説明

パーマネントウェーブ剤用消臭処理剤並びにこれを含有するパーマネントウェーブ剤

【課題】 低価格でかつ人体に安全なパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤並びにこのような消臭処理剤を含有するパーマネントウェーブ剤を提供すること。
【解決手段】 アミノ酸―亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を含有させてパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤を得、この消臭処理剤をパーマネントウェーブ剤に含有させる。前記パーマネントウェーブ剤が還元剤を主剤とする場合は、アミノ酸―亜鉛錯体を含有させ、前記パーマネントウェーブ剤が酸化剤を主剤とする場合は、アミノ酸―亜鉛錯体を含む反応物を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤並びに前記消臭処理剤を含有するパーマネントウェーブ剤に関する。
【0002】
パーマネントウェーブ剤、特にメルカプト化合物のような還元剤を主剤としたものはそれ自体特有の臭気があり、しかも、毛髪との接触により施術中のアンモニア、硫化水素、メチルメルカプタンのような不快臭および施術後の残臭が問題となっている。
【0003】
本発明は、これら施術中の不快臭の低減、施術後の残臭除去を目的としたパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤並びにこのような消臭処理剤を含有するパーマネントウェーブ剤に関るものである。
【背景技術】
【0004】
パーマネントウェーブ剤は毛髪を酸化・還元させてウェーブを毛髪に付与するものである。パーマネントウェーブ処理はウェーブ用1剤であるチオグリコール酸やその塩などのメルカプト基を有する還元剤で処理後、臭素酸ソーダ、過酸化水素水などの酸化剤であるウェーブ用2剤を作用させてウェーブを固定化するものである。
【0005】
ウェーブ用1剤である還元剤で毛髪を構成するケラチン中のシスチンのジスルフィド結合を切断する際、硫化水素およびメルカプタンが発生する。また、ウェーブ用2剤である酸化剤でウェーブを固定化し、発生するガスを消臭するようにしているが、現状では充分ではなく、ウェーブ用2剤の処理後の残臭が問題となっている。
【0006】
従来より、パーマネント施術時に発生する悪臭低減について幾つか提案されている。
【0007】
特許文献1では、施術時に発生する硫化水素を低減する方法として、金属(亜鉛、銅、ニッケル、コバルト)のテトラミンをチオグリコール酸またはその塩を主剤とするパーマネントウェーブ剤に添加する方法が提案されている。しかし添加量が0.1wt%以上で、それぞれの金属塩の溶解度までとされており、任意の量を添加することができない。更に、安全性に問題が残る。
【0008】
特許文献2では、ゲルマニウム、アンチモン、およびビスマスの化合物の少なくとも1種をメルカプト化合物を主剤とするパーマネントウェーブ剤に添加することを提案している。しかし、使用化合物が二酸化ゲルマニウムなどの無機塩であり溶解性が悪く、主剤への添加量が制限せられるとともに安全性に問題が残る。
【0009】
特許文献3では、(a)紅茶抽出物、および、(b)アミノ酸およびその塩から選ばれる1種または2種以上を含有するパーマネントウェーブ剤を提案している。安全性については問題ないが、紅茶抽出物およびアミノ酸の添加量が多量となる欠点を有している。また、施術中での悪臭の抑制が官能検査であり、定量性に欠ける。
【0010】
特許文献4では、メルカプト化合物を主剤とするパーマネントウェーブ剤中にアセトフェノンやメチル-β-ナフチルケトンなどのケトン類とシクロデキストリンを含有した用剤を提案している。パーマネントウェーブ剤臭が低減し、毛髪と接触した際に発生する硫化水素も低減されるが、ウェーブ剤の外観は一部結晶が析出し、溶解度に問題があり、しかも、シクロデキストリンの含有量が多い。
【0011】
特許文献5では、アミノ酸錯体を利用した毛髪整剤として金属アミノ酸錯体を含むヘアトリートメント組成物を提案している。しかし、この組成物は消臭目的での提案ではなく、パーマネントウェーブ剤に添加することは示唆されていない。
【0012】
【特許文献1】英国特許 674195
【特許文献2】特開昭59−172414
【特許文献3】特開2000−319143
【特許文献4】特開昭59−84810
【特許文献5】特表2001−503044
