説明

ヒンジ装置

【課題】 簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができて、部品点数の削減、装置全体の構成の簡素化、および生産性の向上を図ることができるヒンジ装置を提供すること。
【解決手段】 車体1側の第1ヒンジベース10とヒンジアーム30の一端との相対的な回動を許容する第1回動時期と、ドア2側の第2ヒンジベース20とヒンジアーム30の他端との相対的な回動を許容する第2回動時期と、をリンク機構50によって設定する。リンク機構50に備わる第1カム61と第2カム62とを関連的に作用させることによって、第1回動時期から第2回動時期への移行時、および第2回動時期から第1回動時期への移行時に、リンク機構50を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアに用いられるヒンジ装置に関し、さらに詳しくは、2つの軸を中心としてドアを回動させることによって、その開き角度を大きく設定することができるヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のヒンジ装置としては、例えば、特許文献1および2に記載のものが知られている。
【0003】
これらのヒンジ装置においては、車体側とドア側のそれぞれに取り付けられるヒンジベースに対して、ヒンジアームの両端のそれぞれが第1軸および第2軸を中心として回動自在に軸支される。そして、第1軸および第2軸を中心としてドアを回動させることにより、そのドアの開き角度を270度程度に大きく設定することができる。
【0004】
このようなヒンジ装置には、ドアが第1軸を中心として回動する時期と、ドアが第2軸を中心として回動する時期と、を切り換えるためのリンク機構が備えられている。このリンク機構は、車体側のヒンジベースと、ドア側のヒンジベースと、ヒンジアームと、の相対位置の変化に応じて動作する構成となっており、第1軸を中心とするドアの回動時期と、第2軸を中心とするドアの回動時期と、の切り換え時には、動作のトリガーとなる起動力が加えられる。例えば、ドアの開動時に、それを第1軸を中心として所定角度回動させてから、第2軸を中心として回動させる場合には、前者の回動時期から後者の回動時期に移行するときに、リンク機構に起動力が加えられることになる。
【0005】
特許文献1に記載のヒンジ装置において、このようなリンク機構の起動力は、車体側とドア側のヒンジベースの一方に設けられた調整ねじがヒンジアームに当接することによって与えられる。すなわち、それらの当接によって、一方のヒンジベースとヒンジアームとの相対的な回動が阻止され、その代わりに、他方のヒンジベースとヒンジアームとが相対的に回動し、その相対的な回動力によってリンク機構が起動される。つまり、リンク機構の起動力は、ヒンジベースに設けられた調整ねじがヒンジアームの動きを拘束することよって、間接的にリンク機構に加えられることになる。
【0006】
また特許文献2にヒンジ装置においては、リンク機構を特定の動作方向に付勢するためのばねが備えられており、そのばねによってリンク機構に起動力が加えられる。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2534715号
【特許文献2】米国特許第6,842,945号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、リンク機構に起動力を加えるために調整ねじやばねを備えることは、それらの配備スペースの確保に伴う設計の制約、および、それらの組付け作業に伴うヒンジ装置の生産性の低下などを招くおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができて、部品点数の削減、装置全体の構成の簡素化、および生産性の向上を図ることができるヒンジ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のヒンジ装置は、車体に取り付けられる第1ヒンジベースに、ヒンジアームの一端が第1軸によって回動自在に軸支され、かつドアに取り付けられる第2ヒンジベースに、前記ヒンジアームの他端が第2軸によって回動自在に軸支され、前記第1ヒンジベース、第2ヒンジベース、および前記ヒンジアームの相対位置に応じて動作するリンク機構が一方の動作位置にあるときは、前記第1ヒンジベースと前記ヒンジアームの一端との相対的な回動が許容される第1回動時期として設定され、前記リンク機構が他方の動作位置にあるときは、前記第2ヒンジベースと前記ヒンジアームの他端との相対的な回動が許容される第2回動時期として設定されるヒンジ装置において、前記リンク機構は、前記第1ヒンジベースに設けられた第1カムと、前記第2ヒンジベースに設けられた第2カムと、前記ヒンジアームに回動自在に軸支されて、カムフォロア部が前記第1カムのカム面と対向する第1コントロールレバーと、前記ヒンジアームに回動自在に軸支されて、カムフォロア部が前記第2カムのカム面と対向する第2コントロールレバーと、前記第1コントロールレバーと前記第2コントロールレバーとを連結するリンク部材と、を含み、前記第1カムのカム面および前記第2カムのカム面は、前記第1コントロールレバーのカムフォロア部および第2コントロールレバーのカムフォロア部に対して