説明

ヒドロホルミル化法用のホスホナイト含有触媒

1種又はそれ以上のホスホナイト配位子、ロジウム及びヒドロホルミル化溶媒を含んでなる、種々のノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を有するアルデヒドを製造するための触媒溶液を開示する。また、オレフィン、水素及び一酸化炭素を、1種又はそれ以上のホスホナイト配位子、ロジウム及びヒドロホルミル化溶媒と接触させることを含んでなる、種々のノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を有するアルデヒドの製造方法も開示する。ホスホナイトを基材とする触媒溶液は、一酸化炭素分圧、温度及び配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)を含む1つ又はそれ以上のプロセス変数を変動させることによって、ノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を操作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年12月21日に出願された米国仮出願番号第60/871158号明細書の利益を請求する2007年2月2日に出願された米国非仮出願番号第11/670628号明細書の一部継続出願であり、その出願の利益を請求する。この出願の開示を引用することによってその全体を本明細書中に組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、(1)特定の立体バルク特性を有する少なくとも1種のホスホナイト配位子;(2)ロジウム;及び(3)ヒドロホルミル化溶媒を含んでなる新規触媒溶液に関する。本発明は、また、アルデヒドを製造するためのオレフィンのヒドロホルミル化用新規触媒溶液の使用に関する。この新規触媒溶液は、プロセス条件の小さい変化によって種々のノルマルアルデヒド対イソアルデヒド比を生じさせることができる。
【背景技術】
【0003】
オキソ反応としても知られるヒドロホルミル化反応は、オレフィン1モルと水素及び一酸化炭素各1モルとの反応によってアルデヒドを製造する商業的方法に広範に用いられている。この反応に最も広範な使用は、プロピレンからのノルマル−ブチルアルデヒド及びイソ−ブチルアルデヒドの製造である。ノルマル−アルデヒド生成物の量対イソ−アルデヒド生成物の量の比は典型的には、ノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド(N:I)比又は直鎖アルデヒド対分岐鎖アルデヒド(N:B)比と称する。プロピレンの場合は、プロピレンから得られたノルマル−ブチルアルデヒド及びイソ−ブチルアルデヒドは次に、例えばn−ブタノール、2−エチル−ヘキサノール、n−酪酸、イソブタノール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールのモノイソ酪酸エステル及びジイソ酪酸エステルのような商業的に有用な多くの化学製品に転化される。1−オクテン、1−ヘキセン及び1−デセンのような高級α−オレフィンのヒドロホルミル化は、洗剤アルコール及び可塑剤アルコールの製造に有用な供給原料であるアルデヒド製品を生成する。アリルアルコールのような置換オレフィンのヒドロホルミル化は、1,4−ブタンジオールのような商業的に有用な他の製品の製造に有用である。ノルマル−アルデヒド及びイソ−アルデヒドから製造される下流製品に対する需要は、周期的な市場ニーズ、長期的な市場動向並びに在庫管理のような短期的なプロセス動的特性の結果として変動するので、通常のプロセス操作の間にノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を変動させる必要性があることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なるヒドロホルミル化触媒系は異なる公称ノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を生じるが、触媒系を変えずに、通常のプロセス操作の間に容易に変化するプロセス条件のごくわずかな変化を用いることによって、通常のプロセス操作の間にノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を変動させることが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、プロセス条件の小さい変化がノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比の著しい変化を引き起こす、特定の立体バルク特性を有するホスホナイト配位子を含む高活性ロジウム触媒溶液が、アルデヒドの製造のためのヒドロホルミル化反応において有用であることを発見した。従って、本発明の一実施態様は、
i.一般式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜20のヒドロカルビル基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素及びヒドロカルビル基から選ばれ;
2、R3、R4及びR5は合計4〜40個の炭素原子を含み;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、(a)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、(b)硫黄、酸素、窒素若しくは珪素、又は(c)式(II):
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数8以下のアルキル基から選ばれる)
を有する基を含む連結基として存在する]
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなる触媒溶液である。本発明者らは、これらの特定のATOT値を有する置換基を有するホスホナイト配位子が種々のノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比を可能にすることを見出した。この実施態様は、エチレン性不飽和化合物のヒドロホルミル化のようなカルボニル化方法を実施できる活性触媒の溶液を含む。
【0010】
本発明の別の実施態様は、前記触媒溶液を利用するヒドロホルミル化法に関する。従って、本発明の方法は、オレフィン、水素及び一酸化炭素を、
i.一般式(I):
【0011】
【化3】

【0012】
[式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜20のヒドロカルビル基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素及びヒドロカルビル基から選ばれ;
2、R3、R4及びR5は合計4〜40個の炭素原子を含み;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、(a)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、(b)硫黄、酸素、窒素若しくは珪素、又は(c)式(II):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数8以下のアルキル基から選ばれる)
を有する基を含む連結基として存在する]
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法を含む。
【0015】
本発明の別の実施態様は、生成されるノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントが温度、一酸化炭素分圧及びホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比から選ばれた1つ又はそれ以上のプロセスパラメーターの変化に応じて変動する、プロピレンのヒドロホルミル化法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、プロセス条件、例えば配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、プロセス温度並びに一酸化炭素及び水素の分圧の小さい変化がノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比の著しい変化を生じる触媒溶液及びアルデヒドの製造方法を提供する。
【0017】
従って、本発明の一態様は、
i.一般式(I):
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜20のヒドロカルビル基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素及びヒドロカルビル基から選ばれ;
2、R3、R4及びR5は合計4〜40個の炭素原子を含み;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、(a)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、(b)硫黄、酸素、窒素若しくは珪素、又は(c)式(II):
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数8以下のアルキル基から選ばれる)
を有する基を含む連結基として存在する]
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなる触媒溶液である。
【0022】
本明細書中で使用する用語「溶液」は、燐化合物及びロジウム成分がヒドロホルミル化溶媒中に実質的に溶解している(即ち、燐化合物及びロジウムの95重量%又はそれ以上が溶解している)ことを意味するものとする。本明細書中で使用する用語「ホスホナイト配位子」は、燐原子が2個の酸素原子及び1個の炭素原子に結合し且つ各酸素原子がまた別の炭素原子に結合している三価燐化合物を意味するものとする。
【0023】
本明細書中で使用する用語「置換基」は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9によって表される原子又は原子団並びにXによって表される化学結合、原子又は原子団を意味するものとする。
【0024】
特に断らない限り、本明細書及び特許請求の範囲中で用いる、成分の量、分子量のような性質、反応条件などを表す全ての数値は、全ての場合に用語「約」によって修飾されるものと理解すべきである。従って、そうでないことが示されない限り、以下の明細書及び添付した特許請求の範囲中に記載した数値パラメーターは、本発明が得ようとする目的の性質に応じて変動し得る近似値である。最低限でも、各数値パラメーターは、報告した有効数字の数を考慮に入れ且つ通常の丸めを適用することによって解釈すべきである。更に、この開示及び特許請求の範囲中に記載した範囲は、端点だけでなく、全範囲を具体的に含むものとする。例えば0〜10と記載した範囲は、0と10の間の全ての整数、例えば1、2、3、4など、0と10の間の全ての分数、例えば1.5、2.3、4.57、6.1113など、並びに端点0及び10を開示するものとする。また、化学置換基に関する範囲、例えば「C1〜C5炭化水素」は、C1及びC5炭化水素だけでなく、C2、C3及びC4炭化水素を具体的に含み且つ開示するものとする。
【0025】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターが近似値であるにもかかわらず、具体例中に示した数値は可能な限り正確に報告してある。しかし、全ての数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる若干の誤差を本質的に含むものである。
【0026】
本発明の配位子は、式(I):
【0027】
【化7】

