説明

ヒト認知の原因となる遺伝子変異体及び診断標的及び治療標的としてのそれらを使用する方法

【解決手段】 本発明では、ASDを含む神経疾患の検知及び治療のための組成物及び方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
35 U.S.C.§202(c)に基づいて、米国政府はここに記載された発明において一定の権利を有することを認めている。本発明は、国立保健研究機構、認可番号P50HD055784−01からの資金の一部により行われた。
【0002】
この出願は、35 U.S.C.§119(e)に基づいて、2008年11月14日に出願された米国仮出願第61/114,921号に対して優先権の主張を行い、その全体の開示は、完全に参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、遺伝子分野及び認知及び神経疾患の診断及び治療に関するものである。さらに具体的には、本発明は、ヒトの認知及び行動の様々な疾患に関連するコピー数多型(CNVs)を含む核酸を提供する。
【背景技術】
【0004】
いくつかの刊行物及び特許文献は、本発明の属する技術分野の状態を記述するため、明細書に引用されている。これらの引用はそれぞれ完全に参照により組み込まれる。
【0005】
神経疾患は、脳、脊髄、及び神経の疾患に起因することがある。神経疾患患者は、行動、言語、嚥下、呼吸または学習トラブルを有することがある。記憶障害、行動または心的認識の問題もまた、神経疾患に関連している。神経機能障害には様々な根本的な原因がある。これらには、遺伝的変異、有害物質への曝露及び障害を含めることができる。
【0006】
神経疾患は600種以上存在する。主なタイプは、ハンチントン病及び筋ジストロフィーのような遺伝子欠損により引き起こされる疾患;二分脊椎のような神経系の異常胚発達;パーキンソン病及びアルツハイマー病のような神経細胞が損傷または死んでいる変性疾患、脳卒中のような脳に血液を供給する血管の疾患;脊髄及び脳への傷害;癲癇のような発作障害;脳腫瘍のような癌;髄膜炎のような感染症を含む。
【0007】
ヒトの認知及び行動の複数の疾患は、遺伝的要因により変調するように思われる。しかしながら、遺伝的変異の影響する疾患の様式は複雑であり、よくわかっていない。同様にとらえどころのないことして、診断及び治療介入に関して有用な特定の遺伝子の正体が挙げられる。本発明の目的はこれらの遺伝子マーカーを提供すること及びさらには認知機能及び神経発達の損失につながる変化を特徴づけることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、神経疾患患者に必要な患者の神経疾患の発達の傾向を検知する方法が提供される。例示的な方法は、標的ポリヌクレオチド内に核酸を含む少なくとも1つのCNVの存在の検知を伴う。標的ポリヌクレオチドにCNVが存在すると、患者は自閉症/ASD発達のリスクが大きく、核酸を含むCNVは、神経疾患、特に自閉症スペクトラム障害において、排他的または著しく過剰なCNVの群から選択される。(表1、3、及び7を参照)。
【0009】
本発明の他の実施形態においては、神経の信号伝達及び/または形態を変える薬剤を同定するための方法が提供される。このような方法は、上記のCNVのうち少なくとも1つを発現する細胞を提供する工程(工程a);当該CNVに対応する同種の野生型配列を発現する細胞を提供する工程(工程b);それぞれの試料由来の細胞と試験薬剤とを接触させ、前記薬剤が工程a)の細胞の神経性信号伝達及び/または形態を、工程b)の細胞と比較して、変更させるかどうかを分析する工程であって、それにより、神経性信号伝達及び形態を変更する薬剤を同定するものである、前記分析する工程を有する。それを必要とする患者に、ここに記載された方法を使用して同定された薬剤からなる医薬組成物の投与を介して神経疾患を有する患者の治療法もまた本発明に含まれる。
【0010】
本発明はまた、神経疾患、特にASDにおいて排他的または著しく過剰な群から選択される核酸を含むCNVに関連する少なくとも1つの分離された神経疾患を提供する(表1及び表7参照)。このような核酸を含むCNVは神経細胞の発現に適した発現ベクターに随意含まれていることがある。また、それらは固体支持体に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、PennCNVにより決定されるコピー数応答を検証するTaqMan実験である。独立な方法を使用する結果を検証するため、遺伝子量を評価するようTaqManアッセイを設計した。代表的な実験結果は、1q21、8q21、及び10q24の遺伝子座での結果を強調表示する。欠失(赤い矢印)または増加(緑の矢印)を含む個々のAGREが示された。
【図2】図2は、NRXN1における稀少エクソン欠失(eDels)及び予測されたタンパク質構造を変更する新規候補遺伝子である。NRXN1 (a)、CLCKNKA (b)、GRIK5 (c)、及びGMPS (d)のそれぞれの基準遺伝子座及びエンコードされたタンパク質(上)は、変異遺伝子座及びタンパク質(下;灰色の網掛け部分)に対して対比される。独特な遺伝子欠失及び対応するタンパク質のトランケーションは、それぞれ赤及び黒のハッチングで強調表示される。図式化されたタンパク質ドメイン遺伝子は以下のとおりである:NRXN1−−ラミニンG(オレンジ色の六角形)、EGF様(青い楕円)、4.1結合モチーフ(緑色の四角形);CLCNKA−−塩化チャネル、コア(オレンジ色の四角形)、シスタチオニン ベータ−合成酵素、コア(青い五角形);GRIK5−−細胞外リガンド結合受容体(オレンジ色の楕円)、イオンチャンネル型グルタミン酸受容体(青い六角形);GMPS−−グルタミンアミドトランスフェラーゼ クラスI、C−末端(オレンジ色の四角形)、細胞外酵素S合成タンパク質B/キューオシン合成(青い四角形)、(GMP合成、C−末端(緑色の四角形)。NRXN1における稀少エクソン欠失(eDels)及び新規候補遺伝子は、予測されたタンパク質構造を変える。BZRAP1及びMDGA2 (c)のそれぞれの基準遺伝子座及びエンコードされたタンパク質(上)は変異遺伝子座及び対応するタンパク質(下;灰色網掛け部分)に対して対比される。独特の遺伝子欠失及び対応するタンパク質のトランケーションは、それぞれ赤及び黒のハッチングで強調表示される。図式化されたタンパク質ドメイン遺伝子は以下のとおりである。BZRAP1―Srcホモロジー3(オレンジ色の正方形)、フィブロネクチン、タイプIII(青い楕円);MDGA2−IG様ドメイン(青い五角形)、MAM aka メプリン/A5‐タンパク質/PTPmu(青い楕円)。
【図3】図3は、eDelsを運ぶ対象物を強調表示する赤い十字印と対象に影響されたAGREの多次元尺度構成法プロットである。ヨーロッパ系の対象物は、三角形の右側に向けてクラスタ化されている。
【図4A】図4Aは、偶然にのみ起因することのない再現実験の観察結果である。本発明者らは、再現実験データの10,000の表現型並べ替え検定を行い、及び、制御しない場合のCNVsを内部にもつ遺伝子座の数をそれぞれ決定した。したがって、それぞれの試験において、複製コホートにおいて制御されていない遺伝子座の数が決定した。並べ替え検定のいずれでも本発明者らのデータセット(n=14;p<0.0001)で観察されたのと同数の特定の遺伝子座が生成された。
【図4B】図4Bについて、本発明者らは、再現実験データの10,000の表現型並べ替え検定を行い、専一に制御されたCNVsを内部にもつ遺伝子座の数をそれぞれ決定した。各試験中に制御された特定の遺伝子座の新しいセットが同定され、及び、ケースから除外された数を決定した。本発明者らは、10,000試験(p=0.02)の246において実験的に得た(n=18)。これらと匹敵する結果を観察した。
【図5】図5はエクソン欠失、ウイルス制御に対して例に富むが、多発家系における疾患との不完全な分離を示している。BZRAP1 (A,B)、 kb)、 NRXN1 (C、D)、及びMDGA2 (E,F)にエクソン欠失を有するAGRE家族の代表的な家系図が示されている。円が赤で塗りつぶされているものはエクソン欠失に対応している。黒い星(右側上部)は、対象となるCNVの応答が得られなかった個体を強調表示している(遺伝子型が異なるまたは品質管理の基準を満たしていない)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
神経疾患(例えば、自閉症、自閉症スペクトラム症(ASD)、統合失調症、双極性障害、トゥレット症候群、強迫性障害(OCD)の原因となる遺伝子は、非常に複雑であり、十分に理解されていないままである。先行研究は、例のサブセットにおける構造変化について重要な役割を示したが、その分析には、個々の遺伝子の同定への電位的優位性の大きな領域の検知を超えて移動するのに必要な解決が欠けている。自閉症スペクトラム症(ASD)は強力な遺伝的成分と共通の神経発生症候群である。ASDは社会的行動障害、言語的及び非言語的コミュニケーション障害、同様に反復行動及び/または興味範囲が狭く閉ざされていることにより特徴付けられている。ASD病因に寄与する可能性が高い遺伝子を同定するために、自閉症遺伝資源交換(AGRE)コレクションの中から912の多発家系の高密度遺伝子同定を行い、及び、1488の健康対照者から得られたこれらの結果と対比した。遺伝子の機能を妨げる可能性が最も高い変異を豊富にするため、本発明者らは欠失及び包括的なエクソン獲得物の分析を制限した。強調表示されたゲノム領域の多くのうち、27が制御していない例でも、分析の最初の段階でも、及び859例及び1,051制御からなる独立した複製コホートにおいても、稀少変異を内部に有していると見られた。この方法により同定された遺伝子にはNRXN1を含み、変異関連の稀少ASDの分子が複数のグループにより報告されている。本発明者らはBZRAP1、MDGA2、CLCNKA、GRIK5及びGMPSを含むASDにかかわるいくつかの遺伝子に匹敵する支持体を今まで発見していなかった。これらのそれぞれについて、変異対立遺伝子は、タンパク質コード配列の大部分を完全に排除または除去する。重要なことは、独立に確定した照合及び重複していない第3例のほとんどにおいてこれらの同じ遺伝子にeDelsが同定されたASDコホートは、偶然によってのみで発生しそうにない結果(フィッシャーの正確確率によりp=1x10−36)であることだ。これらの新しく同定された自閉症感受性遺伝子は、この疾患グループの調節不全なキーシグナル伝達経路を理解するのに有用であろう。
【0013】
定義
「コピー数多型(CNV)」は一個体の遺伝子型において特定の遺伝子のコピー数に関連する。CNVはヒトの表現型多様性の主要な遺伝的要素を示している。遺伝疾患への感受性は、単一ヌクレオチド多型のみに関連するのではなく、CNVを含む構造的及び他の遺伝的変異にも関連することが知られている。CNVは、DNAフラグメントを含むコピー数変化、1キロベース(kb)またはそれ以上を示す(Feuk et al.2006 Nature.444:444〜54.)。ここに記載されるCNVは、将来におけるCNV分析の複雑さを最小限にするため転移性遺伝要素(例えば、〜6kb KpnI繰り返し)の挿入/削除によって生じる変異を含まない。したがって、CNVという語は大規模コピー数変異(LCVs;Iafrate et al.2004,Nature Genetics 36:949〜51)、コピー数多型性(CNPs;Sebat et al.2004 Science 305:525〜8.)、中間サイズの変異体(ISVs;Tuzun et al.2006 Genome Res.16:949〜961)及びeDELのような以前に導入された語を包括しているが、レトロポゾンの挿入は含まれない。
【0014】
単一ヌクレオチド多型(SNP)は、その場での通常の塩基とは異なるDNAにおいて、単一塩基における変化を意味する。これらの単一塩基の変化は、SNPsまたは「snips」と呼ばれる。SNPの数百万はヒトゲノム内にカタログされている。鎌状赤血球を引き起こすようないくつかのSNPは、疾患に関与している。他のSNPはゲノム内で正常な変異である。
【0015】
神経疾患は、これに限定されるわけではないが、統合失調症、双極性障害、自閉症、自閉症スペクトラム症(ASD)、トゥレット症候群、及び強迫性障害を含む。
【0016】
「遺伝子変化」という語は、上記で定義したようなCNVまたはSNPを包括し、野生型または1つまたはそれ以上の核酸分子の基準配列からの変化を意味する。遺伝子変化はこれに限定されないが、塩基対置換、既知の配列の核酸分子からの少なくとも1つのヌクレオチドの付加及び欠失を含む。
【0017】
ここで用いられている「固体マトリックス」という語は、ビーズ、微小粒子、マイクロアレイ、マイクロ滴定ウェルまたはテストチューブ、ディップスティックまたはフィルターのような任意の形式を意味する。前記マトリックスの材料は、ポチスチレン、セルロース、ラテックス、ニトロセルロース。ナイロン、ポリアクリルアミド、デキストラン、またはアガロースである可能性がある。
【0018】
「原則的に〜からなる」という表現は、特定のヌクレオチドまたはアミノ酸を参照するときに、与えられた配列ID番号の性質を有する配列を意味する。例えば、アミノ酸配列を参照するのに使用される場合、前記表現は、配列の機能的及び新しい性質に作用しない配列それ自体及び分子修飾を含む。
【0019】
