説明

ヒドロキシル基含有シリコーンモノマーの製造方法

【課題】目への刺激物質となりうるエポキシ基含有不純物を含まないコンタクトレンズ用ヒドロキシル基含有シリコーンモノマーの製造方法を提供すること及び異性体純度の高いヒドロキシル基含有シリコーンモノマーを得ること。
【解決手段】シロキサン基を含有するハロヒドリン化合物を重合性基含有カルボン酸に水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させる方法、及び少なくとも1つ以上の不飽和結合基を有するハロヒドリン化合物を重合性基含有カルボン酸に水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させ、その後シロキサン基を導入する方法を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロキシル基含有シリコーンモノマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンタクトレンズ材の原料モノマーとして、高い酸素透過性を示すシロキサン基含有モノマーが知られている。その中でもモノマー中に水酸基とシロキサン基を有するモノマーは上記の高い酸素透過性に加え、水酸基による親水性を付与することができる。そのため、このようなモノマーは他の親水性モノマーとの相溶性に優れ、ひいてはこのようなモノマーを共重合成分として含むコンタクトレンズに対して適度な含水率や装用時の乾燥感低減などの利点を与えることができる。
【0003】
従来、コンタクトレンズ用ヒドロキシル基含有シリコーンモノマー製造方法としては、下記反応式(12)で示される不飽和結合基を有するカルボン酸にシロキサン基を有するエポキシ化合物を付加させる方法や、下記反応式(13)で示される2つ以上の不飽和結合基を有する化合物を中間体として、ヒドロシリル化しシロキサン基を導入する方法が知られている。
【0004】
【化1】

【0005】
【化2】

【0006】
しかしながら、上記反応式(12)の反応では原料であるエポキシ化合物が微量ながら残留する場合があり、エポキシ化合物はコンタクトレンズとして眼中に装着した際に刺激物質となる可能性があり好ましくない。さらに本反応では触媒としてカルボン酸金属塩などを用いているが、高価でかつ再利用が困難である。また上記反応式(13)の反応では中間体製造において上記式(12)の反応を利用しており、精製方法によってエポキシ化合物が残留する可能性がある。
【0007】
このように現在のヒドロキシル基含有シリコーンモノマーはエポキシ基の開環反応を利用しているものが一般的であり、そのためエポキシ化合物の残留が懸念されている。
【0008】
一方、特許文献1では(メタ)アクリル基含有有機ケイ素化合物の製造方法が示されている。本方法は、塩基として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7を用い、(メタ)アクリル酸とハロアルキルシリコーン化合物を縮合させている。しかしながら使用しているシリコーンがハロアルキルシリコーン化合物に限定されており、分子内にヒドロキシル基を含有していないため、親水性の劣るものであった。
【0009】
【特許文献1】特開平6−287305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、目への刺激物質となりうるエポキシ基含有不純物を含まないコンタクトレンズ用ヒドロキシル基含有シリコーンモノマーの製造方法を提供することである。また、本発明の別の目的は異性体純度の高いヒドロキシル基含有シリコーンモノマーを得ることである。本明細書において「異性体純度」とは「複数の異性体の混合物における特定の1つの異性体の存在割合」のことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリコーンモノマーの製造方法は、シロキサン基を含有するハロヒドリン化合物を重合性基含有カルボン酸に水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させる2種類の方法(以下、それぞれ第1の方法及び第2の方法という)、少なくとも1つ以上の不飽和結合基を有するハロヒドリン化合物を重合性基含有カルボン酸に水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させ、その後シロキサン基を導入する方法(以下、第3の方法という)の3つである。
【0012】
本発明のうち第1の方法は、下記式(1)および/または(2)で示される化合物に下記式(3)で示されるカルボン酸を水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させることを含む、下記式(4)および/または(5)で示されるシリコーンモノマーの製造方法を提供する。
【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
(式(1)〜(5)中Rは下式(6)で示される置換基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる。Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表す。nは1〜12の整数を表す。)
【0019】
【化8】