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、アミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を従来のパーマネントウェーブ剤に添加し、施術中の悪臭抑制やパーマネントウェーブ施術後の残臭を除去できることは知られていない。また、上述のようにパーマネントウェーブ剤、特に、メルカプト基を有するウェーブ剤に均一に溶解しかつ溶解度に制限なく高濃度領域まで溶解でき、安全性に問題がない組成物は知られていない。
【0014】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、低価格でかつ人体に安全なパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤並びにこのような消臭処理剤を含有するパーマネントウェーブ剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上述の従来技術の問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、アミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物が、i)人体に対して安全で無臭であり、ii)パーマネントウェーブ用1剤自体の悪臭の発生を抑制し、かつ、施術中の悪臭抑制あるいは除去効果があり、施術後の残臭の除去効果があり、また、パーマネントウェーブ用2剤で処理した後の残臭を低減する効果があり、iii)ウェーブ剤に任意に均一溶解でき、上述の問題点が解決されることを見出し本発明に至ったものである。
【0016】
即ち、本発明のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤は、請求項1記載の通り、アミノ酸―亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を含有することを特徴とする。
また、請求項2記載のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤は、請求項1記載のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤において、前記アミノ酸がグリシン、アラニン、フェニルアラニン、サルコシンであることを特徴とする。
また、本発明のパーマネントウェーブ剤は、請求項3記載の通り、請求項1または請求項2記載のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤を含有することを特徴とする。
また、請求項4記載のパーマネントウェーブ剤は、請求項3記載のパーマネントウェーブ剤において、前記パーマネントウェーブ剤が還元剤を主剤とし、アミノ酸―亜鉛錯体を含有することを特徴とする。
また、請求項5記載のパーマネントウェーブ剤は請求項3記載のパーマネントウェーブ剤において、前記パーマネントウェーブ剤が酸化剤を主剤とし、アミノ酸―亜鉛錯体を含む反応物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
メルカプト基を有するパーマネントウェーブ用1剤中にアミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を添加することによりパーマネント施術中の悪臭を低減することが可能である。更に、酸化剤であるパーマネントウェーブ用2剤中にアミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を添加することによりパーマネント施術後の残臭を抑制することが可能である。付加的効果としてアミノ酸を添加されており毛髪の損傷が防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤は、例えば、炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸との反応により得られるアミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を有効成分とするものであり、パーマネントウェーブ施術時に発生する硫化水素、アンモニア、メチルメルカプタンなどの悪臭を除去あるいは抑制することができる。特に、硫化水素を有効に除去することができる。
【0019】
前記炭酸亜鉛としては、通常の炭酸亜鉛の他に塩基性炭酸亜鉛を包含する。また、
前記酸化亜鉛としては、金属亜鉛からの製法、亜鉛鉱石からの直接の製法および湿式による製法いずれの製法で得られたものも使用に供される。
【0020】
塩基性炭酸亜鉛および酸化亜鉛は化粧品原料、医薬品原料として使用されており人体に触れても無害である。
