説明

ヒドロモルホン含有徐放性錠剤

本発明は、有効成分含有ペレットを複数と、薬学的に許容される1以上の添加剤とを含む錠剤コアを有し、少なくとも1のコーティングが該錠剤コアに施される錠剤であって、
該有効成分含有ペレットが、有効成分としてヒドロモルホン、その塩、またはその溶媒和物を含み、かつ
a)不活性コアと、
b)該不活性コアに施される、有効成分層と、
c)該有効成分層に施される、有効成分の放出を遅延させる層と、
d)該有効成分の放出を遅延させる層に施される、さらなる有効成分層と
を含む構成を有することを特徴とする錠剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分含有ペレットを複数含む錠剤コアを有する錠剤、いわゆる「MUPS」錠剤と、このようなMUPS錠剤の調製に特に適したペレットとに関する。本発明の薬剤は、有効成分としてヒドロモルホンを含み、前記ペレットが、有効成分層に施される層により遅延が起こる徐放性ペレットであることを顕著な特徴としているが、さらにこの徐放性層に有効成分含有速放性コーティングが施されるという点で特に優れている。
【背景技術】
【0002】
有効成分としてヒドロモルホンを含む薬剤は、以前から知られている。また、特定の放出特性により比較的長い時間をかけて有効成分がゆっくりと放出される徐放性製剤の形態で、ヒドロモルホンを投与できることも知られている。このような薬剤は、例えば、欧州特許出願公開第271193号明細書に記載されている。本文献では、塩酸ヒドロモルホンが遅延マトリックス内に存在する形態で調製された、典型的な錠剤が開示されている。一般にこの薬剤を、薬剤の放出を調節するフィルムコーティングを持つ、回転楕円形状(spheroid)で提供できることも開示されている。このフィルムコーティングは、インビトロにおいて特定の放出特性が得られるように選択される。前記ペレットを従来の添加剤とともに圧縮してMUPS錠剤を製造することについては記載されていない。
【0003】
欧州特許出願公開第548448号明細書には、有効成分を含むコーティングが不活性コアに施され、そのコーティングが水溶液系である場合、徐放性製剤の安定性に関して問題が頻発しうることが開示されている。また、そのような徐放性製剤の例として、有効成分であるヒドロモルホンを含む製剤についても言及されており、特に本文献中のほとんどの実施例はヒドロモルホンに関連している。安定性に関するこれらの問題を解決するため、本文献では、ペレットを特殊な硬化反応に供することが提案されている。MUPS錠剤を調製する際に起こりうる問題については、欧州特許出願公開第548448号明細書には記載されていない。
【0004】
徐放性製剤の場合、有効成分を速く吸収させる目的で、速放性成分を配合できることが知られている。徐放性製剤がペレットの形状である場合、例えば、この徐放性ペレットに加えて、有効成分を速やかに放出するペレットを調製することにより、前記の目的を達成することができる。また、有効成分が確実に速やかに吸収されるように、例えば、有効成分を含む徐放性マトリックス上に、有効成分含有速放性コーティングを施せることも知られている。これらに関しては、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,2000,page904、および、Robinson,Drugs and the Pharmaceutical Sciences,Volume6:Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,1978,page139を参照してもよい。
【0005】
有効成分がヒドロモルホンである場合、徐放性製剤に速放性成分が配合された製剤は現在まで知られていない。言うまでもなく、このような速放性成分は、例えば欧州特許出願公開第271193号明細書に記載されているような従来技術で所望される放出特性を得る目的においては必要とされず、かつ/または要望されなかった。
【0006】
有効成分としてヒドロモルホンを含み、不活性コアに有効成分層が施され、この有効成分層に施された徐放性層により遅延が起こるペレットを調製してMUPS錠剤を製造しようとする場合、すなわち調製したペレットを従来の添加剤とともに圧縮して錠剤を製造しようとする場合、問題が生じる。先行技術として多数の特許文献に記載されているように、このような錠剤の製造方法には、ペレットの機能性コーティング、すなわちこの場合は徐放性コーティングが損傷を受けて、放出特性が調節不能かつ再現不能な変化を起こすというリスクを伴い、ひいては患者に相当なリスクをもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述のような問題を有さず、かつ有利な放出挙動および良好な安定性を実現するペレットならびに該ペレットから調製されるMUPS錠剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的は、本発明によると、MUPS錠剤により達成される。すなわち、前記の目的は、有効成分含有ペレットを複数と、薬学的に許容される1以上の添加剤とを含む錠剤コアを有し、少なくとも1のコーティングが該錠剤コアに施される錠剤であって、