【0020】
(式(6)中、A1 〜A11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる。a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表し、dは0〜200の整数を表す。ただしa=b=c=d=0の場合を除く。)
【0021】
本発明のうち第2の方法は、下記式(7)および/または(8)で示される化合物に下記式(3)で示されるカルボン酸を水中のpKa値が5.5以上である塩基の存在下で反応させることを含む、下記式(7m)および/または(8m)で示されるシリコーンモノマー中間体の製造方法を提供する。
【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
(式(3)、(7)、(8)、(7m)および(8m)中、Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表し、R3は−CH=CH で表される基を表す。mは2〜12の整数を表す。)
【0028】
本発明のうち第3の方法は、前記式(7m)および/または(8m)で示されるシリコーンモノマー中間体と式(9)で示される化合物を反応させることを特徴とする下記式(4’)および/または(5’)で示されるシリコーンモノマーの製造方法を提供する。
【0029】
【化14】

【0030】
【化15】

【0031】
【化16】

【0032】
(式(4')、(5')および(9)中、Rは下式(6)で示される置換基を表す。Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる。Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表し、R3は−CH=CH で表される基を表す。mは2〜12の整数を表す。)
【0033】
【化17】

【0034】
(式(6)中、A1 〜A11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる。a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表し、dは0〜200の整数を表す。ただしa=b=c=d=0の場合を除く。)
【発明の効果】
【0035】
本発明の製造方法により、コンタクトレンズの眼への刺激物質となりうるエポキシ基を直接用いず、さらにエポキシ基含有不純物を含まないコンタクトレンズ用ヒドロキシル基含有シリコーンモノマーを製造することができる。また塩基を再生・再利用することでコンタクトレンズモノマーを安価でかつ大量に製造することが可能となる。また、本方法によれば異性体純度の高いヒドロキシル基含有シリコーンモノマーが得られる。本方法で得られたヒドロキシル基含有シリコーンモノマーは、高い酸素透過性および親水性を有する。また本方法で得られたヒドロキシル基含有シリコーンモノマーにはさらに優れた耐加水分解性を付与することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の第1の方法において原料として用いられるハロヒドリン化合物は、上記式(1)および/または(2)で示されるものである。
【0037】
上記式(1)および(2)中、Rは上記式(6)で示される置換基であって、nは1〜12の整数である。Xはハロゲン原子を表し、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれるが、原料入手の容易さから、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0038】
上記式(6)中、A1 〜A11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる。a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表し、dは0〜200の整数を表す。ただしa=b=c=d=0の場合を除く。アルキル基およびアリール基の場合、直鎖でも分岐鎖でもよい(以下の記述においても同様である)。また、本明細書及び請求の範囲において、「アルキル基」には、シクロアルキル基も包含される。例えばA1 〜A11としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基などが例示される。さらにアルキル基、アルケニル基およびフェニル基上に1つ以上置換基を含んでよい。すなわち上述の置換基上の1つ以上の水素原子をハロゲン基、エーテル基、水酸基、アミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基などにより置換したものであってもよい。ここでいう置換基としては、ハロゲン、エーテル基、水酸基、アミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基などを挙げることができる。なお、ここで、エーテル基、アミド基、エステル基及びケトン基のような2価の基による置換とは、これらの2価の基を末端に有する1価の置換基による置換を意味する(以下の記述においても同様である)。前記の2価の基を末端に有する1価の置換基とは、例えばアルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルアミド基、アリールアミド基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基などである。
【0039】
好ましいRの例としては、下記式(10)又は下記式(11)で示される置換基が挙げられる。
【0040】
【化18】

【0041】
上記式(10)中に示されるB1は炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基およびフェニル基から選ばれ、eは1〜12の整数である。アルキル基およびアルケニル基の場合、直鎖でも分岐鎖でもよい。例えばBとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ビニル基、アリル基などが例示される。さらにアルキル基、アルケニル基およびフェニル基上に1つ以上置換基を含んでよい。ここでいう置換基としてはハロゲン基、エーテル基、水酸基、アミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基などが挙げられる。
【0042】
上記式(10)の中の直鎖ジメチルシロキサン基は、該基を有するシリコーンモノマーから得られる重合体が高い酸素透過性と良好な機械物性を示すため、コンタクトレンズモノマーとして特に有効である。
【0043】
【化19】

