説明

ヒストンマクロH2Aアイソフォームに基づいて癌再発のリスクを予測する診断方法

本発明は、哺乳類患者における癌再発のリスクを診断する方法であって、前記患者から取得される生体試料においてマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現を検出することを含み、前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の低下又は減弱は、前記患者における癌再発のリスクの増大を示す、方法に関する。本発明は、更に、前記診断方法に基づいて、癌、特に乳癌及び/又は肺癌を治療する改善された方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類患者における癌再発のリスクを診断する方法であって、前記患者から取得される生体試料においてマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現を検出することを含み、前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の低下又は減弱は、前記患者における癌再発のリスクの増大を示す、方法に関する。本発明は、更に、前記診断方法に基づいて、癌、特に乳癌及び/又は肺癌を治療する改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の中でも特に、肺癌は、新患に関して2番目に多い癌であり(米国ではすべての癌の15%)(Jemal他、2007)、世界中で癌死の主な原因である(米国では男性の31%及び女性の26%)。4/5の肺癌腫が非小細胞肺癌(NSCLC)であり、NSCLC患者の約1/3が、早期の疾患で診断される。これらの患者には、手術が最良の治療の選択肢であるが、高い確率の患者が再発し、大部分がその疾患で死亡する。同じ病期の癌である患者であっても異なる再発率を示すことが多く(Zhu他、2006)、したがって、手術後に再発する可能性がより高い患者を特定することができる分子マーカーに関心が持たれている(D'Amico、2008)。NSCLCの転移性再発のためのいくつかの潜在的なマーカーが検査されてきたが、それらのいずれも十分に有用であることが証明されていない(Zhu他、2006)。
【0003】
ヒストンは、多くの場合、別個の細胞タイプにおいて同様のレベルで存在すると推定される。ヘテロクロマチンヒストン変異体であるマクロH2Aは、いくつかの分子及び細胞の構造的特徴では特異である。構造レベルにおいて、マクロH2Aは、大型C末端伸長、マクロドメイン、およそ25kDaの球状モジュールを有し、マクロH2A1.1の場合、特異性の高いADPリボースを結合する(Kustatscher他、2005)。さらに、すべての脊椎動物で観察されるマクロH2Aと、小分子を結合することができない、マクロH2A1.2として知られるマクロH2A1の第2のスプライス変異体とに対する2つの遺伝子がある。
【0004】
マクロH2Aは、老化として知られる永久増殖停止に関係している(Pehrson及びFried、1992、Zhang他、2005)。この現象は、in vitroで初代細胞培養に対して述べられており(Hayflick、1965)、テロメア短縮、DNA損傷の蓄積及び特定の癌遺伝子の過剰発現のようなストレスに応答する(Serrano他、1991)。
【0005】
更に、癌遺伝子によって誘発される老化が、in vivoで強力な抗腫瘍メカニズムとして現れたことに注目すると興味深い(Braig他、2005、Chen他、2005、Collado他、2005、Michaloglou他、2005)。
【0006】
Holdenrieder他は(非特許文献1において)、化学療法を受けている20人の患者からの血清試料及び放射線療法を受けている16人の患者からの血清試料において、ヌクレオソーム及びヌクレオソームの濃度の動態を観察した。悪性腫瘍を有する患者の血清は、健康な人及び良性疾患の患者に比較して、著しく高いヌクレオソームの濃度を含んでいた。彼らは、血清中のヌクレオソームの濃度が、特に治療効力の初期の推定のために、抗腫瘍治療中、生物化学的応答をモニタリングする有用なツールであり得ることを提案している。
【0007】
Kurdistaniは(非特許文献2において)、ヒストンの修飾の変化が、癌の発症及び進行に重要な役割を有する多くの遺伝子の脱調節発現に関連してきたことを記載している。これらの変化の効果は、これまで、プロモーターに特異的な観点から解釈され、遺伝子間のヒストン修飾のパターンの相違に焦点を当ててきた。さらに、癌組織は、特定のヒストン修飾の全体の量における細胞間の相違も表すことが示唆されている。この新規な細胞のエピジェネティックな不均一性は、癌患者の臨床転帰に関連し、予後の貴重なマーカーとしての役割を果たすことができる。
【0008】
Barlesi他は(非特許文献3において)、エピジェネティックな修飾が癌の発症及び進行に寄与する可能性があるか否かを検査する研究を記載している。非小細胞肺癌(NSCLC)患者の予後に影響を与える、複数のヒストンを含むエピジェネティックな変化が検査された。138人のNSCLC患者の切除された腫瘍試料における、ヒストン3リジン4の脱メチル(H3K4diMe)、並びにヒストン2Aリジン5のアセチル化(H2AK5Ac)、ヒストン2Bリジン12のアセチル化、ヒストン3リジン9のアセチル化(H3AK9Ac)及びヒストン4リジン8のアセチル化を検査した。I期患者(第1の節より下位)によって確定されるグループは、劇的な生存期間の差異を示した(中央値、H3K9Ac68%の腺癌患者の場合10か月、H3K4diMe85%の非腺癌患者の場合147か月)。開示されているデータは、ヒストン脱アセチル化阻害剤等、ヒストン修飾と相互作用する薬物による標準的な化学療法との組合せを用いるための論拠を提供すると考えられた。
【0009】
Deligezer他は(非特許文献4において)、DNAメチル化及びヒストン修飾の変化が、発癌に関連してきたことを記載しており、ヒストンメチル化が、ヒストン修飾のモデルとして、血漿において検出可能であるか否かを調べた。したがって、クロマチン免疫沈降により、血漿においてモノメチル化H3K9(H3K9mel)が解析された。循環におけるヒストン修飾の癌に特異的な変化を証明するためには、さらなる検証が必要であった。
【0010】
最後に、Seligson他は(非特許文献5において)、癌細胞が、個々の遺伝子において、かつ個々の細胞の単一核のレベルにおいて全体的に(globally)、ヒストン修飾パターンの変化を示すことを開示している。前立腺癌再発の高いリスクを予測するために、ヒストンH3リジン4脱メチル(H3K4me2)及びH3K18アセトン化(ac)のより低い全体的/細胞レベルが開示されており、H3K4me2及びH3K18acの両方の細胞レベルはまた、肺癌患者及び腎臓癌患者の臨床転帰も予測し、より低いレベルが、両癌グループにおいて大幅に下がった生存確率を予測することが示された。彼らはまた、H3K9me2、すなわち遺伝子活性及び抑制の両方に関連する修飾のより低い細胞レベルが、前立腺癌又は腎臓癌のいずれかである個人に対しより不良の転帰の予後でもあることも示している。これらのヒストン修飾の予測能力は、増殖マーカーKi−67とは無関係であった。クロマチン免疫沈降実験により、より悪性の癌細胞株におけるヒストン修飾のより低い細胞レベルが、ゲノムにわたる遺伝子プロモーターではなく、DNA繰返し要素における修飾のより低いレベルに相関することが示された。結果は、ヒストン修飾のより低い全体的レベルが、より悪性の癌の表現型を予測することを示唆し、種々の組織起源の腺癌の予後のエピジェネティックパターンにおける驚くべき共通性を明らかにした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Holdenrieder S、Stieber P、Bodenmuller H、Busch M、Fertig G、Furst H、Schalhorn A、Schmeller N、Untch M、SeidelD著、Nucleosomes in serum of patients with benign andmalignant diseases. Int J Cancer 2001 Mar 20;95(2):114-20
