説明

ヒドロキシチロソル含有オリーブ抽出物による栄養製品の栄養強化及びヒドロキシチロソルにより栄養強化された栄養製品

【課題】 従来技術に関連する問題点を解決する。
【解決手段】 本発明は、ヒドロキシチロソル高含有組成物の栄養供給により、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療用のヒドロキシチロソル源として使用される、抗酸化剤能力が高められた、栄養製品、特に、食料品(即ち、栄養強化食用油及び栄養強化食用油含有製品)及び栄養補助食品(即ち、栄養強化食用油を含有するソフトジェルカプセル)に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシチロソル(hydroxytyrosol)含有オリーブ抽出物による栄養製品の栄養強化に関する。また、本発明は、ヒドロキシチロソルにより栄養強化された栄養製品に関し、更に、医療用の用途、特に、心臓血管系疾患(CVD)、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療に用いられるオリーブ抽出物及びオリーブ抽出物により栄養強化された栄養製品に関する。
【0002】
本発明によれば、オリーブ果実又はオリーブオイル抽出残留物(搾り滓)から得られたオリーブ抽出物を食用油に添加し、この食用油を栄養製品に添加する。これにより、ヒドロキシチロソルのレベルが高められる。
【0003】
更に詳細には、本発明は、ヒドロキシチロソル高含有及び精製組成物の栄養供給により、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療用のヒドロキシチロソル源として使用されるべき食用油含有製品の栄養強化に関する。
【背景技術】
【0004】
英国心臓財団により2005年に発行された欧州心臓血管系疾患統計増刊号によれば、CVDはヨーロッパにおける主要な死亡原因であり、毎年435万人以上がCVDで死亡している。冠動脈系心臓疾患(CHD)それ自体はヨーロッパにおける単一の最も一般的な死亡原因であり、ヨーロッパでは毎年195万人がCHDで死亡している。
【0005】
この増刊号は、CVDの経済的コストの推計値に関する新規な段落を含んでいた。CVDのトータルコストは総計1690億ユーロに達し、そのうち、1050億ユーロは欧州連合(EU)におけるCVD治療費であり、640億ユーロは喪失された生産性とインフォーマルケアのコストによるものである。
【0006】
アテローム性動脈硬化症とも呼ばれる動脈内へのプラーク堆積は、CVDの主因であり、また、CHDの最も常習的原因である。動脈内におけるアテローム性動脈硬化症的プラーク堆積は動脈の一般的な障害である。これは、動脈血管壁に脂肪、コレステロール及びその他の物質が堆積し、そして、プラークと呼ばれる硬質物質を生成することにより
発症する。
【0007】
最後には、プラーク堆積物は動脈の狭窄と柔軟性低下を引き起こす。これは血液の流れを益々困難にする。冠動脈が狭くなると、心臓への血流が低下又は停止し、胸郭の苦痛(持続性アンギナ)、短呼吸、心臓発作及びその他の症状を引き起こす。
【0008】
プラーク片はバラバラに破壊され、血流に乗って移動することができる。これは心臓発作の一般的な原因である。血塊はプラーク堆積物の周囲にも生成することができる。血塊は血流をブロックする。血塊が心臓、肺又は脳内を移動すると、これは脳卒中、心臓発作又は肺塞栓症を引き起こす。
【0009】
動脈性高血圧症、血中のトリグリセリド及び総コレステロールの値が高いことや喫煙は、この疾患の進展の一因となるファクターであることが立証されている。最近、研究者らは、これらリスクファクター(危険因子)の幾つかが或る人々の間で密集していることを発見した。これらのリスクファクターの密集はメタボリック症候群として知られているいる。
【0010】
メタボリック症候群の人々は下記のような密集的リスクファクターを有する。
・中央肥満。これは、腹部(胃部)における余分体重を意味する。
・ブドウ糖と呼ばれるタイプの糖の消化障害(ブドウ糖不耐症)。メタボリック症 候群の患者は通常、高インスリン血症又は2型糖尿病を有する。
・血流中の低密度リポ蛋白(LDL)及びトリグリセリドの値が高い。
・血流中の高密度リポ蛋白(HDL)の値が低い。
・高血圧症
【0011】
メタボリック症候群については究明すべきことが依然として多々あるが、医師は、メタボリック症候群の人々が高いCVDリスクを有することを知っている。多くの研究が、LDLの生体内酸化がアテローム性動脈硬化症の進展に中心的な役割を演じていることを証明している(Knight, 1995; Witzum, 1994)。
【0012】
地中海ダイエットの基本的脂肪成分であるオリーブオイルはCHD(De Lorgeriら,1999;Hertogら,1993; Mattson及びGrundy, 1985)及び或る種の癌(d'Amicis及びFranci, 1999; Bragaら, 1998; Trichopoulouら, 1995; Matin-morenoら, 1994)の低発生率に関連している。
【0013】
LDL酸化を防止するためのオリーブオイル消費の健康上の利点は、その抗酸化性及びその高一価不飽和脂肪酸含量の両方に関連づけられるであろう(Nicolaiewら, 1998)。バージンオリーブオイルのフェノール系化合物類は、オリーブオイルを酸化から保護する強力な抗酸化特性を有する(Visioliら, 1998; Paradopoulos及びBoskou, 1991)。更に、フェノール系化合物類は、健康上の肯定的な利点も示した(Owenら, 2000; Mannaら, 1999)。バージンオリーブオイル中の最も代表的なフェノール系化合物類の幾つかは、ヒドロキシチロソル、チロソル及びこれらの幾つかの誘導体類であり、これらはオリーブオイル製造の過程でオリーブ果実から抽出される(Brenesら, 1999)。
【0014】
ヒドロキシチロソルはオリーブオイル中に存在し、下記の化学式で示される。







【0015】
同時係属特許出願第EP07001791号及びPCT/IB2008/000173号明細書には、オリーブ及び/又はオリーブオイル抽出残留物からのヒドロキシチロソルの製造方法及び製造装置が記載されている。これらの出願の発明は、食品、医薬及び化粧品工業の分野におけるヒドロキシチロソル源として使用されるべきヒドロキシチロソル含有製品又は抽出物の製造を目的としている。これらの出願明細書の内容を参照として本明細書中に組み込む。
【0016】
幾つかの官能特性が、エキストラバージンオリーブオイル及びバージンオリーブオイル中のオリーブポリフェノール類により顕在化されることは周知である。これらオリーブオイルの官能特性は消費者によるオリーブオイル受容性に大きな影響を及ぼす。幾つかのフェノール類は主に苦味の味覚感覚を顕現させる。しかし、その他のフェノール系分子類は、口蓋内及び味蕾内の三叉神経の遊離端を刺激し、辛味、渋味及び金属風味などの化学的な感覚を生じさせる。オリーブの果実に苦味を与えるフェノール系化合物であるオレウロペイン(oleuropein)は、脂溶性ではなくむしろ水溶性である。従って、果実を圧搾したとき、オレウロペインは、オリーブオイル内には殆ど移行しない。従って、エキストラバージンオリーブオイル及びバージンオリーブオイル中のオレウロペインの平均含有量はそれぞれ1ppb及び11ppm程度である。
【0017】
オレウロペインはオリーブオイル内に存在し、下記の化学式で示される。












【0018】
それにもかかわらず、多数のオレウロペイン関連化合物類は、オレウロペイン自体よりも一層油溶性であり、オレウロペインアグリコン(例えば、オレウロペインアグリコンのアルデヒド形、AOA)の異性体又は異性体類の形及びヒドキシチロソル又はチロソルに結合したエレノール酸(それぞれ、3,4−DEPEA−EDA及びp−HPEA−EDAと命名されている)のジアルデヒドの形でオイル中に高含量で存在する。これらは、Gutierrez-Rosales及び共著者らの, J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 6021-6025(非特許文献1)によれば、主に苦味の原因であるオリーブポリフェノール類である。
【0019】
オレウロペインアグリコン(例えば、オレウロペインアグリコンのアルデヒド形)はオリーブオイル内に存在し、下記の化学式で示される。