ここで用いられる「標的核酸」は核酸複合体混合物に存在する核酸の以前に定義された領域を参照する。核酸複合体混合物において、定義された野生型領域は少なくとも1つの既知のヌクレオチド変異が含まれる。このヌクレオチド変異は、神経性疾患に関連することもしないこともある。核酸分子は、cDNAクローニングまたはサブトラクティブ ハイブリダイゼーションまたは手動合成によって天然源から単離されることがある。核酸分子は、トリエステル合成方法またはDNA自動合成方法により手動合成されることがある。本発明において使用される核酸に関しては、「単離核酸」という語が時折使われる。この語句が、DNAで適用されるとき、そこから派生した生物の自然発生のゲノム内で隣接する(5’方向及び3’方向)配列から単離されたDNA分子を参照する。例えば、「単離された核酸分子」は、プラスミドまたはウイルスベクターのようなベクター内に挿入されたDNA分子、または、原核生物または真核生物の遺伝子DNAからなることがある。「単離された核酸分子」はcDNA分子からなることもある。ベクター内に挿入された単離された核酸分子はまた、ここにおいて時折組み換え核酸分子と称される。
【0020】
RNA分子に関しては、「単離された核酸分子」という語は、主として先に定義した単離されたDNA分子によりエンコードされたRNA分子を参照する。また、この用語は自然状態(すなわち細胞または組織内)で、「実質的に純粋な」形の中で存在するRNA分子から十分に単離されたRNA分子を参照することもある。
【0021】
核酸を参照する際の「強化」という語の使用は、特異的DNAまたはRNA配列が、正常な細胞中または採取された配列からの細胞中と比べて、対象の溶液または細胞に存在する全てのDNAまたはRNAのか著しく高い割合(2〜5倍)を構成することを意味する。これは、人為的操作によって、存在する他のDNAまたはRNA量の選択的減少によって、または特異的DNAまたはRNA量の選択的増加によって、またはこれら二つの組み合わせによって引き起こすことができる。しかしながら、「強化」とは、他のDNAまたはRNA配列が存在しないことを意味するのではなく、対象となる配列の相対的な量が著しく増大することを意味する。
【0022】
目的によっては、塩基配列は精製された形式であることが優位である。核酸を参照する際の「精製された」という用語は、(均質調製のような)至純を求めるものではなく、むしろ、その配列が自然環境中と比べて比較的純粋であること(自然レベルと比べて、例えば、mg/mlにおいて少なくとも2〜5倍でなければならない)を意味している。cDNAライブラリーから単離された個体クローンは、電位的均質に精製されることがある。これらのクローンから得られた請求項に係るDNA分子は、全てのDNAまたは全てのRNAから直接的に得ることもできる。前記cDNAクローンは、自然発生はしないが、どちらかといえば、部分的に精製された自然発生物(メッセンジャーRNA)の操作によって好適に得られる。mRNAからのcDNAライブラリーの構造は、合成物質の精製及びcDNAライブラリーを運ぶ細胞のクローン選択によって合成ライブラリーから単離された純粋な個体cDNAクローンを含む。したがって、過程は、mRNAからのcDNAライブラリーの構成及びcDNAクローンの単離を含み、その収率はもとのメッセンジャーRNAの精製約10‐6倍である。したがって、一桁分、好適には二桁または三桁分、及びさらに好適には4桁または5桁分の精製が明確に期待される。
【0023】
「実質的に純粋」という用語は、対象(例えば核酸、オリゴヌクレオチドなど)の化合物の少なくとも50〜60重量%からなる調製に関連する。前記調製は、さらに好適には、対象の化合物の少なくとも75重量%、最適には対象化合物の90〜99重量%からなる。純度は対象化合物に適切な方法により測定される。
【0024】
「相補的」という用語は互いに複数の好ましい相互作用を形成できる2つのヌクレオチドを示す。例えば、アデニンはチミンと相補的であり、二つの水素結合を形成することができる。同様に、グアニン及びシトシンは相補的であり、三つの水素結合を形成することができる。したがって、核酸の配列が、以下の塩基配列、チミン、アデニン、グアニン及びシトシンを含む場合、これらの核酸分子の「相補体」はチミンの場におけるアデニン、アデニンの場におけるチミン、グアニンの場におけるシトシン、シトシンの場におけるグアニンを含む分子である。相補体は、親核酸分子と最適な相互作用を形成する核酸配列を含むことがあるからである。そのような相補体はその親分子と高い親和性で結合できる。
【0025】
一本鎖核酸、特にオリゴヌクレオチドに関して、「特異的ハイブリダイジング」という用語は、当該技術分野において一般に使用される所定の条件のもとでのハイブリダイゼーションを可能とする十分に相補的な配列の二つの一本鎖ヌクレオチド分子間の連結に関するものである(時おり「実質的に相補的」と称されている)。特に、この用語は、オリゴヌクレオチドと本発明に係る一本鎖DNAまたはRNA分子内に含まれる実質的に相補的な配列、非相補的な配列の一本鎖核酸とオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの実質的な排除に関連する。例えば、特異的ハイブリダイゼーションは任意の神経性疾患特異的マーカー遺伝子または核酸を生じる配列には関連するが、他のヌクレオチドには関与しない。また、「特異的ハイブリダイズする」ポリヌクレオチドは、神経性特異的マーカーのみを生じる。神経性疾患特異的マーカーは本明細書に含まれる表に示されている。それぞれに相補的な一本鎖核酸分子の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする適切な条件は当業者においてよく知られているものである。
【0026】
例えば、特異的な相同配列の核酸分子間のハイブリダイゼーションに必要なストリンジェンシー条件を計算するための一つの共通な式を以下に記述する(Sambrook et al.,Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)。
【0027】
Tm=81.5℃+16.6Log[Na+]+0.41(%G+C)−0.63(%formamide)−600/#bp in duplex
【0028】
上記の式の例として、[Na+]=[0.368]及び50%ホルムアミド、42%のGC含有量及び200塩基の平均プローブサイズを使用すると、Tmは57℃となる。DNA二本鎖のTmは、相同内の1%減少毎に1〜1.5℃減少する。したがって、約75%配列同一性より大きな標的は、42℃のハイブリダイゼーション温度を使用することで認められる。
【0029】
ハイブリダイゼーション及び洗浄のストリンジェンシーは、溶液の塩濃度と温度に主に依存する。一般的に、標的とプローブのアニーリングの割合を最大するために、ハイブリダイゼーションは通常、計算された前記ハイブリダイゼーション温度Tmよりも低い塩濃度及び20〜25℃の温度条件下で実行される。洗浄条件は、標的のプローブの識別の温度のため、できる限り厳しくする必要がある。一般的に、洗浄条件は、前記ハイブリダイゼーションよりも低い約12〜20℃から選択される。本発明の核酸に関して、中ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、6X SSC、5Xデンハルト溶液、0.5% SDS及び42℃の変性サケ精子DNA100μg/mlにおけるハイブリダイゼーションと定義され、及び、2X SSC及び0.5% SDSにより55℃で15分間洗浄される。高ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、6X SSC、5Xデンハルト溶液、0.5% SDS及び42℃の変性サケ精子DNA100μg/mlにおけるハイブリダイゼーションと定義され、及び、1X SSC及び0.5% SDSにより65℃で15分間洗浄される。さらに高ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、6X SSC、5Xデンハルト溶液、0.5% SDS及び42℃の変性サケ精子DNA100μg/mlにおけるハイブリダイゼーションと定義され、及び、0.1X SSC及び0.5% SDSにより65℃で15分間洗浄される。
【0030】
本明細書で使用されている用語「オリゴヌクレオチド」は、2またはそれ以上の、好適には3以上のリボまたはデオキシリボヌクレオチドからなる核酸分子として定義されている。オリゴヌクレオチドの正確なサイズは、様々な要因及び特定の適用及びオリゴヌクレオチドの使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、プローブ及びプライマーを含み、3ヌクレオチドから核酸分子の全長の任意の長さをとることができ、及び、3からポリヌクレオチドの全長の隣接する核酸の任意の数を明確に含む。好適には、オリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチド、さらに好適には少なくとも15ヌクレオチド、さらに好適には少なくとも20ヌクレオチドである。
【0031】
本明細書で使用されている「プローブ」という用語は、精製された制限酵素ダイジェストのように自然発生したものであろうと、または合成されたものであろうと、プローブと相補的な配列とアニーリングまたは核酸に特異的にハイブリダイズできるオリゴヌクレオチドまたは核酸、RNAまたはDNAに関するものである。プローブは単一らせん構造または二重らせん構造どちらも取りうる。前記プローブの正確な長さは温度、プローブのソース、及び前記方法の使用を含む様々な要因に依存する。例えば、診断への適用においては、標的配列の複雑さに応じて、典型的なオリゴヌクレオチド配列は15〜25またはそれ以上のヌクレオチドを含むが、それよりも少ないヌクレオチドを含むこともある。明細書における前記プローブは、特定の標的核酸配列の異なるらせん構造に相補的になるよう選択される。これは、一連のあらかじめ決められた条件の下で各標的らせん構造と「特異的にハイブリダイズする」またはアニールできるように、前記プローブは十分に相補的でなければならないことを意味する。したがって、前記プローブ配列は標的の正確な相補的配列に反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチドフラグメントは、プローブの5’または3’末端に、標的らせん構造と相補的なプローブ配列の残渣と結合される。あるいは、非相補的塩基または長い配列はプローブ内に組み入れられる。そのプローブ配列は、それを以て特異的にアニールする標的核酸の配列と十分に相補的であるよう提供されたものである。
【0032】
本明細書で使用される用語「プライマー」は、適切な環境に置かれた際に、テンプレート依存核酸合成の起始因子として機能的に作用できる、生体系から派生された、制限酵素ダイジェストによる発生または合成された、一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチド、RNAまたはDNAに関するものである。適当な温度及びpHのような条件下で、適切な核酸テンプレート、適切な核酸のヌクレオシド三リン酸前駆体、ポリメラーゼ酵素、適切な補因子とともに存在すると、プライマーは、ポリメラーゼの作用またはプライマー延長生成物を生産する同様の活動により、ヌクレオチドが付加され、3’末端まで延長される。プライマーは、特定の条件及び適用の要求によって様々な長さとなることがある。例えば、診断への適用においては、オリゴヌクレオチドプライマーは、典型的には15〜25またはそれ以上の長さのヌクレオチドとなる。プライマーは、目的の延長生成物の合成を準備するため、十分に相補的でなければならない。それはつまり、ポリメラーゼまたは同様の酵素による合成の開始に使用するため適当な並置におけるプライマーの3’ヒドロキシル部分を提供するのに十分な方法において、目的のテンプレートらせん構造とアニールが可能になるということである。プライマー配列が目的のテンプレートと正確に相補的であることは求められていない。例えば、非相補的なヌクレオチド配列は、他の相補的なプライマーの5’末端に結合される。あるいは、非相補的塩基は、オリゴヌクレオチドプライマー配列内に散在され、延長生成物の合成のためにテンプレート−プライマー複合体を機能的に提供するよう、目的のテンプレートの配列と十分に相補的であるプライマー配列が提供される。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)は、米国特許4,683,195、4,800,195、4,965,188において記載されており、その全体は本明細書に参照により開示されている。
【0033】
用語「ベクター」は、一本鎖または二本鎖環状核酸分子に関連するものであり、それらの核酸分子は、細胞内で感染、核酸導入、形質転換されうるもので、独立にまたは宿主細胞遺伝子を複製するものである。環状二本鎖核酸分子は制限酵素により切断され、それにより線形化される。ベクター、制限酵素及び制限酵素により標的にされた既知のヌクレオチド配列の分類は、当業者において直ちに可能であり、及び、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージまたはウイルスのような、他の遺伝子配列または要素(DNAまたはRNA)が、結合された配列または要素の複製をもたらすように結合される任意のレプリコンを含む。本発明の核酸分子は、制限酵素でベクターを切断し、二つの部分を一緒に結合することでベクター内に挿入され得る。
【0034】
多くの技術が、当業者において、原核または真核生物内に発現構成物の形質転換、形質移入、または形質導入を容易にすることを可能としている。「形質転換」、「形質移入」、「形質導入」という用語は、核酸及び/または発現構成物を細胞または宿主生物内に挿入する方法に関連する。これらの方法は、高濃度塩、電場、または洗浄剤での細胞治療、宿主細胞外膜または細胞壁に核酸分子透過性を与える、微量注入、PEG融合などのような様々な技術を含む。
