説明

パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材

【課題】部分開口の大きさ、位置、形、数等のデザイン設計の自由度が大きいパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材、及び前記蓋部材によって容器本体の開口部が覆われてなる容器を提供する。
【解決手段】容器の開口部を覆い部分開口を有するパーシャルオープンシート部と、前記パーシャルオープンシート部の周縁部と接合して当該パーシャルオープンシート部を支持するアウターフレーム部と、前記パーシャルオープンシート部を被覆して容器の開口部を密封するカバーシート部とからなり、前記アウターフレーム部に前記パーシャルオープンシート部が完全接着され、前記パーシャルオープンシート部に前記カバーシート部が疑似接着により被覆され、前記カバーシート部は前記パーシャルオープンシート部を被覆するシート部と当該カバーシート部の上面に設けられるプルタブ部とを備えることを特徴とするパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製の缶の蓋として、プルタブを備えたパーシャルオープン形式の缶蓋が知られている。これは、厚さの薄い平坦な蓋にプルタブが備えられ、当該プルタブを引くと、蓋の天板に予め設けられていた肉薄部の線に沿って、前記蓋が部分的に開口する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−173297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようなプルタブを備えたパーシャルオープン形式の缶蓋では、部分開口の大きさ、位置、形、数等のデザイン設計の自由度がない。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、部分開口の大きさ、位置、形、数等のデザイン設計の自由度が大きいパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材を提供することを目的とする。
また、本発明の別の目的は、前記パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材によって容器本体の開口部が覆われてなる、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、プラスチック射出成形の方法によって製造される、部分開口の自由度が大きいパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材を考案した。
すなわち、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、
容器の開口部を覆い、部分開口を有するパーシャルオープンシート部と、前記パーシャルオープンシート部の周縁部と接合して当該パーシャルオープンシート部を支持するアウターフレーム部と、前記パーシャルオープンシート部を被覆して、容器の開口部を密封するカバーシート部とからなり、
前記アウターフレーム部に前記パーシャルオープンシート部が完全接着され、
前記パーシャルオープンシート部に前記カバーシート部が疑似接着により被覆され、
前記カバーシート部は、前記パーシャルオープンシート部を被覆するシート部と、当該カバーシート部の上面に設けられるプルタブ部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材によれば、部分開口の大きさ、位置、形、数等のデザイン設計の自由度が大きいため、必要な時に飲み口を開封する飲料用容器の蓋部材や、半固形流動物を絞り出す必要がある食品用容器の蓋部材等の多様な目的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明にかかるパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の一例を概略的に示す斜視図であり、図1(a)は、カバーシート部を剥離させた状態を示し、図1(b)は、カバーシート部をパーシャルオープンシート部に疑似接着させた状態を示す。
【図2】本発明にかかるパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の他の一例を概略的に示す斜視図であり、図2(a)は、カバーシート部を剥離させた状態を示し、図2(b)は、カバーシート部をパーシャルオープンシート部に疑似接着させた状態を示す。
【図3】図2に示すパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材のAA断面図である。
【図4】本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法の一次成形工程の一例を説明する図である。
【図5】本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法の二次成形工程の一例を説明する図である。
【図6】本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材(以下、単に「蓋部材」と称することがある。)は、容器の開口部を覆い、部分開口を有するパーシャルオープンシート部と、前記パーシャルオープンシート部の周縁部と接合して当該パーシャルオープンシート部を支持するアウターフレーム部と、前記パーシャルオープンシート部を被覆して、容器の開口部を密封するカバーシート部とからなり、
前記アウターフレーム部に前記パーシャルオープンシート部が完全接着され、
前記パーシャルオープンシート部に前記カバーシート部が疑似接着により被覆され、
前記カバーシート部は、前記パーシャルオープンシート部を被覆するシート部と、当該カバーシート部の上面に設けられるプルタブ部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、各部位に用いられる材料や、成形条件等を調整することによって、上記関係の接着強度とすることができる。