【0020】
Frank及び共著者らの, J. Agric. Food Chem. 2001, 49, 231-238(非特許文献2)には、オレウロペイン誘導体類の苦味の感覚閾値を示すための、「味希釈分析法」と呼ばれる手法が記載されている。苦味は、サンプルの一連の希釈水溶液を作製し、次いで、トライアングルテストで判定されるように希釈サンプルを水と判別できる濃度を発見するまで、濃度の増大に従ってこれらを味見することによって評価された。少なくともこれらの化合物類については、225nmにおける吸光度(K225値)と苦味との直接的な相関関係は存在しないことも示された。Mateoら、J. Am. Oil. Chem. Soc. 2004, 81, 71-75(非特許文献3)は、オレウロペインアグリコンのアルデヒド形(オレウロペインを、Sigma社から購入したアーモンド由来のβ−グコシダーゼで加水分解することにより得た)と苦味との間の相関関係を立証した。
【0021】
Andrewesら、J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 1415-1420(非特許文献4)は、ポリフェノール類とオリーブオイル辛味との間の関係を立証した。p−HPEA−EDAは、多くのオリーブオイルで味わう焼けるような感覚の根元である。
【0022】
2005年に、Beauchamp及び共著者ら、Nature 2005, 437, 45-46(非特許文献5)は、異なるエキストラバージンオリーブオイル及びバージンオリーブオイルから単離されたp−HPEA−EDAの辛味強度を測定し、この分子が、咽喉刺激の原因となる基本的成分であることを確認した。
【0023】
要約すれば、オリーブポリフェノール類によるオリーブオイルの栄養強化に基づく技法を使用して抗酸化能力を増大するための如何なる設定も、オイルの本来の官能特性を変性してはならず、苦味をもたらすオリーブポリフェノール類の量を増大させてもならない。そうしなければ、オイルの官能特性が事後的に変性され、その結果、過剰な苦味、辛味及び/又は渋味による不愉快な風味を生じ、結果的に、多くの消費者から拒絶されてしまう。
【0024】
ポリフェノール類及びヒドロキシチロソルを食料品に添加することは周知である。米国特許第6942890号公報(特許文献1)には、オリーブ果実由来の固体を食料品に添加し、抗酸化剤(特に、オリーブポリフェノール類)を増大させる、食料品の栄養強化方法が記載されている。この方法は、脱苦味処理を受けていないオリーブから得られた固体で栄養強化されるべき食料品(例えば、植物油)を或る時間にわたって培養し、次いで、オイルから固形物を濾別しなければならない。この方法に関連する主要な問題点は、植物油の官能特性の変性に関連し、過剰な苦味及び/又は渋味がオイルのポリフェノール類含量の増大に伴って生成されるときに、不愉快な風味を生じることである。米国特許第6942890号公報に開示された発明によれば、特に、エキストラバージンオリーブオイルのオリーブポリフェノール類含量を145ppmから最大530ppmまで増大させるオリーブ固形物を2.5%だけ添加することにより最終製品を製造することにより、この変性を避けることができる。
【0025】
米国特許第6162480号公報(特許文献2)には、抗酸化剤による植物油の栄養強化方法が記載されている。苦味除去されていないオリーブを植物油中に1〜30日間浸漬し、抗酸化剤、特にオリーブポリフェノール類のレベルを増大させる。実施例1によれば、トスカーナ地方で収穫された苦味除去されていないオリーブを10%添加し、トスカーナ地方のエキストラバージンオリーブオイルと共に30日間ゆっくりと撹拌すると、エキストラバージンオリーブオイルのオリーブポリフェノール類含量が420ppmから591ppmに増大した。この最大増加量はこの発明により可能になる。この方法は、撹拌することを除けば、オリーブオイル中にオリーブを保存するために使用される周知の方法と実質的に同一である。
【0026】
米国特許第6942890号公報及び米国特許第6162480号公報に記載された方法に関連する主要な問題点は、脂溶性であるポリフェノール類だけがオリーブ固形物又は油中のオリーブ類から(部分的に)抽出されることである。
【0027】
米国特許第6746706号公報(特許文献3)には、食品組成物(スプレッド、ヴィネグレット及びトマトソース)の栄養強化方法が記載されている。これらの組成物は、水相中にチロソル及びヒドロキシチロソルを少なくとも15ppmの高含量で含有することを特徴とする水相を20〜100wt%含有する。それにもかかわらず、この方法は殆ど効果がない。製造された食品組成物でチロソル及びヒドロキシチロソルの水相中の濃度が50ppm超に達する実施例が皆無である。
【0028】
米国特許第6361803号公報(特許文献4)の実施例13には、実施例4の方法により製造されたオリーブ抽出物を使用することを特徴とする、油中の抗酸化活性を高めることができる方法が記載されている。それにもかかわらず、対照サンプルの抗酸化活性(1g当たり0.18mMトロロックス当量)は、この方法により約3倍(1g当たり0.53mMトロロックス当量)までしか高められなかった。米国特許第6361803号公報の発明は、許容可能な純度品質を有するヒドロキシチロソルを含有するオリーブ抽出物を製造するために、有機溶媒(特に、極性溶媒)を使用しなければならない。極性水性溶媒は、メタノール、エタノール、アセトニトリル又はアセトンから選択され、極性油性溶媒は、例えば、エステル類、アミド類、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、DMF及びこれらの混合物類から選択される。例えば、有毒溶媒であるメタノールなどの有機溶媒の使用は好ましくない。特に、得られた最終製品が栄養分野で使用される場合には、有機溶媒の使用は好ましくない。
【0029】
有機溶媒(及び或る場合には有毒な有機溶媒)の使用により生じる問題点に加えて、この方法に関連する主な問題点は、実施例13(抗酸化剤組成物)に開示されたオリーブ抽出物濃厚物の再溶解に水/エタノール/酢酸混合物を必要とすることであり、抽出物を予め溶解させ、そして、栄養強化するべきオイル中に安定なエマルジョンを生成しなければならない。従って、この方法は栄養分野では不便である。
【0030】
イタリア特許第01326553号公報(特許文献5)には、オリーブ葉又は植生水から得られた抽出物をオリーブオイルに添加することにより得られた栄養強化オリーブオイルが記載されている。この抽出物は全てのタイプのポリフェノール類に富んでいる。すなわち、この抽出物は低純度のヒドロキシチロソルを有する。この特許及び前記の特許の問題点は主に、ポリフェノール類の総量に対して遊離ヒドロキシチロソルの量が低すぎることである。その他のポリフェノール類に対するヒドロキシチロソルの量が低ければ低いほど、オイル中の同じ量の遊離ヒドロキシチロソルを含有する栄養強化製品の苦味が強くなる。
【0031】
米国特許第5998641号公報(特許文献6)は、苦味を増大させることなく、オリーブオイル中のポリフェノール類の総含量を高める方法に関する。この方法を実施するために、オリーブオイルは、ポリフェノール類と脱苦味酵素(例えば、Sigma社から購入したアーモンド由来のβ−グルコシダーゼ(実施例1))を含有する水溶液で乳化される。その後、水中には溶解性であるが、油中には不溶性である、これら生成ポリフェノール類の損耗を避けるために、水は蒸発又は限外濾過により除去する。この方法の問題点は、非常に長時間(実施例によれば少なくとも24時間かかり、100時間に達することもある)を要すること、及び、オレウロペインアグリコン及び糖類を含む酵素反応の全ての生成物がオイル中に残留することである。
【0032】
β−グルコシダーゼ(例えば、Sigma社から購入したアーモンド由来のもの)によるオレウロペインの加水分解は、通常、50マイクロモルの閾値で苦味が検知されたオレウロペインアグリコンの異性体(又は異性体類)の製造のために幾人かの研究者により使用されていることに注目すべきである(Frank及び共著者, J. Agric. Food Chem. 2001, 49, 231-238)。また、Mateoら, J. Am. Oil Chem. Soc. 2004, 81, 71-75は、(Sigma社から購入したアーモンド由来のβ−グルコシダーゼによるオレウロペインの加水分解により得られた)オレウロペインアグリコンのアルデヒド形と苦味との間の相関関係を立証した。換言すれば、米国特許第5998641号公報に記載された発明では、酵素加水分解の結果は、味見したときにオイルに苦味を与えるが、K225テストでは検出できないポリフェノール系化合物類などのような多数の副生物をもたらすことである。
【0033】
また、蒸発による水分除去は、バージンオリーブオイルの官能特性に悪影響を及ぼすことも考慮すべきである。なぜなら、オリーブオイルの独特な芳香の元となる殆どの揮発性物質類は蒸発処理中に水と共に抽出されてしまうからである。
【0034】
要約すれば、前記の方法は、長過ぎるか、又は複雑過ぎるか、或いは、栄養分野にとって苛酷過ぎるか、若しくはこれら全てである。更に、強過ぎる苦味、高すぎる刺激味強度又は高すぎる糖及び副生物含量を有さず、しかも、芳香揮発成分を失うことなく、食用油中に取り込むことができるヒドロキシチロソルの量が低すぎるので、酸化変性に対してLDLを殆ど保護することができない。オイル中に取り込まれたポリフェノール類の殆どがヒドロキシチロソルよりも高い油溶性を特徴とするセコイリドイド類(オレウロペイン関連化合物類)であること、その結果として、オレウロペインアグリコン(AOA)、3,4−DEPEA−EDA及びp−HPEA−EDAとして、ヒドロキシチロソルよりも高い含量でオイルに取り込まれること、及び、これらオリーブポリフェノール類が主に苦味及び刺激味の元となることなどにより、前記の全ての方法は、総オリーブポリフェノール類を高含量で有するが、これら油中に存在する総オリーブポリフェノール類に対してヒドロキシチロソルを低含量でしか有しないオリーブオイルが得られるだけであることも注目しなければならない。オリーブオイルの官能特性を望ましくない形に変化させることができるこれらセコイリドイド類の取り込みは、実際に、前記の全ての方法で使用されるオリーブポリフェノール類源に直接関連しており、実際に、ヒドロキシチロソル中に低含量で及び/又は低純度で存在する。
【0035】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】米国特許第6942890号公報
【特許文献2】米国特許第6162480号公報
【特許文献3】米国特許第6746706号公報
【特許文献4】米国特許第6361803号公報
【特許文献5】イタリア特許第01326553号公報
【特許文献6】米国特許第5998641号公報
【非特許文献】
【0037】
【非特許文献1】Gutierrez-Rosalesら, J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 6021-6025
【非特許文献2】Frankら, J. Agric. Food Chem. 2001, 49, 231-238
【非特許文献3】Mateoら、J. Am. Oil. Chem. Soc. 2004, 81, 71-75
【非特許文献4】Andrewesら、J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 1415-1420
【非特許文献5】Beauchampら、Nature 2005, 437, 45-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明の目的は、前記の従来技術に関連する問題点を解決し、そして、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療用ではあるが、栄養強化食品の官能特性の望ましからざる変性を避けるためのヒドロキシチロソル源として使用されるべき栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品を提供することである。
【0039】
本発明の別の目的は、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療用のヒドロキシチロソル源として使用されるべきヒドロキシチロソルを高い含量で有することを特徴とする栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品を提供することである。
【0040】
本発明の他の目的は、ヒドロキシチロソルを高い含量で有することを特徴とするにもかかわらず、安定かつ耐久性のあるエマルジョンの形の、栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品を提供することである。
【0041】
本発明の更に別の目的は、極めて純度の高いヒドロキシチロソルを高い含量で有することを特徴とする栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
これらの目的は、オリーブ抽出物を有する栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品を提供する本発明により達成される。
【0043】
オリーブ果実及びオリーブオイル抽出副生物から得られる前記のような溶剤不含有天然オリーブ抽出物の製造方法は、栄養強化食品の官能特性を不愉快な形に変性することなく、栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品内の抗酸化能力を、未だかつて決して記載されたことのない程度に高めることができる。従って、本発明は抗酸化剤ヒドロキシチロソル高含有オリーブ抽出物の製造方法に関する。
【0044】
本発明の別の側面は、下記の工程からなる、栄養強化食用油及び/又はオイル含有食料品の製造方法に関する。
(a)オリーブ果実又はオリーブオイル抽出残留物若しくは搾り滓(すなわち、オリーブオイル抽出からの前記のような残留物)から製造され、かつ、ヒドロキシチロソルに富んだ、液状と粉末状の間の適当なオリーブ抽出物を選択する工程。この選択は、栄養強化すべき栄養製品に応じて変化する。好ましくは、食用油の栄養強化のためには、液状のオリーブ抽出物を選択し、少なくとも水を10%含有するオイル含有製品の栄養強化のためには固形のオリーブ抽出物を選択する。
(b)前記工程(a)で選択されたオリーブ抽出物をオイル及び/又はオイル含有製品に添合し、かつ、混合する工程。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明により得られたオリーブ抽出物の配合量を高めることによる栄養強化の結果として、本発明により得られた栄養製品(実施例3参照)の抗酸化能力と、HPLC(「高速液体クロマトグラフィー」の略。以下同じ)により測定されたヒドロキシチロソル中の抗酸化剤含量との間の線形相関を示すグラフ図である。