【非特許文献2】Kurdistani SK著、Histone modifications as markers of cancer prognosis: a cellularview. Br J Cancer. 2007 Jul 2;97(1):1-5. Epub 2007 Jun 26
【非特許文献3】Barlesi F、Giaccone G、Gallegos-Ruiz MI、Loundou A、Span SW、Lefesvre P、Kruyt FA、Rodriguez JA著、Global histone modifications predict prognosis of resected nonsmall-cell lung cancer. J Clin Oncol. 2007 Oct 1;25(28):4358-64
【非特許文献4】Deligezer U、Akisik EE、Erten N、DalayN著、Sequence-specific histone methylation is detectableon circulating nucleosomes in plasma. Clin Chem. 2008 Jul;54(7):1125-31. Epub2008 May 16
【非特許文献5】Seligson DB、Horvath S、McBrian MA、Mah V、Yu H、Tze S、Wang Q、Chia D、GoodglickL、Kurdistani SK著、Global Levelsof Histone Modifications Predict Prognosis in Different Cancers. Am J Pathol.2009 Apr 6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
肺癌は、癌死の主な原因である。最適な診断及び早期治療にも関らず、多くの患者が再発疾患で死亡する。癌、特に肺癌等の固形癌における腫瘍再発のリスクを予測するために十分有用なバイオマーカーはない。したがって、本発明の目的は、こうした再発癌のための新しい診断アッセイを、該アッセイを行うための適切な手段とともに提供することである。さらなる目的及び利点は、本発明の以下のより詳細な説明を読むことにより当業者には明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の好ましい第1の態様では、本発明は、哺乳類患者における癌再発のリスクを診断する方法であって、前記患者から取得される生体試料においてマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現を検出することを含み、前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の低下又は減弱は、前記患者における肺癌再発のリスクの増大を示す、方法に関する。好ましくは、本発明による方法は、前記診断に基づく前記癌再発、更に好ましくは転移性再発の予測を更に含む。
【0014】
本発明の好ましい第2の態様では、本発明は、上記のように哺乳類患者における癌再発のリスクを診断する方法であって、マクロH2A1.1の発現に基づいて腫瘍における老化細胞、特に癌細胞の診断を更に含む、方法に関する。
【0015】
本発明の好ましい第3の態様では、本発明は、マクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な薬剤に対するスクリーニング方法であって、マクロH2A1.1又はマクロH2A2に潜在的に特異的な薬剤とマクロH2A1.1又はマクロH2Aを接触させること、及び前記薬剤が特にマクロH2A1.1又はマクロH2Aと結合するか否かを判断することを含む、方法に関する。
【0016】
本発明の好ましい第4の態様では、本発明は、本発明による、マクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な薬剤をスクリーニングする方法に従ってスクリーニングされた、診断薬及び/又は治療薬に関する。
【0017】
本発明の好ましい第5の態様では、本発明は、マクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、若しくはそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片を製造する方法であって、a)クロマトグラフィカラムに結合されたマクロH2A1.1ドメイン若しくはマクロH2A2ドメインを用いる、抗体を含む血清若しくは細胞培養上清のアフィニティ精製、又はb)マクロH2A1.1ドメイン若しくはマクロH2A2ドメインを用いてsc−Fvファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることを含む、方法に関する。
【0018】
本発明の好ましい第6の態様では、本発明は、本発明に記載の診断薬、及び/又は、本発明に記載のマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体若しくはそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片を、任意選択的に上記のように本発明に記載の方法を行うための追加の補助剤とともに具備する診断キットに関する。
【0019】
本発明の好ましい第7の態様では、本発明は、哺乳類患者の癌を治療する方法であって、上記のように本発明に記載の方法、並びに前記患者における癌再発のリスクが増大していると特定された患者の前記癌の再発、好ましくは転移性再発を治療及び/又は予防することを含む、方法に関する。
【0020】
本発明の好ましい第7の態様では、本発明は、本発明に記載の方法によってスクリーニングされる薬剤、並びに/又は、本発明に記載のマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、若しくはそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片、又は癌の予防、治療及び/若しくは診断、特に癌再発、好ましくはその転移性再発の予防、治療及び/若しくは診断のための本発明に記載のキットの使用に関する。
【0021】
本発明は、概して、ヒストンマクロH2A1.1及びマクロH2A2の発現が肺癌再発を予測するという発見に基づき、これらのヒストン変異体を、癌患者の改善されたリスク層別化のための新規な手段として同定する。マクロH2Aアイソフォームは、老化している細胞、すなわち既知の抗腫瘍メカニズムにおいて、発現上昇及び高発現し、マクロH2A1.1を、腫瘍における老化細胞に対する有用なバイオマーカーとして示唆する。マクロH2A1.1は、予後が良好な腫瘍においてより高発現する。
【0022】
さらに、本発明の関連において、マクロH2A1.1発現の予後相関が、癌患者予後を評価するために一般に用いられている増殖マーカーKi−67よりも優れていることが分かった。本発明者らは、マクロH2A1.1及びマクロH2A2の発現と腫瘍増殖率との間に強い負の相関を観察する。低速で増殖する腫瘍は、マクロH2A1.1及びマクロH2A2の高発現を示す傾向があり、一方で臨床的により悪性であることが多い、増殖指数が高い腫瘍は、発現がより低下若しくは減弱しているか、又は更には発現がない。
【0023】
したがって、本発明は、その第1の態様では、哺乳類患者における癌再発のリスクを診断する方法であって、前記患者から取得される生体試料においてマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現を検出することを含み、前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の低下又は減弱は、前記患者における肺癌再発のリスクの増大を示す、方法に関する。好ましくは、発現解析の結果(複数の場合あり)を、適切な装置で表示することができる。本発明の文脈では、マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の「低下」又は「減弱」とは、再発前の同じ患者か若しくは再発のリスクがない異なる患者、又は健康な患者若しくは患者群からの試料と比較して、マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現が減弱していることを意味するものとする。発現が低下又は減弱を確定する別の方策は、更に後述するように、好ましくはマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2に特異的な抗体を用いる組織学的スライドにおける染色の欠如である。更に別の方策は、発現マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2を、試料(複数の場合あり)のマクロH2A1.2の発現と比較することであり、本発明による方法の好ましい実施の形態では、発現は、前記試料及び/又は対照試料におけるマクロH2A1.2の発現に正規化される。この場合もまた、対照試料を、再発前の同じ患者か若しくは再発のリスクがない異なる患者、又は健康な患者若しくは患者群からの試料とすることができる。
