説明

パーム油またはパーム油を含有する混合油脂の粒状結晶生成抑制方法

【課題】パーム油そのものの粒状結晶生成を抑制する方法、およびパーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂の粒状結晶生成を抑制する方法を提供する。
【解決手段】パーム油そのものまたはパーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂に、エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーム油またはパーム油を含有する混合油脂の粒状結晶生成を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーム油は、近年その生産量が急増しており、安価且つ大量生産が可能な食用油脂として、油脂産業において不可欠の原料となっている。しかし、パーム油は粗大結晶を生成し易い油脂として知られており、パーム油を原料として配合したマーガリン、ショートニングなどの加工油脂では、その製造時或いは製造後の保存中に粗大結晶が生成し、そのため製品の物性が著しく低下し、従来問題となっていた。
【0003】
この問題を解決する手段の一つとして乳化剤の添加があり、該乳化剤として、例えば、HLBが3以下であって、構成脂肪酸が、炭素数12〜22の飽和脂肪酸20〜80重量%及び炭素数16〜22の不飽和脂肪酸80〜20重量%からなる多価アルコール脂肪酸エステル(特許文献1参照)、飽和脂肪酸結合型ソルビタン脂肪酸エステル(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
しかし、前者の方法では、例えばソルビタントリ脂肪酸エステル(HLB2.1)では顕著な効果が認められず、また後者の方法では、油相の総脂肪酸量に対して炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を0.8〜15重量%含有していることが必須条件であり、特殊な用途の加工油脂においてのみ適用される技術であり、その利用は限定的なものである。
【0005】
【特許文献1】特開平5−199838号公報
【特許文献2】特開2000−262213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、パーム油そのものの粒状結晶生成を抑制する方法、およびパーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂の粒状結晶生成を抑制する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、パーム油そのものまたはパーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂に、エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することにより目的が達せられることを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、
(1)エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することを特徴とする、パーム油そのものの粒状結晶生成抑制方法、
(2)エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することを特徴とする、パーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂の粒状結晶生成抑制方法、からなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、油脂原料として、従来マーガリンまたはショートニングに使用し難いとされてきたパーム油を用いても粒状結晶の生成がなく、優れた伸展性、食感を有する加工油脂の製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るパーム油は、ヤシ科アブラヤシ(Elaeis guineensis Jacq.)の果実の果肉部から採取された油脂であって、食用に適するよう処理されたものであればよく、特に制限はない。更に、該植物の果実の果肉部から採取された油脂に溶剤などを加え、または加えないで冷却した後分離し、食用に適するよう処理されたもの(例えばパームオレイン、パームステアリンなど)も本発明で言うところのパーム油に含まれる。
【0010】
本発明に係るパーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂とは、パーム油とパーム油以外の油脂との混合油脂であり、該混合油脂を構成する脂肪酸100%中、炭素数6〜12の脂肪酸の含有量が0.8%未満の油脂を指す。炭素数6〜12の脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
【0011】
上記混合油脂の配合に用いられる油脂としては、食用に適するよう処理されたものであって、炭素数6〜12の脂肪酸残基を有さないか或いは有していてもその含有量が極少量である油脂であれば特に制限はなく、例えばオリーブ油、キャノーラ油、米ぬか油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、大豆油、コーン油、なたね油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、綿実油、および落花生油などの植物油脂、牛脂、豚脂、魚油および乳脂などの動物油脂、これらの動植物油脂を分別処理または水素添加処理したもの、さらにこれらの動植物油脂単独または2種類以上を任意に組み合わせてエステル交換処理したものなどが挙げられる。これらの油脂は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