【0028】
を有するトリオルガノホスホナイト化合物である。
【0029】
置換基R1、R2、R3、R4及びR5は同一であっても異なってもよい。R1、R2及びR3はアルキル、アラルキル、シクロアルキル及び炭素数2〜20、典型的には炭素数2〜15のアリール基から個別に選ぶことができる。R4及びR5は水素、アルキル、シクロアルキル及びアリール基から個別に選ぶことができる。R2、R3、R4及びR5の総炭素数は約4〜約40、典型的には、約4〜約20である。R1、R2、R3、R4及びR5が個別に表すことができるアルキル基の例としては、エチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル及びそれらの種々の異性体が挙げられる。R4及びR5は個別にメチル基を表すこともできる。アルキル基は、例えばアルコキシ、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボン酸塩、アルコキシカルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸、スルホン酸塩などのような2個以下の置換基で置換することができる。シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルは、R1、R2、R3、R4及びR5が表すことができるシクロアルキル基の例である。シクロアルキル基は更には、可能な置換アルキル基に関して記載した置換基のいずれか又はアルキルで置換することができる。R1、R2、R3、R4及びR5がまた個別に表すことができるアルキル及びシクロアルキル基の非限定的例は、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。
【0030】
本発明者らは、ATOTが約6.2〜約11.5kcal/molの範囲内であることを特徴とする立体バルクを有する配位子が、配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比、温度並びに一酸化炭素及び水素の分圧のようなプロセス変数の小さい変化に応じてある範囲のノルマル−アルデヒド対イソ−アルデヒド比をもたらすことを見出した。本明細書中で使用する用語「立体バルク」は、置換基の空間要件を意味するものとする。シクロヘキシル分子の置換基の相対的A値はホスホナイト配位子の相対的立体バルクを特徴付けるのに都合よく使用できる。A値はシクロヘキシル分子に結合された種々の置換基がエクアトリアル位からアキシアル位に転じるのに必要な自由エネルギーを表す。A値は配座エネルギーと称することもある。シクロヘキシル分子の種々の置換基についてのA値が知られている。A値の用語の解説は多くの有機化学の教科書に記載されている。例えばMichael B.Smith and Jerry March,March’s Advance Organic Chemistry 5th Edition,Wiley Interscience;New York;2001;pp.173〜74を参照。
【0031】
A値のデータに見られる重要な傾向は、立体効果が、主に、関連する置換基中の1番目及び2番目の原子によって決定されることである。3番目、4番目及び他のより隔たった位置の、より遠くに隔たった原子は、A値全体に与える影響が次第に小さくなる。例えばMarchの文献から、イソプロピル置換基は、シクロヘキシル置換基と同じ2.15のA値を有する。連結接合(connective bond)から2炭素原子より多く隔てられたシクロヘキシル置換基中の原子は、A値全体に影響を及ぼさない。シクロヘキシル基の環構造は連結点から3番目及び4番目の原子位置にある炭素原子に限界空間運動を強いるので、シクロヘキシル置換基は最適な対照とは言えない。
【0032】
連結点からの距離が増すにつれて減少する立体的影響を示す別の例は、Arnold Gordon and Richard Ford(Wiley Interscience,1972)による著書“The Chemist's Companion”の157頁からのA値のリストに見られる。この場合には、ネオペンチル置換基−CH2−C(CH33をイソプロピル置換基−CH−(CH32及びエチル置換基−CH2−CH3と比較できる。ネオペンチル置換基のA値は2.0となっており、これはイソプロピルの2.15より小さいが、エチル置換基の1.75の値よりもごくわずかに大きい。ネオペンチル置換基のメチル基は、連結点から3番目の原子の距離にあり、それらの3つが存在するという事実にもかかわらず、小さい立体的影響しか与えない。エチル置換基は、連結点から3番目の原子の距離には水素原子のみを有し、ネオペンチル置換基よりもごくわずかに小さいA値を示す。従って、当業者は、連結点から3番目の原子位置において、メチル基及び水素は立体的影響においてほぼ等しいと判断した。
【0033】
当業者ならば、エチル基がプロピル基又はブチル、デシル若しくはヘキサデシルのような他の全ての直鎖アルキル基とほぼ同じA値を有するであろうことがわかる。これは、置換基の立体バルクが最初の3つの原子によってのみ、主には最初の2つの原子によって決定され且つ置換基上の3原子より更に外側は全てA値全体に寄与しないためである。従って、当業者は、公開された文献中に多くの置換基のA値を見出すことができ、必要ならば、配位子に連結された最初の2つの原子に基づいて置換基R1、R2又はR3のA値を評価することができる。
【0034】
更なる例として、tert−ブチル基は4.9kcal/molのA値を有するものと記載されている。前記記述に従って、当業者は、tert−ペンチル(2−メチル−2−ブチル)基を含む全ての第三アルキル基がtert−ブチル基と同様な立体バルク特性を有すると予測するであろう。tert−ブチル基と立体寸法が同様な他の基としては、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−エチル−1−シクロペンチル及び2−エチル−3−ペンチル基が挙げられる。当業者ならば、tert−ブチル基のA値、4.9kcal/molが、全ての第三アルキル基のA値の適正な推定値であることがわかるであろう。
【0035】
フェニル基は、2.7kcal/molのA値を有する。当業者ならば、2−エチルフェニル、3−メチルフェニル又は4−ブチルフェニルのような置換フェニル基は、これらのアルキル置換基は全てそれらが置き換わった水素原子よりも大きいので、2.7kcal/mol以上のA値を有することがわかるであろう。当業者はまた、フェニル環上の置換基が問題の中心(即ち燐原子)から2原子又はそれ以上空間的に隔たった場合には、置換基の効果を無視できると予想するであろう。簡略化のため且つ便宜上、当業者は、置換フェニル基のA値を2.7kcal/mol以上と推定できる。
【0036】
同様な解説を、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラセニル及び他の縮合芳香族基のような縮合芳香族環について行うことができる。当業者ならば、これらの基が、非置換フェニル基のA値、2.7kcal/mol以上のA値を有すると予想されることがわかるであろう。縮合芳香族環の導入は、新しい環はそれらが置き換わる水素原子よりも大きいので、置換基の大きさを明らかに増大する。しかし、前述のように、中心(即ち燐原子)から2原子又はそれ以上隔たった置換基の立体効果は、新しい基と問題の中心とのの空間距離によって無視される。
【0037】
ホスホナイト配位子の立体バルクはR1、R2及びR3の総A値によって特徴付けることができる。本発明に関して具体的に言うと、ホスホナイト配位子の立体バルクは、ATOTを特徴とし、ATOTは、
TOT=A1+A2+A3
[式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3に関するA値を表す]
と計算される。例えば配位子C:
【0038】
【化8】