関連的に作用し、前記第1回動時期には前記リンク機構を前記一方の動作位置に拘束し、前記第2回動時期には前記リンク機構を前記他方の動作位置に拘束し、前記第1回動時期から前記第2回動時期への移行時には、前記リンク機構を前記一方の動作位置から前記他方の動作位置に動作させ、前記第2回動時期から前記第1回動時期への移行時には、前記リンク機構を前記他方の動作位置から前記一方の動作位置に動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体側の第1ヒンジベースとヒンジアームの一端との相対的な回動を許容する第1回動時期と、ドア側の第2ヒンジベースとヒンジアームの他端との相対的な回動を許容する第2回動時期と、をリンク機構によって設定する場合に、リンク機構に備わる第1カムと第2カムとを関連的に作用させることにより、第1回動時期から第2回動時期への移行時、および第2回動時期から第1回動時期への移行時に、リンク機構を動作させる。この結果、簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができて、部品点数の削減、装置全体の構成の簡素化、および生産性の向上を図ることができる。
【0012】
リンク機構は、ドアの開動途中または閉動途中において、第2回動時期から第1回動時期に移行させるように構成することができ、または逆に、第1回動時期から第2回動時期に移行させるように構成することもできる。
【0013】
また、第1および第2カムのカム面の一方側の起部と他方側の傾斜部とを関連的に作用させて、第1および第2コントロールレバーの一方の回動阻止を解いたときに他方を回動させることにより、きわめて簡単な構成によってリンク機構に起動力を加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車のサイドドアに備わるヒンジ装置としての適用例である。
【0015】
図1は、ドアを閉じたとき、つまりドアの開き角度が0度のときにおけるヒンジ装置の平面図である。同様に、図2および図3は、それぞれドアの開き角度が90度および170度のときのヒンジ装置の平面図である。
【0016】
本例のヒンジ装置は、車体1側に取り付けられる第1ヒンジベース10と、ドア2側に取り付けられる第2ヒンジベース20と、それらの間を連結するヒンジアーム30と、を備えている。第1ヒンジベース10は平面略コ字状に形成されており、その一端は、第1軸31を中心として第1ヒンジベース10に回動自在に軸支され、その他端は、第2軸32を中心として第2ヒンジベース20に回動自在に軸支されている。第1軸31および第2軸32を中心とするヒンジアーム30の回動時期は後述するように設定され、ドア2の開き角度が0度と90度との間においては、図1および図2のように、ヒンジアーム30の他端が第2軸32を中心として矢印B1,B2方向に回動する。また、ドア2の開き角度が90度と170度との間においては、図2および図3のように、ヒンジアーム30の一端が第1軸31を中心として矢印A1,A2方向に回動する。また、ドア2の開き角度が90度前後の若干の回動範囲においては、ヒンジアーム30が第1軸31および第2軸32のそれぞれを中心として若干回動する。
【0017】
第1ヒンジベース10、第2ヒンジベース20、およびヒンジアーム30の間には、第1軸31を中心とする第1ヒンジベース10とヒンジアーム30の一端との相対的な回動を許容する時期と、第2軸32を中心とする第2ヒンジベース20とヒンジアーム30の他端との相対的な回動を許容する時期と、を関連的に設定するためのリンク機構50が備えられている。
【0018】
リンク機構50は、第1コントロールレバー51と、第2コントロールレバー52と、それらを連結するリンク部材53と、を含む。第1コントロールレバー51は、軸54によってヒンジアーム30の一端側に軸支されて、矢印C1,C2方向に回動自在とされている。同様に、第2コントロールレバー52は、軸55によってヒンジアーム30の他端側に軸支されて、矢印D1,D2方向に回動自在とされている。第1コントロールレバー51には、軸56によってリンク部材53の一端が相対的に回動自在に連結され、第2コントロールレバー52には、軸57によってリンク部材53の他端が相対的に回動自在に連結されている。
【0019】
第1コントロールレバー51には、第1ヒンジベース10に設けられた第1カム61のカム面と対向するカムフォロア部51Aが形成され、同様に、第2コントロールレバー52には、第2ヒンジベース20に設けられた第2カム62と対向するカムフォロア部52Aが形成されている。本例の場合、第1カム61は第1軸31と同一軸上に固定され、第2カム62は第2軸32と同一軸上に固定されている。第1カム61のカム面には、起部61Aと、伏部61Bと、それらの間に位置する若干なだらかな傾斜部61Cと、が形成されており、同様に、第2カム62のカム面には、起部62Aと、伏部62Bと、それらの間に位置する若干なだらかな傾斜部62Cと、が形成されている。
【0020】
リンク機構50は、図4、図5、および図6のように、ドア2の開き角度に応じて、第1コントロールレバー51、第2コントロールレバー52、およびヒンジアーム30の相対位置が変化することにより、次のように動作する。
【0021】
(ドア2の開動時の動作)
