説明

ヒトまたは動物の組織に影響する疾患のインビトロ診断法

本発明は、ヒトまたは動物の組織に影響する疾患のインビトロ診断法に関し、特にヒトまたは動物における炎症および線維症が関与する疾患の診断に関し、より具体的には肝臓の疾患に関する。
より具体的には、本発明は、慢性炎症性の疾患により影響されるヒトまたは動物の組織における異常な形態学的な状態を「インビトロ」で診断するための方法であって、ヒトまたは動物の体のバイオプシーサンプルのイメージを観察することを含み、前記異常な状態を決定でき、前記異常な形態学的な状態を計量的に定量でき、前記計量的に定量する工程が線維性の及び炎症性組織の程度を以下の手段で検出することを含む方法に関する:
i) フラクタル補正された境界線(Pf)および/またはコラーゲン島の領域(Af)を計算すること、および
ii) クラスターの炎症細胞のパーセンテージ領域を式 ACINF/AB.100の手段で計算すること、
式中のACINFはクラスターに属している炎症細胞の実際の領域であり、ABはバイオプシーサンプルの領域である。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の組織に影響する疾患のためのインビトロ診断法に関し、特にヒトまたは動物における炎症および線維症が関与する疾患の診断に関し、より具体的には肝臓の疾患に関する。
【0002】
本発明は、コラーゲンスポットおよび炎症量(inflammation mass)が本発明の方法によって定量されるコラーゲンを含んでいる組織の生検サンプル(bioptic sample)の検査によるヒトまたは動物の異常な形態学的な状態の診断に関する。「異常な状態(abnormal condition)」の用語は、異常な形態計測が認識できる病理学的な条件またはプレまたはポスト病理学的な状況を生じる状態を意図する。係る異常な状態は、例えば、腫瘍学的な疾患, 浮腫, 血腫, 急性または慢性の炎症性の病変(lesions)およびコラーゲン疾患であってもよい。
【0003】
本発明の特定の態様において、患部の組織は肝臓の組織である。
【0004】
[背景技術]
慢性肝炎Cの抗ウイルス性の治療は、高価で病気の僅か50%に有効であり、時折望まれない大きな副作用を伴う。従って、治療する患者を選択するための判定基準は、対策が生検標本中で観察される炎症性の病変(類別)および線維症(病期分類)を評価することによって探求されるものにおいて中心的な問題である。
【0005】
現在、多くの肝臓の疾患は、典型的な洗練された定性的な方法を用いて生検で評価されることが知られている。生検サンプル一つによって、いまだに慢性肝炎の診断を処方する情報を最も多くえるために最も効果的な手段であり、これによって他の疾患が排除され、予後が仮定され、治療上プロトコールが規定される。しかしながら、生検サンプルをとることは、費用が高いうえ、リスクはなくなっておらず、その結果は現実的な測定値が表されない限り信頼のおけるものではなく、主観的な重症度の半定量的カテゴリーのみである。そのうえ、評価は全体的に病理学者のスキルに依存し、主観的な重症度の半定量的カテゴリーのみである。
【0006】
最近提案された、肝臓炎症の進展と関連する分子の血液レベルを測定することによる肝臓の組織炎症を評価する代替的な方法(トランスアミナーゼレベルの測定の使用を含む)によって、疾患の進行との意味のある関係(univocal relationship)は示されていない。
【0007】
従って、なおも長期の肝臓プロセスの進展の評価に不確実性が存在している。重要な因子は、線維症(即ち、慢性肝炎の組織学的なパターンにおいて共通して観察可能な病変)の評価であることが証明されている。(門脈間隙に伝播する高度に不規則な傷跡の形態において)コラーゲンが確認可能な量で存在することは、壊死性の炎症の中心に起因する門脈の炎症の結果である。新しく形成されたコラーゲンは、薄いファイバーまたは多様に厚いセットへと成長し、実質(parenchyma)を乾燥させる。疾患のより高度な段階において、線維のセットは、門脈間(portal-portal)および中心門脈間(central-portal)のリンクを形成する。
【0008】
肝臓の疾患段階の評価における上記の不確実性の主な源は、肝臓の組織に存在する線維症を評価するために使用される方法から生じる。半定量的な方法(最も広く使用される)によって、疾患の重症度のカテゴリーが指摘される。しかし、計量的な測定(metrical measurements)は提供されない。
【0009】
加えて、我々は、大きなコラーゲンの断片の近くに、特異的に染色された結合組織(Sirius Redまたは他の特異的な染色)のコンピュータ補助的な光学顕微鏡での認識の手段によって、日常的な観察で不可視の極度に小さく高度に窪んだ(indented)断片のプレトラ(pletora)を検出することができた。このような小規模な断片の評価(現在まで使用されている診断上の方法によってなされる)は、中心的な重要性を有する。というのも、かかる断片の存在は、病状の動的な進展の指標だからである。
【0010】
実際に、コラーゲン構造の初期の三次元立体配置は、小さいコラーゲン島(collagen islets)の分散型のセットであり、疾患で慢性の炎症プロセスにより増大する成長しているコラーゲンファイバーの遠位端(distal ends)のスプライシングが原因で海綿状の塊(線維症)へと進展する。二次元の組織学的な肝臓スライスにおいて、この海綿状の塊は、組織に不規則に分布する非常にひだが寄ったコラーゲン領域として現れる。
【0011】
通常、生検サンプルの標準化は、なおも未解決の問題である。高度な形態学的な複雑さによって、肝臓の炎症, 線維症および肝臓組織の配置が特徴づけられる。
【0012】
同じように、複合体の特徴を、慢性の炎症性プロセス(例えば、膵炎, 胃炎および前立腺炎)を含む他の疾患に見出すことができる。
【0013】
慢性の炎症性プロセスの組織学的な分析に適した三つの特徴的なパラメータは、次のものである:
i) 炎症細胞クラスターで及び分離した炎症細胞(即ち、いわゆる「炎症組織(inflammatory tissue)」)によってカバーされる領域;
ii) 異なる規模(magnitude)のコラーゲン島によってカバーされる領域;および
iii) 傷害された組織における典型的な障害が小葉の構築の破壊へと導く線維性の組織および実質性の組織の間の正しい比が失われることによって生じる組織コンホメーション。この事項は、特に肝臓組織の場合において正しい。
【0014】
ユークリッド幾何学を係る形状に適用できないとの事実から、形態計測学的な方法が線維症の不規則な形状の測定に不適切であることが証明されている。ユークリッド幾何学は、対照的に次元がそれぞれ整数0, 1, 2 および 3で表され、形状が光学的な拡大率で変化しない点, 規則的(regular)な線, 面および立体を測定することに適性がある。
【0015】