パーム核油、やし油、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)などの油脂は、炭素数6〜12の脂肪酸残基を著量含有するため、上記混合油脂の配合には適していないが、混合油脂を構成する脂肪酸100%中、炭素数6〜12の脂肪酸の含有量が0.8%未満が満たされる範囲内であれば、極少量配合することは差し支えない。
【0012】
本発明において用いられるソルビタン飽和脂肪酸エステルは、酸またはアルカリ触媒存在下、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物と飽和脂肪酸との直接エステル化反応により得ることができる。
【0013】
上記エステル化反応で用いられるソルビトールとしては、例えば、白色粉末または粒状のD−ソルビトール或いはD−ソルビトールを約50.0〜70.0質量%含有するD−ソルビトール液が挙げられる。
【0014】
上記エステル化反応で用いられるソルビトール分子内縮合物は、ソルビトールの分子内脱水で得られる化合物であり、例えば1,5−ソルビタン、1,4−ソルビタン、2,5−ソルビタン、3,6−ソルビタン、1,4,3,6−ソルバイドなどが挙げられる。これらソルビトール分子内縮合物は、1種類でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また本発明で用いられるソルビトール分子内縮合物中には、上記化合物以外に、未反応のソルビトールが含まれていても良い。
ソルビトールの分子内脱水反応は、酸触媒(例えば濃硫酸、p−トルエンスルホン酸など)の存在下に、ソルビトールを約110〜150℃、好ましくは約120℃で加熱し、減圧下、例えば約1.3kPaで、発生する水を除去することにより行われるのが好ましい。反応の終点は脱水縮合物の水酸基価を測定することにより決定される。反応終了後、脱水縮合物に例えば水酸化ナトリウム水溶液を加えて酸触媒を中和し、更に、例えば珪藻土などのろ過助剤を加えてろ過するのが好ましい。
【0015】
上記エステル化反応で用いられる飽和脂肪酸としては、例えば炭素数6〜24の飽和脂肪酸が挙げられ、好ましくは炭素数14〜22の直鎖状の飽和脂肪酸である。好ましい飽和脂肪酸の具体的例としては、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などが挙げられる。これら脂肪酸は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0016】
上記エステル化反応において、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物に対する脂肪酸の仕込み量は、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物1モルに対しておおむね1〜2モル程度であるのが好ましい。
【0017】
ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物と脂肪酸とのエステル化反応は無触媒で行って良く、または酸触媒あるいはアルカリ触媒を用いて行っても良いが、アルカリ触媒の存在下で行われるのが好ましい。酸触媒としては、例えば、濃硫酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。アルカリ触媒としては、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ触媒の使用量は、全仕込み量(乾燥物換算)の約0.01〜1.0質量%、好ましくは約0.05〜0.5質量%である。
【0018】
上記エステル化反応は、例えば攪拌機、加熱用のジャケット、邪魔板、不活性ガス吹き込み管、温度計および冷却器付き水分分離器などを備えた通常の反応容器に、ソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物、脂肪酸、および触媒を供給して攪拌混合し、窒素または二酸化炭素などの任意の不活性ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、所定温度で一定時間加熱して行われる。反応温度は通常、約180〜260℃の範囲、好ましくは約200〜250℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下で、反応時間は約0.5〜15時間、好ましくは約1〜3時間である。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、約10以下を目安に決められる。
【0019】
エステル化反応終了後、触媒を用いた場合は、反応混合物中に残存する触媒を中和するのが好ましい。その際、エステル化反応の温度が200℃以上の場合は液温を約180〜200℃に冷却してから中和処理を行うのが好ましい。また反応温度が200℃以下の場合は、そのままの温度で中和処理を行って良い。中和後、その温度で好ましくは約0.5時間以上、更に好ましくは約1〜10時間放置する。未反応のソルビトールまたはソルビトール分子内縮合物が下層に分離した場合はそれを除去するのが好ましい。
【0020】
本発明の方法において、油脂に添加されるソルビタン飽和脂肪酸エステルは、そのエステル化率が20%以上50%未満の範囲にあるものであることが好ましい。エステル化率(%)は下式により算出される。ここでエステル価および水酸基価は、「基準油脂分析試験法(I)」(社団法人 日本油化学会編)の[2.3.3-1996 エステル価]および[2.3.6-1996 ヒドロキシル価]に準じて測定される。
【数1】