【0024】
本発明は、その好ましい実施の形態において、哺乳類患者における癌再発のリスクを診断する方法であって、前記患者から取得される生体試料においてマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現を検出すること、及びマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の前記発現を対照試料と比較することを含み、前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の低下又は減弱は、前記患者における肺癌再発のリスクの増大を示す、方法に関する。好ましくは、発現解析及び/又は比較の結果(複数の場合あり)を、診断コンピューター等の適切な装置で表示又は出力することができる。
【0025】
本発明による方法のさらなる好ましい実施の形態では、マクロH2A1.1又はマクロH2A2の発現と無病生存期間との相関は、P<0.05、好ましくはP<0.01、より好ましくはP<0.006の重要性を有する。
【0026】
本発明による方法のさらなる好ましい実施の形態は、Ki−67等のさらなる癌マーカーの発現を検出することを更に含む。好ましくは、前記生体試料における前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現が、Ki−67の発現に逆相関する。
【0027】
本発明による方法の更に別の好ましい態様は、本発明による前記診断に基づく前記癌再発の予測工程を更に含む。本明細書で用いる「再発」とは、好ましくは腫瘍組織の発現及び転移等、患者の無病生存期間後の癌(複数の場合あり)のパラメータの臨床症状を指す。予測(又は可能性)は、例えば患者又は患者群の臨床パラメータ、腫瘍のタイプ等のような、さらなるパラメータを含むことも可能である。予測の結果を、好ましくは、適切な装置で表示することができる。
【0028】
本発明による方法を用いて、いかなるタイプの固形癌も診断することができる。したがって、前記癌が、固形癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、甲状腺癌、食道癌及び脳癌の群から選択される、本発明による方法が好ましい。乳癌又は肺癌の診断方法がより好ましい。
【0029】
本発明によるマーカーの発現の直接又は間接的検出が可能である限り、本発明による方法に対していかなる生体試料を用いることも可能である。したがって、生体試料は、肺腫瘍、乳腺腫瘍、腎臓腫瘍、肝臓腫瘍、頭頸部腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、胃腫瘍、結腸腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍及び脳腫瘍、全血、血清、血漿、尿、リンパ液、脳液、組織試料、並びに組織学的スライド等の調製された組織試料からの細胞群から選択することができる。前記試料が、手術中の患者から採取されるか又は血清試料である、本発明による方法が好ましい。
【0030】
そして、本発明による方法の別の好ましい態様は、マクロH2A1.1の発現に基づく、腫瘍における老化細胞、特に癌細胞の診断又はさらなる診断に関する。マクロH2A1.1が、多数の老化細胞を有していることが知られている齧歯動物の肺腺腫に豊富であるが、老化を克服し制御されない増殖を示す肺癌では、発現低下しているか又は存在していないという発見もまた、これらの結論と一貫し、抗腫瘍メカニズムとしての老化の概念を強調する。したがって、本発明による方法のこの好ましい態様では、発現を用いて、マーカーのマクロH2A1.1の発現に基づいて腫瘍における老化細胞、特に癌細胞の量又は比を概してモニタリングすることができる。老化細胞の量又は比は、患者の再発を示すものとして、化学療養又は放射線等の抗腫瘍治療の成功又は効果をモニタリングするため、又は、癌細胞の数が増大しているか否かを確認するために用いられる、腫瘍細胞の成長に対する指標である。他の老化マーカーを測定することもでき、前記マーカーを測定又は検出する方法は、当業者には既知であり、マーカーのマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2に対して本明細書に記載した通りである。
【0031】
本発明による方法との関連で、マーカーの発現を測定するのを可能にする当業者に既知であるいかなる方法も使用することができる。方法の選択は、発現が核酸及び/又はタンパク質レベルで測定されるか否かと、解析される試料とによって決まる。前記発現を検出することが、特に、本明細書に記載するように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、すなわち核酸増幅、特にrtPCR、マクロH2A1.1に特異的な抗体若しくはマクロH2A2に特異的な抗体を用いる、免疫組織化学染色(すなわちタンパク質レベル)、及び/又はmRNA解析を含む、本発明による方法が好ましい。
【0032】
そして、本発明の別の好ましい態様は、マクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な薬剤に対するスクリーニング方法であって、マクロH2A1.1又はマクロH2A2に潜在的に特異的な薬剤とマクロH2A1.1又はマクロH2Aを接触させること、及び前記薬剤が特にマクロH2A1.1又はマクロH2Aと結合するか否かを判断することを含む、方法に関する。スクリーニングの特定の方法は本技術分野において既知であり、例えば、In vitro Methods in Pharmaceutical Research, Academic Press, 1997及び米国特許第5,030,015号において論じられている。潜在的にマクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な前記薬剤が、化合物ライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、特にsc−Fvファージディスプレイライブラリにおいて、又は抗体のライブラリに存在する、本発明によるスクリーニング方法が好ましい。
【0033】
マクロH2A1.1又はマクロH2A2に潜在的に特異的な前記薬剤が診断薬及び/又は治療薬である、本発明によるスクリーニング方法が更に好ましい。すなわち、薬剤を、例えば哺乳類患者における癌再発のリスクを診断するか、若しくは老化細胞の量若しくは比をモニタリングする等、上述したような診断方法で用いることができるか、又は、例えば腫瘍細胞の老化を増大させるために用いることができる治療薬とすることができる。
【0034】
そして、本発明の別の態様は、本発明による方法によってスクリーニングされる、診断薬及び/又は治療薬に関する。この薬剤を、本発明によれば、上述したようにスクリーニングし、かつ前記薬剤を医薬的に許容可能な担体、賦形剤及び/又は安定剤と共に処方する方法を含む、医薬組成物を製造する方法において、医薬組成物内に処方することができる。任意にラベルを有する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及び/若しくは組換え抗体、又はそれらの機能的断片から選択される、本発明によるマクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な抗体である薬剤が好ましい。
【0035】
