説明

ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルム

【課題】 本発明は、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ優れたヒネリ適性と耐屈曲疲労性を有する極めて有用なヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムを提供する。
【解決手段】 解決手段は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとオレフィン系ポリマーが80/20〜99/1(重量%)かつオレフィン系ポリマーの分散径が0.2〜2.0μmであるポリエステル系樹脂組成物よりなり、該ポリエステル系樹脂組成物を溶融後に冷却固化したシートを横方向に第1段目延伸を行い、次いで縦方向に第2段目延伸を行い、さらに緊張下で熱処理を行い、かつ第2段目延伸倍率(M×(−))と緊張熱処理温度(T(℃))の積(M×・T)が200〜400である方法で製造することを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、さらに詳細には、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ優れたヒネリ適性と耐屈曲疲労性を有する二軸延伸ポリエステル系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒネリ適性の優れたフィルムとして、透明性がよいセロハンが広く使用されてきた。しかしながら、セロハンは吸湿性を有するため特性が季節により変動し、一定の品質のものを常に供給することが困難であり、かつ厚みの不均一性に起因する加工性の悪さが欠点とされてきた。一方、ポリエチレンテレフタレートフィルムは強靱性、耐熱性、耐水性、透明性等の優れた特性の良さがある反面、ヒネリ適性が劣るためにヒネリ包装用に用いることができないという欠点があった。
【0003】
かかる欠点を解消する方法として、共重合ポリエステルを二軸延伸した後、比較的高温(140〜235℃、好ましくは150〜230℃)で緊張熱処理を行い、配向度を低減させた(未延伸フィルムの平均屈折率をN0、二軸延伸フィルムの平均屈折率をN1とした時、0.003≦N1−N0≦0.021を満足させた)ポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、該ポリエステルフィルムはヒネリ適性には優れているが、比較的高温で緊張熱処理を行うため、厚みの均一性がよくなく、その結果、印刷や蒸着等の加工工程でシワが発生しやすいという欠点があった。
【0005】
かかる欠点を解消する方法として、ポリエチレンテレフタレートを二軸延伸しただけの結晶化度が40%以下のポリエステルフィルムが開示されている。(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、該ポリエステルフィルムはヒネリ適性と厚みの均一性に優れているが、二軸延伸後にタルミが発生しやすく、二軸延伸後にフィルムの両端を切断する際、または製品ロールに仕上げるために裁断する際に破断しやすく、かつ製品ロールに前記タルミに起因したシワが発生しやすいという欠点があり、さらにチョコレートやキャンディーをヒネリ包装で個包装したものを外装袋に入れ、該外装袋を輸送した場合、輸送時の振動等で個包装体のヒネリ部分が外装袋と接触して破れることがあり、いまだ満足されるものではなかった。
【特許文献1】特許2505474号公報
【特許文献2】特表2005−513225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術の問題点を解消することを目的とするものである。即ち、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ優れたヒネリ適性と耐屈曲疲労性を有する二軸延伸ポリエステル系フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとオレフィン系ポリマーが80/20〜99/1(重量%)かつオレフィン系ポリマーの分散径が0.2〜2.0μmであるポリエステル系樹脂組成物よりなり、該ポリエステル系樹脂組成物を溶融後に冷却固化したシートを横方向に第1段目延伸を行い、次いで縦方向に第2段目延伸を行い、さらに緊張下で熱処理を行い、かつ第2段目延伸倍率(M×(−))と緊張熱処理温度(T(℃))の積(M×・T)が200〜400である方法で製造することを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムである。
【0009】
本願の第2の発明は、ポリエステル系樹脂組成物中のオレフィン系ポリマーが、少なくとも1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体との混合体、または少なくとも1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含む他のポリマーとの混合体であることを特徴とする請求項1記載のヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムである。
【0010】
