説明

ヒト血液由来のCD4+CD25+調節T細胞

【課題】抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞、該細胞を増殖させる方法、ならびに該抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞および該増殖させたT細胞の調節剤としての使用の提供。
【解決手段】ヒト末梢血から好ましくは適切なモノクローナル抗体によって、および磁性分離または免疫吸着法を用いて単離する、抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞。CTLA−4+であり、かつ調節特性を有する、該細胞。T細胞刺激剤または抗原提示細胞を用いて細胞をex vivoおよびin vivoで刺激することを含んでなる、該細胞を増殖させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞、該細胞を増殖さ
せる方法、ならびに該抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞および対
応する増殖させたT細胞の調節剤としての使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
免疫学的自己寛容は、自己免疫の阻止および免疫ホメオスタシスの維持にとって重大で
ある。免疫系が自己と非自己を識別する能力は、中枢および末梢寛容の作用機構によって
制御されている。中枢寛容は、発生の初期段階において胸腺中の自己反応性リンパ球の除
去をもたらす(Rocha,B.およびvon Boehmer,H.,Science
251:1225−1228(1991);Kisielow,P.ら,Nature
333:742−746(1988))。T細胞アネルギーおよび非認識を含む、末梢
寛容のいくつかの作用機構が記載されている(Rocha,B.およびvon Boeh
mer, H.,Science 251:1225−1228(1991);Kisi
elow, P.ら,Nature 333:742−746(1988);Schwa
rtz,R.H.,Science 248:1349−1356(1990);Mil
ler,J.F.A.P.およびHeath,W.R.,Immunol.Rev.13
3:131−150(1993))。齧歯類を用いて10年以上続けられた研究により、
他の寛容作用機構から逃れた自己反応性T細胞の活性化およびエフェクター機能の両方を
活性かつ優勢に阻止する「プロフェッショナルな」調節/抑制T細胞というユニークなC
D4+CD25+集団が存在するという確かな証拠が提供された(Sakaguchi,S
.ら,J.Immunol.155:1151−1164(1995);Takahas
hi,T.ら,Int.Immunol.10:1969−1980(1998);It
oh,M.ら,J.Immunol.162:5317−5326(1999))。これ
らの細胞の排除または不活性化は、重篤な自己免疫疾患をもたらし、また同種異系抗原お
よびさらには腫瘍に対する免疫応答を増大させることが見出された(Sakaguchi
,S.ら,J.Immunol. 155:1151−1164(1995);Itoh
,M.ら,J.Immunol.162:5317−5326(1999);Shimi
zu,J.ら,J.Immunol.163:5211−5218(1999))。最近
の研究では、CD4+CD25+調節T細胞がかなり相同な集団を構成すること(Thor
ton,A.M.,Shevach,E.M., J.Immunol.164:183
−190(2000))、胸腺に由来すること(Itoh,M.ら,J.Immunol
.162:5317−5326(1999))、本来的にはTCRによる刺激に対して非
増殖性(すなわち、アネルギー性)であるが、抑制性となることおよびCD4+またはC
D8+T細胞の増殖を抑制するためにはTCRを介した活性化が必要であることを明らか
にした。しかし、いったん活性化されると、それらの調節/抑制機能は完全に抗原非特異
的であり、サイトカイン非依存的で、かつ細胞接触依存的であった(Thorton,A
.M.,Shevach,E.M.,J.Immunol. 164:183−190(
2000))。正確な抑制作用機構、特にT−T相互作用に関与する細胞表面および/ま
たは近傍の可溶性分子の抑制は、今後の特定を待たなければならない。新しいin vi
troのデータによれば、CD4+CD25+T細胞がレスポンダーのIL−2産生を抑制
することによってレスポンダーの増殖を抑制することが示唆されている(Thorton
,A.M.,Shevach,E.M.,J.Exp.Med.188:287−296
(1998))。最近のin vivo研究によれば、CD4+CD25+T細胞の機能は
、CD4+CD25+T細胞上に構成的に発現されることが見出されたCTLA−4/CD
152分子を介したシグナル伝達に決定的に依存していることが示唆されている(Rea
d,S.ら,J.Exp.Med.192:295−302(2000);Salomo
n,B.ら,Immunity 12:431−440(2000); Takahas
hi,T.T.ら,J.Exp.Med.192:303−310(2000))。
【0003】
齧歯類においてはCD4+CD25+T細胞集団が、自然発生性自己免疫疾患の阻止に極
めて重大である「プロフェッショナルな」調節/抑制T細胞のユニークな系統を構成する
ことが何年も前から明らかであったが(Sakaguchi,S.ら,J.Immuno
l.155:1151−1164(1995))、類似の機能特性を示すCD4+4T細
胞がヒトにおいて本来的に存在するかどうかは今日でも知られていない。マウスを例えば
抗CD25および/または抗CTLA−A4モノクローナル抗体(mAb)で処理する等
によって、マウス中のこれらの細胞をin vivoで除去し、および/またはその機能
を損傷すると、種々の自然発生性自己免疫疾患が誘導され、かつ腫瘍の拒絶が誘導される
。この作用機構は、これらの細胞の除去/機能損傷により、自己反応性T細胞に対するそ
れらの負の制御が除去され、その結果これら自己反応性T細胞が活性化する、というもの
である。養子免疫伝達によってCD4+CD25+T細胞をこれらの動物に戻してやると、
調節が回復され、また自己免疫/腫瘍拒絶が停止する。
【0004】
上記のように、類似の機能特性を示すCD4+T細胞がヒトにおいて本来的に存在する
かどうかは今日まで全く知られていない。CD4+CD25+T細胞ではないが、調節特性
を有するヒトT細胞の調製は当技術分野で公知である。例えば、Jonuleit,H.
ら,J.Exp.Med 192:1213−1222(2000)には、未成熟樹状細
胞を用いた反復刺激により、ヒト未処置T細胞から調節T細胞が誘導されることが記載さ
れている。この研究の殆どは、真に未処置のT細胞の最も豊富な供給源である臍帯血由来
のT細胞を用いて実施された。CD4+CD25+T細胞は初期の時点からヒト血液中に構
成的に検出可能である、ということに注目すべきである。Jonuleitらの対象は本
来的に存在する集団ではない。De Jong,P.ら,Int.Immunol.6:
631−638(1994)は、未処置のCD4+T細胞および記憶CD4+T細胞に対す
るTGF−β1の作用を記載している。一次活性化CD45RA+CD4+T細胞に対する
刺激作用とともに差動作用が示される。CD45RO+CD4+T細胞または二次刺激化C
D45RO+細胞の増殖は抑制される。CD45RA+T細胞の場合は、TGF−βはCD
25の蛍光の平均値の増大をもたらす。この文献に記載されている作用は、T細胞の増殖
にのみ関連するものである。未処置のTGF−βで処理したT細胞の調節能は示されてい
ない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
驚くべきことに、CD4+CD25+、主としてCD45RO+T細胞(CD4+T細胞の
平均6%)(以下、単に”CD4+CD25+T細胞”という)はヒト血液中、特に成人の
健康なボランティアの末梢血に存在する。過去において、この表現型を示すT細胞(すな
わち、抑制性/調節性CD4+CD25+T細胞)は数年前から知られていたが、従来の記
憶細胞であると誤って解釈されていた(Kanegane,H.ら,Int.Immun
ol.3:1349−1356(1991);Taka,K.ら,Immunol.72
:15−19(1990);Jackson,A.L.ら,Clin.Immunol.
