説明

ヒストンデアセチラーゼ関連遺伝子およびタンパク質

【課題】ヒストンデアセチラーゼ遺伝子および遺伝子産物を提供する。特に、既知の酵母ヒストンデアセチラーゼ1(hda1)クラスII ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)に高い相同性を有するタンパク質、このようなタンパク質をコードする核酸分子、該タンパク質を認識する抗体、および、例えば、細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性もしくは免疫性応答、または乾癬を含むHDACの異常に関連する病状の診断方法を提供する。
【解決手段】新規HDAC9ポリペプチドをコードするヌクレオチド、及び、該HDAC9ポリペプチドの特定のアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒストンデアセチラーゼ遺伝子および遺伝子産物に関する。特に、本発明は、既知の酵母ヒストンデアセチラーゼ1(hda1)クラスII ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)に高い相同性を有するタンパク質、このようなタンパク質をコードする核酸分子、該タンパク質を認識する抗体、および、例えば、細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性もしくは免疫性応答、または乾癬を含むHDACの異常に関連する病状の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒストンのアセチル化は、DNAへの転写因子の接近可能性を改変することにより遺伝子発現を調節する主要な制御メカニズムである。ヒストンのアセチル化は、ヌクレオソームの集合の間およびDNA合成の間に起こるリジンの遊離Σ−アミノ基の可逆的修飾である。ヒストンのアセチル化レベルの変化は、また、転写活性化および不活性化(silencing)の間にも起こる。ヒストンのアセチル化は、一般に、転写の活性化に関連する。一方、脱アセチル化は転写抑制に関連する。ヒストンのアセチル化のレベルは、競合するヒストンアセチラーゼおよびデアセチラーゼの間の平衡に起因する(Emiliani, S., Fischle, W., Van Lindt, C., Al-Abed, Y., and Verdin, E., Proc Nat. Acad. Sci., U. S. A., 95, 2795-2800 (1998)。
【0003】
HDACは、転写の制御において重要な役割を果たすことが示されている。HDACは、転写抑制に関与する複合体の構成要素として機能する。これはHDACと複合タンパク質複合体との相互作用を仲介するものであり、そしてデアセチラーゼの活性化を要する。HDAC複合体は、コリプレッサーmSin3A(Kasten, M.M., Dorland, S., Stillman, D.J. Mol. Cell. Biol. 17, 4852-4858 (1997))およびmSin3A−関連タンパク質 (Zhang, Y., Iratni, R., Erdjument-Bromage, H., Tempst, P., Reinberg, D. Cell 89, 357-364 (1997);Zhang, Y., Sun, Z.W., Iratni, R., Erdjument-Bromage, H., Tempst, P., Hampsey, M., Reinberg, D. Mol. Cell. 1, 1021-1031(1998))、不活性化メディエーターNcoR (Nagy, L., H.- Y. Kao, D. Chakravarti, R. J. Lin, C. A. Hassig, D. E. Ayer, S. L. Schreiber, and R. M. Evans (1997) Cell 89, 373-380およびSMRT(Alland, L. et al., Nature 387:49-55 (1997);Heinzel, T. et al., Nature 387:43-8 (1997)), 転写リプレッサーRb(Brownell, J. E., Zhou, J., Ranalli, T., Kobayashi, R., Edmondson, D. G., Roth, S.Y., and Allis, C. D. (1996) Cell 84, 843-851)、Rb様タンパク質p107(Ferreira, R., Magnaghi-Jaulin, L., Robin, P., Harel-Bellan, A., Trouche, D. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 10493-10498)およびp130(Stiegler, P., De Luca, A. Bagella, L., Giordano, A. (1998) Cancer Res. 389, 187-190)、Rb結合タンパク質(Nicolas, E., Morales, V., Magnaghi-Jaulin, L., Harel-Bellan, A., Richard-Foy, H., Trouche, D. (2000) J. Biol. Chem. 275, 9797-9804, Lai, A., Lee, J.M., Yang, W.M., DeCaprio, J.A., Kaelin, W.G. Jr., Seto, E., Branton, P.E. (1999) Mol. Cell. Biol. 19, 6632-6641)、Mad/Max(Laherty, C., W.- M. Yang, J.- M. Sun, J. R. Davie, E. Seto, and R. N. Eisenman. (1997) Cell 89, 349-456)、核ホルモン受容体(Nagy, L., H.- Y. Kao, D. Chakravarti, R. J. Lin, C. A. Hassig, D. E. Ayer, S. L. Schreiber, and R. M. Evans. (1997) Cell 89, 373-380)、ヌクレオソームリモデリング因子(Xue, Y., Wong, J., Moreno, G.T., Young, M.K., Cote, J., Wang, W. (1998) Mol. Cell. 2, 851-861)、メチル−結合タンパク質(Fuks, F., Burgers, W.A., Brehm, A., Hughes-Davies, L., Kouzarides, T. (2000) Nat. Genet. 24, 88-91, Nan, X., Ng, H.H., Johnson, C.A., Laherty C.D., Turner, B.M., Eisenman, R.N., Bird, A. (1998) Nature 393, 386-389, Ghosh, A.K., Steele, R., Ray, R.B. (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 260, 405-409, Ng, H. H., Zhang, Y., Hendrich, B., Johnson, C.A., Turner, B.M., Erdjument-Bromage, H., Tempst, P., Reinberg, D., Bird, A. (1999) Nat. Genet. 23, 58-61)、およびDNA修復機構タンパク質(Yarden, R.I., Brody, L.C. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96, 4983-4988, Cai, R.L., Yan-Neale, Y., Cueto, M.A., Xu, H., Cohen, D. (2000) J. Biol. Chem. 275, 27909-27916)を含み得る。
【0004】
さらに、HDAC1はYY1(Yang, W.- M., Inouye, C., Zeng, Y., Bearss, D., and Seto, E. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93, 122845-12850)およびSp1(Doetzlhofer, A., Rotheneder, H., Lagger, G., Koranda, M., Kurtev, V., Brosch, G., Wintersberger, E., Seiser, C. (1999) Mol. Cell. Biol. 19, 5504-5511)に直接結合することが見出されており、そしてHDAC4および5はMEF2(Grozinger, C. M., and Schreiber, S. L. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 7835-7840)に結合する。さらに、HDACは複合体中で一体となって見出されている(Eilers, A.L., Billin, A.N., Liu, J., Ayer, D.E. (1999) J Biol Chem 274, 32750-32756, Grozinger, C. M., and Schreiber, S. L. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 7835-7840)。
【0005】
2つの明確なクラスの酵母ヒストンデアセチラーゼがサイズおよび配列に基づいて同定された。酵母クラスI HDACはRpd3、Hos1p、およびHos2pを含む。クラスIIは酵母HDA1pを含む。さらに、これら2つのクラスのメンバーは、異なる複合体を形成することが見出されている。ヒトHDACは、それらの酵母配列への類似性に基づいて分類される。クラスIヒトHDACはHDAC1〜3および8を含む。クラスII HDACはHDAC4〜7を含む。クラスI HDACのデアセチラーゼコアは、最初から390までのアミノ酸に存在する。N末端に第2の触媒ドメインを含むHDAC4を除いて、クラスII HDAC触媒ドメインはこれらのペプチドのC末端に位置する(Grozinger, C. M., Hassig, C. A., and Schreiber, S. L. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96, 4868-4873)。
【0006】
クロマチンのアセチル化の機能を研究するために使用されてきた重要なアプローチは、ヒストンデアセチラーゼの特異的インヒビターの使用である。いくつかのクラスの化合物は、HDACを阻害することが同定されている。ヒストンデアセチラーゼインヒビターは、G1/SおよびG2/M細胞周期アレスト、分化(Itazaki, H., K. Nagashima, K. Sugita, H. Yoshida, Y. Kawamura, Y. Yasuda, K. Matsumoto, K. Ishii, N. Uotani, H. Nakai, A. Terui, S. Yoshimatsu, Y. Ikenishi and Y. Nakagawa. (1990) J. Antibiot. 12, 1524-1532, Hoshikawa, Y., Kijima, M., Yoshida, M., and Beppu, T. (1991) Agric. Biol. Chem. 55, 1491-1497, Hoshikawa, Y., Kwon, H.- J., Yoshida, M., Horinouchi, S., and Beppu, T. (1994) Exp. Cell Res. 214, 189-197, Sugita, K., Koizumi, K., and Yoshida, H. (1992) Cancer Res. 52, 168-172, Yoshida, M., Y. Hoshikawa, K. Koseki, K. Mori and T. Beppu. (1990) J. of Antibiot. 43, 1101-106, Yoshida, M., Nomura, S., and Beppu, T. (1987) Cancer Res. 47, 3688-3691)、ならびに変形および正常細胞のアポトーシス(Medina, V., Edmonds, B., Young, G. P., James, R., Appleton, S., Zalewski, P. D. (1997) Cancer Res. 57, 3697-3707)および変形の反転(Kwon, H. J., Owa, T., Hassig, C. A., Shimada, J., and Schreiber, S. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 95, 3356-3361, Kim, M.-S., Son, M.-W., Park, Y. I., and Moon, A. (2000) Cancer Lett. 157, 23-30)の誘導を含む抗増殖効果を有することが見出されている。
【0007】
これらの効果は、非リガンド化レチノイン酸受容体PML−RARαおよびPLZF−RARαの融合体との複合体中のHDACの存在と共に、腫瘍発生能におけるHDACに対する役割を示す(Grignani, F., De Matteis, S., Nervi, C., Tomassoni, L., Gelmetti, V., Cioce, M., Fanelli, M., Ruthardt, M., Ferrara, F. F., Zamir, I., Seiser, C., Grignani, F., Lazar, M. A., Minucci, S., Pelicci, P. G. (1998) Nature 391, 815-818, He, L. Z., Guidez, F., Tribioli, C., Peruzzi, D., Ruthardt, M., Zelent, A., Pandolfi, P. P. (1998) Nat. Genet., 18, 126-35, Lin, R.J., Nagy, L., Inoue, S., Shao, W., Miller, W. H. Jr and Evans, R. M. (1998) Nature 391, 811-814)。さらに、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、フェニルブチレートおよびトリコスタチンAは、前骨髄球性白血病の処置において有望であり、そしていくつかの他のHDACインヒビターは研究中であり、臨床での使用に近づいている(Byrd, J.C., Shinn, C., Ravi, R., Willis, C.R., Waselenko, J.K., Flinn, I.W., Dawson, N.A., Grever, M.R. (1999) Blood 94, 1401-1408, Kim, Y.B., Lee, K.H., Sugita, K., Yoshida, M., Horinouchi, S. (1999) Oncogene 18, 2461-2470, Cohen, L.A., Amin, S., Marks, P.A., Rifkind, R.A., Desai, D., Richon, V.M. (1999) Anticancer Res. 19, 4999-5005)。
【0008】
さらに、HDACインヒビターであるブチレートは、炎症誘発性サイトカインTNF−α、TNF−β、IL−6、およびIL1−βの発現の減少させることが見出された。これらの効果は、NFkBの活性化の阻害(Segain JP, Raingeard de la Bletiere D, Bourreille, A., Leray V., Gervois, N., Rosales, C., Ferrier, L., Bonnet, C., Blottiere, H.M., Galmiche, J.P. (2000) Butyrate inhibits inflammatory responses through NFkappaB inhibition: implications for Crohn's disease. Gut 47, 397-403)およびヒストンデアセチラーゼを阻害する能力(Inan M.S., Rasoulpour, R.J., Yin, L., Hubbard, A.K., Rosenberg, D.W., Giardina, C. (2000) The luminal short-chain fatty acid butyrate modulates NF-kappaB activity in a human colonic epithelial cell line. Gastroenterology 118, 724-34)に起因するものと考えられている。
【0009】
HDACインヒビターであるトラポキシンの発見により、トラポキシン様分子が結合したアフィニティーマトリックスカラムを用いて、最初のヒトヒストンデアセチラーゼであるHDAC1を単離することが可能となった(Taunton, J., Collins, J. L., and Schreiber, S. (1996) J. Am. Chem. Soc. 118, 10412-10422)。続いて、7つの他のヒトHDAC酵素の異性体が報告された(Taunton, J., Hassig, C. A. and Schreiber, S.L. (1996). Science 272, 408-411, Yang, W. m., Inouye, C., Zeng, Y., Bearss, D., and Seto, D. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93, 12845-12850, Yang, W. M., Yao, y. L., Sun, J. M., Davie, J. R., and Seto, E. (1997). J. Biol Chem. 272, 28001-28007, Emiliani, S., Fischle, W., Van Lint, C., Al-Abed, Y., and Verdin, E. (1998). Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 2795-27800)。これら8つのHDACは、配列相同性に基づいてクラスI(酵母遺伝子Rpd3に類似したHDAC1〜3および8)とクラスII HDAC(酵母遺伝子hda1に類似した4〜7(Grozinger, C. M., Hassig, C.A., and Schrieber, S. L. (1999). Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96, 4983-4988.)とに分けられる。今回、我々は可能性のある新規なHDAC(以下、HDAC9という。)の単離および特徴化を報告する。これはhda1 クラスII HDACに対して配列類似性を示す。HDAC9は、HDAC クラスIおよびクラスIIを橋渡しする特徴を有する。
【発明の開示】
【0010】
発明の要約
本発明は、ヒストンデアセチラーゼ、特に新規ヒストンデアセチラーゼHDAC9に関する。
第1の観点において、本発明は配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドを提供する。さらに、本発明は配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる単離ポリペプチドを提供する。配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列はHDACのファミリーの既知のメンバーとかなりの程度の相同性を示す。簡便のため、配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを、ヒストンデアセチラーゼ9またはHDAC9と称する。このようなポリペプチド、またはそのフラグメントは、種々の正常組織中において発現し、例えば、HDAC9は約3kbの転写物として正常な精巣、胃、脾臓、小腸、胎盤、肝臓、腎臓、結腸、肺、心臓および脳に存在する。HDAC9は筋肉においては検出されないが、このレーンは、また、GAPDHにもハイブリダイズしなかった(図7)。
【0011】
配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列を有する単離ポリペプチドのフラグメントは、約5〜148アミノ酸、好ましくは約10〜約143アミノ酸、さらに好ましくは約20〜約100アミノ酸、および最も好ましくは約20〜約50アミノ酸を含むポリペプチドを含む。このようなフラグメントは、また、本発明の一部を形成する。好ましくは、フラグメントは触媒ドメインを包含し、これはアミノ酸番号1〜390の間に存在すると予想されている。本発明のこの観点にしたがって、ヒト由来の新規ポリペプチド、ならびに生物学的、診断的または治療的に有用なそのフラグメント、変異体および誘導体、フラグメントの変異体および誘導体、および前記のアナログを提供する。
【0012】
第2の観点において、本発明は上記のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離DNAを提供する。特に、本発明は、
(1)配列番号2、配列番号7または配列番号8で示されるヌクレオチド配列を含む単離DNA;
(2)配列番号3で示されるヌクレオチド配列を含む単離DNA;
(3)配列番号3で示されるヌクレオチド配列にハイストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる単離DNA;および
(4)配列番号4で示されるヌクレオチド配列を含む単離DNA;
を提供する。また、少なくとも約15塩基、好ましくは少なくとも約20塩基を含む核酸配列、さらに好ましくは配列番号2、配列番号7または配列番号8あるいは配列番号3の約30連続塩基を含む核酸配列も提供される。
【0013】
また、配列番号2、配列番号7または配列番号8あるいは配列番号3で示される核酸配列の核酸に実質的に類似した核酸も、本発明の範囲内である。好ましい実施態様において、単離DNAは、本発明のDNAの少なくとも1つのフラグメントを含む、特に配列番号2、配列番号7または配列番号8あるいは配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるDNAを含む、ベクター分子の形態をとる。
【0014】
本発明の第3の観点は、ヒトにおける細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、または乾癬に関連した病状を含む(ただし、これらに限定されるわけではない。)遺伝子発現制御の異常に関連した病状の診断方法を含み、該方法はヒトからの適当な組織または細胞中の配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる新規ポリペプチドをコードする天然型内在性ヒト遺伝子から転写されたメッセンジャーRNAの転写の異常を検出することを含み、ここで、該転写の異常はこのような病状のヒトの苦痛の診断となる。特に、配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる新規ポリペプチドをコードする該天然型内在性ヒト遺伝子は、配列番号4で示されるゲノム性ヌクレオチド配列を含む。本発明の1つの実施態様において、該診断方法は、適当な組織または細胞の試料を、あるいは組織または細胞由来の単離RNAまたはDNA分子を、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列を有する新規ポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列とハイストリンジェント条件下でハイブリダイズする少なくとも約15〜20ヌクレオチド長の単離ヌクレオチド配列と、接触させることを含む。
【0015】