【0044】
上記式(11)中に示されるR、R、R、Rは各々独立に水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキル基、アルケニル基およびフェニル基から選ばれ、fは1〜3の整数である。アルキル基およびアルケニル基の場合、直鎖でも分岐鎖でもよい。例えばR、R、R、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ビニル基、アリル基などが例示される。さらにアルキル基、アルケニル基およびフェニル基上に1つ以上置換基を含んでよい。ここでいう置換基としてはハロゲン基、エーテル基、水酸基、アミド基、エステル基、ケトン基、ニトリル基などが挙げられる。
【0045】
上記式(11)で示される置換基の中でも、コンタクトレンズの耐加水分解性を向上させる観点から、R、R、Rのうち、少なくとも一つが炭素数2以上のアルキル基、アルケニル基またはフェニル基であるものが好ましい。炭素数が2以上である立体的に嵩高い置換基を有する場合、通常はエポキシドを経由する方法によって合成される。
【0046】
その際原料となるエポキシシリコーン化合物は、例えば下記式(14)による共加水分解によってシラノールを用い合成することができる。一般にシラノールはpHや温度など反応条件をコントロールする事が困難であり、ケイ素上の炭素数が増えるほど合成および入手が困難となる。そのため本発明の製造方法のうち、第1の方法が特に有効である。
【0047】
【化20】

【0048】
なお、上記した式(1)および/または(2)で表されるハロヒドリン化合物は、1種のものを単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
【0049】
本発明のうち第2の方法において原料として用いられるハロヒドリン化合物は、上記式(7)および/または(8)で示されるものである。式(7)、(8)中、R3は−CH=CH で表される基を表す。Rは上記式(6)で示される置換基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれるが、原料入手の容易さから、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表す。mは2〜12の整数を表す。また、式(6)中の各記号の定義は上記と同じである。
【0050】
上記式(7)および式(8)において、R3は下記式(15)で示される置換基を表す。
【0051】
【化21】

【0052】
なお、上記した式(7)および/または(8)で表されるハロヒドリン化合物は、1種のものを単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
【0053】
本発明のうち第3の方法においては、前述の式(7m)および/または(8m)で示されるシリコーンモノマー中間体と前述の式(9)で示される化合物を反応させることを特徴とするが、この反応はヒドロシリル化反応である。ヒドロシリル化反応とは水素−ケイ素結合を有する化合物を触媒存在下で不飽和結合基に付加させる反応である。
【0054】
ヒドロシリル化反応では、塩化白金酸などの均一系触媒および活性炭やアルミナ上に各遷移金属を担持した不均一系触媒等が用いられるが、触媒を除去する観点から、不均一系触媒が好ましい。その場合の好ましい不均一系触媒中の遷移金属としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などが挙げられるが、触媒活性の観点からルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)および白金(Pt)が特に好ましい。遷移金属の担持量としては、0.5重量%以上50重量%以下であることが好ましく、さらに1重量%以上20重量%以下であることが特に好ましい。
【0055】
また上記触媒は1種のものを単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
【0056】
触媒の添加量としては、触媒中の遷移金属量として、ケイ素化合物1モルに対して10−7モル以上10−1モル以下であることが好ましく、10−6モル以上10−2モル以下であることが特に好ましい。
【0057】
ヒドロシリル化反応を行う場合、空気下でも不活性ガス雰囲気下でも、反応は進行するが、収率や純度を安定させるために、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。その場合、好ましい不活性ガスとしては窒素およびアルゴンなどが挙げられる。
【0058】
ヒドロシリル化反応の溶媒としては、種々の溶媒を使用することが可能で、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類など種々のものが使用可能であるが、収率および純度の観点から芳香族系炭化水素類、脂肪族炭化水素類、エーテル類が好ましく、その場合の具体例は、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどである。
【0059】
また上記溶媒は1種のものを単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
【0060】
ヒドロシリル化反応における反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲で行われる。また反応時間は通常5分間から24時間の範囲で行われる。
【0061】
次にヒドロシリル化における反応モル量としては、上記式(9)で示されるケイ素化合物1モルに対し、不飽和結合基を有する化合物を1モル以上10モル以下で使用するのが好ましく、収率、純度、経済的観点から、1.2モル以上5モル以下で使用することが特に好ましい。
【0062】
不飽和結合基が複数存在する場合には、上記の範囲に不飽和結合基数を乗じたモル量で行えばよい。
【0063】
原料であるハロヒドリン化合物の製造方法としては、下記式(16)および(17)で示される方法がある。
【0064】
【化22】