肝臓から得られる組織サンプルの正常な又は異常な成分の顕微鏡観察によって、任意の拡大率(観察のスケール)で出現する幾つかの新しい不規則性が示される。サンプルのイメージの拡大した形態としての、新しい不規則性の細目(details)は、各拡大率に非依存性で単一の線形系(single linear system)に配置できない所与の測定および寸法(dimension)である。この特徴が理由で(観察される対象の外面の粗さによる)、可視である対象の細目(同様に視覚的に同定できないもの)により、肝臓の組織サンプル(同様に、慢性の炎症性のプロセスによって影響される全ての他の組織)を伝統的なコンピュータ補助性形態計測の手段で測定することが難しくなる。
【0016】
組織の生検サンプルに存在するコラーゲンの形状の計量的な測定において遭遇する困難性は、次の事項による:
・ 線形法の平滑化形態での照準(collimations)を許さない外形の不規則性;
・ それぞれ全ての観察のスケールでのこれらの対象の形態の修飾(以前の拡大率で観察できない細目が新しく出現するため);
・ 形態の変化の関数として、それぞれ全ての拡大率でサンプルにより占められるスペースの寸法の変化;
・ 周辺の長さおよび表面領域の多様性〔その寸法が測定の解像度に対応する(計量が小さいほど、測定が高くなる)〕。
【0017】
古典的な形態計測は、自然の対象を測定する問題に、これらの不規則な外形および粗い表面を直線的な外形(rectilinear outlines)および平面に近似させることによって取り組んでいる。加えて、生検サンプルの周知の代表的ではない性質が存在する。それは、小さい体積(volume)では、所謂疾患の病期分類を指摘することが困難であり、この理由は全体として器官における病変の分布が不均一であることによる。生検断片が取得される部位における僅か軽微な差は、隣接する組織の一つと異なる段階を提示するサンプルを得るためにしばしば十分であることが知られている。
【0018】
壊死炎症性(necro-inflammatory)の組織の計量的な分析に関する限り、定量的な方法は今まで開発されなかった。
【0019】
また、組織障害に関する異常組織の構築的な変化を計量(metering)する定量的な方法が知られている。
【0020】
[発明の概要]
【0021】
当該技術分野の状況に基づき得られる組織サンプルから開始しているにもかかわらず、本発明の課題は患者の現状の病理学的な状態及びその進展の完全且つ正確な診断が許容される診断方法を提供することである。
【0022】
本発明によると、この課題は、主な請求項において特徴が特定されるインビトロ診断法の手段によって達成される。本発明の方法のさらなる特徴は、引き続く請求項において特定される。
【0023】
不規則な対象がBenoit Mandelbrotにより「フラクタル」と定義されてから、形態は拡大率の関数として変化するとの事実にもかかわらず、それらは全ての空間的なスケールで不規則性の特徴を保持するとされる。分離できるピース〔フラクション(fraction)ではない〕は等しくないが、それらには不規則な類似性が保存されている。この不規則な対象が分離されえる部分の特性は、「自己類似性(self-similarity)」と称される。係る対象の形態はイメージが観察される拡大率に依存するので、対象の寸法の定量的な計量は拡大率スケールの関数である。従って、フラクタルの次元は、不規則体のフラクタルピース(fractal pieces)の自己類似性を指摘し、各スケールで観察された不規則な対象の物理的および幾何学的なパラメータを測定するために使用される参照手段の特性を規定する。
【0024】
本発明は、組織のスポット及びそれ自身の不規則な対象の計量的な定量に関する発明者の直観(intuition)に基づいている。
【0025】
また、発明者は、驚くことに「しわ(rugosity)」(慢性炎症を伴う肝臓に及び他の組織に存在するコラーゲン構造(collagenic structures)の表面に特異的な特性)は、計量的に定量できることを発見した。実際のところ、発明者は、前記「しわ」を、前記組織に存在するコラーゲン構造の真の境界線(perimeter)および領域を測定することで評価できるアルゴリズムを開発した。
【0026】
また、本発明の方法によって、炎症細胞クラスターの領域および単離された炎症細胞の領域によって形成された炎症性組織の領域を数量化することが許容される。
【0027】
また、本発明の方法は、明らかな炎症性の疾患の進行状態における情報を提供する組織障害の指標を提供する。
【0028】
[発明の詳細な記述]
本発明による診断法は、モーターのついたステージを有する顕微鏡の使用を提供する。顕微鏡を使用して視覚的に生検サンプルを検査し、他方で特定のソフトウェアを使用して光学的なイメージを捕獲し、デジタルイメージに転換し、更なる測定および引き続く計算を行う。
【0029】
生検サンプルは従来の生検法で得られ、それを既知の様式で使用して組織に存在するコラーゲンが組織化学的に染色される又は免疫組織化学的に標識されるスライドが調製される。本発明による方法の操作上の戦略は、スライド上のサンプルに存在するコラーゲンを三つの基本色(赤色, 緑色および青色)のインターバルが周知である標準的な染色を用いて染色することである。
【0030】
好適な染色は、最小値0および最大値255の強度単位(24ビット深さ, 1600万色のBITMAPイメージ分析)の間で変動する各々の基本色(primary colour)の閾値を有するSirius Red(Direct Red 80としても知られる)である。各々の適切に染色される生物学的構造は、特異的な染色インターバル(staining interval)により特徴づけられる。Sirius Red染色したコラーゲンの場合において、閾値は赤色(R)に対して0-255 強度単位, 緑色(G)に対して0-130強度単位, 青色(B)に対して0-255強度単位である。スライド上の組織に存在するコラーゲンの選択は、一旦オペレーターが三つの基本色に関する閾値をセットしたらコンピュータにより自動的に行うことができる。
【0031】
炎症細胞は、組織学的な切片を一次抗体抗ヒトLCA(モノクローン性のマウス抗白血球共通抗原)で処理することによって明らかとなる。典型的には、処理は、室温で一時間続く。通常、1 mg/mlのマウス IgG1が負の対照として使用される。
【0032】
定着(settled)したマクロファージ性の間充織クッパー細胞をリクルートされた炎症性T細胞と区別するために、組織学的なサンプルの更なる切片が抗原検索バス(典型的には、30 分間、98°Cを1 mMの用時調製したEDTA 溶液において行う)中に浸漬された。炎症性T細胞は、一次抗体抗-ヒトCD3およびクッパー細胞を一次抗体抗-ヒトCD68で室温で処理して表される。1 mg/mlのマウス IgG1が負の対照として使用される。
【0033】
組織学的な切片は、それからインキュベーションにより染色される。Fast redを色素原として使用してCD68に関する赤色反応物を産出し、3,3'-アミノベンジジン四塩酸塩水和物を使用してLCAおよびCD3に関する褐色反応物を産出させた。
【0034】
核は、Harris's ヘマトキシリン溶液で軽く対比染色される。
【0035】
組織化学的な染色または免疫組織化学的な標識の後、生検サンプル又はその一部のスライドは、テレビ/写真カメラをとおしてコンピュータに連結された顕微鏡のモーターのついたステージに配置される。本発明の方法に使用できる装置は、引用によって本明細書中に援用される2002年11月19日に出願された国際出願第PCT/EP02/12951号に記載されたものである。