本発明のアッセイの観点の別の実施態様は、ヒトにおけるHDAC9活性の異常に関連した病状の診断方法であって、そのような病状を患うヒトからの一定の組織または細胞におけるデアセチラーゼ活性のレベルを測定することを含み、ここで、HDAC活性の異常に関連した病状に罹患していないヒトのそれぞれの組織または細胞におけるそのレベルと比較したデアセチラーゼ活性のレベルの異常が該病状を患うヒトの診断となる、方法を提供する。
【0016】
本発明のこの観点の1つの実施態様にしたがって、新規HDAC9をコードする遺伝子の転写を制御できるアンチセンスポリヌクレオチドが提供され;別の実施態様において、新規HDAC9をコードする遺伝子の転写を制御できる二本鎖RNAが提供される。
【0017】
本発明の別の観点により、前記のポリペプチド、ポリペプチドフラグメント、変異体および誘導体、変異体および誘導体のフラグメント、ならびにこれらのアナログの製造方法が提供される。本発明のこの観点の好ましい実施態様において、宿主細胞においてポリペプチドの発現に十分な条件下で、該ポリペプチドをコードする外来性ヌクレオチド配列を含む発現ベクターが組み込まれた宿主細胞を培養すること、これによってポリペプチドの発現を引き起こすこと、および所望により、発現したポリペプチドを回収することを含む、前記HDAC9の製造方法が提供される。本発明のこの観点の好ましい実施態様において、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドの製造方法であって、宿主細胞においてポリペプチドの発現に十分な条件下で、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列を含むまたはからなるポリペプチドをコードする外来性ポリヌクレオチドを含む発現ベクターが組み込まれた宿主細胞を培養すること、これにより発現ポリペプチドの生成を引き起こすこと、そして所望により発現したポリペプチドを回収することを含む方法が提供される。
【0018】
好ましくは、このような方法のいずれかにおいて、外来性ポリヌクレオチドは、配列番号2、7または8で示されるヌクレオチド配列、配列番号3で示されるヌクレオチド配列、あるいは配列番号4で示されるヌクレオチド配列を含むあるいはからなる。本発明の別の観点にしたがって、とりわけ、研究、生物学的、臨床的および治療目的のための、生成物、組成物、製造方法、ならびに前記のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの使用が提供される。
【0019】
本発明のこの観点の一定のさらなる好適な実施態様において、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、すなわちすべてのHDAC9変異体に特異的に結合する抗体またはそのフラグメントが提供される。この点に関して一定の特に好ましい実施態様において、該抗体は、ヒトHDAC9 ポリペプチドまたはヒトHDAC9ポリペプチドの部分に極めて選択的である。
【0020】
さらなる観点において、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列のフラグメントまたは部分に結合する抗体またはそのフラグメントが提供される。
【0021】
別の観点において、病状が対象中のHDAC9ポリペプチドの存在下で、HDAC9の遺伝子発現の異常、増加または減少、あるいはHDAC9ポリペプチドの活性の増加または減少に関連した、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列、あるいはそのフラグメントまたは部分を有するポリペプチドに結合した抗体の有効量を投与することによる、該対象における該病状の処置方法が提供される。また、対象中のHDAC9の存在下で、HDAC9遺伝子の発現の異常または増加または減少、あるいはHDAC9ポリペプチドの活性の増加または減少に関連した疾患または病状の診断方法であって、例えば、前に記載したH4ヒストンアッセイ(Inokoshi, J., Katagiri, M., Arima, S., Tanaka, H., Hayashi, M., Kim, Y.-B., Furumai, R., Yoshida, M., Horinouchi, S., Omura, S. (1999) Biochem. Biophys. Res. Com. 256, 372-376.)を含む、通常の方法の使用を含む方法も提供される。
【0022】
さらに別の観点において、本発明は、インビトロで増殖可能な宿主細胞、好ましくは、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列もしくはそのフラグメントを含むポリペプチドを培養増殖で生成することができる脊椎動物細胞、特に哺乳動物細胞もしくは細菌細胞を提供し、そこでは細胞は転写制御性DNA配列を含有し、そこでは転写制御配列は、配列番号1、5もしくは6にしたがうアミノ酸配列もしくはそのフラグメントを有するポリペプチドをコードするRNAの転写を制御する。これは、プラスミドにおけるHDAC9の増殖、および内在性HDAC9プロモーターまたは他の任意の転写制御配列を用いる、ヒトまたは昆虫細胞または細菌におけるDNA、RNAまたはタンパク質の生成を含むが、これらに限定されない。
【0023】
本発明のさらに別の観点において、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列もしくはそのフラグメントを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの正常を超えた発現を、患者から得られる体組織試料中に検出するために必要な成分を含むアッセイ方法およびキットが提供され、そのようなキットは例えば、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに、もしくはそのフラグメントに、結合する抗体を、または本発明のポリヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを、含む。好ましい実施態様では、そのようなキットは、また、キットの構成成分が使用されるべき手順の詳細を記した説明書を含む。
【0024】
別の観点において、本発明は、HDAC活性または遺伝子発現の異常に関連した疾患を処置するための医薬の製造における、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドもしくはそのフラグメント、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもしくはそのフラグメント、または配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含む該ポリペプチドもしくはそのフラグメントに結合する抗体の使用を目的とする。
【0025】
別の観点は、HDAC活性または遺伝子発現の異常に関連した疾患の処置のために、適当な医薬担体、賦形剤もしくは希釈剤と一緒に、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むかまたはからなるポリペプチドもしくはそのフラグメント、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもしくはそのフラグメント、またはそのようなポリペプチドもしくはそのフラグメントに結合する抗体を含む医薬組成物を目的とする。
【0026】
別の観点において、本発明は、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合できる、および/または配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの活性を調節できる分子、あるいは配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの転写または翻訳を調節する核酸配列に結合できる分子の同定方法を目的とする。このような方法は、例えば、米国特許5,541,070;5,567,317;5,593,853;5,670,326;5,679,582;5,856,083;5,858,657;5,866,341;5,876,946;5,989,814;6,010,861;6,020,141;6,030,779;および6,043024に記載され、これらすべての文献のすべての内容を引用により本明細書に包含させる。このような方法で同定された分子は、また、本発明の範囲内である。
【0027】
関連する観点において、HDACに生物学的に関連する複合体中の、結合タンパク質を同定するための新規HDAC9の使用を目的とする。これまで、HDAC9に結合するタンパク質は知られていない。しかしながら、これらは、HDAC9が他のHDACと相互作用することが前から知られているタンパク質と結合するかどうかを測定することにより特徴付けられ得る(序論を参照。)。例えば、HDAC9複合体の構成成分は、共免疫沈降を含む、通常の方法を用いて測定され得る(実施例9を参照。)。
【0028】
さらに別の観点において、本発明は、処置を必要とする対象の1もしくはそれ以上の組織中に本発明の核酸を導入する方法であって、その方法の結果、該核酸によりコードされた1もしくはそれ以上のタンパク質が発現し、そして/または組織内で細胞により分泌される、方法を目的とする。
【0029】
本発明の他の目的、特徴、利点、および観点は、以下の記載から当業者に明らかであろう。しかしながら、以下の記載および具体的実施例は、本発明の好ましい実施態様を示したものであるが、例示のためだけに与えられたことを理解すべきである。開示される発明の精神および範囲内での多様な変更および修飾は、下記の説明を読むことからおよび本開示の他の部分を読むことから当業者には容易に明らかになるであろう。
【0030】
図面の簡単な説明
図1は、GENFAM(プロプラエタリ・ソフトウエア)を用いて同定され、そして完全HDAC9 cDNA配列に関してデータベースを検索するために使用される1156bpオープンリーディングフレームを示す。それぞれのORF(配列番号3)はヌクレオチド位置番号1で開始し、そしてヌクレオチド位置番号1156で終了する。
【0031】
図2Aおよび2Bは、それぞれ、HDAC9の完全長cDNA配列(配列番号2)およびそのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。完全長cDNA配列は、ヌクレオチド位置番号1で開始し、そしてヌクレオチド位置番号2022で終了する。
【0032】
図3は、クローン198929/HDAC9の配列とアラインした、インシリコ(in silico)のゲノム性DNA配列(AL022328) (配列番号4)を示す。該アラインメントは、プロプリエタリ・ソフトウエア(Novartis Pharmaceuticals, Summit, NJ)を用いて製造された。
【0033】
図4は、HDAC9予想ペプチドおよび S. pombe Hda1ペプチドのアラインメントを示す。クエリー(query)はHDAC9ペプチドであり、そして対象(subject)はS. pombe Hda1ペプチドである。アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。
【0034】
図5は、HDAC1およびHDAC9v1のアラインメントならびに推定される触媒ドメインのアミノ酸およびRb結合ドメインの位置を示す。触媒ドメインのアミノ酸は実線で囲まれ、そして推定されるRbドメインのアミノ酸は点線の囲み中に含まれる。 アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。
【0035】
図6は、HDAC 1〜9v1のアラインメントを示す。該アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。
【0036】
図7は、HDAC9のノーザン分析を示す。(A)正常ヒト組織におけるHDAC9の分布のノーザンブロット分析。GAPDHを、RNAローディングのための対照と同一のブロットとハイブリダイズした。(B)腫瘍および正常組織の比較におけるHDAC9のノーザンブロット分析。GAPDHを、RNAローディングのための対照と同一のブロットとハイブリダイズさせた。
【0037】
図8は、18SリボソームRNAと比較した正常ヒト組織および細胞株中のHDAC9の分布のリアルタイムPCR分析を示す。ヒト肺カルシノーマ細胞株であるA549からのRNAを、内部標準として使用した。
【0038】
図9は、クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7)とのHDAC9v1のアラインメントを示す。該アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。触媒ドメインのアミノ酸が実線で囲まれている。
【0039】
図10は、クラスI HDAC(HDAC1、2、3、8)とのHDAC9v1のアラインメントを示す。該アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。触媒ドメインのアミノ酸が実線で囲まれている。
【0040】
図11は、3つのHDAC9配列変異体(HDAC9v1、HDAC9v2、およびHDAC9v3)を示す。HDAC9v1およびHDA9v2は、ヒトESTデータベースを検索することにより見出され、そしてHDAC9v3はCelera配列データベース中の予想される転写物として見出された。(A)は、該3つのHDAC9変異体ペプチド配列のアラインメントを示す。(B)は、クラスIおよびクラスII HDACペプチド配列の略図を示す。触媒ドメインは黒塗りのボックスであり、そして推定されるLXCXEモチーフは白抜きのボックスである。(C)は、HDAC9v1およびHDAC9v2のゲノム構造の略図である。エキソンを黒塗りのボックスで示し、そしてイントロンを黒塗りのボックスの間の線で示す。ボックスおよび線の長さは、エキソンおよびイントロンの長さを示す。
【0041】
図12は、HDAC9が酵素的に活性なヒストンデアセチラーゼであることを示す。(A) HDAC9の触媒活性は、HDAC3およびHDAC4の活性に匹敵する。(B)は、HDAC1が本アッセイにおけるヒストン基質の脱アセチル化に関して、HDAC3、HDAC4、およびHDAC9よりも効果的であったことを示す。
【0042】
図13は、HDAC9が核タンパク質であることおよびHDAC9−フラッグがインビトロで翻訳されることを示す。
図14は、 HDAC9v3およびHDAC9v2のDNAおよびペプチド配列を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
発明の詳細な説明
本明細書で引用した全ての特許出願、特許および参考文献は、その全体を本明細書に包含させる。
【0044】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAにおける多くの通常の技術が使用される。これらの技術は周知であり、そして、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (Wu and Grossman, and Wu, eds., respectively)において説明されている。
【0045】
本開示を通して使用される下記の略語を以下に列挙する:
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンデアセチラーゼ様タンパク質(HDLP)。
【0046】
最も広い意味において、ヌクレオチド配列に関して本明細書において使用される場合の“実質的に類似”なる語は、参照ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を意味し、ここで、対応する配列は、参照ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと実質的に同一の構造および機能を有するポリペプチド(例えば、該ポリペプチドの機能に影響しない程度のアミノ酸における変化のみが起こる)をコードする。望ましくは、実質的類似ヌクレオチド配列は、参照ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードする。実質的類似ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との間の同一性の百分率は、望ましくは、少なくとも80%、さらに望ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、いっそうさらに好ましくは少なくとも99%である。配列の比較を、Clustalw(例えば、Higgins, D.G. et al. Methods Enzymol. 266:383-402 (1996)参照。)を用いて実施する。Clustalwアラインメントは、デフォルトのパラメーターを用いて実施された。
【0047】
参照ヌクレオチド配列に“実質的に類似する”ヌクレオチド配列は、50℃にて2×SSC、0.1%SDS中で洗浄しながら50℃にて7%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTAにおいて、さらに望ましくは、50℃にて1×SSC、0.1%SDS中で洗浄しながら50℃にて7%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTAにおいて、さらにいっそう望ましくは、50℃にて0.5×SSC、0.1%SDS中で洗浄しながら50℃にて7%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTAにおいて、好ましくは、50℃にて0.1×SSC、0.1%SDS中で洗浄しながら50℃にて7%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTAにおいて、さらに好ましくは、65℃にて0.1×SSC、0.1%SDS中で洗浄しながら50℃にて7%硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、0.5M NaPO、1mM EDTAにおいて、参照ヌクレオチドとハイブリダイズし、さらに、機能的に等価な遺伝子産物をコードしている。
【0048】
“mRNAの上昇した転写”は、 HDAC9活性の異常に罹患していない対象よりも、このような疾患または病状を患う個体の適当な組織または細胞中に存在する本発明の新規ポリペプチドをコードする天然型内在性ヒト遺伝子から転写されたメッセンジャーRNAの量が多いことを意味する;特に、このような病状に罹患していないヒトにおける対応する組織において見出される量の、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍、さらに好ましくは少なくとも約10倍、最も好ましくは少なくとも約100倍の量のmRNA。このような上昇したレベルのmRNAは、結果的に、健康な個体と比較した細胞増殖の異常に関連した病状を患う個体におけるこのようなmRNAから翻訳されたタンパク質のレベルの上昇をもたらし得る。また、“mRNAの上昇した転写”は、発現が単独または他の分子と組み合わせたHDAC9により調節される遺伝子から転写されたメッセンジャーRNAの量がより多いことを意味し得ることも理解される。
【0049】
本明細書において使用される“宿主細胞”とは、例えば、エレクトロポレーション、燐酸カルシウム沈降、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染などの任意の方法により細胞中に導入された異種のDNAを含む原核もしくは真核細胞を意味する。
【0050】
本明細書において使用される“異種の”とは、“異なる天然由来の”を意味するか、もしくは非天然の状態を表す。例えば、もし宿主細胞が他の生物から、特に他の生物種から、得られるDNAもしくは遺伝子で形質転換されるならば、その遺伝子はその宿主細胞に関して、そしてまたその遺伝子を保有する宿主細胞の子孫に関して、異種である。同様に、“異種の”とは、同じ天然の元の細胞タイプから得られかつその中に挿入されるが、非天然の状態、例えば異なるコピー数、もしくは異なる調節エレメントによる制御下で存在する、ヌクレオチド配列を意味する。
【0051】
“ベクター”分子は、その中に異種核酸を挿入することができて、次いで適切な宿主細胞中に導入され得る、核酸分子である。ベクターは好ましくは、1つもしくはそれ以上の複製起点、および組換えDNAが挿入され得る1つもしくはそれ以上の部位を有する。ベクターは、しばしば、ベクターを有する細胞をそうでないものから選別できる簡便な手段を有しており、例えばそれらは薬剤耐性遺伝子をコードする。一般的なベクターとしては、プラスミド、ウイルスゲノム、および(主として酵母および細菌中の)“人工染色体”が挙げられる。
【0052】
“プラスミド”は、先行する小文字のpおよび/もしくはそれに続く大文字ならびに/または数字により、当業者によく知られた標準的命名規約にしたがって本明細書において示される。本明細書において開示される出発材料のプラスミドは市販で入手可能であるか、無制限に公開で入手可能であるか、または入手可能なプラスミドから周知の公表された手順の日常的な適用により構築され得るかのいずれかである。本発明にしたがって使用され得る多くのプラスミドならびに他のクローニングベクターおよび発現ベクターは周知であり、かつ当業者には容易に入手可能である。さらに、当業者は本発明における使用に適した任意の数の他のプラスミドを容易に構築し得る。本発明におけるこのようなプラスミドならびに他のベクターの性質、構築および使用は、本開示より当業者には容易に明らかであろう。
【0053】
“単離(された)”なる用語は、材料がその本来の環境(例えば、それが天然に由来するならば、天然の環境)から除去されることを意味する。例えば、生きている動物中に存在している天然由来のポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは単離されていないが、天然の系中に共存する物質の一部もしくは全てから分離された該ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは、たとえその後で天然の系中に再導入されたとしても、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であってもよく、そして/またはこのようなポリヌクレオチドもしくはポリペプチドは組成物の一部であってもよく、そしてなおこのようなベクターもしくは組成物がその天然環境の一部でない点において、単離されている。
【0054】
本明細書において使用される“転写制御配列”なる用語は、それらが機能し得るように結合された、タンパク質をコードする核酸配列の転写を誘導し、抑制し、もしくはさもなければ制御する、開始配列、エンハンサー配列およびプロモーター配列のような、DNA配列を意味する。
【0055】
本明細書において使用される“ヒト転写制御配列”は、本発明の新規HDAC9ポリペプチドをコードするヒト遺伝子と関連して、それがそれぞれのヒト染色体中に見出されるように、通常見出されるそれらの転写制御配列のいずれかである。該用語は、また、単独または他の分子と組み合されたHDAC9により調節されるヒト遺伝子発現に関連して通常見出される転写制御配列を意味し得ることも理解される。
【0056】
本明細書において使用される“非ヒト転写制御配列”は、ヒトゲノムに見出されない任意の転写制御配列である。
“ポリペプチド”なる用語は、本明細書において、“ポリペプチド類”および“タンパク質(類)”なる用語と互換的に用いられる。
【0057】
本明細書において使用されるように、本発明のポリペプチドの“化学的誘導体”は、通常その分子の一部ではないさらなる化学的部分を含有する本発明のポリペプチドである。そのような部分は分子の溶解性、吸収性、生物学的半減期などを改善し得る。これに代えて、これらの部分は分子の毒性を軽減し、分子の任意の望ましくない副作用などを消失もしくは減弱させ得る。このような効果を仲介する能力のある部分は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,16th ed., Mack Publishing Co., Eatson, Pa. (1980)に開示されている。
【0058】