【0065】
【化23】

【0066】
(式(16)および(17)中、Qは−(CH−R および−(CHm−2−R から選ばれた基を表す。R、R、mおよびnはすでに定義したものと同じ意味を表す。Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる。)
【0067】
上記式(16)に示される方法は、対応するエポキシド化合物を無機酸で開環付加させる方法である。通常の付加反応では位置異性体が生成する。本発明の場合には、第1級ハロゲン化物であるハロヒドリン化合物が塩基存在下で重合性基を有するカルボン酸との反応速度が速く、好ましい。そのためエポキシドを開環させる試薬としては、上記の塩酸、臭化水素酸などの無機酸の他にクロロトリメチルシランなどのハロゲン化剤および塩化アンモニウム、臭化アンモニウムなどのアミン塩などが挙げられるが、上記の第1級ハロゲン化物を高選択的に製造する観点から、アミン塩が好ましい。その場合の好ましいアミン塩の具体例は、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムなどである。さらにセリウム系の触媒を併用すると、反応選択性が向上するため好ましい。その場合に好ましい触媒の具体例は硝酸二アンモニウムセリウムなどである。反応溶媒としては、アセトニトリル、t−ブチルアルコールが好ましく、反応温度としては室温から溶媒の沸点の範囲までが好ましく、反応時間は通常1時間から48時間の範囲で行われる。また上記式(16)に示される方法では無機酸またはアミン塩などを過剰に用いることでエポキシ基含有原料が残留しないようにすることも可能である。
【0068】
また上記式(17)に示される方法は対応する不飽和結合基に水と塩素もしくは臭素もしくはヨウ素を作用させる付加反応である。上記と同様に第1級ハロゲン化物であるハロヒドリン化合物が塩基存在下で重合性基を有するカルボン酸との反応速度が速く、好ましい。このような第1級ハロゲン化物であるハロヒドリン化合物製造方法としては、水存在下でハロゲン化コハク酸イミドなどのハロゲン化剤を使用すると、反応選択性が向上するため好ましい。その場合に好ましいハロゲン化剤の具体例はN-クロロコハク酸イミドおよびN-ブロモコハク酸イミドなどである。反応溶媒としては、水共存下でジメチルスルホキシドなどが好ましく、反応温度としては室温から溶媒の沸点の範囲までが好ましく、反応時間は通常1時間から48時間の範囲で行われる。
【0069】
どちらの方法でも原料を合成することが可能であり、反応試薬および条件を選択することで、一方のみを選択的に得ることも可能である。
【0070】
本発明の方法では、上記したハロヒドリンを、水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下、上記式(3)で示される重合性基を有するカルボン酸と反応させる。
【0071】
上記式(3)中、Rは、重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表す。ここでいう重合性基とは、炭素数2〜20のアルキレン基であって、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合をいう。そのような上記式(3)で示されるカルボン酸の具体例としては、ビニロキシ酢酸、アリロキシ酢酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパン酸、3−(メタ)アクリロイルブタン酸、4−ビニル安息香酸などが挙げられる。上記したカルボン酸は、1種のものを単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
【0072】
本発明で用いられるpKaは酸解離定数であって、下記式(18)と(19)で表される。上記の酸解離定数は酸および塩基の強度を示す指標の一つであって、塩基Bの強度はその共役酸BHのpKa値で表される。下記式(18)および(19)中、Bは塩基を表し、Kは平衡定数を表す。また[ ]内は各濃度を表す。
【0073】
【数1】