本願の第3の発明は、ポリエステル系樹脂組成物中のオレフィン系ポリマーが、少なくとも1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体からなることを特徴とする請求項1記載のヒネリ包装用ポリエステル系フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエステル系フィルムは、製膜性と厚みの均一性に優れ、かつ優れたヒネリ適性と耐屈曲疲労性を有するため、極めて有用なヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムであるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のポリエステル系フィルムは、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとオレフィン系ポリマーが80/20〜99/1(重量%)かつオレフィン系ポリマーの分散径が0.2〜2.0μmであるポリエステル系樹脂組成物よりなり、該ポリエステル系樹脂組成物を溶融後に冷却固化したシートを横方向に第1段目延伸を行い、次いで縦方向に第2段目延伸を行い、さらに緊張下で熱処理を行い、かつ第2段目延伸倍率(M×(−))と緊張熱処理温度(T(℃))の積(M×・T)が200〜400である方法で製造することを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムである。
【0013】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、エチレンテレフタレート成分を主体とするポリエステルであることが耐熱性、耐水性、透明性等と良好な製膜性を確保する点から必要である。
【0014】
本発明では、フィルムを構成するポリエステルは、その目的を阻害しない範囲で他の共重合成分を含むことができる。使用できる他の共重合成分のうち、ジカルボン酸成分として、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。また、グリコール成分として、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物,ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が使用できる。このほか少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有する化合物を含んでいてもよい。
【0015】
本発明では、ポリエステル系樹脂組成物中のポリエステルとオレフィン系ポリマーの割合は80/20〜99/1(重量%)であることが必要である。オレフィン系ポリマーが1重量%未満の場合、ポリエステル系フィルムの耐屈曲疲労性の改良効果が小さいため好ましくない。逆に、オレフィン系ポリマーが20重量%を超える場合、ポリエステル系フィルムの厚みの均一性が悪くなることが多く好ましくない。
【0016】
本発明では、ポリエステル系樹脂組成物中のオレフィン系ポリマーの分散径は0.2〜2.0μmであることが必要である。オレフィン系ポリマーの分散径が0.2μm未満の場合、オレフィン系ポリマーの一部がポリエステルに見かけ上均一に溶解した状態になっており、ポリエステル系フィルムでの耐屈曲疲労性の改良効果が小さいため好ましくない。逆に、2.0μm超える場合、オレフィン系ポリマーとポリエステルとの界面での相互作用が小さくなっており、ポリエステル系フィルムでの耐屈曲疲労性の改良効果が飽和するばかりでなく、ポリエステル系樹脂組成物の熱安定性の低下により製膜性が低下することが多く好ましくない。
【0017】
本発明では、オレフィン系ポリマーとして、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−メタアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−グリシジルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等が使用できる。
【0018】
本発明では、オレフィン系ポリマーは上記の中から選択された1種類のポリマーを単独で用いてもよく、また、2種類以上のポリマーを併用してもよく、さらに本発明の目的を達成するためにその種類および添加量を適宜選択することができる。
【0019】
本発明では、目的とする効果を得るために、好適なオレフィン系ポリマーとして、オレフィンと官能基含有ビニルモノマーの共重合体をあげられる。好ましい官能基としては極性を有し、ポリエステルとの親和性を高める効果のある官能基があげられる。例えば、カルボキシル基、グリシジル基、酸無水物基等があげられる。具体的には各種製法および触媒により製造されたエチレン−(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体があげられる。
但し、官能基を有するビニルモノマーの共重合体としてα,β−不飽和カルボン酸のカルボン酸基の一部または全部をNa、K、Li、Zn、Mg、Ca等の金属イオンで中和したアイオノマーを用いる場合は、溶融押出し工程で金属粒子を核とする異物が発生しやすいため、金属イオン量がオレフィン系ポリマーの総量に対して200ppmを超えないようにすることが好ましい。
【0020】
本発明では、目的とする効果を得るために、さらに好適なオレフィン系ポリマーとして、架橋構造および/または枝分かれ構造を形成し得るモノマー成分、例えば、2つ以上の付加重合性の反応基をもつ不飽和モノマー成分を各々5モル%未満の範囲で含有するポリマーがあげられる。架橋結合性モノマーの例としては、ブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート等があげられる。好ましくはブチレンジアクリレート、ブチレンジメタクリレートがあげられる。グラフト結合性モノマーの例としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルメタクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸モノアリル、フマル酸モノアリル、イタコン酸モノアリル等があげられる。好ましくはアリルメタクリレート、ジアリルメタクリレートがあげられる。