【0011】
また、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、上記関係の接着強度を有するので、ボイル食品容器として用いることができる。ボイル食品容器とは、pH4.0未満の食品を充填させるための容器であり、内容物を充填した後、常温で流通できるように、後殺菌処理(例えば85℃、30分)を行うことがある。上記条件のような高温下では、容器本体内部の圧力が上がるが、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、このような高温高内圧条件に耐えることができる。
【0012】
なお、本発明においてパーシャルオープンとは、パーシャルオープンシート部にスリットや小径孔などの部分開口があり、カバーシート部を剥がした時に、部分開口ができるという意味である。
【0013】
また、本発明において、完全接着とは、剥離不能、又は剥離による材料破壊である接着態様をいい、疑似接着とは、剥離しよう思えば容易に剥離操作が行われる接着態様をいう。
具体的には、完全接着とは、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定される接着強度が0.7kg/15mm幅以上であることが好ましい。一方、疑似接着とは、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定される接着強度が0.7〜1.3kg/15mm幅であることが好ましく、さらにJIS S0022に準じ、本発明の製品のプルタブ部を持ち上げて測定されるシート部とパーシャルオープンシート部とを剥離させる開封力が4.5kg以下であることが特に好ましい。
なお、本発明において接着強度とは、上記食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定される引張強度を意味する。
【0014】
以下、図面を参照して本発明にかかるパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材について詳細に説明する。但し、以下に示す各図は、構造の理解を容易にするために、実寸とは異なるものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明にかかるパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の一例としてパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材10を概略的に示す斜視図であり、図1(a)は、カバーシート部を剥離させた状態を示し、図1(b)は、カバーシート部をパーシャルオープンシート部に疑似接着させた状態を示す。パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材10は、部分開口11を有するパーシャルオープンシート部1と、アウターフレーム部2と、シート部31及びプルタブ部32からなるカバーシート部3とからなる。
【0016】
アウターフレーム部2は、パーシャルオープンシート部1の周縁部と完全接着して、当該パーシャルオープンシート部1を支持する。また、アウターフレーム部2は、通常、容器本体の開口部に接続する役割もある。
【0017】
アウターフレーム部2の形状は、パーシャルオープンシート部1を支持することができ、且つ容器本体に接続できれば特に限定はされず、用途に合わせた形状とすることができる。また、アウターフレーム部2は完全なリング状である必要はなく、容器本体に接続できる限り、リングの一部が欠けた形状であってもよい。
【0018】
アウターフレーム部2を容器本体の開口部に接続する方法としては、特に限定されないが、例えば、凹凸を嵌合させる方法、ネジ状にはめこむ方法、接着剤により完全接着させる方法等が挙げられる。アウターフレーム部を容器本体と一体成形することにより、アウターフレーム部と容器本体の開口部とが接続されていてもよい。ただし、アウターフレーム部2の役割として、容器本体の開口部に接続する役割は必須ではなく、アウターフレーム部2にさらに容器本体に接続するための別部材を接続してもよく、本体と接続される部分(カバーシート部と接触しない部分)は、他の材料でもよい。
【0019】
パーシャルオープンシート部1は、容器本体の開口部を覆い、部分開口を有する。パーシャルオープンシート部1は、通常、比較的薄くて柔軟なプラスチックシート(プラスチックフィルムを含む)からなり、プラスチックシートは、表面にプラスチック層を有する複合フィルム、例えば、蒸着層や金属箔層を含む複合フィルムであってもよい。パーシャルオープンシート部1の表面は、アウターフレーム部2とは異なる材料からなり、パーシャルオープンシート部1とアウターフレーム部2とは完全接着される。
【0020】
前記部分開口は、開封時に部分開口を形成してパーシャルオープンの目的を達成できる限り、形状、サイズ、位置を問わない。前記部分開口の形状は、特に限定されないが、例えば、クロス状のスリット、平行に並んだ複数個のスリット状の貫通孔、一個又は複数個の小径孔等が挙げられる。
【0021】
カバーシート部3は、部分開口を有するパーシャルオープンシート部1を被覆し、容器の開口部を密封する。カバーシート部3は、剥離しやすいように、通常は比較的柔軟な軟質プラスチックからなる。カバーシート部3はパーシャルオープンシート部1とは異なる材料からなり、カバーシート部3とパーシャルオープンシート部1とは疑似接着される。
【0022】
また、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、カバーシート部のシート部の周囲に、V字溝を介してインナーフレーム部が設けられており、前記インナーフレーム部は前記アウターフレーム部に完全接着していることが好ましい。