Immunopathol. 54:126−133(1990))。以前の報告とは対
照的に、ヒトCD4+CD25+T細胞は従来の記憶細胞ではなく、むしろそれら細胞の齧
歯類対応物と同一の機能特性を示す調節細胞である。例えば、CD4+CD25+T細胞の
in vivo抑制活性に必須のCTLA−4(CD152)は構成的に発現され、そし
て刺激後、強くアップレギュレーションされたままであった。CD4+CD25+T細胞は
、それらのTCRを介した刺激に対して非増殖性であったが、アネルギー状態はIL−2
およびIL−15によって部分的にくつがえされた。同種であるが同系ではない成熟樹状
細胞またはプレート結合抗CD3および抗CD28で刺激すると、CD4+CD25+T細
胞はIL−10を放出した。また、共培養実験においては、CD4+CD25+T細胞はC
D4+およびCD8+T細胞の活性化および増殖を抑制した。抑制はIL−10に依存しな
いこと、かつマウスにおけるように接触依存性であることが実証された。調節性CD4+
CD25+ T細胞の同定は、ヒトにおける寛容の研究のために、特に自己免疫、移植お
よび癌に関連して重大な意味を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものを提供する:
(1)抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞;
(2)T細胞刺激剤または抗原提示細胞を用いて細胞をex vivoおよびin vi
voで刺激することを含んでなる、上記(1)に記載のCD4+CD25+T細胞を増殖さ
せる方法;
(3)上記(2)に記載の方法、好ましくは上記(2)に記載のex vivo法によっ
て得られる、増殖させたヒトCD4+CD25+T細胞;
(4)上記(1)または(3)に記載のヒトCD4+CD25+T細胞を含む医薬組成物;
(5)規制医薬品を調製するための、上記(1)または(3)に記載のヒトCD4+CD
25+T細胞の使用;
(6)CD4+CD25+T細胞をヒトの血液または他の組織からex vivoまたはi
n vivoで同定し、モニターし、および/または除去する方法であって、
(i) T細胞上のCD4、および/またはCD25、および/またはCTL−A4(C
D154)分子(entities)と特異的に結合する作用物質/リガンド、好ましく
は抗CD4、および/または抗CD25、および/または抗CTL−A4抗体を用いる;
および/または
(ii)免疫吸着法を用いる;および/または
(iii)上記(2)に記載の刺激剤または抗原提示細胞を用いる;
ことを含む該方法;
(7)調節性CD4+CD25+T細胞をin vivoで誘導する作用物質を調製するた
めの、好ましくは患者の自己免疫疾患を治療するための作用物質を調製するための、上記
(2)に記載のT細胞刺激剤または抗原提示細胞の使用;
(8)上記(1)または(3)に記載のCD4+CD25+T細胞の、
(a)他の増殖および/または機能的修飾(抑制する/促進する)/アポトーシス性また
は抗アポトーシス性因子の同定を可能とするようなアッセイにおける
(b) CD4+CD25+T細胞上の新規分子の同定を含む、CD4+CD25+T細胞に
よって発現される分子を同定するため、または製薬的に活性とみなされる分子を提示して
いるかどうかを同定するため、または
(c)調節性CD4+CD25+T細胞の前駆体細胞または子孫を同定するため、
の使用;
(9)養子免疫伝達療法のための作用物質、自己免疫疾患を含むがそれらだけに限定され
ない、免疫性が増大した疾患を治療するための作用物質、または移植片対宿主病および移
植片拒絶、等の移植反応を阻止/治療する作用物質を調製するための、上記(1)に記載
の富化されたCD4+CD25+T細胞、または上記(3)に記載の増殖させたT細胞、ま
たは請求項9に記載の固定化されたT細胞の使用;
(10)養子免疫伝達療法の方法であて、強すぎる、および/または病原性の免疫反応を
阻止または治療するため、または移植片対宿主病および移植片拒絶、等の移植反応を阻止
/治療するために、上記(1)または(3)に記載の富化/増殖させた自己または非自己
の調節性CD4+CD25+T細胞を患者に注射/注入することを含む、該養子免疫伝達療
法の方法;
(11)特定の所望の抗原特異的T細胞受容体を用いてCD4+CD25+T細胞を調製す
る方法であって、
(i) 抗原提示細胞、好ましくは該抗原を提示する未成熟または成熟樹状細胞(DC)
を用いて上記(1)に記載のCD4+CD25+T細胞をin vitroまたはin v
ivoで活性化し/刺激し/増殖させる;または、
(ii) CD4+CD25+調節T細胞(のサブセット)上に発現される特定のT細胞受
容体に対するリガンド/抗体、またはCD4+CD25+T細胞(のサブセット)上の特定
のT細胞受容体に結合するMHC−ペプチド複合体を用いる;
ことを含む該方法;
(12)上記(11)に記載の方法によって、または所望の抗原特異性を有するT細胞受
容体を単離された又は増殖させたT細胞にex vivoでトランスフェクションするこ
とによって得られるCD4+CD25+T細胞;
(13)上記(12)に記載のT細胞を含む医薬組成物であって、好ましくは該医薬組成
物が自己免疫疾患、移植片対宿主病および移植片拒絶を含むがそれらだけに限定されない
、免疫性が増大した疾患を治療するのに適する、該医薬組成物;および
(14)抗CD25および/または抗CTL−A4モノクローナル抗体等のリガンド/抗
体、CD4+CD25+T細胞(のサブセット)上のT細胞受容体と結合する抗体またはM
HC−ペプチド複合体または他のリガンドを含むが、それらだけに限定されないT細胞上
のCD4および/またはCD25および/またはCTL−A4(CD154)分子(en
tities)と特異的に結合する作用物質の、例えば腫瘍免疫を高めるためのCD4+
CD25+T細胞によるin vivo弱化調節を含む免疫応答を増強するためにCD4+
CD25+T細胞をin vivoで除去する又はその機能を損傷させる薬剤を調製する
ための使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態(1)から(14)を以下に詳細に説明する:
(A)ヒトCD4+CD25+T細胞の表現型的特定により、ヒトの血液または他の組織か
らこれらの細胞をex vivo(以下、時々「in vitro」という)またはin
vivoで同定し、モニターし(例えば、FACSによって)、単離および除去するこ
とが可能となる。この単離または除去は、ヒトの血液または他の組織を適切な作用物質と
ex vivoで接触させることによって達成しうる。適切な作用物質とは、特に抗CD
4、抗CD25、抗CTL−A4(CD154)抗体等である。
【0008】
(B)CD4+CD25+T細胞は、適切なT細胞刺激剤または抗原提示細胞(以下、「
APC」と略す)で処理することによって該細胞を刺激することにより、ex vivo
で増殖させることができる。上記(2)および(6)に記載の方法に適した適切なT細胞
刺激剤としては、以下のものを含む組成物が挙げられる;
(a)スーパーアゴニスト性抗体を含む、抗CD3および/または抗CD28リガンド/
モノクローナル抗体(mAb)、
(b) CD4+CD25+T細胞表面上のT細胞受容体に対する、またはT細胞受容体成
分に対するリガンド/抗体;または
(c)調節T細胞の表面に発現されたT細胞受容体に結合するMHC−ペプチド複合体;
または
(d) PMA(および他のホルボールエステル)+イオノマイシン(または他のカルシ
ウムイオノフォア)。
【0009】
本発明に用いる「リガンド」または「リガンド類」という用語は、特定の分子(ポリヌ
クレオチド、および細胞受容体、CD25、CTL−A4、等のポリペプチドを含む)の
に結合可能なあらゆる種類の化合物に関する。好ましいリガンドは、モノクローナル抗体
またはそのフラグメントである。「リガンド」および「抗体」という用語は、本出願明細
書を通して相互交換可能に用いられる。
【0010】
適切なAPCとしては、自己または非自己または人工の抗原提示細胞(例えば、樹状細
胞(樹状細胞の調整については、例えば、WO93/20185、WO97/29182
およびEP−A−0 922 758参照)等)が含まれる。該T細胞刺激剤および抗原
提示細胞は、IL−2またはIL−15またはそれらの組み合わせと共に用いることがで
きる。IL−2/IL−15の代わりに、いくつかのサイトカイン受容体に共通したγ鎖
を用いる他のサイトカイン(IL−7およびIL−9を含むが、これらだけに限定されな
