剤の調製
本発明の組成物が添加剤材料を含む場合、これが組み込まれる方式は、添加剤材料がFPF及びFPDを含む粉末性能に対して及ぼす効果に大きな影響を与える。
【0122】
一実施形態において、本発明による組成物は、選択された適切なサイズのアポモルフィン粒子を、添加剤材料の粒子及び/または担体粒子とブレンドするだけで調製される。粉末成分は、例えば、Turbula(商標)などの回転式ミキサー内における静かな混合工程によりブレンドすることができる。このような静かな混合工程では一般に、混合される粒子サイズは実質的に減少しない。加えて、粉末粒子は、互いに対して融合する傾向がなく、むしろファンデルワールス力などの凝集力の結果として凝集する。これらの緩やかであるかまたは不安定な凝集物は、組成物を分注するのに用いられる吸入用デバイスの作動時において容易に分解される。
【0123】
圧縮製粉工程
本発明による組成物を調製する代替的な工程では、粉末成分を、メカノフュージョン(「機械的化学結合」としても知られる)及びサイクロミックス処理と称する工程などの圧縮製粉工程にかける。
【0124】
名称が示唆する通り、メカノフュージョンとは、第1の材料を第2の材料に機械的に融合させることを目的とする乾燥被覆工程である。「メカノフュージョン」及び「メカノフュージョン処理した」という用語の使用は、特定の装置において実施される製粉工程ではなく、特定の種類の製粉工程を指すものとして解釈されることが想定されていることに注意されたい。該圧縮製粉工程は、内部要素と容器壁面との間における特定の相互作用に依拠することで他の製粉法とは異なる原理に従い作用し、制御されたかなりの大きさの圧縮力によりエネルギーを提供することに基づいている。該工程は、材料の1つが他の材料よりも一般に小さく、かつ/または軟質である場合に特に良好に作用する。
【0125】
微小な活性粒子及び添加剤粒子をメカノフュージョン装置(Mechano-fusionシステムまたはNobilta装置もしくはNanocular装置(ホソカワミクロン株式会社製)など)の容器内にフィードし、それらに遠心力をかけ、容器内壁に対して押圧する。粉末は、両者の間に高相対速度を有するドラム内壁と曲線状の内部要素との間の固定クリアランス内で圧縮される。内壁及び曲線状要素は一緒になって、粒子が一体で押圧されるギャップまたはニップを形成する。結果として、粒子は、ドラム内壁と内部要素(ドラム内壁よりも曲率が大きい)との間に捕捉される際に、極めて大きなせん断力及び極めて強い圧縮応力を受ける。添加剤粒子を局所的に加熱し、軟化させ、破断させ、変形し、平板化して、該粒子に核となる粒子を包み込ませることで被覆を形成するのに十分なエネルギーにより、粒子は互いに対して押圧される。エネルギーは凝集体を破砕するのに一般に十分であり、両成分のある程度のサイズの減少が起こり得る。
【0126】
これらのメカノフュージョン工程及びサイクロミックス処理工程では、活性粒子表面に対する添加剤材料の効果的な混合及び効果的な適用が達成されるように、活性材料の個々の粒子を分離し、これらの粒子の緻密に結合した凝集体を分解するのに十分な程度に大きな力が加えられる。該工程のとりわけ望ましい態様は、添加剤材料が製粉時において変形し、活性粒子表面上に塗布されるかまたはこれに融合し得ることである。
【0127】
しかし、実のところ、これらの圧縮製粉工程において、とりわけ、薬剤粒子が既に微粉化形態(<10μm)にある場合、これらのサイズの減少はほとんどまたはまったく生じない。観察され得る唯一の物理的変化は、粒子のより丸い形状への塑性変形である。
【0128】
他の製粉工程
製粉工程はまた、本発明による乾燥粉末組成物を調合するのにも用いることができる。製粉による微粒子の製造は、従来の技法を用いて達成することができる。語の従来の使用において、「製粉」とは、粗粒子(例えば、MMADが100μmを超える粒子)を微粒子(例えば、MMADが50μm以下の粒子)に分解することが可能な程度に十分な力を活性材料の粒子に加える任意の機械工程の使用を意味する。本発明において、「製粉」という用語はまた、粒子サイズの減少を伴う場合であれ伴わない場合であれ、製剤中における粒子の脱凝集化も指す。製粉される粒子は、製粉するステップの前に大型の場合もあり、微細な場合もある。広範にわたる製粉機及び製粉条件が、本発明の組成物の作製における使用に適する。適切な製粉条件、例えば、製粉の強度及び持続を選択して必要とされる程度の力を提供することは、当業者の能力内にある。
【0129】
添加剤材料を伴う場合であれ伴わない場合であれ、衝撃製粉工程を用いて、本発明によるアポモルフィンを含む組成物を調製することができる。このような工程は、ボール製粉及びホモジナイザーの使用を含む。
【0130】
ボール製粉は、先行技術の共製粉工程で用いるのに適する製粉法である。遠心ボール製粉及び遊星型ボール製粉が、とりわけ好ましい方法である。
【0131】
代替的に、高せん断及び高乱流の条件をもたらす高圧で粒子を含有する流体をバルブから押し出す、高圧ホモジナイザーを用いることができる。粒子に対するせん断力、粒子と機械表面との間または他の粒子との間の衝撃、及び流体の加速化によるキャビテーションのすべてが、粒子の破砕に寄与し得る。適切なホモジナイザーは、最大4000バールの圧力に対応可能なEmulsiFlex高圧ホモジナイザー、Niro Soavi高圧ホモジナイザー(2000バールの圧力に対応可能な)、及びMicrofluidics社製のMicrofluidiser(最大圧力:2750バール)を含む。製粉工程を用いて、上記で定めた空気動力学質量中央径を有する微粒子を提供することができる。合成活性粒子の大規模な調製で用いるには、ボール製粉よりもホモジナイザーの方がより適切であり得る。
【0132】
代替的に、製粉するステップは、高エネルギー媒体ミル、または撹拌ビーズミル、例えば、Netzsch社製高エネルギー媒体ミルまたはDYNOミル(スイス、Willy A. Bachofen AG社製)も伴い得る。
【0133】
粒子サイズの著明な低減も必要な場合は、国際公開第2005/025536号として公表されたより早期の特許出願で開示される通り、共ジェットミル処理が好ましい。共ジェットミル処理工程の結果、直径が低値のミクロン単位またはミクロン未満の合成活性粒子をもたらすことができ、これらの粒子は、受動的DPIを用いて分注する場合も、特に良好なFPF及びFPDを示す。
【0134】
製粉工程では、微粒子または超微粒子の表面に対する添加剤材料の有効な混合及び有効な適用が達成されるように、これらの粒子の緻密に結合した凝集体を分解するのに十分な程度に大きな力が加えられる。
【0135】