【0039】
の立体バルクはATOT=7.0kcal/molを特徴とする。この例において、R1はA1=2.7kcal/molのフェニル基である。R2及びR3は、それぞれ、A2=A3=2.15kcal/molのイソプロピル基である。従って、ATOT=2.7+2.15+2.15=7.0kcal/molである。同様に、配位子D:
【0040】
【化9】

【0041】
の立体バルクはATOT=8.1kcal/molを特徴とする。この例において、R1、R2及びR3は、それぞれ、A1=A2=A3=2.7kcal/molのフェニル基である。従って、ATOT=2.7+2.7+2.7=8.1kcal/molである。
【0042】
構造(I)のX基は任意の架橋基を表す。X基が存在しない場合には、芳香環のそれぞれに1つずつ、酸素原子に対して2個の追加のオルト位が置換基に使用可能である。この場合には、芳香環のそれぞれのオルト位の2つの基のうち大きい方のA値を、ATOTの決定のために使用する。
【0043】
本発明の触媒溶液のホスホナイト配位子は、典型的には、約6.2〜約11.5kcal/molのATOTを有する。本発明の触媒溶液のホスホナイト配位子に関するATOT範囲の更なる例は約6.2〜約11.0kcal/mol、約6.2〜約10.5kcal/mol、約6.2〜約10.0kcal/mol、約6.2〜約9.5kcal/mol、約6.2〜約9.0kcal/mol、約6.2〜約8.5kcal/mol、約6.2〜約8.1kcal/mol、約7.0〜約11.5kcal/mol、約7.0〜約11.0kcal/mol、約7.0〜約10.5kcal/mol、約7.0〜約10.0kcal/mol、約7.0〜約9.5kcal/mol、約7.0〜約9.0kcal/mol、約7.0〜約8.5kcal/mol又は約7.0〜約8.1kcal/molの構造(I)のATOT値である。
【0044】
約6.2〜約11.5kcal/molのATOTを有するホスホナイト配位子の例としては、R1がフェニル基、R2及びR3基がそれぞれ個別にエチル、イソプロピル又はフェニル基であり、且つXが、任意的に、メチレン基として存在するものが挙げられる。更なる例は式(B)、(C)、(D)及び(E):
【0045】
【化10】

【0046】
によって示される。B、C、D及びEのA値は、それぞれ、6.2、7.0、8.1及び8.1kcal/molである。
【0047】
Xは任意選択の架橋基を表す。本発明のホスホナイト配位子は、Xが、各酸素原子と各芳香環との間の結合に対してオルト位の芳香族炭素原子間の結合又は架橋基を表す環状化合物であることができる。例えばXは各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合であることができる。或いは、Xは各芳香族基の環炭素原子間の単一原子、例えば硫黄、酸素、窒素又は珪素を含むことができる。Xは、また、式(III):
【0048】
【化11】

【0049】
[式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数4以下又は8以下のアルキル基から選ばれる]
を有する基であることができる。Xが窒素、珪素又は硫黄のような非炭素原子である場合には、芳香環に接続していない結合部位は水素、アルキル、アリール、アロイル又はアルカノイル基(アルキル、アリール、アロイル及びアルカノイル基は1〜10個の炭素原子を含むことができる)で置換することができる。
【0050】
置換基R1、R2、R3、R4及びR5は、また個別に、例えばフェニル、ナフチル、アントラセニル及びそれらの置換誘導体のようなアリール基を表すことができる。例えばR1、R2、R3、R4及びR5は、個別に、式(III)〜(V)を有する基を表すことができる。
【0051】
【化12】

【0052】
前記式において、R8及びR9は、独立して、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボン酸塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸及びスルホン酸塩(前記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル及びアルカノイルオキシ基のアルキル部分は炭素数が8以下である)から選ばれる。mが0〜5を表すこと及びnが0〜7を表すことは可能であるが、m及びnの各値は通常は2以下であろう。R8及びR9はまた、低級アルキル基、即ち炭素数4以下の直鎖及び分岐鎖アルキル基を表すことができ、m及びnは、それぞれ、0、1又は2を表すことができる。
【0053】
式(I)のホスホナイト配位子は公表された方法又はこれに類似した技術によって製造できる。典型例は、Louis D.Quin,A Guide to Organophosphorus Chemisty,Wiley-Interscience;2000;New York;p.62によって記載された方法に見られる。一般に、ホスホナイトは、ホスファイトの製造方法によって同様に製造できる。例えばP.G.Pringle,et al.,Chem.Comm,2000,961-62によって報告された合成経路が有効である。
【0054】
活性触媒のロジウム源として使用できるロジウム化合物にはカルボン酸のロジウム(II)又はロジウム(III)塩があり、その例としては、四酢酸二ロジウム二水和物、酢酸ロジウム(II)、イソ酪酸ロジウム(II)、2−エチルヘキサン酸ロジウム(II)、安息香酸ロジウム(II)及びオクタン酸ロジウム(II)が挙げられる。また、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16及びロジウム(I)アセチルアセトネートジカルボニルのようなロジウムカルボニル種も適当なロジウムの供給材料であることができる。更に、供給される錯体のホスフィン部分が本発明のホスホナイト配位子で容易に置き換えられるならば、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムカルボニル水素化物のようなロジウムオルガノホスフィン錯体も使用できる。あまり望ましくないロジウム源は、塩化物、臭化物、硝酸鉛、硫酸塩、燐酸塩などのような強鉱酸のロジウム塩である。
【0055】
ヒドロホルミル化溶媒又は反応混合物中のロジウム及び配位子の濃度は、本発明の操作の成功に重要ではない。反応混合物又は溶液中のロジウムの絶対濃度は、1mg/リットルから5000mg/リットルまで又はそれ以上であることができる。典型的には、反応溶液中のロジウム濃度は約20〜約300mg/リットルであることができる。この範囲より低いロジウム濃度は、一般に、ほとんどのオレフィン反応体に関して許容され得る反応速度を生じず、且つ/又は触媒安定性を阻害する程高い反応器操作温度を必要とする。これより高いロジウム濃度は、ロジウムのコストが高いために費用がかかる可能性がある。
【0056】
ホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比は、広範囲にわたって変動でき、例えばホスホナイト(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比は約1:1〜約200:1であることができる。ホスホナイト(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比の範囲の他の例は、約1:1〜約100:1、約1:1〜約70:1、約1:1〜約60:1、及び約30:1〜約60:1である。
【0057】
ヒドロホルミル化触媒溶液は、プロセスが実施されている圧力において液体である少なくとも1種の溶媒を含む。溶媒の非限定的例としては、種々のアルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、炭素環式芳香族化合物、アルコール、エステル、ケトン、アセタール、エーテル及び水が挙げられる。溶媒のより具体的な例としては、アルカン及びシクロアルカン、例えばドデカン、デカリン、オクタン、イソオクタン混合物、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカン、メチルシクロヘキサン;芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、キシレン異性体、テトラリン、クメン;アルキル置換芳香族化合物、例えばジイソプロピルベンゼン、トリイソプロピルベンゼン及びtert−ブチルベンゼンの異性体;アルケン及びシクロアルケン、例えば1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン、オクテン−1、オクテン−2、4−ビニルシクロヘキセン、シクロヘキセン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1-ペンテン;粗製炭化水素混合物、例えばナフサ、鉱油及びケロシン;高沸点エーテル、例えばフタル酸ジオクチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、及び2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが挙げられる。ヒドロホルミル化法のアルデヒド含有生成物も使用できる。溶媒は、ヒドロホルミル化反応の方法及びアルデヒド生成物の単離に必要なその後の工程、例えば蒸留の間に必然的に形成されるより高沸点の副生成物を含むことができる。触媒及びオレフィン基材を少なくとも部分溶解させる任意の溶媒を使用できる。揮発性アルデヒド、例えばブチルアルデヒドの製造のための溶媒例は、充分に高い沸点で大部分がガススパージ反応器中に残ることができるものである。あまり揮発性でない及び不揮発性のアルデヒド生成物の製造にも使用できる溶媒及び溶媒組合せの例としては、1−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルホルムアミド、ペルフルオロ化溶媒、例えばペルフルオロケロセン、スルホラン、水及び高沸点炭化水素液体、並びにこれらの溶媒の組合せが挙げられる。本発明者らは、一般に非ヒドロキシル化合物、具体的には炭化水素をヒドロホルミル化溶媒として使用できること並びにそれらの使用がホスホナイト配位子の分解を減少させることを見出した。
【0058】
本発明の触媒溶液の製造には、特別な技術も独特な技術も必要ではないが、高活性の触媒を得るためには、ロジウム及びホスホナイト配位子成分の全操作を不活性雰囲気下、例えば窒素、アルゴンなどの下で実施するのが望ましい場合がある。所望の量の適当なロジウム化合物及び配位子を、反応器中の適当な溶媒中に装入する。種々の触媒成分又は反応体を反応器に装入する順序は重要ではない。
【0059】
本発明の別の態様は、
i.一般式(I):
【0060】
【化13】