該有効成分含有ペレットが、有効成分としてヒドロモルホンを含み、かつ
a)不活性コアと、
b)該不活性コアに施される、有効成分層と、
c)該有効成分層に施される、有効成分の放出を遅延させる層と、
d)該有効成分の放出を遅延させる層に施される、さらなる有効成分層と
を含む構成を有することを特徴とする錠剤により達成される。
【0009】
さらに、本発明は、適切な有効成分を含有するペレット、すなわち有効成分としてヒドロモルホンを含む有効成分含有ペレットであって、
a)不活性コアと、
b)該不活性コアに施される、有効成分層と、
c)該有効成分層に施される、有効成分の放出を遅延させる層と、
d)該有効成分の放出を遅延させる層に施される、さらなる有効成分層と
を含む構成を有することを特徴とするペレットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のペレットおよび錠剤は、有効成分としてヒドロモルホンを含んでいる。本発明のペレットおよび錠剤において、ヒドロモルホンが唯一の有効成分であることが好ましい。錠剤に含まれる該有効成分の濃度は、錠剤の総重量当たり、好ましくは0.5〜25重量%、特に0.5〜15重量%の範囲である。本発明の錠剤に含まれるヒドロモルホンは、好ましくは1〜100mg、特に2〜50mg、より好ましくは2〜40mg、例えば4〜30mg、最も好ましくは4〜24mgの範囲である。
【0011】
前記有効成分は、塩酸塩であることが好ましいが、さらに遊離塩基、他の種類の塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物であってもよい。本出願の範囲において、「有効成分含有量」とは、塩または溶媒和物が使用された場合、塩または溶媒和物の重量を常に意味する。有効成分の溶媒和物は、有効成分の塩の溶媒和物をも意味すると理解される。
【0012】
本発明のペレットは、不活性コアを有する。このような不活性コアは先行技術において知られており、例えば様々なサイズのノンパレル(non−pareil)として市販されている。例として、18〜20メッシュのノンパレル製品が挙げられる。一般に、このような不活性コアの直径は、0.2〜2.5mm、特に0.2〜1.5mmの範囲である。この不活性コアは、「中性コア」という名称でも知られている。中性コアとしては、糖剤コアまたは結晶セルロースから成るコアが頻繁に使用されるが、他の種類の中性コアも当業者に知られている。
【0013】
本発明によれば、前記不活性コア上には、不活性コアのコーティングとして、有効成分すなわちヒドロモルホンが1以上の結合剤とともに施されている有効成分層が存在する。このコーティングは、遅延を起こさないものが好ましい。すなわち、ヒドロモルホンがこのコーティングから速やかに放出されることが好ましく、米国薬局方のパドル法(水性緩衝液900ml中100rpm、pH1.6〜7.2、37℃)による測定において、15分間に少なくとも90%のヒドロモルホンが放出されることが好ましい。特に言及されない限り、本出願に記載されている放出に関するデータはすべて、前記の米国薬局方による方法に従って得られたインビトロでの放出に関連する。
【0014】
前記不活性コア上の有効成分層を、本出願において「内側の」有効成分層と呼ぶ。通例、内側の有効成分層は結合剤と有効成分とを含んでおり、この結合剤と有効成分に加えて、さらに薬学的に許容される従来の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤は当業者に知られている。好適な結合剤として、例えば、低粘度の水溶性ポリマー、特に、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性ヒドロキシ低級アルキルセルロースが挙げられる。さらに好適な結合剤として、アミノアルキルメタクリレートコポリマー類、ゼラチン、アラビアゴム、グアーガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、トラガカントゴム、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、無機ゲル、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン等が挙げられる。