許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、採用される投薬量及び濃度において受容者に対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸等の緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤、防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノールアルコール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール及びm−クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の造塩対イオン、金属複合物(例えば、Zn−タンパク質複合物)並びに/又はTWEENTM、PLURONICSTM若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン界面活性剤を含む。
【0036】
そして、本発明の別の態様は、上記のように本発明による方法によってスクリーニングされる、診断薬及び/又は治療薬を含む上記のように製造される、医薬組成物又は医薬製剤に関する。
【0037】
そして、本発明の別の態様は、マクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、若しくはそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片を製造する方法であって、a)クロマトグラフィカラムに結合されたマクロH2A1.1ドメイン若しくはマクロH2A2ドメインを用いる、抗体を含む血清をアフィニティ精製する工程、又はb)マクロH2A1.1ドメイン若しくはマクロH2A2ドメインを用いてsc−Fvファージディスプレイライブラリをスクリーニングする工程を含む、方法に関する。これらの方法のそれぞれの詳細は、当業者には既知であり、本明細書に記載するように、例えば、a)の場合は、マクロH2A1.1ドメイン又はマクロH2A2ドメインに対して特異的な抗体を含むウサギ血清を使用し、又はb)の場合は組換えマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2ドメインを使用する。
【0038】
したがって、本発明の別の態様は、本発明による方法によって製造される、マクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、又はsc−Fv断片等、そのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片に関する。好ましくは、本発明による前記マクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な抗体は、任意にラベルを有する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及び/又は組換え抗体から選択される。本発明の文脈では、「マクロH2A1.1又は(若しくは)マクロH2A2に特異的な」とは、抗体が、マクロH2A1.1又はマクロH2A2のマクロドメインのエピトープと特異的に結合し、解析される試料内の他の抗原と交差反応性又は実質的な交差反応性を示さないことを意味するものとする。
【0039】
そして、本発明の更に別の態様は、本発明に記載の診断薬、及び/又は、本発明に記載のマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、若しくはそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片を、任意選択的に本発明に記載の方法を行うための追加の補助剤とともに具備する診断キットに関する。本キットは、好ましくは、本発明による方法を実行するために必要な化学物質、染料、緩衝剤等を含む。本キットはまた、解析のためのDNA又はタンパク質のチップ又はマイクロアレイとともに、診断の結果を表示及び解釈するためにマニュアル及びソフトウェア及び機械も含むことができる。
【0040】
そして、本発明の更に別の態様は、哺乳類患者の癌を治療する方法であって、本発明に記載の方法、並びに前記患者における癌再発のリスクが増大していると特定された患者の前記癌の再発を治療及び/又は予防することを含む、方法に関する。本明細書で用いる「治療(treatment)」は、治療的処置(therapeutic treatment)及び予防的(prophylactic又はpreventative)手段の両方を指し、目的は、標的となる病理学的状態又は疾患、特に癌再発を防止するか又は遅らせる(低下させる)ことである。治療を必要としている人には、すでに疾患がある人と、疾患がある傾向のある人又は疾患を予防すべき人とが含まれる。治療は、補助治療と治療未経験者の一次(first line)治療との両方を含むことができ、治療を、化学療法及び/又は放射線等の他の抗癌方策と組み合わせることができる。
【0041】
前記治療が、その治療を必要としている前記患者に、好ましくは上記のような医薬組成物の形態である、上述したように本発明の方法によってスクリーニングされる薬剤を投与することを含む、本発明による哺乳類患者の癌を治療する方法が好ましい。好ましい薬剤は、上述したような小型化学分子若しくは抗体又はそれらの断片である。
【0042】
本発明による哺乳類患者の癌を治療する方法であって、マクロH2A1.1の発現に基づいて、前記治療に応じて腫瘍における老化細胞、特に癌細胞の量及び/又は比をモニタリングすることを更に含む、方法が更に好ましい。マクロH2A1.1が、多数の老化細胞を有していることが知られている齧歯動物の肺腺腫に豊富であるが、老化を克服し制御されない増殖を示す肺癌では、発現低下しているか又は存在していないという発見もまた、これらの結論と一貫し、抗腫瘍メカニズムとしての老化の概念を強調する。したがって、本発明による方法のこの好ましい実施の形態では、発現を用いて、マーカーのマクロH2A1.1の発現に基づいて腫瘍における老化細胞、特に癌細胞の量又は比を概してモニタリングすることができる。老化細胞の量又は比は、患者の再発を示すものとして、化学療養又は放射線等の抗腫瘍治療の成功又は効果をモニタリングするため、又は癌細胞の数が増大しているか否かを確認するために用いられる、腫瘍細胞の成長に対する指標である。他の老化マーカーを測定することもでき、前記マーカーを測定又は検出する方法は、当業者には既知であり、マーカーのマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2に対して本明細書に記載した通りである。
【0043】
本発明によって治療される癌を、固形癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、甲状腺癌、骨癌、食道癌及び脳癌から選択することができ、好ましくは乳癌及び/又は肺癌である。示す癌はまた、その転移形態も含む。
【0044】
そして、本発明の更に別の態様は、本発明による方法によってスクリーニングされる薬剤、並びに/又は、本発明によるマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、若しくはそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A1に特異的な断片、又は、癌の予防、治療及び/若しくは診断のため、特に癌再発、特に乳癌及び/若しくは肺癌再発の予防、治療及び/若しくは診断のための、若しくは癌の予防、治療及び/若しくは診断のため、特に癌再発、特に乳癌及び/若しくは肺癌再発の予防、治療及び/若しくは診断のための薬物の製造のための、本発明によるキットの使用に関する。
【0045】
前記癌は、固形癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、甲状腺癌、骨癌、食道癌及び脳癌の群から選択され、好ましくは乳癌及び/又は肺癌である、本発明に記載の使用が好ましい。示す癌はまた、その転移形態も含む。
【0046】