これらの衝撃工程により、媒体と粒子との間または粒子間において、高エネルギーの衝撃がもたらされる。実のところ、これらの工程は極めて小型の粒子を作製するのに優れる一方、ボールミルまたはホモジナイザーのいずれも、圧縮工程について観察される形では、結果として得られる薬剤粉末の分散の改善をもたらすのに特に有効ではなかったことが分かっている。各粒子に対する添加剤材料の被覆を作製するのに、第2の衝撃工程はそれほど有効でないと考えられる。
【0136】
活性材料の添加剤材料との共製粉を含む従来の方法(国際公開第2002/43701号で説明される)は、ある量の添加剤材料をその表面上に伴う活性材料の微粒子である合成活性粒子を結果としてもたらす。添加剤材料は、活性材料の粒子表面に対する被覆の形態であることが好ましい。被覆は、非連続的被覆であり得る。添加剤材料は、活性材料の粒子表面に付着する粒子の形態であり得る。活性作用物質の粒子及び添加剤(FCA)または賦形剤の粒子に対する共製粉または共微粉化の結果、添加剤または賦形剤が変形し、活性微粒子表面に塗布されるかまたはこれに融合し、両方の材料からなる合成粒子が作製される。これらの結果として得られる、添加剤を含む合成活性粒子は、製粉処理後における凝集性が低下することが分かっている。
【0137】
少なくとも一部の合成活性粒子は、凝集体の形態であり得る。しかし、合成活性粒子が医薬組成物中に含まれる場合、添加剤材料は、吸入器の作動による患者への該組成物の投与時において、合成活性粒子の分散を促進する。
【0138】
製粉はまた、活性作用物質の放出に対する遅延または制御が可能な材料の存在下で実施することもできる。
【0139】
活性粒子及び添加剤粒子の共製粉または共微粉化は、メカノフュージョン、サイクロミックス処理、及びHybridizerまたはNobiltaの使用を伴う方法などの関連する方法など、圧縮型工程を伴い得る。これらの工程の背後にある原理は、これらが、内部要素と容器壁面との間の特定の相互作用を伴うこと、及びこれらが制御されたかなりの大きさの圧縮力、好ましくは所定の幅のギャップ内における圧縮によるエネルギーの提供に基づくことにおいて、代替的な製粉法の原理とは異なる。
【0140】
一実施形態において、必要な場合、製粉するステップにより作製された微粒子は、次いで、追加の賦形剤と調合され得る。これは、噴霧乾燥工程、例えば、賦形剤を伴う共噴霧乾燥により達成することができる。この実施形態では、粒子を溶媒中に懸濁させ、追加の賦形剤の溶液または懸濁液と共に共噴霧乾燥させる。好ましい追加の賦形剤は、トレハロース、メレジトース、及び他の多糖を含む。薬学的に有効な追加の賦形剤もまた用いることができる。
【0141】
別の実施形態では、多段階工程を用いて、粉末組成物を作製することができる。まず、物質を製粉またはブレンドする。次に、メカノフュージョンにかける前に、粒子を篩にかける。さらなる最適なステップは、担体粒子の添加を伴う。メカノフュージョンステップは、合成活性粒子を「研磨」し、添加剤材料を活性材料内にさらに擦り込むと考えられる。これにより、ジェットミル処理により可能となる極めて小さな粒子サイズと組み合わせて、メカノフュージョンにより粒子に賦与される有益な特性を享受することができる。
【0142】
活性粒子間における凝集及び付着の低減により、凝集体サイズの減少、さらにまたは個別の粒子と同等の性能をもたらすことができる。
【0143】
高せん断ブレンディング
医薬品製造のスケールアップは、1台の装置を用いて複数の機能を実行することを必要とする場合が多い。この例は、生成物を混合及び造粒することができ、これにより、生成物を複数の装置間で移送する必要をなくすミキサー-造粒機の使用である。このようにすることで、粉末偏析の可能性が最小化される。高せん断ブレンディングでは高せん断ローター/ステーターミキサー(HSM)を用いることが多く、混合への適用で用いられるようになっている。ホモジナイザーまたは「高せん断材料処理機」は、材料に対して高圧を発生させ、次いで、これにより、混合物を極めて微細なオリフィスを介して移送するか、または鋭角部分と接触させる。チャンバーを介する流動は、処理される材料に応じて、逆流または並流であり得る。チャンバー数を増加させて、より良好な性能を達成することができる。生成される粒子サイズを最適化するように、オリフィスサイズまたは衝撃角もまた変更することができる。粒子がオリフィス及びチャンバーを通過する際に高せん断材料処理機により発生する高せん断のために、粒子サイズの減少がもたらされる。強力なせん断及び混合サイクルの短縮を適用する能力により、これらのミキサーは、凝集した粉末の均一なブレンドを必要とする適用に対する広範な適性を獲得する。さらに、従来のHSMはまた、高強度の混合、分散、分解、乳化、及び均質化にも広く用いることができる。
【0144】
高電力で高せん断のミキサーによる場合でも、小粒子が完全に分散するには、比較的長時間の「老化」が必要とされ、この時間は、混合力の増大、または撹拌器の回転速度の増大によりせん断速度を増大させても、あまり短縮されないことは粉末製剤の製造において、当業者によく知られている。高せん断ミキサーはまた、薬剤粒子の自己付着特性が、表面エネルギーを低下させる粒子被覆または粒子膜を形成する力制御作用物質の使用と共に高せん断力も必要とする程度である場合にも用いることができる。
【0145】
噴霧乾燥及び超音波ネブライザー
噴霧乾燥を用いて、アポモルフィンを含む吸入可能なサイズの粒子を作製することができる。噴霧乾燥工程は、活性作用物質と、粒子の凝集及び粉末性能を制御する添加剤材料とを含む噴霧乾燥粒子の作製に適応させることができる。噴霧乾燥工程はまた、制御放出特性をもたらす材料中で分散させるかまたは懸濁させた活性作用物質を含む噴霧乾燥粒子を作製するのにも適応させることができる。さらに、賦形剤材料中における活性材料の分散または懸濁は、活性化合物にさらなる安定性を賦与し得る。好ましい実施形態において、アポモルフィンは、主にアモルファス状態で存在し得る。アモルファスのアポモルフィンを含有する製剤は、好ましい溶出特性を有する。これは、粒子が、固溶体または固体分散体であり得る糖ガラス中に懸濁するために可能となる。好ましい追加の賦形剤は、トレハロース、メレジトース、及び他の多糖を含む。
【0146】
噴霧乾燥は、吸入可能なサイズの活性材料粒子を作製するのによく知られて広く用いられる技法である。DPIから分注されるとき、活性粒子が、従来の噴霧乾燥法を用いて形成される粒子よりも良好な性能を示すように、従来の噴霧乾燥法を改善して、化学物理的特性が増強された活性粒子を作製することができる。このような改善は、国際公開第2005/025535号として公開されたより早期の特許出願において詳細に説明されている。