【図2】本発明により得られたオリーブ抽出物の配合量を高めることによる栄養強化の結果として、本発明により得られた栄養製品(実施例4参照)の抗酸化能力と、ヒドロキシチロソル中の抗酸化剤含量との間の線形相関を示すグラフ図である。
【図3】本発明により得られたオリーブ抽出物の配合量を高めることによる栄養強化の結果として、本発明により得られた栄養製品(実施例5参照)の抗酸化能力と、HPLCにより測定されたヒドロキシチロソル中の抗酸化剤含量との間の線形相関を示すグラフ図である。
【図4】本発明により得られたオリーブ抽出物の配合量を高めることによる栄養強化の結果として、本発明により得られた栄養製品(実施例6参照)の抗酸化能力と、HPLCにより測定されたヒドロキシチロソル中の抗酸化剤含量との間の線形相関を示すグラフ図である。
【図5】本発明により得られたオリーブ抽出物の配合量を高めることによる栄養強化の結果として、本発明により得られた栄養製品(実施例7参照)の抗酸化能力と、HPLCにより測定されたヒドロキシチロソル中の抗酸化剤含量との間の線形相関を示すグラフ図である。
【図6】ホモジナイザーを使用して製造されたか、又はホモジナイザーを使用せずに製造された、液状オリーブ抽出物及びエキストラバージンオリーブオイルのエマルジョンの粒度分布曲線からなるグラフ図である。
【図7】ラットのトリグリセリドに対する、本発明によるオリーブ抽出物で栄養強化されたエキストラバージンオリーブオイルの効果を示すグラフ図である。
【図8】ラットの動脈硬化指数(総コレステロール値/HDLコレステロール値)に対する、本発明によるオリーブ抽出物で栄養強化されたエキストラバージンオリーブオイルの効果を示すグラフ図である。
【図9】ラットの血漿中の総抗酸化能力(TAC)に対する、本発明によるオリーブ抽出物で栄養強化されたエキストラバージンオリーブオイルの効果を示すグラフ図である。
【図10】ラットの収縮期血圧に対する、本発明によるオリーブ抽出物で栄養強化されたエキストラバージンオリーブオイルの効果を示すグラフ図である。
【図11】ラットの動脈硬化指数(総コレステロール値/HDLコレステロール値)に対する、本発明による高純度ヒドロキシチロソルに富んだオリーブ果実抽出物の効果を示すグラフ図である。図11は実施例12に関連する。この実施例では、動物群は表6により組織化された。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の栄養製品は、ヒドロキシチロソルを少なくとも30ppm、好ましくは30ppm〜30000ppm含有する。栄養製品が例えば、均質化エマルジョン(好ましくは、マイクロエマルジョン)のような形の栄養強化食用油である場合、及び、栄養製品が前記のような栄養強化食用油を含有する食料品である場合、好ましい範囲は30〜300ppmである。この場合、ヒドロキシチロソル含量は好ましくは45ppm〜70ppmの範囲内であり、一層好ましくは、50ppm〜60ppmの範囲内である。栄養製品が例えば、均質化エマルジョン(好ましくは、マイクロエマルジョン)を含有するソフトジェルカプセルのような形の、カプセル化された栄養強化食用油からなる栄養補助食品である場合、ヒドロキシチロソル含量は300〜30000ppm、好ましくは、500〜3000ppmの範囲内である。
【0047】
本発明による栄養強化オイルのK225値(下記の実施例13及び14参照)は0.28以下であり、好ましくは0.25以下である。更に、前記栄養強化オイルのAOA含量は、120ppm未満、好ましくは85ppm未満、一層好ましくは55ppm未満である。
【0048】
本発明による、かつ、前記のような添加オリーブ抽出物からなる栄養製品は優れた抗酸化能力を示す。
【0049】
最後に、本発明の第4の側面として、本発明は、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防及び治療における、栄養製品、栄養強化オイル及び/又はオイル含有製品の使用に関する。前記のように、本発明の第1の側面は、高純度の形の抗酸化性ヒドロキシチロソルを大量に含むオリーブ抽出物の製造に関する。従来の問題点は、親水性ヒドロキシチロソルの油中への取り込みを高めることであった。この問題点は、溶媒を使用することなくヒドロキシチロソルを抽出する方法を使用することからなり、かつ、ヒドロキシチロソルを大量に含有し、そして、副生物、糖類および塩類に対して非常に高い純度を特徴とするする最終オリーブ抽出物を提供することができる本発明により解決された。
【0050】
本発明の或る実施態様では、オリーブオイル抽出の残留物又は搾り滓をヒドロキシチロソル抽出の原料として使用できる。この方法は、本願出願人による同時係属特許出願EP−A−07001791(出願日:2007年1月26日)及びPCT/IB2008/000173(国際出願日:2008年1月28日)号明細書に記載されている。別の実施態様では、オリーブ抽出物の製造用の原料として、オリーブ果実を使用する。好ましくは、グリーンオリーブ、一層好ましくは、全形グリーンオリーブを使用する。
【0051】
前記出願の明細書の教示に従った方法では、抽出残留物又は全形オリーブ果実若しくは圧潰オリーブ果実を、脱イオン水と、均質化/混合する。全形オリーブ果実又は均質化オリーブパルプ素材若しくは残留物素材を水と混合して混合物を生成したら、次の工程において、この混合物の水中で酸性加水分解を行う。この加水分解は、20℃〜140℃、好ましくは70℃〜140℃の範囲内の温度で、更に好ましくは連続的な滅菌システム中で110℃〜140℃の範囲内の温度で行われる。加水分解を受ける酸性混合物のpH値は1.0〜6.0の範囲内である。加水分解後の混合物は当業者に公知の物理的方法(例えば、濾過及び/又は遠心分離)により清澄化され、加水分解生成物から全形オリーブ果実又は懸濁している固形物を除去し、そして、懸濁液中に固形物を殆ど含まない清澄化された溶液を得る。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記工程に続いて、前記のようにして得られた生成物を少なくとも1回、酸活性化アニオン交換樹脂及び吸着媒非イオン性樹脂から選択される樹脂のクロマトグラフカラムに装填し、そして、前記クロマトグラフカラムに保持されている生成物を水で溶出する工程を実施する。
【0053】
本発明の更に別の側面によれば、液状生成物は例えば、逆浸透濃縮法により濃縮される。更に別の工程として、クロマトグラフ精製及び逆浸透濃縮の後、得られた液状生成物を別の実施態様において、マルトデキストリン類のような担体と共に噴霧乾燥することにより固形化する。
【0054】
前記のようにして得られたオリーブ抽出物はヒドロキシチロソルに非常に富み、出発物質及び副生物を殆ど含有せず、しかも、糖類及び塩類の含量が極めて低い。
【0055】
前記の方法により得られる抽出物は液状又は固形状の何れの形状であってもよく、そして、少なくとも0.5%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも40%の純度、好ましくは、少なくとも10%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも80%の純度、更に好ましくは、少なくとも35%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも90%の純度(波長280nmで測定されるHPLCピークエリアにより決定される値)を特徴とする。本発明の好ましい側面によれば、本発明により得られるヒドロキシチロソル含有液状生成物(液状のオリーブ抽出物)は、少なくとも35%(w/w)又は一層好ましくは少なくとも45%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも90%(280nmにおけるHPLC測定値)の純度と、少なくとも35%の総フェノール類含量を有する。本発明の更に好ましい側面によれば、本発明により得られるヒドロキシチロソル含有固形生成物(固形のオリーブ抽出物)は、少なくとも20%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも90%(280nmにおけるHPLC測定値)の純度と、少なくとも20%の総フェノール類含量を有する。
【0056】
本発明の好ましい側面によれば、ヒドロキシチロソル含有固形生成物は、少なくとも40%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも90%(280nmにおけるHPLC測定値)の純度を有する。
【0057】
これらの抽出物は有機溶媒を含有せず、また、糖類及び塩類も殆ど含有しない。
【0058】
本発明のグリーンオリーブ抽出物は、ヒドロキシチロソルの含有量が非常に高く、しかも、ヒドロキシメチルフルフラルの含有量が低いので、オリーブオイル製造の残留物の抽出物として好ましい。これらの抽出物は、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防又は治療に使用することができる。また、これらの抽出物は栄養補助食品の製造にも使用できる。
【0059】
本発明の第2の側面は、オリーブ抽出物を有する栄養強化オイル及び/又はオイル含有製品の製造方法、すなわち、いわゆる機能性食品の製造方法に関する。
【0060】
第1の工程は適当なオリーブ抽出物の選択である。オイルの栄養強化のためには、通常、液状のオリーブ抽出物が選択される。このようなオリーブ抽出物は、少なくとも35%(w/w)又は一層好ましくは少なくとも45%(w/w)のヒドロキシチロソル含量と、少なくとも90%(280nmにおけるHPLC測定値)の純度と、少なくとも35%の総フェノール類含量を有する。このようなオリーブ抽出物の使用はオイルの栄養強化のために好ましい。その理由は、栄養強化オイルの所望の抗酸化能力に達するのに必要なオリーブ抽出物の量が少ないためにオイル中に存在する残留水が殆ど増大すること無く、オリーブ抽出物の安定なエマルジョンを製造できるからである。
【0061】
実際、高ヒドロキシチロソル含量と、望ましからざる副生物(例えば、AOA、3,4−DHPEA−EDA及びp−HPEA−EDA)低含量と、糖類及び塩類の実質的無含量の本発明によるオリーブ抽出物は、栄養強化すべきオイル中に添合されたとき、安定なエマルジョンを生成する。実際、例えば、35%(W/W)以上の高ヒドロキシチロソル含量を特徴とするので、高ヒドロキシチロソル含量を特徴とする栄養強化オイルを得るために少量のオリーブ抽出物が好適である。更に、糖類及び塩類を殆ど含まないという、本発明によるオリーブ抽出物の純度のために、オリーブ抽出物を栄養強化すべきオイル中に添合したとき、乳化剤又はその他の添加剤無しであっても、安定なエマルジョンが得られる。その結果、得られた栄養強化オイルは食品、医薬品及び化粧品分野で使用できるという、即時的効果をもたらす。
【0062】
従って、得られる栄養強化オイルはヒドロキシチロソルを少なくとも30ppm含有し、しかも、悪影響を全く受けていない官能特性を維持する。
【0063】
水分を少なくとも10%含有するオイル含有製品の栄養強化のためには、通常、粉末状のオリーブ抽出物が選択される。このようなオリーブ抽出物のヒドロキシチロソル含量は少なくとも20%(W/W)である。好適な担体は例えば、マルトデキストリン類、乳糖、カゼイネート類等である。このようなオリーブ抽出物の使用は、水分を少なくとも10%含有するオイル含有製品の栄養強化のために好ましい。その理由は、このような粉末は取り扱いが簡単であり、しかも、オイル含有製品の所望の抗酸化能力に達するのに使用される範囲内のこのような栄養製品中に完全に溶解するからである。
【0064】
第2の工程は、選択されたオリーブ抽出物をオイル及び/又はオイル含有製品に添合することからなる。オリーブ抽出物の栄養製品への添合は、各製品の技術的方法に従って混合及び均質化することにより行われる。
【0065】
オイルの栄養強化は、その技術的製造中にオリーブ抽出物を添合することからなる。一般的に、液状のオリーブ抽出物は所望の重量比でオイルに添加され、制御された温度及び撹拌パラメータの元で完全に混合される。次いで、生成物を静置し、過剰量の水系オリーブ抽出物を除去する必要がある。これを行うために、例えば、常用のデカンテーションなどのような公知の方法を使用することができる。実際、植物油の製造過程で、幾つかの連続的な常用のデカンテーション工程は残留水を除去するために日常的に行われており、また、その製造過程で通常行われる最後のデカンテーション工程の直前に、自然な方法で、オリーブ抗酸化剤をオイルに添合させることができる。水系抽出物中のヒドロキシチロソル含量が高いために、各混合工程で、相当量のヒドロキシチロソルをオイル製品に移行させることができる。油相からデカンテーション除去された水相は通常、少量のヒドロキシチロソルを含有している。従って、更なる使用のために回収される。
【0066】
本発明の好ましい実施態様では、液状のオリーブ抽出物はオイルに添加され、制御された温度及び撹拌パラメータに従って、不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)下で予備混合される。得られた生成物を2段工程均質化手順に従って運転されるホモジナイザー中に供給する。第1工程は、200〜700バールの圧力で行われ、第2工程は圧力を30〜50バールに維持して行われる。プレエマルジョンの均質化により、安定なエマルジョンを得ることが出来る。本発明の或る実施態様では、純粋なヒドロキシチロソルを水に添加し、得られた溶液をオイルと混合し、そして均質化してヒドロキシチロソルを油相に移行させる。特に、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防又は治療に使用する観点から、最終製品内に有機溶媒の痕跡が残らないようにするために、本発明による天然抽出物を使用することが好ましい。
【0067】
固形のオイル含有製品の栄養強化は、その技術的製造中にオリーブ抽出物を添合し、そして混合することからなる。一般的に、オイル含有製品の製造方法は、(a)植物油及び/又は植物脂肪及び場合により、別の脂肪親和性成分類からなる油相の存在、(b)前記(a)の油相に、制御された撹拌及び温度範囲の元での乳化剤の添加からなる乳化工程、及び(c)水と、場合により、別の脂肪親和性成分類を含有する水相の存在を含むことを特徴とする。油相対水相の比率は9:1〜1:9の範囲内である。
【0068】
オリーブ抽出物粉末を所望の比率で工程(c)の水相へ添加し、厳格に制御された温度及び撹拌パラメータの元で完全に溶解させる。その直後に、安定なo/wマトリックスを生成するために、乳化剤が予め添合された工程(a)の油相を工程(c)の水相へ添加する。
【0069】