本明細書において使用されるように、“HDAC9”は、天然、合成、半合成または組換えのどれかの任意の供給源からの任意の種、特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマおよび好ましくはヒトを含む哺乳動物から得られた実質的に精製されたHDAC9のアミノ酸配列を意味する。
【0059】
本明細書において使用されるように、“HDAC9活性”を含む“HDAC活性”は、H−標識H4ヒストンペプチドを含むヒストンタンパク質を脱アセチル化するHDACポリペプチドの能力を意味する。このような活性は、常法にしたがって、例えば Inokoshi, J., Katagiri, M., Arima, S., Tanaka, H., Hayashi, M., Kim, Y.-B., Furumai, R., Yoshida, M., Horinouchi, S., and Omura, S. (1999) Biochem. Biophys. Res. Com. 256, 372-376 に記載されたように測定され得る。生物学的に“活性な”タンパク質は、天然の分子の構造的、制御的または生化学的機能を有するタンパク質を意味する。
【0060】
本明細書において使用される“アゴニスト”なる語は、HDAC9と結合した場合に、HDAC9において変化を引き起こしてHDAC9の活性を調節する分子を意味する。アゴニストは、HDAC9と結合するタンパク質、核酸、炭水化物、または他の任意の分子を含み得る。
【0061】
本明細書において使用される“アンタゴニスト”または“インヒビター”なる語は、HDAC9と結合した場合に、HDAC9の生物学的活性をブロックまたは調節する分子を意味する。アンタゴニストおよびインヒビターには、HDAC9に結合する、天然または合成の、タンパク質、核酸、炭水化物、または他の任意の分子が含まれ得る。
【0062】
HDAC9は、Celera Human Genome Database、Incyte LIFESEQ(登録商標)データベースおよび公共のHigh Throughput Genomicデータベースにおけるヒストンデアセチラーゼに関連する新規ヒト配列を検索するための、GENFAMと呼ばれるプロプリエタリー・コンピューター・ソフトウエアを用いて同定された。1156bpのオープンリーディングフレーム(ORF)を同定および使用して、全組織および後根神経節cDNAライブラリーからの配列決定されたクローンのデータベースを検索した。各ライブラリーから2つずつ、計4つのクローンが、該ORF(M6、K10、P3、F23)を含むことが見出された。これらのクローンのうち、全組織ライブラリーからのM6は、配列解析およびインビトロ翻訳の結果として最も完全なcDNAであることが決定された。
【0063】
BLAST(Altshul S.F. et al Nucleic Acid Res 25:3389-402 (1997))を、cDNAクローンM6を用いてGenBankデータベースを検索するために使用した。ゲノム配列AL022328は、M6 cDNAと同一の配列であるエキソンを含むことが見出された。ゲノム配列AL022328との、HDAC9(2022〜8)のアンチセンス配列のClustalwアラインメントを図3に示す。HDAC9と予想されるcDNAの最初の7塩基は、おそらくそれらが次のイントロンへと続きそしてこの配列がおそらくソフトウエアにとって短すぎてアラインメントを測定することができないために、アラインメントしない。cDNAクローンM6の配列は、自動DNA配列決定法(ACGT, Inc., Northbrook, IL)により確認された。ゲノム配列AL022328から予想されたcDNA配列に基づいて、44塩基がM6のN末端から消失していた。続いて、この配列をPCRにより加えた。
【0064】
HDAC9の完全長cDNAから、673アミノ酸のタンパク質が予想される。HDAC9のcDNA配列は2022塩基対の長さである。他の既知のHDACとのHDAC9の類似性の割合を測定するために、Clustalw複数配列アラインメントを、HDAC1〜9の完全ペプチド配列を用いて行った。HDAC9は、ヒトHDAC6に対するペプチド配列類似性が37%と最も高い。クラスII HDACとのHDAC9のClustalwアラインメントを、図9に示す。HDAC9は、また、S. pombeからの酵母クラスII配列hda1に対して40%の類似性であった。ヒトHDAC9およびS. pombeのClustalwアラインメントを図4に示す。HDAC9はクラスI HDACに対して比較的類似性が低い(18%)。クラスI HDACに対するHDAC9のClustalwアラインメントを図10に示す。
【0065】
HDAC9は、他の既知のすべてのHDACの推定触媒ドメインとのHDAC9のアラインメントに基づいて、約317aa(約6から323)を包含する触媒ドメインを有する。HDAC9の触媒ドメインを同定するために、Clustalwアラインメントを、クラスI HDAC(1〜3および8)またはクラスII HDAC(4〜7)からのHDAC9完全ペプチドおよび触媒ドメイン配列を用いて個別に行う。従来から、1アミノ酸変異による不活性化ならびにHDAC様タンパク質(HDLP)、Zn2+およびHDACインヒビターの複合体により形成される三次元構造に基づいて、13アミノ酸がデアセチラーゼ活性に寄与することが示されていた(Finnin, M. S., Doniglan, J. R., Cohen, A., Richon, V. M., Rifkind, R. a., Marks, P. A., Breslow, R., and Pavletich, N. P. (1999) Structures of a histone deacetylase homologue bound to TSA and SAHA inhibitors. Nature 401, 188-193)。
【0066】
これらの13アミノ酸は、Pro 22、His 131、His 132、Gly 140、Phe 141、Asp 166、Asp 168、His 170、Asp 173、Phe 198、Asp 258、Leu 265、およびTyr 297を含む。これらの13アミノ酸のうちの12は、HDAC9において保存されている。保存されていないアミノ酸は、Leu 265である。この疎水性残基はTS結合ポケットの一部を形成し、そしてHDAC9において272位のアミノ酸がGluに置換されている。Leu 265は、HDAC8においてはMetに置換され、そしてHDAC6ドメイン1においてはLysに置換されている。これにより、該残基は高度に保存されているわけではなく、他のHDACと同一である必要がないことが示唆される。HDLP、HDAC1およびHDAC2と異なる第2の残基であるAsp 173は、HDAC9の177位においてGlnで置換されており、この相違はHDAC6の触媒ドメイン1においても存在する。さらに、Asp 173は、HDAC4、5、6(ドメイン2)、および7において、Asnで置換されている。この証拠により、これらのAsp 173の置換はHDAC活性に影響しないことが示唆される。
【0067】
従来から、アミノ酸配列モチーフはHDAC1および2の網膜芽腫タンパク質(Rb)に対する結合に重要であることが見出されている。HDAC1および2とRbの複合体が、E2F応答プロモーターの抑制を誘導する(Brehm, A., Miska, E. A., McCance, D. J., Reid, J. L., Bannister, A. J., and Kouzarides, T. (1998) Nature 391, 597-601)。Rb結合モチーフは、配列モデルLXCXE(式中、“X”は任意のアミノ酸である。)と適合する。該LXCXEドメインは、Rbの増殖抑制機能に関して必須でないことが見出されているが、HDAC結合には必要である(Chen, T.-T. and Wang, J. Y. J. (2000) Mol. Cell Biol. 20, 5571-5580)。以前にHDAC1において決定されたRb結合ドメインは、アミノ酸414からアミノ酸419に位置し、そして配列IACEEである。これまで、他のHDACがRbに対して結合できるかどうか決定されていなかった。しかしながら、HDAC9は推定Rb結合モチーフLSCILを含み、これはHDAC1 IACEEとアラインし、そしてアミノ酸560〜564の間に位置する。RbとのHDAC9の共免疫沈降は、HDAC9におけるこのモチーフの機能を確認するために使用され得る1つのストラテジーである。
【0068】
HDACファミリーのメンバーのように、HDAC9はタンパク質と生物学的に等価な複合体を形成し、そして他のHDACに関して記載された機能を示し得る。例えば、それは、複合タンパク質複合体とのHDACの相互作用を介する転写抑制に関係する複合体の構成成分として転写制御に関係し得、そしてこれはデアセチラーゼ活性を必要とする。したがって、HDAC9の活性または発現の増加は、細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性または免疫性応答、あるいは乾癬を含む(しかし、これらに限定されるわけではない)数多くの病理学的状態に関連し得る。
【0069】
したがって、DNA/アミノ酸配列およびHDAC9の予想された構造は、HDAC活性の異常に関連する病状を改善するのに有用な薬剤(例えば、アンタゴニストまたはインヒビター)を設計するのに有用である。これらには、例えば、それに対して指向された小分子またはタンパク質(例えば、抗体)の使用を介する抗増殖性または抗炎症性薬剤、あるいはHDAC転写リプレッサー複合体中の関連タンパク質を含まれ得る。さらに、HDAC9配列に由来するタンパク質は、また、宿主細胞増殖性または炎症性応答を緩和する治療薬としても使用され得る。
【0070】
新規ポリペプチドの発現パターンを測定するために、種々のヒト組織からのmRNAパネルをノーザン分析にかける。データにより、HDAC9がヒト組織中で発現しており、脳、結腸、心臓、腎臓、肝臓、胎盤、小腸、脾臓、胃および精巣において検出可能であることが示唆される。したがって、HDAC9は転写された遺伝子を表す。
【0071】
したがって、1つの観点において、本発明は新規ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)に関する。上で概説したように、HDAC9はhda1 クラスII HDAC中の他のHDACタンパク質に対して極めて類似しているので、HDAC9は明らかにHDACファミリーのメンバーである。それは、また、HDACファミリーと多くの類似性を共有する。
【0072】
本発明は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチドに関連する。例えば、このようなポリペプチドは、新規HDAC9のアミノ酸配列を含む融合タンパク質であり得る。別の観点において、本発明は、特に新規HDAC9である、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなる単離ポリペプチドに関する。
【0073】
本発明は、核酸またはヌクレオチド分子、好ましくはDNA分子、特に新規HDAC9をコードするものを含む。好ましくは、本発明の単離核酸分子、好ましくはDNA分子は、配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。同様に、配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする単離核酸分子、好ましくはDNA分子が同様に好ましい。このような核酸またはヌクレオチド、特にこのようなDNA分子は、好ましくは、
(1)それぞれ配列番号1、5および6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする完全cDNA配列である、配列番号2、7または8で示されるヌクレオチド配列;
(2)配列番号2で示されるcDNA配列のオープンリーディングフレームに対応する配列番号3で示されるヌクレオチド配列;
(3)配列番号3で示されるヌクレオチド配列とハイストリンジェント条件下でハイブリダイズできるヌクレオチド配列;および
(4)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする内在性ヒトゲノムDNAに対応する配列番号4で示されるヌクレオチド配列:
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。このようなハイブリダイズの条件は、上記のように、ハイストリンジェントであるか、または比較的ハイストリンジェントでなくてもよい。核酸がデオキシオリゴヌクレオチド(“オリゴ”)である場合において、ハイストリンジェント条件とは、例えば、37℃(14−塩基オリゴのために)、48℃(17−塩基オリゴのために)、55℃(20−塩基オリゴのために)、および60℃(23−塩基オリゴのために)にて、6×SSC/0.05%ピロ燐酸ナトリウム中で洗浄することを意味し得る。さまざまな組成物の核酸のためのこのようなストリンジェント条件の適当な範囲は、Krause and Aaronson (1991), Methods in Enzymology, 200:546-556、ならびに前出のManiatis et al.において記載されている。
【0074】
これらの核酸分子は、例えば、標的遺伝子の制御において有用な標的遺伝子アンチセンス分子として、および/または標的遺伝子核酸配列の増幅反応におけるアンチセンスプライマーとして、機能し得る。さらに、このような配列は、標的遺伝子の制御に有用な、リボザイムおよび/またはトリプルへリックス配列の部分として使用され得る。さらになお、このような分子は診断方法の構成要素として使用され得、その結果、HDAC9発現または活性の異常を伴う疾患、例えば、細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性または免疫性応答、あるいは乾癬を引き起こす対立遺伝子の存在が検出され得る。
【0075】
本発明は、また、
(a)任意の前記のヌクレオチド配列および/またはそれらに相補的なもの(すなわち、アンチセンス)の少なくとも1つのフラグメントを含むベクター;
(b)コードしている配列の発現を指示する制御エレメントと機能的に結合した任意の前記のコード配列を含む、ベクター分子、好ましくは転写制御配列を含むベクター分子、特に発現ベクター;および
(c)本明細書において記載したベクター分子または宿主細胞においてコード配列の発現を指示する制御エレメントと機能的に結合した任意の前記のヌクレオチド配列の少なくとも1つのフラグメントを含む遺伝子操作された宿主細胞
を含む。本明細書において使用されるように、制御エレメントには、誘導可能なおよび誘導不可能なプロモーター、エンハンサー、オペレーターおよび発現を駆動および制御する当業者に既知の他のエレメントが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、宿主細胞は脊椎動物の宿主細胞、好ましくは哺乳動物の宿主細胞、例えばヒト細胞またはネズミ細胞、例えばCHOまたはBHK細胞であり得る。同じく好ましくは、宿主細胞は細菌性宿主細胞、特にE.coli細胞であり得る。
【0076】
特に好ましいのは、インビトロで増殖させることができて、そして培養増殖によりHDAC9ポリペプチド、特に配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むかからなるポリペプチドを生成する能力のあるところの、とくに上述のタイプの宿主細胞であり、そこでは該細胞は、該ポリペプチドをコードする天然型内在性ヒト遺伝子の転写制御配列ではない1もしくはそれ以上の転写制御配列により制御された構成体中にHDAC9コード配列のあるフラグメントまたは完全配列を含み、そこでは該1もしくはそれ以上の転写制御配列が該ポリペプチドをコードするDNAの転写を制御する。可能性のある転写制御配列には、細菌性またはウイルス性配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明は、該遺伝子の完全配列ならびに本明細書において開示された任意の核酸配列のフラグメントを含む。新規HDAC9ポリペプチドをコードする核酸配列のフラグメントは、HDAC9遺伝子に対する高い配列類似性または類似の生物学的活性を有する他の遺伝子を単離するためのcDNAライブラリーのためのハイブリダイズ用プローブとして使用され得る。このタイプのプローブは、好ましくは少なくとも約30塩基を有し、そして、例えば、約30〜約50塩基、約50〜約100塩基、約100〜約200塩基、または200塩基以上を含み得る。該プローブは、また、完全長転写物ならびにゲノム性クローンまたは制御領域およびプロモーター領域、エキソンおよびイントロンを含む完全HDAC9遺伝子を含むクローンに対応するcDNAクローンを同定するために使用され得る。スクリーニングの1つの例は、既知のDNA配列を用いることによりHDAC9遺伝子のコード領域を単離して、オリゴヌクレオチドプローブを合成することを含む。本発明の遺伝子と相補的な配列を有する標識オリゴヌクレオチドは、ヒトcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAのライブラリーをスクリーニングして、プローブがハイブリダイズするライブラリーのメンバーを決定するために使用され得る。
【0078】
上記の遺伝子配列に加えて、例えば他の生物種に存在するであろうような配列のホモログを、当分野において周知の分子生物学的技法により、必要以上の実験(undue experimentation)を行わずに、同定しかつ容易に単離し得る。さらに、そのような遺伝子産物の1またはそれ以上のドメインに対して相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子が、ゲノム内の他の遺伝子座に存在してもよい。これらの遺伝子は、また、同様の技法で同定され得る。例えば、新規HDAC9 ポリペプチドをコードする本発明の単離ヌクレオチド配列を標識し、興味のある生物から得られたmRNAから構築されたcDNAライブラリーをスクリーニングするのに使用してもよい。cDNAライブラリーが、標識配列が得られた生物のタイプと異なる生物から得られる場合には、ハイブリダイゼーションはより低いストリンジェント条件下で行われるであろう。これに代えて、標識フラグメントを用いて、興味のある生物から得られるゲノムライブラリーを、ここでも適切にストリンジェント条件を用いてスクリーニングし得る。そのような低いストリンジェント条件は当業者に周知であろうし、そしてライブラリーおよび標識配列が得られる特定の生物に依存して予想の通りに変動するであろう。そのような条件の指針として例えば上で引用されたSambrook et al.を参照されたい。
【0079】
さらに、興味のある遺伝子内のアミノ酸配列に基づいてデザインした二つの縮重したオリゴヌクレオチドプライマープールを用いてPCRを実施することにより、以前に知られていなかった、差次的発現遺伝子型(differentially expressed gene-type)の配列を単離し得る。反応用のテンプレートは、差次的発現対立遺伝子を発現すると知られているか推測されるヒトのもしくは非ヒトの細胞株または組織から調製したmRNAの逆転写により得られるcDNAであってもよい。PCR産物をサブクローン化して配列決定し、増幅された配列が差次的発現遺伝子様核酸配列の配列を表わすことを確認し得る。次いで、PCRフラグメントを用いて、種々の方法により完全cDNAクローンを単離し得る。例えば、増幅されたフラグメントを標識し、バクテリオファージのcDNAライブラリーをスクリーニングに用い得る。これに代えて、標識フラグメントを用いてゲノムライブラリーをスクリーニングし得る。
【0080】
PCR技法は、また、完全長cDNA配列を単離するのに利用され得る。例えば、適切な細胞もしくは組織の供給源から、標準的な手順にしたがって、RNAを単離し得る。第1鎖の合成のプライミングために増幅フラグメントの5’最末端に特異的なオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、RNAについて逆転写反応を実行し得る。次いで、得られたRNA/DNAハイブリッドに、標準的な末端トランスフェラーゼ反応を用いてグアニンで“テール”をつけ、該ハイブリッドをRNアーゼHで消化し、次いで第2鎖の合成をポリCプライマーでプライムし得る。かくして、増幅フラグメント上流のcDNA配列を容易に単離し得る。使用し得るクローン化ストラテジーの総説については、例えば、上述のSambrook et al., 1989を参照されたい。
【0081】
同定された遺伝子が正常の、即ち野生型の、遺伝子である場合には、この遺伝子を使用して、遺伝子の変異型対立遺伝子を単離し得る。そのような単離は、遺伝的基盤を有すると知られているか疑われているプロセスまたは障害において好ましい。変異型対立遺伝子は、細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性もしくは免疫性応答、または乾癬のような病状を含む(しかしこれらに限定されない)HDAC活性の異常に関連する疾患症状に寄与する遺伝子型を有すると知られているか疑われている個人から単離され得る。次いで、変異型対立遺伝子および変異型対立遺伝子産物を下記の診断アッセイシステムにおいて利用し得る。
【0082】
変異遺伝子のcDNAは、例えば、当業者に周知である技術のPCRを用いて単離され得る。この場合には、第1のcDNA鎖を、変異型対立遺伝子を保有すると考えられる個人において発現していることが知られているか疑われている組織から単離されたmRNAにオリゴdTオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、そして新しい鎖を逆転写酵素で伸張することにより、合成し得る。次いで、cDNAの第2鎖は、正常遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて合成される。これら2つのプライマーを用いて、産物を次いでPCRで増幅し、適当なベクター中にクローン化し、そして当業者に周知である方法によりDNA配列分析に供する。変異型遺伝子のDNA配列を正常遺伝子のそれと比較することにより、変異型遺伝子産物の機能の消失もしくは変化の原因となる変異を確認することができる。
【0083】
これに代えて、ゲノムもしくはcDNAライブラリーを、変異型対立遺伝子を保有すると知られているか疑われている個人において、目的の遺伝子を発現していると知られているか疑われている組織からのDNAまたはRNAをそれぞれ用いて構築し、そしてスクリーニングすることができる。次いで、正常な遺伝子もしくはその任意の適当なフラグメントを標識し、プローブとして用いて、ライブラリー中の対応する変異型対立遺伝子を同定し得る。次いで、この遺伝子を含有するクローンを当分野において日常的に実施される方法により精製し、上述のように配列分析に供し得る。
【0084】
これに加えて、変異型対立遺伝子を保有すると疑われているか知られている個人において、目的の遺伝子を発現していることが知られているか疑われている組織から単離されたDNAまたは同組織から合成されたcDNAを利用して、発現ライブラリーを構築することができる。この方法で、推定的変異組織から作成される遺伝子産物を発現し、以下に説明するように、正常な遺伝子産物に対する抗体と一緒に標準的な抗体スクリーニング技法を用いてスクリーニングし得る(スクリーニング技法については、例えば、Harlow, E. and Lane, eds., 1988, "Antibodies: A Laboratory Manual", Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harborを参照のこと)。変異により、変化した機能を有する発現遺伝子産物がもたらされる場合には(例えば、ミスセンス変異の結果として)、抗体のポリクローナルセットは変異遺伝子産物と交叉反応すると思われる。そのような標識抗体との反応により検出されるライブラリークローンを精製し、上述のように配列分析に供することができる。
【0085】
本発明は、配列番号2、3、4、7または8のいずれかで示されるヌクレオチド配列によりコードされたタンパク質、特に、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列であるかもしくはこれらを含むポリペプチドまたはそのフラグメントを含む。