ヒストンは、別個の細胞タイプにおいて同様のレベルで存在するものと想定されることが多い。ヘテロクロマチンのヒストン変異体マクロH2Aは、いくつかの分子及び細胞の構造的特徴では特異である。構造レベルにおいて、マクロH2Aは、大型C末端伸長、マクロドメイン、およそ25kDaの球状モジュールを有し、マクロH2A1.1の場合、特異性の高いADPリボースを結合する(Kustatscher他、2005)。さらに、すべての脊椎動物で観察されるマクロH2Aと、小分子を結合することができない、マクロH2A1.2として知られるマクロH2A1に対する第2のスプライス変異体とに対する2つの遺伝子がある。ここで、本発明者らは、すべてのマクロH2Aアイソフォーム(マクロH2A1.1、マクロH2A1.2及びマクロH2A2)に対してポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を開発し、これらの抗体を用いて、培養された細胞においてかつin vivoでマクロH2Aヒストンの細胞局在化及び存在量を研究した。本発明者らは、マクロH2Aが、複製老化した一次線維芽細胞において発現上昇することが分かった。さらに、ヒトの癌においてマクロH2A1.1の発現とKi−67との間の強い負の相関がある。急速に細胞分裂する腫瘍(増殖マーカーKi−67の高発現によってマークされる)は、低レベルのマクロH2A1.1を表し、分裂指数の低い腫瘍は、ヒストンが豊富である。両発見は、マクロH2A1.1が、細胞の分化の程度に相関し、細胞周期から出た細胞をマークするということを論じている。
【0047】
マクロH2A1.1が、多数の老化細胞を有していることが知られている齧歯動物の肺腺腫に豊富であるが、老化を克服し制御されない増殖を示す肺癌では、発現低下しているか又は存在していないという発見もまた、これらの結論と一貫し、抗腫瘍メカニズムとしての老化の概念を強調する。有意に、本発明者らは、マクロH2A1.1レベルが、肺癌における腫瘍再発のリスクに対して優れた予測因子であることが分かる。本発明者らが解析することができる明確な数の患者では、マクロH2A1.1レベルは、一般的な増殖マーカーであるKi−67との相関に対して統計的に優れていることが分かった(マクロH2A1.1の場合はP=0.0058、Ki−67の場合はP=0.07983)。
【0048】
乳癌組織アレイに対する現時点で利用可能な患者情報は、マクロH2A1.1レベルと臨床転帰との相関を評価するには不十分である。肺腫瘍からのデータに基づいて、マクロH2A1.1は、乳癌においても有用な予後バイオマーカーであるように見える。さらなる検査により、他の癌におけるその有用性が明らかになる。
【0049】
細胞老化中のマクロH2A1.1遺伝子産物の発現上昇及び発癌におけるその役割を確認するメカニズムは、未だ解明されていない。予備的証拠は、mRNAレベルが老化中は変化しないことを示唆し、転写後プロセスはマクロH2A1.1の発現上昇を考慮することができることを示唆する。
【0050】
無病生存期間と共にマクロH2A1.1発現を統計的に支持されて観察することにより、癌、特に肺癌患者における再発のリスクの改善された層別化の可能性が広がり、その観察を、より大きい患者集団で繰り返すべきである。将来の研究は、マクロH2A1.1発現上昇がヒトの腫瘍における老化細胞の一般的な特徴であるか否かと、高いマクロH2A1.1染色が、概して腫瘍細胞における細胞分化の程度を反映するか否かとについてさらなる洞察を提供するであろう。本発明の新たなツールは、ハイリスク型の癌、特に乳癌又は肺癌患者の特定を改善し、したがって、予後が厳しい癌において治療方策のより優れた標的化を可能にする。
【0051】
ここで、本発明を、添付図面を参照して以下の実施例で、ただしそれに限定されずに、更に説明する。本発明の目的で、本明細書に列挙するすべての参照文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】マクロH2Aアイソフォームの発現が増殖に相関することを示す図である。(a)260の乳癌試料のセットにおけるヒストン変異体の増殖指数及びレベルが、増殖マーカーKi−67、マクロH1A1.1、マクロH2A1.2及びマクロH2A2に対する抗体を用いて免疫組織化学によって確定される。Ki−67は、コア内のすべての腫瘍細胞に対してポジティブ染色された腫瘍細胞のパーセンテージとしてスコアリングされた。マクロH2A1.1の発現レベルは、半定量的に確定された(スコアリング:0〜1、ネガティブ/弱染色;1〜2、中染色;2〜3、強い核陽性)。(b)増殖指数の増大により低減するマクロH2A1.1の発現を示す箱ひげ図(P<0.001)。(c)同じ相関がマクロH2A2に対して観察される。マクロH2A1.2は、これらの試料において高レベルで遍在的に発現する。
【図2】マクロH2A1.1発現が癌、好ましくは肺癌再発を予測することを示す図である。(a)肺腫瘍の増殖指数は、Ki−67に対する抗体を用いて免疫組織化学によって確定される。(b)マクロH2A1.1の発現レベルは増殖指数の増大により低下する(P<0.001)。(c)発現レベルは、肺腫瘍試料における無病生存期間との著しい相関を示す(P=0.0058)。
【図3】マクロH2Aアイソフォームが老化中に発現上昇することを示す図である。(a)K−Ras+/LSLC12Vgeoノックインマウスの肺におけるマクロH2A1アイソフォームの発現。マクロH2A1.1レベル(上部パネル)及びマクロH2A1.2レベル(下部パネル)の免疫組織化学的検出は、低異形度腺腫(L)及び高悪性度胎児肺型腺癌(H)の両方を含むパラフィン包理肺組織の連続部分において解析された。マクロH2A1.1発現は、低異形度腺腫において老化中に豊富である。(b)増殖している(小核)W138一次線維芽細胞及び老化を示す(拡大した核)W138一次線維芽細胞。マクロH2A1.1及びマクロH2A1.2は、SAHF(senescence-associated heterochromatic foci)に局在化し、老化細胞においてより高いレベルで発現する。対照的に、標準的な(canonical)ヒストンH2Aは、老化によって変化しない。(e)老化ITM細胞中のマクロH2A1発現上昇のウエスタンブロットは、タモキシフェンアナログ4OHTの添加時に、同時に癌遺伝子によって老化が誘発されるように設計された一次線維芽細胞である(Collado他、2005)。本発明者らは、老化細胞におけるマクロH2A1の上昇レベルを一貫して観察する。標準的なヒストンH2A及びH3のタンパク質レベルは、老化細胞では僅かに低下する。
【図4】3つのマクロH2Aアイソフォームに対するアフィニティ精製された抗体の特異度を示すウエスタンブロットを示す図である。HAタグ付きマクロH2Aアイソフォームは、HEK293細胞において発現し、ウエスタンブロット解析のために全細胞抽出物が投入された。
【図5】260の乳癌試料のセットにおけるマクロH2Aアイソフォームの発現を示す図である。(a)ヒストン変異体の増殖指数及びレベルは、Ki−67、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2、マクロH2A2に対する抗体を用いて免疫組織化学によって確定される。(b)マクロH2A1.1の発現レベルが増殖指数の増大により低下することを示す箱ひげ図(P<0.001)。(c)マクロH2A2アイソフォームに対して同じ相関が観察される。マクロH2A1.2が、これらの試料において高レベルで遍在的に発現することに留意されたい。
【図6】肺癌におけるマクロH2A2の発現レベルを示す図である。(a)ヒストン変異体の増殖指数及び発現レベルは、Ki−67及びマクロH2A2の免疫組織化学的検出によって確定される。(b)マクロH2A2の発現レベルは、増殖の増大により低下する(P<0.001)。(c)マクロH2A2の発現レベルは腫瘍再発に相関する(P=0.04146)。
【図7】マクロH2A1.2が大部分の肺腫瘍において高レベルで発現することを示す図である。増殖指数、ヒストン変異体の発現及びコアヒストンは、Ki−67、マクロH2A1.2及びH3の免疫組織化学的検出によって確定される。マクロH2A1.2発現とKi−67発現との間に相関はなく、すべての細胞においてヒストンH3が強く発現する。
【符号の説明】
【0053】
図1
macro マクロ
in percent パーセント
Sample, Patient 試料、患者
protein expression level タンパク質発現レベル
図2
macro マクロ
in percent パーセント
Sample, Patient 試料、患者
Provability 確率
protein expression level タンパク質発現レベル