【0035】
「プロモーターエレメント」という用語は、ヌクレオチド配列のことを指しており、この配列は、ベクターに組み込まれ、一度適切な細胞に入ると、転写因子及び/またはポリメラーゼ結合及び続いてmRNA内へベクターDNAの一部の転写を容易にすることができる。一実施形態においては、本発明に係るプロモーターエレメントは、後者をmRNA内に転写するように、神経性疾患特異的マーカー核酸分子の5’末端を先行する。それにより、宿主細胞は自動的にポリペプチド内のmRNAを翻訳する。
【0036】
当業者は、核酸ベクターがプロモーター要素及び神経性疾患特異的マーカー遺伝子核酸分子以外の核酸要素を含むことがあることに認識がある。これらの他の核酸分子は、これに限定されることはないが、複製開始点、リボソーム結合部位、薬剤耐性酵素またはアミノ酸代謝酵素をエンコーディングする核酸配列、及び分泌シグナル、局在化シグナル、またはポリペプチド精製に有用なシグナルを含む。
【0037】
「レプリコン」は、任意の遺伝要素であり、例えば、プラスミド、コスミド、バクミド、プラスチド、ファージまたはウイルス、これらは独自の制御のもとで大部分の複製が可能である。レプリコンは、RNAまたはDNAどちらでも、及び、一本鎖または二本鎖で起こりうる。
【0038】
「オペロン発現」は、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始信号(例えばATGまたはAUGコドン)、ポリアデニレーション信号、終結コドンなどのような、転写または翻訳制御配列をもつ核酸セグメントについて述べている。及び、宿主細胞または生体内のポリペプチドコーディング配列の発現を容易にする。
【0039】
本明細書で使用されている「レポーター」、「レポーターシステム」、「レポーター遺伝子」、「レポーター遺伝子生成物」は、発現の際にレポーター信号を生じる生成物をエンコードする遺伝子からなる核酸における遺伝子操作系を意味するものとする。レポーター信号は、例えば、免疫学的測定、放射免疫測定などの生物学的アッセイ、または蛍光分析、化学発光分析などの比色分析、またはその他の方法によって直ちに測定可能である。核酸は、RNAまたはDNA、線状または環状、一本鎖または二本鎖、アンチセンスまたはセンス極性であることがあり、及び、レポーター遺伝子生成物の発現に必要な制御要素に操作可能に結合される。必要な制御要素は、レポーター系の性質によって、及びレポーター遺伝子がDNAであるかRNAであるかによって様々である。必要な制御要素は、これに限定されるわけではないが、プロモーター、エンハンサー、翻訳制御配列、ポリA付加信号、転写終結信号などのような要素を含むことがある。
【0040】
導入された核酸は、受容細胞または有機体の核酸に組み込まれる(共有結合)こともそうでないこともある。細菌細胞、酵母細胞、植物細胞及び哺乳類の細胞において、例えば、導入核酸は、エピソーム性要素またはプラスミドのような独立したレプリコンとして維持されることもある。あるいは、導入核酸は、受容細胞または生物の核酸内に組み込まれ、その細胞や生物内で安定的に維持され、及び、遺伝によって継承される、または、受容細胞または生物の孫細胞または孫生物に安定的に継承される。最終的に、導入核酸は受容細胞または宿主生物内に一時的にのみ存在することもある。
【0041】
「選択可能な遺伝子マーカー」は形質転換細胞における抗生物質抵抗性のような選択可能なペプチドを発現時に与える遺伝子について述べている。
【0042】
用語「操作可能な結合」は、コーディング配列の発現に必要な調節配列が、コーディング配列の発現を生じさせるようにコーディング配列に対して適当な位置にあるDNA分子に配置されることを意味する。これと同様の定義が転写ユニット及び発現ベクターにおける他の転写制御要素(例えばエンハンサー)の配列にも時おり適用される。
【0043】
「組換え生物」または「遺伝子組換え生物」という用語は、遺伝子または核酸分子の新しい組み合わせを有する生物について述べている。遺伝子または核酸分子の新しい組み合わせは、当業者に可能な豊富な核酸操作技術を用いて、生体内に導入できる。「生物」という用語は、少なくとも一つの細胞からなる任意の生き物に関連する。生物は一つの真核細胞のように単純であり、また、哺乳類のように複雑であることがある。しかしながら、「組換え生物」は、真核生物及び原核生物両方の組換え細胞を含む。
【0044】
「単離されたタンパク質」または「単離及び精製されたタンパク質」という語が明細書において使われていることもある。この用語は、本発明の単離された核酸分子の発現により生成されたタンパク質に主として関連する。または、この用語は、「実質的に純粋」となるように、必然的に関連される他のタンパク質から十分に離されたタンパク質に関連するものである。「単離された」とは、他の化合物または材料との人工合成混合物または根本的に活性を妨げるわけではなく、及び、例えば不完全な精製、安定剤の添加、または、例えば免疫調製液または薬剤的に許容できる調製液内での調合によって存在することもある不純物を除外することは意味しない。
【0045】
「特異的結合対」は、特異的結合メンバー(sbm)及び結合パートナー(bp)からなり、互いに特定の特異性を有し、及び、正常な条件下において互いに優先的に結合する。特異的結合対の例としては、抗原及び抗体、リガンド及び受容体及び相補的ヌクレオチド配列が挙げられる。当業者は他の多くの例を知っている。さらに、用語「特異的結合対」は高分子の一部からなる特異的結合メンバー及び特異的結合対のどちらかまたは両方において適用できる。核酸配列からなる特異的結合対における実施形態においては、アッセイの条件下でハイブリダイズするための長さ、好適には10ヌクレオチド長さ以上、さらに好適には15または20ヌクレオチド長さ以上となる。
【0046】
「試料」または「患者試料」または「生物学的試料」は一般的に、特定分子、好適には以下の表に示したマーカーのような神経性疾患特定マーカー分子のためにテストされる。試料は細胞に限られず、血液、血清、血漿、尿、唾液、涙、胸膜液などの体液を含む。
【0047】
「薬剤」及び「テスト化合物」という用語は、本明細書中で交互に用いられ、化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子、または、バクテリア、植物、菌類または動物(特に哺乳類)の細胞または組織のような生体材料からつくられた抽出物を意味する。生体高分子は、本明細書に記載された核酸またはそれらにエンコードされたタンパク質を含むCNVの作用を緩和することを示す分子に基づくsiRNA、shRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド、ペプチド/DNA複合体及び任意の核酸を含む。薬剤は、明細書の以下に記載されたスクリーニングアッセイにおける含有により潜在的生物学的活性を評価される。
【0048】
神経性疾患の発症リスク増加を診断するための神経性疾患関連のeCNVSの使用方法
核酸を含む神経性疾患関連eCNVは、本発明の様々な目的で使用される下記の表に示されたものを含むが、これに限定されるわけではない。DNA、RNAまたはこれらのフラグメントを含む神経性疾患関連eCNVは、神経性疾患特定マーカーの発現及び/またはその存在を検知するプローブとして使用されることがある。神経性疾患特定マーカーがこのようなアッセイにおいてプローブとして使用されることのある方法は、これらに限定はされないが、(1)in situハイブリダイゼーション、(2)サザンハイブリダイゼーション、(3)ノーザンハイブリダイゼーション、及び(4)ポリメラーゼ鎖反応(PCR)のような様々な増幅反応を含む。
【0049】
さらに、神経性疾患関連eCNVは、これに限定されるわけではないが、体液(血液、CSF、尿、血清、胃洗を含む)、任意の細胞(脳細胞、白血球、単核細胞のような)または体組織を含む、任意のタイプの生体試料で行われる。
【0050】
先の議論から、神経性関連eCNVは核酸、同様に発現するベクターからなること、
マーカータンパク質及び本発明の抗神経性疾患特定マーカー抗体からなる神経性疾患eCNVは、体組織、細胞、または体液における神経性疾患関連eCNVを検知すること及び
神経性疾患の進行に関与する遺伝子及びタンパク質の相互作用を評価する目的のために、マーカータンパク質を含む神経性疾患eCNVの発現を変更するのに用いられることがわかる。
【0051】
神経性疾患関連CNVのスクリーニングのための最も多くの実施形態において、試料中に核酸を含むCNVに関連する神経性疾患は、試料中に存在する他の配列と比較してテンプレートの量を増加させるように、例えばPCRを用いて、最初に増幅される。これによって、標的配列が試料中に存在した場合、高感度で検知される。この最初のステップは、当該技術分野において重要性の高まっている高感度アレイ技術により回避されることもある。
【0052】
また、新しい技術的検知はこの限界を覆し、全RNAのたった1μgを含む小さな試料の分析を可能にする。共鳴光散乱(RLS)技術の使用は、伝統的な蛍光技術とは対照的に、多数の読み出しが、ハイブリダイズされた標的に標識されたビオチン及び抗ビオチン抗体を用いて、低量mRNAを検知することができる。PCR増幅とは別の方法は、信号対雑音比を増加させ、及び背景緩衝を低減させる平面導波管技術(PWG)が含まれる。両技術は、Qiagen Inc.(アメリカ)から市販されている。
【0053】
したがって、任意の上記の技術は、神経性疾患関連CNVマーカーの発現を検出または定量化するのに使われることがあり、従って、神経性疾患の診断に使用されることがある。
【0054】
製造のキット及び物品
任意の上記製品をキットに組み込むことができ、キットは、神経性疾患関連のCNV特定ポリヌクレオチドマーカーまたは、1つまたはそれ以上の遺伝子チップ上に固定されたマーカー、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、ペプチド、抗体、ラベル、マーカー、またはレポーター、薬学的に許容できるキャリア、生理学的に許容できるキャリア、使用のための取り扱い説明書、容器、投与のための容器、アッセイ基質、酵素またはこれらの任意の組み合わせを含むことがある。
【0055】
神経疾患関連のコピー数多型/一塩基多型を用いた治療薬開発の方法
本明細書で同定されたコピー数多型は神経疾患の病因と関連していたので、このようなコピー数多型を含む当該遺伝子及びそれらがコードする産物の活動を調節する作用因子を同定する方法は、そうした疾患の治療の為の有効な治療薬の創出につながる可能性がある。
【0056】
下記の表において示されているデータから見られる様に、幾つかの染色体は、治療薬を合理的に設計する為の適切な標的を提供する領域を含んでおり、この治療薬は標的の活動を調節する。従って、機能に必要となる立体構造または鍵となるアミノ酸残基に基づいて前記CNVを含む核酸によりエンコードされているタンパク質の活性部位に結合する能力を持った、特定の有機分子が同定される可能性がある。最も大きな活性を持つ分子の同定にはコンビナトリアルケミストリーのアプローチが用いられ、次いでそうした分子への繰り返し処理がさらなる多くのスクリーニングを行うために開発されるであろう。ある実施形態においては、候補物質は、合成化合物または天然化合物の大規模なライブラリからスクリーニングされてもよい。そうした化合物ライブラリは多数の企業から商業的に入手可能であり、それらの企業には例えばMaybridge Chemical Co.(イギリス、コーンウォール州、Trevillet)と、Comgenex(ニュージャージー州、Princeton)と、Microsour(コネチカット州、New Milford)と、Aldrich(ウイスコンシン州、Milwaukee)と、Akos Consulting and Solutions GmbH(スイス、Basel)と、Ambinter(フランス、Paris)、Asinex(ロシア、Moscow)と、Aurora(オーストリア、Graz)と、BioFocus DPI(スイス)、Bionet(イギリス、Camelford)と、Chembridge(カリフォルニア州、San Diego)と、Chem Div(カリフォルニア州、San Diego)が含まれるがこれらに限定されない。当業者は他の供給源を知っており、また容易にそれらを購入出来る。一度治療的に有効な化合物が本明細書に記載のスクリーニングアッセイで同定されれば、それらの化合物は医薬組成物へと製剤化され、神経疾患の治療の為に利用出来る。
【0057】
薬剤スクリーニングアッセイに用いられる当該ポリペプチドまたは断片は、溶液中に遊離しているか、固相担体に固定されているか、または細胞中に存在するかのいずれであってもよい。薬剤スクリーニングの1つの方法は、当該ポリペプチドまたは断片を発現する組換えポリヌクレオチドによって安定に形質転換された真核または原核の宿主細胞を利用し、好ましくは競合結合アッセイで行う。そうした細胞は、生きた細胞か固定された細胞かのいずれでもよく、標準的な競合アッセイに用いることが出来る。例えば、前記ポリペプチドまたは断片と、テストする当該物質との複合体の形成を判定したり、あるいは前記ポリペプチドまたは断片と既知の基質との複合体の形成が、テストする当該物質によりどの程度阻害されるのかを調べることが出来る。
【0058】