図2に、インナーフレーム部を有する本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の一例を示す。図2に示すパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材20は、カバーシート部3が、シート部31及びプルタブ部32に加えて、インナーフレーム部33を備え、前記インナーフレーム部33がV字溝331を有する。なお、図2(a)は、カバーシート部3を剥離させた状態を示し、図2(b)は、カバーシート部3をパーシャルオープンシート部1に疑似接着させた状態を示す。また、図3は、図2に示すパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材20のAA断面図である。
【0023】
カバーシート部3がインナーフレーム部33を有する場合、プルタブ部32を引っ張ると、シート部31のみがV字溝331に沿って切り取られてパーシャルオープンシート部1から剥離し、インナーフレーム部33はアウターフレーム部2に接着されたまま残る。前記インナーフレーム部33は、通常の保管状態でカバーシート部3がパーシャルオープンシート部1から脱落することを防ぐ。
【0024】
インナーフレーム部33が有するV字溝331の外径は、インナーフレーム部33の内径よりも小さいことが好ましい。これにより、V字溝331はインナーフレーム部33の枠内に存在し、パーシャルオープンシート部1と接することができる。
一方、インナーフレーム部33の外径は、アウターフレーム部2の内径より大きく、アウターフレーム部2の外径より小さいことが好ましい。これにより、インナーフレーム部33はアウターフレーム部2の枠内周近傍と接触し、インナーフレーム部33とアウターフレーム部2とが完全接着する。
【0025】
カバーシート部3のシート部31の形状は、特に限定されず、アウターフレーム部2で囲まれる範囲内であれば、用途によって適宜調整できる。インナーフレーム部33を有する場合は、V字溝331の形状で、シート部31の形状が決まる。
【0026】
カバーシート部3のプルタブ部32の形状は、取っ手とすることができる形状であれば特に限定されず、図1、2に示されるようなリング状のプルタブや、摘み片等が挙げられる。
また、プルタブ部32の位置は、シート部31を剥離することができれば特に限定されず、プルタブ部32は、シート部31上の任意の位置に設けることができる。
【0027】
インナーフレーム部33には、カバーシート部3の周縁部又はその近傍に沿って壁部が設けられていてもよい。インナーフレーム部33の壁部の高さ(図3中のh1)は、プルタブ部32の高さ(図3中のh2)よりも高いことが好ましい。これにより、プルタブ部32を保護する役割もする。
【0028】
アウターフレーム部2とパーシャルオープンシート部1との完全接着の接着強度は、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.1kg/15mm幅以上であることが好ましい。これにより、アウターフレーム部2とパーシャルオープンシート部1とが剥離不能とすることができ、且つアウターフレーム部2の成形性条件を、成形性に優れる範囲とすることができる。接着強度が前記下限値未満であると、蓋部材の用途によっては完全接着にならない場合があり、前記上限値を超えると、成形の際に加熱加圧工程の温度及び圧力を上げる必要があるので、高温になることにより樹脂の流動性が上がり、金型から樹脂がはみ出す場合がある。
【0029】
カバーシート部3のシート部31とパーシャルオープンシート部1との疑似接着の接着強度は、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.0kg/15mm幅〜1.2kg/15mm幅であることが好ましい。これにより、カバーシート部3のシート部31をパーシャルオープンシート部1から容易に剥離できる。接着強度が前記下限値未満であると、内容物を充填する時や後殺菌等により内圧が上がったときに、カバーシート部3のシート部31とパーシャルオープンシート部1との間に空隙が生じ、パーシャルオープンシート部1の部分開口から内容物が染み出してしまうことがある。この染み出しが発生しても、内容物は蓋部材の外に漏れることはないが、商品の価値が下がってしまう。接着強度が前記上限値を超えると、開封が困難となる。
【0030】
カバーシート部3のインナーフレーム部33とアウターフレーム部2との完全接着の接着強度は、JIS食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.5kg/15mm幅以上であることが好ましい。これにより、カバーシート部3のインナーフレーム部33とアウターフレーム部2とが剥離不能であり、プルタブ部32を引っ張った際には、シート部31のみがV字溝331に沿って切り取られてパーシャルオープンシート部1から剥離し、インナーフレーム部33はアウターフレーム部2に接着されたままとなる。
【0031】
本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、特に限定されないが、パーシャルオープンシート部がポリプロピレン(PP)樹脂からなる表面を有する樹脂シートであり、アウターフレーム部がメタロセンポリエチレン(メタロセンPE)樹脂からなり、カバーシート部が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂又は低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂からなることが好ましい。これにより、パーシャルオープンシート部は、アウターフレーム部と完全接着され、且つパーシャルオープンシート部とカバーシート部とが疑似接着され、さらに、カバーシート部がインナーフレーム部を有する場合は、インナーフレーム部とアウターフレーム部とが完全接着される。
【0032】