【0036】
この特許出願は、デカルト軸x, y, zに沿って移動する能力のあるモーターのついたスキャンニングステージを有している顕微鏡を具備しているイメージを取得し、処理するためのシステムを記載する。顕微鏡は、好ましくは50xから1000xまでの拡大率を許容するタイプである。
【0037】
顕微鏡は、少なくとも一つの対物レンズ, 少なくとも一つの接眼レンズおよび少なくとも一つのカメラ接続のための写真ビデオポートを備える。この後者に、電気的なイメージ獲得手段(特に、写真/ビデオカメラ)は、動作可能に連結される。好ましくは、係る電気的イメージ獲得手段は、より好ましくは1.3メガピクセルの解像度を有しているデジタルカメラである。
【0038】
電気的なイメージ獲得手段は、プロセシング系と動作可能に連結される。プロセシング系は、プロセシング手段〔例えば、中央演算処理装置(CPU)〕を保存手段(例えば、RAM作業メモリーを含んでいる)に相互に連結するバス, コンピュータを開始するための基礎プログラムを含む読み出し専用メモリー(ROM), 磁気ハードディスク, 任意で光学的なディスク(CD-ROMs)のためのドライブ(DRV), 任意で読み/書きするフロッピー(登録商標)ディスクのためのドライブを具備しているパソコン(PC)の手段により実現されえる。そのうえ、プロセシング系は、任意でテレマティックスネットワークとの情報交換を制御するためのMODEMまたは他のネットワーク手段, キーボードコントローラー, マウスコントローラーおよびビデオコントローラーを具備する。キーボード, マウスおよびモニター8は、それぞれのコントローラーに連結される。電気的なイメージ獲得手段は、インタフェースポート(ITF)の手段によりバスに連結される。また、スキャンニングステージは、デカルト軸に沿ってステージの移動を支配する制御インタフェースポート(CITF;control interface port)の手段によりバスに連結される。
【0039】
遂行段階の間に作業メモリーへとロードされるプログラム (PRG)とそれぞれのデータベースとは、ハードディスクに貯蔵される。典型的には、プログラム(PRG)は、ハードディスクにインストールするために一以上のCD-ROMsに分けられる。
【0040】
プロセシング系が異なる構造を有する場合、例えば、多様なターミナルが連結される中央装置により又はテレマティックスコンピュータネットワーク(例えば、インターネット, イントラネット, VPN)により構成される場合、他の単位(例えば、プリンター)を有する場合などに、類似する考慮が適用される。或いは、プログラムはフロッピー(登録商標)ディスクに供給され、ハードディスクにプレロード(pre-loaded)される又はコンピュータにより読まれる任意の他のサブストレートに貯蔵される、利用者のコンピュータにテレマティックスネットワークの手段により送信される、無線でブロードキャストされる、または、より一般的には、直接的に利用者のコンピュータの作業メモリーにロードできる任意の形態で供給される。
【0041】
二つの主な直交軸x-yに沿ったモーターのついたステージの移動は、自動的に特定のソフトウェアプログラムにより制御される。組織学的な調製物の全体イメージは、自動的にコンピュータにより再構築され、メモリーにイメージファイルとして記録される。
【0042】
イメージの焦点合せも、自動的に行われる。
【0043】
それから、イメージファイルを、コンピュータで処理し、Sirius Redに関して規定インターバルないで低下する検査下でスライド上の組織の部分を選択する(従って、コラーゲンに対応する)。この作業により、スライド上に存在するコラーゲン構造がイメージファイルから選択され、その境界線および領域が正確に再現される。
【0044】
また、ソフトウェアは、自動的に全LCA-免疫陽性の炎症系(whole LCA-immunopositive inflammatory system)によりカバーされる表面を選択する。
【0045】
二種類の計算が本発明の方法にしたがってなされる。第一の計算には、コラーゲンのスポット(spots)および島(islets)の計量的な測定の手段による線維症の程度の形態計測決定が関与する。第二の計算は、炎症の程度の形態計測決定に関する。これらの二つの計算は、別々に本明細書中で扱われる。
【0046】
線維症の計量的な測定
この手順によって、全体として組織学的な調製物により占められる領域および検査でコラーゲン構造によってのみ占められる領域 Aの同定および計算が提供される。測定の単位は、μm2またはピクセル(pixel)であってもよい。ピクセルの領域は、幾つかの因子(例えば、デジタルビデオカメラパラメータ, 拡大率など)による既知のパラメータである。イメージが較正のための標準として取得される従来の「マイクロスライド(micrometric slide)」(即ち、マイクロスケールが描かれるスライド)で較正を作ることによってピクセルをμm2に転換することが可能である。検査で領域Aの構造は、定数(absolute terms)で又は調査下のサンプルの全領域のパーセンテージとして表現できる。全てのコラーゲン構造の測定を、自動的にコンピュータで行うことができる。
【0047】
選択されたコラーゲン構造の境界線Pは、同様に且つ殆ど同時に、既知のコンピュータ補助によるアルゴリズムにしたがって同定され、計算され、ピクセルまたはμmで測定できる。
【0048】
選択されたコラーゲン構造の境界線を考慮すべき不規則性で、具体的な条件で計量できるようにするために、フラクタル次元DPの評価がなされる。同様に、選択されたコラーゲン構造の領域のフラクタル次元(fractal dimension)の見積を、シンボル DAで指摘した。これらのフラクタル次元の両方は、自動的に既知の「ボックスカウント(box-counting)」アルゴリズムを用いて決定できる。
【0049】
「ボックスカウント」法によると、イメージはグリッド(grid)に分けられる。そして、フラクタル 次元Dは、次の数学的な式で与えられる
D=lim(ε->0) [logN(ε)/log(1/ε)]
それぞれ、式中のεは測定された対象のグリッドのボックスの側面(side)の長さであり、N(ε)は輪郭(DP)または領域(DA)を完全にカバーするために必要なボックスの数である。長さεは本発明の計算法においてピクセルまたはμmで表され、εは1ピクセルである傾向がある。
【0050】
係る計算における困難性を回避するために、フラクタル次元 DP および DAは、デカルト軸系にパラメータ logN(ε) 対 log(1/ε)を導入することによって得た直線の勾配として近似された。
【0051】
実施において、DPを決定するため使用される方法は、次の事項を備える:
a) 対象のイメージを側面長ε(side length ε)を有しているボックスの複数のグリッドに分けることと(ここで、εは、対象が記されるボックスの側面に実質的に対応する第一の値から前記第一の値の分数である既定値で変動する)、
b) N(ε)の対数関数〔ここで、N(ε)は、対象の境界線(P)を完全にカバーするために必要なボックスの数である〕及び工程 a)の各々のε値に対する1/εの対数関数の値を計算することと、前記N(ε)の対数関数に対する第一セットの値と前記1/εの対数関数に対する第二セットの値とを得ることと、