【0015】
内側の有効成分層は、例えば、着色剤や、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール等の可塑剤、またはさらなる添加剤を含んでいてもよい。
【0016】
内側の有効成分層上には、放出を調節する層がある。このような有効成分の放出を調節する層は、先行技術において知られており、前記と同様に、例えば、欧州特許出願公開第271193号明細書または欧州特許出願公開第553392号明細書を参照してもよい。通例、この層は、非水溶性ポリマーと水溶性ポリマーとの混合物を含む。原則として、内側の有効成分層に使用される結合剤として前述した水溶性ポリマーはすべて、この水溶性ポリマーとして適している。水溶性ポリマーとしては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、別の種類の水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン、または類似の材料が特に好ましく使用される。非水溶性ポリマーとしては、例えば、ロウ、脂肪アルコールと混合したロウ、非水溶性セルロース、特にエチルセルロース、またはEudragitシリーズの製品等のポリメタクリレートを使用してもよい。このような材料は公知であり、前記の文献に加えて、例えば、欧州特許出願公開第722730号明細書にも記載されている。さらに、非水溶性ポリマーと水溶性ポリマーとの混合は、先行技術で開示されているような方法で行われる。内側の有効成分層と同様に、有効成分層に施された徐放性コーティングは、着色剤や、クエン酸トリエチル等の可塑剤のような、薬学的に許容される従来の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0017】
ペレットを、MUPS錠剤を製造するために圧縮するのではなく、例えば、カプセルに充填する場合、不活性コアと、内側の有効成分層と、徐放性コーティングとを持つ前記のペレットをそのまま使用することができ、さらなるコーティングは不要である。カプセル、小袋(sachet)等にこのペレットを充填し、投与を行う場合、このペレットをそのまま用いて、ヒドロモルホンの有利な放出特性および放出の利点を得ることができる。
【0018】
しかしながら驚いたことに、本発明によると、前記ペレットを圧縮してMUPSを製造する場合、前記の遅延コーティング上に、本出願の範囲において「外側の」有効成分層と呼ばれる、さらにまた別の有効成分層を施すと有利であることが判明した。原則として、外側の有効成分層の組成は、内側の有効成分層の組成と同様であり、外側と内側の有効成分層は同じ成分を持つことが好ましい。
【0019】
本発明のペレットは、遅延させる層の上にさらに有効成分含有速放性コーティングを有するため、圧縮して容易にMUPS錠剤を製造できる上、この圧縮が原因となってコーティングに損傷をきたし、ペレットの放出特性に調節不能な変化を起こすようなリスクを本質的に減ずる。この効果は、徐放性コーティング上に施した、有効成分含有速放性コーティングに関する先行技術に現在まで記載されておらず、驚くべきものである。
【0020】
内側の有効成分層中のヒドロモルホンの含有量は、好ましくは2〜80mg、より好ましくは2.4〜45mg、特に2.8〜23.8mgである。内側の有効成分層に含まれる有効成分の割合は、有効成分総含有量のうち50〜99%であることが好ましく、60〜99%であることがより好ましく、70〜99%であることが特に好ましい。
【0021】
外側の有効成分層中の有効成分の含有量は、好ましくは0.04〜12mg、より好ましくは0.04〜9.6mg、特に0.04〜7.2mgである。外側の有効成分層中の有効成分の好ましい割合は、100%から、前記の内側の有効成分層中の有効成分の割合を減じて算出する。
【0022】
内側の有効成分層の厚さは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μmの範囲である。
【0023】
徐放性層の厚さは、好ましくは10〜200μm、より好ましくは10〜100μmの範囲である。
【0024】
外側の有効成分層の厚さは、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜80μmの範囲である。
【0025】
それぞれのペレットの直径は、好ましくは200〜3000μm、より好ましくは200〜2000μmの範囲である。
【0026】