【0147】
特に、特定の条件下において活性作用物質をFCAと共に共噴霧乾燥する結果、肺内吸入用のDPIにより投与される場合に極めて良好な性能を示す優れた特性を有する粒子をもたらし得ることが開示されている。
【0148】
噴霧乾燥工程を操作または調整する結果、粒子表面上に主に存在するFCAをもたらすことができることが分かっている。すなわち、FCAは、粒子全体に一様に分布するのではなく、粒子表面において濃縮される。これは、FCAにより、粒子が凝集する傾向を低下させ得ることを明らかに意味する。これは、DPIの作動時において容易かつ確実に分解する不安定な凝集体の形成を補助する。
【0149】
所与のサイズの飛沫及び分布サイズの狭い飛沫が形成されるように、噴霧乾燥工程における飛沫形成を制御することが有利であり得ることが分かっている。さらに、飛沫形成の制御により、飛沫周囲の気流の制御を可能とすることができ、これを用いて、飛沫の乾燥及び、特に、該乾燥速度を制御することができる。飛沫形成の制御は、従来の2流体ノズルに対する代替品を用いることにより、とりわけ、高速気流の使用を回避することにより達成することができる。
【0150】
特に、制御された速度で移動し、所定の飛沫サイズを有する飛沫を作製する手段を含む噴霧乾燥器を用いることが好ましい。飛沫の速度は、それらが噴霧される気体の本体に対して制御されたものであることが好ましい。これは、飛沫の初期速度及び/またはそれらが噴霧される気体本体の速度を制御することにより、例えば、超音波ネブライザー(USN)を用いて飛沫を作製することにより達成することができる。電気噴霧ノズルまたは振動型オリフィスノズルなどの代替的なノズルも用いることができる。
【0151】
一実施形態では、噴霧ミスト中の飛沫を形成するのにUSNを用いる。USNでは、液体中に浸漬された超音波トランスデューサーを用いる。超音波トランスデューサー(圧電結晶)は、超音波周波数で振動して、液体の噴霧化に必要とされる短波長をもたらす。USNの一般的な一形態では、直接にまたは通常水である液体を組み合わせることにより、振動がその表面から噴霧用液体へと伝達されるように、結晶の土台を保持する。超音波振動が十分に強力である場合、ネブライザーチャンバー内における液体表面において液体の湧出が形成される。先端部から飛沫が発せられ、「霧」が放出される。
【0152】
USNは既知であるが、従来は薬剤を含有する溶液の直接的な吸入のための吸入用デバイスにおいて用いられ、これらが噴霧乾燥器で広く用いられることはかつてなかった。噴霧乾燥におけるこのようなネブライザーの使用は多くの重要な利点を有することが発見されているが、これらが認知されることはかつてなかった。好ましいUSNは粒子の速度を制御し、したがって、粒子が乾燥する速度を制御し、これにより、結果として得られる粒子の形状及び密度に影響を与える。USNの使用はまた、2流体ノズルなど、飛沫を作製するのに用いられる従来型のノズルを伴う従来の噴霧乾燥器を用いて可能となるよりも大きな規模において噴霧乾燥を実施する可能性ももたらす。
【0153】
微粒子乾燥粉末を作製するのに好ましいUSNの特性は、噴霧速度が低速であること、ネブライザーを作動させるのに必要な担体気体の量が少ないこと、比較的小さな飛沫サイズ及び分布サイズの狭い飛沫が生成されること、USNの構成が単純であること(疲労、汚染などの可能性がある移動部分を有さないこと)、飛沫周囲の気流を正確に制御することができ、これにより乾燥速度を制御すること、作製速度が高速であり、従来の2流体ノズル配置を用いる場合には困難であり高額な形での、USNを用いる乾燥粉末の作製を市販可能とすることを含む。
【0154】
USNは、液体の速度を増大させることにより液体を飛沫に分離するわけではない。そうではなくて、超音波ネブライザーにより引き起こされる振動により必要なエネルギーが提供される。
【0155】
さらなる実施形態は、超音波ネブライザー(USN)、回転式噴霧器、または電気流体力学(EHD)噴霧器を用いて粒子を発生させる。
【0156】
送達デバイス
本発明に従う吸入可能な組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)により投与することが好ましいが、また、加圧式定量吸入器(pMDI)によっても、さらに噴霧システムによっても投与することができる。
【0157】
乾燥粉末吸入器の場合、投与される用量は、非加圧乾燥粉末の形態で保持され、吸入器の作動時において、粉末粒子が、患者により吸入され得る微細に分散した粒子クラウドの形態でデバイスから駆出される。
【0158】
乾燥粉末吸入器は、患者の吸気が、デバイス内に起動力を提供する唯一の気体提供源である「受動的」デバイスであり得る。「受動的」乾燥粉末吸入用デバイスは、Rotahaler及びDiskhaler(GlaxoSmithKline社製)、Monohaler(MIAT社製)、Gyrohaler(商標)(Vectura社製)、Turbohaler(Astra-Draco社製)、及びNovolizer(商標)(Viatris GmbH社製)を含む。代替的に、圧縮気体の提供源または代替的なエネルギー提供源を用いる「能動的」デバイスも用いることができる。適切な能動的デバイスの例は、Aspirair(商標)(Vectura社製)及びNektar Therapeutics社製の能動的吸入用デバイス(米国特許第6,257,233号明細書が対象とする)を含む。
【0159】
受動型吸入器及び能動型吸入器を用いて分散させる場合、異なる組成物は異なる性能を示すと一般に考えられる。受動的デバイスは、デバイス内においてより小さな乱流を創出し、粉末粒子は、デバイスから放出されるときによりゆっくりと移動する。これにより、計量用量の一部がデバイス内に残留するが、これは、組成物の性質、作動時における脱凝集化が低度であることによる。しかし、ゆっくりと移動するクラウドが吸入される場合、咽喉において観察される沈着は減少することが多い。これに対して、能動的デバイスは、作動時においてより大きな乱流を創出する。この結果、粉末をより大きなせん断力下に置くので、計量用量のより多くがブリスターまたはカプセルから抽出され、より良好な脱凝集化がもたらされる。しかし、粒子は、受動的デバイスによる場合よりも速く移動しながらデバイスから放出され、これにより、咽喉沈着は増大する可能性がある。
【0160】