い)も使用可能である。さらに、他の調節細胞の生成を促進することが知られているIF
NαおよびIL−10(Groux,H.ら,Nature 389:737−742(
1997); Roncarolo,M.G.,J.Exp.Med.193:F5−F
9(2001))もまたこれらの細胞の生成/増殖を促進する。最後に、ポリクローナル
なまたはオリゴクローナルな(例えば、スーパー抗原による)T細胞刺激のための他の方
法もまた適用可能である(スーパーアゴニスト性抗体を含む抗CD3および/または抗C
D28リガンド/抗原;PMA+イオノマイシン;等)。これらの刺激剤または抗原提示
細胞は、当業者にとって周知の量で増殖に使用することができる。
【0011】
(C)CD4+CD25+T細胞の同定は、例えば、自己免疫疾患と対抗するために調節
T細胞を誘導するため、CD4+CD25+T細胞をin vivoでモニターし、増殖さ
せる(例えば、IL−2+IL−15、IL−10+IFNα等の上記T細胞刺激剤を樹
状細胞/抗原提示細胞と共に又は単独で患者に投与することによって)ことも可能とする

【0012】
(D)上記(1)または(3)に記載のCD4+CD25+T細胞または増殖させたCD
+CD25+T細胞は、in vitroまたはin vivoで(例えば、CD4+
D25+T細胞を刺激する、または除去する、またはその機能を妨げるために)用いるこ
とができる他の増殖および/または機能的修飾(抑制性/促進性)/(アポトーシス性ま
たは抗アポトーシス性)因子を同定しうるアッセイに用いることができる。これらのT細
胞は、CD4+CD25+T細胞によって発現される分子を、mAb生成、プロテオミクス
、DNAチップ分析、差引きハイブリダイゼーション等の方法による同定にも適する。(
特に、(a)「新規な」、すなわち、これまで知られていない分子の同定、または(b)
これらの分子が、CD4+CD25+T細胞をin vitroおよびin vivoで「
スイッチオン」または「スイッチオフ」するための新規な刺激性、抑制性またはアポトー
シス誘導性薬剤を開発するにあたって、適切な医薬標的構造であるかどうかの同定。)ま
た、これらのT細胞は、調節性CD4+CD25+T細胞の前駆体細胞または子孫を同定す
るためにも適している。
【0013】
(E)上記(1)または(3)に記載のCD4+CD25+T細胞または増殖させたCD
+CD25+T細胞は、養子免疫伝達療法に用いることができる。すなわち、あまりに強
い、および/または病原性の免疫応答を阻止または治療するために、すなわち最も広い意
味における自己免疫(エリテマトーデス、慢性間接リウマチ、多発硬化、尋常性天疱瘡、
甲状腺炎、等の古典的自己免疫疾患、ならびに白斑、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、等
の病因に少なくとも何らかの自己免疫的側面を含むが、それらだけに限定されない)を治
療するために、富化した/増殖させた自己または非自己の調節T細胞を患者に注射/注入
するのである。また、これはGVHD(移植片対宿主病)および移植片拒絶、等の移植反
応を阻止/治療するためにも行われるものである。
【0014】
(F)上記(1)または(3)に記載のCD4+CD25+T細胞または増殖させたCD
+CD25+T細胞[ならびに上記(2)に記載の増殖方法、上記(4)に記載の医薬組
成物、および上記(5)および(7)から(9)に記載の使用]は、CD4+CD25+
細胞をin vitroまたはin vivoで活性化する/刺激する/増殖させるため
に、特定の所望の抗原特異的TCR(T細胞受容体)を有するCD4+CD25+T細胞を
生成し/増殖させるため、熟樹状細胞(DC)(または人工細胞を含む他の抗原提示細胞
)と共に用いることができる。該樹状細胞または他の抗原提示細胞は、組織または(規定
された、もしくは規定されていない)他の任意の抗原をパルスされ/負荷され/供給され
るか、またはされない。規定された抗原の例としては、自己抗原(例えば、尋常性天疱瘡
の場合にはデスモグレイン(desmoglein)3;白斑の場合にはメランAまたは
チロシナーゼ;甲状腺炎の場合にはサイログロブリン)または外来抗原(例えば、C型肝
炎のような病原体由来抗原を含む)、または同種異系抗原/移植抗原が含まれる。規定さ
れていない抗原としては、組織または細胞由来抗原(例えば、壊死性またはアポトーシス
性細胞、または組織由来RNA、または興味のある細胞と樹状細胞/抗原提示細胞とのハ
イブリッド形態、または規定されない抗原の樹状細胞もしくは他の抗原提示細胞への送達
という他の形態)または病原体由来抗原が含まれる。自己または非自己CD4+CD25+
T細胞および/または樹状細胞を用いうる。
【0015】
(G)上記(14)に記載のT細胞上のCD4および/またはCD25および/または
CTL−A4(CD154)分子(entities)と特異的に結合する作用物質は、
免疫応答、例えば、CD4+CD25+T細胞による、腫瘍免疫を高めるためのin vi
vo弱化調節を増大させるために、例えば、抗CD25および/または抗CTL−A4m
Ab(未改変の、またはトキシンとコンジュゲート化する等の改変されたmAb)によっ
て、または免疫吸着法によって(血液をカラムに通し、そしてCD4+CD25+T細胞は
該細胞の表面上に発現される分子に対する固相結合抗体、例えば、CD25によって除去
される)、CD4+CD25+T細胞をin vivoで除去するため、およびその除去を
モニターするために用いることができる。
【0016】
(H)本発明の別の好ましい実施形態においては、上記(3)に記載の増殖させた(す
なわち、活性化された)CD4+CD25+T細胞(ならびに上記(1)および(12)に
記載のT細胞)は固定することができる。そのような固定化T細胞は、(増殖させた)T
細胞を適切な固定剤(パラホルムアルデヒドを含むが、それだけに限定されない)を用い
てex vivo処理することによって得ることができる。好ましくは、固定化は細胞を
0.5から5%(w/w)パラホルムアルデヒド水溶液、最も好ましくは約2%(w/w
)パラホルムアルデヒド水溶液に15分から3時間、最も好ましくは1時間懸濁し、その
後適切な洗浄工程を実施することによって達成される。
【0017】
(I)上記(5)に記載の薬剤、上記(9)および(14)に記載の作用物質、または
上記(10)に記載の方法において使用されるCD4+CD25+T細胞は、自己または非
自己調節T細胞であることができる。非自己調節T細胞の場合、該T細胞は上記(H)に
記載するように固定化されることが好ましい。
【0018】
(J)上記(4)および(13)に記載の医薬組成物、上記(5)に記載の薬剤、上記
(7)、(9)および(14)に記載の作用物質、および上記(6)、(8)および(1
0)に記載の方法に用いられるT細胞は、当業者に公知の薬学上/診断上適切な担体、溶
剤、希釈剤および添加剤、等のさらなる成分を含んでもよい。これらの成分の濃度は、当
業者によってそれぞれの目的に合わせて適切に選択される。
【0019】
過去2〜3年の間に齧歯類における数個の調節細胞種(これらの相互関係はまだ最終的
に明らかにされていない)がさらに報告されたことにより、サプレッサーまたは免疫調節
T細胞という概念は再生した。いわゆるTr1およびTh3細胞は、直接的な細胞接触を
必要とせずに、高レベルのIL−10およびTGF−βをそれぞれ分泌することによって
バイスタンダー抑制を介在する(Groux,H.ら,Nature 389:737−
742(1997); Fukaura,H.ら,J.Clin.Invest.98:
70−77(1996))。調節T細胞集団のうち、これまでに最もよく特定され、そし
て最も重要と思われる集団のうち、同定された集団はCD4+CD25+T細胞である。こ
の細胞は齧歯類に本来的に存在し(リンパ器官におけるCD4+細胞の約10%に相当す
る)、CD25(IL−2R−α)の構成発現によって特定され、そしてin vivo
における寛容の維持および自己免疫疾患の防止に決定的に重要であることが明らかである
。驚くべきことに、ヒトにおける等価の特性を示す細胞集団は今日まで報告がない。ここ
に我々は、従来の記憶T細胞に相当すると考えられていたヒト血液中のCD4+CD25+
T細胞が(Kanegane,H.ら,Int.Immunol.3:1349−135
6(1991);Taka,K.ら,Immunol.72:15−19(1990);
Jackson,A.L.ら,Clin.Immunol.Immunopathol.