【0086】
さらに、本発明は機能的に同等な遺伝子産物を表すタンパク質を含む。そのような同等な差次的発現遺伝子産物は、上述の差次的発現遺伝子によりコードされるアミノ酸配列内に、アミノ酸残基の欠失、付加もしくは置換を含んでもよいが、それはサイレントな変化をもたらし、かくして機能的に同等な差次的発現遺伝子産物を生成する。アミノ酸の置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/もしくは両親媒性における類似性に基づいてなされてもよい。
【0087】
例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ;陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられ;負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。本明細書において使用される“機能的に同等な”とは、上述の差次的発現遺伝子配列によりコードされた内在性の差次的発現遺伝子産物と実質的に類似したインビボおよびインビトロ活性を発揮する能力のあるタンパク質もしくはポリペプチドを意味し得る。
【0088】
“機能的に同等な”は、また、内在性の差次的発現遺伝子産物の対応する部分がするであろう方式と実質的に類似した様式で他の細胞内もしくは細胞外分子と相互作用する能力のあるタンパク質もしくはポリペプチドを意味し得る。例えば、“機能的に同等な”ペプチドは、イムノアッセイにおいて、内在性タンパク質の対応するペプチド(すなわち、そのアミノ酸配列を修飾して“機能的に同等な”ペプチドを達成したペプチド)への、もしくは内在性タンパク質自身への、抗体の結合を減少させることができるであろうが、そこでは該抗体は内在性タンパク質の対応するペプチドに対するものである。等モル濃度の機能的に同等なペプチドは、対応するペプチドの前記結合を少なくとも約5%、好ましくは約5%〜10%、さらに好ましくは約10%〜25%、なおさらに好ましくは約25%〜50%、そして最も好ましくは約40%〜50%だけ減少させるであろう。
【0089】
本発明のポリペプチドは、当分野において周知である技法を用いる組換えDNA技術により製造され得る。したがって、本発明のポリペプチドを製造する方法が提供され、該方法は、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする外来性ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターがその中に組み込まれた宿主細胞を、その宿主細胞中でポリペプチドを発現させるに十分な条件下で培養することを含み、それによって発現ポリペプチドの生成を引き起こす。所望により、該方法はさらに該細胞により生成されたポリペプチドを回収することを含む。そのような方法の好ましい実施態様において、該外来性ポリヌクレオチドは、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする。好ましくは、該外来性ポリヌクレオチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号7もしくは配列番号8のいずれかで示されるヌクレオチド配列を含む。配列番号3で示されるヌクレオチド配列、すなわちオープンリーディングフレームを使用する場合には、その配列は、ベクターに挿入されるとき、1つもしくはそれ以上の適切な翻訳停止コドンが、好ましくはcDNA配列中のヌクレオチド2021で始まる天然型内在性停止コドンTGAが、後ろに続いてもよい。
【0090】
かくして、それぞれのヌクレオチド配列をコードする核酸を発現させることにより、本発明のポリペプチドおよびペプチドを調製する方法が、本明細書において記載される。当業者に周知である方法を用いて、タンパク質コード配列および適当な転写/翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、例えば、インビトロ組換えDNA技法、合成技法およびインビボ組換え/遺伝子組換えが挙げられる。例えば、上記Sambrook et al., 1989および上記Ausubel et al., 1989に記載されている技法を参照されたい。これに代えて、タンパク質配列の差次的発現遺伝子をコードする能力のあるRNAを、例えば合成機(synthesizers)を用いて化学的に合成してもよい。例えば、"Oligonucleotide Synthesis", 1984, Gait, M. J. ed., IRL Press, Oxford(出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)に記載されている技法を参照されたい。
【0091】
種々の宿主−発現ベクターシステムを利用して、本発明のHDAC9遺伝子コード配列を発現させ得る。そのような宿主−発現システムは、目的のコード配列を生成し次いで精製し得るビヒクルを表すが、また、適切なヌクレオチドコード配列を形質転換もしくは形質移入したときに、インサイツ(in situ)で本発明のHDAC9遺伝子タンパク質を発現し得る細胞を表す。これらとしては、差次的発現遺伝子タンパク質コード配列を含有する、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAもしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌(例えば、E.coli、B.subtilis)のような微生物;差次的発現遺伝子タンパク質コード配列を含有する、組換え酵母発現ベクターで形質転換した酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);差次的発現遺伝子タンパク質コード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染もしくは形質移入させた昆虫細胞システム;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染させた、もしくは、タンパク質コード配列を含有する、プラスミド(例えば、Tiプラスミド)を含む組換えベクターで形質転換させた、植物細胞システム;または哺乳動物細胞のゲノムから得られるプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)もしくは哺乳動物ウイルスから得られるプロモーター(例えばアデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5KプロモーターもしくはCMVプロモーター)を含有する組換え発現構築体を収容する哺乳動物細胞システム(例えばCOS、CHO、BHK、293、3T3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
また、その細胞に本来存在するHDAC9コード遺伝子から細胞により本発明のHDAC9の発現を実施することができる。そのような発現の方法は、例えば、米国特許5,641,670;5,733,761;5,968,502;および5,994,127(これらは全て出典明示により、これらの全体を本明細書の一部とする。)に詳述されている。米国特許5,641,670;5,733,761;5,968,502;および5,994,127のいずれかの方法によりHDAC9を発現するように誘導されている細胞を、生きている動物中で望ましい組織中に植え込んで、該組織内のHDAC9の局所的濃度を増加させることができる。
【0093】
細菌のシステムにおいて、発現されるタンパク質の使用目的に応じて、多数の発現ベクターを有利に選択し得る。例えば、抗体の作成のためにもしくはペプチドライブラリーをスクリーニングするために、大量のそのようなタンパク質を生成したい場合には、例えば、容易に精製できる融合タンパク質産物の高レベルの発現を指令するベクターが望ましいであろう。この点において、ヘキサヒスチジンタグ、例えばpCDNA3.1/His(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含むEpiTag vectosを含む融合タンパク質が使用され得る。他のベクターとして、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther et al., 1983, EMBO J. 2: 1791)[該タンパク質コード配列は、融合タンパク質が生成され得るように、lacZコード領域とフレーム中のベクター中で個別に結合され得る];pINベクター(Inouye & Inouye, 1985, Nucleic Acids Res. 13: 3101-3109; Van Heeke & Schuster, 1989, J. Biol. Chem. 264: 5503-5509)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
pGEXベクターは、また、外来ポリペプチドをグルタチオン S−トランスフェラーゼ(GST)と共に融合タンパク質として発現させるために使用され得る。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、そして溶解した細胞からグルタチオン−アガローズビーズへの吸着とこれに続く遊離グルタチオン存在下での溶出により容易に精製され得る。pGEXベクターは、クローン化された目的遺伝子タンパク質をGST部分から放出できるように、トロンビンもしくは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含有するようデザインされている。Flagタグ、例えば3X Flag(Sigma, St. Louis, MO)またはmycタグ、例えばpCDNA3.1/myc−His(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含む融合タンパク質が使用され得る。これらの融合物は、抗体が入手できないタンパク質の共免疫沈降およびウエスタン検出を可能にする。
【0095】
プロモーター領域は、候補プロモーターフラグメント;即ちプロモーターを含有し得るフラグメント、を導入するための1つ以上の制限部位の下流で、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(“CAT”)のようなプロモーター領域を欠くレポーター転写ユニット、またはルシフェラーゼ転写ユニットを含有するベクターを用いて任意の望ましい遺伝子から選択され得る。例えば、cat遺伝子の上流の制限部位におけるプロモーター含有フラグメントのベクター中への導入は、標準的なCATアッセイにより検出することができるCAT活性の生成を惹き起こす。この目的に適したベクターは周知であり、そして容易に入手可能である。二つのそのようなベクターはpKK232−8およびpCM7である。かくして、本発明のポリヌクレオチドの発現用のプロモーターには、周知かつ容易入手可能なプロモーターのみならず、レポーター遺伝子を用いて前述の技法により容易に得られ得るプロモーターも含まれる。
【0096】
本発明にしたがうポリヌクレオチドおよびポリペプチドの発現に適した公知の細菌プロモーターの中には、大腸菌のlacIおよびlacZプロモーター、T3およびT7プロモーター、T5 tac プロモーター、ラムダPR、PLプロモーターならびにtrpプロモーターがある。この点に関して適当な公知の真核細胞のプロモーターの中には、CMVの直接前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、Rous肉腫ウイルス(“RSV”)のそれらのようなレトロウイルスLTRのプロモーター、ならびにマウスメタロチオネイン−Iプロモーターのようなメタロチオネインプロモーターがある。例えば、プラスミド構築体は、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール アセチルトランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼのコード領域をコードするレポーター転写ユニットと融合したHDAC9転写制御配列を含有し得る。
【0097】
この構築体は、HDAC9の転写を調節する小分子をスクリーニングするために使用され得る。このような小分子は、潜在的な治療薬である。さらに、HDAC9レポーター遺伝子は、蛍光リポーターおよびイメージング技術、例えば蛍光顕微鏡またはBiophotonicインビボイメージング、リアルタイムで視覚的および定量的測定を提供する技術(Xenogen, Palo Alto, CA)を用いて哺乳動物細胞または異種移植片におけるHDAC9治療の効果を試験するために使用され得る。正常、罹患した、または薬物処置した組織または細胞中のこれらのレポーターにおける変化は、HDAC9発現または活性における変化のインジケーターであり得る。
【0098】
昆虫のシステムにおいて、Autographa californicaの核多角体病ウイルス(AcNPV)は、外来遺伝子発現ベクターとして使用され得る幾つかの昆虫システムの1つである。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞中で増殖する。コード配列をウイルスの非必須領域(例えば多角体遺伝子)の中に個別にクローン化し、AcNPVプロモーター(例えば多角体プロモーター)の制御下に置き得る。コード配列の成功的挿入は、ポリへドリン遺伝子の失活および閉じ込められていない組換えウイルス(すなわち、ポリヘドリン遺伝子によってコードされるタンパク質性の外被を欠いているウイルス)の生成をもたらす。次いで、これらの組換えウイルスを用いて、挿入遺伝子を発現するSpodoptera frugiperda細胞に感染させる(例えば、Smith et al., 1983, J. Virol. 46: 584; Smith, 米国特許第4,215,051号を参照のこと)。
【0099】
哺乳動物宿主細胞において、多数のウイルスに基づく発現システムを利用し得る。アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合には、興味のあるコード配列をアデノウイルスの転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび三連リーダー配列に結合させ得る。次いで、このキメラ遺伝子をインビトロもしくはインビボ組換えによりアデノウイルスのゲノム中に挿入し得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1もしくはE3領域)への挿入は、感染宿主中で生存可能かつ望ましいタンパク質を発現する能力のある、組換えウイルスをもたらすであろう(例えば、Logan & Shenk, 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 3655-3659を参照のこと)。また、挿入された遺伝子コード配列の効率的翻訳のために特定の開始シグナルが必要とされ得る。
【0100】
これらのシグナルとしては、ATG開始コドンおよび隣接の配列が挙げられる。それ自身の開始コドンおよび隣接の配列を含有する遺伝子全体を適切な発現ベクター中に挿入する場合には、さらに別の翻訳制御シグナルは必要でないであろう。しかしながら、配列をコードする遺伝子の一部のみが挿入される場合には、おそらくATG開始コドンを含む外来性翻訳制御シグナルが提供されなければならない。さらに、挿入物全体の翻訳を確保するためには、開始コドンは望ましいコード配列のリーディングフレームと合っていなければならない。これらの外来性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然のおよび合成の両方の、種々の起源のものでよい。
【0101】
発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含めることにより増大され得る(Bittner et al., 1987, Methods in Enzymol. 153: 516-544を参照のこと)。他の一般的なシステムは、SV40、レトロウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスに基づくものである。宿主細胞内での発現用の適切なベクターおよびプロモーターの選択は周知の手順であり、そして発現ベクターの構築、宿主内へのベクターの導入、および宿主自身内での発現に不可欠な技法は当分野において日常的技術である。一般的に、組換え体発現ベクターは、複製起点、下流の構造配列の転写を指令するための高度に発現される遺伝子から得られるプロモーター、およびベクターへの曝露後にベクター含有細胞の単離を可能にする選択マーカーを含むであろう。
【0102】
加えて、挿入配列の発現を調整するか、もしくは遺伝子産物を特定の望ましい方法で修飾およびプロセシングする、宿主細胞株を選択し得る。タンパク質産物のそのような修飾(例えばグリコシル化)およびプロセシング(例えば切断)は、タンパク質の機能にとって重要であり得る。種々の宿主細胞は、タンパク質の翻訳後のプロセシングおよび修飾のための特性的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞株もしくは宿主系を選んで、発現された外来性タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実にすることができる。この目的のために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化および燐酸化のための細胞の仕組み(cellular machinery)を有する真核生物の宿主細胞を用い得る。そのような哺乳動物宿主細胞としては、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3、WI38などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
組換えタンパク質の長期間、高収率な生成のためには、安定的な発現が好ましい。例えば、差次的発現遺伝子タンパク質を安定的に発現する細胞株を工学操作し得る。ウイルス性の複製起点を含有する発現ベクターを用いるよりもむしろ、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、等)で制御されるDNAおよび選択マーカーにより、宿主細胞を形質転換することができる。外来性DNAの導入に続いて、工学操作された細胞は強化培地で1〜2日間増殖させてもよく、次いで選択培地に切り替えられる。組換えプラスミド中の選択マーカーが選択抵抗性を与え、そして細胞がプラスミドをその染色体中に安定的に組み込み、かつ増殖巣を形成するために増殖することを可能にし、これを今度は細胞株中にクローン化し伸張させることができる。この方法は、差次的発現遺伝子タンパク質を発現する細胞株を工学操作するのに有利に用いられる。そのような工学操作された細胞株は、発現されたタンパク質の内在的活性に影響を及ぼす化合物のスクリーニングおよび評価に特に有用であろう。
【0104】
それぞれtk、hgprtもしくはaprt細胞内で使用され得る単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wigler, et al., 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, 1962, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48: 2026)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy, et al., 1980, Cell 22: 817)の遺伝子を含むが、これらに限定されない、多数の選択システムが使用され得る。また、メトトレキセートに対する抵抗性を付与するdhfr(Wigler, et al., 1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:3567; O'Hare, et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1527);ミコフェノール酸耐性を付与するgpt(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2072);アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Colberre-Garapin, et al., 1981, J. Mol. Biol. 150:1);およびヒグロマイシン抵抗性を付与するhygro(Santerre, et al., 1984, Gene 30: 147)の遺伝子に対する選択の基盤として、代謝拮抗剤抵抗性を用いることができる。
【0105】
これに代わる融合タンパク質システムは、ヒト細胞株で発現される非変性融合タンパク質の迅速な精製を可能にする(Janknecht, et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 8972-8976)。このシステムでは、目的の遺伝子は、該遺伝子のオープンリーディングフレームが6個のヒスチジン残基からなるアミノ末端タグに翻訳的に融合されるように、ワクシニアの組換えプラスミドの中にサブクローン化される。組換えワクシニアウイルスを感染させた細胞からの抽出物をNi2+ニトリロ酢酸−アガロースカラムに装てんし、そしてヒスチジンタグをつけたタンパク質をイミダゾール含有緩衝液で選択的に溶出する。
【0106】
以下に説明するようなアッセイシステムにおける成分として用いるときには、本発明のタンパク質を直接的もしくは間接的に標識して、タンパク質と試験物質との間で形成された複合体の検出を容易にし得る。125Iのような放射性同位元素;基質に曝露すると検出可能な比色シグナルもしくは光を発生する酵素標識システム;および蛍光標識を含むが、これらに限定されない、種々の適当な標識システムのいずれかを使用し得る。
【0107】
組換えDNA技術を用いて、このようなアッセイシステム用に本発明のタンパク質を生成する場合には、標識、固相化、検出および/もしくは単離を容易にすることができる、融合タンパク質を工学操作するのが有利であり得る。
間接標識は、本発明のポリペプチドに特異的に結合する標識抗体のような、タンパク質の使用を伴う。そのような抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fabフラグメント、およびFab発現ライブラリーにより生成されるフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
別の実施態様において、HDAC9タンパク質をコードする配列を含む核酸もしくはその機能的誘導体を投与して、遺伝子治療により、正常な生物学的機能、例えば正常な転写制御を促進する。遺伝子治療とは、対象への核酸の投与により実施される治療をいう。本発明のこの実施態様において、核酸は、正常な転写制御を促進することにより治療効果を仲介する、そのコードされたタンパク質を生成する。
【0109】
当分野において使用可能な遺伝子治療のいずれかを、本発明にしたがって使用することができる。例示的な方法は以下に説明されている。
【0110】
好ましい観点において、治療薬は、適当な宿主中でHDAC9タンパク質またはそのフラグメントもしくはキメラタンパク質を発現する、発現ベクターの一部であるところのHDAC9核酸を含む。特に、そのような核酸はHDAC9コード領域に機能し得るように結合したプロモーターを有しており、該プロモーターは誘導性もしくは構成的、そして所望により組織特異的である。別の特定の実施態様において、その中でHDAC9コード領域配列および任意の他の望ましい配列がゲノム中の望ましい部位で相同的組換えを促進する領域で隣接している核酸分子が用いられ、かくしてHDAC9核酸の染色体内発現が提供される(Koller and Smithies, 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:8932-8935; Zijlstra et al., 1989, Nature 342:435-438)。