Disease-free survival time (in months) 無病生存期間(月)
図3
macro マクロ
Antibody 抗体
Overlay オーバーレイ
anti 抗
図4
Empty vector 空ベクター
Anti-macro 抗マクロ
図5
Histone ヒストン
Sample, Patient 試料、患者
図6
macro マクロ
Sample, Patient 試料、患者
in percent パーセント
Provability 確率
protein expression level タンパク質発現レベル
Disease-free survival time (in months) 無病生存期間(月)
図7
macro マクロ
Sample, Patient 試料、患者
【発明を実施するための形態】
【0054】
配列番号1から配列番号8は、以下の実施例で用いられるオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【実施例】
【0055】
物質及び方法
ヒストン及びmRNA抽出、ウエスタンブロッティング並びにリアルタイムPCR
スイッチ可能なMEK1−ER融合タンパク質を発現するITM細胞の生成について上述した。40HTあり又はなしでのインキュベーションの後、細胞を採取し分注した。1つの細胞アリコットを、0.4M HCl内に再懸濁させ、4時間インキュベートしてヒストンタンパク質を抽出し、遠心分離して、水に透析した。RNeasy Mini Prepキット(Qiagen)を用いてRNAを抽出した。RNAeasyスピンカラムのフロースルーから、アセトンによりタンパク質を沈殿させた。タンパク質抽出物を、投入前にブラッドフォード(Bradford)アッセイにより正規化した。アイソフォーム特異的なマクロH2A抗体とともに、H2Aに対する市販の抗体(Abcam、ab15653、1:3000)及びH3に対する市販の抗体(Abcam、ab1791、1:30000)を用いて、ウエスタンブロットを行った。Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、第一鎖cDNA合成を行った。cDNAを、以下のオリゴを用いてリアルタイムPCR(Applied Biosystems)によって連続的に解析した。
mH2A1.1 AAGTTGTACAGGCTGACATTGC(配列番号1);
GTTCTTTTTCCGGAGTTCCA(配列番号2)、
mH2A1.2 CTTTGAGGTGGAGGCCATAA(配列番号3);
CACAAACTCCTTGCCACCTT(配列番号4)、
mH2A2 GGACGTCCAAAAAGTCCAAA(配列番号5);
GCTTCTGTCCCAGAACAAGG(配列番号6)、
and GAPDH TGGGTGTGAACCATGAGAAGTA(配列番号7);
CCTTCCACGATACCAAAGTTGT(配列番号8)。
試料を、本発明者らが試験実行におけるこれらの実験に対して信頼性の高い対照として事前に同定したGAPDHに正規化した。
【0056】
抗体の生成
マクロH2A1.1(アミノ酸198〜226)及びマクロH2A1.2(アミノ酸198〜228)を発現させ、GST融合タンパク質として精製した。マクロH2A2(アミノ酸162〜372)のマクロドメインを、(His)6−タグ融合タンパク質として精製した。抗原をウサギ(Eurogentec)に注入した。製造業者の指示に従って、HiTrap Protein−G HPカラム(GE Healthcare Life Sciences)を用いてウサギ血清から抗体を回収した。3つのマクロH2Aアイソフォームの組換え(His)6−タグ付きマクロドメインを、HiTrap NHS活性化HP(GE Healthcare)に結合した。これらのカラムを、後に、アイソフォームに特異的な抗体のアフィニティ精製に用いた。
【0057】
乳癌組織マイクロアレイ
National Center of TumorDiseases(NCT)、Heidelberg、Germanyによって、乳癌TMAが提供された。それらは、異なるブロックに分散された、各スライドに患者当り2つの試料で、260人の患者のホルマリン固定されかつパラフィン包理された試料を含んでいた。すべての乳癌患者は女性、中央年齢は58歳(範囲、30歳〜88歳)であった。これらの患者に関する臨床データは、さらなる解析には不十分であった。
【0058】
肺癌患者及び肺組織マイクロアレイ
Thoraxklinik Heidelberg、Germany及びNCTによって肺癌TMAが提供された。スライドは、切除可能であることが分かり、かつ2004年3月から12月の間に手術を受けた、NSCLCの41人の患者の試料を含んでいた(23人が腺腫、18人が扁平上皮癌)。
【0059】
手術中に収集されたこれらの患者の試料をホルマリン固定しパラフィン包理し、対照試料も含むTMAを構成するために用いた。品質の理由で、2人の患者の試料は解析することができず、そのため、解析には39人の患者の試料が含まれていた。研究対象集団の臨床的特徴について表1を参照されたい。人的資源の収集及び使用が、地域の倫理委員会によって承認された(ethical vote #270/2001、2005年更新)。患者からはインフォームドコンセントを得た。
【0060】
(表1)非小細胞肺癌研究対象集団の特徴
特徴 中央(範囲)/度数
性別(男/女) 31/8
診断時の年齢(歳) 64(43-80)
全身状態(0/1/2) 28/11/0
腫瘍細胞タイプ(AC/SCC) 22/17
手術のタイプ(LO-BI-PN) 26/2/11
切除状態(R0/R1/R2) 32/5/2
疾患の病期(手術後)(Ia/Ib/IIa/IIb/IIIa/IIIb/IV)
1/11/0/4/13/6/4
1年以内の腫瘍再発(y/n) 18/21

(AC:腺癌、SCC:扁平上皮癌、BI:二葉切除、LO:肺葉切除、PN:肺全摘出)

R2切除患者のうち、1人が再発(遠隔転移)、1人が再発なく生存、R1切除患者のうち、3人が再発(2人は局所転移、1人は遠隔転移)、2人は再発なく生存、R0切除患者のうち、15人が再発、17人が再発なく生存。

【0061】
免疫組織化学
連続TMAスライドを用いて、マクロH2A1.1、マクロH2A1.2、マクロH2A2、Ki−67(Dako Cytomation、モノクローナルマウス抗ヒトKi−67、クローンMIB−1、1:100)及びヒストンH3(Abcam;ab1791;1:1000希釈液)に対する免疫組織化学染色を行った。Aperio Scanscope System及びImageScopeソフトウェアを用いてDepartment of Pathology(HeidelbergUniversity)でスライドをスキャンした。
【0062】
マクロH2Aの発現レベルを、スコアリング:0〜1、ネガティブ/弱染色;1〜2、中染色;2〜3、強い核陽性を用いて、半定量的に評価した。増殖指数を、増殖マーカーKi−67に対する抗体を用いて確定し、コア内のすべての腫瘍細胞とのポジティブ染色された腫瘍の比較のパーセンテージとしてスコアリングした。すべてのスライドを盲目的に評価しかつスコアリングし、2回繰り返した。
【0063】
マウス腫瘍におけるマクロH2Aアイソフォームの解析のために、活性化された7か月〜9か月のK−Ras P/G12Vgeoマウスからの肺(Guerra他、2003)を解剖し、10%緩衝ホルマリン(Sigma)に固定し、パラフィンで包理した。連続した3mm〜5mm厚さの切除部分を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、マクロH2A1.1抗体及びマクロH2A1.2抗体(1:75希釈液)を用いて免疫組織化学染色に対して処理した。肺病変の重症度分類を、専門家の病理医によってマウス肺癌に対して最新の形態学的に許容される基準に従って行った(Jacson他、2005)。グレード1〜3新生物が腺腫(良性病変)と分類され、グレード4〜5が腺癌(悪性病変)として分類された。
【0064】
統計的分析
Ki−67とマクロH2A1.1との関係を、アレイによって層別化された条件付き線形関連検定(conditional linear association test)を用いて評価した(Hothorn他、2006)。無病生存期間の依存度を、同様にアレイで層別化された条件付きログ−ランク検定(long-rank test)によって確立した(Hothorn他、2006)。