c) フラクタル次元DPを、工程 b)の前記第一セットの値と前記第二セットの値とを補間(interpolating)する直線の傾きとして計算すること。
【0052】
同法は、フラクタル次元DAを計算することに応用された〔このケースにおける差は、N(ε)が定量される対象の領域を完全にカバーする側面εのボックスの数であることのみである〕。
【0053】
これらの計算とフラクタル幾何学の原理を適用することとから、以下が導かれる
Pf = P.[1+λP(DP-D)] (I)
式中のPFはフラクタル補正された境界線であり、Pはユークリッド境界線であり、DPはフラクタル次元であり、Dはユークリッド次元 (1)であり、λPは拡張係数(dilation coefficient)である。λPの値は、異なる拡大率(5x, 10x, 20x, 40xの対象の拡大)で取得された組織学的な切片を用いて経験的に決定され、新しく表れる評価の対象の細目が観察される。λPは、約 4.5であると考えられる。
【0054】
同じように、Af(即ち、観察される不規則な対象の補正された領域)は、以下の式で与えられる
Af = A+[λA(DA-D)].(Ap - A) (Ia)
式中のAはユークリッド領域であり、Dはユークリッド次元(2)であり、λAは約 0.1である拡張係数であり、Apは定量される対象を含んでいる領域であり、DAはボックスカウント法の手段で計算される領域のフラクタル次元である。
【0055】
「定量される対象を含んでいる領域(region including the objects to be quantified)」の用語は、同じ形態学的な項目に属している対象(たとえ小さい規模であっても)を検出することができるイメージの領域を意図している。幾つかの場合において、定量される対象は、異なる規模の複数の対象(スポットまたは凝集物)から構成され、これらの幾つかは可視分析下で検出可能ではないことが知られている。このアルゴリズムによって、観察下の項目の全領域を考慮にいれることが許容される。特に、コラーゲン分析に適用される場合、大きなコラーゲンの領域ばかりでなく、小さな島の領域をも決定することが可能である。
【0056】
境界線の又は、より具体的には、観察される対象の領域の評価によって、第一の診断上の指標を与えられることは明らかである。異なる時間に得られたサンプル中のコラーゲンスポットの領域を患者において評価することは、疾患の進行または後退(regression)の指標である。
【0057】
上記の値を計算した後、前述の「しわ」の基礎的なパラメータが決定される。発明者は、実際に選択されたコラーゲン構造の「しわ」の度合を指摘しているパラメータ wが、以下のアルゴリズムの手段で計算できることを見い出した:
【数1】

【0058】
式中のPfは修正された境界線(フラクタル境界線)であり、Afはコラーゲン構造のフラクタル補正された領域であり、Rはコラーゲン島の「丸め係数(roundness coefficient)」である。Rは以下のアルゴリズムで計算される
【数2】

【0059】
式中のPeは測定された対象が記される(inscribed)楕円の境界線であり、Aeはその領域である。
【0060】
最終的に、一旦スライド上に存在するコラーゲン構造のしわ wを計算したら、構造の状態および肝臓の病状のいわゆる病期分類が更に確認される。実際に、しわ wの値は慢性炎症性の病状の段階に関連することが見い出された。
【0061】
本発明による診断法によって、さらに生検サンプルのコラーゲンの分布の決定が実行される。この分布はサンプル全体をさらに分けて決定され、その際に200 μm 平方のメッシュが用いられ、グリッドにおける四角の数 nをA1からAnのシンボルで指摘した。グリッドの決定は、空間的なサンプリングのジェオスタティック ルール(geostatic rules)にしたがう。
【0062】
各四角における局所的なコラーゲン領域が測定され、計算はコラーゲン領域をA1, A2, A3,...Anの列に部分的に集計してなされる。各々の部分的な結果(A1, A1+A2, A1+A2+A3, A1+A2+A3+A4, など)は、横軸がAnおよび縦軸がAnに含有されるコラーゲンの量 anを表すデカルト系で報告される。このコラーゲン分布のパラメータ(全てのコラーゲン島を考慮して)は、基礎的な 診断上の情報を与える(というのも、それが疾患の進展と相関するからである)。
【0063】
本発明による診断法の別の補完物(complement)は、各々のスライド選択されたコラーゲン構造の内部構築(internal tectonics)を、各々の領域を作るピクセルのセットのRGB色スケールの不均一性の度合を評価して決定することである。この値(濃度測定の不均一性を指摘する)は、コンピュータにより自動的に計算でき、文字Iで指摘される数値で表される。Iの値は、それらの平均値から5%以上異なるピクセルのパーセントに対応する。
【0064】
炎症の計量的な測定
炎症のプロセスにその時々で関係している組織の病変(lesions)は、ある特定の血液分子の濃度のバリエーションを生じる。これらの分子の濃度が初期に存在する量のみならず、血流におけるその代謝の割合にも依存するとの事実があるにもかかわらず、これらの分子は同定されており疾患インデックスとして提案された。このような分子の時間の濃度変化と相関する関係性は、たいへん複雑である(というのも、それらの分子はそれらがおかれた条件における特定の代謝パターンに依存し、殆どの疾患の状態および進行の定量的な指標としての有意性および有用性が失われているからである)。
【0065】
本発明の発明者は、慢性の壊死性で炎症性の組織の病変の状態を記載することが可能なパラメータのみが障害が生じた組織の構造上の特性の測定によって得られるものであるとの結論にいたった。肝臓の組織などに影響している異なる慢性の炎症性の状態が多数であることにより、炎症細胞によりカバーされた領域および係る細胞の密度の計量的な測定が炎症性プロセスの臨床段階を記載する最も特徴的な特性であることが見い出された。
【0066】
実施期間(practical terms)において、肝臓組織の組織学的な切片の基礎における慢性肝炎BおよびCウイルス関連の炎症を定量的に評価することは、クラスターにおいて凝集される細胞および肝実質の間質に単離されているものの密度の測定に問題を生じる。前者(リンパ球, 単球, プラズマ細胞)および後者(クッパー細胞も含む)のグループが同じ間充織の性質および類似する疾患の間に活性化する能力を有しているので、慢性ウイルス性のプロセスの活性の度合がこれらの細胞により占められる計量的な領域及びその中のそれらの密度を測定することによって見積もれることが合理的に導かれる。
【0067】
どのような方法を使用しても、クラスターにおけるリクルートされた炎症性の血液細胞を表している点状粒子の密度の決定は、困難である。というのも、それが肝臓の組織炎症の慢性肝炎ウイルス関連のプロセスのこれらの基礎的な因子の境界に依存しているからである。本発明の発明者は、実験を重ねて、細胞間の距離が< 20 μmであることによって特徴付けられる細胞の列があるクラスターに代表的であることを発見した。