【0074】
【数2】

【0075】
一般に共役酸の酸性度が大きいほどプロトンが解離しにくくなるため、pKa値が大きいほど塩基性が強くなる。
【0076】
本発明においてpKa値は5.5以上である必要があるが、9.5以上が好ましく、10.5以上がより好ましく、11.5以上が最も好ましい。pKa値が9.5以上である塩基の具体例を示すと、トリエチルアミン(10.9)、トリメチルアミン(9.8)、アザビシクロオクタン(10.7)、4−ジメチルアミノピリジン(9.7)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(12.5)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(12.7)などが挙げられる。なお( )はpKa値を表す。
【0077】
本発明で用いられる塩基とは、有機塩基である。有機塩基としては、エチルアミンなどの第1級アルキルアミン類、ジエチルアミンなどの第2級アルキルアミン類、トリエチルアミン、トリメチルアミン、1,8−ジアザビシクロオクタンなどの第3級アルキルアミン類、4−ジメチルアミノピリジンなどの芳香族アミン類、1,8−ジアザビシクロウンデセン−7などのアミジン類等が挙げられるが、この中でも、第1級アルキルアミンおよび第2級アルキルアミン類は、カルボン酸と脱水縮合してアミドを形成するため本発明には不適であって、第3級アルキルアミン類およびアミジン類であることが好ましい。さらに強塩基性であることが望ましいため、環式アミジン類が最も好ましい。環式アミジン類としては、イミダゾリン系化合物、テトラヒドロピリミジン系化合物、トリアザビシクロアルケン系化合物およびジアザビシクロアルケン系化合物が挙げられる。なお、上記した塩基は、1種のものを単独で用いることもできるし、2種以上のものを組み合わせて用いることもできる。
【0078】
このような環式アミジン類を具体的に例示すると、イミダゾリン系化合物としては1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1−メチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−2−オクチルイミダゾリンなどを挙げることができる。
【0079】
テトラヒドロピリミジン系化合物としては1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−メチル−2−エチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−メチル−2−ブチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−オクチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジンなどを挙げることができる。
【0080】
トリアザビシクロアルケン系化合物としては、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5、7−エチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デセン−5などを挙げることができる。
【0081】
ジアザビシクロアルケン系化合物としては、1,5−ジアザビシクロ[4.2.0]オクテン−5、1,8−ジアザビシクロ[7.2.0]ウンデセン−8、1,4−ジアザビシクロ[3.3.0]オクテン−4、3−メチル−1,4−ジアザビシクロ[3.3.0]オクテン−4、3,6,7,7−テトラメチル−1,4−ジアザビシクロ[3.3.0]オクテン−4、7,8,8−トリメチル−1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[7.3.0]ドデセン−8、1,7−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−6、8−フェニル−1,7−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−6、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]デセン−5、4−フェニル−1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]デセン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.3.0]デセン−7、1,8−ジアザビシクロ[7.4.0]トリデセン−8、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−メチルブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−メチルオクチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ブチルベンジルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、6−ジヘキシルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、9−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、9−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5.3.0]デセン−7、1,6−ジアザビシクロ[5.5.0]ドデセン−6、1,7−ジアザビシクロ[6.5.0]トリデセン−7、1,8−ジアザビシクロ[7.5.0]テトラデセン−8、1,10−ジアザビシクロ[7.3.0]ドデセン−9、1,10−ジアザビシクロ[7.4.0]トリデセン−9、1,14−ジアザビシクロ[11.3.0]ヘキサデセン−13、1,14−ジアザビシクロ[11.4.0]ヘプタデセン−13などを挙げることができる。
【0082】
これらの中でも工業的に入手が容易であるという点で1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5が最も好ましい。
【0083】
ハロヒドリン化合物と重合性基を有するカルボン酸との反応における各原料のモル量は、ハロヒドリン化合物のハロヒドリン基1モルに対し、カルボン酸は0.1〜5.0 モル、好適には0.5〜3.0モル使用し、塩基は0.1〜5.0 モル、好適には0.5〜3.0 モルである。またいずれの場合もカルボン酸と塩基は等モル量を用いることが好ましい。本反応においては、原料であるハロヒドリン化合物が、塩基の作用により脱ハロゲン化水素反応を進行させエポキシドを副生する。これを防ぐためには、あらかじめカルボン酸および塩基を混合・加熱後、ハロヒドリン化合物を滴下する方法が好ましい。次に、反応温度は室温から溶媒の沸点の範囲であれば良く、さらに50℃から溶媒の沸点の範囲までがより好ましい。
【0084】
ハロヒドリン化合物と重合性基を有するカルボン酸との反応を行うに際しては、種々の溶媒を使用することが可能で、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類など種々のものが使用可能である。
【0085】
また、反応時に重合防止のため従来公知の種々の重合禁止剤、例えば、メトキシフェノール、2,6-ジ−t-ブチル−4-メチルフェノール等に代表されるフェノール系化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含アルミニウム化合物などを添加してもよい。
【0086】
塩基の回収・再利用については、反応終了時の洗浄時にアミン塩として蒸留水等で回収し、水層を水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム等の無機塩基で塩基性にし、遊離・回収し、乾燥および蒸留を行うことで、ほぼ定量的に再利用することできる。
【0087】
本発明の製造方法によって製造されたヒドロキシル基含有シリコーンモノマーは、眼用レンズ用モノマーとして好適に用いられ、特にコンタクトレンズ用モノマーとして好適に用いられる。
【実施例】
【0088】
本発明の具体的実施態様を以下に実施例をもって示すが、本発明は以下に限定されるものではない。
【0089】
実施例1
【0090】
【化24】