【0061】
{式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜8のアルキル基、ベンジル及び式(III)
【0062】
【化14】

【0063】
[式中、R8は炭素数4以下のアルキル基から選ばれ、mは0、1又は2である]
を有するアリール基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル及び式(III)を有するアリール基から選ばれ;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、式(II):
【0064】
【化15】

【0065】
[式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数4以下のアルキル基から選ばれる]
を有する連結基として存在する}
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなる触媒溶液である。
【0066】
本発明の別の態様は、R1がフェニル基であり;R2及びR3が、独立して、エチル、イソプロピル及びフェニル基から選ばれ;R4及びR5が、独立して、水素及びメチル基から選ばれ;且つXが、任意的に、メチレン基として存在する前記の触媒溶液である。
【0067】
これらの実施態様は、任意の組合せの、前に開示された置換基、A値、ロジウム、ホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比及びヒドロホルミル化溶媒並びにホスホナイト配位子及び触媒溶液の製造方法の種々の態様を含むと理解される。
【0068】
本発明の別の態様は、
i.式(B)、(C)、(D)及び(E):
【0069】
【化16】

【0070】
から選ばれた1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
から本質的になる触媒溶液である。
【0071】
本明細書中で使用する表現「〜から本質的になる(consisting essentially of)」は、構造(B)、(C)、(D)及び(E)の少なくとも1種のホスホナイト配位子、ロジウム及びヒドロホルミル化溶媒を含む触媒溶液を包含するものとする。この実施態様において、触媒溶液は、この表現が言及する触媒溶液の本質的な性質を実質的に変える要素を含まないと解釈する。触媒溶液は、溶液の触媒特性を変えない他の成分を含むことができる。例えば水素及び一酸化炭素のような、液体中に溶解された化学物質は、触媒溶液の本質的な性質を実質的には変えないであろう。また、触媒溶液は多相液体であることができる。例えば溶液の触媒特性を変える可能性があるパラジウムの添加は、この実施態様から除外するものとする。
【0072】
本発明の別の態様は、オレフィン、水素及び一酸化炭素を、
i.一般式(I):
【0073】
【化17】

【0074】
[式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜20のヒドロカルビル基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素及びヒドロカルビル基から選ばれ;
2、R3、R4及びR5は合計4〜40個の炭素原子を含み;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、(a)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、(b)硫黄、酸素、窒素若しくは珪素、又は(c)式(II):
【0075】
【化18】

【0076】
(式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数8以下のアルキル基から選ばれる)
を有する基を含む連結基として存在する]
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法である。
【0077】
この実施態様は、任意の組合せの、前に開示された置換基、A値、ロジウム、ホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比及びヒドロホルミル化溶媒並びにホスホナイト配位子及び触媒溶液の製造方法の種々の態様を含むと理解される。
【0078】
オレフィン供給材料はエチレンであることができるが、典型的には、直鎖及び分岐鎖異性体生成物を両方形成できるオレフィンを含む。オレフィンの例としては、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、スチレン、非共役ジエン、例えば1,5−ヘキサジエン並びにこれらのオレフィンのブレンドが挙げられるが、これらに限定するものではない。官能基がヒドロホルミル化反応を妨げないならば、オレフィンはその官能基で置換することもできる。置換オレフィンの代表例としては、アクリル酸メチル又はオレイン酸メチルのような不飽和カルボン酸エステル、アリルアルコール及び1−ヒドロキシ−2,7−オクタジエンのようなアルコール、エチルビニルエーテルのようなエーテル並びにアクリロニトリルのようなニトリルが挙げられる。
【0079】
オレフィンの混合物も本発明の実施において使用できる。例えば混合物は、n−オクテン類の混合物のような同一炭素数のものであることもできるし、或いはいくつかの炭素数の範囲にわたるオレフィンを含むこともできる。
【0080】
更に別の例において、オレフィン反応体は、炭素数3〜10のモノ−α−オレフィンを含む。ここで使用する用語「モノ−α−オレフィン」は、第1位又はα位に位置する1個の二重結合を有することよって区別される化学式CX2Xを有する直鎖アルケンを意味すると解釈する。モノ−α−オレフィンはまた、直鎖αオレフィン(LAO)又はノルマルαオレフィン(NAO)と称することができる。モノ−α−オレフィンの非限定的例はプロピレン、ブチレン、ヘキセンなどである。
【0081】
反応混合物中に存在するオレフィンの量もまた重要ではない。例えば1−オクテンのような比較的高沸点のオレフィンはオレフィン反応体及びプロセス溶媒の両方の役割を果たすことができる。プロピレンのような気体オレフィン供給原料のヒドロホルミル化の別の例において、反応器の蒸気空間におけるオレフィンの分圧は典型的には約0.07〜35バール(絶対)の範囲である。実際には、反応速度には、反応器中のオレフィンの高濃度が好都合である。プロピレンのヒドロホルミル化において、プロピレンの分圧は1.4バール超、例えば約1.4〜10バール(絶対)であることができる。
【0082】
本発明によれば、プロセスは約20〜約200℃、約50〜約135℃又は約75〜約125℃、又は約80〜約120℃の範囲の反応温度で実施できる。これより高い反応器温度は、触媒分解速度の増加のために有利には働かず、これより低い反応器温度は比較的遅い反応速度をもたらす。全反応圧は約0.3バール(絶対)から約70バール(絶対)まで(約4〜約1000psia)、約4〜約36バール(絶対)(約58〜約522psia)、又は約13.8〜約27.5バール(絶対)(約200〜約400psia)の範囲であることができる。
【0083】
反応器中の水素:一酸化炭素のモル比は同様に10:1から1:10までの範囲でかなり変動でき、水素及び一酸化炭素の絶対分圧の和は、0.3〜36バール(絶対)の範囲であることができる。供給材料中の水素及び一酸化炭素の分圧は、目的とする直鎖:分岐鎖異性体比に従って選ぶ。一般に、反応器中の水素の分圧は、約1.4〜約13.8バール(絶対)(約20〜約200psia)の範囲内に保持することができる。反応器中の一酸化炭素の分圧は、約1.4〜約13.8バール(絶対)(約20〜約200psia)又は約4〜約9バール(絶対)の範囲内に保持することができ、水素分圧とは独立して変動させることができる。水素対一酸化炭素のモル比は、水素及び一酸化炭素に関するこれらの分圧範囲内で広範に変動させることができる。水素対一酸化炭素の比及び供給ガス流(多くの場合、合成ガス又はシンガスと称する)中のそれぞれの分圧は、合成ガス流への水素又は一酸化炭素の添加によって容易に変化させることができる。本発明者らは、本明細書中に記載したホスホナイト配位子を用いれば、反応器中の水素及び一酸化炭素の分圧を変えることによって、直鎖生成物対分岐鎖生成物の比を広範に変動させることができることを見出した。
【0084】
本発明の別の態様は、
オレフィン、水素及び一酸化炭素を、
i.一般式(I):
【0085】
【化19】