【0021】
本発明では、ポリエステル系樹脂組成物を得る方法(ポリエステル樹脂にオレフィン系ポリマーを配合する方法)は公知の樹脂混合方法を広く用いることができる。例えば、ポリエステルとオレフィン系ポリマーをブレンダー等で均一にドライブレンドした後、1軸押出機または2軸押出機で溶融混練する方法等があげられる。
【0022】
本発明では、公知の押出機で溶融押出したポリエステル系樹脂組成物を冷却固化したシートをポリエステルのガラス転移温度以上の温度で3.0〜4.5倍横方向に第1段目延伸を行い、次いで、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で2.0〜4.5倍縦方向に第2段目延伸を行い、さらに、公知の巾方向を一定長とした熱固定処理(例えば、フィルムの両端をクリップで把持して行う熱固定処理)を80〜130℃で1〜20秒間実施することが好ましい。
【0023】
本発明では、上記の製膜方法において、第2段目延伸倍率(M×(−))と熱固定温度(T(℃))の積(M×・T)を200〜400に制御することが製膜性と厚みの均一性を良化させ、かつ製品ロールの外観を良化させ、さらに優れたヒネリ性を確保するために必要である。M×・Tが200未満の場合、得られたポリエステル系フィルムのヒネリ性は良好であるが、二軸延伸後にフィルムの両端を切断する際、または製品ロールに仕上げるために裁断する際に破断しやすく、かつ製品ロールに前記タルミに起因したシワが発生しやすいため好ましくない。逆に、M×・Tが400を越える場合、製膜性と製品ロール外観には優れているが、得られたポリエステル系フィルムのヒネリ性が劣るため好ましくない。
【0024】
本発明では、第3段目延伸としてポリエステルのガラス転移温度以上の温度で1.05〜1.4倍の再横延伸を行ってもよく、また、巾方向を一定長とした熱固定の後、巾方向に緩和処理(100〜140℃で巾方向に0.5〜8%緩和させる処理)を行ってもよい。
【0025】
本発明では、ポリエステルの極限粘度は、0.5dl/g以上であることが好ましい。極限粘度が0.5dl/g未満の場合、ポリエステルフィルムを製膜する際、破断が発生しやすく好ましくない。
【0026】
本発明では、ポリエステル系フィルムの厚みは9〜25μmであることが好ましい。ポリエステル系フィルムの厚みが9μm未満の場合、得られたフィルムをヒネリ包装に用いた場合、フィルムの腰感が劣るため好ましくない。逆に、25μmを超える場合、得られたフィルムのヒネリ適性が劣るため好ましくない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。
【0028】
実施例および比較例に用いた評価方法について説明する。
(1)オレフィン系ポリマーの平均分散径
ポリエステルとオレフィン系ポリマーを押出機で溶融混練して得たポリエステル系樹脂組成物(実施例および比較例で使用したポリエステル系樹脂組成物)をエポキシ樹脂に包埋して硬化させものをクライオミクロトームで切開し超薄切片を作製する。これを酸化ルテニウムで染色したのち室温で10分間保持し、次いでカーボン蒸着して透過型電子顕微鏡で観察する。オレフィン系ポリマーの平均分散径は画像解析装置(東洋紡績製、V10)を用いて短径と長径の加重平均(n数=3)で求める。
【0029】
(2)ポリエステルフィルムの厚みの均一性(TV(%))
ポリエステルフィルムの中央部から縦方向に巾4cm×長さ3mのフィルム片を切り出し、これを1mの長さに3分割したものを測定サンプルとする。該測定サンプルをアンリツ電気社製の連続厚み計(マイクロメーター:K306C、レコーダー:K310C)を用いて下記の条件で測定する。測定サンプル1m内の(最大値−最小値)を求め,3個の平均値(ΔT平均)を算出する。次いで、平均厚み(T平均:連続厚み測定後のフィルム片を3枚重ねて一方の端部から5cmのところを基準とし、5cmピッチでダイアルゲージを用いて18点測定し、18点の厚みの合計値を54で除した値)を算出する。次いで、TV=(ΔT平均/T平均)×100(%)を算出し、TVが8%以下を実用性ありと評価する。
[連続厚みの測定条件]
フィルムの送り速度:1.5m/分
マイクロメーターのスケール:±5μm
レコーダーのハイカット:5Hz
レコーダーのスケール:±2μm
レコーダーのチャート速度:2.5mm/秒
レコーダーの測定レンジ:×1
【0030】
(3)ポリエステルの極限粘度
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(容積比で3/2)の混合溶媒25ml中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定する。
【0031】
(4)耐屈曲疲労性(屈曲ピンホール数)
ポリエステル系フィルムから直径150mmの円形状に切取った試料フィルムの中に空気を入れて風船型の袋状にし、屈曲機のガラス管の先端に装着した。屈曲機で圧空(加圧70kPa)の送気と排気(減圧1000hPa)を交互に行い、23℃、65%RH下で7.5回/分の速度で風船型の袋状フィルムに膨張と収縮を5000回繰り返して屈曲疲労を与える。5000回屈曲疲労後に発生したピンホール数を目視で数える。n=3で測定した屈曲ピンホール数の最大値が20以下を実用性ありと評価する。
【0032】
(5)ヒネリ適性
ポリエステルフィルムから10cm×10cmのサンプル片を切りだし、直径2cmの丸棒に5cmはみ出すように、長手方向に巻き付ける。次いで、はみ出した部分を360°ひねり、360°から戻った角度を測定する(n=100)。これらの平均値を求め、○を実用性ありと評価する。