【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
【化27】

【0094】
塩化カルシウム管を備えた50 ml 3口ナスフラスコにメタクリル酸(0.32 ml, 3.74 mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7 (0.56 ml, 3.74 mmol)およびトルエン(1 ml)を加え、90℃に加熱した。昇温後、上記式(20)および(21)で示される化合物(0.37 g, 2.49 mmol、異性体比(20):(21)=99:1)とトルエン(1 ml)の溶液を5分かけて滴下し、90℃で6時間反応させた。
【0095】
冷却後、ジエチルエーテル約10 mlで洗い込み、1N-HCl (2×10 ml)、1N-NaOH (2×10 ml)、蒸留水 (3×10 ml)、飽和食塩水 (2×10 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物0.61 gを得た。
【0096】
次に減圧蒸留を行い、上記式(22)および(23)で示される無色透明液体 (0.30 g, 収率60%, 純度95%、異性体比(22):(23)=99:1)を得た。
【0097】
なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0098】
実施例2
【0099】
【化28】

【0100】
【化29】

【0101】
【化30】

【0102】
【化31】

【0103】
塩化カルシウム管を備えた50 ml3口ナスフラスコにメタクリル酸(0.32 ml, 3.74 mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7 (0.56 ml, 3.74 mmol)およびトルエン(1 ml)を加え、90℃に加熱した。昇温後、上記式(24)および(25)で示される化合物(1.40 g, 2.49 mmol、異性体比(24):(25)=9:1)とトルエン(1 ml)の溶液を5分かけて滴下し、90℃で6時間反応させた。
【0104】
冷却後、ジエチルエーテル約10 mlで洗い込み、1N-HCl (2×10 ml)、1N-NaOH (2×10 ml)、蒸留水 (3×10 ml)、飽和食塩水 (2×10 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物1.20 gを得た。
【0105】
次にシリカゲルを用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、上記式(26)および(27)で示される無色透明液体 (0.38 g, 収率25%, 純度95%、異性体比(26):(27)=9:1)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。またエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0106】
実施例3
【0107】
【化32】

【0108】
【化33】

【0109】
【化34】

【0110】
【化35】

【0111】
塩化カルシウム管を備えた50 ml3口ナスフラスコにメタクリル酸(0.32 ml, 3.74 mmol)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(0.56 ml, 3.74 mmol)およびトルエン(1 ml)を加え、90℃に加熱した。昇温後、上記式(28)および(29)で示されるケイ素化合物(1.0 g, 2.49 mmol,異性体比(28):(29)=95:5)とトルエン(1 ml)の溶液を5分かけて滴下し、90℃で6時間反応させた。
【0112】
冷却後、ジエチルエーテル約10 mlで洗い込み、1N-HCl (2×10 ml)、1N-NaOH (2×10 ml)、蒸留水 (3×10 ml)、飽和食塩水 (2×10 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物0.61 gを得た。
【0113】
次にシリカゲルを用いてカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、上記式(30)および(31)で示される無色透明液体 (0.16 g, 収率25%, 純度100%、異性体比(30):(31)=95:5)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0114】
実施例4
【0115】
【化36】

【0116】
【化37】

【0117】
【化38】

【0118】
【化39】

【0119】
実施例3において、上記式(28)および(29)で示されるケイ素化合物の代わりに上記式(32)および(33)で示されるケイ素化合物を用いた以外は実施例3と同様に行った。ケイ素化合物の異性体比は(32):(33)=93:7であった。
【0120】
シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後、上記式(34)および(35)で示される無色透明液体 (収率29%, 純度100%、異性体比(34):(35)=93:7)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0121】
実施例5
実施例1で用いた塩基をトリエチルアミンとして、反応温度を90℃、反応時間を10時間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。
【0122】
実施例1と同様に減圧蒸留精製を行い、上記式(22)および(23)で示される無色透明液体 (収率22%, 純度90%、異性体比(22):(23)=99:1)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0123】
実施例6
実施例2において1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7の代わりに1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5を用いた以外は実施例2と同様に行った。
【0124】
その結果、上記式(26)および(27)で示される無色透明液体 (収率31%, 純度96%、異性体比(26):(27)=9:1)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。またエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0125】
実施例7
実施例3において1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7の代わりに1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5を用いた以外は実施例3と同様に行った。
【0126】
その結果、上記式(30)および(31)で示される無色透明液体 (収率33%, 純度100%、異性体比(30):(31)=95:5)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。またエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0127】
実施例8
【0128】
【化40】