【0111】
患者への核酸の送達は、直接的(この場合には、患者は核酸もしくは核酸を保有するベクターに直接曝露される。)または間接的(この場合には、細胞は先ずインビトロで核酸により形質転換され、次いで患者に移植される。)のいずれかであり得る。これら二つのアプローチは、それぞれインビボもしくはエキスビボ(ex vivo)遺伝子治療として知られている。
【0112】
特異的な実施態様において、核酸はインビボで直接投与され、そこでは発現してコードされた産物を生成する。これは当分野において公知の多数の方法のいずれかにより達成されることができるが、それは、例えば、それを適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、そして、例えば、欠失もしくは弱毒レトロウイルスまたは他のウイルスベクター(例えば、米国特許第4,980,286号および上述の他のものを参照のこと)を用いる感染により、もしくは裸のDNAの直接的注入により、もしくは微粒子衝撃(例えば、遺伝子銃; Biolistic, Dupont)の使用により、または脂質もしくは細胞表面受容体もしくは形質移入剤、リポゾーム内への封入、微粒子もしくはマイクロカプセルによるコーティングにより、それが細胞内となるように、投与することによるか、または核に入ることが知られているペプチドに結合した形でそれを投与することによるか、受容体−仲介エンドサイトーシスを受けるリガンドに結合した形でそれを投与することによる(例えば、米国特許5,166,320;5,728,399;5,874,297;および6,030,954(これらのすべてを出典明示によりそれらの全体を本明細書の一部とする)を参照のこと)(これは受容体を特異的に発現する細胞型を標的にするために用いることができる)、等である。
【0113】
別の実施態様において、核酸−リガンド複合体を形成することができて、その中で、リガンドはエンドゾームを破壊する融合誘導性ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソームによる分解を避けることを可能にする。さらに別の実施態様において、核酸は、特異的受容体を標的とすることにより、細胞特異的な取り込みと発現をインビボで標的とされることができる(例えば、PCT公開WO 92/06180;WO 92/22635;WO 92/20316;WO 93/14188;およびWO 93/20221を参照のこと)。これに代えて、核酸を細胞内に導入し、相同的組換えにより宿主細胞のDNA内に組み込んで発現させることができる(例えば、米国特許5,413,923;5,416,260;および5,574,205;ならびにZijlstra et al., 1989, Nature 342:435-438を参照のこと)。
【0114】
特定の実施態様において、HDAC9核酸を含有するウイルスベクターが用いられる。例えば、レトロウイルスベクターを用いることができる(例えば、米国特許5,219,740;5,604,090;および5,834,182を参照のこと)。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムをパッケージして宿主細胞のDNAに組み込むために必要でない、レトロウイルス配列を取り除くように修飾されている。遺伝子治療に用いられるHDAC9核酸はベクター内にクローン化され、これは患者への遺伝子の送達を促進する。
【0115】
アデノウイルスは遺伝子治療に用いることのできる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは気道上皮に遺伝子を送達するためのとりわけ魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは天然では気道上皮に感染し、そこで軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達システムの他の目標は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは非分裂細胞に感染する能力があるという利点を有している。アデノウイルスに基づく遺伝子治療を実施する方法は、例えば、米国特許5,824,544;5,868,040;5,871,722;5,880,102;5,882,877;5,885,808;5,932,210;5,981,225;5,994,106;5,994,132;5,994,134;6,001,557;および6,033,8843(これらの全てを、出典明示によりそれらの全体を本明細書の一部とする)に記載されている。
【0116】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、また、遺伝子治療への使用が提案されている。AAVの生成し、利用する方法は、例えば、米国特許5,173,414;5,252,479;5,552,311;5,658,785;5,763,416;5,773,289;5,843,742;5,869,040;5,942,496;および5,948,675(これらの全てを、出典明示によりそれらの全体を本明細書の一部とする)に記載されている。
【0117】
遺伝子治療へのもう1つのアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、燐酸カルシウム仲介形質移入もしくはウイルス感染のような方法により、遺伝子を組織培養の細胞に移入することを伴う。通常、移入の方法は選択マーカーの細胞への移入を含む。次いで、該細胞を、移入された遺伝子を取り込みそして発現しているそれらの細胞を単離するための選択下に置く。次いで、それらの細胞を患者に送達する。
【0118】
この実施態様では、核酸を先ず細胞に導入した後に、得られた組換え細胞をインビボで投与する。そのような導入は当分野において公知である任意の方法によって行なうことができ、その方法としては、形質移入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスもしくはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体仲介性遺伝子導入、マイクロセル仲介性遺伝子導入、スフェロプラスト融合、等が挙げられるが、これらに限定されない。外来性遺伝子を細胞に導入するための多数の技法は、当分野において公知であり、そしてレシピエント細胞の必要な発生上および生理的機能が損なわれない限り、本発明にしたがって用いられ得る。その技法は、核酸が細胞により発現可能であり、そして好ましくは、細胞の子孫によって遺伝性でありかつ発現可能であるように、核酸の細胞への安定な移入を提供すべきである。
【0119】
ここで得られる組換え細胞を、当分野において公知である種々の方法により患者に送達することができる。好ましい実施態様では、上皮細胞を例えば皮下に注射する。もう1つの実施態様では、組換え皮膚細胞を皮膚移植片として患者に適用し得る。好ましくは、組換え血液細胞(例えば、造血幹細胞もしくは前駆細胞)が静脈内投与される。使用を想定する細胞の量は、所望の効果、患者の状態などに依存し、当業者により決定されることができる。
【0120】
遺伝子治療の目的で核酸を導入できる細胞は、任意の望ましい、入手可能な細胞型をも包含し、そして上皮細胞、内皮細胞、ケラチン生成細胞、線維芽細胞、筋肉細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球のような血液細胞;種々の幹細胞もしくは前駆細胞、特に、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝などから得られるような造血幹細胞および前駆細胞、が挙げられるが、これらに限定されない。
好ましい実施態様では、遺伝子治療に用いられる細胞は患者にとって自己由来のものである。
【0121】
組換え細胞が遺伝子治療に用いられる実施態様では、HDAC9核酸はそれが細胞およびその子孫により発現可能であるように細胞中に導入され、次いで、組換え細胞が治療効果のためにインビボで投与される。特定の態様では、幹細胞もしくは前駆細胞が用いられる。単離されそしてインビトロで維持されることができる任意の幹−および/もしくは前駆細胞は、本発明のこの実施態様にしたがって潜在的に使用されることができる。そのような幹細胞としては、造血幹細胞(HSC)、皮膚および腸管の内層のような上皮組織の幹細胞、胚性心筋細胞、肝臓幹細胞(例えばWO 94/08598参照)、ならびに神経幹細胞(Stemple and Anderson, 1992, Cell 71:973-985)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
上皮幹細胞(ESC)もしくはケラチン生成細胞は、皮膚および腸管の内層のような組織から公知の手順(Rheiwald, 1980, Meth. Cell Bio. 21A:229)により得られ得る。皮膚のような重層上皮組織では、再生が基底板に最も近い層である基底層内の幹細胞の分裂によって起こる。腸管の内層内の幹細胞は、この組織の迅速な再生速度を提供する。患者もしくはドナーの皮膚もしくは腸管の内層から得られるESCもしくはケラチン生成細胞を、組織培養で増殖させることができる(Pittelkow and Scott, 1986, Mayo Clinic Proc. 61:771)。もしESCがドナーにより提供されるならば、宿主対移植片反応性を抑制する方法(例えば、放射線照射、中等度の免疫抑制を促進する薬剤もしくは抗体の投与)をまた用いることができる。
【0123】
造血幹細胞(HSC)に関しては、インビトロでHSCの単離、増殖および維持を提供する任意の技法を本発明のこの実施態様において用いることができる。これを達成し得る技法としては、(a)将来の宿主もしくはドナーから単離された骨髄細胞からのHSC培養液の単離および確立、または(b)同種異系もしくは異種であり得る、先に確立された長期HSC培養の使用、が挙げられる。非自家性HSCは、好ましくは将来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法と一緒に用いられる。本発明の特別な実施態様では、ヒト骨髄細胞を後部腸骨稜(posterior iliac crest)から針穿刺吸引により得ることができる(例えば、Kodo et al., 1984, J. Clin. Invest. 73:1377-1384を参照のこと)。本発明の好ましい実施態様では、HSCは高度に富化した、もしくは実質的に純粋な形で作成することができる。この富化は長期培養の前、期間中、もしくは後で達成されることができ、そして、当分野において公知である任意の技法によって行われることができる。骨髄細胞の長期培養は、例えば、修飾Dexterの細胞培養技法(Dexter et al., 1977, J. Cell Physiol. 91:335)もしくはWitlock-Witteの培養技法(Witlock and Witte, 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:3608-3612)を用いて確立され、そして維持され得る。
【0124】
特定の実施態様において、遺伝子治療の目的で導入される核酸は、核酸の発現が適切な転写インデューサーの存在もしくは不存在を制御することにより制御可能であるように、コード領域に機能し得るように結合された誘導性プロモーターを含む。
【0125】
本発明のさらなる実施態様は、配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、または該ポリペプチドのフラグメントに特異的に結合する精製抗体またはそのフラグメントに関するものである。好ましい実施態様はそのような抗体のフラグメントに関するものであり、該フラグメントはFabもしくはF(ab')である。特に、抗体はポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体であり得る。
【0126】
1つもしくはそれ以上の差次的発現遺伝子エピトープを特異的に認識できる抗体を作成する方法が本明細書において記載される。そのような抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化もしくはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、Fab発現ライブラリーで生成したフラグメント、抗イディオタイプ(anti−Id)抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントを挙げることができるが、これらに限定されない。そのような抗体は、例えば、フィンガープリント、標的、生物学的試料中の遺伝子の検出に、もしくはこれに代えて異常な標的遺伝子活性を阻害する方法として使用され得る。かくして、そのような抗体を心臓血管疾患の処置方法の一部として利用し得、そして/または患者のHDAC9ポリペプチドの異常なレベルをもしくは異常な型のHDAC9ポリペプチドの存在を試験し得るところの診断技法の一部として使用し得る。
【0127】
HDAC9ポリペプチドに対する抗体の生成のために、HDAC9ポリペプチドもしくはその一部の注射により、種々の宿主動物を免疫し得る。そのような宿主動物としては、2、3の例を挙げると、ウサギ、マウスおよびラットが挙げられ得るが、これらに限定されない。免疫応答を増強するために、宿主動物種に応じて種々のアジュバントを用いることができるが、これらとしては、フロインドの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル、リゾレシチンのような界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、スカシガイのヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumのような潜在的に有用なヒトアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物もしくはその抗原的に機能を有する誘導体のような抗原により免疫した動物の血清から得られる、抗体分子の不均一な集団である。ポリクローナル抗体の生成には、上述のような宿主動物を、また上述のようにアジュバントを補充したHDAC9ポリペプチドもしくはその一部による注射により免疫し得る。
【0129】
特定抗原に対する抗体の均一な集団であるモノクローナル抗体は、持続性細胞株の培養により抗体分子の生成を提供する、任意の技法によって得られ得る。これらとしては、KohlerおよびMilsteinのハイブリドーマ技法(1975, Nature 256:495-497;および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al., 1983, Immunology Today 4:72; Cole et al., 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030)、およびEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその任意のサブクラスを含む、任意のイムノグロブリンクラスのものでもよい。本発明のmAbを生成するハイブリドーマはインビトロもしくはインビボで培養され得る。インビトロでの高力価のmAbの生成に関して、これが現在のところ好ましい生成方法とされている。
【0130】
加えて、適切な抗原特異性を持つマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物活性のヒト抗体分子からの遺伝子と共にスプライシングすることにより、“キメラ抗体”を生成するために開発された技法(Morrison et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci., 81:6851-6855; Neuberger et al., 1984, Nature, 312:604-608; Takeda et al., 1985, Nature, 314:452-454)を用いることができる。キメラ抗体は、マウスmAbから得られる可変領域もしくは超可変領域およびヒトイムノグロブリンの定常領域を有するそれらのような、種々の部分が種々の動物種から得られる分子である。
【0131】
これに代えて、単鎖抗体の生成のために記述された技法(米国特許第4,946,778号;Bird, 1988, Science 242:423-426; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; and Ward et al., 1989, Nature 334:544-546)を適応して、差次的に発現する遺伝子−単鎖抗体を生成することができる。単鎖抗体は、アミノ酸架橋を介してFv領域の重鎖および軽鎖フラグメントを結合させることにより形成されて、単鎖ポリペプチドをもたらす。
【0132】
最も好ましくは、“ヒト化抗体”の生成に有用な技法を適応して、本明細書において開示されたポリペプチド、フラグメント、誘導体および機能的同等物に対する抗体を生成させることができる。そのような技法は、米国特許第5,932,448号;第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;第5,530,101号;第5,910,771号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,545,580号;第5,661,016号;および第5,770,429号(これらは全体的な出典明示によりその全体を本明細書の一部とする)に開示されている。
【0133】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは公知の技法により作成され得る。例えば、そのようなフラグメントとしては、抗体分子のペプシン消化により生成されることのできるF(ab')フラグメント、およびF(ab')フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより作成されるFabフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。これに代えて、Fab発現ライブラリーを構築して(Huse et al., 1989, Science 246:1275-1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にし得る。
【0134】
好ましくは、本発明の抗体は、ヒトにおけるHDAC9発現または活性の異常、例えば細胞増殖の異常、癌、アテローム動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性もしくは免疫性応答、または乾癬に関連する病状を診断する方法において使用され得、該方法は、HDAC9活性の異常に関連した病状を患うヒトからの適切な組織または細胞中で、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列もしくはそのフラグメントを含むポリペプチドの量を測定することを含み、そこでは、HDAC9活性の異常に関連した病状を患っていないヒトからのそれぞれの組織中の該ポリペプチドもしくはそのフラグメントの量に比べて上昇した量の該ポリペプチドもしくはそのフラグメントの存在は、そのような病状に該ヒトが罹患していることの診断となる。
【0135】
そのような方法は本発明のさらなる実施態様を形成する。好ましくは、該検出ステップは該適切な組織もしくは細胞を、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列もしくはそのフラグメントを含むポリペプチドに特異的に結合するところの抗体と接触させること、および該抗体と該適切な組織もしくは細胞中のポリペプチドとの特異的結合を検出することを含み、そこではポリペプチドへの特異的結合の検出は配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むポリペプチドの存在を示す。
【0136】
検出の容易のためにはサンドイッチアッセイが特に好ましく、それには多数の変法が存在するが、その全てが本発明に包括されるものとする。
【0137】
例えば、典型的なフォワードアッセイでは、非標識抗体を固体の基盤に固定し、結合した分子と被検試料を接触させる。適当な期間のインキュベーションの後、抗体−抗原の二元複合体の形成を起こさせるのに十分な期間。この時点で、検出可能なシグナルを誘発する能力のあるレセプター分子で標識された第2抗体を次いで添加してインキュベートし、抗体−抗原−標識抗体の三元複合体の形成に十分な時間を与える。いかなる未反応物質も洗浄して除き、そして抗原の存在をシグナルの観察で測定するか、もしくは既知量の抗原を含有する対照試料と比較して定量し得る。
【0138】
フォワードアッセイの変法としては、結合した抗体に試料および抗体を同時に添加する同時アッセイ、もしくは標識抗体と被検試料とを先ず一緒にしてインキュベートし、表面に結合した非標識抗体に添加する逆アッセイが挙げられる。これらの技法は当業者に周知であり、そして小さな変法の可能性は容易に明らかであろう。本明細書において使用されるように、“サンドイッチアッセイ”は、基本的な二−サイト技法に基づく全ての変法を包含することとする。本発明のイムノアッセイについて、唯一の制限因子は、標識抗体がHDAC9ポリペプチドもしくはそのフラグメントに特異的である抗体でなければならないということである。
【0139】
このタイプのアッセイにおいて最も汎用されるレセプター分子は、酵素、蛍光物質もしくは放射性核種を含有する分子のいずれかである。酵素イムノアッセイの場合には、酵素を、通常グルタルアルデヒドもしくは過ヨウ素酸(periodate)を用いて第2抗体に結合させる。容易に認識されるように、しかしながら、多様な異なる連結反応技法が存在し、これらは当業者に周知である。汎用される酵素としては、なかんずく西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼが挙げられる。特定の酵素と共に用いられる基質は、対応する酵素による加水分解によって検出可能な色調変化を生成するように一般に選ばれる。
【0140】
例えば、p−ニトロフェニルホスフェートはアルカリホスファターゼ複合体と共に使用するのに適しており;ペルオキシダーゼ複合体には1,2−フェニレンジアミンもしくはトルイジンが汎用される。また、蛍光基質を使用することも可能であり、これは上述の発色性基質の代わりに蛍光産物を与える。次いで、適切な基質を含有する溶液を三元複合体に添加する。第2抗体と結合した酵素と基質が反応して定性的な視覚的シグナルを与え、これを通常分光測定法的にさらに定量して、血清試料中に存在するHDAC9の量の判定を得ることができる。
【0141】
これに代えて、フルオレセインもしくはローダミンのような蛍光性化合物を、抗体の結合能を変えることなく抗体に化学的に結合させ得る。特定波長の光による照射で活性化された場合、蛍光色素で標識された抗体は光エネルギーを吸収して分子中に励起状態が誘起され、次いで特徴的なより長波長の光が放射される。発光は、光学顕微鏡により目視で検出可能な特徴的な色調として現れる。免疫蛍光およびEIA技法は両方とも当分野において非常に良く確立されていて、本発明の方法にとって特に好ましい。しかしながら、放射性同位元素、化学発光もしくは生物発光分子のようなレポーター分子も、また、使用され得る。要求される使用に合わせるための手順の変更の仕方は、当業者に容易に明らかであろう。
【0142】
本発明はまた、診断用試薬としての本発明のポリヌクレオチドの使用に関する。特に、本発明はヒトにおけるHDAC9発現または活性の異常、例えば、細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性もしくは免疫性応答、または乾癬に関連した病状を診断する方法に関し、これは、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする天然型内在性ヒト遺伝子から転写されるメッセンジャーRNAの上昇した転写を、ヒトからの適切な組織もしくは細胞内で検出することを含み、そこでは上昇した転写は、該ヒトがHDAC9発現または活性の異常に関連した病状に罹患していることの診断となる。