本発明の第3の側面は、栄養強化オイル及び/又はオイル含有製品を製造するために、好ましくは前記のようなオリーブ抽出物の形でヒドロキシチロソルが添合された栄養製品に関する。本明細書で使用される「栄養製品」という用語は、食用油であるか又は少なくとも食用油を含有する、全ての食料品、食用製品、又は栄養補助食品を意味する。本発明の栄養製品は好ましくは、本発明のオリーブ抽出物を0.015%〜93%(w/w)の範囲内の濃度で含有する。一層好ましくは、本発明のオリーブ抽出物を0.01%〜30%(w/w)の範囲内の濃度で含有する。オリーブ抽出物をこの添加量で含有する食用油である栄養製品は例えばつぎのようなものであることができる。
(a)少し例を挙げれば、バージンオリーブオイル、エキストラバージンオリーブオイル、オリーブオイル、ランパンテオリーブオイル、精製オリーブオイル、粗製オリーブ搾り滓オイル、精製オリーブ搾り滓オイル、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、亜麻仁油、扁桃油、キャノーラ油、サフラワー油、パーム油、ココヤシ油、菜種油、前記油類の技術的に変性された誘導体類又はその栄養強化に使用できる前記のものの2種類以上の混合物などのような様々な原料から得られる植物油、及び
(b)少し例を挙げれば、藻類、オキアミ、大型ニシン、アンチョビ、マグロ、ニシン、サーディン、サバ、タラから得られた海産物油又は魚油、前記油類の技術的に変性された誘導体類又はその栄養強化に使用できる前記のものの2種類以上の混合物などのような様々な原料から得られるである海産物油又は魚油。
【0070】
本発明のオリーブ抽出物の更に一層好ましい範囲は0.05%〜35%(w/w)からなる。少なくとも植物油を含有し、オリーブ抽出物を前記の添加量で含有する栄養製品は例えば、少し例を挙げれば、マーガリン、マヨネーズ、ガーリックマヨネーズ、ガスパーチョスープ、塗り広げ可能なソース、サラダドレッシングなどのようなオイル含有製品、前記オイル含有製品の技術的に変性された誘導体類又はその栄養強化に使用できる前記のものの2種類以上の混合物などである。
【0071】
最後に、本発明の第4の側面は、心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防又は治療における、本発明2の栄養製品、栄養強化オイル及び/又はオイル含有製品の使用に関する。
【0072】
本発明の好ましい実施態様では、オリーブ抽出物(液状)及び食用油のエマルジョンを使用し、ソフトジェルカプセルを製造した。
【0073】
ソフトジェルカプセルを製造する場合、様々な側面を考慮すべきである。考慮すべき第1の側面はカプセルサイズである。大抵の消費者が許容可能な上限サイズは約1.2gである。このサイズはその他のオイル栄養補助食品で通常使用されているサイズを示す。考慮すべき第2の側面は、一日当たりに摂取すべきカプセルの個数である。一般的に、1日当たりの摂取上限は4〜6カプセルである。一層大きなカプセルサイズが考慮される場合、飲み込み易いので、楕円形(1000mg以上)が好ましい。本発明はこれらのパラメータにより制限されない。別の考慮事項は、作用効果の点から必要な最小投与量である。心臓血管系疾患、動脈内へのプラーク堆積、動脈性高血圧症及びメタボリック症候群の予防又は治療のための最小の投与量は食用油で2gである。この投与量は、ヒドロキシチロソルを一日当たり3〜50mg送達する。例えば、投与量1gの栄養強化食用油を1日当たり2回投与することができる。
【実施例1】
【0074】
オリーブ果実からのオリーブ抽出物の製造
オリーブ果実のサンプル25Kgを脱イオン水50Lと混合した。得られた混合物を数分間混合した。次いで、濃度98%の硫酸636gを添加した。得られた混合物を、15psi(大気圧以上)のオートクレーブ中に、温度121℃で30分間閉じ込めた。その後、濾過器で濾過することにより、固形残留物から水相を分離させた。濾過器に残された固相を脱イオン水12.5Lで洗浄し、この洗浄工程から得られた水を、予め回収された水相と合わせた。次いで、約56Lの水相を遠心分離して精製し、濾過器を通して固形粒子を除去した。ヒドロキシチロソルを141g含有し、50.5%のHPLC純度を有する粗製水性抽出物が52L得られた。
【0075】
次いで、アセテートサイクルにより事前に活性化された、アニオンタイプの酸活性化イオン交換樹脂を含有するクロマトグラフカラムに粗製水性抽出物を装填した。例えば、IRA−67を使用できる。カラム終端部から回収される液相はヒドロキシチロソルを全く含有していない。それよりも、最初に装填したヒドロキシチロソルが少なくとも90%回収されるまで、脱イオン水で連続的に溶出させた。
【0076】
最初のカラムから得られた溶出相を、別の吸着媒非イオン交換樹脂含有クロマトグラフカラムに装填することが好ましい。例えば、XAD−1180樹脂を使用できる。この第2のカラムの終端部から回収された液相はヒドロキシチロソルを全く含有していない。次いで、最初に装填したヒドロキシチロソルが少なくとも90%回収されるまで、脱イオン水で樹脂からヒドロキシチロソルを溶出させた。
【0077】
溶出相は、約96.7%のHPLC純度を有するヒドロキシチロソルを約114g含有していた。
【0078】
次いで、容量を濃厚生成物10Lにまで減容させるために、パイロットプラントで得られたヒドロキシチロソルを114g含有する精製抽出物の画分461Lを、2.5mの高分子膜を備えた逆浸透パイロットプラントを用いて濃縮した。次いで、ヒドロキシチロソルを3.5%含有するヒドロキシチロソル濃縮液を得るために、同じ材質からなる0.35m高分子膜を使用した。最後に、逆浸透濃縮液を245ミリバールの真空圧下で78℃のロータリーエバポレーターに装填し、液状のオリーブ果実抽出物の濃度を約10倍に高め、93.3%のHPLC純度を有するヒドロキシチロソルの最終濃度を37.2%(w/w)に達しさせた。
【実施例2】
【0079】
噴霧乾燥によるオリーブ抽出物粉末の製造
実施例1で得られたヒドロキシチロソルを19.5g含有する液状の精製オリーブ抽出物260mlのサンプルを、脱イオン水260mlに予め溶解させたマルトデキストリン58gと共にゆっくりと撹拌した。例えば、ジャガイモマルトデキストリンを使用できる。噴霧乾燥機に供給するために蠕動ポンプを使用した。このポンプは入口空気温度を150℃に予め平衡化させておいた。出口空気温度を100℃未満にするために、供給速度を調節した。水分5.4%(カールフィッシャー法)及びヒドロキシチロソル含量21.9%(w/w)の白色粉末が76g得られた。
【実施例3】
【0080】
オリーブ果実抽出物を有する栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの製造
実施例1による方法で得られた濃度40.6%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する液状の精製オリーブ抽出物のサンプルを、エキストラバージンオリーブオイルの栄養強化のために選択した。6個のエキストラバージンオリーブオイルサンプル(各400g)を製造した。配合量を徐々に高めながら、液状のオリーブ抽出物を所望の重量比で、エキストラバージンオリーブオイルに添加し、厳格に制御された温度及び撹拌パラメータの元で、1時間にわたって完全に混合した。その後、撹拌を止め、そして、混合物をデカンテーション漏斗に充填し、72時間静置した。その結果、過剰量のオリーブ抽出物が下層に生成された。この下層を上層のオイル相から分離させ、栄養強化エキストラバージンオリーブオイルを得た。
【0081】
その直後に、6個の栄養強化エキストラバージンオリーブオイルのそれぞれからのアリコートを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりヒドロキシチロソル含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対ヒドロキシチロソル含量としてプロットした場合(図1参照)、線形相関が得られた。具体的に、非栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの抗酸化能力は0.24mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比における栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの抗酸化能力は5.05mMトロロックス当量/gであった。すなわち、エキストラバージンオリーブオイルの抗酸化能力が21倍高められたことを意味する。
【実施例4】
【0082】
オリーブ果実抽出物を有する栄養強化ヒマワリ油の製造
実施例1による方法で得られた濃度40.6%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する液状の精製オリーブ抽出物のサンプルを、ヒマワリ油の栄養強化のために選択した。6個のヒマワリ油サンプル(各400g)を製造した。配合量を徐々に高めながら、液状のオリーブ抽出物を所望の重量比で、ヒマワリ油に添加し、厳格に制御された温度及び撹拌パラメータの元で、1時間にわたって完全に混合した。その後、撹拌を止め、そして、混合物をデカンテーション漏斗に充填し、72時間静置した。その結果、過剰量のオリーブ抽出物が下層に生成された。この下層を上層のオイル相から分離させ、栄養強化ヒマワリ油を得た。
【0083】
その直後に、6個の栄養強化ヒマワリ油のそれぞれからのアリコートを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりヒドロキシチロソル含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対ヒドロキシチロソル含量としてプロットした場合(図2参照)、線形相関が得られた。具体的に、非栄養強化ヒマワリ油の抗酸化能力は0mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比における栄養強化ヒマワリ油の抗酸化能力は5.42mMトロロックス当量/gであった。
【実施例5】
【0084】
オリーブ果実抽出物を有する栄養強化トウモロコシ油の製造
実施例1による方法で得られた濃度40.6%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する液状の精製オリーブ抽出物のサンプルを、トウモロコシ油の栄養強化のために選択した。6個のトウモロコシ油サンプル(各400g)を製造した。配合量を徐々に高めながら、液状のオリーブ抽出物を所望の重量比で、トウモロコシ油に添加し、厳格に制御された温度及び撹拌パラメータの元で、1時間にわたって完全に混合した。その後、撹拌を止め、そして、混合物をデカンテーション漏斗に充填し、72時間静置した。その結果、過剰量のオリーブ抽出物が下層に生成された。この下層を上層のオイル相から分離させ、栄養強化トウモロコシ油を得た。
【0085】
その直後に、6個の栄養強化トウモロコシ油のそれぞれからのアリコートを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりヒドロキシチロソル含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対ヒドロキシチロソル含量としてプロットした場合(図3参照)、線形相関が得られた。具体的に、非栄養強化トウモロコシ油の抗酸化能力は0mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比における栄養強化ヒマワリ油の抗酸化能力は5.23mMトロロックス当量/gであった。
【実施例6】
【0086】
オリーブ果実抽出物を有する栄養強化マーガリンの製造
実施例2による方法で得られた濃度23.3%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する固形の精製オリーブ抽出物のサンプルを、マーガリンの栄養強化のために選択した。6個のマーガリンサンプル(各200g)を次のようにして製造した。配合量を徐々に高めながら、固形のオリーブ抽出物を所望の重量比で、マーガリンのその他の常用成分類(例えば、ホエイ、ブライン等)と共に、水相に添加した。次いで、水相と、乳化剤(レシチン)が混合された精製オイルを、僅かに混合させながら、50〜60℃付近の温度でブレンドさせた。最後に、混合スプレッドを冷却し、固化させた。
【0087】
その直後に、6個の栄養強化マーガリンのそれぞれからのアリコートを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりヒドロキシチロソル含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対ヒドロキシチロソル含量としてプロットした場合(図4参照)、線形相関が得られた。具体的に、非栄養強化マーガリンの抗酸化能力は0mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比における栄養強化マーガリンの抗酸化能力は189.05mMトロロックス当量/gであった。
【実施例7】
【0088】
オリーブ果実抽出物を有する栄養強化マヨネーズの製造
実施例2による方法で得られた濃度23.3%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する固形の精製オリーブ抽出物のサンプルを、マヨネーズの栄養強化のために選択した。5個のマヨネーズサンプル(各400g)を次のようにして製造した。先ず最初に、卵黄をミキシングボウルに添加し、速度3で完全に混和した。別の容器で、オリーブ抽出物(水相に望ましい重量比に応じてオリーブ抽出物の配合量を段階的に増大させながら添加した)、蒸留水、レモンジュース、食酢及び塩を混和した。オリーブ抽出物が溶解されるまで撹拌した。この混合物に卵黄を添加し、速度3で約2〜3分間混和した。最後に、オイルをゆっくりと添加し、速度を6にまで上げてエマルジョンを作製した。
【0089】
その直後に、5個の栄養強化マヨネーズのそれぞれからのアリコートを使用し、抗酸化能力(標準物質としてトロロックスを使用し、734nmで測定されたラジカルABTS吸収能力)を測定し、かつ、HPLCによりヒドロキシチロソル含量を測定した。測定結果を抗酸化能力対ヒドロキシチロソル含量としてプロットした場合(図5参照)、線形相関が得られた。具体的に、非栄養強化マヨネーズの抗酸化能力は0mMトロロックス当量/gであったが、本実施例で使用された最高重量比における栄養強化マヨネーズの抗酸化能力は148.33mMトロロックス当量/gであった。
【実施例8】
【0090】
ホモジナイザーを用いてオリーブ果実抽出物を乳化することによる栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの製造
実施例1による方法で得られた濃度31.1%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する液状の精製オリーブ抽出物のサンプルを、エキストラバージンオリーブオイルの栄養強化のために選択した。下記の表1に示される試験計画に従って、各1000gの栄養強化エキストラバージンオリーブオイルのサンプルを3個製造した。
【0091】
表1