【0021】
本発明の方法において、油脂に添加されるエステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルの量は、パーム油そのものまたは混合油脂に配合されるパーム油100質量部に対して約0.05〜3.0質量部が好ましく、特に約0.1〜2.0質量部がより好ましい。パーム油そのものまたはパーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂に、該ソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することにより、粒状結晶の生成が抑制される。ここで、粒状結晶とは最大径が約20μm以上の結晶を指す。
【0022】
本発明の方法の実施形態としては、例えば油中水型乳化物であるマーガリン、ファットスプレッド、および水分をほとんど含まないショートニングのような可塑性油脂組成物が挙げられる。ここでマーガリンは、油脂組成物中に占める油脂含有率が80重量%以上のものをいい、ファットスプレッドは80重量%未満のものをいう。
【0023】
上記可塑性油脂組成物の製造方法は特に限定されず、自体公知の方法を用いることができる。以下に、マーガリンの製造方法を例示する。例えば、原料油脂およびエステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを混合し、約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロールなど)、着色料(例えばβ−カロテンなど)、香料(例えばミルクフレーバーなど)、乳化剤(例えばレシチンなど)などを添加して油相とする。一方、精製水に、所望により乳または乳製品(例えば全粉乳、脱脂粉乳など)、食塩、砂糖類、酸味料(例えばクエン酸など)などを加え、約50〜60℃に加熱して溶解し水相とする。次に、油相と水相を通常の攪拌・混合槽を用いて混合し、得られた混合液を送液ポンプで急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行い可塑性油脂組成物を得る。また乳化工程をとらず、油相と水相をそれぞれ定量ポンプで急冷捏和装置に送液し、以下同様に処理し可塑性油脂組成物を得ることもできる。
【0024】
更にショートニングの製造方法を例示する。例えば、原料油脂およびエステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを混合し、約50〜80℃、好ましくは約60〜70℃に加熱して溶解し、所望により酸化防止剤(例えば抽出トコフェロールなど)、着色料(例えばβ−カロテンなど)、香料(例えばミルクフレーバーなど)、乳化剤(例えばレシチンなど)を添加する。得られた溶液を、組成物100g中約10〜15mlとなるよう窒素ガスまたは空気を吹き込みながら、送液ポンプで予冷器を通して急冷捏和装置に送液し、油脂の結晶化と練捏を連続的に行い可塑性油脂組成物を得る。得られた油脂組成物は、更に、約25〜30℃で24〜48時間テンパリングされるのが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に本発明を実施例に基づいて、より具体的に説明するが、本発明はこれらに限定さ
れるものではない。
【0026】
[製造例1]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ソルビタン(商品名:ソルビタン70;三光化学工業社製)241g(約1.0モル)を仕込み、約400Paの減圧下、75℃で約10分間脱水した。次にステアリン酸(商品名:ステアリン酸48;ミヨシ油脂社製)270g(約1.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液5mLを加え、常圧下、窒素ガス気流中220℃で、酸価10以下となるまで約4時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)1.15gを添加して触媒を中和し、ソルビタンステアリン酸エステル(試作品1)約415gを得た。
【0027】
[製造例2]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ソルビタン(商品名:ソルビタン70;三光化学工業社製)241g(約1.0モル)を仕込み、約400Paの減圧下、75℃で約10分間脱水した。次にステアリン酸(商品名:ステアリン酸48;ミヨシ油脂社製)486g(約1.8モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液7mLを加え、常圧下、窒素ガス気流中220℃で、酸価10以下となるまで約4時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)1.61gを添加して触媒を中和し、ソルビタンステアリン酸エステル(試作品2)約615gを得た。
【0028】
[製造例3]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ソルビタン(商品名:ソルビタン70;三光化学工業社製)241g(約1.0モル)を仕込み、約400Paの減圧下、75℃で約10分間脱水した。次にステアリン酸(商品名:ステアリン酸48;ミヨシ油脂社製)702g(約2.6モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液9mLを加え、常圧下、窒素ガス気流中220℃で、酸価10以下となるまで約4時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.07gを添加して触媒を中和し、ソルビタンステアリン酸エステル(試作品3)約815gを得た。
【0029】