【0143】
特に、該天然型内在性ヒト遺伝子は配列番号4、7または8で示されるヌクレオチド配列を含む。好ましい実施態様では、そのような方法は、該適切な組織もしくは細胞の試料を、またはその組織もしくは細胞から得られる単離RNAもしくはDNA分子を、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列とハイストリンジェント条件下でハイブリダイズする、少なくとも約20ヌクレオチド長の単離ヌクレオチド配列と接触させることを含む。
【0144】
機能障害と関連する、配列番号4、7または8のポリヌクレオチドを特徴とする遺伝子の変異型の検出は、この遺伝子の過少発現、過大発現、または変化した位置的もしくは時間的発現によりもたらされるところの疾患、もしくは疾患に罹りやすさの診断に追加し、または、該診断を規定することができる、診断の手段を提供する。この遺伝子の変異を保有する個人は種々の技法によりDNAレベルで検出され得る。
【0145】
診断用の核酸、特にmRNAは、血液、尿、唾液、組織生検もしくは剖検材料からのような対象の細胞から入手し得る。ゲノムDNAは検出のために直接使用され得るか、または、分析前にPCRもしくはその他の増幅技法を用いることにより酵素的に増幅され得る。RNAもしくはcDNAはまた、同様に用いられ得る。欠失および挿入は、正常な遺伝子型と比較して増幅産物のサイズの変化により検出され得る。本発明のHDAC9ポリペプチドをコードする標識ヌクレオチド配列に増幅DNAをハイブリダイズさせることにより、点突然変異を同定することができる。
【0146】
完全にマッチした配列は、RNアーゼ消化もしくは融解温度の違いによりミスマッチの二重鎖から区別されることができる。DNA配列の差はまた、変性剤の有無で、ゲル中でのDNAフラグメントの電気泳動の移動度の変化により、もしくは直接的なDNA配列決定により検出され得る(例えば、Myers et al., Science (1985) 230:1242)。特定の位置での配列変化は、また、RNアーゼおよびS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイ、もしくは化学的切断法(Cotton et al., Proc Natl Acad Sci USA (1985) 85:4397-4401を参照のこと)によって明らかにされ得る。もう1つの実施態様では、本発明のHDAC9ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列もしくはそのようなヌクレオチド配列のフラグメントを含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構築して、例えば遺伝的変異の効率よいスクリーニングを実施することができる。アレイ技法の方法は周知で汎用性を有し、そして、遺伝子発現、遺伝連鎖および遺伝的変異性を含む分子遺伝学における様々な問題に対処するために使用され得る(例えば:M. Chee et al., Science, Vol 274, pp 610-613 (1996)を参照のこと)。
【0147】
診断用アッセイは、記載の方法によるHDAC9遺伝子中の変異の検出を通して、疾患の罹りやすさを診断もしくは決定する方法を提供する。加えて、そのような疾患は、対象から得られる試料からポリペプチドもしくはmRNAの異常に減少したもしくは増加したレベルを測定することを含む方法により診断され得る。減少したもしくは増加した発現は、例えば核酸増幅、例を挙げればPCR、RT−PCR、RNアーゼ保護、ノーザンブロッティングおよび他のハイブリダイゼーション法のようなポリヌクレオチド定量用に当分野において周知である任意の方法を用いてRNAのレベルで測定されることができる。宿主から得られる試料中における、本発明のポリペプチドのような、タンパク質のレベルを測定するために使用できるアッセイ技法は当業者に周知である。そのようなアッセイ法としては、ラジオイムノアッセイ、拮抗的結合アッセイ、ウエスタンブロット分析およびELISAアッセイが挙げられる。
【0148】
かくして、別の態様において、本発明は:
(a)本発明のポリヌクレオチド、好ましくは配列番号2、3、4、7もしくは8のヌクレオチド配列、またはそのフラグメント;
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列;
(c)本発明のポリペプチド、好ましくは配列番号1、5もしくは6のポリペプチド、またはそのフラグメント;あるいは
(d)本発明のポリペプチドに対する、好ましくは配列番号1、5もしくは6のポリペプチドに対する、抗体
を含む、診断用キットに関する。
【0149】
そのような任意のキットにおいて、(a)、(b)、(c)もしくは(d)は実質的な成分を含み得ることは認識されるであろう。そのようなキットは、疾患、特にHDAC9発現または活性の異常に関連した疾患または病状、例えば細胞増殖の異常、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症性または免疫性応答、または乾癬の診断、あるいは該疾患への罹りやすさの診断に有用であろう。
【0150】
本発明のヌクレオチド配列はまた、染色体上の位置決定にも有用である。該配列を個別のヒト染色体上の特定の部位に特異的に標的化し、これとハイブリダイズさせることができる。本発明にしたがって関連配列を染色体にマッピングすることは、これらの配列を疾患関連遺伝子と相関させる重要な最初のステップである。一旦配列が正確な染色体の部位にマッピングされれば、染色体上の配列の物理的な位置を遺伝子マップデータと相関させることができる。そのようなデータは、例えば、V. McKusick, Johns Hopkins University Welch Medical Libraryを通してオンラインで入手可能)に見出される。同じ染色体領域にマップされている遺伝子と疾患との関係は、次いで、連鎖分析(物理的に隣接する遺伝子の共遺伝)により同定される。
【0151】
また、罹患した個体と罹患していない個体の間のcDNAもしくはゲノム配列の差を決定することが可能である。もし変異が罹患している個体の全てもしくは一部で観察されるが正常人のいずれにも観察されないならば、該変異は疾患の原因因子と思われる。
【0152】
本発明のさらなる実施態様は、上で議論したいずれかの治療効果のための、薬学的に許容される担体、賦形剤もしくは希釈剤と一緒での、医薬組成物の投与に関する。そのような医薬組成物は、HDAC9、そのポリペプチドに対する抗体、HDAC9機能の模倣物、アゴニスト、アンタゴニストまたはインヒビターからなっていてもよい。組成物は単独で、もしくは安定剤のような少なくとも1つの他の剤と組み合わせて投与され得、それらは生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水を含む(ただし、これらに限定されない)任意の無菌で生体適合性の医薬担体中で投与され得る。組成物は、単独、もしくは他の薬剤、薬物もしくはホルモンと組み合わせて、患者に投与され得る。
【0153】
さらに、上記の治療用タンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、アンチセンス配列またはベクターは、他の適当な治療剤と組み合せて投与され得る。併用治療において使用するための適当な剤の選択は、通常の医薬的原則にしたがって、当業者によりなされ得る。組合せ治療剤は、共同的に作用して、上記のさまざまな障害の処置または予防に効果を及ぼし得る。このアプローチを用いて、それぞれ、より少ない投与量の剤で治療効果を達成することができ、したがって、不都合な副作用の可能性を減少させることができる。HDAC9のアンタゴニストおよびアゴニストは、当分野において一般的に知られた方法を用いて製造され得る。
【0154】
本発明に包含される医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下もしくは直腸の手段を含む(ただし、これらに限定されない)任意の数の経路により投与され得る。
【0155】
活性成分に加えて、これらの医薬組成物は活性化合物を薬学的に使用され得る製剤に加工するのを容易にする賦形剤および補助剤を含む適当な薬学的に許容される担体を含有してもよい。処方および投与の技法に関するさらなる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa)の最新版に見出され得る。
【0156】
経口投与用の医薬組成物を、当分野において周知である薬学的に許容される担体を用いて、経口投与に適する剤型に製剤化することができる。そのような担体は、医薬組成物を患者の摂取用に、錠剤、丸剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等への製剤化を可能にする。
【0157】
経口用医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、所望により得られた混合物を粉砕し、そして適当な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工し、所望により錠剤もしくは糖剤の核を得ることを通して得られ得る。適当な賦形剤は、炭水化物またはタンパク質のような増量剤、例えば、乳糖、蔗糖、マンニトールもしくはソルビトールを含む糖類;コーン、コムギ、コメ、ジャガイモもしくは他の植物から得られる澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムのような崩壊剤もしくは可溶化剤を添加してもよい。
【0158】
糖剤の核は、濃縮糖液のような適切なコーティング剤と一緒に用いてもよく、これはまた、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、ならびに/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶剤もしくは溶剤混合物を含有してもよい。製品の識別のために、もしくは活性化合物の量すなわち投与量を特色づけるために染料もしくは色素を錠剤もしくは糖剤に添加してもよい。
【0159】
経口で使用できる医薬製剤としては、ゼラチンで作成した押込嵌めカプセル(push-fit capsule)、ならびにゼラチンおよびグリセリンもしくはソルビトールのようなコーティング剤で作成した密封軟カプセルが挙げられる。押込嵌めカプセルは、乳糖もしくは澱粉のような増量剤もしくは結合剤、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤および、所望により安定剤、と混合された活性成分を含有することができる。軟カプセルにおいて、活性化合物を、安定剤が入ったまたは入っていない、脂肪油、液体または液状ポリエチレングリコールのような適当な液体中に溶解または懸濁させてもよい。
【0160】
非経腸投与に適した医薬製剤は、水溶液中で、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液もしくは生理緩衝食塩水のような、生理的に適合する緩衝液中で、製剤化され得る。水溶性注射懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールもしくはデキストランのような、懸濁液の粘性を増加させる物質を含有してもよい。加えて、活性化合物の懸濁液は適切な油性の注射懸濁液として調製してもよい。適当な親油性溶剤もしくはビヒクルとしては、胡麻油のような脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドのような合成脂肪酸エステル、またはリポゾームが挙げられる。非脂質性、ポリカチオン性アミノポリマーをまた、送達用のために使用し得る。所望により、懸濁液はまた、適当な安定剤、または高濃度溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を増加させる薬剤、を含有してもよい。
【0161】
局所もしくは鼻腔内投与には、浸透させるべき特定の障壁に対して適当な浸透剤が製剤化において用いられる。そのような浸透剤は当分野において一般的に公知である。
本発明の医薬組成物は、当分野において公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣がけ、湿式粉砕、乳化、カプセル充てん、封入もしくは凍結乾燥により製造され得る。
【0162】
医薬組成物は塩として供給されてもよく、そして塩を、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含む(ただし、これらに限定されない)多くの酸により形成することができる。塩は、対応する遊離塩基型であるよりも水性もしくは他のプロトン性溶媒中に溶けやすい傾向がある。他の場合には、好ましい製剤は以下のもの:すなわち1〜50mMヒスチジン、0.1%〜2%蔗糖、および2〜7%マンニトール、のいずれかもしくは全てをpH4.5〜5.5の範囲で含有し得る凍結乾燥粉末でもよく、該製剤を使用前に緩衝液と混合する。
【0163】
医薬組成物を調製した後、それらを適切な容器の中に入れ、適用される病状の処置のための表示をする。HDAC9の投与については、そのような表示は投与の用量、頻度および方法を含むであろう。
本発明における使用に適した医薬組成物としては、意図する目的を達成するための有効量で活性成分が含有されている、組成物が挙げられる。有効用量の決定は、十分に、当業者の能力の範囲内である。
【0164】
任意の化合物について、治療上の有効用量を、例えば、腫瘍細胞の細胞培養アッセイで、または通常マウス、ウサギ、イヌもしくはブタの動物モデルで、のどちらかで初めに推定することができる。動物モデルは、また、投与の適切な濃度範囲および経路を決定するために使用され得る。次いで、そのような情報を用いて、ヒトにおける投与のための有用な用量および経路を決定することができる。
【0165】
治療的有効用量とは、症状もしくは病状を軽減する、活性成分、例えばHDAC9もしくはそのフラグメント、HDAC9に対する抗体、HDAC9のアゴニスト、アンタゴニストもしくはインヒビター、の量をいう。治療的有効性および毒性は、細胞培養もしくは実験動物での標準的な薬学的手順、例えばED50(集団の50%で治療効果を示す用量)およびLD50(集団の50%で致死的な用量)、により決定され得る。毒性作用と治療効果との間の用量比が治療係数(therapeutic index)であり、これはLD50/ED50の比で表すことができる。大きな治療係数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験で得られたデータは、ヒトでの使用のための一定の範囲の投与量の製剤化において用いられる。そのような組成物に含有される投与量は、好ましくは、毒性が殆どまたは全く無しに、ED50を含む血液濃度の範囲内である。投与量は、用いられる剤型、患者の感受性および投与経路に依存してこの範囲内で変動する。
【0166】
正確な投与量は、処置を要する対象に関連した諸要因に照らし合わせて、医師により決定されるであろう。投与量と投与法は、十分なレベルの活性成分を供給するように、あるいは望ましい効果を維持するように調整される。考慮に入れられる要因としては、疾病状態の重症度、対象の全身健康状態、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の時刻および頻度、併用薬、反応感受性、ならびに治療に対する認容性/応答が挙げられる。持続性医薬組成物は特定の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて3〜4日毎、週1回、もしくは隔週毎に投与されてもよい。
【0167】
通常の投与量は、投与経路に応じて0.1〜100,000マイクログラム、約1gの総用量まで変動してもよい。特定の投与量および送達方法に関する指針は文献中に提供されており、当分野における医師は一般に入手できる。当業者は、タンパク質もしくはその阻害剤に対するのとは異なる処方をヌクレオチドに対して使用するであろう。同様に、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの送達は、特定の細胞、病状、部位等に特異的であろう。タンパク質の経口投与に適した医薬製剤は、例えば、米国特許5,008,114;5,505,962;5,641,515;5,681,811;5,700,486;5,766,633;5,792,451;5,853,748;5,972,387;5,976,569;および6,051,561に記載されている。
【0168】
以下の実施例は本発明を例示するものであって、いかなる点からもその範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0169】
実施例
実施例1:バイオインフォマティクスを用いる新規HDAC関連ヒトDNA配列の同定
最初に非重複アミノ酸データベース、続いてCelera Human Genome Database (CHGD)、公開High Throughput Genomic (HTG) データベースおよびIncyte LIFESEQ(商標)データベースのようなあまり大きくないデータベースを検索することによって、既知のHDACファミリーのメンバー中から最大の進化的関連を見つけるためのストラテジーに基づく遺伝子ファミリーの新しいメンバーの同定のためのコンピューターソフトウエアを用いてHDAC9を同定した。Smith-Waterman モデル(Pearson W. R. Comparison of methods for searching protein sequence databases. Protein Sci (1995) 4, 1145-60) および Hidden Markov モデル(すべての位置でアミノ酸の多様性に由来する推定モデル (Eddy S. R. Hidden Markov models. Curr Opin Struct Biol (1996) 6, 361-5)を実施した。1156bpのオープンリーディングフレーム(ORF)を同定および使用して、全組織および後根神経節cDNAライブラリーから配列決定されたクローンのデータベースを検索した。
【実施例2】
【0170】
実施例2:全組織および後根神経節cDNAライブラリーの構築
全組織および後根神経節cDNAライブラリーを、ポリA+RNAから構築する。総RNAを31のヒト組織または後根神経節のプールしたサンプルから抽出し、そして製造者(Life Technologies, Rockville, MD)の使用説明書にしたがってTRIZOL試薬を用いて単離した。mRNAを、製造者(Promega, Madison, WI)の使用説明書にしたがってPolytract mRNA Isolation System IIIを用いて単離する。総RNAを、ビオチン化オリゴ(dt)プローブとハイブリダイズする。該オリゴ(dt)−mRNAハイブリッドを、ストレプトアビジン・マグネスフェアー・パーティクル(streptavidin magnesphere particles)上で捕捉し、そしてRnaseの入っていないHO中で溶出する。3μlのビオチン化オリゴ(dt)プローブ(50pmol/μl)および13μlの20×SSCを、RNaseの入っていない水中で65℃に加熱した60〜150μgのRNAに加える。完全に冷却されるまで、この混合物を室温でインキュベートする。ストレプトアビジン・マグネスフェアー・パーティクル(ビーズ)を再懸濁し、そして0.5×SSC中で3回洗浄し、次いで0.5×SSC中で再懸濁する。前のステップからのRNA−オリゴ(dt)ハイブリッドを、これらのビーズに加える。
【0171】
ビーズからポリ−A RNAを分離するために、該ビーズを、Rnaseの入っていない水中で再懸濁し、そして磁気的に捕捉し、そして次いでビーズからの溶出液をエタノール沈澱する。第1および第2ストランドのcDNA合成を、Life Technologiesからの修正手順(D'Alessio, J. M., Gruber, C.E., Cain, C. R., and Noon, M. C. (1990) Focus 12, 47)を用いて行う。第1ストランド合成を、1×第1ストランド用緩衝液(Life Technologies)/6mM DTT/600nM dNTPs/2単位の抗−Rnase中で60℃に加熱した1〜5μgのRNAをインキュベートすることにより行う。この混合液を40℃にて2分間インキュベートし、次いで、Superscript II 逆転写酵素(RT)および1μlのDisplay Thermo RT ターミネーター・ミックスを加え、そして混合液を40℃で1時間、続いて60℃で10分間インキュベートする。第2ストランド合成を、DEPC−HO/66nM/1μl E.coli DNA リガーゼ/4μl E.coli DNAポリメラーゼI/1μl E.coli Rnase H中の、1×第2ストランド用緩衝液(Life Technologies)中で行う。この混合液を10℃で10分間、そして次いで16℃で2時間インキュベートする。
【0172】
この混合液に、2μlのT4 DNAポリメラーゼを加え、そして16℃で5分間インキュベーションを継続する。反応を10μlの0.5M EDTAで停止させ、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで抽出し、そしてエタノール沈澱を行う。Sal IおよびNot Iアダプターを、通常の方法を用いて指向性クローニングのためのライゲーションによりcDNAの5'末端に加える。次いで、該cDNAをサイズ分別カラムにかけ、製造者(Life Technologies, Rockville, MD)の使用説明書にしたがって、>500bpの長さのcDNAを回収する。cDNAを、通常の方法を用いて、Sal I/Not I消化Gateway適合性pCMV−Sport6ベクター(Life Technologies, Rockville, MD)にライゲートする。コンピテントDH10B細胞(Life Technologies, Rockville, MD)を、通常の方法を用いて、得られたライブラリーで形質転換する。ライブラリーの半固体増幅を、製造者(Life Technologies, Rockville, MD)の使用説明書にしたがって行う。
【実施例3】
【0173】
実施例3:配列番号1、5もしくは6からなる新規HDAC9をコードする完全長cDNAの調製:
1156塩基対のORFを使用して、BLASTを用いる全組織および後根神経節cDNAライブラリーからの配列決定されたデータベースを検索した。それぞれのライブラリーから2つ、計4つのクローンがORF(M6、K10、P3、F23)を含有することが見出された。これらのクローンのうち、全組織のライブラリーからのM6は最も完全であるがN末端からの約44塩基対を欠失していることが判明した。完全なcDNAに対して予想されるのよりも少し小さいタンパク質が、インビトロでの翻訳により観察された。
【0174】
タンパク質が不完全cDNAのインビトロでの翻訳により観察されるという結果により、HDAC9内の別の翻訳開始部位の可能性が示唆される。特に、pCMVSport6中のHDAC9の配列決定を、自動ABI Sequencer(ACGT, Northbrook, IL)を用いて行った。PCRを、ABI Prism BigDye(商標)Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kitマニュアル中に挙げられた条件を用いて行った、そして下記の通りである:変性、96℃で30秒間、アニーリング、50℃で15秒間、伸張、60℃で4分間、計25サイクル。それぞれのシーケンシングにより、200〜600bpの配列が提供される。
【0175】
第1のシーケンシングのためのPCRプライマーは、5'−ATTTAGGTGACACTATAG−3'(Sp6、センス鎖)および5'−TAATACGACTCACTATAGGG−3'(T7、アンチセンス鎖)であった。Sp6プライマーを用いるシーケンシングの結果は次の通りである。太字の配列は、pCMVSport6ベクター配列である。
【表1】