【0086】
{式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜8のアルキル基、ベンジル及び式(III)
【0087】
【化20】

【0088】
[式中、R8は炭素数4以下のアルキル基から選ばれ、mは0、1又は2である]
を有するアリール基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル及び式(III)を有するアリール基から選ばれ;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、式(II):
【0089】
【化21】

【0090】
[式中、R6及びR7は、個別に、水素又は炭素数4以下のアルキル基から選ばれる]
を有する連結基として存在する}
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法である。
【0091】
この実施態様は、任意の組合せの、前に開示された置換基、A値、ロジウム、ホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、ヒドロホルミル化溶媒、ホスホナイト配位子及び触媒溶液の製造方法、オレフィン、温度、圧力、水素及び一酸化炭素の種々の態様を含むと理解される。
【0092】
本発明は、また、生成物がプロピレン供給材料からのノルマル−及びイソ−ブチルアルデヒドを含み且つ生成されるノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントが、温度、一酸化炭素分圧及びホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比から選ばれた1つ又はそれ以上のプロセスパラメーターの変化に応じて変動する前記方法を包含する。より具体的には、ノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントは、温度(約80〜120℃の範囲内で変動);一酸化炭素分圧(約4〜約9バール(絶対)の範囲内で変動);及びホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比(約30:1〜約60:1の範囲内で変動)から選ばれる1つ又はそれ以上のプロセスパラメーターの変化に応じて約1%(絶対)から約20%(絶対)まで変動できる。
【0093】
本明細書中で使用する用語「〜の範囲内で変動する」は、変化前のプロセスパラメータの値及び変化後のプロセスパラメーターの値の両方が指定範囲内にあることを意味すると解釈する。例えばノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントは90〜102℃の温度の変化に応じて変動できる。
【0094】
ノルマル−ブチルアルデヒド・絶対パーセントの変動は以下を意味する。温度1、一酸化炭素分圧1及びホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比1のプロセス条件において、ノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントがN1であり且つ温度2、一酸化炭素分圧2及びホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比2のプロセス条件において、ノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントがN2であるならば、ノルマル−ブチルアルデヒド・絶対パーセントの変動はN1−N2の絶対値である。例えば第1セットのプロセス条件においてノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントが60%(N1=60)であり且つ第2セットのプロセス条件においてノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントが70%(N1=70)であるならば、ノルマル−ブチルアルデヒド・絶対パーセントの変動はN1−N2の絶対値、10%である。
【0095】
この実施態様は、任意の組合せの、前に開示された置換基、A値、ロジウム、ホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、ヒドロホルミル化溶媒、ホスホナイト配位子及び触媒溶液の製造方法、オレフィン、温度、圧力、水素及び一酸化炭素の種々の態様を含むと理解される。
【0096】
本発明の別の態様は、
プロピレン、水素及び一酸化炭素を、
i.式(B)、(C)、(D)及び(E):
【0097】
【化22】

【0098】
から選ばれた1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるブチルアルデヒドの製造方法であって、前記溶液中のロジウムの濃度が約20〜約300mg/リットルであり;全圧が約4〜約36バール(絶対)であり;且つノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントが、温度(約80〜120℃の範囲内で変動);一酸化炭素分圧(約4〜約9バール(絶対)の範囲内で変動);及びホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比(約30:1〜約60:1の範囲内で変動)から選ばれる1つ又はそれ以上のプロセスパラメーターの変化に応じて約1%(絶対)から約20%(絶対)まで変動する方法である。
【0099】
この実施態様は、任意の組合せの、前に開示されたロジウム、ホスホナイト配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、ヒドロホルミル化溶媒、ホスホナイト配位子及び触媒溶液の製造方法、オレフィン、温度、圧力、水素及び一酸化炭素の種々の態様を含むと理解される。
【0100】
任意の公知のヒドロホルミル化反応器の設計及び形状を、本発明によって提供される方法の実施に使用できる。従って、本明細書中に記載した実施例中に開示されるガスパージ蒸気引取反応器の設計を使用できる。この運転モードにおいて、加圧下で高沸点有機溶媒中に溶解された触媒は反応ゾーンから出ていかず、アルデヒド生成物は未反応ガスによって塔頂から取り去られる。次いで、塔頂ガスは気液分離装置中で冷却されて、アルデヒド生成物が液化され、気体を反応器に再循還させることができる。液体生成物は常法によって分離及び精製のために大気圧まで低下させることができる。この方法もまた、オレフィン、水素及び一酸化炭素をオートクレーブ中で存在する触媒と接触させることによって回分法で実施できる。
【0101】
触媒及び供給原料を反応器中にポンプ注入し且つ生成物アルデヒドと共にオーバーフローされる反応器設計、即ち液体オーバーフロー反応器設計も適当である。例えばノニルアルデヒド類のような高沸点アルデヒド生成物を連続法で製造し、アルデヒド生成物を液体として触媒と共に反応器ゾーンから取り出すことができる。アルデヒド生成物は、蒸留又は抽出のような常法によって触媒から分離でき、次いで触媒は反応器に再循還することができる。アリルアルコールのヒドロホルミル化によって得られるヒドロキシブチルアルデヒド生成物のような水溶性アルデヒド生成物は、抽出技術によって触媒から分離できる。トリクルベッド反応器設計もこの方法に適当である。当業者には、他の反応器構成も本発明に関して使用できることが明白であろう。
【0102】
本発明のホスホナイト配位子は、第一触媒成分としてロジウムを用いる広範囲の触媒溶液中で既知のホスファイト及びホスフィン配位子と置き換えるか又はそれと組合せて使用できる。新規触媒溶液は、幅広い種類の遷移金属触媒法、例えばヒドロホルミル化、水素化、異性化、シアン化水素化、ヒドロシリル化、カルボニル化、酸化、アセトキシル化、エポキシ化、ヒドロアミノ化、ジヒドロキシル化、シクロプロパン化、テロメル化、炭素−水素結合活性化、オレフィンメタセシス、オレフィン二量化、オリゴマー化、オレフィン重合、オレフィン−一酸化炭素共重合、ブタジエン二量化及びオリゴマー化、ブタジエン重合並びに他の炭素−炭素結合系性反応、例えばHeck反応及びアレーンカップリング反応に使用できる。本発明によって提供される触媒溶液は、アルデヒドを製造するためのオレフィンのヒドロホルミル化に特に有用である。
【0103】
本発明の種々の実施態様を以下の実施例によって更に説明する。しかし、本発明はこのような具体例に限定するものではないことを理解すべきである。
【実施例】
【0104】
ホスホナイト配位子の合成
一連のホスホナイトを、トリエチルアミンの存在下におけるフェニルジクロロホスフィン又はアルキルジクロロホスフィンと対応する置換メチレンビスフェノール又は他のオルト置換フェノールとの反応によって合成した。合成の全てを窒素下で実施した。
【0105】
典型的な操作は以下の通りである:メチレンビスフェノール(20ミリモル)を混合溶媒(トルエン:シクロヘキサン2:1)中でトリエチルアミン(44ミリモル)と混合し、撹拌した。氷浴を適用して、反応温度を5℃未満に保持した。次いで、フェノルジクロロホスフィン又はアルキルジクロロホスフィン(20ミリモル)のトルエン(20〜40ml)中溶液を前記反応混合物にゆっくりと添加した。添加後、反応を5℃又はそれ以下で30分間継続させた。次に、温度を周囲温度に1時間上昇させた。反応を50℃に6〜10時間加熱し、その後に出発ビスフェノールの完全な消失がGC分析によって示された。副生成物が沈殿物として形成され、これを濾過によって除去した。ホスホナイト配位子を含む反応混合物を水(2×20ml)、0.5%KOH水溶液(一部の例で)で洗浄し、次いでブライン(2×20ml)で洗浄した。最終の水性洗浄後、水性相を有機相反応混合物から分離し、有機相反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空下で蒸留又は単純な蒸発によって除去して、ホスホナイト化合物を得た。全ての場合において、これらの化合物は白色固体又は透明液体であった。これらの化合物は全て、ジエチルエーテル、THF、トルエン、酢酸エチル、クロロホルムなどのような通常の有機溶媒に非常に溶解しやすかった。反応収率は通常は85%より高かった。各配位子を、再結晶(例えばトルエン:ヘプタン混合物中で)、蒸留又はカラムクロマトグラフィーによって精製した。これらの化合物の分光分析データ及び化学構造を以下に示す。
【0106】
配位子A:
【0107】
【化23】