【0129】
窒素雰囲気下、実施例1で得た上記式(22)および(23)で示される化合物(2.0g, 10mmol)、5%白金担持活性炭(20 mg)およびトルエン(2 ml)からなる混合物を80℃に加熱した。次に上記式(36)で示されるケイ素化合物(2.71 g, 6.6mmol)を15分間で滴下し、80℃で1時間反応させた。冷却後、5%白金担持活性炭を濾過により除去し、溶媒留去後、実施例2と同様にシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、上記式(26)および(27)で示される無色透明液体 (1.97 g, 収率49%, 純度96%、異性体比(26):(27)=99:1)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。またエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0130】
実施例9
【0131】
【化41】

【0132】
【化42】

【0133】
【化43】

【0134】
実施例8において上記式(36)で示されるケイ素化合物の代わりに上記式(37)で示されるケイ素化合物を用いた以外は実施例8と同様に行った。
【0135】
その結果、上記式(38)および(39)で示される無色透明液体 (収率55%, 純度96%、異性体比(42):(43)=99:1)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。またエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーで検出されなかった。
【0136】
比較例1
アリルグリシジルエーテルとメタクリル酸およびメタクリル酸ナトリウムから実施例1と同じ化合物を合成した。この合成は具体的に次のようにして行った。
【0137】
塩化カルシウム管、還流冷却器を備えたナスフラスコにメタクリル酸(242.8 g, 2.82 mol)、アリルグリシジルエーテル(80.7 g, 0.71 mol)、メタクリル酸ナトリウム(22.7 g, 0.21 mol)および4−メトキシフェノール(1.21 g, 9.8 mmol)を入れ、100℃で4時間反応させた。
【0138】
冷却後、トルエン(350 ml)で洗い込み、0.5N-NaOH (7×350 ml)、飽和食塩水 (2×350 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物114.7 gを得た。
【0139】
実施例1と同様に減圧蒸留による精製を行い、上記式(22)および(23)で示される無色透明液体 (収率53%, 純度95%、異性体比(22):(23)=78:22)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーにより0.3%残留していた。
【0140】
比較例2
【0141】
【化44】

【0142】
上記式(40)で示される化合物とメタクリル酸およびメタクリル酸ナトリウムから実施例2と同じ化合物を合成した。この合成は具体的に次のようにして行った。
【0143】
塩化カルシウム管、還流冷却器を備えたナスフラスコにメタクリル酸(8.58 g, 0.1 mol)、上記式(40)で示されるケイ素化合物(6.57 g, 12.5 mmol)、メタクリル酸ナトリウム(0.81 g, 7.5 mmol)および4−メトキシフェノール(20.7 mg, 0.17 mmol)を入れ、100℃で4時間反応させた。
【0144】
冷却後、ヘキサン(7 ml)で洗い込み、1N-NaOH (3×10 ml)、2.5重量%食塩水 (3×7 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物7.85 gを得た。
【0145】
実施例2と同様にシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後、上記式(26)および(27)で示される無色透明液体 (収率45%, 純度90%、異性体比(26):(27)=75:25)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーにより0.5%残留していた。
【0146】
比較例3
【0147】
【化45】

【0148】
上記式(41)で示される化合物とメタクリル酸およびメタクリル酸ナトリウムから実施例3と同じ化合物を合成した。この合成は具体的に次のようにして行った。
【0149】
塩化カルシウム管、還流冷却器を備えたナスフラスコにメタクリル酸(4.25 g, 49 mmol)、上記式(41)で示されるケイ素化合物(4.50 g, 12.3 mmol)、メタクリル酸ナトリウム(0.40 g, 3.7 mmol)および4−メトキシフェノール(13.3 mg, 0.12 mmol)を入れ、100℃で8時間攪拌した。
【0150】
冷却後、ジエチルエーテル(40 ml)で洗い込み、1N-NaOH (5×20 ml)、飽和食塩水 (2×20 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物5.06 gを得た。
【0151】
実施例3と同様にシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後、上記式(30)および(31)で示される無色透明液体 (収率39%, 純度95%、異性体比(30):(31)=78:22)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーにより0.6%残留していた。
【0152】
比較例4
【0153】
【化46】