54:126−133(1990))、実は、齧歯類において長年にわたって知られ、か
つ研究されてきた固有のCD4+CD25+調節T細胞のヒトにおける対応物であると思わ
れることを示した。我々は、成人血液からかなりの量(CD4+細胞の平均6%)のCD
+CD25+T細胞を単離することができ、詳細な研究およびCD4+CD25-T細胞と
の比較を行うことができた。その結果、ヒトCD4+CD25+T細胞はマウスCD4+
D25+ 免疫調節T細胞と重大な表現型および機能的特徴を共有することが判明した。
最も興味深く、以前には同定されなかった表現型的特徴は、CTLA−4分子(CD15
2)がヒトCD4+CD25+T細胞によってすでに構成的に発現されており(細胞内では
高レベルで、表面では低レベルで)、TCRを介した刺激後、さらにアップレギュレーシ
ョンされ、そしてその後少なくとも1週間は表面で高レベルを維持したことであった(こ
れは、刺激後、de novoにおいてCTLA−4を発現したが、その発現はごく一過
性であったCD4+CD25-T細胞とはっきりとした対照をなす)(Thompson,
C.B.,Allison,J.P., Immunity,7:445−450(19
98);Chambers,C.A.ら,Immunol.Rev.153:27−46
(1996))。CD4+CD25-によるCTLA−4の発現パターンは、マウスCD4
+CD25+調節T細胞との関係をすでに裏付けるものであった。なぜなら、後者の細胞は
そのin vivo抑制活性に必須の分子としてCTLA−4を構成的に発現するからで
ある(Read,S.ら,J.Exp.Med.192:295−302(2000;S
alomon,B.ら,Immunity,12:431−440(2000))。マウ
ス対応物と同様に、ヒトCD4+CD25+T細胞も、プレート結合抗CD3および抗CD
28によってポリクローナルな活性化に対しても、その後の最も有効な本来的な免疫刺激
細胞、すなわち成熟(同種異系)DCを用いて刺激しても(反復してさえも)、刺激に際
してほとんど増殖を示さなかった。これらの刺激を高用量のIL−2 (500 U/m
l)と組み合わせた場合、マウスについて記載されているようにアネルギーが部分的にく
つがえされた(Thorton,A.M.,Shevach,E.M.,J.Immun
ol.164:183−190 (2000))。高用量のIL−15 (50−100
ng/ml)が匹敵する増殖を誘導したこと、およびIL=2およびIL−5を組み合
わせた場合の作用は低用量(それぞれ10 U/mlおよび10 ng/ml)でも強力
な相乗作用を有し、活発な増殖を誘導した、という新たな発見があった。CD4+CD2
+T細胞の増殖は、潜在的な治療の適用および更に詳細な研究(作用機構および分子的
研究を含む)のためのこれらの細胞のクローニングに不可欠であるため、上記の発見が重
要であることが判明するであろう。興味深いのは、中和性抗IL−10 mAbが増殖を
促進しなかったことで、これらの細胞によるIL−10放出が自己分泌様式においてアネ
ルギーを引き起こしていないことが示された。共培養実験において、CD4+CD25+
細胞は別の重要な特徴を示した。すなわち、これらの細胞は自身のTCRを介して活性化
された後にのみ、接触および用量依存的で、かつサイトカイン非依存的に、CD25-
D4+または CD8+T細胞の増殖を抑制した。我々のex vivo系では、この抑制
が最近TCRトランスジェニックマウスを用いて示されたように(Thorton,A.
M.,Shevach,E.M.,J.Immunol.164:183−190(20
00))、完全に抗原非特異的なものかどうか調べることはできなかった。しかし、これ
らの細胞を増殖させるための我々のIL−2+IL−15アプローチを用いれば、個々の
作用機構研究は可能であろう。
注目すべきことは、我々がヒト血液からex vivoで単離したCD4+CD25+
細胞と実質的に同一の調節特性および表現型を有するT細胞が、未成熟DCを用いてヒト
の未処置T細胞を反復刺激することによってin vitroで作製できると示した最近
の報告である(Jonuleit,H.ら,J.Exp.Med.192:1213−1
222(2000))。マウスにおいては、CD4+CD25+調節T細胞集団は胸腺でた
えず作られているが(Itoh,M.ら,J.Immunol.162:5317−53
26(1999))、末梢における調節T細胞の維持には組織特異抗原およびIL−2の
存在が必要である(25,26)。2つの他の発見(Jonuleit,H.ら,J.E
xp. Med.192:1213−1222(2000))に基づいて、アポトーシス
性抗体の摂取を介して末梢組織をサンプリングした未成熟DC(Steinman,R.
M.ら,J.Exp.Med.191:411−416(2000):Roncarol
o,M.G.,J.Exp.Med.193:F5−F9(2001))および最近の普
遍的又は組織特異的な自己抗原が、胸腺調節T細胞の移動における生存およびおそらく増
殖程度がわずかであることの原因であると確かに推測しがちである。Ex vivoで単
離されたCD4+CD25+調節T細胞の生存は未成熟DCとの相互作用によって促進され
うると思われる。また、最近報告された、未成熟DCによる未処置T細胞からのCD4+
CD25+T細胞のin vitro「生成」は(Jonuleit,H.ら,J.Ex
p.Med.192:1213−1222(2000))、むしろ最初の接種物中にあら
かじめ存在しているCD4+CD25+が持続的に生存していることを表すものと思われる
。同種異系の成熟DCは調節の有効なインデューサーであったが、ex vivoで単離
されたヒトCD4+CD25+ T細胞と同遺伝子型成熟DCとの相互作用は、それらの抑
制特性を活性化するには不十分であることが見出されたことにもまた注目すべきである。
この観察は、検証可能な仮説を再度示唆する。例えば、成熟同系DCに対して未成熟な同
系DCはCD4+CD25+T細胞を活性化するか(それらが相互作用のための何らかの特
異的リガンドを担持することを示唆する)、または上記DCはアポトーシス体の摂取後に
のみ、その活性化を行うか(自己抗原の提示が必要であることを示唆する)?さらに、ご
くわずかのリコール抗原(例:インフルエンザタンパク質/ペプチド)を提示する成熟D
Cは、CD4+CD25-T細胞集団およびCD4+CD25+T細胞集団の両方でT細胞を
刺激できるか(自己抗原の他に外来抗原の認識も炎症部位において調節の引き金をひきう
ることを示唆する)。
【0020】
要約すれば、健常なヒト成人の末梢血中に、かなり大きい集団(約6%)のCD4+
D25-T細胞が存在することが示された。以前に考えられていたのとは対照的に、これ
らの細胞は従来の記憶T細胞ではなく、齧歯類において多年にわたって研究されてきたC
D4+CD25-「プロフェッショナル」抑制/調節T細胞のユニークな集団と同等な調節
T細胞である。ヒトCD4+CD25+調節T細胞の同定および特定は、種々の病態におけ
るそれらのモニタリングを可能とし、そして自己免疫、移植片拒絶、および癌を理解し、
治療するうえで重大な意味がある。
【0021】
本発明を以下の図および実施例によってさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限
定するものではない。
【0022】

図1:CD4+CD25+T細胞は、CD4+CD25-T細胞に対して明確な表現型的相違
を示す。陰性MACSソーティングによってPBMCからCD4+T細胞を単離し、高度
に精製された未処置CD4+T細胞を得た。これらの細胞を抗CD25磁性ビーズで標識
し、ソーティングした。
(A):ソーティングにより実質的に純粋なCD25+T細胞が得られた。20回の独立
した、標準化された実験の代表的な結果を示す。
(B):CD4+CD25+、CD4+CD25-および活性化CD4+CD25-T細胞の表
現型を「材料および方法」の項に記載するように分析した。さらに、固定化抗CD3+可
溶性抗CD28を用いてCD4+CD25-T細胞を活性化した。活性化後、細胞を抗CD
25磁性ビーズで標識し、ソーティングした。5つの独立した実験で、結果は類似してい
た。
(C):抗CTLA−4抗体を用いてCD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞を
37℃で2時間染色した。染色はex vivoで、そして固定化抗CD3+可溶性抗C
D28を用いた活性化の後の異なる時点で実施した。4つの独立した実験の代表的結果を
示す。
【0023】
図2:CD4+CD25+T細胞は、同種異系刺激およびポリクローナルな刺激の両方に
対して非増殖性/アネルギー性である。これはIL−2および/またはIL−15の添加
によって部分的にくつがえされるが、中和性抗IL−10抗体によってはくつがえされな