【0021】
また、前記アミノ酸としては、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸塩およびサルコシンの1種または2種以上が用いられる。中でもグリシン、アラニン、フェニルアラニン、サルコシンが好ましい。アミノ酸は食品添加剤、化粧品原料、医薬品原料に使用されており人体に無害である。
【0022】
炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸との反応は通常亜鉛化合物1モルに対し、アミノ酸化合物2モルで錯体を生成する。錯体そのものは代表的溶媒である水には不溶であるが、チオグリコール酸やその塩、システアミンなど、メルカプト基を有するパーマネントウェーブ用1剤に溶解する。
【0023】
更に、代表的な酸化剤である臭素酸ソーダを主成分とするウェーブ用2剤には亜鉛−アミノ酸錯体そのものは溶解しないため、アミノ酸リッチのアミノ酸と炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛との反応で得られた化合物を添加することにより溶解する。そのため、ウェーブ用2剤中にアミノ酸リッチの亜鉛−アミノ酸反応物を溶解した用剤を1剤処理後毛髪に作用させることによりパーマ施術後の残臭を抑制することが可能である。
【0024】
水性溶媒に可溶化させるためには、通常炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸との反応において、亜鉛化合物1重量部に対しアミノ酸3重量部以上で完全に水に対して可溶化する。例えば、酸化亜鉛1モルに対しアミノ酸としてグリシンの例では、3.3モル以上で可溶化する。即ち、錯体が形成され、その後、溶解助剤としてアミノ酸が関与している。
【0025】
パーマネントウェーブ剤に対し溶解性が悪い場合は、亜鉛化合物1重量部に対しアミノ酸3重量部以上の反応により得られた水溶液や水溶液から水分を除去した水分蒸発物を添加して用いることができる。
【0026】
一般にパーマネントウェーブ用1剤に用いられる還元剤はチオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリコール酸モノエタノールアミンなどのチオグリコール酸塩、システインまたはその誘導体、チオ乳酸などのメルカプトカルボン酸、システアミンやシステインアミドなどのメルカプト化合物が挙げられる。パーマネントウェーブ用1剤は上記還元剤を主剤としてアンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどのアルカリ剤、および反応調節剤を加えウェーブ用1剤とする。
【0027】
パーマネントウェーブ用2剤は臭素酸ソーダや臭素酸カリウムなどの臭素酸塩、過酸化水素水、過酸化ナトリウムなどの酸化剤を主剤とする。
【0028】
以下に亜鉛化合物とアミノ酸との反応について詳述する。
調製法の例を挙げるとアミノ酸と塩基性炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛との反応においてアミノ酸−亜鉛錯体は特表2001−503044号記載の方法で得ることができる。
【0029】
アミノ酸−亜鉛錯体は水には不溶である。しかし、ウェーブ1剤を構成するチオグリコール酸アンモニウム系1剤のようなアルカリ性水溶液、システアミン塩酸塩をベースにした中性水溶液あるいは酸性水溶液に可溶である。
【0030】
アミノ酸リッチの亜鉛−アミノ酸反応物あるいはアミノ酸と塩基性炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛との反応で水溶液を得る方法の詳細は以下の通りである。
【0031】
亜鉛化合物1重量部に対しアミノ酸3重量部以上で完全に水に対して可溶化する。水可溶化物を得るには亜鉛化合物とアミノ酸との反応割合は亜鉛化合物1モルに対し4モル〜20モルの範囲であり、4モル未満では透明水溶化物を得ることができない。20モルを超えると水溶化は可能であるが消臭性能や経済性の観点から好ましくない。その際の反応温度は常温から80℃であり、好ましくは60℃〜75℃である。60℃〜75℃の条件では常温に比較し反応時間を短縮できる他、抗菌作用を付与できる効果がある。アミノ酸と塩基性炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛との反応で水性媒体中の有効成分の濃度は0.5%〜20%で透明水溶液を得ることが可能である。
【0032】