まず、ドア2の開き動作によって、その開き角度が0度から90度近くになるまでは、図4のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに沿って移動して、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B1方向の回動を許容する。また、このときは図4のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の傾斜部61Cに突き当たって、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A1方向の回動を阻止する。
【0022】
ドア2の開き角度が90近くに達したときは、図5のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aから外れ、その第2コントロールレバー52の矢印D1方向の回動が許容される。そのため、第1コントロールレバー51は矢印C1方向に回動可能となり、そのカムフォロア部51Aは、第1カム61の若干なだらかな傾斜部61Cに沿って案内されて浮上移動する。ドア2の開き角度が90度に至る少し前から、90度を少し過ぎるまでの若干の期間においては、このように、第1コントロールレバー51が矢印C1方向に回動し、かつ第2コントロールレバー52が矢印D1方向に回動するため、ヒンジアーム30は、第1軸31および第2軸32のそれぞれを中心として矢印A1およびB1方向に回動することになる。
【0023】
ドア2の開き角度が90度を少し越えたときからは、図6のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aに位置し、かつ第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の伏部62Aに位置する。そして、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aに沿って移動して、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A1方向の回動を許容する。また、このときは図6のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の伏部62Bに突き当たって、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B2方向の回動を阻止する。
【0024】
ドア2の開き角度が170度に達したときは、図6のように、第1ヒンジベース10に位置するストッパー部10Aと、ヒンジアーム30の一端側に位置するストッパー部30Aと、が当接して、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A1方向の回動を阻止する。また、ドア2の開き角度が90度を少し越えたときからは、図3のように、第2ヒンジベース20に位置するストッパー部20Aと、ヒンジアーム30の他端側に位置するストッパー部30Bと、が当接して、第2軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印B1方向の回動を阻止する。
【0025】
このように、ドア2の開き動作においては、その開き角度が0度から90度近くに達するまでは、第2軸32を中心としてヒンジアーム30が矢印B1方向に回動し、その開き角度が90度を少し過ぎるまでの若干の期間(以下、「移行時期」ともいう)を経てからは、第1軸31を中心としてヒンジアーム30が矢印A1方向に回動する。つまり、第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第2回動時期)の後、移行時期を経てから、第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第1回動時期)となる。その結果、ヒンジアーム30の回動中心が第2軸32から第1軸31に移されることになる。
【0026】
このような移行時期におけるリンク機構50の起動力は、前述したように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aから外れたときに、第1カム61の傾斜部61Cが第1コントロールレバー51を矢印C1方向に回動させる回動力によって与えられる。
【0027】
(ドア2の閉動時の動作)
ドア2の閉じ動作によって、その開き角度が170度から90度近くになるまでは、図6のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aに沿って移動して、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A2方向の回動を許容する。また、このときは図6のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の傾斜部62Cに突き当たって、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B2方向の回動を阻止する。
【0028】