本発明によれば、前記ペレットは、既に記載した層に加えて、さらなる層を有していてもよい。例えば、不活性コアと内側の有効成分層との間、内側の有効成分層と徐放性層との間、または、徐放性層と外側の有効成分層との間に、それぞれ別の層を施してもよい。さらに、さらなるコーティングを、外側の有効成分層に施してもよい。このような各層の間に施される層および外側のコーティングの組成は、それぞれ当業者に知られている。例えば、これらは、具体的には水溶性セルロースポリマーのような結合剤から成り、薬学的に許容される従来の添加剤を任意に含む。これらの追加される層が、本発明のペレットの放出特性を損なうことがあってはならない。しかしながら、本発明によれば、有効成分含有ペレットはさらなる層を含まず、不活性コア、内側の有効成分層、徐放性層、および外側の有効成分層から成ることが好ましい。
【0027】
内側および外側の有効成分層を有する本発明の徐放性ペレットを、薬学的に許容される従来の添加剤とともに圧縮して錠剤コアを製造してもよい。MUPS錠剤を調製するためのこのような添加剤は当業者に知られている。これに関連して、例えば、RitschelとBauer−Brandlによる定評のある著作である、“Die Tablette”,Edition Cantor Verlag,2002を参照してもよく、該文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。通例、賦形剤、結合剤、崩壊剤、任意に滑沢剤、潤滑剤、およびそれらの混合物が前記錠剤の調製に使用される。当然のことながら、芳香剤、着色剤、およびさらなる添加剤が含まれていてもよい。本発明の錠剤は、本発明の有効成分含有ペレットに加えて、好ましくは少なくとも1の賦形剤、より好ましくは少なくとも1の賦形剤と少なくとも1の崩壊剤、さらにより好ましくは少なくとも1の賦形剤と少なくとも1の崩壊剤と少なくとも1の結合剤とをさらに含む。好ましくは、滑沢剤および潤滑剤をさらに含む。
【0028】
結合剤としては、内側の有効成分含有層の結合剤として前述した結合剤と同じものが挙げられる。
【0029】
好適な賦形剤として、変性ラクトース、無水ラクトース(NF)等のラクトース、変性(アルファ化)デンプン、天然デンプン、これら2種の混合物等のデンプン、リン酸水素カルシウム、未粉砕のリン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム等のリン酸カルシウム、セルロース誘導体類、結晶セルロース等のセルロース、マンニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0030】
当然のことながら、異なる種類の賦形剤の混合物も使用することができる。
【0031】
好適な崩壊剤として、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、カンテン、バレイショデンプン、ホルムアルデヒド−カゼイン、カルボキシメチルアミロペクチンナトリウム、ベントナイト、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、高分散シリカ、乾燥ペクチン等が挙げられる。前記の結合剤や賦形剤の場合と同様に、異なる種類の崩壊剤の混合物も崩壊剤として使用することができる。
【0032】
本発明によれば、好適な流動調節剤(flow control agent)は公知であり、例えば、“Gleitol”、タルク、コロイド状シリカ、沈降シリカ、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ラウリン酸、ステアリルアルコール、パルミチン酸、ベヘン酸、カプリン酸、カーボワックス、アエロジル等が挙げられる。
【0033】
好適な滑沢剤も当業者に知られており、流動調節剤(flow control agent)として好適な様々な化合物を滑沢剤として使用してもよい。好適な滑沢剤として、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリルアルコール、硬化ヒマシ油、パルミチン酸、セチルアルコール、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸、Lanette O、ラウリン酸、脱脂粉乳、Gleitol、Talkumin、カプリン酸、カオリン、デンプン、カーボワックス6000等のポリエチレングリコール類等が挙げられる。
【0034】
本発明によれば、前記MUPS錠剤のコアに含まれる従来の添加剤の割合は、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%、特に少なくとも40%、例えば少なくとも50%であり、その残りを有効成分含有ペレットが占める。しかしながら、本発明によれば、有効成分含有ペレットがMUPS錠剤の錠剤コアに占める割合は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%である。