薬剤スクリーニングのもう一つの手法は、当該エンコードされたポリペプチドに対して適切な結合親和性を持つ化合物の、ハイスループットスクリーニングであり、この手法はGeysenによる1984年9月13日に公開の国際公開公報第84/03564号に詳細が記載されている。簡単に述べると、上で述べたような大量の異なる小さなペプチドのテスト化合物が、プラスチックピンや他の何らかの表面などの固体基質の上で合成される。当該ペプチドテスト化合物は標的ペプチドとの反応を行い、洗浄される。次いで、結合したポリペプチドが、本技術分野でよく知られた方法により検出される。
【0059】
薬剤スクリーニングのさらに別の手法には、機能を失うかまたは変質した神経疾患関連遺伝子を持つ(上で述べたような)宿主の真核細胞株または細胞の利用が含まれる。こうした宿主細胞株または宿主細胞は、当該ポリペプチドのレベルで欠損がある。この宿主細胞株または宿主細胞は、薬剤化合物の存在下で生育する。この宿主細胞の神経シグナル伝達、イオン放出、または神経細胞形態の維持の変化率を測定し、当該化合物が欠損細胞中のそれらを調整する能力があるかを決定する。本発明に使用が想定される宿主細胞には例えば、細菌細胞、真菌細胞、昆虫細胞、およびほ乳類細胞の特に神経細胞が含まれるが、これらに限定されない。当該神経疾患関連CNVをエンコードするDNA分子を、このような宿主細胞に単独でまたは組み合わせて導入し、そうした発現によって与えられる細胞の表現型を評価することが出来る。DNA分子を導入する方法もまた、本技術分野の当業者には公知である。このような方法は、Ausubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,John Willey&Sons,NY,N.Y.1995において説明されており、その開示内容は参照することにより本明細書中に援用される。
【0060】
広範な種々のベクターが利用可能で、それらのベクターを改変して本発明における新規のDNA配列を発現させることが出来る。本明細書では特定のベクターが例示されているが、単なる一例であって、本発明の範囲を限定する意図はない。発現の方法は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual or Current Protocols in Molecular Biology 16.3−17.44(1989)に記載されている。サッカロミセス酵母における発現の方法は、Current Protocols in Molecular Biology(1989)に記載されている。
【0061】
本発明の実施において使用に適切なベクターとして例えば、pNHベクター(Stratagene Inc.,11099 N.Torrey Pines Rd.,La Jolla,Calif.92037)と、pETベクター(Novogen Inc.,565 Science Dr.,Madison,Wis.53711)と、pGEXベクター(Pharmacia LKB Biotechnology Inc.,Piscataway,N.J.08854)などの原核生物ベクターが挙げられる。本発明の実施において有用な真核生物ベクターとして例えば、pRc/CMV、pRc/RSV、およびpREP(Invitrogen,11588 Sorrento Valley Rd.,San Diego,Calif.92121)と、pcDNA3.1/V5&His(Invitrogen)と、pVL1392、pVL1393、またはpAC360(Invitrogen)などのバキュロウイルスベクターと、YRP17、YIP5、およびYEP24(New England Biolabs,Beverly,Mass.)などの酵母ベクターと、pRS403およびpRS413(Stratagene Inc.)と、pHIL−D1(Phillips Petroleum Co.,Bartlesville,Okla.74004)などのピキア酵母ベクターと、PLNCXおよびpLPCX(Clontech)などのレトロウイルスベクターと、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。
【0062】
本発明の発現ベクターにおいて使用されるプロモーターとして例えば、原核細胞または真核細胞で使用可能なプロモーターが挙げられる。原核細胞において使用可能なプロモーターとして例えば、ラクトース(lac)調節領域と、バクテリオファージλ(pL)調節領域と、アラビノース調節領域と、トリプトファン(trp)調節領域と、バクテリオファージT7調節領域と、それらのハイブリッドが挙げられる。真核細胞において使用可能なプロモーターとして例えば、Epstein−Barrウイルスプロモーターと、アデノウイルスプロモーターと、SV40プロモーターと、ラウス肉腫ウイルスプロモーターと、サイトメガウイルス(CMV)プロモーターと、AcMNPVポリヘドリンプロモーターなどのバキュロウイルスプロモーターと、アルコールオキシダーゼプロモーターなどのピキア酵母プロモーターと、gal4誘導性プロモーター、PGK構成的プロモーター、および神経細胞特異的血小板由来増殖因子(PDGF)プロモーターなどのサッカロミセス酵母プロモーターと、Thy−1プロモーターと、ハムスターおよびマウスプリオンプロモーター(MoPrP)と、グリア細胞における導入遺伝子発現の為のグリア原線維酸性タンパク質(GFAP)プロモーターが挙げられる。
【0063】
さらに、本発明のベクターは形質転換した宿主細胞の選別を容易にする数多くの種々のマーカーのうち任意のものを含んでいてもよい。そうしたマーカーとして例えば、温度感受性の関連遺伝子、薬剤耐性の関連遺伝子、または宿主生物の表現型の特徴に関連した酵素の関連遺伝子が挙げられる。
【0064】
本発明の当該神経疾患関連CNVまたはその機能断片を発現する宿主細胞は、神経疾患の発生を調節することの出来る候補化合物または候補物質をスクリーニングするシステムを提供する。従って、ある実施形態において本発明の核酸分子は、神経シグナル伝達、神経細胞間情報伝達、および神経細胞構造に関連した、細胞代謝の面を調節する物質を同定するアッセイにおいて使用する為の、組換え細胞株を作製するのに用いる事が出来る。CNVを含む核酸によってエンコードされるタンパク質の機能を調節することが出来る化合物をスクリーニングする方法もまた、本明細書に提供されている。
【0065】
別のアプローチとして、当該CNVを含む核酸によってエンコードされるポリペプチドの断片をファージ表面に提示するように作られた、ファージディスプレイライブラリーの使用を伴う方法がある。こうしたライブラリーは次いで、コンビナトリアルケミカルライブラリーと、前記提示されたペプチドと前記ケミカルライブラリーの構成成分の結合親和性が検知できる状況下で接触させられる。米国特許第6057098号明細書および米国特許第5965456号明細書は、こうしたアッセイを行うための方法および装置を提供している。
【0066】
合理的な薬剤設計とは、当該ポリペプチドの、例えばより活性の高いまたはより安定した形である薬剤、あるいはインビボにおいてポリペプチドの機能を、例えば促進または阻害する薬剤を作り出す為に、目的の生物活性ポリペプチドまたはそれらが相互作用する小分子(例えばアゴニスト、アンタゴニスト、インヒビター)の構造的類似体を作成することである。例えば、Hodgson,(1991)Bio/Technology 9:19−21を参照のこと。あるアプローチにおいては、上で議論したように、目的のタンパク質、または例えば、タンパク質基質複合体の三次元構造は、X線結晶構造解析、核磁気共鳴、コンピュータモデリング、または最も一般的にはアプローチの組み合わせによって解かれる。頻度は低いものの、ポリペプチドの構造に関する有益な情報が、ホモログタンパク質の構造に基づいたモデリングにより得られることもある。合理的な薬剤設計についての一例は、HIVプロテアーゼインヒビターの開発である(Erickson et al.,(1990)Science 249:527−533)。さらに、ペプチドはアラニンスキャニングにより解析されてもよい(Wells,(1991)Meth.Enzym.202:390−411)。この手法においては、あるアミノ酸残基はAlaに置換され、その前記ペプチドの活性に対する影響が決定される。前記ペプチドのそれぞれのアミノ酸残基がこのようにして解析され、前記ペプチドにおける重要な領域が決定される。
【0067】
また、機能アッセイにより選択された標的特異的な抗体を単離し、その結晶構造を解くことも可能である。原則的には、このアプローチは次に続く薬剤設計のベースとなりうるファーマコアを形成する。
【0068】
機能的、薬理学的に活性のある抗体に対して抗イディオタイプ抗体を作製することで、タンパク質の結晶構造解析を完全に省略することができる。鏡像の鏡像が正像であるように、抗イディオタイプ抗体の結合部位は元の当該分子のアナログになっていると予想されるであろう。次いで、前記抗イディオタイプ抗体は、化学的または生物学的に作製されたペプチドバンクからペプチドを単離するのに使用することができる。選択されたペプチドは、その結果、前記ファーマコアとして働くであろう。
【0069】
このようにして、例えばポリペプチドの活性や安定性を改善した薬剤、またはペプチドの活性のインヒビター、アゴニスト、アンタゴニストなどとして働く薬剤をデザインしてもよい。本明細書に記載のCNV含有核酸配列の可用性によって、こうしたX線結晶構造解析のような分析的試験を行うのに十分な量のエンコードされたポリペプチドを利用することが可能である。さらに、本明細書より提供される当該タンパク質配列の知識は、X線結晶構造解析の代わりに、またはそれに加えて、コンピュータモデリングの手法を用いている人々の助けとなるであろう。
【0070】
別の実施形態においては、神経疾患関連CNV含有核酸の可用性により、本発明の当該神経疾患関連CNVを保有する実験用マウスの系を作製が可能である。本発明の当該神経疾患関連CNVを発現するトランスジェニックマウスは、前記CNV含有核酸によりエンコードされる当該タンパク質の、神経疾患の発現および進行における役割を調べるための、モデルシステムを提供する。実験用マウスに導入遺伝子を導入する方法は、本技術分野の当業者には公知である。3つの一般的な方法として、1.対象の当該外来遺伝子をエンコードするレトロウイルスベクターの初期胚への組み込み、2.新規受精卵の前核へのDNA注入、および3.遺伝子操作された胚性幹細胞の初期胚への融合、が挙げられる。上述したトランスジェニックマウスの作製は、対象のタンパク質が種々の細胞代謝の過程および神経細胞の過程において果たす役割についての分子レベルの解明を容易にするであろう。こうしたマウスは、全身動物モデルにおける推定治療薬の研究の為のインビボのスクリーニングツールを提供し、また本発明の範囲に包含される。
【0071】
本明細書で使用される「動物」という用語は、ヒトを以外の全ての脊椎動物を含んだものである。この用語はまた、胚期や胎生期などの全ての発生段階における動物個体も含んでいる。「トランスジェニック動物」とは、細胞内レベルでの計画的な遺伝子操作、例えば標的組換えまたはマイクロインジェクションまたは組換えウイルスによる感染などによって、直接的または間接的に改変されたまたは受け取った遺伝子情報を持つ1個または複数の細胞を有する任意の動物である。前記「トランスジェニック動物」という用語は、古典的な交雑育種または体外受精を包含することを意味せず、組換えDNA分子により改変された、または組換えDNA分子を受け取った1個または複数の細胞を持つ動物を包含することを意味する。この分子は、定義された遺伝子部位を特異的に標的としてもよく、染色体中に無作為に組み込まれてもよく、また染色体外でDNAを複製してもよい。「生殖系列遺伝子導入動物」という用語は、遺伝子改変または遺伝子情報が生殖細胞系列に導入され、それにより子孫に遺伝情報を移動させる能力が付与されたトランスジェニック動物を指す。そうした子孫が実際に、前記改変または遺伝情報の一部または全てを保有していた場合、その子孫もまたトランスジェニック動物である。
【0072】
遺伝情報の前記改変は、受容する動物が属する動物種にとって外来であるものでもよく、また受容する動物の特定の個体にとってのみ外来であるものでもよく、また遺伝情報が受容する動物に既に保有されているものであってもよい。最後の事例においては、前記改変または導入された遺伝子は、生来の遺伝子とは別に発現されてもよい。こうした改変された遺伝情報または外来の遺伝情報は、神経疾患関連CNVを含有するヌクレオチド配列の前記導入を包含するであろう。
【0073】
標的遺伝子の改変に用いられる当該DNAは、限定されるものではないが、例えば遺伝子供給源からの単離、単離されたmRNA鋳型からのcDNAの調製、直接合成、またはこれらの組み合わせなどの、多種多様な手法によって得ることが出来る。
【0074】
導入遺伝子を導入する標的細胞の好ましい種類は、胚性幹(embryonal stem、ES)細胞である。ES細胞は、インビトロで培養された着床前胚から得ることが出来る(Evans et al.,(1981)Nature 292:154−156;Bradley et al.,(1984)Nature 309:255−258;Gossler et al.,(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.83:9065−9069)。導入遺伝子は、DNAトランスフェクションなどの標準的な手法またはレトロウイルスを介した形質導入によって、ES細胞中へ効果的に導入することが出来る。その結果得られる形質転換ES細胞はその後、非ヒト動物由来の胚盤胞と結合させることが出来る。遺伝子導入された前記ES細胞はその後、胚のコロニーを形成し、そして得られるキメラ動物の生殖系列に寄与する。