い。
(A):CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞を図1に示すMACSソーティ
ングによって成人血液から単離した。T細胞1x105個/96ウエルを異なる数の成熟
同種異系DCで刺激した。T細胞の増殖(3つの培養物)を[3H]Tdr取り込みによ
って測定した。6つの独立した実験において結果は類似していた。
(B):全CD4+、CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞を上記(A)に記
載するように処理した。3つの培養物における増殖を[3H]Tdr取り込みによって測
定した(5つの独立した実験の代表的結果)。
(C):MACSソーティングを行ったCD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞
をプライミングし、同一ドナー由来の成熟同種異系DCで毎週再刺激した(DC:T細胞
比は1:20)。増殖(T細胞1x105個/96ウエル)を[3H]Tdr取り込みによ
って測定した。3つの独立した実験において類似の結果が得られた。
(D):固定化抗CD3(10μg/ml)および可溶性抗CD28(10μg/ml)
を用いて(上のパネル)、または成熟同種異系DCを用いて上記(A)に記載するように
(下のパネル)、CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞を刺激した。500U
/mlのIL−2、100ng/mlのIL−15、10U/mlのIL−2+1ng/
mlのIL−15の混合物、または10μg/mlの抗IL−10を培養開始時に添加し
た。培養開始の5日後に[3H]Tdr取り込みを測定した。3つの独立した実験のうち
1つを示す。ポリクローナルなまたは同種異系T細胞刺激物の不存在下でのIL−2およ
び/またはIL−5の添加は、CD25+またはCD25-T細胞サブセットにおいて著し
い増殖を誘導しなかった(データはここに示していない)。
【0024】
図3:TCRによって刺激された場合、CD4+CD25+T細胞はCD4+およびCD
+T細胞の活性化を細胞接触および用量依存的に抑制する。
(A,B):MACSソーティングを行った全CD4+(A)およびCD8+(B)T細胞
(1x105個/96ウエル)を図に示した比でCD4+CD25+T細胞に添加し、そし
てDC対CD4+またはCD8+T細胞の比を1:20として同種異系DCで刺激した。5
日後に[3H]Tdr取り込みによって増殖を測定した。5つの独立した実験のうち1つ
を示す。
(C):同一ドナー(ドナーI)からDCおよびCD4+CD25+T細胞を生成させ/単
離した。さらに、別のドナー(ドナーII)から全CD4+T細胞およびCD4+CD25
+T細胞を単離した。全CD4+T細胞105個/96ウエルをDC細胞5x103個/ウエ
ルと共に培養した(すなわち、DC:T比=1:20;結果はDC:T比が1:100の
場合(データはここに示していない)に匹敵した)。次に、ドナーIおよびドナーII由
来のCD4+CD25+ T細胞をそれぞれ添加した。培養開始から5日後に[3H]Td
r取り込みによって増殖を測定した。3つの独立した実験の代表的な結果を示す。
(D):全CD4+T細胞またはCD4+CD25+T細胞(T細胞105個/96ウエル)
を5x103個の同種異系成熟DCで刺激した(DC:T比 = 1:20)(上の2つ
のパネル)。さらに、全CD4+T細胞を1:1の比でCD4+CD25+T細胞と共に共
培養し(T細胞105個/96ウエルのそれぞれ)、そして10μg/mlの抗IL−1
0、2μg/mlのTGF−β、500U/mlのIL−2、50ng/mlのIL−1
5、または10U/mlのIL−2と1ng/mlのIL−15との混合物の存在下また
は不存在下で、DC:T比を1:20として同種異系DCを用いて再度刺激した。平行し
て行ったTranswellアプローチでは、同種異系DCを用いてTranswell
チェンバー内でCD4+CD25+T細胞を刺激し(DC/T細胞比は1:20)、そして
全CD4+ T細胞レスポンダーを同種異系DCと共にDC:T比=1:20で再度ウエル
に入れた。培養開始から5日後に[3H]Tdr取り込みによって増殖を測定した。4つ
の代表的実験のうち1つを示す。
【0025】
図4:CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞の異なるサイトカインプロフィ
ール。
(A):MACSソーティングを行ったCD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞
をPMA(20ng/ml)およびA23187Ca2+イオノフォア(500μg/ml
)で6時間刺激した。最後の5時間の間、モネンシン(Monensin)(2μM)を
添加した。CD3表面発現の染色を実施した。細胞を洗浄し、固定し、透過性とし、そし
て細胞内サイトカインの検出のためFITC−またはPE−結合特定抗体を用いて染色し
た。類似の結果が得られた5つの独立した実験のうち1つを示す。結果は、T細胞をプレ
ート結合抗CD3+可溶性抗CD28ABで刺激した場合(データはここに示していない
)と同じであった。
(B):CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞をプレート結合抗CD3+可溶
性抗CD28で活性化した。培養開始48時間後に、RNaseプロテクションアッセイ
によりRNA発現の分析を実施した。
(C):上清中のサイトカインをELISAによって測定した(5つの独立した実験のう
ち1つを示す)。
【0026】
材料および方法
培養培地:1%熱不活化自己血漿、20μg/mlゲンタマイシン(Merck)および
2 mMグルタミン(Bio Whittaker)を補充したRPMI 1640(B
io Whittaker)を樹状細胞(DC)の作製に用いた;1%熱不活化単一ドナ
ーヒト血清、20μg/mlゲンタマイシン(Merck)および2mMグルタミン(B
io Whittaker)を補充したX−VIVO−20 (Bio Whittak
er)をT細胞培養に用いた。
サイトカイン:この実験に用いた全てのサイトカインは組み換えヒトタンパク質であった
。最終濃度は、GM−CSF 1,000U/ml(LeukomaxTM;Novart
is)、IL−4 800U/ml(Sandoz)であった。IL−2(Proleu
kin;Chiron Corp.)およびIL−15(PeproTech)は、指示
した濃度で使用した。DCを成熟させるため、我々はIL−1β 2ng/ml(Sig
ma); IL−6 1000U/ml(Sandoz);TNF−α 10ng/ml
(Bender,Vienna)およびPGE2 1μg/ml(Sigma)からなる
カクテルを用いた。
抗体:免疫染色のため、CD3、CD4、CD5、CD8、CD14、CD19、CD2
5、CD28、CD45RA、CD45RO、CD56、CD62L、CD80、CD8
3、CD86、CD95、CD95L、CD122、CD152、CD154、HLA−
DRに対するPE−およびFITC−結合抗体(Ab)(すべてBD Pharming
en製)、ならびにそれぞれのマウスおよびラットイソタイプ対照を用いた。細胞内サイ
トカイン染色に用いたAbは、FITC−およびPE−結合抗IL−2(MQ1−17H
12)、抗IL−4(8D4−8)、抗IL−10(JES3−19F1)および抗IF
N−γ(4S.B3)(すべてBD Pharmingen製)であった。未結合抗IL
−10(JES3−19F1)(Pharmingen)および抗TGF−β(R&D
Systems)を中和実験に使用し、抗CD3(UCHT1)および抗CD28(CD
28.2)をT細胞のポリクローナルな活性化に用いた。
サイトカインアッセイ:X−VIVO−20+1%血清中で、T細胞を同種異系DCまた
はプレート結合抗CD3(10μg/ml)+可溶性抗CD28(10μg/ml)で刺
激した。ヒトIL−2、IL−4、IL−10、IFN−γおよびTGF−β用の市販の
ELISAキット(BD Pharmingen)を用いた上清の分析によって、異なる
時点で、サイトカイン分析を実施した。細胞内サイトカイン産生を分析するため、T細胞
をPMA (20ng/ml)およびCa2+イオノフォアA23187(500μg/m
l)(ともにSigma製)で6時間、またはプレート結合抗CD3および可溶性抗CD
28 Abで6時間刺激した。培養の最後の5時間の間、モネンシン2μM(Sigma
)を添加した。細胞を回収し、洗浄し、固定し、サポニンで透過性とし(Fix/per
m溶液、BD Pharmingen)、そしてサイトカイン特異的Abまたはイソタイ
プで染色した。サイトカインmRNA分析のためには、T細胞をプレート結合抗CD3お