【0065】
2つのヒトマクロH2A遺伝子に対して3つの遺伝子産物があり、すべてがN末端H2A状フォールド及びC末端マクロドメインを含む。マクロH2A1.1及びマクロH2A1.2は、H2AFY遺伝子産物の選択的スプライシング(alternative splicing)を通して生成され、マクロH2A2は第2の遺伝子H2AFY2によってコード化される。in vitroで、他のアイソフォームではなくマクロH2A1.1のマクロドメインがADPリボース及び関連するNADメタボライトを結合する(Kustatscher他、2005)。本発明者らは、種々のマクロH2Aアイソフォームを検出し識別するために特異的な抗体を生成した(図4)。
【0066】
マクロH2A1.1発現を、分化した非増殖性組織に制限することができることが示唆された(Pehrson他、1997)。マクロH2A1.1タンパク質発現と細胞増殖とのあらゆる相関を解析するために、本発明者らは、260人の患者の乳癌試料を含む組織マイクロアレイ(TMA)に対して免疫組織化学染色を行った(図1)。本発明者らは、コア内のすべての腫瘍細胞におけるマクロH2A及び増殖マーカーKi−67の発現レベルを評価した。ヒストンH3染色は陽性対照としての役割を果たし、コア内のすべての細胞において強い核染色を示した(図5)。本発明者らは、アレイによって層別化された条件付き線形関連検定を用いてKi−67発現とマクロH2A1.1発現との関係を評価した。本発明者らは、マクロH2A1.1発現がKi−67レベルと非常に相関しており(P<0.001)、Ki−67陽性癌細胞の増大によるマクロH2A1.1の減少を示すことが分かる。マクロH2A2に対して同様の関係が観察され(P<0.001)、マクロH2A1.2はこれらの腫瘍において遍在的に発現する(図1)。後者は、一部には、マクロH2A1.2に対する抗体のアフィニティが高いためである可能性があり、それにより、発現レベルの僅かな変化を比較することが困難になる可能性がある。しかしながら、明らかに、本発明者らがマクロH2A1.2に対する非常に変化する発現レベルを認識し識別することができる組織がある(骨格筋等)。
【0067】
これらのアッセイは、スプライス変異体マクロH2A1.1の発現が、低い増殖指数を示している腫瘍に限定されることを確立している。
【0068】
細胞増殖レベル及びマクロH2A1.1レベルが、ヒト腫瘍のセットにおいて完全な臨床パラメータといかに相関するかを検査するために、本発明者らは、切除可能であることが分かりかつ手術を受けた39人のNSCLC患者(22人が腺癌、17人が扁平上皮癌、表1)からの試料をスコアリングした。手術の1年以内に、腫瘍は18人の患者で再発し、21人の患者は再発がないままであった。本発明者らが乳癌及び他の癌アレイにおいて観察するものと同様に、肺腫瘍アレイの統計的分析により、マクロH2A1.1発現が、Ki−67レベルと強く相関しており(P<0.001)、Ki−67陽性癌細胞の増大により低減することが明らかになる(図2a及び図2b)。これは、マクロH2A1.1が、細胞周期を出た細胞に対するマーカーであるという証拠を立証している。
【0069】
この概念を更に検査するために、本発明者らは、K−RasG12Vによって誘発される腫瘍老化のマウスモデルから免疫組織化学的部分を解析した(Guerra他、2003)。染色により、対応する悪性腺癌と比較して(図3a)、前癌状態腺腫病変におけるより高いマクロH2A1.1発現が明らかになり、そこでは、ホールマークは多数の老化細胞である(Braig他、2005;Chen他、2005;Collado他、2005)。対照的に、スプライス変異体であるマクロH2A1.2は、腺腫及び腺癌において同様のレベルで発現する。この発現パターンにより、マクロH2A1.1が癌遺伝子によって誘発された老化マーカーとして定義される。
【0070】
マクロH2A1.1発現による無病生存期間の依存度があるか否かを特定するために、本発明者らは、アレイによって層別化される条件付きログ−ランク検定を行った(Hothorn他、2006)。
【0071】
興味深いことに、それにより、マクロH2A1.1発現と無病生存期間との間の著しい相関が明らかになる(P=0.0058)。肺腫瘍試料においてマクロH2A1.1レベルが低い患者は、核マクロH2A1.1染色が強い患者よりも再発する可能性が高い(図2c)。マクロH2A2の発現に対して、同様であるがより弱い相関もまた観察される(P=0.04146;図6)。対照的に、遍在的に発現するマクロH2A1.2(図7)は、腫瘍再発に対して予後相関を示さない。一般的な増殖マーカーKi−67の発現は、無病生存期間との著しい相関は示さない(P=0.07983)ことに留意されたい。したがって、本発明者らの免疫染色及び臨床データは、ヒストンマクロH2A1.1を、肺癌再発の新規で優れた、かつ潜在的に有用なバイオマーカーとして同定する。
【0072】
老化中のヘテロクロマチンヒストンマクロH2Aを更に特徴付けるために、本発明者らは、一次線維芽細胞の免疫蛍光染色を行い、マクロH2A1アイソフォームが複製老化中に発現上昇することを観察する。マクロH2A1.1は、老化前細胞及び老化細胞においてより高いレベルで発現するとともに、老化細胞においてSAHFに局在化する。同様に、マクロH2A1.2もまた、標準的なヒストンH2A等の対照タンパク質とは対照的に発現上昇する。さらに、SAHFにおいてマクロH2Aの高濃度は、SAHFクロマチンの凝縮した特質の単なる結果ではなく、それは、細胞マクロH2A高濃度及びSAHFの取込みが、高濃度DAPIのヘテロクロマチン構造の形成より低速な動態に従うためであり、このことは、以前の報告(Zhang他、2005)を裏付ける。この発見は、hTERT及びMEK:ER(ITMcells;Collado他、2005)を表すヒト正常二倍体線維芽細胞IMR90に対してウエスタンブロットによって支持される。このシステムにより、MEKキナーゼ、すなわちRasによって誘発される老化の下流エフェクターのスイッチ可能な活性化が可能になる。結果は、老化細胞におけるマクロH2A1.1及びマクロH2A1.1ヒストンタンパク質の発現上昇を示す(図3c)。対照的に、標準的なヒストンH2Aは、老化の誘発時に緩やかに発現低下するように見える。
【引用文献】
【0073】
BraigM. Lee S, Loddenkemper C. Rudolph C, Peters AH, Schlegelberger B et al. (2005).Oncogene induced senescence as an initial barrier in lymphoma development.Nature 436: 660-665.
Chen Z, Trotman LC, Shaffer D, Lin HK, Dotan ZA,Niki M et al. (2005). Crucial role of p53-dependent cellular senescence insuppression of Pten-deficient tumorigenesis. Nature 436: 725-730.
Collado M, Gil J, Efeyan A;Guerra C, Schuhmacher AJ, Barradas M et al. (2005). Tumour biology: senescencein premalignant tumours. Nature 436: 642.
Collado M, Serrano M. (2006). The power and thepromise of oncogene-induced senescence markers. Nat Rev Cancer 6: 472-476.
D'Amico TA. (2008). Molecular biologic stagingof lung cancer. Ann Thorac Surg 85: S737-S742.
Guerra C, Mijimolle N,Dhawahir A, Dubus P, Barradas M, Serrano M at al. (2003). Tumorinduction by an endogenous K-ras oncogenes is highly dependent on cellularcontext. Cancer Cell 4: 111-120.