【0075】
個々の遺伝子およびそれらの発現産物の寄与を決定する問題への一つのアプローチは、単離した神経疾患関連CNV遺伝子を挿入カセットとして用い、全能性ES細胞中の1つの野生型遺伝子を選択的に不活性化し、そして次いでトランスジェニックマウスを作成する方法である。遺伝子標的トランスジェニック動物の作成における、遺伝子標的ES細胞の利用については、他の文献において記述、および再検討がなされている(Frohman et al.,(1989)Cell 56:145−147;Bradley et al.,(1992)Bio/Technology 10:534−539)。
【0076】
標的相同組換えを用いて染色体の対立遺伝子に特定の変化を挿入することによって、任意の遺伝子領域を不活性化したりまたは望んだ変異に改変する手法が利用可能である。しかしながら、100%に近い頻度で起こる染色体外の相同組換えに比べると、プラスミド−染色体間の相同組換えは、10−6〜10−3の頻度でしか検出されないことが最初に報告されていた。プラスミド−染色体間の非相同組換えは、同等の相同組換えに比べて102〜105倍高いレベルで、より頻繁に発生する。
【0077】
このマウスES細胞における低い標的相同組換えの確率を克服するため、稀な相同組換えを検出または選択するための様々な方策が開発されてきた。相同的な改変の発生を検出するための一つのアプローチは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、相同的挿入の起きた形質転換細胞の集団をスクリーニングし、次いで個々のクローンのスクリーニングを行う方法である。あるいは、別のアプローチとして、相同的挿入が起きた時にのみ活性化し、その組換え体の直接選択を可能にするマーカー遺伝子を構築する、遺伝子のポジティブ選択法が開発された。相同組換え体を選択するために開発された最も強力なアプローチの一つは、改変を直接選択することの無い遺伝子のために開発された、ポジティブ−ネガティブ選択(positive−negative selection、PNS)法である。前記PNS法は、当該マーカー遺伝子が自身のプロモーターを持っている為、高いレベルで発現しない標的遺伝子に対してより効果的である。非相同組換え体は単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−TK)遺伝子を用いて逆選択され、その非相同的挿入をガンシクロビア(GANC)または1−(2−デオキシ−2−フルオロ−B−D−アラビノフラノシル)−5−ヨードウラシル(FIAU)などの有効なヘルペス薬剤によって逆選択する。この対抗選択により、生存する形質転換体中の相同組換えの数を増加させることが出来る。神経疾患関連CNV含有核酸を標的挿入カセットとして利用することは、挿入の成功を検出する手段を、例えば、神経疾患関連CNV含有核酸によりエンコードされるポリペプチドに免疫特異的な抗体に対する免疫反応性を獲得することによって、可視化する手段として提供し、その結果、望んだ遺伝子型を持つES細胞のスクリーニング/選択が容易になる。
【0078】
本明細書で使用される場合、ノックイン動物とは、内在性のマウス遺伝子が、例えば、本発明のヒトの神経疾患関連CNV含有遺伝子と置換された動物のことである。そうしたノックイン動物は、神経疾患の発生の研究に理想的なモデルシステムを提供する。
【0079】
本明細書で使用される場合、神経疾患関連CNV含有核酸、その断片、または神経疾患関連CNV融合タンパク質の発現は、ベクターを用いることで、「組織特異的な方式」または「細胞種特異的な方式」で標的することが出来る。前記ベクターにおいては、神経疾患関連CNVの全部または一部をエンコードスル核酸配列が、エンコードされた当該タンパク質が特定の組織または細胞型において発現するように方向付ける制御配列(例えば、プロモーターおよび/またはエンハンサー)に、作動的に結合されている。こうした制御エレメントは、インビトロおよびインビボの実施例の両方の利益とするために用いてもよい。組織特異的タンパク質に方向付けるプロモーターは当業者に公知であり、本明細書に記載されている。
【0080】
本発明の当該神経疾患関連CNVをエンコードする当該核酸は、トランスジェニック動物において発現する為の多種多様のプロモーター配列と、作動的に結合してもよい。そうしたプロモーターには例えば、米国特許第587739号明細書およびBorchelt et al.,Genet.Anal.13(6)(1996)pages 159−163に記載のハムスターおよびマウスのプリオンプロモーター(MoPrP)、米国特許第5612486号明細書および米国特許第5387742号明細書に記載のラット神経細胞特異的エノラーゼプロモーター、米国特許第5811633号明細書に記載の血小板由来成長因子B遺伝子プロモーター、米国特許第5849999号明細書に記載の脳特異的ジストロフィンプロモーター、Thy−1プロモーター、PGKプロモーター、CMVプロモーター、神経細胞特異的血小板由来成長因子B遺伝子プロモーター、ならびに導入遺伝子のグリア細胞における発現の為のグリア原繊維酸性タンパク質(GFAP)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明においてトランスジェニックマウスを利用する方法もまた、本明細書に提供されている。当該神経疾患関連CNVを含有する核酸またはそれがエンコードするタンパク質が導入されたトランスジェニックマウスは、例えば、神経疾患の発生を調節することの出来る治療物質を同定するような治療物質のスクリーニング法の開発に有用である。
【0082】
医薬品及びペプチド治療法
本明細書に記載の神経疾患関連CNVが神経伝達及び脳構造において果たす役割を理解することは、神経疾患の治療及び診断に有用な医薬組成物の開発を容易にする。これらの組成物は、上記の物質の中の一物質に加えて、薬学的に受容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、またはその他の本技術分野の当業者に公知の物質を有していてもよい。こうした物質は、無毒性であり、かつ当該活性成分の有効性に干渉しない物質であるべきである。前記担体またはその他の物質の正確な性質は、例えば経口投与、静脈内投与、吸入投与、皮膚または皮下投与、経鼻投与、筋肉内投与、腹腔内投与などの、投与経路に依存する場合がある。
【0083】
個々の患者に与えられるのが、ポリペプチド、抗体、ペプチド、核酸分子、小分子、またはその他の本発明により医薬的に有用である化合物のいずれであろうと、好ましくは、前記患者に効果を示すのに十分な量である「予防的有効量」または「治療的有効量」(場合によっては、予防は治療と見なされてもよいが)で投与が行われる。
【0084】
以下の物質および方法が、本発明の実施を容易にするために提供される。
【0085】
サンプル確認
最初のスクリーニングのため、本発明者らは、1)自閉症遺伝資源交換局(Autism Genetic Resource Exchange、AGRE)のコレクション由来の943のASD家系(4444人の個別患者)、2)フィラデルフィア小児病院(Children’s Hospital of Philadelphia、CHOP)由来の神経疾患の徴候が見られない、非特定でかつ血縁の無い1070人のヨーロッパ系の子供、3)国立神経疾患脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke、NINDS)の対照群コレクション由来の、神経学的に正常で血縁の無い542人のヨーロッパ系の成人および高齢者、の3つのサンプルのコレクションを集めた。前記AGRE家系には、917の多発家系、24の単発家系、および2のASD診断をしなかった家系が含まれる。全ての解析において、AGREの患者は、「自閉症である(Autism)」(n=1463)、「広いスペクトラムを持つ(Broad Spectrum)」(n=149)、または「自閉症であるとは言えない(Not Quite Autism)」(n=71)と注釈付けられ、罹患しているものとして同様に扱った。AGREおよびNINDSのサンプルは、エプスタイン・バーウイルス(Esptein−Barr Virus、EBV)により形質転換したリンパ芽球様細胞株から抽出したDNAを用いて遺伝子型を同定し、一方でCHOPの対照群は、全血から抽出したDNAを用いて遺伝子型を同定した。これらの解析に含まれる全てのAGREのサンプルおよび対照群のサンプルは、イルミナ社のHumanHap550バージョン3のアレイ上で遺伝子型を同定し、バージョン1のアレイで遺伝子型を同定した281のサンプルは当該解析からは除外した。前記NINDSの対照群は異なる場所および時間で遺伝子型を同定したため、この対照群はある独立のコホートにおける特定のCNVの頻度を評価するためと、細胞株のアーチファクトの懸念を払拭するために用いた。この研究は、フィラデルフィア小児病院の施設内倫理委員会によって承認された。全ての被験者は、サンプルの収集およびそれに続く解析について、書面によるインフォームドコンセントを用意した。
【0086】
当該自閉症患者対照(Autism Case−Control、ACC)コホートは、アメリカ合衆国内の複数の場所由来の859人の患者を含み、その患者の全てはASDに罹患したヨーロッパ系の患者であった。これらの患者の中で、703人の患者は男性で、156人の患者は女性であり、828人の患者は自閉症の診断基準を満たしており、31人はその他のASDの基準を満たしていた。被験者の年齢は、自閉症診断面接(Autism Diagnostic Interview、ADI)を受けた時点で2〜21歳の範囲であった。当該対象患者の中で、54%は多発家系由来、残りは単発家系由来の患者であった。再現実験のために用いられた対照群は、1051人のASDの病歴の無い白人系であると自己申告された子供を含んでいた。この対照群は、CHOPヘルスケアネットワークの臨床医師の指示の元、CHOPの看護助手および医療助手のスタッフによって集められた。前記CHOPヘルスケアネットワークには、4つの一次診療施設での診療、ならびに小児定期健康診断などの複数の集団診療および外来診療が含まれていた。
【0087】
コピー数多型の検出および注釈付け
それぞれのデータセットについて、本発明者らは同一でかつ厳しい品質管理基準を適用し、シグナルの品質が低いサンプルは除外した。全シグナル強度、対立遺伝子の強度比率、SNP対立遺伝子頻度、隣接SNP間の距離、および家系情報などの複数の情報源を利用して判定を生成するアルゴリズムであるPennCNV[20]を用いて、CNV判定を生成した。本発明者らは以下のいずれかの基準を満たすサンプルを除外した。a)常染色体のlogR比の値の標準偏差(LRR_SD)が0.28より高い、b)B対立遺伝子の中央値(BAF_median)が0.55より高いまたは0.45より低い、c)BAF値が0.2の時と0.25の時との間のマーカーの分率、またはBAF値が0.75の時と0.8の時との間のマーカーの分率(BAF_drift)が0.002を超える時。本発明者らはまた、IGLC1(22q11.22)、IGHG1(14q32.33)、およびIGKC(2q11.2)、ならびにT細胞受容体定常鎖領域(14q11.2)中のCNVを本発明者らの解析から除外し、また同様にBeadStudioにおいて異形染色体異常(細胞の亜集団における染色体再編)の証拠を示す染色体のCNVも解析から除外した。
【0088】
CNV判定は、UCSC Table Browserによって座標を得たRefSeqエクソンとの重なりを同定することによって、遺伝子上にマップした。この方法で取り出されたエクソンに重なる欠失のイベントを、eDelとしてリストした。eDupは1個または複数のコードエクソンと重なった増幅物であり、対応する転写物の先端および終端に対して内部に見られるものであると定義した。全てのエクソンを含んでいると見られた増幅物については、gDupとして注釈付けをした。患者群と対照群の関連するCNV負荷についてのP値を、それぞれの部位についてフィッシャーの正確確率検定(Fisher’s exact test)により計算した。本発明者らのCNV判定とAGRE家系を用いたその他の出版物[10]、[11]、[21]、[22]との対比を行うために、本発明者らは同じAGRE識別子を持つ同じ個人に対する出版された判定について調査をした。CNV判定は、それぞれ対応する出版物から取り出した。
【0089】
CNVの妥当性確認のための定量的PCR
反復をマスクしたヒトゲノム(NCBI_36、2006年3月公開、http://genome.ucsc.edu)に対してFileBuilder3.0を用いて、無作為にCNVに問い合わせを行う様なTaqManプライマー/プローブセットをデザインした。それぞれのアッセイについて、10ngのゲノムDNAを、最終濃度が1倍になるTaqMan Universal Master Mix(ABI part number 4304437)およびそれぞれのプライマーおよびプローブ200nMを含んだ、4つ組の10μLの反応溶液中で分析した。サイクリング反応は初期設定の条件下で、384ウェルの光学PCRプレートをABI7900の装置に入れて行った。コピー数は2−ΔΔCTとして定義し、ここでΔCTは、内在性の基準(RNAseP)に対して標準化した、問い合わせしたサンプルに必要なサイクル数の閾値の差分であり、コピー数は3つの任意の対照DNAより得られた平均値に対する比で表した。
【0090】
系統発生解析