よび可溶性抗CD28 Abで刺激した。RNaseプロテクションアッセイテンプレー
トセット(BD Pharmingen)によって細胞を分析した。
細胞単離およびDC作製:DCは、軟膜または白血球採血物(両方ともDepartme
nt of Transfusion Medicineより入手。インフォームドコン
セントが与えられた後に健常なドナーから得たもの)から文献に記載されているように作
製した(18、19)。すなわち、フィコール密度勾配遠心分離によりPBMCを単離し
た。プラスチック接着によって単球を単離し、そしてIL−4およびGM−CSFを補充
したRPMI培地で培養した。6日目に成熟カクテル(IL−1β、IL−6、PGE2
およびTNFα)を添加した。7日目に非接着性細胞を回収し、共刺激分子(CD80、
CD86およびCD83)について90%以上二重陽性である成熟DCを構成した。
陰性CD4+T細胞単離セット(Miltenyi Biotech)を用いてPBMC
からCD4+T細胞を単離した。CD25マイクロビーズ(Miltenyi Biot
ech)を用いて、純粋な未処置CD4+T細胞からCD4+CD25+T細胞を単離した
。CD8+T細胞の単離は、陰性CD8+T細胞単離セット(Miltenyi Biot
ech)を用いて実施した。FACSによって純度を評価した。
フローサイトメトリー分析:免疫蛍光染色のため、細胞を洗浄し、各抗体の最適希釈物を
20分間4℃で染色した。細胞を再度洗浄し、フローサイトメトリーで分析した(FAC
S ScanTM CELLQuestTMソフトウエア:Becton Dickinso
n)。細胞表面CD152発現の分析のため、細胞を適切な抗体を2時間37℃で染色し
た。
増殖アッセイ:異なるCD4+サブタイプの増殖を評価するため、ソーティングしたT細
胞105個をX−VIVO−20中で異なる数のDCと共に、または異なる濃度のプレー
ト結合抗CD3+可溶性抗CD28と共に、96ウエルプレートを用いてインキュベート
した。調節特性を評価するためには、105個のバルクCD4+T細胞を96ウエルプレー
ト中で5x103個(いくつかの実験では1x103個)のDCと共に培養した。精製CD
+CD25+またはCD4+CD25-T細胞を異なる濃度で添加した。4−5日培養した
後、[3H]Tdr(37KBq/ウエル)を添加し、さらに16時間培養した。液体シ
ンチレーションカウンターを用いて増殖を測定した。
Transwell実験:24ウエルプレートを用いてTranswell実験を実施し
た。106個のバルクCD4+T細胞を5x103個のDCで刺激した。さらに、106個の
CD4+CD25+またはCD4+CD25-T細胞を培養物に直接添加するか、またはTr
answellチェンバー(Millicell,0.4μm:Millipore)に
入れた。5日間培養後、T細胞を96ウエルプレート3枚に移した(105個/ウエル)
。[3H]Tdrで16時間パルスした後、液体シンチレーションカウンターを用いて増
殖を測定した。
【実施例】
【0027】
実施例1:CD4+CD25+T細胞は、同種異系およびポリクローナルな刺激の両方に
対して増殖応答が低い。
増殖可能性が低いことは、マウス系において十分特定された調節性CD4+CD25+T細
胞に高度に特徴的である(Sakaguchi,S.ら,J.Immunol.,155
:1151−1164(1995))。ヒトCD4+亜集団の増殖能を分析するため、C
D4+ T細胞をCD25の発現について磁性によりソーティングした。MACS CD
4陰性選択キットを用い、その後でCD25について陽性選択を用いることによって、C
D4+CD25+T細胞の95%以上純粋な集団を得た(図1A)。これらの細胞は、我々
が試験した健常な成人の血液中の末梢CD4+T細胞の約6%(2.8−17.2%,n
=20)を構成していた。
成熟DCは最も強力な抗原提示細胞として知られている(Bancherau,J.,S
teinman,R.M.,Nature 392:245−252(1998))。し
かし、CD4+CD25+T細胞は十分成熟した同種異系DCでin vitroで刺激さ
れた場合、増殖応答を実質的にまったく示さなかった。これはCD4+CD25-T細胞(
図2A、B)または全CD4+集団(図2B)とはっきりとした対照をなした。興味深い
ことに、CD25+T細胞を枯渇させたCD4+集団は、同種異系DCで刺激された場合、
全CD4+集団よりも高い増殖を示した(図2B)。
次に、CD4+CD25+T細胞は成熟DCで反復刺激した場合にのみ増殖するのかどうか
を確認した。再刺激後、CD25-T細胞の増殖応答は幾分増大したが、CD25+T細胞
の応答は非常に低いままであった(図2C)。同種異系成熟DCによるプライミングおよ
び再刺激は、再刺激の2ラウンド終了後にCD25-集団の30から50倍の増大をもた
らした。対照的に、CD25+集団には著しい増大は見られなかった(データはここに示
していない)。最初の接種物と比較すると絶対数が軽度(約10%)に低下したCD4+
CD25+T細胞が、反復刺激後に、著しいアポトーシスまたは壊死が明らかに存在しな
い状態で回収された(データはここに示していない)。
CD4+CD25+T細胞の増殖応答が非常に低いことは、これらの細胞集団をプレート結
合抗CD3+可溶性抗CD28でポリクローナルに刺激した場合にも明らかであった(図
2D)。T細胞増殖因子であるIL−2およびIL−15が増殖可能性に影響を及ぼしう
るかどうかを試験するため、種々の用量をCD4+CD25+およびCD4+CD25-T細
胞に添加し、これらの細胞を固定化抗CD3+可溶性抗CD28(図2D、上のパネル)
または成熟同種異系DC(図2D、下のパネル)で刺激した。一連の予備実験は、高用量
(100−1000 U/ml)の場合にのみIL−2がCD25+T細胞の増殖を促進
することを明らかにした。IL−15は、50−100ng/mlという非常に高い用量
でのみ類似の効果を有した。これらのサイトカインを混合した場合、それらは強い相乗効
果を有し、10U/mlのIL−2および10ng/mlのIL−15という用量がCD
+CD25+T細胞の増殖を促進するに十分であった。ポリクローナルまたは同種異系T
細胞刺激がない状態でIL−2および/またはIL−15を添加しても、CD25+また
はCD25-T細胞サブセットの顕著な増殖は誘導されなかった(データはここに示して
いない)。
【0028】
実施例2:CD4+CD25+T細胞は、CD4+CD25-T細胞に対して明確な表現型
的相違を示す。
CD4+CD25+T細胞集団をさらに特定するため、CD4+CD25+およびCD4+
D25-上の種々の表面分子の発現を、刺激したCD4+CD25-T細胞上の分子の発現
と比較した(図1B)。3つの集団の全てがCD3およびCD4の相同発現を示した。F
ACS分析の結果、単球、B細胞、CD8+T細胞またはNK細胞等の細胞の混入は全く
見られなかった(データはここに示していない)。予め刺激しない場合、すなわちex
vivoでCD25+集団はすでに細胞内で高レベルにおよび細胞表面CTLA−4 (
CD152)で低レベルに発現していた。Ex vivoで単離されたCD4+CD25+
T細胞はさらにCD122(IL−2Rβ鎖)およびHLA−DR(約50%)を構成
的に発現し、そして主として(約80%)記憶T細胞表現型に類似したCD45RO細胞
から成っていた。きわめて対照的に、ex vivoで単離されたCD4+CD25-T細
胞は、CTLA−4(細胞内にも表面上にも)、CD122またはHLA−DRを発現せ
ず、CD45ROよりもCD45RAを発現する細胞の方が多かった。しかし、プレート
結合抗CD3+可溶性抗CD28で活性化した後、ほとんどのCD4+CD25-は強くC
D25+となり(CD25の発現レベルはCD4+CD25+T細胞と比較して約1対数分
だけ高かった)、そして予想通り、高レベルのHLA−DRおよびCD122を示した(
ここでもCD4+CD25+T細胞と比較して約1対数分だけ高かった)。さらに、細胞内
および表面CTLA−4の両者は、24−48時間以内にアップレギュレーションされた
が、予想通りその後急速にダウンレギュレーションされた(図1C)。CTLA−4/C
D152発現の速度論は、CD4+CD25+T細胞が刺激された場合は顕著に異なること
が判明した。これらの細胞もまた(わずかとはいえ構成的にすでに存在している)CD1
52表面発現をアップレギュレーションし、CD152の発現は、強度に1週間以上にわ
たって一定を保たれた(図1C)。抗CD28、CD62L、CD69、CD95、CD
95L、CD154 (CD40L)等のいくつかの他のmAbを用いた染色では、CD
+CD25+とCD4+CD25-T細胞との間で再現性はなく、著しい相違も明らかにさ
れなかった。
【0029】
実施例3:CD4+CD25+T細胞は、TCRを介して刺激された場合、CD4+およ