【0035】
前記MUPS錠剤に用いられる好ましい添加剤と、それぞれの添加剤が該錠剤に使用される場合の好ましい割合を以下の表に示す。(有効成分含有ペレットは、その残りの割合を占める。)
【0036】
【表1】

【0037】
前記MUPS錠剤の錠剤コアには、先行技術において知られている従来のコーティングが施される。このコーティングは、ヒドロモルホンの放出に影響してはならない。したがって、内側の有効成分層および従来の添加剤に関して前述したように、このコーティングは通例、水溶性であり水溶性結合剤をベースとする。ここでも、HPC、HPMC等の水溶性セルロースエーテル類、およびPVP等が、結合剤として好ましい。このようなコーティングの適用は当業者に知られており、これに関しても、前記の定評のある著作である“Die Tablette”を参照してもよい。
【0038】
本発明のペレットを、圧縮してMUPS錠剤を製造することが好ましいが、当然のことながら、本発明のペレットを加工して、先行技術において知られているようなカプセル剤、小袋(sachet)または他の好適な投与形態にすることも可能である。
【0039】
本発明のペレットは、先行技術において従来から行われている方法により調製される。
【0040】
本発明のペレットは3ステップで調製される。
【0041】
1.有効成分の前記コア上への付加
前記の様々な添加剤および有効成分を、溶媒/懸濁化剤に溶解/懸濁する。この溶液/懸濁液を、流動層装置中の前記コア上にスプレーする。
【0042】
2.有効成分含有ペレットの遅延処理
前記の様々な添加剤を、溶媒/懸濁化剤に溶解/懸濁する。この溶液/懸濁液を、流動層装置中の前記有効成分含有ペレット上にスプレーする。
【0043】
3.さらなる有効成分層による、徐放性の有効成分含有ペレットのコーティング
前記の様々な添加剤および前記の有効成分の残りを、溶媒/懸濁化剤に溶解/懸濁する。この溶液/懸濁液を、流動層装置中の前記徐放性ペレットに施す。
【0044】
MUPS錠剤を製造するための、本発明のペレットの圧縮も、先行技術において公知の方法、例えば以下のような方法で行われる。
【0045】
完成したペレットに他の添加剤を加え、好適な混合機中で均質になるまで混合する。前記の様々な添加剤、特に賦形剤の混合時間および粒度分布は、当業者により適切に調節される。
【0046】
次に、いわゆる最終混合物を打錠機にて錠剤に成形する。前記錠剤コアの打錠速度および打錠圧は、当業者により適切に調節される。
【0047】
その後、前記錠剤コアを非機能性ラッカーで覆う。前記の様々な添加剤を、溶媒/懸濁化剤に溶解/懸濁する。この溶液/懸濁液を、好適な装置(エアーコーター(air coater)またはドラムコーターのいずれか)にて該錠剤コアにスプレーする。
【0048】
本発明のペレットおよびMUPS錠剤からのヒドロモルホンの放出特性は、それぞれ、公知のヒドロモルホン製剤に関する先行技術に記載されているものと同様である。これに関し、特に、欧州特許出願公開第548448号明細書および欧州特許出願公開第271193号明細書を参照してもよく、これらが開示している内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0049】
本発明を以下の実施例により説明する。
【実施例】
【0050】
ペレット調製の実施例
1.ポリエチレングリコールを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび塩酸ヒドロモルホンとともに、水に溶解する。これとは別にタルクを水に懸濁し、前記ヒドロモルホン溶液に加える。得られた懸濁液を、グラット流動層装置内にて、製品温度39〜45℃で、糖ペレット上にスプレーする。
【0051】
2.エチルセルロースを、プロピレングリコールおよびヒドロキシプロピルセルロースとともに、エタノールに溶解する。さらに、これとは別にタルクを水またはエタノールに懸濁し、前記エチルセルロース溶液に加える。得られた溶液/懸濁液を、グラット流動層装置内にて、製品温度39〜50℃で、有効成分として塩酸ヒドロモルホンを含有するペレット上にスプレーする。
【0052】
3.ポリエチレングリコールを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび塩酸ヒドロモルホンとともに、水に溶解する。これとは別にタルクを水に懸濁し、前記ヒドロモルホン溶液に加える。得られた懸濁液を、グラット流動層装置内にて、製品温度39〜45℃で、徐放性ペレット上にスプレーする。