驚くべきことに、高比率のアポモルフィンを有する本発明の組成物は、能動的デバイス及び受動的デバイスのいずれも用いて分注する場合も良好な性能を示すことが分かっている。異なる種類の吸入用デバイスについて上記で予測した通り、一部が失われる傾向もあるが、この喪失は最小限であり、計量用量のアポモルフィンの大部分が肺内に沈着することをやはり可能とする。肺に到達すると、アポモルフィンは迅速に吸収され、優れたバイオアベイラビリティーを示す。
【0161】
本明細書では、特に好ましい「能動的」乾燥粉末吸入器としてAspirair(登録商標)吸入器を挙げるが、これは、それらの内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2001/00262号、国際公開第2002/07805号、国際公開第2002/89880号、及び国際公開第2002/89881号においてより詳細に説明されている。しかし、本発明の組成物は、受動的吸入用デバイスによって投与することもでき、能動的吸入用デバイスによって投与することもできることを理解されたい。
【0162】
代替的な実施形態において、組成物は溶液または懸濁液であり、これは、加圧式定量吸入器(pMDI)を用いて分注される。この実施形態による組成物は、HFA 134aまたはHFA 227などの液体高圧ガスと混合するかまたはこの中に溶解させた、上記で論じた乾燥粉末組成物を含み得る。
【0163】
またさらなる実施形態において、組成物は溶液または懸濁液であり、加圧式定量吸入器(pMDI)、ネブライザー、またはソフトミスト吸入器を用いて投与される。適切なデバイスの例は、Modulite(登録商標)(Chiesi社製)、SkyeFine(商標)、及びSkyeDry(商標)(SkyePharma社製)などのpMDIを含む。Porta-Neb(登録商標)、Inquaneb(商標)(Pari社製)、及びAquilon(商標)などのネブライザー、ならびにeFlow(商標)(Pari社製)、Aerodose(商標)(Aerogen社製)、Respimat(登録商標)吸入器(Boehringer Ingelheim GmbH社製)、AERx(登録商標)吸入器(Aradigm社製)、及びMystic(商標)(Ventaira Pharmaceuticals社製)などのソフトミスト吸入器。
【0164】
pMDIを用いて組成物を分注する場合、アポモルフィンを含む組成物は、高圧ガスをさらに含むことが好ましい。本発明の実施形態において、高圧ガスは、CFC-12もしくは1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC 134a)、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227)、HCFC-22(ジフルオロクロロメタン)、HFA-152(ジフルオロエタン及びジフルオロイソブテン)などのオゾン保護的な非CFC型高圧ガス、またはこれらの組合せである。このような製剤は、活性作用物質及び/または他の成分を懸濁させ、溶解させ、保湿し、乳化させるためであり、MDIのバルブ部材を潤滑化するためのポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、プロポキシル化ポリエチレングリコール、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルなどの極性界面活性剤の含有を必要とし得る。
【0165】
要約
結論として、肺内送達の利点を以下の通りにまとめることができる。
【0166】
肺内送達による送達効率及びバイオアベイラビリティーの増大は、鼻腔内送達の場合の約3分の1のアポモルフィン用量レベルで、必要とされる有効性を達成する可能性と、最終的により優れた危険性:有益性プロファイルとをもたらす。
【0167】
経口吸入による肺内送達は、経鼻投与にまつわる一部の複雑さを免れる結果、より迅速で安定的な全身曝露をもたらし、これが、加速化され、極めて予測可能な治療効果に置き換えられる。これらのパラメータは、多くの中枢神経系障害、また特にパーキンソン病の治療を考える場合に満たされていない重要な臨床的必要である。
【0168】
アポモルフィンの肺内送達は、より患者保護的な投与経路を構成し、これは、より優れた局所的忍容性プロファイルと関連するが、鼻腔内送達について報告される、投与部位における有害事象の証拠とは関連しない。
【0169】
(実施例)
(実施例1)
アポモルフィンの噴霧乾燥
実現可能性バッチ:塩酸アポモルフィン(5.04g、バッチ番号:GRN 0436)を250mlの精製水中で溶解させる結果として、2% w/vの全固体原液を得た。特注のMini Spray Dryerを155℃の注入温度及び3バールの噴霧化圧力で用いて、該原液を噴霧乾燥させた。Sympatec社製Particle Size Analyserを用いて、結果として得られる噴霧乾燥粉末(バッチ番号:RDD/07/095)の幾何学的な粒子サイズを決定したところ、3回の解析の平均は以下の通りであった:
×10(μm):1.05
×50(μm):1.91
×90(μm):3.15
×99(μm):4.12
【0170】
スケールアップバッチ:塩酸アポモルフィン(14.9g、バッチ番号:GRN 0436)を750mlの精製水中で溶解させる結果として、2% w/vの全固体原液を得た。特注のMini Spray Dryerを155℃の注入温度及び3バールの噴霧化圧力で用いて、該原液を噴霧乾燥させた。Sympatec社製Particle Size Analyserを用いて、結果として得られる噴霧乾燥粉末(バッチ番号:RDD/07/096)の幾何学的な粒子サイズを決定したところ、3回の解析の平均は以下の通りであった:
×10(μm):1.10
×50(μm):2.10
×90(μm):3.49
×99(μm):4.43
【0171】
(実施例2)
pMDI
pMDIの準備:純粋な微粉化された塩酸アポモルフィンを含む粉末を測定して、pMDIの専用缶に入れた。該缶に計量バルブを取り付け、これらにHFA 134a高圧ガスを再充填した。各缶を十分に振とうし、分散させた。
【0172】
in vitroにおけるpMDIの測定:アンダーセンカスケードインパクターを用いて、各pMDIから発生したエアゾールプルームを特徴づけた。毎分28.3リットルの気流をインパクター内に引き入れ、10回の反復ショットを噴射した。各作動の間には、各pMDIを振とうして質量を測定した。インパクターの各ステージ上に沈着した薬剤のほか、デバイス、咽喉、及びゴム製のマウスピースアダプター上に沈着した薬剤も溶媒中に回収してHPLCにより定量した。
【0173】