更に、アミノ酸と塩基性炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛との反応物を水性媒体中に懸濁状態で用いることもできる。水性媒体中、懸濁状態でのアミノ酸と塩基性炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛との反応物の濃度は20%〜40%である。40%を超える濃度では取り扱い上不都合が生じる。更に、上記透明水溶液から水分を除去した蒸発物を使用することができる。
【0033】
炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸との反応において、反応媒体として水性媒体が用いられる。水性媒体としては水(イオン交換水、水道水)、水―アルコール混合溶媒、水―グリコール、水―グリコールモノエーテルが挙げられる。なかでも水および水−アルコール混合溶媒が主として用いられる。
【0034】
ここでパーマネントウェーブ用1剤に添加されるアミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物の量は限定されないが、通常0.1重量%〜20重量%、好ましくは、1重量%〜10重量%である。
更に、酸化剤であるパーマネントウェーブ用2剤に添加されるアミノ酸−亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物の量は0.1重量%〜20重量%、好ましくは、0.5重量%〜10重量%である。
この範囲以外では抗菌・消臭効果と経済性の観点から好ましくない。
【0035】
本発明における炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸を有効成分とするパーマネントウェーブ用剤は本発明の効果が阻害されない限りにおいて、例えば、アニスシード、オールスパイスなどの精油、あるいは、植物抽出物やアスコルビン酸ソーダ、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、オイゲノール、イソオイゲノール、チモールなどの酸化防止剤、クミン、コリアンダーなどの精油や塩化ベンザルコニウム、オイゲノール、オクタノール、デヒドロ酢酸ソーダ、ソルビン酸カリなどの防カビ剤・殺菌剤、香料、タンニン、サポニン、桂皮エステル、サリチル酸エステルなどの紫外線吸収剤などの添加剤を含有することができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.亜鉛−グリシン錯体の調製
酸化亜鉛10gを還流冷却器を備えた200mlフラスコに入れ、次いで、グリシンの水溶液(18.5gを100mlイオン交換水に溶解したもの)を加え、攪拌しながら還流下10時間加熱した。白色結晶をろ過して水で洗浄し風乾し、得られた錯体を乳鉢で細粉化した。
2.パーマネントウェーブ1剤の調製
(2−A)パーマネントウェーブ用1剤の調製
<処方>
チオグリコール酸アンモニウム 9g
エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム 0.5g
アンモニア水(25%) 3g
蒸留水 残部
(2−B)亜鉛−グリシン錯体含有パーマネントウェーブ用1剤の調製
<処方>
チオグリコール酸アンモニウム 9g
エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム 0.5g
アンモニア水(25%) 3g
亜鉛−グリシン錯体 1g
蒸留水 残部
【0037】
(比較例1)
毛髪とパーマネントウェーブ用1剤との反応
毛髪2gを1%ラウリル硫酸ソーダ水溶液で洗浄後、水洗し、自然乾燥した。
上記(2−A)記載のウェーブ用1剤20gをシャーレにとり、このウェーブ1剤に毛髪2gを30秒間浸漬し、取り出し水をきる。30℃にセットされた3リッターフラスコの中に毛髪をいれ15分後発生するガスを検知管にて測定した。測定結果を表1に示す。
尚、前記パーマネントウェーブ用1剤(2−A)のガス発生量を参照例1、前記パーマネントウェーブ1剤(2−B)のガス発生量を参照例2として、表1に示した。
【0038】
(実施例1)
比較例1同様毛髪を洗浄処理した。次ぎに、毛髪2gを毛髪と上記(2−B)記載の亜鉛−グリシン錯体含有パーマネントウェーブ用1剤に30秒間浸漬後、比較例1と同様にして30℃で15分後のガス発生量を測定し、測定結果を表1に示した。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様にチオグリコール酸アンモニウム系ウェーブ用1剤を用い、1剤中の亜鉛−グリシン錯体含有量は0.5wt%とした。毛髪との反応について実施例1と同様に測定を行い、測定結果を表1に示した。
【0040】