【0053】
MUPS錠剤調製の実施例
1.完成したペレットを、結晶セルロースおよびふるいにかけたコロイド状シリカと混合する。さらに、ふるいにかけたステアリン酸マグネシウムを加え、さらに混合する。
【0054】
2.最終混合物を錠剤に成形する。最終混合物が均質な状態のまま錠剤になるよう、打錠速度を調節する。打錠圧も適切に調節する。
【0055】
3.コーティング懸濁液を以下のように調製する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースを、ポリエチレングリコールとともに、水に溶解する。これとは別にタルクを二酸化チタンとともに水に懸濁し、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液に加える。得られた懸濁液を、グラットコーター内で、製品温度39〜45℃で、前記錠剤コアにスプレーする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分含有ペレットを複数と、薬学的に許容される1以上の添加剤とを含む錠剤コアを有し、少なくとも1のコーティングが該錠剤コアに施される錠剤であって、
該有効成分含有ペレットが、有効成分としてヒドロモルホン、その塩、またはその溶媒和物を含み、かつ
a)不活性コアと、
b)該不活性コアに施される、有効成分層と、
c)該有効成分層に施される、有効成分の放出を遅延させる層と、
d)該有効成分の放出を遅延させる層に施される、さらなる有効成分層と
を含む構成を有することを特徴とする錠剤。
【請求項2】
前記有効成分の濃度が、前記錠剤の総重量当たり、2〜30重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記錠剤コアを製造するために、前記ペレットとともに圧縮される、前記薬学的に許容される添加剤が、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、潤滑剤、およびそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1または2に記載の錠剤。
【請求項4】
前記錠剤コアにコーティングが施され、該コーティングが有効成分の放出を遅延させる層ではないことを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の錠剤。
【請求項5】
有効成分であるヒドロモルホンを含む有効成分含有ペレットであって、
a)不活性コアと、
b)該不活性コアに施される、有効成分層と、
c)該有効成分層に施される、有効成分の放出を遅延させる層と、
d)該有効成分の放出を遅延させる層に施される、さらなる有効成分層と
を含む構成を有することを特徴とする有効成分含有ペレット。
【請求項6】
前記有効成分層に施される、前記有効成分の放出を遅延させる層が、遅延剤としてエチルセルロースを含むことを特徴とする、請求項5に記載の有効成分含有ペレット。
【請求項7】
前記不活性コアに施される、前記有効成分層中のヒドロモルホンの含有量が、2〜80mgの範囲であることを特徴とする、請求項5または6に記載の有効成分含有ペレット。
【請求項8】
前記有効成分の放出を遅延させる層に施される、前記さらなる有効成分層中のヒドロモルホンの含有量が、0.04〜12mgの範囲であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の有効成分含有ペレット。
【請求項9】
前記不活性コアに施される、前記有効成分層の厚さが、10〜200μmの範囲であることを特徴とする、請求項5〜8のいずれかに記載の有効成分含有ペレット。
【請求項10】
前記有効成分の放出を遅延させる層に施される、前記さらなる有効成分層の厚さが、10〜200μmの範囲であることを特徴とする、請求項5〜9のいずれかに記載の有効成分含有ペレット。

【公表番号】特表2011−503017(P2011−503017A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532471(P2010−532471)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009033
【国際公開番号】WO2009/059701
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510125811)アシノ ファルマ アクティエンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】