アウターフレーム部に用いられるメタロセンポリエチレン樹脂は、主鎖の均一性と側鎖の分岐度を調整しやすいという特徴があるため、樹脂の加工性等をコントロールしやすい点で好ましい。
【0033】
パーシャルオープンシート部は、ポリプロピレン樹脂からなる表面を有する樹脂シートであれば、単層の樹脂シートであってもよく、多層構造の複合樹脂シートであってもよい。前記複合樹脂シートとしては、紙、金属箔、蒸着層などの中間層を有するものも含まれる。
【0034】
次に、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法について説明する。
本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法は、前記アウターフレーム部を成形するための金型Aと、前記カバーシート部を成形するための金型Bを用い、パーシャルオープンシート部が設置された前記金型A内に、溶融樹脂を射出成形(インサート射出成形)することにより前記アウターフレーム部を形成する工程と、パーシャルオープンシート部が設置された前記金型B内に、溶融樹脂を射出成形(インサート射出成形)することにより前記カバーシート部を形成する工程とからなる。
すなわち、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材は、パーシャルオープンシート部とアウターフレーム部とを一体化させた後、得られた一体物にカバーシート部を一体化させて製造してもよいし、パーシャルオープンシート部とカバーシート部とを一体化させた後、得られた一体物にアウターフレーム部を一体化させて製造してもよい。
【0035】
なお、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法は、上記のようなインサート射出成形を行う方法に限定されず、同等のプラスチックを作る他の製造方法であってもよい。
【0036】
以下、図4及び図5をもとに、パーシャルオープンシート部とアウターフレーム部とを一体化させた後(一次成形工程)、得られた一体物にカバーシート部を一体化させる(二次成形工程)ことによる、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法の一例について説明する。図4は前記一次成形工程の一例を説明する図であり、図5は前記二次成形工程の一例を説明する図である。
【0037】
まず、図4をもとに、一次成形工程の一例について説明する。
手順(a)において、ポリプロピレン(PP)樹脂製のパーシャルオープンシート部1を金型A内にインサートし、当該金型Aの可動側に設置する。
【0038】
次に、手順(b)において、金型Aの固定側から加熱溶融させたメタロセンポリエチレン(メタロセンPE)樹脂を射出注入し、冷却、固化させ、アウターフレーム部2を成形する。
前記加熱の温度は、170℃〜270℃が好ましく、特に200℃〜250℃が好ましい。加熱の温度が前記下限値未満であると、パーシャルオープンシート部1とアウターフレーム部2との接着強度が弱くなってしまい、また、メタロセンPE樹脂の流動性が低いため、金型A内に溶融樹脂が充満されない場合がある。前記上限値を超えると、メタロセンPE樹脂の流動性が上がり、金型Aからはみ出す場合がある。
【0039】
次に、図5をもとに前記二次成形工程の一例について説明する。
手順(c)において、前記一次成形工程で得られたパーシャルオープンシート部1とアウターフレーム部2とからなる中間体を金型B内にインサートし、当該金型Bの可動側に設置する。
【0040】
次に、手順(d)において、金型Bの固定側から加熱溶融させた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂又は低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を射出注入し、冷却、固化させ、カバーシート部3を成形する。
前記加熱の温度は、180℃〜260℃が好ましく、特に210℃〜240℃が好ましい。加熱の温度が前記下限値未満であると、パーシャルオープンシート部1とカバーシート部3の接着強度が弱く、容器内の圧力が上がると、内容物がパーシャルオープンシート部1の部分開口から染み出してしまうことがある。加熱の温度が前記上限値を超えると、接着強度が強すぎて、開封が困難となる。
【0041】
次に、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材によって容器本体の開口部が覆われてなる、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器について説明する。
図6に、本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器の一例の概略断面図を示す。
【0042】
パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器100は、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材20及びボディ部4とからなる。
ボディ部としては、図4に示されるような筒状のボディ部4以外にも、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材のアウターフレーム部と接合できるものであれば特に限定されず、例えば、箱状、袋状等が挙げられる。
【0043】
本発明のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器は、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の形態及びボディ部の形態を変えることによって、多様な用途に対応させることができる。例えば、パーシャルオープンシート部に設けられた小径孔から飲料を飲むことができる容器、パーシャルオープンシート部に設けられた平行に並んだ複数個のスリット状の貫通孔から水切り又は湯切りをすることができる容器、パーシャルオープンシート部に設けられたクロス状のスリットにストローを挿して飲料を飲むことができる容器、容器を振ることにより、パーシャルオープンシート部に設けられた複数個の小径孔から粉状の内容物を出すことができる容器、袋状のボディ部を絞ることにより、パーシャルオープンシート部に設けられた小径孔から半固形流動物を絞り出すことができる容器等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