オリーブ抽出物 全圧(バール) 備考
配合量 第1段階/第2段階
μLオリーブ抽出物/Lオイル

230 加圧無し (対照,ホモジナイザー
使用せず)
230 300/30

230 500/30
【0092】
容量1Lのエキストラバージンオリーブオイル内容物を容器に注ぎ入れ、撹拌した。その後、液状のオリーブ抽出物230μLをエキストラバージンオリーブオイルに添加し、100rpmで穏やかに撹拌することにより混合した。30分間後、プレエマルジョンが生成された。このプレエマルジョンを、2段階均質化手法に従って運転されるホモジナイザーの供給ホッパーに給送した。プレエマルジョンの均質化により安定なエマルジョンを得ることができる。
【0093】
その直後に、栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの3個の各サンプルからのアリコートを使用し、レーザ粒径分析計により均質化効率を測定し、また、HPLCによりヒドロキシチロソル含量を測定した。粒径分布曲線(図6参照)をプロットし、平均粒径を計算した。結果を下記の表2に要約して示す。
【0094】
表2

サンプル ヒドロキシチロソル(ppm) 平均粒径(μm)

非均質化 51 1.999

300/30 60 1.259

500/30 59 0.849
【0095】
粒径分布曲線(図6参照)、平均粒径及びヒドロキシチロソル含量(表2)を考慮すれば、均質化技術は極めて申し分無く実行され、例えば、500/30バールでプレエマルジョンを均質化する場合、液状オリーブ抽出物とエキストラバージンオリーブオイルとの安定なマイクロエマルジョンを製造することができる。
【実施例9】
【0096】
オリーブ果実抽出物を含有する栄養強化エキストラバージンオリーブオイルのソフトジェルカプセルの製造
実施例1による方法で得られた濃度35.6%(w/w)のヒドロキシチロソルを含有する液状の精製オリーブ抽出物のサンプルを、エキストラバージンオリーブオイルの栄養強化のために選択した。
【0097】
容量1Lのエキストラバージンオリーブオイル内容物を容器に注ぎ入れ、撹拌した。その後、液状のオリーブ抽出物4.68gをエキストラバージンオリーブオイルに添加し、100rpmで穏やかに撹拌することにより混合した。30分間後、プレエマルジョンが生成された。このプレエマルジョンを、第1均質化段階として500バールで、また、第2均質化段階として30バールで、10L/hで運転されるホモジナイザーの供給ホッパーに給送した。
【0098】
次いで、グリセリン、水及びマスキング剤及び着色剤として二酸化チタンを含有する食用ゼラチンで、上記で製造されたエマルジョンをカプセル封入した。カプセルを包装前に室温で2日間乾燥させた。
【0099】
ソフトジェルカプセルの製造及び商業生産は当業者に周知である。従って、本明細書ではこれ以上詳細には説明しない。従って、本発明によるオリーブ果実抽出物を含有する栄養強化エキストラバージンオリーブオイルのソフトジェルカプセルは当業者が容易に製造することができる。
【実施例10】
【0100】
心臓血管系疾患の予防又は治療におけるオリーブ果実抽出物含有栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの使用
10.1 動物
オスのスプラーグ・ドーリーラット48匹(平均体重150〜180g)をHarlan Interfauna Iberica SA社(スペインのバルセロナに所在)から購入し、全ての実験中、Murcia大学の動物実験施設内で飼育した。ラットを無作為に、各8匹毎の実験群に割り振った。各群の4匹のラットをサブグループとして、照明(12時間毎の日中/夜間サイクル)、温度(22±2℃)及び湿度(60%)の標準的条件下で飼育ケージに収容した。
【0101】
10.2 食餌
この実験に使用した食餌は次の通りであった。
・ 対照食餌(C):精製ヒマワリ油が3%添加された97%標準ラット食餌(Panlab社製)
・ アテローム性食餌(A):アテローム性動脈硬化症を誘発させるためにコレステロール(Aldrich社製)が1.5%及びラードが3%添加された95.5%標準ラット食餌(Panlab社製)
・ エキストラバージンオリーブオイル(evoo)(O):エキストラバージンオリーブオイル(evoo)(ヒドロキシチロソル(HT)の天然含有量の測定値が5.7mgHT/kg(evoo)のもの)が3%添加された97%標準ラット食餌(Panlab社製)
・ 標準ラット食餌+栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの強制経口投与(5mgHT/kg(体重))(G5):標準ラット食餌(Panlab社製)に(本発明の実施例3により製造された)栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの強制経口投与を併用。ヒドロキシチロソル(HT)5mg/kg(体重)を全てのラットに給餌するために、毎日、栄養強化エキストラバージンオリーブオイルを正確な投与量で強制経口投与により摂取させた。
・ 標準ラット食餌+栄養強化エキストラバージンオリーブオイル(G8)の強制経口投与(8mgHT/kg(体重))(G8):標準ラット食餌(Panlab社製)に(本発明の実施例3により製造された)栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの強制経口投与を併用。ヒドロキシチロソル(HT)8mg/kg(体重)を全てのラットに給餌するために、毎日、ヒドロキシチロソル(HT)8mg/kg(体重)を含有する栄養強化エキストラバージンオリーブオイルを正確な投与量で強制経口投与により摂取させた。
【0102】
飲料水と食餌は任意に摂取させた。しかし、全研究を通じて、各ラット毎の平均給餌量は30g/日(ラット毎の実際の食餌摂取量は不知)であった。更に、各ラット群に、毎日5mgHT/kg(体重)及び8mgHT/kg(体重)をそれぞれ給餌するために、G5及びG8食餌を受けているラット群に栄養強化エキストラバージンオリーブオイルを正確な投与量で強制経口投与により摂取させた。脂肪の酸化を避けるために、正しい配合量の標準ラット食餌(Panlab社製)及び脂肪/オイルを混合することにより全ての食餌を毎日調製し、かつ、使用直前まで4℃で暗所に保存した。また、摂取されずに残った前日の食餌は廃棄した。
【0103】
本研究に使用したO、G5及びG8食餌内のヒドロキシチロソル(HT)濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0104】
10.3 実験計画
実験計画を下記の表3に示す。
【0105】
表3

群 初日から 31日目から 備考
30日目まで 60日目まで

1 食餌C 食餌C 給餌食餌:CC
(対照食餌)

2 食餌A 食餌A 給餌食餌:AA
(アテローム性食餌、負対照)

3 食餌A 食餌C 給餌食餌:AC
(アテローム性食餌後の対照食餌の効果)

4 食餌A 食餌O 給餌食餌:AO
(アテローム性食餌後の天然含有量 5.7mgHT/kg(evoo)のevoo食餌の効果)

5 食餌A 食餌G5 給餌食餌:AG5
(アテローム性食餌後、日用量が5mgHT/kg
(体重)となる栄養強化evoo食餌の効果)