(実施例3)
実施例1と同様にチオグリコール酸アンモニウム系ウェーブ用1剤を用い、1剤中の亜鉛−グリシン錯体含有量は6.3wt%とした。毛髪との反応について実施例1と同様に測定を行い、測定結果を表1に示した。
【0041】
(実施例4)
酸化亜鉛5gとグリシン15gを秤量し、300cc三口フラスコに入れ、イオン水200mlを添加し、72℃温浴下攪拌し溶解させた。均一透明溶液となる所要時間は約30分であった。また、調製液のpHは6.7であった。得られた水溶液を、上記チオグリコール酸アンモニウム系ウェーブ用1剤中、上記反応物が10wt%となるように調整し、酸化亜鉛−グリシン反応物水溶液を含有したウェーブ用1剤を調製した。毛髪との反応について実施例1と同様に測定を行い、測定結果を表1に示した。
【0042】
(実施例5)
実施例4において得られた酸化亜鉛−グリシン反応物水溶液を、エバポレーターにて水分を蒸発させ、固体を得た。その後24時間自然乾燥させた後、乳鉢で細粉化した。得られた反応物をパーマネントウェーブ用1剤中に5wt%添加した。毛髪との反応について実施例1と同様に測定を行い、測定結果を表1に示した。
【0043】
(実施例6)
実施例5と同様にして得られた固形物をウェーブ用1剤中に1.5wt%添加した。毛髪との反応について実施例1と同様に測定を行い、測定結果を表1に示した。
【0044】
(実施例7)
パーマネントウェーブ用1剤として商品名スピエラ(昭和電工製)2wt%水溶液を調製した。水溶液のpHは4.0であった。
(1)スピエラ2wt%水溶液15mlに毛髪2gを浸漬し30秒間反応させ、水をきり、30℃に設定された3リッターフラスコに入れ、15分間反応させ発生するガスを検知管にて測定した。その結果18ppmの硫化水素が発生した。これを参照例3とした。
(2)スピエラ2wt%水溶液20gに0.4gの酸化亜鉛−グリシン錯体を加えた。水溶液は完全に溶解した。スピエラ2wt%水溶液15mlに毛髪2gを浸漬し30秒間反応させ、水をきり、30℃に設定された3リッターフラスコに入れ15分間反応させ発生するガスを検知管にて測定した。その結果ガスの発生量は1ppmであった。
【0045】
(実施例8)
パーマネントウェーブ用1剤としてシステアミン塩酸塩からなるウェーブ1剤を調製した。調製法は以下である。
(パーマネントウェーブ用1剤)
システアミン塩酸塩 7wt%
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.2wt%
アンモニア(25%) 0.1wt%
イオン交換水 残部
(1)システアミン塩酸塩からなるウェーブ用1剤に毛髪2gを浸漬し、30秒間反応させ水をきり、30℃に設定された3リッターフラスコに入れ15分間反応させ、発生するガスを検知管にて測定した。その結果30ppmの硫化水素が発生した。これを参照例4とした。
(2)システアミン塩酸塩からなるウェーブ用1剤20gに0.2gの酸化亜鉛−グリシン錯体を加えた。系の水溶液は完全に溶解した。この水溶液と毛髪との反応を上記(1)と同様に実施した。測定結果を表1に示した。
【0046】
(実施例9)
酸化亜鉛10gを秤量し、200ccビーカーに入れ、次いでアラニン30gを添加し、イオン交換水80gを添加し、72℃で撹拌し、スラリー状で反応させた。撹拌2時間後、室温まで撹拌しながら冷却した。その後、ろ過し、21gのろ過物が得られた。このろ過物を110℃で2時間乾燥させた。このろ過物の乾燥減量は15wt%であった。実施例1と同様に得られた乾燥反応物を2wt%になるようにチオグリコール酸アンモニウム系ウェーブ用1剤に添加し、毛髪との反応を行った。測定結果を表1に示した。
【0047】
(実施例10)
炭酸亜鉛10gを還流冷却器を備えた200mlフラスコに入れ、次いで、フェニルアラニンを30gおよびイオン交換水80gを加え、還流下、攪拌しながら5時間反応を行った。次いで、得られた懸濁状の水溶液をろ過し、精製水で洗浄し、得られた錯体を風乾した。風乾物を110℃恒温槽で2時間乾燥させ、得られた錯体を細粉化した。実施例1と同様に得られた錯体を1wt%になるようにチオグリコール酸アンモニウム系ウェーブ用1剤に添加し、毛髪との反応を行った。測定結果を表1に示した。
【0048】
(実施例11)
実施例10において、炭酸亜鉛の代わりに酸化亜鉛10g、フェニルアラニンの代わりにサルコシン25gを用いて実施例10と同様に錯体を調整した。実施例1と同様に酸化亜鉛―サルコシン錯体を3wt%となるようにチオグリコール酸アンモニウム系ウェーブ用1剤に添加し、毛髪との反応を行った。測定結果を表1に示した。
【0049】
(実施例12)