○:ひねり戻り角度が75°以下
△:ひねり戻り角度が75〜85°
×:ひねり戻り角度が85°以上
【0033】
実施例および比較例に用いたポリエステル系樹脂組成物、製膜条件を表1に示し、オレフィン系ポリマーの平均分散径、M×・T、厚みの均一性、ヒネリ適性、耐屈曲疲労性(屈曲ピンホール数)を表2に示す。
(1)PET:ポリエチレンテレフタレート(極限粘度:0.62dl/g、平均粒径:1.3μmの凝集シリカを1000ppm配合)
(2)PET−I:ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチレンイソフタレートの繰り返し単位10モル%、極限粘度:0.62dl/g、平均粒径:1.3μmの凝集シリカを1000ppm配合)
(3)LDPE:低密度ポリエチレン(住友化学社製、スミカセンG401:商品名)
(4)EBM:エチレン−1−ブテン共重合体(日本合成ゴム社製、EBM2041P、商品名)
(5)EMAA:エチレン−メタクリル酸共重合体(三井デュポンポリケミカル社製、ニュクレルN1108C:商品名)
(6)EEA:エチレン−エチルアクリレート共重合体(三井デュポンポリケミカル社製、エバフレックスA712:商品名)
(7)MBA:ポリブチルアクリレート−ポリメタクリル酸メチル共重合体(呉羽化学製、パラロイドEXL2314:商品名)
(8)SEBS:スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(旭化成社製、タフテックM1913:商品名)
(9)アイオノマー:エチレン系アイオノマー(三井デュポンポリケミカル社製、ハイミラン1706:商品名)
【0034】
[実施例1]
PET/LDPE/EEAの混合物(94.0/3.0/3.0重量%)を2軸ベント式押出機で溶融させた後(溶融温度:270℃)、ストランド状に押出し、水中で冷却後に切断してポリエステル系樹脂組成物を得た。該ポリエステル系樹脂組成物を2軸ベント式押出機で溶融させた後(溶融温度:280℃)、45cm幅のTダイより冷却ロール(周速50m/分)上へキャストして(冷却ロール周面に対向するように設置した直径が30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加し、0.2mAの電流を流して静電密着させて)未延伸シートを得た。該未延伸シートをテンターで予熱温度95℃、延伸温度92℃で横方向に3.7倍延伸し(第1段目延伸)、予熱温度80℃、延伸温度100℃で縦方向に3.0倍延伸し(第2段目延伸)、さらに100℃で1.05倍再横延伸し(第3段目延伸)、その後100℃で定長巾熱固定処理して厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
本実施例の方法は、表2からわかるように、優れたヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムであるといえる。
【0035】
[実施例2]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/EEA:94.0/6.0重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
本実施例の方法は、表2からわかるように、優れたヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムであるといえる。
【0036】
[実施例3]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/EBM/EEA:94.0/3.0/3.0重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
本実施例の方法は、表2からわかるように、優れたヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムであるといえる。
【0037】
[実施例4]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/MBA:94.0/6.0重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
本実施例の方法は、表2からわかるように、優れたヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムであるといえる。
【0038】
[実施例5]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/PET−I/LDPE/EEA:75.2/18.8/3.0/3.0重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
本実施例の方法は、表2からわかるように、優れたヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムであるといえる。
【0039】
[比較例1]
ポリエステル系樹脂組成物の代わりにPETを用いた以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステルフィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、耐屈曲疲労性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0040】