(実施例)
なお、以下において、アウターフレーム部を成形するための金型を金型Aと称し、カバーシート部を成形するための金型を金型Bと称する。
【0046】
(1)一次成形工程
金型Aの可動側にパーシャルオープンシート部としてPP樹脂製スリットシートを設置し、表1に示す170℃〜270℃の範囲内の温度でメタロセンPE樹脂(日本ポリエチレン製、NJ664N)を射出成形して、前記金型Aの形状に合わせて成形されたアウターフレーム部と前記パーシャルオープンシート部とが一体化してなる中間体を作製した。
【0047】
(2)二次成形工程
前記一次成形工程により250℃で成形した中間体を金型Bの可動側に設置し、表2に示す180℃〜260℃の範囲内の温度で、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン製、LJ802)を射出成形して、前記中間体と前記カバーシート部とを一体化させたパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材を作製した。
【0048】
(比較例)
(1)一次成形工程
メタロセンPE樹脂を射出成形する際の温度を、表3に示す140℃〜160℃及び280℃〜320℃の範囲内の温度としたこと以外は、実施例と同様にして行った。
【0049】
(2)二次成形工程
高密度ポリエチレン樹脂を射出成形する際の温度を、表4に示す160℃、170℃及び270℃としたこと以外は、実施例と同様にして行った。
【0050】
(評価)
実験例及び比較例で得られた中間体及び蓋部材について、以下の評価を行った。実施例の中間体を用いた評価結果を表1、実施例の蓋部材を用いた評価結果を表2に示し、比較例の中間体を用いた評価結果を表3、比較例の蓋部材を用いた評価結果を表4に示す。
【0051】
(1−1)アウターフレーム部とパーシャルオープンシート部との接着強度
一次成形工程により得られた中間体を15mm幅のストリップに切断したものをサンプルとして、テンシロン引張り圧縮試験機RTC−1225A((株)オリエンテック製)を用い、測定スピード300mm/min、荷重レンジ2.5kNで、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じて引張強度を測定した。
【0052】
(1−2)アウターフレーム部のバリの有無
一次成形工程により得られた中間体を目視で観察することにより、バリ(金型からの樹脂のはみ出し)の有無を評価した。
○:バリ無し
△:若干のバリがあるものの、実質上問題なし
×:バリ有り
【0053】
(1−3)アウターフレーム部のショートの有無
一次成形工程により得られた中間体を目視で観察することにより、ショート(金型内における樹脂の充填不足)の有無を評価した。
○:ショート無し
△:若干のショートがあるものの、実質上問題なし
×:ショート有り
【0054】
(1−4)総合評価
上記(1−1)〜(1−3)の評価結果を総合して、一次成形工程により得られた中間体を総合的に評価した。
○:接着強度及び成形性に優れる
△:実質上問題なく、製品として使用可能
×:接着強度及び/又は成形性に問題があり、製品として使用不可能
【0055】
(2−1)カバーシート部のシート部とパーシャルオープンシート部との接着強度
二次成形工程により得られた蓋部材のカバーシート部のシート部とパーシャルオープンシート部との積層部分を15mm幅のストリップに切断したものをサンプルとして用い、テンシロン圧縮試験機RTC−1225A((株)オリエンテック製)を用い、測定スピード300mm/min、荷重レンジ2.5kNで、JIS食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じて引張強度を測定した。
【0056】
(2−2)カバーシート部の開封力
テンシロン圧縮試験機RTC−1225A((株)オリエンテック製)を用い、測定スピード300mm/min、荷重レンジ2.5kNで、二次成形工程により得られた蓋部材のカバーシート部のプルタブ部を持って引っ張り、シート部をパーシャルオープンシート部から剥離させるために要する力(開封力)を測定した。
○:常に4.5kg以下
△:4.5kgを超える場合がある
×:常に4.5kg以上
【0057】
(2−3)内容物の入り込みの有無
高密度ポリエチレン(HDPE)製、カップ状の300mL容量の容器本体に、コラーゲンスープ常温ゲル状を250mL入れ、二次成形工程により180〜260℃で成形した蓋部材を前記容器本体の開口部が覆われるように設置し、85℃30分ボイルしたときに、パーシャルオープンシート部(PP樹脂製スリットシート)の部分開口(スリット)からの内容物の染み出しを目視で観察することにより、パーシャルオープンシート部とカバーシート部との間への内容物の入り込みの有無を評価した。
○:入り込み無し
△:若干の入り込みがあるものの、実質上問題なし
×:入り込み有り
【0058】
(2−4)総合評価
上記(2−1)〜(2−3)の評価結果を総合して、二次成形工程により得られた蓋部材を総合的に評価した。
○:接着強度及び開封力に優れ、内容物の入り込みがない
△:実質上問題なく、製品として使用可能
×:接着強度、開封力及び内容物の入り込みのうち少なくとも1つに問題があり、製品として使用不可能
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【符号の説明】
【0063】
1 パーシャルオープンシート部
11 部分開口