エタノールベースのHFA 134aによるpMDI製剤中における塩酸アポモルフィンの溶解度が低いため、高量の薬剤充填時(600μg/回)におけるアポモルフィンには、溶液pMDI法を用いることができない。かつて、低用量(<25μg/50μl)のHFA134a/HFA 227溶液製剤を作製したが、高エタノール含量(50% w/w)時に限られた。アポモルフィン類似体を用いて、100〜500μg/50μlの所望の用量範囲で高効率の溶液製剤を調合することができる。
【0174】
9種類の製剤(表1及び表2を参照されたい)を作製した。
【0175】
600μg/50μl製剤に対する目視評価(図1〜4を参照されたい)により、アポモルフィンが純粋なHFA 134a中で急速に沈殿し、少量の絶対エタノール(5% w/w)及びオレイン酸(0.04% w/w)の添加では沈殿速度が顕著には遅くならないことが分かった。
【0176】
製剤4〜6(図5〜8を参照されたい)では、薬剤濃度を低下させて(300μg/50μl)検討した。ここでもまた、アポモルフィンは純粋なHFA 134a中で急速に沈殿することが観察された。少量の絶対エタノール(2.5% w/w)及びオレイン酸(0.02% w/w)の添加では沈殿速度が顕著には遅くならなかった。
【0177】
HFA 227によるアポモルフィン(264μg/50μl)懸濁液を作製したところ(表2を参照されたい)、アポモルフィンはクリーム状となる(浮く)ことが観察され(図9〜12を参照されたい)、これは、アポモルフィン粒子の密度がHFA134a(1.226g/ml)とHFA 227(1.415g/ml)との間のあるレベルであることを示す。HFA 227懸濁液へのHFA 134aの添加により、約60(% w/w)HFA 227及び40(%w/w)HFA134aによる組成物の場合にアポモルフィンの密度を釣り合せ得ることは、アポモルフィンの密度が約1.33g/mlであることを示す。
【0178】
60:40(% w/w)の比率におけるHFA 227及びHFA 134aの組合せを用いて、高揮発性の懸濁液製剤を開発することが可能であり得る。製剤を高揮発性とすることにより、高効率の噴霧化及び良好な<5μmの送達をもたらし得る。閉塞(問題である場合)に対処し得るように、アクチュエーターオリフィス付近での高圧ガスの急激なフラッシングを抑制するのに少量のエタノール(2% w/w)を必要とし得るが、該製剤は、Bespak社製BK630シリーズの0.22〜0.30mmアクチュエーターと適合する。3Mで被覆(Dupont社製、3200 200型)した缶及びValois社製DF31型50μlバルブの使用は、この種の製剤と共に良好に機能し、缶の寿命にわたり安定的な送達性能を促進する。賦形剤を欠いても、良好な製剤安定性がもたらされ得る。
【0179】
【表1】
【0180】
【表2】
【0181】
【表3】
【0182】
(実施例3)
受動的/能動的DPI:アポモルフィンをステアリン酸マグネシウムと共にメカノフュージョン処理し、次いで混合した製剤
混合製剤、すなわち、異なる粒子を含む製剤:
(a)ステアリン酸マグネシウムで被覆した塩酸アポモルフィン:
微粉化した塩酸アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウムを、75:25の質量比で混合した。次いで、このブレンド(約20g)を、以下のメカノフュージョン工程により製粉した。900rpmで5分間にわたり粉末をあらかじめ混合した。次いで、30分間にわたり、機械の速度を約4,800rpmまで増大させた。製粉処理時には、要素と容器内壁との間のクリアランスを1mmとし、冷却用ジャケットにより冷却水を適用しながらメカノフュージョン装置を作動させた。次いで、ドラム容器から合成活性粒子を回収した。
【0183】
(b)より少量のステアリン酸マグネシウムで被覆した塩酸アポモルフィン:
同じ手順を用いて実験を繰り返したが、活性粒子及び均質化させたステアリン酸マグネシウムを95:5の比率で混合し、4,800rpmで60分間にわたり製粉した。
【0184】
(c)製剤(a)及び(b)を混合して、製剤(b)に由来する迅速な発効と、製剤(a)に由来する遅延溶出とを得る:
塩酸アポモルフィン製剤(a)及び(b)の試料を、Turbulaミキサーにおいて、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
(d)アポモルフィン粒子表面上に粒子間の凝集を低下させる微粒子添加剤を伴い、作動時において乾燥粉末吸入器から放出されるアポモルフィン製剤により、大量吸入用ボーラスが結果としてもたらされる。
【0185】
(実施例4)
ラクトース製剤:70%のラクトース(45〜63μm)を伴う30%の微粉化されたアポモルフィンHCl
ラクトースを篩にかけ、直径が45〜63μmの範囲の粒子を有する試料を得た。初回に用いられた篩スクリーンのサイズは63μmであった。約500mlずつの試料を逐次、5分間ずつ機械による篩にかけた。2回目に用いられた篩スクリーンのサイズは45μmであった。約250mlずつの試料を逐次、10分間ずつ機械による篩にかけた。ラクトース粒子による篩の目詰まりを防止するため、2つの試料を篩にかけた後、45μmのスクリーンを真空吸引した。63μmの篩は通過したが、45μmの篩上には残留する粒子から試料を採取した。これらの粒子は、直径が45〜63μmであると考えることができよう。
【0186】
ラクトース粒子を塩酸アポモルフィンの活性粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)と混合することにより、上記のステップで得られたラクトース粒子の試料を処理した。約50%のラクトースを移し、すべての塩酸アポモルフィンを添加し、活性粒子を挟む上部に残りの50%を入れることにより、210gのラクトース粒子の試料及び90gの活性塩酸アポモルフィン粒子の試料を容量2LのDiosna社製ボールに入れた。
【0187】
214rpmでチョッパーを30rpmに設定したDiosna社製ミキサーを用いて72秒間にわたり、ラクトース粒子及び塩酸アポモルフィン粒子をあらかじめ混合した。次いで、857rpmでチョッパーを30rpmに設定して7分間にわたり粒子を混合し、この工程を1分間隔で停止させ、ボールの側面をすくい取った。手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。混合物をDiosna社製ミキサーに戻し、214rpmでチョッパーを30rpmに設定して72秒間にわたり混合した。
【0188】
【表4】
【0189】
薬物動態結果:アポモルフィンは迅速に吸収され、アポモルフィンのピーク血漿濃度は、吸入の1〜3分間後に観察された。AUC(0〜t)、AUC(0〜∞)、及びCmaxについて、用量比例関係が観察された。