[比較例2]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/LDPE/EEA:75.0/12.5/12.5重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、厚みの均一性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0041】
[比較例3]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/LDPE:94.0/6.0重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、耐屈曲疲労性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0042】
[比較例4]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/SBES:94.0/6.0重量%とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、耐屈曲疲労性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0043】
[比較例5]
ポリエステル系樹脂組成物の配合比率をPET/アイオノマー:94.0/6.0重量%とした以外は実施例1と同様にして製膜しようとしたが、冷却ロールに密着させて得たシートにゲル状物が多発しており、横延伸時にゲル状物を起点とした破断が発生することが多く、ポリエステル系フィルムを安定して得られなかった。
この方法は、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0044】
[比較例6]
第2段目延伸として、予熱温度80℃、延伸温度105℃で4.2倍延伸した以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、ヒネリ適性が劣るため、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0045】
[比較例7]
定長巾熱固定処理温度を50℃とした以外は実施例1と同様にしてポリエステル系フィルムを得ようとしたが、熱固定処理後でフィルムのタルミが著しく、フィルムの両端を切断する際、フィルムが破断しやすいためポリエステル系フィルムを安定して得られなかった。
この方法は、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0046】
[比較例8]
第2段目延伸倍率を1.6倍とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、厚みの均一性が悪いためヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0047】
[比較例9]
熱固定温度を140℃とした以外は実施例1と同様にして厚さ18μmのポリエステル系フィルムを得た。
この方法は、表2からわかるように、ヒネリ適性が悪いためヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして好ましくない。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のポリエステルフィルムは、製膜性と製品ロールの外観に優れ、かつ得られたフィルムがヒネリ適性と耐屈曲疲労性に優れており、ヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルムとして極めて有用であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとオレフィン系ポリマーが80/20〜99/1(重量%)かつオレフィン系ポリマーの分散径が0.2〜2.0μmであるポリエステル系樹脂組成物よりなり、該ポリエステル系樹脂組成物を溶融後に冷却固化したシートを横方向に第1段目延伸を行い、次いで縦方向に第2段目延伸を行い、さらに緊張下で熱処理を行い、かつ第2段目延伸倍率(M×(−))と緊張熱処理温度(T(℃))の積(M×・T)が200〜400である方法で製造することを特徴とするヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂組成物中のオレフィン系ポリマーが、少なくとも1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体との混合体、または少なくとも1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を含む他のポリマーとの混合体であることを特徴とする請求項1記載のヒネリ包装用二軸延伸ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
ポリエステル系樹脂組成物中のオレフィン系ポリマーが、少なくとも1種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンとエチレン結合形成性α,β−不飽和カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる構成単位とする共重合体からなることを特徴とする請求項1記載のヒネリ包装用ポリエステル系フィルム。

【公開番号】特開2007−91835(P2007−91835A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281421(P2005−281421)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】