912の家系から無作為に選択した1人の子供由来の常染色体上の遺伝子型の追加エンコーディングについて、系統樹をPAUP4.0に実装されている近接接合法(neighbor−joining algorithm)を用いて推定した。
【実施例1】
【0091】
家系ベースの研究におけるエクソンのコピー数多型についての全ゲノム解析は、新規自閉症感受性遺伝子を提示する
自閉症スペクトラム障害(ASDs、MIM:209850)は、社会的的行動およびコミュニケーションにおける異常、ならびに限定された行動を反復するパターンによって特徴づけられる、不均一な小児疾患群である[1]。双子についての研究において、一卵性双生児におけるASDの一致率(92%)は、二卵性双生児における一致率(10%)よりも非常に高いことが実証された[2、3]。この事実は自閉症の感受性には強い遺伝的基盤があることを示している。過去の研究は多数の関心ゲノム領域を示唆してきたが[4−8]、ASDリスクに寄与する特定の遺伝子変化を同定することはいまだ困難なままである。
【0092】
最近の構造的変異(つまり、コピー数多型またはCNV)の特徴決定から、遺伝的リスクに関わる変異の同定に向けた大きな進捗があった。例えば、症候性自閉症の患者に関わる最初の報告において、アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーション(comparative genomic hybridization、CGH)を用いて遺伝子変化が特徴決定され、患者の28%において大きな新規CNVが同定された[9]。同様に後続の研究において、患者群における新規CNVの頻度が対照群に比べて高いことが実証された[7][8]。CNV解析は疾患に関連する可能性のある領域を同定するのに有用であることが証明され[8]、[10]−[13]、CNV解析の利用が始まることにより、NRXN1、CNTNAP2、およびNHE9などの個々の遺伝子の候補化が促進された[6]、[14]−[16]。患者群と民族的に一致させた対照群とにおいて、構造的変異の特徴決定を行い、自閉症とユビキチン経路の遺伝子とを関連付け、前記AGREデータセットを用いてこの知見について再現実験を行った最近の研究は、家系のデータについては当該研究中に報告されていないものの、同様に注目すべきである[17]。本発明者らはAGREデータセットをAGREサンプルで利用可能である家系の情報とともに発見コホートとして用いて、エクソン中のイベントをイントロンおよび遺伝子間領域中のCNVよりも優先させることによる、独特でかつ補完的な解析を記述し、ASDの遺伝的構造についての重要で新しい見識を提供する。
【0093】
疾患のリスクを調整することが出来るさらなる遺伝子および領域の同定に向けて、本発明者らは900を越えるASD多発家系から、全ゲノムの構造的変異を特徴決定する資源を集めた。下に示しているものは、患者群と健康で民族的に一致させた対照群とにおいて観察されたイベントを、エクソンの欠失(eDel)、エクソンの重複(eDup)、および遺伝子全体の重複(gDup)の、3種類の遺伝子イベントに注目して対比した解析の結果である。複数の患者において見られるが対照群では見られない変異を保有する、新規の領域の同定とともに、既知のASD部位が回収されたことは、このデータセットの有用性を裏付けている。本発明者らはさらに、膨大な個人間の変異と同様に、ある個人の患者でのみ観察された多くの数のイベントについても記録している(表1)。重要なことに、これらのデータの全ては科学的コミュニティに出版前の状態で(ワールド・ワイド・ウェブ上のagre.orgにて)利用可能になっており、既知の公的にアクセス可能なバイオ材料および表現系のデータの有用性を大きく上昇させている。これらのデータはさらに、ヒトおよび前記ASDの両者における構造的変異の程度を浮き彫りにし、仮説生成および個々の部位の照合をするための重要な資源を提供する。
【0094】
ASD多発家系と血縁のない対照群とにおける構造的変異を特徴付けるために、本発明者らはイルミナ社HumanHap550のバージョン3アレイを用いて561466個のSNPマーカーで個人を分類した。品質管理閾値に達しなかったサンプルを除外して(表2)、本発明者らは前記自閉症遺伝資源交換局(Autism Genetic Resource Exchange、AGRE)に登録された912の多発家系由来の3832人の個人[18]、フィラデルフィア小児病院(Children’s Hospital of Philadelphia、CHOP)由来の1070ヒトの病気の無い子供、および国立神経疾患脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke、NINDS)の対照群コレクション由来の神経学的に正常な418人の成人および高齢者[19]からアレイデータを得た。当該PenCNVのソフトウェア[20]を用いて、本発明者らは平均59.9Kbの大きさであり、イベントの発生頻度が平均して一個人毎に24.3イベントであるCNV群を検出した(表3を参照)。検出感度は、それぞれ平均分解能が数Mbおよび数百Kbの範囲であると見られる、過去のBACアレイベースの方法[9]、[21]およびSNPベースの方法[8]に引けを取らない。
【0095】
遺伝子型同定の正確性を検証するための最初のステップとして、本発明者らは前記AGREコホート中のCNVの遺伝性を調べた。子供において出されたCNV判定の96.2%が親においても検出され、高い品質に相応しい結果が得られた。遺伝子型同定の正確性の論点についてさらに調査するため、本発明者らは、Affymetrix5.0プラットホームを用いて遺伝子型同定された2518のAGREサンプルと重なりのある、独立して生成されたデータセットについてCNV判定を生成した[11]。既知のASD領域のCNV(>500kb)(例えば、15q11−13、16p11.2、22q11.21;表4)[8]、[11]、[21]、[22]について、前記2つのプラットフォーム間において両プラットフォームで遺伝子型同定された個人について100%の対応が観察された。さらなるCNV判定の確認のため、本発明者らはAGRE家系の過去の解析において注目された変異と、本研究において同定された新規変異とを比較した。本発明者らはSebat et al[7]によって報告された5個全ての新規CNVと、Szatmari et al[6]によって報告された5個中3個の新規CNVと、Martin et al[23]によって報告されたA2BP1中にある1個の新規CNVと、Weiss et al[11]およびKumar et al[10]によって報告された16p11.2上の5個全ての新規欠失を同定した。Szatmari et alによって報告された13個中2個の本発明者らの研究で検出されなかった新規CNVについては、1つは非常に小さく(2SNPs、180bp、8p23.2上)、2つ目は明らかに遺伝するようであった(469SNPs、14Mb、17p12上)。従って、本発明者らのデータは幾つかの他の研究と一致しており、自閉症多発家系における新規CNVの、より包括的な実態を提供する。これらのデータの品質について、他の独立したプラットフォームを用いてさらに評価するために、本発明者らはTaqmanを用いて、AGRE発端者で同定された過去に報告の無い12個の新規CNVにおける関連コピー数を決定し、12中11の領域について確認を行った(図1および表5)。総合すると、これらの結果は本発明者らが報告したCNV判定に一貫性と信頼性があることを示唆している。
【0096】
それ故に、本発明者らは追加の解析を行い、患者群において対照群に比べて構造的変異が豊富である、特定の部位を同定した。そうした変異の大部分はイントロン上または遺伝子間にあるので、本発明者らは特定の遺伝子の分子機能に干渉している可能性が非常に高いCNVを優先させることを試みた。本発明者らは最初に、CNV判定をフィルターし、RefSeqの遺伝子との重なりが見られるエクソン欠失(eDel)のみが含まれるようにした。全体として、そうしたeDelはAGREの患者群、AGREの患者群の一等親血縁者群、血縁の無い対照群(CHOPコホートおよびNINDSコホート)において、そうした変異が1人につき平均で〜2個見られるという、よく似た頻度で観察された(表3)。前記ASDに関連したイベントを同定するため、本発明者らは次に、少なくとも1人の患者において見られるが血縁の無い対照群においては見られないeDelを保有する遺伝子を探索した。この基準を満たした284個の遺伝子(表1)の中に、幾つかの既知のASDの遺伝子または知的障害の遺伝子、例えばASPM[24]、DPP10[8]、CNTNAP2[25]、[26]、PCDH9[16]、およびNRXN1[6]を確認した。ASDリスクに寄与している可能性が非常に高い遺伝子を濃縮するために、本発明者らは家系ベースの判定を行い、これらの遺伝子のどれが少なくとも2つの家系由来の3人以上の患者においてeDelを保有しているかを評価した(表6)。この厳密なフィルタリングの結果、NRXN1などの、55部位の72遺伝子が残った。NRXN1について別個の疾患に関連した11の変異が同定されてきたことを考慮すると、この結果は注目すべきである[6]、[8]、[15]、[27]、[28]。ニューレキシン(neurexin)ファミリーのメンバーは、ASD関連のニューロリジン(neuroligin)と機能的に相互作用し[29]−[32]、同様にシナプスの特異化および特殊化において重要な役割を果たしていることが知られている[33]、[34]。eDelはDPP10およびPCDH9などの、より最近に同定された候補中にも同様に保持されていた。同様に、CADPS2のイントロン2中のRNF133およびRNF148[7]、[35]の回収も、この部位にさらなる複雑性があることを浮き彫りにしている。CNVのブレイクポイントはSNPのデータを用いるだけでは正確にマップすることは不可能だが、タンパク質をコードするエクソンとの重なりを決定し、これらのデータを利用して遺伝子機能への影響を予想することが可能である。本研究で注目されている部位における別個の対立遺伝子においては、その対応するタンパク質産物が消去されたり、切り詰められたりすると予測され、これは機能が障害される事と整合性がある(図2)。
【0097】
重要なことに、これらのeDelの部位の大部分におけるCNVは、異なる家系で固有のブレイクポイントを示し、および/または異なるエクソンの消失に繋がった。この事はこれらのeDelが独立している事を示している。さらに、血縁の無い故人において一部の部位におけるCNVが同一のブレイクポイントを示すことがよく知られていることから[10]、この結果は本研究で記載されている変異の程度がどの程度独立に発生するかを低く見積もっている可能性がある。多次元尺度構成法(multi−dimenaional scaling)の結果も同様に、本発明者らの注目している変異が独立に発生するという解釈と一致している(図3)。
【0098】
同定された変異の数が多いことを考えると、独立した患者対照研究において、これらのeDelの中でどのくらいの数が患者の中で本当に過剰出現しているのか、つまり第一種過誤に起因する可能性があるものでないか、確認することは非常に重要である。この懸念に対処するために、本発明者らは前記自閉症患者対照コホート(Autism Case Control cohort、ACC)から独立に確認された859人のASD患者群および血縁のない1051人の対照群から成る再現実験のデータセットにおいて、これら同じ遺伝子におけるeDel頻度の決定を試みた。発見フェーズにおいて同定された部位の3分の1は、1人または複数のACC対照群において観察されたが(18/55、32.7%)、この事実は、稀なケースではあるが、これらの部位におけるeDelはASD患者および家系構成員に限定されないことを示唆している。対照的に、またしっかりとした再現実験であることを立証することでもあるが、22の遺伝子を含む14の個別の部位が、AGREおよびACCの患者群の両方においてeDelを持っており、2539人の対照群においてはeDelを持っていないことが観察された(表3)。本発明者らの再現実験のデータは、特定の部位のASDへの関与を強く支持するものである(表7)。しかしながら、これらの結果が単に偶然に観察されたものでないことを確かにするために、本発明者らは前記再現実験のコホートのデータについて、患者/対象状態を順序替えすることによる、10000回の並べ替え検定(permutation trial)を行った。それぞれの順序替えをしたデータセットにおいて、本発明者らは患者群と対照群をオリジナルのデータと同じ数に保ち、患者群でのみCNVを保有する遺伝子の数を計算した。10000回の並べ替え検定のいずれの試行においても、再現された患者特異的な部位について、実験による観察結果に匹敵する結果は得られなかった(n=14、p<0.0001、図4A)。対照的に、実験による観察結果に匹敵する所見が、再現されなかった部位(発見フェーズにおいて患者特異的であるとして注目されたがその後の再現実験の対照群において観察された部位)について、10000試行中246試行の対照群において見られた(n=18、p=0.02、図4B)。
【0099】