【0190】
【表5】
【0191】
これらの結果は、アポモルフィン血漿濃度が用量に比例して3〜5.7倍に増大することを示唆する。
【0192】
安全性結果:治療時に発生した有害事象(TEAE)を経験する患者は少数であり、TEAEの発症数または種類に顕著な治療群間差は見られなかった。400μg、1000μg、及び1600μgの名目用量に対する忍容は良好であった。投与の<24時間後において最も一般的なTEAEは、神経系障害であった。
【0193】
(実施例5)
10%のステアリン酸マグネシウムを伴う90%の微粉化された塩酸アポモルフィン:受動的/能動的DPI
塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウムを添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0194】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をジェットミルに通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0195】
【表6】
【0196】
(実施例6)
ジェットミル処理した50%の塩酸アポモルフィン及びステアリン酸マグネシウム(実施例2)を、ステアリン酸マグネシウムと共にメカノフュージョン処理した50%のラクトースと混合する
(a)ホソカワミクロン株式会社製Nanocularを用いて、超微粒ラクトース(粒子サイズd0.5が約30μmである)を、5%ステアリン酸マグネシウムと共にメカノフュージョン処理した。
【0197】
(b)ラクトースと、質量で5%のステアリン酸マグネシウム粒子とを含有する、ステップ(a)で作製された担体粒子の試料(5g)を、10分間にわたる高せん断混合により、実施例5による混合物の試料5gと混合した。混合物の試料12mgほどを、Aspirair(登録商標)ブリスターに移し、Aspirair(登録商標)乾燥粉末吸入器を用いてin vitro評価を行った。
【0198】
【表7】
【0199】
(実施例7)
98%の微粉化塩酸アポモルフィンを2%のロイシンと共に共ジェットミル処理する
塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ロイシン粒子と混合することにより処理した。147gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に3gのロイシン粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0200】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をジェットミルに通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0201】
6mgほどの混合物試料をAspirair(登録商標)ブリスターに移し、Aspirair(登録商標)乾燥粉末吸入器を用いてin vitroにおける評価を行った。
【0202】
【表8】
【0203】
(実施例8)
Diosna社製ミキサーによるブレンド
ホソカワミクロン株式会社製AS100型Jet Millを用いてアポモルフィン粒子を調製した結果、1.9μmのD0.5が得られた。18.5%(w/w)のアポモルフィン、1.5%(w/w)のステアリン酸マグネシウム、及び80%(w/w)のラクトース(Respitose SV003)を含む最終製剤を作製するため、813μmのスクリーンサイズを用いるQuadro(登録商標)Comil(登録商標)により、完了するまで1000rpmの速度で3種の成分を個別にスクリーニングした。1500rpmで1分間にわたりDiosna社製ミキサーを用いて、ラクトース及びステアリン酸マグネシウムからなるプレブレンドを作製した。
【0204】
約50%のラクトース及びステアリン酸マグネシウムのプレブレンドをDiosna社製ボールから取り出し、残りのラクトース及びステアリン酸マグネシウムのプレブレンド上に活性塩酸アポモルフィンの試料を入れた。次いで、取り出したラクトース及びステアリン酸マグネシウムのプレブレンドを塩酸アポモルフィン層の上に入れ直し、これにより、活性粒子を「挟んだ」。次いで、この製剤を600rpmで6分間にわたって処理した。
【0205】
完成した製剤を、Omnidose充填器によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0206】
【表9】
【0207】
(実施例9)
PowderHale用製剤:共ジェットミル処理後にMCBを行う
塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウム粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0208】
(a)315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をJet Mill(ホソカワミクロン株式会社製AS50S型)に通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0209】
(b)共ジェットミル処理された製剤(a)の試料(80mL)を、以下のメカノフュージョン工程により製粉した。まず、最高速度の5%で5分間にわたり機械を作動させた。次いで、5分間にわたり機械速度を最高速度の20%まで増大させた。最後に、最高速度の80%で10分間にわたり機械を作動させた。製粉処理時には、要素と容器内壁との間のクリアランスを3mmとし、冷却用ジャケットにより冷却水を適用しながらメカノフュージョン装置を作動させた。ドラム容器から結果として得られる活性粒子を回収した。
【0210】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これをAspirair(登録商標)デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、60L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0211】
【表10】
【0212】
(実施例10)
共ジェットミル処理後にラクトースとの高せん断ブレンディングを行う