酸化亜鉛5gとアラニン25gを秤量し、500ccビーカーに入れ、イオン交換水200gを添加し、72℃で1時間撹拌し、透明水溶液を得た。透明水溶液をエバポレータにて水分を除去し、固体を得た。その後自然乾燥した後、細粉化した。実施例1と同様に酸化亜鉛―アラニン反応物を4wt%となるようにチオグリコール酸アンモニウム系1剤に添加し、毛髪との反応を行った。測定結果を表1に示した。
【0050】
(実施例13)
炭酸亜鉛1gとアラニン9gを秤量し、200ccビーカーに入れ、イオン水90gを添加し、72℃で攪拌し無色透明水溶液を調製した。調製液のpHは6.5であった。得られた水溶液溶液をエバポレーターにて水分を蒸発させ固体を得た。その後24時間自然乾燥させた後、乳鉢で細粉化した。
次ぎに、以下の処方で亜鉛−アミノ酸含有ウェーブ2剤を調製した。
臭素酸ソーダ 5wt%
塩基性炭酸亜鉛−アラニン反応物 1wt%
残部 殺菌イオン交換水
毛髪2gを実施例1で用いた亜鉛−グリシン錯体含有パーマネントウェーブ用1剤15gで30秒間浸漬後、水切りした後、30℃で15分間処理した。次いで、上記塩基性炭酸亜鉛−アラニン反応物含有パーマネントウェーブ用2剤10gで常温15分間放置した。次に、毛髪を洗浄後乾燥させた。三日後乾燥させた毛髪に水2gを霧状スプレーし毛髪の不快臭(残臭)をみた。その結果、表2に示すように、全く不快臭を感じなかった。
【0051】
(実施例14)
実施例4と同様にグリシン−酸化亜鉛(1:6 重量比)反応物を実施例13の処方と同様ウェーブ用2剤に2wt%添加し、ウェーブ剤を調製した。パーマネントウェーブ処理は実施例9と同様に行なった。表2に示すように、施術後の残臭は感じられなかった。
【0052】
(比較例2)
比較例1と同様に毛髪をパーマネントウェーブ1剤で処理後ウェーブ2剤である臭素酸ソーダ5wt%水溶液で処理した後実施例9と同様に残臭をみた。その結果4人のパネラーによる判定で臭気強度2で残臭が認められた。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1および表2から明らかように、パーマネントウェーブ用1剤中に亜鉛−アミノ酸錯体および/または炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸との反応物を添加することによりパーマネント施術中の悪臭を低減でき、また、酸化剤であるパーマネントウェーブ用2剤中に亜鉛−アミノ酸錯体および/または炭酸亜鉛および/または酸化亜鉛とアミノ酸からとの反応物を添加することによりパーマネント施術後の残臭を抑制できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明はアミノ酸―亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を含有し、低価格でかつ人体に安全なパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤並びにこのような消臭処理剤を含有するパーマネントウェーブ剤を提供でき、パーマネントウェーブ剤用消臭処理剤や前記消臭処理剤を含有するパーマネントウェーブ剤に関する産業分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸―亜鉛錯体および/またはアミノ酸−亜鉛錯体を含む反応物を含有することを特徴とするパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤。
【請求項2】
前記アミノ酸がグリシン、アラニン、フェニルアラニン、サルコシンであることを特徴とする請求項1記載のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のパーマネントウェーブ剤用消臭処理剤を含有することを特徴とするパーマネントウェーブ剤。
【請求項4】
前記パーマネントウェーブ剤が還元剤を主剤とし、アミノ酸―亜鉛錯体を含有することを特徴とする請求項3記載のパーマネントウェーブ剤。
【請求項5】
前記パーマネントウェーブ剤が酸化剤を主剤とし、アミノ酸―亜鉛錯体を含む反応物を含有することを特徴とする請求項3記載のパーマネントウェーブ剤。

【公開番号】特開2009−84201(P2009−84201A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255515(P2007−255515)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(390015853)理研香料工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】