[製造例4]
撹拌機、温度計、ガス吹込管および水分離器を取り付けた1Lの四つ口フラスコに、ソルビタン(商品名:ソルビタン70;三光化学工業社製)241g(約1.0モル)を仕込み、約400Paの減圧下、75℃で約10分間脱水した。次にステアリン酸(商品名:ステアリン酸48;ミヨシ油脂社製)810g(約3.0モル)を仕込み、触媒として水酸化ナトリウム10w/v%水溶液10mLを加え、常圧下、窒素ガス気流中220℃で、酸価10以下となるまで約4時間エステル化反応を行った。得られた反応混合物を約180℃まで冷却し、リン酸(85質量%)2.3gを添加して触媒を中和し、ソルビタンステアリン酸エステル(試作品4)約915gを得た。
【0030】
[試験例1]
製造例1〜4で作製したソルビタンステアリン酸エステル(試作品1〜4)のエステル価および水酸基価を測定し、それらを用いてエステル化率(%)を算出した。結果を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
[実施例1]
パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)100gに製造例1〜4で作製したソルビタンステアリン酸エステル(試作品1〜4)を0.3g加え、80℃に加熱して溶解後、溶液を20℃の恒温器内に保存した。保存日より起算して10日、20日および30日後に溶液をサンプリングし、偏光顕微鏡にて結晶の状態を観察し、結晶の大きさを測定した。同時に対照として、乳化剤無添加のものも試験した。結果を表2に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
[実施例2]
製造例1〜4で作製したソルビタンステアリン酸エステル(試作品1〜4)を配合したマーガリン(試料No.1〜4)を調製し、評価した。同時に対照として、ソルビタンステアリン酸エステル無添加のもの(試料No.5)も調製し、評価した。
【0035】
[マーガリン(試料No.1〜4)の作製]
(1)精製水16質量部に食塩1質量部および脱脂粉乳2質量部を加えて溶解し、約40℃に加温して水相とする。
(2)パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)80質量%、なたね油(日清オイリオ社製)15質量%およびパームステアリン(不二製油社製)5質量%からなる配合油100質量部に対してソルビタンステアリン酸エステル(試作品1〜4)0.24質量部、レシチン(商品名:SLPペースト;辻製油社製)0.1質量部を加えて溶解し、約60℃に加温して油相とする。
(3)(1)の水相をTKホモミキサー(型式:MARKII;特殊機化工業社製)で低速で攪拌しながら、(2)で調製した油相81質量部を徐々に加える。乳化液は始めはO/W型を呈しているが途中で転相し、最終的にはW/O型となる。
(4)得られた乳化液を常法により急冷捏和し、マーガリン(試料No.1〜4)を得た。
【0036】
[マーガリン(試料No.5)の作製]
(1)精製水16質量部に食塩1質量部および脱脂粉乳2質量部を加えて溶解し、約40℃に加温して水相とする。
(2)パーム油(商品名:RPO;植田製油社製)80質量%、なたね油(日清オイリオ社製)15質量%およびパームステアリン(不二製油社製)5質量%からなる配合油100質量部に対してレシチン(商品名:SLPペースト;辻製油社製)0.1質量部を加えて溶解し、約60℃に加温して油相とする。
(3)(1)の水相をTKホモミキサー(型式:MARKII;特殊機化工業社製)で低速で攪拌しながら、(2)で調製した油相81質量部を徐々に加える。
(4)得られた乳化液を常法により急冷捏和し、マーガリン(試料No.5)を得た。
【0037】
[マーガリンの評価]
得られたマーガリン(試料No.1〜5)を5℃で30日間保存した後、各試料10gを切り取り、約20℃の環境下でバターナイフを用いてパンの表面に塗布し、更に塗布したパンを試食し、下記表3に示す評価基準に従い伸展性と食感を評価した。官能試験は10名のパネラーで行い、結果は10名の評点の平均値として求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表4に示した。
○ 2.5以上
△ 1.5以上、2.5未満
× 1.5未満
【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
表4から明らかなように、実施例のマーガリンは伸展性、食感ともに良好であった。一方、比較例のマーガリンは伸展性が悪く、舌触りもザラザラして良くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の方法は、スポンジケーキ、バターケーキ、食パン、デニッシュ、パイ、クッキー、クラッカー、シュー、アイシング類などの製造の際に使用される製菓・製パン用油脂の製造において、また、家庭用マーガリン、学校給食用マーガリンなどの製造において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することを特徴とする、パーム油そのものの粒状結晶生成抑制方法。
【請求項2】
エステル化率が20%以上50%未満のソルビタン飽和脂肪酸エステルを添加することを特徴とする、パーム油を含有し、炭素数6〜12の脂肪酸残基を実質的に有さない混合油脂の粒状結晶生成抑制方法。

【公開番号】特開2007−124948(P2007−124948A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320525(P2005−320525)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(390010674)理研ビタミン株式会社 (236)
【Fターム(参考)】