【0108】
メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)フェニルホスホナイト,白色固体。31P NMR(CDCl3):162.14ppm(s)。1H NMR(CDCl3):2.2274(s,6H),2.2640(s,6H),3.3630(d,1H),4.4629(dd,1H),6.8496(s,2H),7.0310(s,2H),7.5814−7.5521(m,3H),8.0411−8.0018(m,2H)ppm。
【0109】
配位子B:
【0110】
【化24】

【0111】
メチレンビス(6−エチルフェニル)フェニルホスホナイト,透明液体。31P NMR(CDCl3):163.2891ppm(s)。1H NMR(CDCl3):1.2148(m,6H),2.6610(m,4H),3.4866(d,1H),4.5448(dd,1H),6.9865−7.0662(m,4H),7.1266−7.1669(m,1H),7.2273−7.2612(m,2H),7.5287−7.6005(m,3H),8.0021−8.0424(m,2H)ppm。
【0112】
配位子C:
【0113】
【化25】

【0114】
メチレンビス(6−イソ−プロピルフェニル)フェニルホスホナイト,粘稠液体,ゆっくり結晶化。31P NMR(CDCl3):163.8125ppm(s)。1H NMR(CDCl3):1.2057(t,12H),3.2705(h,4H),3.5105(d,1H),4.5325−4.5738(dd,1H),7.0337−7.0694(m,2H),7.1189−7.1775(m,3H),7.2242−7.2746(m,2H),7.5750−7.6089(m,3H),7.9871−8.0430(m,2H)ppm。
【0115】
配位子D:
【0116】
【化26】

【0117】
メチレンビス(6−フェニルフェニル)フェニルホスホナイト,白色結晶。31P NMR(CDCl3):168.7176ppm(s)。1H NMR(CDCl3):3.6500(d,1H),4.6176−4.6588(dd,1H),6.9164−6.9594(m,2H),7.1389−7.4970(m,19H)ppm。
【0118】
配位子E:
【0119】
【化27】

【0120】
O,O−ジ(2−フェニルフェニル)フェニルホスホナイト,白色結晶。31P NMR(CDCl3):159.6737ppm(s)。1H NMR(CDCl3):7.2567−7.3546(m,br.)。
【0121】
配位子F:
【0122】
【化28】

【0123】
メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)シクロヘキシルホスホナイト,白色結晶。31P NMR(CDCl3):188.7388ppm(s)。1H NMR(CDCl3):1.3684(m,22H),1.7082−1.8016(m,3H),1.9298−1.9655(m,3H),2.2733−2.3529(m,7H),3.2587(d,1H),4.2936(dd,1H),6.9697(s,2H),7.1108(s,2H)ppm。
【0124】
配位子G:
【0125】
【化29】

【0126】
メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)フェニルホスホナイト,白色結晶。31P NMR(CDCl3):163.22ppm(s)。1H NMR(CDCl3):1.2561(s,18H),1.3147(s,18H),3.4921(d,1H),4.5696(dd,1H),7.2265(d,2H),7.3653(d,2H),7.5562(m,3H),8.0517(m,2H)ppm。
【0127】
配位子H:
【0128】
【化30】

【0129】
メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)フェニルホスホナイト,白色結晶。31P NMR(CDCl3):163.8728ppm(s)。1H NMR(CDCl3):1.2330(s,18H),2.2972(s,6H),3.4141(d,1H),4.5007−4.5401(dd,1H),6.9951(d,2H),7.1631(d,2H),7.5385−7.5500(m,3H),8.0294−8.0688(m,2H)ppm。
【0130】
配位子J:
【0131】
【化31】