【0068】
慢性の肝臓炎症において、門脈の, 門脈周囲の及び小葉周囲(perilobular)のリンパ球, プラズマ細胞および単球/マクロファージ凝集物が存在する。小葉内の限局的な壊死性の炎症の程度は、最も重篤な臨床の増悪を呈している融合性壊死(confluent necrosis)を伴う疾患の重症度に伴って変化する。
【0069】
ウイルス性の病原学的な因子が肝細胞ネクローシスと一致した肝臓組織における障害された部位を作った場合、これらの細胞集合体が生じる。各々の障害された部位は、常に肝臓組織内に存在する炎症細胞に対する誘引点として作用し、リンパ球, プラズマ細胞. および他の白血球細胞がリクルートされる。これらの炎症細胞は壊死性の炎症プロセスによって作られる誘引構造内で終わり、炎症性構造(inflammatory basin)によってカバーされるスペースをマークするクラスターを形成する。クラスターの細胞密度は、炎症性プロセスの進展により変化する。
【0070】
非常に類似するふるまいが、他の慢性炎症性の疾患により影響される組織に見い出される。
【0071】
線維症の計算と異なって、各々のクラスターの境界を同定することは困難である。本発明において、ドロネーのアルゴリズムによる三角測量法が使用された。
【0072】
通常は、点のクラスターのドロネーの三角測量法は、点の各ペアを連結し、いわゆる「空環(empty circle)」の特性を満たすセグメントを収集するために提供される。換言すれば、各セグメントに関して、そのセグメントの頂点のみを含んでいる環を見出すことができるが、クラスターの他の点は見出すことができない。このアルゴリズムは、周知であり、幾つかの文献に記載されている(Guibas L. et al, "Primitives for the Manipulation of General Subdivision and the Computation of Voronoi Diagrams", ACT TOG, 4(2), April 1985; Fortune S., "A Sweepline Algorithm for Voronoi Diagrams", Algorithmica, 2:153-174, 1987; Leach G., "Improving Worst-Case Optimal Delauney Triangulation Algorithms", 4th Canadian Conference on Computational Geometry, 1992)。
【0073】
従って、各々の組織学的な検体の表面の炎症細胞は、各々の三角形が一つの隣接性の三角形と共通の側を有する非常に不規則な三角形のセクションから作られる全体のセクションをカバーする連続的なフレームワークの節として考慮される。クラスターの境界は、恣意的に最も外部の三角形の側により長さ< 20 μmで形成される連続的な線と同定され、リンパ球の直径(7-12μm)の約二倍に対応している。この境界により取り囲まれる全ての点(細胞)はクラスター常在性の細胞のサブセット Iに属していると考えられる。他方で、長いセグメントにより連結される点は、非クラスターの炎症細胞(サブセット II)であると考えられた。
【0074】
二つの異なる測定が、本発明の方法によりなされる。第一のものは、炎症細胞のクラスターにより占められる全領域(即ち、ドロネーの三角測量アルゴリズムで得られる境界線により区切られる表面の領域 AC)を計算することからなる。第二の計算は、クラスター(サブセット I)の内側の各々の炎症細胞の実際の領域の和から生じる領域である領域 ACINFの計算に関する。領域 ACINFは、上記のコラーゲン組織の領域の計算と同じようにピクセルの領域に対して炎症細胞を同定しているピクセルの数を乗じることによって計算できる。そのうえ、バイオプシーサンプルの領域が計算され、ABと規定される。
【0075】
さらにクラスター (サブセット II)の外側の細胞の領域 APINFが計算され、それから炎症細胞によりカバーされる全領域が以下の式で得られる
ATINF = ACINF + APINF
少なくとも三つの炎症細胞を有しているクラスターのみが、考慮される。他のものは、ランダムな単位細胞(unitary cells)として考慮される。
【0076】
更なるパラメータとして比ACINF/AC が得られ、この比はクラスター中のクラスター化した細胞の密度を指摘している。
【0077】
炎症性のT細胞およびクッパー細胞の分離した計数もなされる。二種類の細胞が上記で示された免疫組織化学法の手段で識別される。
【0078】
HURST'S係数の決定
慢性炎症性の疾患(例えば、肝臓疾患)の経過における組織障害の指標を得ることは、非常に重要な標的である。このような状態において通常発生する肝臓組織の構築的な変化は、疾患の臨床段階の指標であり、臨床医に価値ある診断上のパラメータが提供される。
【0079】
本発明の発明者は、正常な組織におけるコラーゲンおよび実質のパーセンテージを評価するために、健常な個体の肝臓の生検サンプルで統計分析を行った。これらの測定は、上記で記載される方法によりなされ、次の値が与えられる:
線維性の組織の1.34-3.00%
実質組織の98.66-97%
上記の値の間の割合は、肝臓組織が疾患になった場合に変更される。
【0080】
類似するふるまいが、他の慢性炎症性の疾患に見い出される。
【0081】
このような変更および慢性炎症性の疾患の段階の指標として、Hurst's 係数が代表的であることが見い出されている:
H = E + (1-D)
式中のHはHurst's 係数であり、Eはユークリッド次元(線に対して1, 平面に対して2)であり、DはLCA免疫陽性炎症システムの全体(領域ATINF)によりカバーされる表面または上記の方法により計算される線維症 (領域Af)によりカバーされる領域のフラクタル次元である。
【0082】
HiおよびHfが計算される。Hiは炎症性のリッシュー(rissue)に関するHurst指標であり、Hfは線維性の組織に関するHurst指標である:
Hi = E + (1-Di), および
Hf = E + (1-Df)
Di および Df は、それぞれ炎症性の組織および線維性の組織に関するフラクタル次元である。
【0083】
Hurst指標Hi および Hfによって、疾患の進行に有用な指標が与えられる。例えば、高いHi 指標(1に近似しているHi)は幾つかの炎症の温床の存在の指標であり、同じ炎症の全体領域(ATINF)がより低い Hi (炎症の僅かな又は僅か一つの温床)に対応する場合よりも悪い状態の基礎をなす。
【0084】
同じ考慮は、線維組織に関するHfに適用される。
【0085】
二つのセットの値が、考えられた。そのセットの高いHurst's 係数値(0.5<H<1.0)が、低い数の組織の炎症細胞の指標である(自然な状態または疾患の第一期)。そのセットの低いHurst's 係数値(0<H<0.5)は、逆に重篤な炎症性の疾患を説明する多くの炎症細胞の存在の指標である。
【0086】
全ての上記のパラメータは、ソフトウェアが実行されるコンピュータで自動的に計算でき、短時間実行される。
【0087】