個々の稀なイベントについて統計的な裏付けの獲得に関連した挑戦はこれまでにあったが[7]、[36]、本発明者らは次に再現されたeDel部位についてP値の決定を試みた。本発明者らは以下の部位のそれぞれについて裏づけを得ることが出来た。17q22上のBZRAP1(p=8.0×10−4)、14q21.3上のMDGA2(p=1.3×10−4)、19q13上のMADCAM1(p=5.5×10−5、および15q11上の3つの遺伝子部位(p=1.3×10−11)。15q11および19q13それぞれにおけるCNV判定はエラーが多く、この事実はこの部位の結果は慎重に解釈されるべきであることを示唆している(表7中の脚注CおよびFを参照)。しかしながら、NRXN1が回収されたという事実は、同様に再現された追加の部位も関与があるという信頼性を与えてくれる。(末梢性)ベンゾジアゼピン受容体関連タンパク質1(BZRAP1、別名RIMBP1)は、小胞放出機構と電位依存性Ca2+チャネルを繋げることにより、シナプス伝達を調節すると考えられているアダプター分子である[37]。ここで仮説無しの方法によってこのシナプス構成分子が同定されたことは、非常に満足のいく結果であり、またASDにおけるシナプス機能不全についてのさらなる裏づけを与えてくれている。MDGA2[39]についてはあまり詳しいことは知られていないが、BLASTPによる、予想されるタンパク質とGeneBank中の他全てのタンパク質と比較したところ、Contactin4に予想外に高い類似性を示した(500以上のアミノ酸において24%の一致、期待確率=3×10−39)。知的障害[40]および自閉症[17]、[41]を持つ個人においてCNTN4のヘミ接合性欠失が見られるという過去の報告を考慮すると、MDGA2のCNTN4との間の類似性は、それを上回るのはMDGA1への類似性だけであり、注目に値する。細胞接着分子における共通の変異が自閉症リスクに寄与する可能性があるという示唆[42]を考慮に入れると、MDGA2がこの分子ファミリーのメンバーに構造的に類似していることも同様に興味深い。同様の結果がさらに3つの遺伝子において観察されており、その遺伝子にはChrolide Channel,Kidoney,A(CLCNKA)、Kainate−Preferring Glutamate Receptor Subunit KA2(GRIK5)、およびGuanine Monophosphate synthetase(GMPS)(図2)が挙げられ、それぞれについてeDelが複数の血縁の無い患者で同定されたが、罹患していない兄弟姉妹または1489人の血縁の無いCHOP/NINDSの対照群のいずれにおいても同定されなかった(図2)。さらに、前記遺伝子のそれぞれについて、少なくとも1つのCNVが観察され、タンパク質をコードする配列を消去していた。同様に、血縁の無い個人において同定された別個の対立遺伝子が、著しく切り詰められた形でのタンパク質をもたらすと予測され、これはまた機能が障害される事と整合性がある。
【0100】
幾つかの既報の解析は、遺伝子の欠失のイベントが、自閉症の病理発生により大きく寄与していると強調している[7]が、ASDリスクを強く調節する遺伝子重複の明らかな例もまた存在する[43]、[44]。それ故に、本発明者らは重複について、遺伝子量を増加させる可能性のある遺伝子全体に関与するイベント(gDup)と、フレームシフトや参照遺伝子とは異なる染色体領域へのマップを引き起こす可能性のある内部エクソンに限定したイベント(eDup)とを区別し、並行した解析を行った。gDupについて、本発明者らは少なくとも1人のAGREの患者において重複されているが、CHOP/NINDSの対照群においては重複されていない、449個の遺伝子を同定した。これらの遺伝子の中で、200の遺伝子は推定63部位上にあり、例えば15q11.2[43]上の遺伝子を含み、少なくとも2つの独立した家系由来の3人以上の患者に存在するという、より厳密な基準を満たしていた。これらの遺伝子の中で、11.5%(23/200)はACCの対照群でも見られ、一方で24.5%(49/200)は前記再現実験のコホートにおいて患者特異的であった。確定させた部位について強い統計的な裏づけが得られ(例えば、15q11−q13上のPWS/AS領域のUBE3Aおよびその他の遺伝子についてp=9.3×10−6)、また以下に示す新規部位について僅かながら兆候が観察された。2p11.2上のCDBA(p=0.069)、4p16.3上のLOC285498(p=0.028)、および9q34.3上のCARD9/LOC728489(p=0.005)。
【0101】
eDupについて、本発明者らは1個または複数の内部エクソンの重複が、対応する翻訳領域を混乱させ、その結果遺伝子機能を障害すると予測される働きをする可能性があると推論した。コピー数多型の増幅分は必ずしも野生型の部位にマップされないという危惧に反して、Potocki−Lupski症候群のクリティカル領域中のTSC2[45]およびRAI1[44]、[46]などの既知のASD遺伝子は、少なくとも1人のAGREの患者で観察されたがCHOP/NINDS対照群では観察されなかった159の部位の中に存在した(表1)。こうしたイベントはNLGN1部位上でも1つの家系において見られたが、この事はNLGN3およびNLGN4における過去の裏付け[29]を考慮すると興味深いことである。これらの結果を前述のeDelについての考察において用いたより厳密な基準を用いてフィルターすると、このイベントのセットは2つの別個の家系由来の少なくとも3人の患者において観察された76の部位に限定された(表6)。興味深いことに、AGREおよびACCの患者において対照群に比べて有意に高い頻度(p=8.0×10−4)でeDelを保有すると上述したBZRAP1は前記部位の中に存在し、eDupが血縁の無い4人のAGREの患者においてそこで観察された(スクリーニング、p=0.021)。電位依存性カリウムチャネルサブユニットのKCNAB2(p=4.7×10−3)などのその他の8個の遺伝子については、ACC対照群においては存在しないままであり、また独立した患者コホートにおいて再現された。BZRAP1におけるeDupはACC患者群において検出されなかったが、この部位におけるeDelは再現されており、この部位での変異の重要性を裏付けている。BZRAP1におけるeDelとeDupとを総合して考慮すると、こうした観察結果が偶然だけで起こりえる可能性は小さい(p=2.3×10−5)。本発明者らが注目する当該変異はいずれも2539人の血縁の無い対照群において観察されなかったが、NRXN1、BZRAP1、およびMDGA2におけるeDelなどの鍵となるイベントは、患者群と自閉症でない家系構成員との両方で観察された(図5)。この事実はNRXN1におけるハプロ不全がASDに寄与している可能性を示唆した過去の研究[15]と一致しているが、疾患の原因であるとするには不十分である。こうしたデータはまた、確立した「広範囲自閉症形質(broader autism phenotype)」の知見、つまり例えばASD患者の一等血縁者における亜臨床的な言語的および社会的な機能障害が見られる知見と一致しており、またこの知見は複数部位モデルを裏付けている[47]、[48]。本発明者らが驚いたことに、これらの部位の鍵となる変異は、幾つかの家系において患者の小集団にしか移行していないようであった。これらの観察結果は、16p11.2[11]およびDISC1[49]、[50]などの他の主要な作用部位における知見と類似しており、また、複数の変異が、普通の変異もあり稀な変異もあるが、共同して働いて臨床的な表出を形作るというモデルと整合している[51]−[53]。結果はまた、本当のリスク部位は疾患に対して不十分な浸透率と不完全な分離を示す可能性が高い[13]という考えと整合しており、遺伝子探索の取り組みを困難にするであろうことが実情である。これに関連して、中程度の降下を持つ稀な対立遺伝子が、独立して疾患の異なる側面に対して働く(中間形質モデル)のか、または共同して脳の発達の鍵となる処理過程を弱体化する(閾値モデル)のか、どちらであるかを決定するには相当の取り組みが必要になるであろう。
【0102】
CNV判定を、エクソン欠失(eDel)および重複(eDupおよびgDup)を含むもののみに限定したことによって、本発明者らは遺伝子機能に影響している可能性が非常に高い変異を濃縮し、そうすることによってその他の複雑な疾患についての研究[55]と同様にシグナル・ノイズ比を向上させることを試みた。同時に本発明者らは、他の遺伝子ベースの方策と同様に、同じ転写ユニットに関与するeDelを、別々だが等価であるとみなす能力を維持している。そうしたイベントは稀なようであることを考慮すると、これは重要な考察である。
【0103】
DAVID[56]による経路解析は、この解析が遺伝子サイズを調整しておらず、より大きな遺伝子に有利に働く可能性があることに注意する必要はあるが、反復性eDelの遺伝子の中の細胞接着分子(未補正、p=0.002;CDH17、PCDH9、LAMA2、MADCAM1、NRXN1、POSTN、SPON2)の過剰出現を裏付けた。それにもかかわらず、SPON2を除けば、調べられた対照群のいずれにおいてもこれらの遺伝子にeDelは観察されなかった。対照的に、ユビキチン分解経路中の遺伝子についてはこうした過剰出現の兆候は観察されず、またeDupまたはgDupにおいてもいずれの名称も浮かび上がらなかった。この研究がRefSeqエクソンを含むイベントのみに焦点を合わせている事を考えると、Glessnerとその同僚による研究[17]との違いは予想されるものである。
【0104】
要約すると、本発明者らはASDにおけるコピー数多型のゲノム景観を特徴決定する高解像度の全ゲノム解析を行った。1771人のASD患者群と2539人の対照群との間の構造的変異の比較と、エクソンを含むイベントの優先化を行う事によって、本発明者らは、複数の発端者に存在するが対照群の個人には存在しない稀な変異を保有する、150を超える部位を同定した。調べたそれぞれの構造的変異の種類について、既知の部位が回収された事により、用いた方法および得られた結果の妥当性が裏付けられた。複数の血縁の無い患者において存在するが対照群には存在しない変異を保有し、またスクリーニングと再現実験の両方のコホートで回収された部位については、最も高い信頼性を置くべきであろう。新規の遺伝子の中では、BZRAP1およびMDGA2について最も強い裏付けが得られた。これらはASD治療に有用な治療法の開発のための新しい標的を提供する魅力的な候補遺伝子である。
【実施例2】
【0105】
自閉症およびASDの治療のための有効な治療法を同定するためのスクリーニングアッセイ
本明細書上述の情報は、患者に対して臨床的に適用可能であり、自閉症または自閉症スペクトラム障害の発生に感受性の高い患者の診断および治療的介入に適用できる。本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載された情報の患者への臨床的適用を含む。マイクロアレイなどの診断用組成物および方法を、患者由来の核酸中に本明細書記述の遺伝子変化を同定することで自閉症またはASDの発生の感受性を評価するように設計することが可能である。この手段は患者が診療所に着いた後に行われる場合がある。つまり、当該患者は採血され、本明細書に記載の診断方法を用いて、医師が実施例1に記載されているようにCNVを検出することが可能である。当該患者のサンプルは評価前に任意に増幅してもよく、また当該サンプルから得られた情報は、患者に対して自閉症またはASDの発生の感受性が高いまたは低いかを診断するために使用される。本発明の診断方法を行うキットもまた、本明細書において提供される。こうしたキットは、本明細書において提供されるSNPの少なくとも1つのを有するマイクロアレイ、および上述のように患者のサンプルを評価するのに必要な試薬を有している。
【0106】
自閉症/ASD関与遺伝子と患者の結果との一致性は、どの変異が存在するかを示し、そしてASD発生に異常なリスクを持つ患者を同定するであろう。本明細書で提供される情報は、疾患の進行において過去に可能であったよりも早期の治療的介入を可能にする。また同様に本明細書で上述されている通り、BZRAP1およびMDGA2が、この神経疾患の治療に有効な新たな治療薬の開発の新規標的を提供する。
【0107】
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【0108】
【表1】



































【0109】
【表2】

【0110】
【表3】

【0111】
【表4】

【0112】
【表5】


【0113】
【表6】










【0114】
本発明のある特定の好ましい実施形態を上記に記載および具体的に例示してきたが、これは本発明をこうした実施形態に限定することを意図したものではない。以下の請求項に記載される様に、本発明の範囲および精神から逸脱すること無しに、様々な改変を行う事が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経性疾患の発生の傾向を検知するための方法であって、標的ポリヌクレオチドにおける少なくとも1つのCNVの存在を検知する工程を有し、前記CNVが存在する場合に、前記患者は神経性疾患を発生するリスクが高くなり、CNVを含む前記欠失は表6に記載されたCNVから成るCNVの群から選択されるものである、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記少なくとも1つのCNVは、
BZRAP1(ベンゾジアゼピン受容体(末梢神経性)付随タンパク質1:Benzodiazapine receptor (peripheral) associated protein 1)17q22−q23 chr17:53733592−53761151、
MDGA2(グリコシルホスファチジルイノシトール アンカーを含むMAMドメイン:MAM domain containing glycosylphosphatidylinositol anchor)214q21.3 chr14:46,170,380−47,422,368、