(a)塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウム粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0213】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をJet Mill(ホソカワミクロン株式会社製AS50S型)に通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0214】
(b)約50%のラクトースを移し、(a)のすべてを添加し、残りの50%を共ジェット処理した粒子上にこれを挟んで入れることにより、33gの共ジェットミル処理した製剤(a)及び117gのラクトース粒子の試料を容量1LのDiosna社製ボールに入れた。214rpmでチョッパーを30rpmに設定したDiosna社製ミキサーを用いて、1分間にわたりラクトース粒子及び(a)をあらかじめ混合した。次いで、1000rpmでチョッパーを30rpmに設定して6分間にわたり粒子を混合し、この工程を1分間隔で停止させ、ボールの側面をすくい取った。手作業により混合物を160μmの篩スクリーンに通した。混合物をDiosna社製ミキサーに戻し、250rpmでチョッパーを30rpmに設定して1分間にわたり混合した。
【0215】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0216】
【表11】
【0217】
(実施例11)
共ジェットミル処理後にMCBを行い、次いで、ラクトースとの高せん断ブレンディングを行う
(a)塩酸アポモルフィンの活性粒子試料を、ステアリン酸マグネシウム粒子と混合することにより処理した。360gの塩酸アポモルフィン粒子(粒子サイズd0.5:2.2μm)に40gのステアリン酸マグネシウム粒子を添加し、Turbulaミキサー内において、32rpmの速度で10分間にわたり混合した。
【0218】
315μmの篩スクリーンに通すことにより、混合物を篩にかけた。次いで、8バールのベンチューリ圧力及び5バールのグラインド圧力を用いて、5g/分の速度で混合物をJet Mill(ホソカワミクロン株式会社製AS50S型)に通した。次いで、手作業により混合物を315μmの篩スクリーンに通した。
【0219】
(b)共ジェットミル処理された製剤(a)の試料(80ml)を、以下のメカノフュージョン工程により製粉した。まず、最高速度の5%で5分間にわたり機械を作動させた。次いで、5分間にわたり機械速度を最高速度の20%まで増大させた。最後に、最高速度の80%で10分間にわたり機械を作動させた。製粉処理時には、要素と容器内壁との間のクリアランスを3mmとし、冷却用ジャケットにより冷却水を適用しながらメカノフュージョン装置を作動させた。次いで、ドラム容器から結果として得られる活性粒子を回収した。
【0220】
(c)約50%のラクトースを移し、(a)のすべてを添加し、残りの50%を共ジェット処理した粒子上にこれを挟んで入れることにより、33gの共ジェットミル処理した製剤(a)及び117gのラクトース粒子による試料を容量1LのDiosna社製ボールに入れた。214rpmでチョッパーを30rpmに設定したDiosna社製ミキサーを用いて、1分間にわたりラクトース粒子及び(a)をあらかじめ混合した。次いで、1000rpmでチョッパーを30rpmに設定して6分間にわたり粒子を混合し、この工程を1分間隔で停止させ、ボールの側面をすくい取った。手作業により混合物を160μmの篩スクリーンに通した。混合物をDiosna社製ミキサーに戻し、250rpmでチョッパーを30rpmに設定して1分間にわたり混合した。
【0221】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0222】
【表12】
【0223】
(実施例12)
ラクトース及びステアリン酸マグネシウム
(a)ラクトース粒子及びステアリン酸マグネシウム粒子の試料を、Quadro(登録商標)Comil(登録商標)を1000rpmで用いて、813μmのスクリーンによりスクリーニングした。約50%のラクトースを移し、すべてのステアリン酸マグネシウムを添加し、残る50%のラクトースをステアリン酸マグネシウム上にこれを挟んで入れることにより、480gのラクトース粒子の試料及び12gのステアリン酸マグネシウム粒子の試料を容量2LのDiosna社製ボールに入れた。Diosna社製ミキサーを用いて、1500rpmで1分間にわたりラクトース粒子及びステアリン酸マグネシウム粒子を混合した。
【0224】
(b)活性塩酸アポモルフィン粒子の試料を、Quadro(登録商標)Comil(登録商標)を1000rpmで用いて、813μmのスクリーンによりスクリーニングした。約50%の(a)をDiosna社製ボールから取り出し、108gの活性塩酸アポモルフィン粒子の試料をDiosna社製ボールに入れ、取り出した材料(a)を活性粒子の上にこれを挟んで入れた。Diosna社製ボールの内容物を500rpmで6分間にわたって混合した。次いで、Diosna社製のボールから結果として得られる混合物を回収した。
【0225】
完成した製剤を、手作業によりブリスター内に充填し、これを受動的デバイスに装填した。1回の評価につき5回の作動により、57L/分でアンダーセンカスケードインパクターを用いて製剤を評価した。
【0226】
【表13】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病を含む中枢神経系の状態を治療する、肺内吸入による投与のためのアポモルフィンを含む乾燥粉末組成物。
【請求項2】
最大15mg、かつ少なくとも1mgの用量のアポモルフィンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
用量が名目用量である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
投与時において約2〜約6mgの微粒子画分(FPF)用量を提供する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
アポモルフィン組成物の用量を必要に応じて患者に投与するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
用量を逐次的に投与することができ、各投与の効果を、次回用量を投与する前に患者が評価することにより、用量の自己増減及び最適化が可能となる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
24時間にわたり投与される約30〜約110mgの用量である1日当たりの用量を提供する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