びCD8+T細胞の活性化を細胞接触依存的および用量依存的に抑制する。
CD25+T細胞の推定上の調節特性を分析するため、共培養実験を実施した。最初の一
連の試験で、我々は特定のドナーから全CD4+集団ならびにCD25+およびCD25-
画分を単離した。次に、全CD4+T細胞をCD4+CD25+またはCD4+CD25-
T細胞亜集団と指示された比で混合し、同種異系成熟DCで刺激した(図3A)。CD4
+CD25+T細胞は全CD4+T細胞の増殖を著しい程度に抑制し、そして1:1の比で
は増殖を実質的にブロックした(cpmはCD25+T細胞増殖のバックグラウンドレベ
ルを表す;図2A−D参照)。CD25+T細胞の代わりにCD25-T細胞を添加すると
、増殖がわずかに増大した(データはここに示していない)。CD4+CD25-はポリク
ローナルに(図1B参照)または同種異系DCによって(データはここに示していない)
刺激されると迅速にCD25およびCD122(すなわち、IL−2Rの両方の鎖)を発
現するので、この所見はCD4+CD25+T細胞サブセットの抑制活性が単にIL−2の
消費またはIL−2Rを介したその受動的吸着によるものではないことを示した。CD4
+CD25+T細胞はまた、ダウンレギュレーションの強さはより小さいが、全CD8+
細胞に対して抑制活性を発揮した(図3B)。
さらなる1組の実験において、同遺伝子型DCによるCD4+CD25+T細胞の活性化は
、それらの調節特性の誘導にとって十分かどうかを確認した。この目的のため、同一ドナ
ー(ドナーI)から成熟DCおよびCD4+CD25+T細胞を生成させ/単離した。さら
に、別のドナー(ドナーII)から全CD4+T細胞およびCD4+CD25+T細胞サブ
セットを単離した。次に、全CD4+T細胞(ドナーII)を、ドナーIまたはドナーI
Iから単離した種々の数のCD4+CD25+T細胞の不存在下(図3C、CD4+のみ)
または存在下で、同種異系成熟DC(ドナーI)で刺激した(図3C)。ドナーII由来
の全CD4+T細胞は、同種異系のドナーI由来DCで刺激した場合、予想通り活発に増
殖した(図3C、CD4+のみ)。ドナーI由来CD4+CD25+T細胞(すなわち、用
いたDCに対して同遺伝子型)の存在下では、全ドナーII由来CD4+T細胞の増殖(
すなわち、同種反応性)は全く抑制されなかった(図3C)。しかし、ドナーII由来C
D4+CD25+T細胞(すなわち、用いたDCに対して同種異系)が添加されると強度の
抑制が起こった(図3C)。DC、全CD4+T細胞およびCD4+CD25+T細胞が3
人の異なるドナーに由来する実験においても、抑制が観察された。これらのデータは、C
D4+CD25+T細胞のTCR媒介性活性化は、それらの細胞に調節機能を発揮させるた
めに必要であること、および同遺伝子型DCはCD4+CD25+T細胞の抑制活性を誘導
するには不十分であることを示した。
次に、Transwellチェンバー実験を実施して、CD4+CD25+T細胞の調節機
能が主として可溶性因子によって媒介されるかどうか、また細胞−細胞接触を必要とする
かどうかを調べた(図3D)。図3Dに示すように、CD4+CD25+T細胞は同種異系
DCの存在下で全CD4+T細胞の増殖をほぼ完全に抑制する。Transwellチェ
ンバーを用いた上記2つの集団の分離は、CD4+CD25+T細胞の抑制作用を実質的に
排除した。これらの観察は、CD4+CD25+T細胞の抑制能にとって直接的な細胞接触
が必須であることを示唆した。なぜなら、Transwellチェンバーの半透過膜は可
溶性因子は自由に通過できるが、直接的な細胞接触は回避されるからである。またTra
nswell実験により、CD4+CD25+T細胞によるIL−2の消費は抑制に関与す
る作用機構ではないことが確認された。
【0030】
調節細胞と応答細胞の間の密接な相互作用が必要であることは自明であるにもかかわら
ず、抗原提示DCのターゲッティングも可溶性因子の役割もTranswell実験によ
って排除されなかった。したがって、プレート結合抗CD3Ab(と可溶性抗CD28
Abとの組み合わせ)もまた、抗原提示細胞非依存性およびポリクローナル性T細胞刺激
物として用いられた。これで刺激すると、全CD4+T細胞のみが強い増殖を示した。上
記のように(図2D)、CD4+CD25+T細胞は増殖しなかった。両集団の共培養にお
いては、比が1:1の場合、対照と比較して少なくとも75%の低下が見られた(データ
はここに示していない)。これらのデータは、主として調節はAPC機能の調節を介して
起こるのではないことを示唆していた。サイトカインIL−10およびTGF−β(それ
ぞれいわゆるTr1およびTh3の抑制活性にとって決定的)(Groux,H.ら,N
ature 389:737−742(1997);Fukaura,H.ら,J.Cl
in.Invest.,98:70−77(1996))に対する中和抗体は、CD4+
CD25+T細胞の調節活性を排除しなかった。このことは、これらのサイトカインが少
なくとも我々が実施したアッセイの中では何ら重要な抑制的役割を果たしていないことを
示している。共培養物にCD4+CD25+T細胞の増殖を促進する高用量でIL−2およ
び/またはIL−15を添加すると(図2D参照)、それらの細胞の抑制作用が低下した
。しかし、抑制活性は排除されなかったように思われる。データを解釈する際には、CD
+CD25+ T細胞の著しい程度の増殖を考慮に入れなければならないからである(図
3D)。
【0031】
実施例4:CD4+CD25+T細胞はIL−10を優勢に分泌する。
サイトカインプロフィールを分析し、比較するため、新たにソーティングしたCD4+
D25+およびCD4+CD25-T細胞をプレート結合抗CD3+抗CD28で活性化し
た。次に上清をELISAによって分析し、そしてRNA発現をRNaseプロテクショ
ンアッセイによって分析した。さらに、細胞内サイトカインの染色を実施して、特定のサ
イトカインを放出する細胞の百分率を測定した。図4に示すように、CD4+CD25-
T細胞はIFN−γおよびIL−2を優勢に分泌し、IL−10およびIL−4はほとん
ど分泌せず、Th1様プロフィールに似ていた。他方、CD4+CD25+T細胞はIL−
10を優勢に産生し、IL−2、IL−4およびIFN−γは低レベルで産生するのみで
あり、Tr1細胞に類似していた。RNAレベルにおける両亜集団の比較は、CD25-
T細胞と比較してCD25+T細胞がより多いIL−10、より少ないIFN−γおよ
び類似したレベルのIL−2mRNAを発現することを明らかにした。IL−1受容体ア
ンタゴニスト(IL−1Ra)mRNAはCD4+CD25+T細胞中に優勢に見出された
が、他方、著しいレベルのIL−1βmRNAはCD4+CD25-T細胞にのみ存在した
。TGF−βは、両方の細胞種において類似の低レベルで発現されていた。
【0032】
実施例5:活性化し、その後固定したCD4+CD25+T細胞はなお調節能を示す。
MACSTMソーティングによって、成人血液由来の全CD4+T細胞からCD4+CD25
-およびCD4+CD25+T細胞を単離した。CD4+CD25+T細胞を3つの部分に分
割した。1つの画分は10μg/mlのプレート結合抗CD3抗体+10μg/mlの可
溶性抗CD28抗体を用いて一晩活性化した。翌日、この画分および非活性化CD4+
D25+T細胞の1部を2%ホルムアルデヒドで1時間固定した。3つ目の画分は未処理
のままにした。細胞を3回洗浄した。
未固定CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞を単独で、ならびにCD4+CD
25-T細胞と1:1の比で混合したCD4+CD25+T細胞の各画分を固定化抗CD3
および可溶性抗CD28で活性化した。5日後、[3H]Tdr取り込みによって増殖を
測定した。5つの独立した実験のうち代表的なものを図5に示す。図中、記号は以下のも
のを表す:
CD4+CD25- 未固定CD4+CD25-細胞
CD4+CD25+ 未固定CD4+CD25-細胞
Reg.1:1 未固定CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞、比1:

Reg.1:1
CD25+stim fix 活性化、固定化CD4+CD25+T細胞および未固定CD
+CD25-T細胞、比1:1
Reg.1:1
CD25+fix 非活性化、固定化CD4+CD25+T細胞および未固定CD4
+CD25-T細胞、比1:1
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】CD4+CD25-T細胞と比較した、CD4+CD25+T細胞が明確な表現型的相違を示すことを示す。
【図2】CD4+CD25+T細胞が同種異系およびポリクローナルな刺激の両方に対して非増殖性/アネルギー性であることを示す。これはIL−2および/またはIL−15の添加によって部分的にくつがえされるが、中和性抗IL−10抗体によってはくつがえされない。