6 食餌A 食餌G8 給餌食餌:AG8
(アテローム性食餌後の、日用量が8mgHT/kg
(体重)となる栄養強化evoo食餌の効果)
【0106】
CC,AA,AC,AO,AG5及びAG8食餌で処理されるラット群は次のようにして給餌した。
CC又はAA食餌でそれぞれ処理されるラット群には、2ヶ月間食餌C又はAを給餌した。
AC食餌で処理されるラットには、1ヶ月間A食餌(アテローム性食餌、負対照)を給餌し、続いて、更に1ヶ月間C食餌(ヒマワリ油が全く配合されていない標準ラット食餌(Panlab社製)だけからなる食餌)を給餌した。
AO食餌で処理されるラットには、1ヶ月間A食餌(アテローム性食餌、負対照)を給餌し、続いて、更に1ヶ月間O食餌(天然含有量5.7mgHT/kg(evoo)のevoo食餌)を給餌した。
G5食餌で処理されるラットには、1ヶ月間A食餌(アテローム性食餌、負対照)を給餌し、続いて、更に1ヶ月間G5食餌(日用量が5mgHT/kg(体重)となる栄養強化evoo)を強制経口投与により給餌した。
G8食餌で処理されるラットには、1ヶ月間A食餌(アテローム性食餌、負対照)を給餌し、続いて、更に1ヶ月間G8食餌(日用量が8mgHT/kg(体重)となる栄養強化evoo)を強制経口投与により給餌した。
【0107】
実験終了時点で、絶食ラットに麻酔をかけ、安楽死させた直後に心臓内穿刺を行い血液を試験管に捕集した。分析のために血漿を遠心分離法により分離させた。
【0108】
10.4 血漿中の脂質及び総抗酸化能力(TAC)の測定
総コレステロール(TC)、HDLコレステロール(HDL−C)及びトリグリセリド(TG)の血漿濃度を、(スペインのバルセロナに所在する)Biosystems社から購入した市販のキットを使用し、製造者の取り扱い指示書に従って、比色定量分析法により測定した。
【0109】
血漿の総抗酸化能力は、標準物質としてトロロックスを使用し、Reら(1999)により開示された方法に従って測定した。新鮮な血漿をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、そして20μLを、ABTS[2,2−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−硫酸)]+ラジカルカチオン980μLと共に、暗所で、室温で10分間培養した。10分後、吸光度を734nmで測定した。過硫酸カリウム14ミリモル(mM)水溶液440μLをABTS(Sigma-A1808)7mM水溶液25mLに添加し、暗所で12〜14時間培養することにより、ABTS+カチオン母液を調製した。使用液は、734nmにおける吸光度が0.7±0.02になるまで、母液をPBSで希釈することにより得た。
【0110】
10.5 統計分析
データは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示され、かつ、一方向ANOVA(分散分析)により分析した。グループ間の差分はTukeyテスト(多重比較検定)により評価した。差分はP値が<0.05である場合に、有意と見做された。データはSigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。
【0111】
10.6 考察
得られた結果を図7〜図9に示す。トリグリセリドレベル、動脈硬化指数及び総抗酸化能力(TAC)は各ラット群と相関されている。
【0112】
図7は、トリグリセリドレベルと、異なる食餌スキームに従って分類されたラットとの間の相関関係を示す。図7によれば、CC食餌(対照食餌)で処理されたラット群1は最も低いトリグリセリドレベルを示すが、AA食餌(アテローム性食餌,負対照)で処理されたラット群2は最も高いトリグリセリドレベルを示す。ラット群1とラット群2の間のトリグリセリドレベル差は、P値が<0.001なので、統計的に有意である。興味深い結果が、G5食餌及びG8食餌でそれぞれ処理されたラット群5とラット群6について示されている。最初の一ヶ月間アテローム性食餌を給餌されたラットであっても、引き続く処理中に、標準ラット食餌と共に本発明による栄養強化エキストラバージンオリーブオイルを強制経口投与で給餌されると、ラット群5とラット群1又はラット群6とラット群1との間のトリグリセリドレベルには統計的有意差が認められなかったことを、このトリグリセリド値は示している。換言すれば、アテローム性食餌で一ヶ月間処理した後、トリグリセリドの値が、対照食餌により得られるレベルに匹敵する値にまで顕著に低下したことが、ラット群G5及びG8について認められた。アテローム性食餌で一ヶ月間処理した後、更に一ヶ月間、標準ラット食餌と共にエキストラバージンオリーブオイル(evoo)だけをラット(ラット群4)に給餌した場合には、同じ結果が認められなかった。この場合、トリグリセリドレベル(負対照ラット群2のトリグリセリドレベルよりも低いとしても)は、対照食餌(ラット群1)を給餌されたラット群について測定されたトリグリセリドレベルに対する統計的有意差がP値<0.001であった。更に、P値<0.001なので、ラット群3とラット群1との間のトリグリセリドレベルの統計的有意差が認められた。このことは、非栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの効果は、アテローム性食餌の一ヶ月後の標準ラット食餌(G3)の効果を殆ど上回らないことを意味する。
【0113】
図8は、動脈硬化指数と、異なる食餌スキームにより分類されたラットとの間の相関関係を示す。図8によれば、CC食餌(対照食餌)で処理されたラット群は最低動脈硬化指数を示すが、AA食餌(アテローム性食餌,負対照)で処理されたラット群2は最高動脈硬化指数を示す。P値<0.001なので、ラット群1とラット群2との間には動脈硬化指数の統計的有意差が存在する。興味深い結果が、G5食餌及びG8食餌でそれぞれ処理されたラット群5とラット群6について示されている。ラット群5とラット群1又はラット群6とラット群1との間の動脈硬化指数の統計的有意差は認められなかった。換言すれば、アテローム性食餌で一ヶ月間処理した後、動脈硬化指数値が、対照食餌で得られる値に匹敵する値にまで顕著に低下したことが、ラット群G5及びG8について認められた。これに対して、アテローム性食餌で一ヶ月間処理した後、更に一ヶ月間、標準ラット食餌と共にエキストラバージンオリーブオイル(evoo)だけをラット(ラット群4)に給餌した場合には、同じ結果が認められなかった。この場合、動脈硬化指数値(負対照ラット群2の動脈硬化指数値と統計的有意差があったとしても)は、P値<0.05なので、対照食餌を給餌されたラット群(ラット群1)について検出された動脈硬化指数値に対して統計的有意差を生じた。
【0114】
図9はTAC血漿値と、異なる食餌スキームにより分類されたラットとの間の相関関係を示す。図9によれば、ラット群5とラット群6が最高総抗酸化能力を示す。ラット群5とラット群1(P値<0.001)とラット群6とラット群1(P値<0.001)との間の総抗酸化能力値には統計的有意差が存在する。この結果は、本発明による栄養強化オイル/オイル含有製品及び特に、栄養強化エキストラバージンオリーブオイルは幾つかの効果をもたらし、かつ、心血管系の保護に使用できることを再確認する。実際、高コレステロール/トリグリセリドレベル、低HDLコレステロールレベル及び特に被酸化LDLは、動脈内のアテローム性プラーク堆積及びメタボリック症候群に付随するリスクファクター(危険因子)の一つである。前記の結果を要約すれば、オリーブ抽出物を含有する栄養強化栄養製品は心血管系発作に関するバイオマーカーを有する効果について実験が行われ、得られた結果は、本発明によるオリーブ抽出物による栄養強化を受けていない類似の栄養製品について得られた結果と比較された。測定された全てのパラメータを考慮すると(図7〜図9参照)、栄養強化栄養製品(オリーブ抽出物含有)の成分類は相乗効果を示すということが結論付けられる。更に、栄養強化栄養製品(本発明によるオリーブ抽出物含有)の規則的投与は心血管系を保護し、心血管系発作の発生を大なり小なり防止し、その結果、当該製品は健康増進栄養製品として申し分の無いものであるということが結論付けられる。
【実施例11】
【0115】
高血圧症治療における栄養強化エキストラバージンオリーブオイル(本発明によるオリーブ抽出物が添加されたevoo)の使用
11.1 動物
オスのスプラーグ・ドーリーラット36匹(試験開始時点の体重約200g)をHarlan Interfauna Iberica SA社(スペインのバルセロナに所在)から購入し、全ての実験中、Murcia大学の動物実験施設内で飼育した。ラットを無作為に、6個の実験群(各群当たりラット6匹)に割り振り、照明(12時間の日中/夜間サイクル)、温度(22±2℃)及び湿度(60%)の標準的条件下で飼育ケージに収容した。
【0116】
11.2 食餌
整定期間中及び試験期間中、ラットには固形のラット用標準食餌(Panlab社製)を給餌した。飲料水及び餌は自由に摂取させた。整定期間の7日間が経過した後、本試験による治療を開始した。
【0117】
11.3 実験計画
栄養強化エキストラバージンオリーブオイル(本発明によるオリーブ抽出物が添加されたevoo)の効果を測定するため、高血圧症モデルの誘発用としてN−ニトロ−L−アルギニン−メチルエステル(L-NAME)を使用した。
【0118】
整定期間経過後、L-NAME誘発高血圧症治療の開始前に、動脈血圧の基礎データ(D0)をLetica5002測定器で測定した。
【0119】
ラットを下記の表4に示される実験計画に従って処置した。
【0120】
表4

L-NAME
群 含有飲料水 強制経口投与 備考

1 無し 無し 高血圧症の誘発無し

2 40mgL-NAME/kg* 無し 高血圧症誘発
(負対照)

3 40mgL-NAME/kg* エキストラバージン 天然含有量5.7mgHT/kgevoo
オリーブオイル のエキストラバージン
(evoo)0.2mL オリーブオイル(evoo)の投与
と並行して高血圧症誘発

4 40mgL-NAME/kg* 本発明によるオリーブ HTの一日摂取量が5mg/kg
抽出物が添加された (体重)となる栄養強化evoo
栄養強化evoo0.2mL の投与と並行して高血圧症
従って、一日摂取量 誘発
5mgHT/kg(体重)となる



5 40mgL-NAME/kg* 本発明によるオリーブ HTの一日摂取量が8mg/kg
抽出物が添加された (体重)となる栄養強化evoo
栄養強化evoo0.2mL の投与と並行して高血圧症
従って、一日摂取量 誘発
8mgHT/kg(体重)となる

6 40mgL-NAME/kg* カプトプリル100mg/kg カプトプリル(降圧剤)100mg
の投与と並行して高血圧症
誘発(正対照)

*L−NAME処理剤は、ラット1匹当たり200gの体重を考慮し、そして、ラットへの平均一日給水量を40mL/日に標準化して、自由に摂取できる飲料水摂取を通して全てのラット群に投与した。但し、ラット毎の実際の水摂取量は不知。
【0121】
11.4 活性のクロノグラム(Cronogramme)
ラットを習慣付けるために、整定期間中、Lectica5002測定器を用いて尻尾動脈の脈動を記録することにより動脈血圧の測定を行った。
【0122】
試験測定/処置のクロノグラムを下記の表5に要約して示す。
【0123】
表5