ドア2の開き角度が90近くまで小さくなったときは、図5のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aから外れ、その第1コントロールレバー51の矢印C2方向の回動が許容される。そのため、第2コントロールレバー52は矢印D2方向に回動可能となり、そのカムフォロア部52Aは、第2カム62の若干なだらかな傾斜部62Cに沿って案内されて浮上移動する。ドア2の開き角度が90度に至る少し前から、90度よりも少し小さくなるまでの若干の期間においては、このように、第2コントロールレバー52が矢印D2方向に回動し、かつ第1コントロールレバー51が矢印C2方向に回動するため、ヒンジアーム30は、第1軸31および第2軸32のそれぞれを中心として矢印A1およびB1方向に回動することになる。
【0029】
ドア2の開き角度が90度よりも少し小さくなったときからは、図4のように、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに位置し、かつ第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第2カム61の伏部61Aに位置する。そして、第2コントロールレバー52のカムフォロア部52Aが第2カム62の起部62Aに沿って移動して、第2軸32を中心とするヒンジアーム30の矢印B2方向の回動を許容する。また、このときは図4のように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の伏部61Bに突き当たって、第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A2方向の回動を阻止する。また、このように第1軸31を中心とするヒンジアーム30の矢印A2方向の回動を阻止するときには、第1ヒンジベース10に位置する不図示のストッパー部を第1コントロールレバー51またはリンク部材53に当接させてもよい。
【0030】
このように、ドア2の閉じ動作においては、ドア2の開き角度が170度から90度近くに達するまでは、第1軸31を中心としてヒンジアーム30が矢印A2方向に回動し、その開き角度が90度よりも少し小さくなるまでの若干の期間(以下、「移行時期」ともいう)を経てからは、第2軸32を中心としてヒンジアーム30が矢印B2方向に回動する。つまり、第1ヒンジベース10とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第1回動時期)の後、移行時期を経てから、第2ヒンジベース20とヒンジアーム30との相対的な回動を許容する時期(第2回動時期)となる。その結果、ヒンジアーム30の回動中心が第1軸31から第2軸32に移されることになる。
【0031】
このような移行時期におけるリンク機構50の起動力は、前述したように、第1コントロールレバー51のカムフォロア部51Aが第1カム61の起部61Aから外れたときに、第2カム62の若干なだらかな傾斜部62Cが第2コントロールレバー52を矢印D2方向に回動させる回動力によって与えられる。
【0032】
このように、第1カム61および第2カム62は、関連的に機能して、第1回動時期から第2回動時期への移行時、および第2回動時期から第1回動時期へ移行時に、リンク機構50に起動力を与える。第1カム61および第2カム62を利用して起動力を与えることは、構成上においてきわめて有利であり、このような第1カム61および第2カム62とは別に、特別な調整ねじやばねなどを用いてリンク機構50に起動力を加える場合に比して、部品点数の削減、装置全体の構成の簡素化、および生産性の向上を図ることができる。
【0033】
(関連機構)
本例のヒンジ装置には、特許文献1および2に記載されているものと同様に、不図示の第1チェック機構および第2チェック機構を備えることができる。第1チェック機構は、第1軸31を中心とする第1ヒンジベース10とヒンジアーム30の一端との相対的な回動に対して所定のチェック力を付与し、第1チェック機構は、第2軸32を中心とする第2ヒンジベース20とヒンジアーム30の他端との相対的な回動に対して所定のチェック力を付与する。
【0034】
(他の実施形態)
上述した実施形態においては、ドア2の開動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第2軸32から第1軸31に移し、一方、ドア2の閉動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第1軸31から第2軸32に移すように構成されている。しかし、これとは逆に、ドア2の開動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第1軸31から第2軸32に移し、一方、ドア2の閉動中に、ヒンジアーム30の回動中心を第2軸32から第1軸31に移すように構成することもできる。その場合には、車体1とドア2に対して、第1ヒンジベース10と第2ヒンジベース20を上述した実施形態とは逆に取り付けるような関係とすればよい。
【0035】