【0176】
T7プライマーを用いるシーケンシングの結果は、
【表2】

であった。
【0177】
第2および第3シーケンシング・プライマーは、前の段階のシーケンシングから得られた配列のプライマーとなるように設計されている。第2プライマーは、5'−GTCATCACTGGCAGTGGCGTG−3'(HUF7392、アンチセンス鎖)および5'−TGGACTGCAGCTGGTGG−3'(DF−2、センス鎖)である。DF−2プライマーを用いるシーケンシングの結果は、
【表3】

であった。
【0178】
HUF7392プライマーに関するシーケンシング結果は、
【表4】

であった。
【0179】
第3シーケンシングプライマーは、5'−AACAGCGGTG C GGACAGA −3'(HUF2A、アンチセンス鎖)および5'−CTGGAGTCACTGGCGGAG −3'(DF3A、センス鎖)であった。DF3Aプライマーを用いるシーケンシングの結果は、
【表5】

であった。
【0180】
HUF2Aプライマーを用いるシーケンシングの結果は、
【表6】

であった。センス鎖およびアンチセンス鎖のシーケンシングの組合せから得られたオーバーラップしている配列を再構築して、HDAC9の完全なcDNA配列を得た。図2Aを参照。
【0181】
BLASTを、M6 cDNA配列を含むゲノム配列を同定するためのクエリー(query)としてcDNAクローンM6を用いるGenbankデータベースを検索するために使用する。この検索結果により、M6 cDNAと同一の配列のエキソンを含むことが見出されているゲノム配列AL022328が同定された。cDNAクローンM6の配列を、自動DNAシーケンシング(ACGT, Inc. Northbrook, IL)により確認した。図2A参照。
【0182】
N末端配列の残りの44bpを、ネステッド(nested)センス鎖プライマー 5'−GCGGTCGACGCCACCATGGGGACCGCGCTTGTGTACCATGAGGAC ATG−3'および5'−GTGTACCATGAGGACATGACGGCCACCCGGCTGCTCTGGGACGACC CCGAGTGC−3'ならびに3'プライマー 5'−GAACCAATGTGATATCCGGCGTTG−3'を用いるPCRにより加えた。該5'プライマーをクローニングのためにkozak配列およびSal 1部位に加え、そして該3'プライマー配列は、HDAC9中のEcoRV部位とオーバーラップする。PCRを、94℃で30秒間、68℃で30秒間、および72℃で1分間の1サイクル、続いて94℃で30秒間および72℃で1分間の20サイクルを用いる増幅のためのステップサイクルファイル(step-cycle file)を用いて行った。
【実施例4】
【0183】
実施例4 HDAC9配列の変異体 HDAC9配列の3つの変異体、すなわち、HDAC9v1、HDAC9v2、およびHDAC9v3が見出された。HDAC9v1は、発見されたオリジナルの配列であり、そして上に記載されている。HDAC9v2はヒト後根神経節cDNAライブラリーにおいておよびAL022328ゲノム配列において見出された。HDAC9v3は、Celeraヒトゲノムデータベースにおいて見出された停止コドンを欠く予想された転写物である。HDAC9v1は20エキソンを有し、そしてHDAC9v2は20エキソンを有する。HDAC9変異体のペプチド配列の比較により、HDAC9v1およびHDAC9v2はエキソン17まで同一であるが、このエキソン以降は異なることが示された。HDAC9v2は、エキソン17と18の間に延長されたイントロン、およびHDAC9v1のエキソン19を含む延長されたエキソン18を有するが、446位のヌクレオチドにおける単一ヌクレオチド挿入の結果としてエキソン20を欠く。この挿入は該配列をフレームシフトさせ、そして該ペプチドを11アミノ酸だけ短くする(図11A)。HDAC9v1およびHDAC9v2と比較すると、HDAC9v3は219〜240位のアミノ酸の内部欠失を有し、そして486位のアミノ酸で始まるC末端において異なる。HDAC9は、配列変異体が報告された最初のHDAC酵素である。HDAC9v1は、特記しない限り、特徴付けされた該配列変異体である。
【実施例5】
【0184】
実施例5:HDAC関連配列モチーフの同定
M6クローンを、HDAC触媒ドメインならびにRbおよびRb−様タンパク質の結合部位を示すモチーフの存在に関して分析した。HDACは、保存されたアミノ酸を有する触媒ドメインの存在により特徴付けられる。今までに同定された大抵のHDACは1つの触媒ドメインを有するが、例外的にHDAC6は2つのドメインを有する。N末端触媒ドメインはクラスI HDACと結合する。一方、C末端触媒ドメインはクラスII HDACと結合する。N末端触媒ドメインは、PFAM予想および他のHDACの触媒ドメインとのアラインメントに基づいて、HDAC9において見出された。
【0185】
一組の保存されたアミノ酸は、HDAC活性のために極めて重要であり、そしてHDAC1における1アミノ酸変異、ならびにHDAC−様タンパク質(HDLP)、Zn2+およびHDACインヒビターTSAの複合体により形成される三次元構造に基づいて、HDACインヒビターTSAに関する極めて重要な接触を提供することが前に示された(Hassig CA, Tong JK, Fleischer TC, Owa T, Grable PG, Ayer DE, Schreiber SL. (1998) Proc Natl Acad Sci U S A. 95, 3519-3524; Finnin, M. S., Doniglan, J. R., Cohen, A., Richon, V. M., Rifkind, R. a., Marks, P. A., Breslow, R., and Pavletich, N. P. (1999) Structures of a histone deacetylase homologue bound to TSA and SAHA inhibitors. Nature 401, 188-193)。ヒトHDACに対して配列および酵素活性類似性を有する細菌性タンパク質であり、かつ、構造が解明された唯一のクラスI HDAC−様構造である、HDLPが、HDACのテンプレートとして使用された。
【0186】
いくつかの例外を有する多くのこれらの保存されたアミノ酸が、HDAC9において見出された[表4(Table 4)]。HDACペプチド配列のアラインメントにより、HDLPにおいて結合ポケットの一部を形成する疎水性残基Leu 265はHDAC9の272位のアミノ酸においてGluで置換されていることが示された。同様に、Leu 265は、また、HDAC8においてMetで、およびHDAC6ドメイン1においてLysで、置換されている。さらに、HDLP中のAsp 173はHDAC9の177位においてGlnで置換されており、当該相違はHDAC6触媒ドメイン1においても見出された。該Aspは、HDAC4、HDAC5、HDAC6ドメイン2、およびHDAC7においてAsnに置換されている。これらのタンパク質におけるアミノ酸置換物は全く酵素的意義を有さないので、HDAC1〜8は触媒活性を有する。
【0187】
HDAC9は、クラスIおよびクラスII HDACと配列類似性を有する。HDACは、酵母HDAC Rpd3、Hda1およびSir2との配列類似性、ならびに触媒ドメインの位置により分類されている。HDAC9、酵母HDAC Rpd3、Hda1、分裂酵母からのHda1サブファミリーのメンバー、cryptic loci regulator 3 (Clr3)、およびSir2のペプチド配列のアラインメントにより、HDAC9はClr3と最も高い配列類似性を有することが決定された(表1)。しかしながら、当該配列類似性は、HDAC9に分類するほどは高くない。
【0188】
ヒトHDAC 1〜9およびSir 1〜7ペプチド配列のアラインメントにより、HDAC9がクラスII ヒトHDAC6と極めて類似性が高いことが示された(表2)。クラスIおよびクラスII HDAC触媒ドメインとHDAC9触媒ドメインとのアラインメントにより、HDAC6触媒ドメイン1がHDAC9と最も高い配列類似性を有することが示された(表3)。
【0189】
HDAC中の触媒ドメインの位置を比較するために、HDACペプチドの触媒ドメインのPFAM予測を行った(図11B)。HDAC9触媒ドメインの位置は、クラスI HDACと同様にN末端であり、そしてアミノ酸4〜323のアミノ酸配列に及ぶと推定されている。さらに、クラスI HDACの平均的な長さは443アミノ酸である。一方、クラスII HDACの平均的な長さは1069アミノ酸である。673アミノ酸のHDAC9ペプチドが、クラスIおよびクラスII HDACの間の平均的サイズである(図11B)。
【表7】

【0190】
【表8】

【0191】
【表9】

【0192】
網膜芽腫タンパク質(Rb)遺伝子のタンパク質産物は、DNA合成、細胞サイクル、分化およびアポトーシスを制御する転写レギュレーターであり、そして通常の成長において組織特異的な役割を果たす。Rbは転写因子E2Fと複合体を形成し、該相互作用はリン酸化により制御される。Rbにおける変異は、網膜の癌、網膜芽腫の遺伝的な形態をもたらす。変異は、また、数多くの間葉性および上皮性癌において見出されている。サイクリンD1、cdk4、およびp16を含むRbのリン酸化のレギュレーターに影響する変異が、多くの癌において見出されている。したがって、Rbの機能は腫瘍形成において極めて重要な役割を果たすと考えられている(Sellers, W.R., Kaelin, W.G. Jr. (1997) J. Clin. Oncol. 15, 3301-3312, DiCiommo, D., Gallie, B.L., Bremner, R.(2000) Semin. Cancer Biol. 10, 255-269)。Rb−結合モチーフは、アミノ酸配列LXCXE〔式中、“X”は任意のアミノ酸であり得る。〕として前に定義された(Chen, T.-T. and Wang, J. Y. J. (2000) Mol. Cell Biol. 20, 5571-5580)。HDAC1中の該LXCXEドメインは、Rbの成長抑制機能にとって重要ではないが、RbへのHDACの結合に必要であることが見出された。2つの推定的Rb−結合モチーフがHDAC9において見出された(図11A、緑色のボックス)。LLCVAはアミノ酸510および515の間に位置し、そしてLSCILはアミノ酸560および564の間に位置する。これらはともにHDAC9v1およびHDAC9v2中に存在する。
【0193】
【表10】

【実施例6】
【0194】
実施例6:正常組織におけるHDAC9のmRNAの分布
正常組織におけるHDAC9のmRNAの分布を、ノーザン分析を用いて調べる。プローブを、製造者(Amersham, Piscataway, NJ)の使用説明書にしたがってRedi−Primeランダムヌクレオチド標識キットを用いて、750bpのEcorV/Not1 HDAC9フラグメントを32P−標識することにより製造する。12の正常組織からのポリA+RNA(Origene Technologies, Rockville, MD)を含むノーザンブロット、ならびに適合化した腫瘍と正常cDNAのアレイ(Clontech, Palo Alto, Ca)を、[32P]で標識した750bpのEcorV/Not1 HDAC9フラグメントでプローブ化し、そしてハイストリンジェント条件下(68℃)で洗浄する。ハイブリダイズしたブロットを、68℃にて2×SSC/0.1%SDS中で15分間2回洗浄し、続いて68℃にて0.1×SSC/0.1%SDS中で30分間2回洗浄する。該ブロットを、増感スクリーンとともにフィルムに18時間曝露する。これにより、約3.0KbのHDAC9 mRNAが脳、結腸、心臓、腎臓、肝臓、肺、胎盤、小腸、脾臓、胃および精巣において検出されることが示される。HDAC9メッセージは筋肉において検出されないが、GAPDHもまた検出されなかった。図7参照。
【0195】
BLASTを用いる同様のコンピューター技術(Altshul, S.F. 1993, 1990参照)を用いて、GenBankまたはLIFESEQ(商標)データベースのようなヌクレオチドデータベース中の同一または関連する分子を検索する。該検索の基本は、
【数1】

として定義されるプロダクト・スコア(product score)である。
【0196】
該プロダクト・スコアは、2つの配列間の同一性の度合いおよび適合配列の長さの両方を考慮している。例えば、40のプロダクト・スコアでは、該適合は誤差1〜2%以内で正確であり;そして70では、該適合は正確であろう。ホモログ分子は、通常、15〜40の間のプロダクト・スコアを示すものを選択することにより同定されるが、もっと低いスコアであっても関連分子を同定し得る。
【0197】
ノーザン分析の結果は、HDAC9をコードしている転写物が存在するライブラリーのリストとして報告されている。存在量(abundance)および存在率も報告されている。存在量は、直接的に、特定の転写物がcDNAライブラリー中に現れる回数を反映し、そして存在率は、cDNAライブラリーにおいて試験された配列の総数で除した存在量である。
【0198】
この場合において、LIFESEQ(商標)データベース(Incyte Pharmaceuticals, Inc. Palo Alto, Calif)の電子的ノーザン分析により、表5において見られるHDAC9配列の組織分布が示される。これらの結果は、HDAC9をコードする転写物が存在するcDNAライブラリーのリストとして報告されている。さまざまな組織特異的かつ混合組織源からの20ライブラリー中のHDAC9の存在により、他のHDACファミリーのメンバーのようにHDAC9は広範な組織において発現している遺伝子として見出され得ることが示される。この結果は、12の正常組織からのmRNAに対するHDAC9プローブのノーザンハイブリダイゼーションにより支持される(図7参照)。
【0199】
【表11】

【実施例7】
【0200】
実施例7:ヒト正常組織および細胞株におけるHDAC9分布のリアルタイムPCR測定
リアルタイムPCR。培養細胞株からの総RNAを、製造者(Qiagen, Valencia CA)のプロトコルにしたがってRneasy 96キットを用いて単離した。ヒト組織からのRNAを購入し(Clontech Inc, Palo Alto, Ca)、そして組織源を下記の表6に示す。
【表12】