【0154】
上記式(42)で示される化合物とメタクリル酸およびメタクリル酸ナトリウムから実施例4と同じ化合物を合成した。この合成は具体的に次のようにして行った。
【0155】
塩化カルシウム管、還流冷却器を備えたナスフラスコにメタクリル酸(3.89 g, 45 mmol)、上記式(42)で示されるケイ素化合物(5.12 g, 11.3 mmol)、メタクリル酸ナトリウム(0.37 g, 3.4 mmol)および4−メトキシフェノール(14.0 mg, 0.11 mmol)を入れ、100℃で9時間反応させた。
【0156】
冷却後、ジエチルエーテル(20 ml)で洗い込み、1N-NaOH (7×10 ml)、飽和食塩水 (2×10 ml)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒留去、真空乾燥を行い、粗生成物5.66 gを得た。
【0157】
実施例3と同様にシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製後、上記式(34)および(35)で示される無色透明液体 (収率43%, 純度98%、異性体比(34):(35)=76:24)を得た。なお、化合物の純度および異性体比はガスクロマトグラフィーにより決定した。また対応するエポキシ基含有化合物はガスクロマトグラフィーにより0.4%残留していた。
【0158】
比較例5
実施例1で用いた塩基をピリジン(pKa=5.2)として、反応温度を120℃、反応時間を5時間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。ガスクロマトグラフィーで反応追跡をした結果、反応は進行していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の製造方法によって、エポキシ基含有不純物を含まないヒドロキシル基含有シリコーンモノマーの製造方法が提供可能となる。特に本方法は、使用した塩基を回収・再利用することができるため、安価で大量にモノマーを提供することが可能となる。本方法で得られたヒドロキシル基含有シリコーンモノマーは、高い酸素透過性、親水性および耐加水分解性に優れることから、眼用レンズ用モノマーとして好ましく用いられ、コンタクトレンズ用モノマーして特に好ましく用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)および/または(2)で示される化合物に下記式(3)で示されるカルボン酸を水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させることを含む、下記式(4)および/または(5)で示されるシリコーンモノマーの製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

(式(1)〜(5)中、Rは式(6)で示される置換基を表し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれる。Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表す。nは1〜12の整数を表す。式(6)中、A1 〜A11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる。a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表し、dは0〜200の整数を表す。ただしa=b=c=d=0の場合を除く。)
【請求項2】
下記式(7)および/または(8)で示される化合物に下記式(3)で示されるカルボン酸を水中のpKa値が5.5以上である塩基存在下で反応させることを含む、下記式(7m)および/または(8m)で示されるシリコーンモノマー中間体の製造方法。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

(式(3)、(7)、(8)、(7m)および(8m)中、Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表し、R3は −CH=CH で表される基を表す。mは2〜12の整数を表す。)
【請求項3】
請求項2に記載の式(7m)および/または(8m)で示されるシリコーンモノマー中間体と式(9)で示される化合物を反応させることを特徴とする下記式(4’)および/または(5’)で示されるシリコーンモノマーの製造方法。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

(式(4')、(5')および(9)中、Rは式(6)で示される置換基を表す。Rは重合性基を有する炭素数1〜20の置換基を表し、R3は−CH=CH で表される基を表す。mは2〜12の整数を表す。式(6)中、A1 〜A11はそれぞれが互いに独立に水素、置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基から選ばれる。a、b、cはそれぞれが互いに独立に0〜20の整数を表し、dは0〜200の整数を表す。ただしa=b=c=d=0の場合を除く。)
【請求項4】
前記塩基が第3級アルキルアミン類及び/又はアミジン類である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
前記塩基が1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7及び/又は1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記R1が下記式(10)又は(11)で表される基である請求項1、3、4、および5のいずれか1項に記載の製造方法。
【化16】

(式(10)中、B1は炭素数1〜7の置換されていてもよいアルキル基、炭素数2〜7の置換されていてもよいアルケニル基および置換されていてもよいフェニル基から選ばれ、eは1〜12の整数である。)
【化17】

(式(11)中に示されるR、R、R、Rは各々独立に水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜7のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜7のアルケニル基および置換されていてもよいフェニル基から選ばれ、fは1〜3の整数である)。
【請求項7】
前記R1が前記式(10)で表される基である請求項6記載の製造方法。

【公開番号】特開2008−162898(P2008−162898A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−350929(P2006−350929)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(500092561)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (153)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【Fターム(参考)】