このように、ドア2の開動時および閉動時に、ヒンジアーム30が先に第1軸31を中心として回動してから第2軸32を中心として回動する形態、または逆に、ドア2の開動時および閉動時に、ヒンジアーム30が先に第2軸32を中心として回動してから第1軸31を中心として回動する形態は、ドア2の使用形態などに応じて選定することができる。例えば、大きく開閉する機会が多いドアに対しては前者の形態のヒンジ装置を用い、小さく開閉する機会が多いドアに対しては後者の形態のヒンジ装置を用いることができる。特に、後者の形態のヒンジ装置を用いた場合、ドアを小さく開閉するときには、そのドアに近い側の第2軸32を中心としてドアが回動するため、ドアから遠い側の第1軸31を中心としてドアが回動するときよりも回転半径が小さくなり、その分、ドアを小さい力によって開閉できることになる。
【0036】
なお、本発明のヒンジ装置は、サイドドアに限らずバックドアなどにも適用でき、更に、ドアの中間開度および全開開度は、上述した実施形態のみに特定されず適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ドアの開き角度が0度のときの本発明の実施形態におけるヒンジ装置の一部切欠き平面図である。
【図2】ドアの開き角度が90度のときにおける図1のヒンジ装置の一部切欠き平面図である。
【図3】ドアの開き角度が170度のときにおける図1のヒンジ装置の一部切欠き平面図である。
【図4】ドアの開き角度が0度のときにおける図1のヒンジ装置のリンク機構部分の平面図である。
【図5】ドアの開き角度が90度のときにおける図1のヒンジ装置のリンク機構部分の平面図である。
【図6】ドアの開き角度が170度のときにおける図1のヒンジ装置のリンク機構部分の平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 車体
2 ドア
10 第1ヒンジベース
20 第2ヒンジベース
30 ヒンジアーム
31 第1軸
32 第2軸
50 リンク機構
51 第1コントロールレバー
52 第2コントロールレバー
53 リンク部材
61 第1カム
62 第2カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられる第1ヒンジベースに、ヒンジアームの一端が第1軸によって回動自在に軸支され、かつドアに取り付けられる第2ヒンジベースに、前記ヒンジアームの他端が第2軸によって回動自在に軸支され、前記第1ヒンジベース、第2ヒンジベース、および前記ヒンジアームの相対位置に応じて動作するリンク機構が一方の動作位置にあるときは、前記第1ヒンジベースと前記ヒンジアームの一端との相対的な回動が許容される第1回動時期として設定され、前記リンク機構が他方の動作位置にあるときは、前記第2ヒンジベースと前記ヒンジアームの他端との相対的な回動が許容される第2回動時期として設定されるヒンジ装置において、
前記リンク機構は、
前記第1ヒンジベースに設けられた第1カムと、
前記第2ヒンジベースに設けられた第2カムと、
前記ヒンジアームに回動自在に軸支されて、カムフォロア部が前記第1カムのカム面と対向する第1コントロールレバーと、
前記ヒンジアームに回動自在に軸支されて、カムフォロア部が前記第2カムのカム面と対向する第2コントロールレバーと、
前記第1コントロールレバーと前記第2コントロールレバーとを連結するリンク部材と、
を含み、
前記第1カムのカム面および前記第2カムのカム面は、前記第1コントロールレバーのカムフォロア部および第2コントロールレバーのカムフォロア部に対して関連的に作用し、前記第1回動時期には前記リンク機構を前記一方の動作位置に拘束し、前記第2回動時期には前記リンク機構を前記他方の動作位置に拘束し、前記第1回動時期から前記第2回動時期への移行時には、前記リンク機構を前記一方の動作位置から前記他方の動作位置に動作させ、前記第2回動時期から前記第1回動時期への移行時には、前記リンク機構を前記他方の動作位置から前記一方の動作位置に動作させる
ことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記ドアの開動途中または閉動途中において、前記第2回動時期から前記第1回動時期に移行させることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記リンク機構は、前記ドアの開動途中または閉動途中において、前記第1回動時期から前記第2回動時期に移行させることを特徴とする請求項1に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記第1カムまたは前記第2カムのカム面の一方の起部による前記第1コントロールレバーまたは第2コントロールレバーの一方の回動阻止が解かれたときに、前記第1コントロールレバーまたは第2コントロールレバーの他方のカムフォロア部が前記第1カムまたは第2カムのカム面の他方の傾斜部に案内されて浮上移動して、前記第1コントロールレバーまたは第2コントロールレバーの他方が回動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のヒンジ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−283363(P2006−283363A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103949(P2005−103949)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】