【0132】
メチレンビスビス(6−tert−ブチルフェニル)フェニルホスホナイト,白色結晶。31P NMR(CDCl3):163.9346ppm(s)。1H NMR(CDCl3):1.2475(s,18H),3.5302(d,1H),4.5720−4.6046(dd,1H),7.0374(m,2H),7.2032−7.3543(m,4H),7.5549(m,3H),8.0678(m,2H)ppm。
【0133】
プロピレンのヒドロホルミル化
ブチルアルデヒドを生成するためのプロピレンのヒドロホルミル化は、内径2.5cm及び長さ1.2mの垂直に配置されたステンレス鋼パイプからなる蒸気引取反応器中で実施した。反応器は、熱油装置(hot oil machine)に接続された外部ジャケット中に入れた。反応器は、気体反応体の入口のために、反応器の底部近くの側面下方に融着されたフィルターエレメントを有していた。反応器は、ヒドロホルミル化反応混合物の温度の正確な測定のために、反応器の中心に反応器の軸方向に配置されたサーモウェルを含んでいた。反応器の底部は、十字継手に接続された高圧管接続部(tubing connection)を有していた。十字継手に接続された接続部の1つは、オクテン−1又は補給溶媒のような非気体反応体の添加を可能にした。別の接続部は、反応器中の触媒レベルの測定に用いられる差圧(D/P)セルの高圧接続部に通じていた。底部接続部は、ランの最後に触媒溶液を排出させるのに用いた。
【0134】
蒸気引取運転モードでのプロピレンのヒドロホルミル化においては、触媒を含むヒドロホルミル化反応混合物又は溶液に、流入反応体のプロピレン、水素及び一酸化炭素並びに窒素のような任意の不活性供給材料を加圧下でスパージした。触媒溶液中にブチルアルデヒドが形成されたら、それと未反応反応体ガスを、反応器頂部からサイドポートによって蒸気として取り出した。取り出された蒸気は高圧分離器中で冷却し、そこでブチルアルデヒド生成物を未反応プロピレンの一部と共に凝縮させた。未凝縮気体を、圧力調整バルブによって大気圧まで低下させた。これらの気体は一連のドライアイストラップを通過し、そこで全ての他のアルデヒド生成物を収集した。高圧分離器からの生成物をトラップの生成物と合し、その次に秤量し、ブチルアルデヒド生成物の正味重量及びノルマル/イソ比に関して標準気液クロマトグラフィー(GLC)技術によって分析した。
【0135】
反応器への気体供給材料は、ツインシリンダー・マニホールド及び高圧レギュレーターによって反応器に供給した。水素はマスフローコントローラー、次いで市販のDEOXO(登録商標)(Engelhard Inc.から入手可能)触媒床を通って、全ての酸素混入物質が除去された。一酸化炭素は、鉄カルボニル除去床(米国特許第4,608,239号に開示)、125℃に加熱された同様なDEOXO(登録商標)床、次いでマスフローコントローラーを通った。窒素は、不活性ガスとして供給材料混合物に添加できた。窒素は、添加される場合には、水素DEOXO(登録商標)床より前に水素供給材料中に計量供給し、次いで混合した。プロピレンは、水素で加圧された供給タンクから反応器に供給し、液体質量流量計を用いて制御した。液体プロピレンの完全な気化を確実にするために、全ての気体及びプロピレンは予熱器に通してから、反応器に入れた。
【0136】
比較例1
この例は、典型的なヒドロホルミル化ラン及びプロピレンのヒドロホルミル化への配位子Fの使用を例証する。触媒溶液は、ロジウム7.5mg(0.075ミリモル,2−エチルヘキサン酸ロジウムとして);配位子F(メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)シクロヘキシルホスホナイト)1.02g(2.25ミリモル);ノルマルブチルアルデヒド20ml及びフタル酸ジオクチル190mlの装入材料を用いて窒素下で調製した。混合物を、均質溶液が得られるまで窒素下で撹拌した(必要ならば加熱した)。混合物を、前述のようにして反応器に装入し、反応器をシールした。反応器の圧力調整を17.9バールゲージ(260psig)に設定し、反応器上の外部オイルジャケットを115℃に加熱した。水素、一酸化炭素、窒素及びプロピレン蒸気を反応器基部のフリットを通して供給し、圧力を増大させた。水素及び一酸化炭素(H2/CO比は1:1となるように設定した)を6.8リットル/分の速度で反応器に供給し、窒素供給を1.0リットル/分に設定した。プロピレンを液体として計量供給し、気化させ、1.89リットル/分(212mg/時)の蒸気速度で供給した。外部オイルの温度は、115℃の内部反応器温度を保持するように変更した。ユニットを5時間運転し、1時間毎にサンプルを採取した。1時間毎のサンプルを、標準GC法を用いて前述のようにして分析した。最後の3つのサンプルを用いて、N/I比及び触媒活性を求めた。最後の3時間のブチルアルデヒド生産速度は、ブチルアルデヒド6.06kg/g(ロジウム)−時の触媒活性の場合は平均して45.5g/時であった。生成物のN/I比は1.56、即ちn−ブチルアルデヒド60.9%であった。プロセス条件、アルデヒド生成物のN/I比及び触媒活性を表Iに示す。
【0137】
比較例2〜9
ヒドロホルミル化実験を、種々の反応条件及び配位子を用いて比較例1のようにして実施した。これらの実験の結果を表Iに集計する。表Iは、各配位子のATOT、配位子の量(g)、配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、反応器温度(℃)、一酸化炭素分圧、ノルマル−ブチルアルデヒド対イソ−ブチルアルデヒドの比、ノルマル−ブチルアルデヒドの重量%、及び活性を示している。ランは全て、12.5バールゲージの全シンガス圧を用いて行った。ロジウム3.75mgを用いた比較例7を除いた全ての比較例はロジウム7.5mgを用いた。TEXANOL(登録商標)エステルアルコール(Eastman Chemical Companyから入手可能)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを用いた比較例9を除いて、反応は全て、ヒドロホルミル化溶媒としてフタル酸ジオクチルを用いて実施した。活性は、生成されたブチルアルデヒド(kg)/g(ロジウム)/時として求める。
【0138】
【表1】

【0139】
実施例1〜23
ヒドロホルミル化実験を、種々の反応条件及び配位子を用いて比較例1のようにして実施した。これらの実験の結果を表IIにまとめる。表IIは、各配位子のATOT、配位子の量(g)、配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、反応器温度(℃)、一酸化炭素分圧、ノルマル−ブチルアルデヒド対イソ−ブチルアルデヒドの比、ノルマル−ブチルアルデヒドの%、及び活性を示している。ランは、全て、12.5バールゲージの全シンガス圧を用いて行った。TEXANOL(登録商標)エステルアルコール(TEXANOLはEastman Chemical Companyの登録商標である)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートを用いた実施例14〜21を除いて、反応は全て、ヒドロホルミル化溶媒としてフタル酸ジオクチルを用いて実施した。活性は、生成されたブチルアルデヒド(kg)/g(ロジウム)/時として求める。
【0140】
【表2】

【0141】
表I中の比較例は、ノルマル−ブチルアルデヒド対イソ−ブチルアルデヒド比(N/I)が1.33から2.05まで変動し、ノルマル−ブチルアルデヒド重量%の対応する変動が10.1%であったことを示している。変動は、配位子の構造、配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、温度並びに合成ガス中の水素及び一酸化炭素分圧を変化させることによってもたらされた。表II中の実施例は、本発明に相当し、ノルマル−ブチルアルデヒド対イソ−ブチルアルデヒド比(N/I)が1.62から4.7まで変動し、ノルマル−ブチルアルデヒド重量%の対応する変動は61.8〜82.5%(これは20.7%のノルマル−ブチルアルデヒド重量%の総変化に相当する)であったことを示している。変動は、配位子の構造、配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比、温度並びに合成ガス中の水素及び一酸化炭素分圧を変化させることによってもたらされた。表IIIは、一方の実験を配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比30、温度115℃並びに一酸化炭素分圧4.2バールゲージにおいて実施し、他方の実験を配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比60、温度105℃並びに一酸化炭素分圧6.3バールゲージにおいて実施した場合の、種々の配位子に関するノルマル−ブチルアルデヒドの重量%の変化を示している。実施例23は、配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)比60、温度95℃並びに一酸化炭素分圧4.2バールゲージにおいて実施した。
【0142】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.一般式(I):
【化1】