【0201】
ヒト細胞株、H1299 ヒト肺カルシノーマ、T24 膀胱カルシノーマ、SJRH30 筋性横紋筋肉腫、SJSA−1 骨肉腫、ヒト繊維芽細胞、およびA549 ヒト肺カルシノーマを、American Type Tissue Culture Collectionから入手した。総RNAを、製造者(Qiagen, Valencia, CA)の使用説明書にしたがって、RNAイージー・キット(easy kit)を用いてヒト細胞株から単離した。RNAを、ABI Prism Sequence Detection System上でRT−PCRを用いて定量した。HDAC9の検出のために使用されたプライマーは、フォワードプライマー5'−GGATCCAGTATCTCTT TGAGGATGAC−3'、リバースプライマー5'−AGAAGCGCCCATGCTCATA−3'、およびTaqmanプローブ5'−AGCGTCCTTTACT TCTCCTGGCACCG−3'であった。
【0202】
該Taqman Reaction System (Eurogentec, Belgium)を、製造者により指示された比率であるが0.25U/μl逆転写酵素(MultiScribe ABI, Perkin Elmer, Branchburg NJ)および0.08U/μl RNaseOUT RNAseインヒビター(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を補った、25μl反応液中の10ngの総RNAとともに使用した。該逆反応を、mRNAの逆転写反応のための48℃での5分間のインキュベーションで開始し、続いて、95℃で10分間インキュベーションして逆転写酵素を不活性化し、そして同時に‘hot-start’熱安定性DNAポリメラーゼを活性化する。この後、95℃で15秒および60℃で60秒に変更した2ステップPCR反応を50サイクルした。
【0203】
評価を、ABI配列検出ソフトウエア(バージョン1.6.3)を用いて行った。RT−PCRアッセイを、製造者のプロトコルにしたがってMaxiscriptキット(AMBION Inc., Austin, TX)を用いて、T7 RNAポリメラーゼ反応でインビトロにて転写されたcRNAで標準化した。RT−PCRアッセイを、A549肺腫瘍細胞から単離された総RNAの希釈シリーズで標準化した。RT−PCRと並行して、各反応におけるRNAの総量を、製造者の使用説明書にしたがって、基準としてキットに備えられた哺乳類リボソームRNAを用いて、RiboGreenキット(Molecular Probes Inc., address)を用いる蛍光測定アッセイ中で定量した。
【0204】
リアルタイムPCRを、また、18SリボソームRNAのレベルと比較した組織および腫瘍細胞株におけるHDAC9の分布およびレベルを調べるために使用した。ヒトA549肺カルシノーマ細胞株からのRNAを、サンプル中の総RNAのレベルのための内部標準として任意に選択した。A549細胞内のHDAC9および18S rRNAのレベルを100%に設定し、そして他の組織および細胞株におけるHDAC9および18S rRNAのレベルをA549 RNA中のこれらの遺伝子のレベルのパーセントとして測定した。
【0205】
18SリボソームRNAのレベルは、すべてのRNAサンプルのA549内部標準の82%〜126%の範囲であり、このことは分析された組織サンプル中に同じくらいの量のRNAが存在することを示唆している。HDAC9は広範な組織においてリアルタイムPCRによりさまざまなレベルで検出され(図8)、これはノーザンブロット分析の確認となる(図7)。正常組織において、HDAC9は、胎児脳(894%)、小脳(538%)、および胸腺(589%)において最も高いレベルで検出された。腫瘍細胞株において、HDAC9は、SJRH30細胞(850%)において最も高いレベルで検出された(図8)。これらの結果は、HDAC9がいくつかの組織においてRNAレベルに関して差次的に発現していることを示唆している。
【実施例8】
【0206】
実施例8:HDAC酵素アッセイ
HDAC9−フラッグの調製。フラッグエピトープタグ配列を、PCRによりHDAC9v1の3'末端に付加した。PCRプライマーは、5'−ACGCCGGATATCACATTGGT TCTGC−3'および5'−GCGGAATTCTTATTATTTATCATCATCATCTTTATAATCCCC GTCGACAGCCACCAGGTGAGGATGGCA−3'であった。フラッグ−タグ化HDAC9v1を、第1プライマーのEcoRV部位を用いて再構築し、そしてヒト発現ベクターpCDNA3.1(−)のXbaIおよびEcoRI部位中にサブクローン化した(Invitrogen, Carlsbad, CA)。
【0207】
HDAC活性アッセイ。HDAC活性アッセイを前に記載されたように行う(Emiliani, S., Fischle, W., Van Lint, C., Al-Abed, Y., and Verdin, E. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 2795-2800)。100mm皿中の50%コンフルエントまで増殖させた5×10個の293細胞を、製造者の使用説明書にしたがってGeneporterトランスフェクションキットを用いて30μgのC末端フラッグ−タグ化HDAC1、HDAC3、HDAC4、HDAC6、HDAC7、またはHDAC9とともにトランスフェクトする。
【0208】
細胞培養培地を、トランスフェクションの5時間後に交換する。トランスフェクションの48時間後、細胞を冷PBS中で洗浄し、そして1mlのIP緩衝液(50mM Tris−HCl pH 7.5、120mM NaCl、0.5mM EDTA、0.5% NP−40)中にこすり落とし、ロッカー(a rocker)上で20分間インキュベートする。細胞片を、14Kで20分間の遠心でペレット化させる。上清を、事前にIP緩衝液中のプロテインGビーズ(Pharmacia Biotech)で1時間透明化させる。免疫沈降は、事前に透明化した上清を、α−FLAG M2アガロースアフィニティーゲル(Sigma)で4℃にて2時間または抗−HDAC2(Santa Cruz)で1時間のどちらかでインキュベートし、続いてプロテインGビーズで4℃にて1時間のインキュベーションすることにより行われた。次いで、ビーズをIP緩衝液中で5分間3回洗浄し、そして次いで、高塩濃度のIP緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.5、1000mM NaCl、0.5mM EDTA、0.5%NP−40)中で4℃にて3回洗浄する。次いで、IPSを1mlのHD−緩衝液(10mM Tris−HCl pH8.0、10mM NaCl、10%グリセリン)中で2分間2回洗浄する。
【0209】
トラポキシン阻害を測定する場合、IpsをHD−緩衝液中の0.3、3、30および300nM TPXとともに20分間インキュベートする。上清を、30μlのHD−緩衝液またはHD−緩衝液中のTPX中の100000cpmの基質([H]−Ac(H41−24) SGRGKGGKGLGKGGAKRHRKVLRD、インビトロ/BOP化学を用いて化学的アセチル化されている)とともにインキュベートし、チューブを軽くたたくことによりセファロースを再懸濁させ、そしてEppendorf 5436 Thermomixer中で、最高速度で37℃にて2時間振盪する。170μlのHD−緩衝液および50μlの停止−混合液(1M HCl、0.16M HAc)を加え、15分間ボルテックスし、次いで600μlの酢酸エチルを加え、そして45分間ボルテックスし、次いで14000gにて7分間遠心分離する。次いで、540μlの有機(上)相を、通常の方法を用いて5mlのシンチレーション液中で計測する。
【0210】
HDAC9は触媒活性を有する。HDAC9が触媒活性を有するかどうかを調べるため、ならびにHDAC1、HDAC3およびHDAC4の既知の触媒活性とHDAC9の活性を比較するために、基質として免疫沈降HDAC9およびH−アセチル化ヒストンH4ペプチドを用いるインビトロのヒストンデアセチラーゼアッセイを行った。触媒活性を欠くHDAC−関連タンパク質、HDRP/MITR/HDACCを、ネガティブコントロールとして使用した(Zhou, X., Richon, V.M., Rifkind, R.A., Marks, P.A. (2000) Identification of a transcriptional repressor related to the noncatalytic domain of histone deacetylases 4 and 5. Proc Natl Acad Sci U S A 97, 1056-61)。これらの結果により、HDAC9はHDAC3およびHDAC4と同等のレベルでヒストンペプチド基質を脱アセチル化することができるが(図12A)、HDAC1は本アッセイにおいてさらに効果的である(図12B)ことが示された。
【実施例9】
【0211】
実施例9 HDAC9発現および細胞局在化
製造者(Promega, Madison, WI)の使用説明書にしたがって、1μgのM6クローン、2μlの35S−メチオニンおよびSp6 TNT Quick Coupled Transcription/Translation Systemを用いて、HDAC9をインビトロで発現させる。タンパク質を通常の方法にしたがってSDS−PAGEゲル上で電気泳動し、そしてStorm phosphorimagerにより視覚化する。完全HDAC9配列の分子量は、VectorNTI Suiteソフトウエア(Informax, North Bethesda, MD)を用いてインシリコ(in silico)で72kdaと推定される。二重線が10%SDS−PAGEゲル上で観察された。HDAC1がインビトロで翻訳された場合にも二重線が観察される。これらの二重線により、第2の翻訳開始部位の存在の可能性が示唆される。さらに、これらの結果により、HDAC9が発現遺伝子であることが示唆される。図13を参照。
【0212】
1×10個のCos7細胞を、チャンバースライド上で培養する。細胞を該スライド上にて、製造者の使用説明書にしたがって血清なしの培地中のGeneporter2を用いて、2μgのフラッグエピトープ−タグ化HDAC9または細胞質発現タンパク質(Ena-flag)でトランスフェクトする。細胞培養培地を、トランスフェクションの24時間後に交換する。トランスフェクションの48時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、5%ホルムアルデヒド中で15分間固定し、PBS中で2回洗浄し、そして0.5% Triton-X-100含有PBS中の10%ウシ胎児血清(Sigma)中で室温にて30分間ブロックして、該細胞を浸透可能にする。細胞をPBS中でさらに2回洗浄し、そして次いで、25mg/mlの抗−フラッグ−FITCコンジュゲートで1時間インキュベートする。染色細胞をPBSで洗浄し、そして蛍光顕微鏡を用いて写真を撮る。
【0213】
HDAC9は核タンパク質である。翻訳されたHDAC9ペプチド配列は、72Kdaのタンパク質と予想され、そしてこれをインビトロでの翻訳により確認した(図13A)。HDAC9の細胞局在を調べるために、フラッグエピトープ−タグ化HDAC9、Enabled(Ena)またはpCMV4フラッグをCos7および293細胞中にトランスフェクトするか、または細胞をプラスミドなしで擬トランスフェクトした。フラッグエピトープを、トランスフェクションの48時間後に蛍光免疫化学により検出した(図13B)。Enaは、軸索誘導中にRoundabout受容体の軸索反発機能を形質導入するAblチロシンキナーゼの細胞骨格関連細胞質タンパク質基質である(Gertler FB, Comer AR, Juang JL, Ahern SM, Clark MJ, Liebl EC, Hoffmann FM. (1995) enabled, a dosage-sensitive suppressor of mutations in the Drosophila Abl tyrosine kinase, encodes an Abl substrate with SH3 domain-binding properties. Genes Dev. 9, 521-533. Bashaw GJ, Kidd T, Murray D, Pawson T, Goodman CS. (2000) Repulsive axon guidance: Abelson and Enabled play opposing roles downstream of the roundabout receptor. Cell.101, 703-715)。予想通り、Enaは細胞質において検出されたが、HDAC9はこれらの細胞の核内で検出された。Cos7および293細胞の両方の核におけるHDAC9の検出により、HDAC9は優勢的に核タンパク質であることが示唆される。
【実施例10】
【0214】
実施例10:HDAC複合体における関連タンパク質の同定
トランスフェクション。1×10個のCos7細胞を、0.3Kv/500μFにセットされたGene Pulser II装置(Biorad, Hercules CA)を用いたエレクトロポレーションにより、トランスフェクション対照として、pCDNA3.1発現ベクターまたはFlagベクターまたは緩衝液(Mock)中の10μgのC末端フラッグエピトープ−タグ化HDAC1、HDAC2、HDAC3、HDAC4、HDAC6、HDAC7またはHDAC9でトランスフェクトする。
【0215】
免疫沈降。免疫沈降を記載されたように行う(Grozinger, C. M., Hassig, C. A., and Schreiber, S. L. 1999. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 4868-4873)。全細胞抽出物を、完全プロテアーゼインヒビターカクテル(Boehringer-Mannheim)を含むJLB緩衝液(50mM Tris−HCL、pH8、150mM NaCl、10%グリセリン、0.5%Triton−X−100)中に細胞をこすり落とすことにより、トランスフェクションの48時間後に調製する。溶解を4℃で10分間継続し、そして次いで、細胞片を14Kで5分間の遠心分離によりペレット化する。上清を、Sepharose A/G+アガロースビーズ(Santa Cruz)で事前に透明にする。組換えタンパク質を、4℃にて2時間のα−FLAG M2アガロースアフィニティーゲル(Sigma)または4℃にて1時間の抗−HDAC1(Santa Cruz, Santa Cruz, CA)でのインキュベーションにより、続いてSepharose A/Gビーズとのインキュベーションにより、事前に透明化した上清から免疫沈降する。ウエスタンブロット分析のために、ビーズをMSWB緩衝液(50mM Tris−HCl、pH8、150mM NaCl、1mM EDTA、0.1%NP−40)で洗浄し、そしてタンパク質をSDS/PAGEにより分離する。ウエスタンブロットを、抗−フラッグM2(Sigma)、HDAC1(Santa Cruz)、抗−HDAC2(Santa Cruz)、抗−HDAC6(Santa Cruz)、抗−Rb(Pharmingen)、または抗−mSin3A(Transduction Labs, Lexington, KY)を用いてプローブ化する。
【0216】
mSin3A複合体中のタンパク質と結合したHDAC9。クラスIのHDAC(ただし、クラスIIのHDACではない。)は、前から、mSin3A複合体と結合することが知られていた。コアHDAC1複合体は、HDAC1、HDAC2、RbAp46、RbAp48からなる。このコア複合体は、RbおよびE2F複合体を介する転写抑制に関与するmSin3Aと結合することが見出されている(Luo RX, Postigo AA, Dean DC.(1998) Rb interacts with histone deacetylase to repress transcription. Cell. 92, 463-473; Magnaghi-Jaulin L, Groisman R, Naguibneva I, Robin P, Lorain S, Le Villain JP, Troalen F, Trouche D, Harel-Bellan A. (1998) Retinoblastoma protein represses transcription by recruiting a histone deacetylase. Nature. 391, 601-605; Brehm A, Miska EA, McCance DJ, Reid JL, Bannister AJ, Kouzarides T. (1998) Retinoblastoma protein recruits histone deacetylase to repress transcription. Nature. 391, 597-601)。
【0217】
HDAC9がこの複合体の一部であるかどうかを調べるために、内在性HDAC1、HDAC2、Rb、およびmSin3タンパク質を、フラッグ−エピトープタグ化HDAC1、HDAC3、HDAC4、HDAC6、HDAC7またはHDAC9でトランスフェクトした細胞から共免疫沈降した。トランスフェクトされたフラッグエピトープ−タグ化HDACが細胞中に検出されることを確かめるために、HDAC発現のレベルを、フラッグエピトープに対する抗血清とともに免疫沈降およびウエスタンブロットすることにより検出した。Sin3複合体の構成成分と結合したHDACを測定するために、Sin3複合体中の内在性タンパク質を免疫沈降し、そして結合HDACをウエスタンブロッティングフラッグエピトープ−特異的抗体により検出すると、HDAC9がHDAC1、HDAC2、RbおよびmSin3Aに結合していることが見出され、これによりHDAC9がmSin3A複合体の構成成分であることが示唆される。
【0218】
SMRTおよびNCoRと結合したHDAC9。コリプレッサーSMRTおよびNCoRはmSin3コア複合体と結合するので、HDACをNCoRおよびSMRTと共免疫沈降させる実験を行った(図15)。HDAC9はこれらのタンパク質の両方と共免疫沈降し、これによりHDAC9はSMRTおよびNCoRと結合することが示唆される。抗−NCoRでのフラッグ検出ブロットのウエスタン分析により、NCoRが免疫沈降することが示される。従来から報告されていたように、SMRTはHDAC4およびHDAC6と共免疫沈降し、そしてHDAC6およびHDAC7はSin3A複合体と結合しなかった。
【0219】
14−3−3およびErkタンパク質と結合したHDAC9。HDAC4は、従来から、14−3−3−β、14−3−3−ε、CamK、Erk1およびErk2タンパク質と結合することが見出されており、これらは細胞質中のHDAC4を隔離し、そしてリン酸化されたHDAC4およびHDAC5が核内に入ってMEF2活性化転写を抑制することを防ぐ。HDAC9がこれらのタンパク質と結合するかどうかを調べるために、HDACを14−3−3およびErkタンパク質と共免疫沈降させる実験を行った。試験されたすべてのHDACは、14−3−3およびErkと結合した。これらの結果により、HDACの14−3−3およびErkとの結合は細胞質においてHDACの隔離の一般的なメカニズムであり得る。
【0220】
HDAC9の分類。HDACは、酵母HDACとの配列類似性、配列の長さ、触媒ドメインの位置、細胞の局在性、結合しているタンパク質、およびHDACインヒビターに対する感受性により分類される。この研究のデータにより、HDAC9はクラスIおよびクラスIIのHDACの両方の特徴を有することが示唆される。HDAC9は、クラスII酵母hda1サブファミリーメンバーClr3およびHDAC6触媒ドメイン1と配列類似性を有する。さらに、3KbのHDAC9転写物は腎臓および精巣においてのみ検出され、これによりクラスII HDACのように組織分布が限定されていることが示唆される。HDAC9はクラスIとクラスII HDACの間の長さである。クラスI HDACは平均443bpの長さであるが、クラスII HDACは平均1069bpの長さである。しかしながら、HDAC9は、クラスII HDACにおいて見出されているC末端触媒ドメインとは反対に、N末端触媒ドメインを有することが見出された。
【0221】
N末端およびC末端触媒ドメインの両方を有するHDAC6は例外である。さらに、クラスI HDACは核タンパク質であるが、クラスII HDACは核−細胞質性である。免疫細胞化学により、HDAC9は、優勢的に核性であり、そして細胞質で発現するEnaタンパク質と比較して、さまざまな亜細胞性区画において検出されることが示された。差次的に発現し得る3KbのHDAC9転写物とは対照的に、ノーザン分析により同定される3.5KbのHDAC9転写物は、クラスI HDACと同様に、正常組織、腫瘍組織および細胞株においていたるところで発現していた。さらに、HDAC9は、前に、HDAC1、HDAC2、mSin3AおよびRbを含むクラスI HDAC複合体とのみ結合したタンパク質と共免疫沈降することが見出された。また、HDAC9は、これまではHDAC1においてのみ見出されていた推定的C末端LXCXEモチーフを有する。HDAC9は、また、NCoRおよびSMRTと結合することも見出された。この事実により、HDAC9はクラスIおよびクラスII HDACの特徴の橋渡しをする特徴を有することが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】図1は、GENFAM(プロプラエタリ・ソフトウエア)を用いて同定され、そして完全HDAC9 cDNA配列に関してデータベースを検索するために使用される1156bpオープンリーディングフレームを示す。それぞれのORF(配列番号3)はヌクレオチド位置番号1で開始し、そしてヌクレオチド位置番号1156で終了する。
【図2】図2Aおよび2Bは、それぞれ、HDAC9の完全長cDNA配列(配列番号2)およびそのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。完全長cDNA配列は、ヌクレオチド位置番号1で開始し、そしてヌクレオチド位置番号2022で終了する。
【図3】図3は、クローン198929/HDAC9の配列とアラインした、インシリコ(in silico)のゲノム性DNA配列(AL022328) (配列番号4)を示す。該アラインメントは、プロプリエタリ・ソフトウエア(Novartis Pharmaceuticals, Summit, NJ)を用いて製造された。
【図4】図4は、HDAC9予想ペプチドおよび S. pombe Hda1ペプチドのアラインメントを示す。クエリー(query)はHDAC9ペプチドであり、そして対象(subject)はS. pombe Hda1ペプチドである。アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。
【図5】図5は、HDAC1およびHDAC9v1のアラインメントならびに推定される触媒ドメインのアミノ酸およびRb結合ドメインの位置を示す。触媒ドメインのアミノ酸は実線で囲まれ、そして推定されるRbドメインのアミノ酸は点線の囲み中に含まれる。 アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。
【図6】図6は、HDAC 1〜9v1のアラインメントを示す。該アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。
【図7】図7は、HDAC9のノーザン分析を示す。(A)正常ヒト組織におけるHDAC9の分布のノーザンブロット分析。GAPDHを、RNAローディングのための対照と同一のブロットとハイブリダイズした。(B)腫瘍および正常組織の比較におけるHDAC9のノーザンブロット分析。GAPDHを、RNAローディングのための対照と同一のブロットとハイブリダイズさせた。
【図8】図8は、18SリボソームRNAと比較した正常ヒト組織および細胞株中のHDAC9の分布のリアルタイムPCR分析を示す。ヒト肺カルシノーマ細胞株であるA549からのRNAを、内部標準として使用した。
【図9】図9は、クラスII HDAC(HDAC4、5、6、7)とのHDAC9v1のアラインメントを示す。該アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。触媒ドメインのアミノ酸が実線で囲まれている。
【図10】図10は、クラスI HDAC(HDAC1、2、3、8)とのHDAC9v1のアラインメントを示す。該アラインメントは、Clustalwアルゴリズム(Higgins, D.G., Thompson, J.D., Gibson, T.J. (1996) 複数の配列アラインメントのためのCLUSTALの使用。Methods Enzymol 266, 383-402)を用いて製造された。触媒ドメインのアミノ酸が実線で囲まれている。
【図11】図11は、3つのHDAC9配列変異体(HDAC9v1、HDAC9v2、およびHDAC9v3)を示す。HDAC9v1およびHDA9v2は、ヒトESTデータベースを検索することにより見出され、そしてHDAC9v3はCelera配列データベース中の予想される転写物として見出された。(A)は、該3つのHDAC9変異体ペプチド配列のアラインメントを示す。(B)は、クラスIおよびクラスII HDACペプチド配列の略図を示す。触媒ドメインは黒塗りのボックスであり、そして推定されるLXCXEモチーフは白抜きのボックスである。(C)は、HDAC9v1およびHDAC9v2のゲノム構造の略図である。エキソンを黒塗りのボックスで示し、そしてイントロンを黒塗りのボックスの間の線で示す。ボックスおよび線の長さは、エキソンおよびイントロンの長さを示す。
【図12】図12は、HDAC9が酵素的に活性なヒストンデアセチラーゼであることを示す。(A) HDAC9の触媒活性は、HDAC3およびHDAC4の活性に匹敵する。(B)は、HDAC1が本アッセイにおけるヒストン基質の脱アセチル化に関して、HDAC3、HDAC4、およびHDAC9よりも効果的であったことを示す。
【図13】図13は、HDAC9が核タンパク質であることおよびHDAC9−フラッグがインビトロで翻訳されることを示す。
【図14】図14は、 HDAC9v3およびHDAC9v2のDNAおよびペプチド配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号1、配列番号5または配列番号6で示されるアミノ酸配列からなる単離ポリペプチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリペプチドをコードする核酸配列を含む単離DNA。
【請求項4】
請求項3に記載の単離DNAの少なくとも1つのフラグメントを含むベクター分子。
【請求項5】
転写制御配列を含む請求項4に記載のベクター分子。
【請求項6】
請求項5に記載のベクター分子を含む宿主細胞。
【請求項7】
請求項3に記載の単離DNAであって、
(1)請求項2において定義されたポリペプチドをコードする完全cDNA配列である、配列番号2、7または8で示されるヌクレオチド配列;
(2)請求項2において定義されたポリペプチドをコードするcDNA配列のオープンリーディングフレームである、配列番号3で示されたヌクレオチド配列;
(3)配列番号3で示されたヌクレオチド配列にハイストリンジェント条件下でハイブリダイズできるヌクレオチド配列;および
(4)請求項2において定義されたポリペプチドをコードする内在性ヒトゲノムDNAである、配列番号4で示されたヌクレオチド配列、
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む単離DNA。
【請求項8】
請求項7に記載の単離DNA分子の少なくとも1つフラグメントを含むベクター分子。
【請求項9】
転写制御配列を含む、請求項8に記載のベクター分子。
【請求項10】
請求項9に記載のベクター分子を含む宿主細胞。
【請求項11】
インビトロで増殖可能であり、そして請求項1もしくは2に記載のポリペプチドを培養増殖で生成する能力のある宿主細胞であって、そこでは該細胞は請求項2に記載のポリペプチドをコードする天然型内在性ヒト遺伝子の転写制御配列でない少なくとも1つの転写制御配列を含み、そこでは該1もしくはそれ以上の転写制御配列は請求項1もしくは2に記載のポリペプチドをコードするDNAの転写を制御する、宿主細胞。
【請求項12】
ヒトにおける異常細胞増殖、癌、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、宿主炎症もしくは免疫応答、または乾癬を含む遺伝子発現制御の異常に関連する病状を診断する方法であって:
ヒトからの適切な組織もしくは細胞において請求項2で定義されたポリペプチドをコードする天然型内在性ヒト遺伝子から転写されるメッセンジャーRNAの転写の異常を検出すること含み、そこでは転写の異常が該病状の診断となる、方法。
【請求項13】
天然型内在性ヒト遺伝子が配列番号4、7または8において示されるヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12に記載の方法であって、適切な組織もしくは細胞の試料を、または該組織もしくは細胞に由来する単離RNAもしくはDNA分子を、請求項3において定義された単離ヌクレオチド配列とハイストリンジェント条件下でハイブリダイズするところの少なくとも約15〜20ヌクレオチド長の単離ヌクレオチド配列と接触させることを含む、方法。
【請求項15】
ヒトにおけるHDAC9発現または活性の異常に関連した病状の診断方法であって:
該病状を患うヒトからの適当な組織または細胞中の、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むポリペプチドの量を測定することを含み、そこではHDAC9発現または活性の異常に関連した該病状を患わないヒトからの対応する組織中の該ポリペプチドまたはそのフラグメントの量と比較した該ポリペプチドまたはそのフラグメントの異常の存在が病状を患うヒトの診断となる、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、検出工程が、適当な組織または細胞を、配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むポリペプチドに特異的に結合する抗体と接触させること、および該適当な組織または細胞においてポリペプチドとの該抗体の特異的結合を検出することを含み、ここで、ポリペプチドへの特異的結合の検出が配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むポリペプチドの存在を示す、方法。
【請求項17】
配列番号1、5または6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは該ポリペプチドのフラグメントに特異的に結合する、抗体またはそのフラグメント。
【請求項18】
FabまたはF(ab')フラグメントである、請求項17に記載の抗体フラグメント。
【請求項19】
ポリクローナル抗体である、請求項17に記載の抗体。
【請求項20】
モノクローナル抗体である、請求項17に記載の抗体。
【請求項21】
請求項1または2において定義されたポリペプチドの製造方法であって:
宿主細胞におけるポリペプチドの発現に十分な条件下で配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする外来性ポリヌクレオチドを含む発現ベクターが組み込まれた宿主細胞を培養し、それにより発現されるポリペプチドの産生を引き起こす、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、さらに、細胞が生成したポリペプチドを回収することを含む方法。
【請求項23】
外来性ポリヌクレオチドが配列番号1、5もしくは6で示されるアミノ酸配列からなるポリヌクレオチドをコードする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
外来性のポリヌクレオチドが配列番号2、7または8で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
外来性ポリヌクレオチドが配列番号3で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
外来性ポリヌクレオチドが配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなる、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
外来性ポリヌクレオチドが配列番号4で示されるヌクレオチド配列を含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【図3.3】
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【図3.4】
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【図4】
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【図5】
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【図6.1】
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【図6.2】
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【図6.3】
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【図6.4】
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【図6.5】
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【図6.6】
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【図7】
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【図8】
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【図9.1】
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【図9.2】
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【図9.3】
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【図10.1】
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【図10.2】
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【図10.3】
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【図11.1】
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【図11.2】
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【図11.3】
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【図12】
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【図13】
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【図14.1】
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【図14.2】
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【公開番号】特開2008−113660(P2008−113660A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285258(P2007−285258)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【分割の表示】特願2002−552162(P2002−552162)の分割
【原出願日】平成13年12月18日(2001.12.18)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】