日数 動脈血圧の測定 L-NAME補給 強制経口投与
飲料水

0 有り 有り 無し

1 無し 有り 有り

2 有り 有り 有り

3 無し 有り 有り

4 有り 有り 有り

5 無し 有り 有り

6 無し 有り 有り

7 有り 有り 有り

【0124】
11.5 動脈血圧の測定
動脈血圧は前記のクロノグラムに従って、尾カフ(tail-cuff)法により定期的に測定した。尾動脈の脈動を検出可能にするため、測定前にラットを37℃で10分間静置した。本研究で使用した測定器のLE5002(スペインのバルセロナに所在するLetica,Hospitalet社製)は正確なマイクロプロセッサプログラムと結合された高感度パルス変換器を有し、その結果、正確な動脈血圧の測定ができる。動脈血圧測定は、概日サイクルの如何なる影響も避けるために、一日の同じ時間に行った。
【0125】
11.6 統計分析
データは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示され、かつ、SigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。
【0126】
11.7 考察
図10は、血圧検出値と、異なる処置スキームに従って分類されたラット群との間の相関関係を示す。図10によれば、ラット群1は高血圧を示さなかったが、ラット群2はL-NAME処置により誘発された高く、増大化する血圧値を示した。ラット群6(正対照)は、L-NAME高血圧症誘発と同時に、カプトプリル(公知の高効率降圧剤)で処置したので、血圧値の顕著な低下が示された。ラット群3は、L-NAME高血圧症誘発と同時に、エキストラバージンオリーブオイル(evoo)で処置し、一方、ラット群4及び5は、L-NAME高血圧症誘発と同時に、栄養強化エキストラバージンオリーブオイル(栄養強化evoo)で処置した。ラット群4及び5の血圧値は、ラット群3の血圧値よりも著しく低かった。従って、本発明による栄養強化エキストラバージンオリーブオイルにより発現される高血圧症に対する作用は、非栄養強化evooにより発現される作用に比べて、極めて優れている。
【0127】
動脈性高血圧症は動脈内のアテローム性プラーク堆積及びメタボリック症候群に付随するリスクファクター(危険因子)の一つなので、前記の結果は非常に興味深い。本発明によるオリーブ抽出物により栄養強化されたエキストラバージンオリーブオイルが動脈血圧に及ぼす効果について研究し、そして、オリーブ抽出物による処置を受けなかった対照ラット群と比較した。収縮期血圧測定値(図10参照)を考慮すれば、オリーブ抽出物及び本発明によるオリーブ抽出物を含有する栄養製品の規則的投与は抗高血圧作用を示し、心血管系発作の発生を大なり小なり防止すると結論付けることができる。本発明によるオリーブ抽出物を含有する栄養製品は、健康を増進する栄養補助食品と見做すことができ、従って、抗高血圧作用を有する栄養強化エキストラバージンオリーブオイルと類似の機能性食品を製造するための有効な手段である。
【実施例12】
【0128】
心臓血管系疾患の予防又は治療における高純度ヒドロキシチロソルに富むオリーブ果実抽出物の使用
12.1 動物
オスのスプラーグ・ドーリーラット32匹(平均体重150〜180g)をHarlan Interfauna Iberica SA社(スペインのバルセロナに所在)から購入し、全ての実験中、Murcia大学の動物実験施設内で飼育した。ラットを無作為に、各群8匹の4個の実験群に割り振った。各群の4匹のラットをサブグループとして、照明(12時間毎の日中/夜間サイクル)、温度(22±2℃)及び湿度(60%)の標準的条件下で飼育ケージに収容した。
【0129】
10.2 食餌
この実験に使用した食餌は次の通りであった。
・ 対照食餌(C):精製ヒマワリ油が3%添加された97%標準ラット食餌(Panlab社製)
・ アテローム性食餌(A):アテローム性動脈硬化症を誘発させるためにコレステロール(Aldrich社製)が1.5%及びラードが3%添加された95.5%標準ラット食餌(Panlab社製)
・ アテローム性食餌+ヒドロキシチロソル(8mgHT/kg(体重))強制経口投与(A−G8):アテローム性動脈硬化症を誘発させるためにコレステロール(Aldrich社製)が1.5%及びラードが3%添加された95.5%標準ラット食餌(Panlab社製)+ヒドロキシチロソル抽出物(8mgヒドロキシチロソル/kg(体重))強制経口投与。ヒドロキシチロソル(HT)8mg/kg(体重)を全てのラットに給餌するために、毎日、強制経口投与により摂取させた。
【0130】
飲料水と食餌は任意に摂取させた。しかし、全研究を通じて、各ラット毎の平均給餌量は30g/日(ラット毎の実際の食餌摂取量は不知)であった。脂肪の酸化を避けるために、正しい配合量の標準ラット食餌(Panlab社製)及び脂肪/オイルを混合することにより全ての食餌を毎日調製し、かつ、使用直前まで4℃で暗所に保存した。また、摂取されずに残った前日の食餌は廃棄した。
【0131】
本研究に使用したA−G8食餌内のヒドロキシチロソル(HT)濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0132】
12.3 実験計画
実験計画を下記の表6に示す。
【0133】
表6

群 初日から 31日目から 備考
30日目まで 60日目まで

1 食餌C 食餌C 給餌食餌:CC
(対照食餌)

2 食餌A 食餌A 給餌食餌:AA
(アテローム性食餌、負対照)

3 食餌A 食餌C 給餌食餌:AC
(アテローム性食餌後の対照食餌の効果)

4 食餌A−G8 食餌A−G8 給餌食餌:AG8−AG8
(アテローム性食餌に対する8mgHT/kg 体重の効果)
【0134】
CC,AA,AC及びA−G8食餌で処理されるラット群は次のようにして給餌した。
CC又はAA食餌でそれぞれ処理されるラット群には、2ヶ月間食餌C又はAを給餌した。
AC食餌で処理されるラットには、1ヶ月間A食餌(アテローム性食餌、負対照)を給餌し、続いて、更に1ヶ月間C食餌(ヒマワリ油が全く配合されていない標準ラット食餌(Panlab社製)だけからなる食餌)を給餌した。
AG8−AG8食餌で処理されるラットには、2ヶ月間A−G8食餌(アテローム性食餌+ヒドロキシチロソル8mg/kg(体重)強制経口投与)を給餌した。
【0135】
実験終了時点で、絶食ラットに麻酔をかけ、安楽死させた直後に心臓内穿刺を行い血液を試験管に捕集した。分析のために血漿を遠心分離法により分離させた。
【0136】
12.4 統計分析
データは、平均値±平均値の標準誤差(S.E.M.)として表示され、かつ、一方向ANOVA(分散分析)により解析した。グループ間の差分はTukeyテスト(多重比較検定)により評価した。差分はP値が<0.05である場合に、有意と見做された。データはSigmaStatソフトウェア(バージョン2.03)を用いて解析した。
【0137】
12.5 考察
得られた結果を図11に示す。動脈硬化指数は前記のように表6に示される各ラット群と相関されている。
【0138】
図11は、動脈硬化指数と、異なる食餌スキームにより分類されたラットとの間の相関関係を示す。図8によれば、CC食餌(対照食餌)で処理されたラット群は最低動脈硬化指数を示すが、AA食餌(アテローム性食餌,負対照)で処理されたラット群2は最高動脈硬化指数を示す。P値<0.001なので、ラット群1とラット群2との間には動脈硬化指数の統計的有意差が存在する。興味深い結果が、本実験においてA−G8食餌で処理されたラット群4について示されている。ラット群4とラット群1との間の動脈硬化指数の統計的有意差は認められなかった。換言すれば、A−G8ラット群については、アテローム性食餌+ヒドロキシチロソルに富むオリーブ果実抽出物の強制経口投与で2ヶ月間処理した後、対照食餌により得られる動脈硬化指数に匹敵する不変的動脈硬化指数が認められた。これに対して、最初の1ヶ月間はアテローム性食餌で処理し、引き続く1ヶ月間は標準ラット食餌だけが給餌されたラット群3の場合、同じ効果は認められなかった。この場合、(負対照ラット群2の動脈硬化指数値と統計的有意差があったとしても)動脈硬化指数値は、P値<0.05なので、対照食餌を給餌されたラット群(ラット群1)について検出された動脈硬化指数値に対して統計的有意差を生じた。ラット群4からもたらされた動脈硬化指数値は、本発明により得られたヒドロキシチロソルに富むオリーブ果実抽出物による予防効果を示唆する。
【0139】
全ての測定パラメータを考慮すれば、本発明によるオリーブ抽出物の規則的投与は心臓血管系を保護し、動脈内におけるアテローム性プラークの堆積及びメタボリック症候群に付随すると考えられる幾つかのリスクの発現を防止するものと結論付けることができる。従って、本発明のオリーブ抽出物は、栄養補助食品の製造に使用すべき、健康促進天然抽出物であると十分に考えられる。
【0140】
前記のように、本発明の食用油は本来の官能特性を維持する。すなわち、苦味値を全く増大させず、しかも、オレウロペイン系アグリコン(例えば、アルデヒド形のオレウロペイン系アグリコン)及び糖類(例えば、グルコース、すなわち、オレウロペイン中に存在する糖)などのような複合フェノール類(例えば、オレウロペイン、すなわち、ヒドロキシチロソルのエステル)などの加水分解副生物を全く含有しない。
【0141】
下記は、オイル、すなわち、オリーブオイルに対して通常行われる品質試験の説明である。
【0142】
1)酸度
酸度は、試験されるオイル中の遊離脂肪酸の含量割合(重量%)を示す。遊離脂肪酸は通常、無傷のオリーブから得られるオイル中にも存在する。トリグリセリドが生成されると、果実中に天然に存在する酵素(リパーゼ)の作用により、酸度が段々と高まる。これは、トリグリセリド分子からの脂肪酸の分離(脂肪分解)を助長する。同じ脂肪分解現象は、オリーブ果実上で生長する微生物により生成される酵素によっても起こり得る。従って、官能特性的に優れ、かつ、一層低い酸度を有する生成物を得るためには、オリーブを良好な状態で貯蔵庫内に保存しなければならない。
【0143】
2)過酸化物値
試験されるオイル中の過酸化物の含量は過酸化物値で表される。過酸化物値が高まるほど、オイルの酸化による劣化が大きい。次には、過酸化物は更なる酸化を受け、異なる方法で検出可能なその他の成分類(アルデヒド類、ケトン類等)の生成を起こす。これらの化合物類(二次酸化化合物類と呼ばれる)は、油酸敗を起こす原因である。酸化及び果実の組織内に存在する酵素類(リポキシゲナーゼ類)のために、圧搾前の果実内には或る濃度の過酸化物が既に存在する。特定の自然環境(例えば、凍結点以下の温度、ダシック(dacic)侵入、干魃等)又は不適切に収穫されかつ保存されたオリーブは、過酸化物の更なる生成が助長される。粉砕中であっても、不適切な加工又は不衛生なオリーブ圧搾機及び/又は容器などにより、過酸化物は著しく増大することができる。最後に、オイルを光源又は熱源に長期間曝露すると過酸化物が増大する。過酸化物類は滴定により検出できる。
【0144】
3)紫外線による分光光度研究
このテストは、同じ分析手法で決定される3種類のパラメータ(K232,K270,ΔK)の測定からなる。K232の値が大きければ大きいほど、共役ジエン類の濃度も一層高いが、K270は共役ジエン類の濃度と釣り合う。しかし、共役ジエン類の酸化化合物類はK232の一因となるが、二次酸化の化合物類(アルデヒド類、ケトン類等)はK270の一因となる。
【0145】
この理由により、K270の値がオリーブオイルが属すると思われるカテゴリーの限界値を超えている場合、EC規則は二次的分光光度テストの前にサンプル(アルミナを含む)に対して特別な前処理を行うことを規定している。新たな測定値が限界値を超えている場合、このオリーブオイルは純粋ではないと宣言しなければならない。
【0146】
4)苦味テスト
このテストは、Gutierrezら,J.Am.Oil.Chem.Soc. 1992, 69(4), 394-395に記載された方法に従って行われる。この試験は、225nmにおける吸光度(K225テスト)とオリーブオイルの苦味との間に線形相関が存在することを見出した。
【0147】
経験的に、K225値が0.300以上の場合、オリーブオイルを直接消費すると問題が起こることが知られている。更に、0.360程度又はこれ以上のK225値は、殆どの消費者により拒絶される極めて苦いオリーブオイルに該当する。
【実施例13】
【0148】
比較例:異なるオリーブポリフェノール源により栄養強化されたエキストラバージンオリーブオイルの製造
比較のために、実施例1による方法で得られた精製オリーブ抽出物のサンプルとオリーブ葉から及びオリーブ工場植生水からの抽出物の市販サンプルを、エキストラバージンオリーブオイルの栄養強化のために選択した。各抽出物の仕様を下記の表C1に示す。
【0149】
表C1

抽出物 HT(%) オレウロペイン HT純度 残留有機溶
(%) (HPLC280nm) 媒(ppm)

精製オリーブ抽出物 34.5 不検出 93.4 不検出
(実施例1によるもの)

オリーブ葉抽出物 0.4 35.6 5.2 エタノール
156ppm
オリーブ工場植生水 2.5 0.2 51.3 アセトン
105ppm
【0150】
容量3Lボトルのエキストラバージンオリーブオイルをスーパーマーケットで購入し、別のテストで使用した。
【0151】
前記エキストラバージンオリーブオイル各500mLのサンプル4個を、それぞれのガラスビーカに注ぎ入れた。そして、別の抽出物を下記の表C2に従って添加した。
【0152】
表C2

抽出物 抽出物添加量 オイル中のHTの最高理論
(g) 増大量(ppm)

A)精製オリーブ抽出物 0.1 69
(実施例1によるもの)