本発明の診断法に応用するために特に適切なソフトウェア(線維症パラメータの計算)は、本願の出願人の名で国際出願公開WO 03/071468に開示されている。炎症パラメータの計算に関して、適切なソフトウェアは、2006年2月28日のPCT/EP2006/060323に開示されている。
【0088】
上記で記載される方法により得られるパラメータは、チャートに表示でき、肝臓組織の場合において、我々は、それを疾患段階を示しているデータを収集する「肝臓計量(hepatometer)」と称した。前記データは、診断に有用な関連性のある情報にすぐにアクセスを与えるために、表, ダイアグラム, スペクトル, グラフなどに配置される。
【0089】
特に、係る計量は、次のパラメータを含む:
炎症パラメータ
A1) 好ましくは、mm2で表される炎症性組織の領域(ATINF);
B1) バイオプシーサンプル表面のクラスターにより形成された炎症性組織により占められるパーセンテージ(AC/AB.100)。この場合において、少なくとも 25細胞を有しているクラスターのみが、計算に考慮される;
C1) バイオプシーサンプルの領域に対する細胞クラスターの純粋な細胞領域のパーセンテージ(ACINF/AB.100)。これはクラスターの内側の細胞の数に依存し、炎症性プロセスの「活性」の指標である;
D1) クラスターに常在性の細胞によりカバーされる実際の領域およびクラスターの領域の間の比、即ち密度 (ACINF/AC);
E1) 生検サンプルの全体領域に対する非-常在性の炎症細胞(非クラスタ化細胞)の領域のパーセンテージ(APINF/AB);
F1) サンプル中の各種の細胞の絶対計数(absolute count)として及び/又は二つの値の間の比として表されるTリンパ球およびクッパー細胞の間の比。Tリンパ球数は炎症性構造の誘引可能性(attractive potential)の指標であり、クッパー細胞数は炎症性構造のコラーゲン産生活性(collagenopoietic activity)のレベルの情報を与える;
G1) 0乃至1の範囲をとりえるHurst's 係数 (Hi=E+(1-D))。これによって、観察された線維性組織の空間的な配置の不均一性に指標が与えられる。
【0090】
線維症パラメータ
A2) フラクタル次元(D);
B2) 線維性の組織の補正された領域(Af)、好ましくはバイオプシーサンプルの領域に対する係る領域のmm2およびパーセンテージで表される(Af/AB.100);
C2) 好ましくはmmで表されるコラーゲン島の境界線の和としての線維性の組織の補正された境界線(Pf);
D2) B2)で計算される%Afと基準値とを比較することによって決定される線維症の病期分類。線維性の領域の50%は、疾患の程度が重篤であると考えられる;
E2) コラーゲン島の数(NC);
F2) コラーゲン島(NC/Af)の密度(ρ)、これによって疾患の段階の指標が与えられる(高い密度は、疾患の進展期を意味する);
G2) 三つの規模のカテゴリーに細分されるコラーゲン島のパーセンテージ:
i) 10-103 μm2
ii) 103-104 μm2
iii) 104-106 μm2
このパラメータによって、系の安定性の指標が与えられる(即ち、小さい島の高いパーセンテージ、より進展している線維のプロセス);
H2) ひだ(Wrinkledness)又は「しわ(rugosity)」は、比Pf/Afとして与えられる;
I2) ひだ又は「しわ」指標(w)。wが高いと、線維症の段階は若い。W 値は、疾患が進行する間に最も薄いコラーゲン線維が消失すると減少する。
【0091】
L2) 0乃至1の範囲をとりえるHurst's 係数 (Hf=E+(1-D))。これによって、観察された炎症組織の空間的な配置の不均一性に指標が与えられる。
【0092】
上記の計算において、サンプルの領域の値(AC, AB, ACINF, APINF, ATINF)は、上記のように、ピクセルの領域に対し定量された対象と一致するピクセルの数を乗じることによって得られる。
【0093】
上記の診断チャートは、特定のバイオプシーサンプルの画像を与えるために設計される。しかしながら、疾患の進行を示すための、同じ患者による幾つかのバイオプシーサンプルからの疾患の経過で得られるデータを要約する診断チャートも、本発明の範囲に包含される。
【0094】
本発明の特定の態様において、「インビトロ」診断法は、次の事実を考慮して実行される。その事実とは、更にバイオプシーサンプルの成分の定量的な形態学的な測定が、それらの不規則性のみならず、外科的な切除および組織学的な操作の間に生じる絞ること(squeezing), 引き裂くこと(tearing)および捻ること(twisting)により作られたアーチファクトによっても影響されえることである。補正係数CFは、次の式で計算できる
CF=jm/L
式中のjmは正常組織細胞の平均二乗領域(mean squared area)の平方根であり、Lは観察下のサンプルの組織細胞の平均二乗領域の平方根である。
【0095】
パラメータjm〔(肝臓組織, 肝細胞の場合において)標準の組織細胞の同じ領域を有している四角の側面長を表す〕は、健常被験者に属している多数(約 3,000)のサンプルに対して計算された(肝細胞の場合において、16 μmに近似できる)。
【0096】
フラクタル境界線Pfは、更にこのような補正係数により補正され、次の式でえることができる
Pcor = Pf.CF (VI)
同じように、補正された領域は、以下で与えられる
Acor = Af.CF2 (VII)
上記のひだwの係数の計算は、上記の式(III)のPfをPcorで置換し、AcをAcorで置換して補正できる。
【0097】
上記のことから、本発明の診断法が既知の方法と比較された場合に改善が提供されることは明らかである。フラクタル幾何学によって、微積分学から由来する数学的なモデルが提供され、ユークリッド幾何学に応用した場合に、自然な及び不規則な対象の形態計測学的な測定の図形を統合し、それらを実際の値に近似させる。
【0098】
本発明による診断法は、慢性炎症性の組織の生検サンプルを検査するための今までに使用された全ての方法の不都合性を排除する利点を有する。
【0099】
上記のコンピュータ支援についての参照において、観察された対象の規模および次元の自動決定は、本発明の特定の態様として理解される。実際に、同じ作業を手動(例えば、手動でシートにおけるイメージをレポートすること、グリッドにおけるイメージを細分すること、および既知のアルゴリズムを適用することにより)で実施できることは明らかである。
【0100】
本発明による手順の更なる利点および特徴は、次の機能する例および三つの患者サンプルにおけるコラーゲンの空間分布を示す添付した図1, 2 および3から当業者に明らかであろう。
【0101】
[例]
組織学的な切片を、x-y移動ステージを備えたライカ DMLA 顕微鏡, デジタルカメラ ライカ DC200 および臨時目的(ad hoc)の構成画像分析ソフトウェアを備えたIntel Dual Pentium(登録商標) IV, 660 MHz コンピュータを用いてデジタル化した。
【0102】
標準の生検サンプルを、慢性のHCV関連疾患を有している三個体の異なる患者から得た。約 10 μm長のサンプルを、10% ホルマリンに浸漬し、Paraplastに包埋した。Paraplastを除去した後に、5 μm 厚の切片を切り、Sirius Redで染色した。スライドをイメージ分析系を用いて200xの拡大率で顕微鏡的に観察し、全てのイメージをデジタル化した。