【図3】TCRを介して刺激された場合、CD4+CD25+T細胞がCD4+およびCD8+T細胞の活性化を細胞接触および用量依存的に抑制することを示す。
【図4】CD4+CD25+およびCD4+CD25-T細胞のサイトカインプロフィールが異なることを示す。
【図5】活性化され、固定されたCD4+CD25+細胞がなお調節能を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抑制性および/または調節性ヒトCD4+CD25+T細胞。
【請求項2】
ヒト末梢血から好ましくは適切なモノクローナル抗体によって、および磁性分離または
免疫吸着法を用いて単離しうる、請求項1に記載のT細胞。
【請求項3】
CTLA−4+であり、かつ調節特性を有する、請求項1または2に記載の細胞。
【請求項4】
T細胞刺激剤または抗原提示細胞を用いて細胞をex vivoおよびin vivo
で刺激することを含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載のCD4+CD25+T細胞
を増殖させる方法。
【請求項5】
該T細胞刺激剤が
(a)スーパーアゴニスト性抗体を含む、抗CD3および/または抗CD28リガンド/
モノクローナル抗体、
(b) CD4+CD25+T細胞表面上のT細胞受容体に対する、またはT細胞受容体成
分に対するリガンド/抗体;または
(c)調節T細胞の表面に発現されたT細胞受容体に結合するMHC−ペプチド複合体;
または
(d)ホルボールエステルおよびカルシウムイオノフォア;
を含む組成物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該抗原提示細胞が自己、非自己、人工抗原提示細胞、等から選択される、好ましくは該
抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
該T細胞刺激剤および該抗原提示細胞がIL−2および/またはIL−5、IL−7お
よび/またはIL−9、IFN−αおよび/またはIL−10と共に用いられる、請求項
4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の方法によって得られる、増殖させたヒトCD4+CD
25+T細胞。
【請求項9】
好ましくはパラホルムアルデヒドでex vivo処理することによって得られる、固
定されたCD4+CD25+細胞である、請求項8に記載の増殖させたヒトCD4+CD2
+T細胞。
【請求項10】
請求項1〜3、8または9のいずれかに記載のヒトCD4+CD25+T細胞を含む医薬
組成物。
【請求項11】
規制医薬品を調製するための、請求項1〜3、8または9のいずれかに記載のCD4+
CD25+T細胞の使用。
【請求項12】
CD4+CD25+T細胞をヒトの血液または他の組織からex vivoまたはin
vivoで同定し、モニターしおよび/または除去する方法であって、
(i) T細胞上のCD4、および/またはCD25、および/またはCTL−A4(C
D154)分子(entities)と特異的に結合する作用物質/リガンド、好ましく
は抗CD4、および/または抗CD25、および/または抗CTL−A4抗体を用いる;
および/または
(ii)免疫吸着法を用いる;および/または
(iii)請求項4〜7に記載の刺激剤または抗原提示細胞を用いる;
ことを含む該方法。
【請求項13】
調節性CD4+CD25+T細胞をin vivoで誘導する作用物質を調製するための
、好ましくは患者の自己免疫疾患を治療するための作用物質を調製するための、請求項5
〜7に記載のT細胞刺激剤または抗原提示細胞の使用。
【請求項14】
請求項1〜3、8または9のいずれかに記載のCD4+CD25+T細胞の:
(a)他の増殖および/または機能的修飾性(抑制性/促進性)/アポトーシス性または
抗アポトーシス性因子の同定を可能とするようなアッセイにおける
(b) CD4+CD25+T細胞上の新規分子の同定を含む、CD4+CD25+T細胞に
よって発現される分子を同定するため、または製薬的に活性とみなされる分子を提示して
いるかどうかを同定するため、または
(c)調節性CD4+CD25+T細胞の前駆体細胞または子孫を同定するため、
の使用。
【請求項15】
養子免疫伝達療法のための作用物質、自己免疫疾患を含むがそれらだけに限定されない
、免疫性が増大した疾患を治療するための作用物質、または移植片対宿主病、移植片拒絶
、等の移植反応を阻止/治療する作用物質を調製するための、請求項1〜3に記載の富化
されたCD4+CD25+T細胞、または請求項8に記載の増殖させたT細胞、または請求
項9に記載の固定化されたT細胞の使用。
【請求項16】
養子免疫伝達療法のための方法であって、強すぎる、および/または病原性の免疫反応
を阻止または治療するため、または移植片対宿主病および移植片拒絶、等の移植反応を阻
止/治療するために、請求項1〜3、8または9のいずれかに記載の富化/増殖させた自
己または非自己の調節性CD4+CD25+T細胞を患者に注射/注入することを含む、該
養子免疫伝達療法の方法。
【請求項17】
特定の所望の抗原特異的T細胞受容体を用いてCD4+CD25+T細胞を調製する方法
であって、
(i) 抗原提示細胞、好ましくは該抗原を提示する未成熟または成熟樹状細胞(DC)
を用いて請求項1〜3のいずれかに記載のCD4+CD25+T細胞をin vitroま
たはin vivoで活性化し/刺激し/増殖させる;または、
(ii) CD4+CD25+調節T細胞(のサブセット)上に発現される特定のT細胞受
容体に対するリガンド/抗体、またはCD4+CD25+T細胞(のサブセット)上の特定
のT細胞受容体に結合するMHC−ペプチド複合体を用いる;
ことを含む該方法。
【請求項18】
該抗原提示細胞が組織または任意の規定されたもしくは規定されない抗原をパルスされ
/負荷され/供給され、ここで:
(i)該規定された抗原が、好ましくは自己抗原(尋常性天疱瘡の場合にはデスモグレイ
ン3;白斑の場合にはメランAまたはチロシナーゼ;甲状腺炎の場合にはサイログロブリ
ンを含むが、それらだけに限定されない)、外来抗原(C型肝炎のような病原体由来抗原
を含む)、または同種異系抗原/移植抗原であり、かつ
(ii)該規定されない抗原が、好ましくは組織または細胞由来抗原(壊死性またはアポ
トーシス性細胞、または組織由来RNA、または興味のある細胞と樹状細胞/抗原提示細
胞とのハイブリッドの形態、規定されない抗原の樹状細胞もしくは他の抗原提示細胞への
デリバリーという他の形態を含むが、それらだけに限定されない)または病原体由来抗原
である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
特定の所望の抗原特異的T細胞受容体を有し、かつ請求項17または18の方法によっ
て、または所望の抗原特異性を有するT細胞受容体を単離された又は増殖させたT細胞に
ex vivoでトランスフェクションすることによって得られる、CD4+CD25+
T細胞。
【請求項20】
請求項19に記載のT細胞を含む医薬組成物であって、好ましくは該医薬組成物が自己
免疫疾患、移植片対宿主病および移植片拒絶を含むがそれらだけに限定されない、免疫性
が増大した疾患を治療するのに適する、該医薬組成物。
【請求項21】
抗CD25および/または抗CTL−A4モノクローナル抗体等のリガンド/抗体、C
D4+CD25+T細胞(のサブセット)上のT細胞受容体と結合する抗体またはMHC−
ペプチド複合体または他のリガンドを含むが、それらだけに限定されないT細胞上のCD
4、および/またはCD25および/またはCTL−A4(CD154)分子(enti
ties)と特異的に結合する作用物質の、例えば腫瘍免疫を高めるためのCD4+CD
25+T細胞によるin vivo弱化調節を含む免疫応答を増強するためにCD4+CD
25+T細胞をin vivoで除去する又はその機能を損傷させる薬剤を調製するため
の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−60894(P2009−60894A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201830(P2008−201830)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【分割の表示】特願2002−571855(P2002−571855)の分割
【原出願日】平成14年3月12日(2002.3.12)
【出願人】(503431699)アルゴス セラピューティクス, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】