Hayflick L. (1965). The limited in vitrolifetime of human diploid cell strains. Exp Cell Res 37: 614-636.
Hothorn, T., Hornik, K., Van de Wiel, M.A. &Zeileis, A. A Lego system for conditional inference. American Statistician 60,257-263 (2006).
Jackson EL, Olive KP, Tuveson DA, Bronson R,Crowley D, Brown M at al. (2005). The differential effects of mutant p53alleles on advanced murine lung cancer. Cancer Res 65: 10280-10288.
Jemal A, Siegel R, Ward E, Murray T, Xu J, ThunMJ. (2007). Cancer statistics, 2007. CA Cancer J Clin 57: 4366.
Kustatscher G, Hothorn M. Pugieux C, ScheffiekK, Ladurner AG. (2005). Splicing regulates NAD metabolite binding to histonemacroH2A. Nat Struct Mol Biol 12: 624-625.
Michaloglou C, Vredeveld LC, Soengas MS,Denoyelle C, Kuilman T, van der Horst CM et al. (2005). BRAFE600-associatedsenescence-like cell cycle arrest of human naevi. Nature 436: 720-744.
Narita M, Nuner S, Heard E, Narita M, Lin AW,Hearn SA at al. (2003). Rb-mediated heterochromatin formation and silencing ofE2F target genes during cellular senescence. Cell 113: 703-716.
Pehrson JR. Costanzi C. Dharia C. (1997)Developmental and tissue expression patterns of histone macroH2A1 subtypes. JCell Biochem 65: 107-113.
Pehrson JR, Fried VA. (1992). MacroH2A, a corehistone containing a large nonhistone region. Science 257: 1398-1400.
Serrano M, Lin AW; McCurrach ME, Beach D, LoweSW. (1997). Oncogenic ras provokes premature cell senescence associated withaccumulation of p53 and p16INK4a. Cell 88: 593-602.
Zhang R; Poustovoitov MV, Ye X, Santos HA; ChenW; Daganzo SM at al. (2005). Formation of MacroH2A-containing senescenceassociated heterochromatin foci and senescence driven by ASF1a and HIRA. Dev.Cell 8: 19-30.
Zhu CQ, Shih W, Ling CH; Tsao MS. (2006).Immunohistochemical markers of prognosis in non-small cell lung cancer: areview and proposal for a multiphase approach to marker evaluation. J ClinPatho1 59: 790-800.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類患者における癌再発のリスクを判定するための測定方法であって、前記患者から取得される生体試料においてマクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現を検出することを含み、前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の発現の低下又は減弱は、前記患者における癌再発のリスクの増大を示す、方法。
【請求項2】
前記発現が、前記試料及び/又は対照試料におけるマクロH2A1.2の発現に正規化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マクロH2A1.1又はマクロH2A2の発現と無病生存期間との相関が、P<0.05、又はP<0.01、又はP<0.006である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記癌が、固形癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、甲状腺癌、食道癌及び脳癌の群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記生体試料が、肺腫瘍、乳腺腫瘍、腎臓腫瘍、肝臓腫瘍、頭頸部腫瘍、前立腺腫瘍、膵臓腫瘍、胃腫瘍、結腸腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍及び脳腫瘍、全血、血清、血漿、尿、リンパ液、胸膜液並びに脳液からの細胞の群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
さらなる癌マーカーであるKi−67の発現を検出することを更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料における前記マクロH2A1.1及び/又はマクロH2A2の前記発現が、Ki−67の発現に逆相関する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
マクロH2A1.1の発現に基づく、該腫瘍における老化細胞、又は癌細胞の測定を更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定に基づく前記癌再発の予測を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が、手術中の患者から採取される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
発現を検出することが、PCR若しくはrtPCR、マクロH2A1.1に特異的な若しくはマクロH2A2に特異的な抗体を用いる免疫組織化学染色、及び/又はmRNA解析を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
マクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な薬剤に対するスクリーニング方法であって、マクロH2A1.1又はマクロH2A2に潜在的に特異的な薬剤とマクロH2A1.1又はマクロH2Aを接触させること、及び前記薬剤が特にマクロH2A1.1又はマクロH2Aと結合するか否かを測定することを含む、方法。
【請求項13】
マクロH2A1.1又はマクロH2A2に潜在的に特異的な前記薬剤が、化合物ライブラリ、ファージディスプレイライブラリ、sc−Fvファージディスプレイライブラリ、又は抗体のライブラリに存在する、請求項12に記載のスクリーニング方法。
【請求項14】
マクロH2A1.1又はマクロH2A2に潜在的に特異的な前記薬剤が、診断薬及び/又は治療薬である、請求項12又は13に記載のスクリーニング方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法に従ってスクリーニングされた診断薬及び/又は治療薬。
【請求項16】
マクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、又はそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片を製造する方法であって、
a)クロマトグラフィカラムに結合されたマクロH2A1.1ドメイン若しくはマクロH2A2ドメインを用いる、抗体を含む血清若しくは細胞培養上清をアフィニティ精製する工程、又は
b)マクロH2A1.1ドメイン若しくはマクロH2A2ドメインを用いてsc−Fvファージディスプレイライブラリをスクリーニングする工程、
を含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって製造された、マクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、又はそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片。
【請求項18】
任意にラベルを有する、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及び/又は組換え抗体から選択される、請求項17に記載のマクロH2A1.1又はマクロH2A2に特異的な抗体。
【請求項19】
請求項15に記載の診断薬、及び/又は、請求項17又は18に記載の、マクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、又はそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片を、任意選択的に請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を行うための追加の補助剤とともに具備する診断キット。
【請求項20】
哺乳類患者の癌を治療する方法であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法、並びに患者における癌再発のリスクが増大していると特定された前記患者の前記癌の再発を治療及び/又は予防することを含む、方法。
【請求項21】
前記治療が、該治療を必要とする前記患者に対する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法に従ってスクリーニングされた薬剤の投与を含む、請求項20に記載の哺乳類患者の癌を治療する方法。
【請求項22】
マクロH2A1.1の発現に基づいて、前記治療に応じて該腫瘍における老化細胞又は癌細胞の量及び/又は比をモニタリングすることを更に含む、請求項20又は21に記載の哺乳類患者の癌を治療する方法。
【請求項23】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法によってスクリーニングされる薬剤、並びに/又は、請求項16又は17に記載のマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な抗体、又はそのマクロH2A1.1若しくはマクロH2A2に特異的な断片、又は癌の予防、治療及び/若しくは診断、又は癌再発の予防、治療及び/若しくは診断のための請求項19に記載のキットの使用。
【請求項24】
前記癌が、固形癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、前立腺癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、甲状腺癌、食道癌及び脳癌の群から選択される、請求項23に記載の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−531612(P2012−531612A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518798(P2012−518798)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004008
【国際公開番号】WO2011/000573
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(509064820)
【出願人】(512003858)ソラックスクリニック−ハイデルベルク ゲーゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】