CLCNKA(塩素チャネル Ka:chloride channel Ka)chr1:16221072−16233132、
NTRK1(神経栄養性チロシンキナーゼ、受容体、タイプ1:Neurotrophic tyrosine kinase, receptor, type 1)1q21−q22 chr1:155,013,407−155,202,154、USH2A(アッシャー症候群2A(受容常染色体、低刺激):Usher syndrome 2A (autosomal recessive, mild))1q41 chr1:213,752,880−214,875,391、
NRXN1(ニューレキシン1:Neurexin 1)2p16.3 chr2:49,712,184−51,360,413、
GALNT13(UDP−N−アセチル−アルファ−D−ガラクトサミン:ポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ:UDP−N−acetyl−alpha−D−galactosamine:polypeptide N−acetylgalactosaminyltransferase)2q23.3−q24.1 chr2:153,854,689−155,600,757、
GMPS(グアニンモノホスフェート合成酵素:Guanine monophosphate synthetase)3q24 chr3:157,059,820−157,149,414、
SPON2(スポンジン2、細胞外マトリックスタンパク質:Spondin 2, extracellular matrix protein)4p16.3 chr4:1,124,285−1,183,034、
LRBA(LPS応答小胞輸送、ビーチ及びアンカーコンテイニング:LPS−responsive vesicle trafficking, beach and anchor containing)4q31.3 chr4:151,217,225−152,344,150、
TPPP(チューブリン重合促進タンパク質:Tubulin polymerization promoting protein)5p15.3 chr5:567,501−892,810、
SKIV2L2(スーパーキラーバイラリシディック活性2−様2:Superkiller viralicidic activity 2−like 2)(サッカロミセス・セレビシア)5q11.2 chr5:54,522,183−54,873,752、
KIAA1586(KIAA1586)6p12.1 chr6:56,980,593−57,066,702、
BTN2A1(ブチロフィリン、サブファミリー2、メンバーA1:Butyrophilin, subfamily 2, member A1)6p22.1 chr6:26566167−26577844、
BXDC1(Brixドメインコンテイニング1:Brix domain containing 1) 6q21 chr6:111409983−111453487、
LAMA2(ラミニン、アルファ 2 (メロシン、先天性筋ジストロフィー):Laminin, alpha 2 (merosin, congenital muscular dystrophy))6q22−q23 chr6:128,945,101−130,370,307、
DGKB(ジアシルグリセロール キナーゼ、ベータ 90kDa:Diacylglycerol kinase, beta 90kDa)7p21.2 chr7:14,015,810−15,013,734、
RNF133(リングフィンガータンパク質133:Ring finger protein 133)7q31.32 chr7:122,118,508−122,132,937、
RNF148(リングフィンガータンパク質148:Ring finger protein 148)7q31.33 chr7:122,118,508−122,132,937、
SLC18A1(溶質輸送体ファミリー18(小胞モノアミン)、メンバー1:Solute carrier family 18 (vesicular monoamine), member 1)8p21.3 chr8:19,874,095−20,257,554、
COL27A(コラーゲン、タイプXXVII、アルファ1:Collagen, type XXVII, alpha 1)9q32 chr9:115958051−116112796、
OR2AG1(オルファクトリー受容体、ファミリー2、サブファミリーAG、メンバー1:Olfactory receptor, family 2, subfamily AG, member 1)11p15.4 chr11:6762845−6763795、
OR2AG2(オルファクトリー受容体、ファミリー2、サブファミリーAG、メンバー2:Olfactory receptor, family 2, subfamily AG, member 2)11p15.4 chr11:6745814−6746764、
SSSCA1(シェーグレン症候群/皮膚硬化症自己抗原1:Sjogren syndrome/scleroderma autoantigen 1)11q13.1 chr11:65094518−65095815、
FAM89B(配列類似性89を有するファミリー、メンバーB:Family with sequence similarity 89, member B)11q23 chr11:65,094,554−65,100,079、
PRB3(プロリン−リッチタンパク質BstNI サブファミリー3:Proline−rich protein BstNI subfamily 3)12p13.2 chr12:11310124−11313908、
KRT3(ケラチン3:Keratin 3)12q12−q13 chr12:51,444,040−51,501,855、
SLC6A15(溶質輸送体ファミリー66、メンバー15:Solute carrier family 6, member 15)12q21.3 chr12:83,670,976−83,958,489、
DACH1(ダックスフントホモログ1(ショウジョウバエ):Dachshund homolog 1 (Drosophila))13q22 chr13:70910098−71339331、
LOC650137(7膜貫通ヘリックス型受容体:Seven transmembrane helix receptor)15q11.2 chr15:19,812,808−20,018,007、
OR4M2(オルファクトリー受容体、ファミリー4、サブファミリーM、メンバー2:Olfactory receptor,family 4,subfamily M, member 2)15q11.2 chr15:19,812,808−20,018,007、
OR4N4(仮想LOC727924:Hypothetical LOC727924)15q11.2 chr15:19,812,808−20,018,007、
LOC162073(仮想タンパク質LOC162073:hypothetical protein LOC162073)16p12.3 chr16:19,008,005−19,060,144、
DLGAP1(ディスクス、ラージ(ショウジョウバエ)タンパク質ホモログ11:Discs,large(Drosophila)homolog−associated protein 1)18p11.3 chr18:3,393,512−3,965,460、
FLJ44894 Homo sapiens cDNA FLJ44894 fis、clone BRAMY3000692, m 19p12 chr19:20,227,461−20,491,547、
CYP4F22(シトクローム P450、ファミリー4、サブファミリーF、ポリペプチド22:Cytochrome P450, family 4, subfamily F, polypeptide 22)19p13.12 chr19:15480335−15524128、
GRIKS(グルタメート受容体、イオンチャンネル型、カイニン酸5:Glutamate receptor, ionotropic, kainate 5)19q13.2 chr19:47,126,828−47,329,282、
GYG2(グリコゲニン2:Glycogenin 2)Xp22.3 chrX:2,656,547−2,925,352、
XG(Xg擬似遺伝子、Y連鎖2:Xg pseudogene,Y−linked 2)Xp22.33 chrX:2,656,547−2,925,353、
FGF13(線維芽細胞成長因子13:Fibroblast growth factor 13)Xq26.3 chrX:137,421,326−138,459,367、
SPANXB1(SPANXファミリー、メンバーB2:SPANX family, member B2)Xq27.1 chrX:139,908,245−139,941,724、及び
SPANXB2(SPANXファミリー、メンバーB2:SPANX family,member B2)Xq27.1 chrX:139,908,245−139,941,724
からなる群から選択されるエデル(edel)である、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記神経性疾患は統合失調症、双極性障害、自閉症、自閉症スペクトラム症(ASD)、トゥレット症候群、及び強迫性障害からなる群から選択されるものである、方法。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、前記疾患は自閉症スペクトラム症である、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記標的核酸は検知前に増幅されるものである、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記CNVの存在を検知する工程は、特異的ハイブリダイゼーションの検知、対立遺伝子のサイズの測定、制限断片長多型の分析、対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション分析、一塩基プライマー伸長反応、及び増幅されたポリヌクレオチドのシークエンシングからなる群から選択される手法を使用して行われるものである、方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の方法において、前記標的核酸はDNAである、方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記CNVを有する核酸は、前記ヒト被験者の単離された細胞から得られるものである、方法。
【請求項9】
神経性信号及び/または形態を変更する治療薬剤を同定する方法であって、
a)請求項1記載の少なくとも1つのCNVを発現する細胞を提供する工程と、
b)工程a)のCNVに対応する同種の野生型配列を発現する細胞を提供する工程と、
c)工程a)及びb)の細胞を試験薬と接触させる工程と、
d)前記薬剤が、工程a)の細胞の神経性信号及び/または形態を、工程b)の細胞と比較して変更したかどうかを分析する工程であって、これにより神経性信号及び形態を変更する薬剤を同定するものである、前記分析する工程と、
を有するものである、方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記薬剤は神経性発達障害の治療に有効性を有するものである、方法。
【請求項11】
薬学的に許容される担体における、請求項9記載の方法により同定された試験薬。
【請求項12】
それを必要とする患者における神経性疾患を治療する方法であって、請求項11記載の薬剤の有効量を投与する工程を有するものである、方法。
【請求項13】
請求項9記載の方法において、前記薬剤は神経細胞シグナル伝達を調節するものである、方法。
【請求項14】
請求項1記載のCNV含有核酸の少なくとも1つを有するベクター。
【請求項15】
請求項14記載のベクターを有する宿主細胞。
【請求項16】
請求項1記載のCNV含有核酸に関連する神経性疾患を有する固体支持体。
【請求項17】
請求項9記載の方法において、前記CNVはMDGA2またはBZRAP1におけるエデルである、方法。
【請求項18】
請求項9記載の方法において、前記CNVはNRXN1におけるエデルである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−511895(P2012−511895A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536563(P2011−536563)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2009/064617
【国際公開番号】WO2010/057112
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510226358)
【出願人】(511117314)トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア (1)
【出願人】(304056899)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (9)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, Oakland, CA 94607−5200, United States of America
【Fターム(参考)】