2 アウターフレーム部
3 カバーシート部
31 シート部
32 プルタブ部
33 インナーフレーム部
331 V字溝
4 ボディ部
10 パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材
20 パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材
100 パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部を覆い、部分開口を有するパーシャルオープンシート部と、前記パーシャルオープンシート部の周縁部と接合して当該パーシャルオープンシート部を支持するアウターフレーム部と、前記パーシャルオープンシート部を被覆して、容器の開口部を密封するカバーシート部とからなるパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材であって、
前記アウターフレーム部に前記パーシャルオープンシート部が完全接着され、
前記パーシャルオープンシート部に前記カバーシート部が疑似接着により被覆され、
前記カバーシート部は、前記パーシャルオープンシート部を被覆するシート部と、当該カバーシート部の上面に設けられるプルタブ部とを備えることを特徴とする、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材。
【請求項2】
前記カバーシート部のシート部の周囲に、V字溝を介してインナーフレーム部が設けられており、前記インナーフレーム部は前記アウターフレーム部に完全接着している、請求項1に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材。
【請求項3】
前記パーシャルオープンシート部と前記アウターフレーム部とが完全接着し、その接着強度が、食品衛生法による器具、容器包装試験方法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.1kg/15mm幅〜1.4kg/15mm幅であり、
前記パーシャルオープンシート部と前記カバーシート部とが疑似接着し、その接着強度が、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.0kg/15mm幅〜1.2kg/15mm幅である、請求項1又は2に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材。
【請求項4】
前記パーシャルオープンシート部と前記アウターフレーム部とが完全接着し、その接着強度が、食品衛生法による器具、容器包装試験方法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.1kg/15mm幅〜1.4kg/15mm幅であり、
前記パーシャルオープンシート部と前記カバーシート部のシート部とが疑似接着し、その接着強度が、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.0kg/15mm幅〜1.2kg/15mm幅であり、
前記アウターフレーム部と前記カバーシート部のインナーフレーム部とが完全接着し、その接着強度が、食品衛生法による器具、容器包装試験法に準じ、15mm幅のストリップを用いて測定したときに、1.5kg/15mm幅以上である、請求項2に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材。
【請求項5】
前記パーシャルオープンシート部がポリプロピレン樹脂からなる表面を有する樹脂シートであり、
前記アウターフレーム部がメタロセンポリエチレン樹脂からなり、
前記カバーシート部が直鎖状低密度ポリエチレン樹脂又は低密度ポリエチレン樹脂からなる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法であって、
前記アウターフレーム部を成形するための金型Aと、前記カバーシート部を成形するための金型Bを用い、
前記パーシャルオープンシート部が設置された前記金型A内に、溶融樹脂を射出成形することにより前記アウターフレーム部を形成する工程と、
前記パーシャルオープンシート部が設置された前記金型B内に、溶融樹脂を射出成形することにより前記カバーシート部を形成する工程とからなる、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法。
【請求項7】
前記アウターフレーム部は、前記金型A内で、メタロセンポリエチレン樹脂を170℃〜270℃で前記パーシャルオープンシート部上に射出成形することにより成形され、
前記カバーシート部は、前記金型B内で、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂又は低密度ポリエチレン樹脂を180℃〜260℃で前記パーシャルオープンシート部上に射出成形することにより成形される、請求項6に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材の製造方法。
【請求項8】
前記請求項1乃至5のいずれか一項に記載のパーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材によって容器本体の開口部が覆われてなる、パーシャルオープンシート付きフルオープン蓋部材付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66852(P2012−66852A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214056(P2010−214056)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000211514)中山工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】