B)オリーブ葉抽出物 20 160

C)オリーブ工場植生水 20 1000

D)抽出物不添加(対照) −− −−−
【0153】
次いで、各テストA,B,C及びDを下記のようにして行った。
【0154】
A)液状の精製オリーブ抽出物(実施例1によるもの)0.11gを500mLのエキストラバージンオリーブオイルサンプルに添加し、100rpmで穏やかに撹拌することにより混合した。30分後、プレエマルジョンが精製された。このプレエマルジョンを2段階均質化方法に従って運転されるホモジナイザーの供給ホッパーに給送した。第1段階は300バールの圧力、第2段階は30バールの圧力でそれぞれ操作されるプレエマルジョンの均質化により安定なエマルジョンを得ることができる。
【0155】
B)オリーブ工場植生水抽出物20gを500mLのエキストラバージンオリーブオイルサンプルに添加し、60℃で2時間磁気的に撹拌した(イタリア特許第1326553号公報の比較例1と比較するため)。加熱処理完了後、サンプルは暗緑色を呈し、依然として多数の固形物を含んでいた。その後、固形物をデカント法により除き、オリーブオイルを室温にまで冷却し、最後に、サンプルを遠心分離し、固形物を除去した。
【0156】
C)オリーブ葉抽出物20gを500mLのエキストラバージンオリーブオイルサンプルに添加し、60℃で2時間磁気的に撹拌した(イタリア特許第1326553号公報の比較例3と比較するため)。加熱処理完了後、サンプルは依然として多数の固形物を含んでいた。その後、固形物をデカント法により除き、オリーブオイルを室温にまで冷却し、最後に、サンプルを遠心分離し、固形物を除去した。
【0157】
これらの直後に、栄養強化エキストラバージンオリーブオイルの3個のサンプル(サンプルA,B及びC)と、エキストラバージンオリーブオイルの1個の対照サンプル(サンプルD)からなる4個のサンプルのそれぞれからアリコートを採取し、このアリコートを、Gutierrezら,J.Am.Oil.Chem.Soc. 1992, 69(4), 394-395に記載された方法に従って測定される苦味指数(K225)測定、及びHPLCによるヒドロキシチロソルとオレウロペイン含量測定に使用した。測定結果を下記の表C3に要約して示す
【0158】
表C3

抽出物 K225 オイル中の オイル中のオレ オイル中のHT取込
HT(ppm) ウロペイン み歩留まり(%)
(ppm)

A)精製オリーブ 0.24 71 不検出 92.8
抽出物実施例1
によるもの)

B)オリーブ葉 0.35 28 10 13.1
抽出物

C)オリーブ 0.32 38 1 3.1
工場植生水

D)抽出物不 0.25 7 不検出 ---
添加(対照)
【0159】
前記の表に示された予備テストでは、過剰な苦味及び/又は渋味による不快な風味を起こすオリーブオイルの官能特性の変化を避けながら、ヒドロキシチロソルのレベルを高めるためには、オリーブ抽出物の純度及び出所が必須要件であることが示された。
【0160】
更に、オリーブ葉抽出物及びオリーブ工場植生水抽出物の使用及びイタリア特許第1326553号公報に記載された前記の処理方法(60℃で2時間加熱)の使用は、苛酷過ぎ、技術的に複雑であり、しかも実際的ではない(処理後にオリーブオイル中に大量の固形物が残留する)か、若しくは、栄養分野で商業的に実行できない(オリーブオイル中に取り込まれるヒドロキシチロソルの含量が極めて低い)。更に、植物油中に取り込まれるヒドロキシチロソルの量が少なすぎて、酸化変性に対してLDLを殆ど保護することができない。
【実施例14】
【0161】
比較例:異なる抽出物により栄養強化された植物油の官能特性の測定
前記の実施例13におけるサンプルA〜C及び対照サンプルDを下記の品質特性についてテストした。表C4に要約して示す。
【0162】
表C4

抽出物 遊離脂肪酸 過酸化物指数 K270 K232
オレイン酸含量 meqO2/Kgとして NMT0.22 NMT2.5
(%)として NMT20
NMT0.8%

A)精製オリーブ 0.22 7 0.17 1.76
抽出物実施例1
によるもの)

B)オリーブ葉 0.35 9.5 0.27 2.13
抽出物

C)オリーブ 0.40 7.9 0.18 1.91
工場植生水

D)抽出物不 0.22 7.2 0.15 1.85
添加(対照)
【0163】
遊離脂肪酸値、過酸化物指数、K270及びK232などの品質パラメータの変化が認められた。オリーブ葉抽出物により栄養強化されたオリーブオイルのK270値は0.27と極めて高い値であり、2007年6月21日制定の執行規則(EC)No.702/2007による、エキストラバージンオリーブオイルについて許容される最大値を超えている。
【0164】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシチロソルの含量が少なくとも30ppmであり、アルデヒド形のオレウロペインアグリコンの含量が120ppm未満であることを特徴とする、K225値が0.28以下の食用油である栄養製品。
【請求項2】
ヒドロキシチロソルを30ppm〜300ppm、好ましくは50ppm〜60ppm含有する請求項1記載の栄養製品。
【請求項3】
ヒドロキシチロソルを300ppm〜30000ppm含有する請求項1記載の栄養製品。
【請求項4】
前記食用油は植物油であり、好ましくは、バージンオリーブオイル、エキストラバージンオリーブオイル、オリーブオイル、ランパンテオリーブオイル、精製オリーブオイル、粗製オリーブ搾り滓オイル、精製オリーブ搾り滓オイル、ヒマワリ油、トウモロコシ油、大豆油、亜麻仁油、扁桃油、キャノーラ油、サフラワー油、パーム油、ココヤシ油、菜種油、前記油類の技術的に変性された誘導体類及び前記のものの2種類以上の混合物から選択される請求項1〜3の何れかに記載の栄養製品。
【請求項5】
前記食用油は海産物油又は魚油であり、好ましくは、藻類、オキアミ、大型ニシン、アンチョビ、マグロ、ニシン、サーディン、サバ、タラから得られた海産物油又は魚油、前記油類の技術的に変性された誘導体類又は前記のものの2種類以上の混合物である請求項1〜3の何れかに記載の栄養製品。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の食用油を含有する食料品であり、ヒドロキシチロソルを30ppm〜300ppm含有する栄養製品。
【請求項7】
好ましくはマーガリン、マヨネーズ、ガーリックマヨネーズ、ガスパーチョスープ、塗り広げ可能なソース、サラダドレッシングから選択される請求項6記載の栄養製品。
【請求項8】
請求項3による食用油を封入したソフトジェルカプセルの形をした栄養補助食品である栄養製品。
【請求項9】
心臓血管系疾患の予防又は治療用である請求項1〜8の何れかに記載の栄養製品。
【請求項10】
動脈内へのプラーク堆積の予防又は治療用である請求項1〜8の何れかに記載の栄養製品。
【請求項11】
メタボリック症候群の予防又は治療用である請求項1〜8の何れかに記載の栄養製品。
【請求項12】
動脈性高血圧症の予防又は治療用である請求項1〜8の何れかに記載の栄養製品。
【請求項13】
ヒドロキシチロソル含有水溶液を前記オイルと混合し、そして水相をデカントして除くことからなり、場合により乳化剤の存在下で、かつ、場合により均質化処理を行う、請求項1〜12の何れかに記載の栄養製品の製造方法。
【請求項14】
前記均質化処理は第1ステージ及び第2ステージで行い、前記第1ステージは200〜700バールの圧力で行われ、前記第2ステージは30〜50バールの圧力で行われ、好ましくは、前記第1ステージは300〜500バールの圧力で行われ、前記第2ステージは30〜35バールの圧力で行われる請求項13記載の方法。
【請求項15】
(a)オリーブ果実及び/又はオリーブの残留物及び/又は圧潰オリーブを、20℃〜140℃の範囲内の温度と、大気圧〜大気圧よりも高い20psiの範囲内の圧力と、1.0〜6.0の範囲内のpHで酸性加水分解する工程からなる、オリーブ果実及び/又はオリーブの残留物及び/又は圧潰オリーブからの抽出物を含有するヒドロキシチロソルの製造方法。
【請求項16】
オリーブ果実で行われる請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記加水分解は連続的な滅菌システム内で行われ、前記加水分解温度は110℃〜130℃の範囲内である請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記加水分解工程の時間は15分間〜45分間の範囲内である請求項15〜17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
(b)前記工程(a)の加水分解生成物を引き続き処理して透明な水溶液を得る工程を更に有する請求項15〜18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
(c)前記工程(b)で得られた生成物を、酸活性化アニオン交換樹脂類及び吸着媒非イオン性樹脂類から選択される樹脂の少なくとも一つのクロマトグラフカラムに装填する工程、及び(d)前記クロマトグラフカラムに保持された生成物を水で溶出する工程を更に有する請求項15〜19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
工程(b)で得られた生成物を酸活性化アニオン交換樹脂のクロマトグラフカラムに装填し、保持された生成物を水で溶出し、溶出生成物を吸着媒非イオン性樹脂のクロマトグラフカラムに装填し、保持された生成物を水で前記カラムから溶出する工程からなる請求項20に記載の方法。
【請求項22】
逆浸透濃縮の工程を更に有する請求項15〜21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
生成物が固形になるまで水を蒸発させる工程を更に有する請求項15〜22の何れかに記載の方法。
【請求項24】
請求項15〜23の何れかに記載の方法により得られ、ヒドロキシチロソル含量が少なくとも0.5%(w/w)であり、かつ、純度が少なくとも40%(280nmのHPLCによる)であるヒドロキシチロソルを有する抽出物。
【請求項25】
請求項15〜23の何れかに記載の方法により得られ、ヒドロキシチロソル含量が少なくとも10%(w/w)であり、かつ、純度が少なくとも80%(280nmのHPLCによる)であるヒドロキシチロソルを有する抽出物。
【請求項26】
請求項15〜22の何れかに記載の方法により得られ、ヒドロキシチロソル含量が少なくとも35%(w/w)であり、かつ、純度が少なくとも90%(280nmのHPLCによる)であるヒドロキシチロソルを有する液状抽出物。
【請求項27】
請求項23に記載の方法により得られ、ヒドロキシチロソル含量が少なくとも20%(w/w)であり、かつ、純度が少なくとも90%(280nmのHPLCによる)であるヒドロキシチロソルを有する固形抽出物。
【請求項28】
請求項23に記載の方法により得られ、ヒドロキシチロソル含量が少なくとも40%(w/w)であり、かつ、純度が少なくとも90%(280nmのHPLCによる)であるヒドロキシチロソルを有する固形抽出物。
【請求項29】
オリーブ抽出物であることを特徴とする請求項24〜28の何れかに記載の抽出物。
【請求項30】
活性成分を単独で又は活性成分類の混合物を部分的に含む、好ましくは錠剤又はカプセルの形の栄養補助食品としての請求項24〜29の何れかに記載の抽出物の使用。
【請求項31】
心臓血管系疾患の予防又は治療用である請求項24〜29の何れかに記載の抽出物。
【請求項32】
動脈内へのプラーク堆積の予防又は治療用である請求項24〜29の何れかに記載の抽出物。
【請求項33】
メタボリック症候群の予防又は治療用である請求項24〜29の何れかに記載の抽出物。
【請求項34】
動脈性高血圧症の予防又は治療用である請求項24〜29の何れかに記載の抽出物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−534235(P2010−534235A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517500(P2010−517500)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001907
【国際公開番号】WO2009/013596
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509211022)プロベルテ ファーマ,エス.エー. (5)
【Fターム(参考)】