用量が名目用量である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
定期的で頻繁な間隔での用量の投与を可能とすることで、維持療法を提供する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
肺内吸入による投与から約10分間未満のうちにCmaxをもたらす、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
肺内吸入による投与時において用量依存的なCmaxをもたらす、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
肺内吸入による投与から約10分間以内に治療効果をもたらす、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも約10%(質量で)のアポモルフィンを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
添加剤材料をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
不活性の賦形剤材料粒子をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含有するブリスターまたはカプセル。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含む吸入用デバイス。
【請求項18】
乾燥粉末吸入器、加圧式定量吸入器、またはネブライザーである、請求項17に記載の吸入用デバイス。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を調製する工程。
【請求項20】
肺内吸入によるパーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項1】
パーキンソン病を含む中枢神経系の状態を治療する、肺内吸入による投与のためのアポモルフィンを含む乾燥粉末組成物。
【請求項2】
最大15mg、かつ少なくとも1mgの用量のアポモルフィンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
用量が名目用量である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
投与時において約2〜約6mgの微粒子画分(FPF)用量を提供する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
アポモルフィン組成物の用量を必要に応じて患者に投与するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
用量を逐次的に投与することができ、各投与の効果を、次回用量を投与する前に患者が評価することにより、用量の自己増減及び最適化が可能となる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
24時間にわたり投与される約30〜約110mgの用量である1日当たりの用量を提供する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
用量が名目用量である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
定期的で頻繁な間隔での用量の投与を可能とすることで、維持療法を提供する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
肺内吸入による投与から約10分間未満のうちにCmaxをもたらす、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
肺内吸入による投与時において用量依存的なCmaxをもたらす、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
肺内吸入による投与から約10分間以内に治療効果をもたらす、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも約10%(質量で)のアポモルフィンを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
添加剤材料をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
不活性の賦形剤材料粒子をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含有するブリスターまたはカプセル。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を含む吸入用デバイス。
【請求項18】
乾燥粉末吸入器、加圧式定量吸入器、またはネブライザーである、請求項17に記載の吸入用デバイス。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物を調製する工程。
【請求項20】
肺内吸入によるパーキンソン病など、中枢神経系の疾患を治療する薬剤の製造における、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2011−500869(P2011−500869A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531580(P2010−531580)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003698
【国際公開番号】WO2009/056851
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510119784)ベクトゥラ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003698
【国際公開番号】WO2009/056851
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510119784)ベクトゥラ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】
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