[式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜20のヒドロカルビル基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素及びヒドロカルビル基から選ばれ;
2、R3、R4及びR5は合計4〜40個の炭素原子を含み;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、(a)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、(b)硫黄、酸素、窒素若しくは珪素又は(c)式(II):
【化2】

(式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数8以下のアルキル基から選ばれる)
を有する基を含む連結基として存在する]
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなる触媒溶液。
【請求項2】
1、R2及びR3が、独立して、アルキル、アラルキル、シクロアルキル及び式(III)〜(V):
【化3】

[式中、R8及びR9は、独立して、アルキル、アルコキシ、ハロゲン、シクロアルコキシ、ホルミル、アルカノイル、シクロアルキル、アリール、アリールオキシ、アロイル、カルボキシル、カルボン酸塩、アルコキシ−カルボニル、アルカノイルオキシ、シアノ、スルホン酸及びスルホン酸塩(前記アルキル、アルコキシ、アルカノイル、アルコキシカルボニル及びアルカノイルオキシ基のアルキル部分は炭素数が8以下である)から選ばれ;m及びnは、それぞれ、0、1又は2である]
を有するアリール基から選ばれ;
1、R2及びR3が、独立して、2〜15個の炭素原子を含み;
4及びR5が、独立して、水素、アルキル、アラルキル、シクロアルキル及び式(III)〜(V)を有するアリール基から選ばれ;且つ
2、R3、R4及びR5が合計4〜20個の炭素原子を含む
請求項1に記載の触媒溶液。
【請求項3】
1、R2及びR3が、独立して、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及び式(III)〜(V)を有するアリール基から選ばれ;
4及びR5が、独立して、水素、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及び式(III)〜(V)を有するアリール基から選ばれ;
6及びR7が、独立して、水素及び炭素数4以下のアルキル基から選ばれ;
8及びR9が、独立して、炭素数4以下のアルキル基から選ばれる
請求項2に記載の触媒溶液。
【請求項4】
ロジウム濃度が約20〜約300mg/リットルであり;且つホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比が約1:1〜約200:1である請求項1に記載の触媒溶液。
【請求項5】
ホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比が約1:1〜約100:1である請求項4に記載の触媒溶液。
【請求項6】
i.一般式(I):
【化4】

{式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜8のアルキル基、ベンジル及び式(III)
【化5】

[式中、R8は炭素数4以下のアルキル基から選ばれ、mは0、1又は2である]
を有するアリール基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル及び式(III)を有するアリール基から選ばれ;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、式(II):
【化6】

[式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数4以下のアルキル基から選ばれる]
を有する連結基として存在する}
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含んでなる触媒溶液。
【請求項7】
1がフェニル基であり;
2及びR3が、独立して、エチル、イソプロピル及びフェニル基から選ばれ;
4及びR5が、独立して、水素及びメチル基から選ばれ;且つ
Xが、任意的に、メチレン基として存在する
請求項6に記載の触媒溶液。
【請求項8】
前記の1種又はそれ以上のホスホナイト配位子が式(B)、(C)、(D)及び(E):
【化7】

から選ばれたホスホナイト配位子を含む請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項9】
前記の1種又はそれ以上のホスホナイト配位子が式(D):
【化8】

を有するホスホナイト配位子を含む請求項8に記載の触媒溶液。
【請求項10】
前記ヒドロホルミル化溶媒がアルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、炭素環式芳香族化合物、エステル、ケトン、アセタール、エーテル又はそれらの混合物を含む請求項6に記載の触媒溶液。
【請求項11】
ロジウム濃度が約20〜約300mg/リットルであり;且つホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比が約1:1〜約100:1である請求項6に記載の触媒溶液。
【請求項12】
前記ヒドロホルミル化溶媒がアルカン、シクロアルカン、アルケン、シクロアルケン、炭素環式芳香族化合物、エステル、ケトン、アセタール、エーテル又はそれらの混合物を含む請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項13】
ロジウム濃度が約20〜約300mg/リットルであり;且つホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比が約1:1〜約100:1である請求項7に記載の触媒溶液。
【請求項14】
i.式(B)、(C)、(D)及び(E):
【化9】

から選ばれた1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
から本質的になる触媒溶液。
【請求項15】
オレフィン、水素及び一酸化炭素を、
i.一般式(I):
【化10】

[式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜20のヒドロカルビル基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素及びヒドロカルビル基から選ばれ;
2、R3、R4及びR5は合計4〜40個の炭素原子を含み;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算された場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、(a)各芳香族基の環炭素原子間の直接化学結合、(b)硫黄、酸素、窒素若しくは珪素、又は(c)式(II):
【化11】

(式中、R6及びR7は、独立して、水素及び炭素数8以下のアルキル基から選ばれる)
を有する基を含む連結基として存在する]
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法。
【請求項16】
オレフィン、水素及び一酸化炭素を、
i.一般式(I):
【化12】

{式中、R1、R2及びR3は、独立して、炭素数2〜8のアルキル基、ベンジル及び式(III)
【化13】

[式中、R8は炭素数4以下のアルキル基から選ばれ、mは0、1又は2である]
を有するアリール基から選ばれ;
4及びR5は、独立して、水素、炭素数8以下のアルキル基、ベンジル及び式(III)を有するアリール基から選ばれ;
1、R2及びR3は、一緒に、式:ATOT=A1+A2+A3(式中、A1、A2及びA3は、それぞれ、R1、R2及びR3のA値である)によって計算した場合に、約6.2〜約11.5kcal/molの立体バルクATOTを有し;
Xは、任意的に、式(II):
【化14】

[式中、R6及びR7は、独立して、水素又は炭素数4以下のアルキル基から選ばれる]
を有する連結基として存在する}
を有する1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるアルデヒドの製造方法。
【請求項17】
プロピレン、水素及び一酸化炭素を、
i.式(B)、(C)、(D)及び(E):
【化15】

から選ばれた1種又はそれ以上のホスホナイト配位子;
ii.ロジウム;並びに
iii.ヒドロホルミル化溶媒
を含む触媒溶液と接触させることを含んでなるブチルアルデヒドの製造方法であって、前記溶液中のロジウムの濃度が約20〜約300mg/リットルであり;全圧が約4〜約36バール(絶対)であり;且つノルマル−ブチルアルデヒド・パーセントが、温度(約80〜約120℃の範囲内で変動);一酸化炭素分圧(約4〜約9バール(絶対)の範囲内で変動);及びホスフィン配位子(グラムモル)対ロジウム(グラム原子)の比(約30:1〜約60:1の範囲内で変動)から選ばれる1つ又はそれ以上のプロセスパラメーターの変化に応じて約1%(絶対)から約20%(絶対)まで変動する方法。

【公表番号】特表2010−513017(P2010−513017A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542791(P2009−542791)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/024968
【国際公開番号】WO2008/088495
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(594055158)イーストマン ケミカル カンパニー (391)
【Fターム(参考)】