【0103】
線維症の肝臓の部分を、隣接するピクセルの色の類似性の基礎に基づいて自動的に選択した。イメージを、それから1-ビット(黒色 および 白色)のバイナリーイメージに転換した。耐性の閾値(tolerance thereshold)を、全ての線維性の病変を選択する様式で調整した。
【0104】
境界線の個々のピクセル境界および線維性の部分の表面領域を、既知の「ボックスカウント」アルゴリズム用いて自動的にトレースした。そして、これらのフラクタル次元を決定した。フラクタル次元を、「ボックスカウント」法を用いて自動的に測定した。形態計測学的な値(A, P, Af, Pf)を決定し、その基礎のもとに、しわwの度合をコンピュータ計算した。また、コンピュータによって、コラーゲンの空間分布(図1-3を参照されたい)およびコンピュータ補助的なイメージ分析系を用いてH および Iの値が計算された。
【0105】
収集したデータを、多様な形態計測の値をリストする次の表に示す:
【表1】

【0106】
第一の患者に関するしわ値が38.56(肝臓の病状の初期に段階に対応する)であったことを表は示している。
【0107】
第二の患者の場合において、コラーゲンのしわの定量は1082.58であった(肝線維症の中間段階を指摘する)。
【0108】
第三の患者に関するしわの計算は62421.72であり、硬変(cirrhosis)の存在を指摘している。
【0109】
図 1のグラフ(第一の患者に関する)は、疾患が初期であることを確認する段階的な状態を示している。
【0110】
図 2のグラフ(第二の患者)は、コラーゲンの空間分布が少数の段階を有する。従って、疾患の中間段階が確認される。
【0111】
図 3のグラフ(第三の患者)は、高度な疾患段階が確認される殆ど直線的な傾向を有している。健常な肝臓におけるコラーゲンの空間分布は、むしろ規則的な段階からなる曲線に沿っている。
【0112】
通常、肝臓の疾患におけるコラーゲン決定の場合において、疾患段階の評価は、患者のしわ wの係数を決定すること及びそれを既定値と比較することによっても影響されえる(ここで、既定閾値未満のw値は、病状の段階の指標である)。
【0113】
前記の既定閾値は、統計的に有意な患者集団から収集した検査結果の統計分析により決定される(ここで、患者からの肝臓サンプルは本発明の方法による観察およびパラメータ決定に供される)。
【0114】
表 2は、上記の方法を使用することによって肝臓の炎症を定量する三つのプロトタイプの例を報告する。
【表2】

【0115】
異なる値は、本発明の数学的な方法が肝臓のみならず他の炎症性の器官の炎症性反応も客観的に定量するために適切であることを指摘する。
【0116】
上記の本発明の診断法の記載(同様に、表および図における上記で示した機能する例のデータ)は、コラーゲンおよび炎症の構造(basin)の計量的な定量の手段での肝臓の病状の「インビトロ」診断に言及する。コラーゲンおよび炎症段階の計量的な定量が、患者の生検サンプルの分析による他の慢性炎症性の病状の診断および予後をえるために使用できることは自明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性炎症性の疾患により影響されるヒトまたは動物の組織における異常な形態学的な状態を「インビトロ」で診断するための方法であって、ヒトまたは動物の体のバイオプシーサンプルのイメージを観察することを含み、前記異常な状態を決定でき、前記異常な形態学的な状態を計量的に定量でき、前記計量的に定量する工程が線維性の及び炎症性組織の程度を以下の手段で検出することを含む方法:
i) フラクタル補正された境界線(Pf)および/またはコラーゲン島の領域(Af)を計算することと、および
ii) クラスターの炎症細胞のパーセンテージ領域を式 ACINF/AB.100の手段で計算すること、
式中のACINFはクラスターに属している炎症細胞の実際の領域であり、ABはバイオプシーサンプルの領域である。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記工程i)のコラーゲン島のフラクタル補正された境界線(Pf)を計算することは、定量すべき対象の境界線のフラクタル次元を以下により計算することを含む方法:
a) 対象のイメージを側面長ε(side length ε)を有しているボックスの複数のグリッドに分けることと(ここで、εは、前記対象が記されるボックスの側面に実質的に対応する第一の値から前記第一の値の分数である既定値で変動する)、
b) N(ε)の対数関数〔ここで、N(ε)は、対象の境界線(P)を完全にカバーするために必要なボックスの数である〕及び工程 a)の各々のε値に対する1/εの対数関数の値を計算することと、前記N(ε)の対数関数に対する第一セットの値と前記1/εの対数関数に対する第二セットの値とを得ることと、
c) フラクタル次元DPを、工程 b)の前記第一セットの値と前記第二セットの値とを補間する直線の傾きとして計算すること。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記工程i)のコラーゲン島のフラクタル補正された領域(Af)を計算することは、定量すべき対象の領域のフラクタル次元を以下により計算することを含む方法:
a) 対象のイメージを側面長ε(side length ε)を有しているボックスの複数のグリッドに分けることと(ここで、εは、前記対象が記されるボックスの側面に実質的に対応する第一の値から前記第一の値の分数である既定値で変動する)、
b) N(ε)の対数関数〔ここで、N(ε)は、対象の領域(A)を完全にカバーするために必要なボックスの数である〕及び工程 a)の各々のε値に対する1/εの対数関数の値を計算することと、前記N(ε)の対数関数に対する第一セットの値と前記1/εの対数関数に対する第二セットの値とを得ることと、
c) フラクタル次元DAを、工程 b)の前記第一セットの値と前記第二セットの値とを補間する直線の傾きとして計算すること。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、前記工程a)のεの既定値は、1 ピクセルである方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記対象のフラクタル補正された境界線(Pf)および/または領域(Af)は、それぞれ以下の式 (I)を適用することにより計算される方法:
Pf = P.[1+λP(DP-D)] (I)
式中のPfはフラクタル補正された境界線であり、Pはユークリッド境界線であり、DPはフラクタル次元であり、Dはユークリッド次元 (1)であり、λPは拡張係数(dilation coefficient)である、
或いは、以下の式(Ia):
Af = A+[λA(DA-D)].(Ap - A) (Ia)
式中のAはユークリッド領域であり、Dはユークリッド次元(2)であり、λAは拡張係数であり、Apは定量される対象を含んでいる領域であり、DAは前記領域のフラクタル次元である。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、以下の工程を含んでいる方法:
1) 次の式(III)にしたがって「しわ係数」 wを計算すること:
【数1】

式中のPfはフラクタル補正された境界線であり、Afはコラーゲン構造のフラクタル補正された領域であり、Rはコラーゲン島の「丸め係数(roundness coefficient)」であり、次の 式 (IV)で与えられる:
【数2】

式中のPeは定量される対象が記される楕円の境界線であり、Aeはその領域である;および
2) 工程 1)で計算された前記係数 wと既定値とを比較すること。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、さらに観察されたイメージにおけるコラーゲンスポットの分布を計算する工程を含み、前記コラーゲンの分布を計算する工程が以下を含んでいる方法:
・ 全体イメージを200 μm 平方のメッシュのグリッドを用いて細分すること、
・ グリッドにおける四角の数 nをA1からAnのシンボルで指摘すること(indicating)、
・ 上記の請求項に記載の方法で各四角における局所的なコラーゲン領域を測定すること、
・ A1, A2, A3,...Anの列に含まれるコラーゲン領域の部分的な集計を計算すること、
・ 各々の部分的な結果(A1, A1+A2, A1+A2+A3, A1+A2+A3+A4, など)を、横軸がAnおよび縦軸がAnに含まれるコラーゲンの量 anを表すデカルト系で報告すること。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、さらに平均値から5%以上異なるピクセルのパーセントに対応する各々の領域を作るピクセルのセットのRGB色スケールの不均一性(I)の度合を評価することを含む方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、ピクセルの領域に対して、コラーゲン島の領域Aおよびクラスター化した炎症細胞のACINFがそれぞれ前記コラーゲン島および前記炎症細胞を同定しているピクセルの数を乗じることによって計算され、前記コラーゲン島の境界線 Pがピクセルの側面長に関して前記コラーゲン島の境界線を同定しているピクセルの数を乗じることによって計算され、前記側面長およびピクセルの領域はマイクロスケール(micrometric scale)で較正を作ることによって得られる方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、さらに1以上の次のパラメータの計算を含んでいる方法:
・ 炎症組織の領域(ATINF);
・ バイオプシーサンプル表面のクラスターにより形成された炎症組織により占められるパーセンテージ(AC/AB.100)(ここで、少なくとも 25細胞を有しているクラスターのみが、計算に考慮される);
・ 前記クラスターに常在性の細胞によりカバーされる実際の領域および前記クラスターの領域の間の比として与えられる密度ACINF/AC
・ 生検サンプルの全体領域に対する非クラスタ化細胞の領域のパーセンテージ APINF/AB
・ サンプル中の各種の細胞の絶対計数(absolute count)として及び/又は二つの値の間の比として表されるTリンパ球およびクッパー細胞の間の比;
・ 0乃至1の範囲をとりえるHurst's 係数 Hi=E+(1-D)。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、さらに1以上の次のパラメータの計算を含んでいる方法:
・ Af/AB%として計算される%Afと基準値とを比較することによって決定される線維症の病期分類(ここで、線維性の領域の50%は、疾患の程度が重篤であると考えられる);
・ コラーゲン島の数 NC;
・ NC/Afとして与えられるコラーゲン島の密度ρ;
・ 三つの規模のカテゴリーに細分されるコラーゲン島のパーセンテージ:
i) 10-103 μm2
ii) 103-104 μm2
iii) 104-106 μm2
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記パラメータは、表, ダイアグラム, スペクトル, グラフに配置される疾患段階を示しているデータの収集を含むチャートに表示される方法。
【請求項13】
前記サンプルの調製の間に肝臓組織が対象とされ、さらに前記コラーゲンスポットのフラクタル領域 Afおよび/またはフラクタル境界線 Pfを、修飾の指標である補正係数CFで補正する工程を含み、以下を含んでいる請求項1に記載の方法:
・ 前記補正係数 CFを次の 式で計算すること
CF=jm/L
式中のjmは正常な肝細胞の平均二乗領域(mean squared area)の平方根であり、Lは観察下のサンプルの肝細胞の平均二乗領域の平方根である、
・ 補正されたフラクタル境界線Pfを式 (VI)によって計算すること
Pcor = Pf.CF (VI)
および補正されたフラクタル領域Afを式 (VII)によって計算すること
Acor = Af.CF2 (VII)
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、前記コラーゲンは、最小値0および最大値255の強度単位(24ビット深さ, 1600万色のBITMAPイメージ分析)の間で変動する各々の基本色の閾値を有する染色剤で染色される方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記染色剤はSirius Red(Direct Red 80)であり且つ前記染色された肝臓のコラーゲンは赤色(R)に対して0-255の強度単位, 緑色(G)に対して0-130の強度単位, 青色(B)に対して0-255の強度単位の閾値を有する方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、前記イメージがデジタルイメージである方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、慢性の炎症性プロセスが関与する前記疾患は、肝炎, 膵炎, 胃炎および前立腺炎から選択される方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、観察下のイメージは、肝臓組織の生検サンプルからのものである方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、前記イメージが顕微鏡イメージである方法。

【公表番号】特表2009−540272(P2009−540272A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513550(P2009−513550)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062904
【国際公開番号】WO2007/140814
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(504312771)ヒューマニタス・ミラソーレ・エス.ピー.エー. (8)
【Fターム(参考)】