説明

ヒンジ

【課題】付勢部材の付勢力による破損を防止しつつ外形寸法を小さくすることが可能なヒンジを提供する。
【解決手段】複合機の本体に原稿圧着板を回動可能に連結するヒンジ100に、一端部に開口するとともに他端部に底面115を有する収容室113が形成されるケース部材110と、ケース部材110の一端部に回動可能に連結され、ケース部材110の一端部に対向する部分にカム部121が形成される回動部材120と、収容室113に収容され、収容室113の内壁面114に当接しつつ回動部材120に接近する方向および回動部材120から離間する方向に移動可能なスライダ150と、収容室113に収容され、スライダ150を回動部材120に接近する方向に付勢するバネ161・162と、を具備し、ケース部材110をガラス繊維強化型ポリアミドで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)を具備するとともに、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。
原稿圧着板は原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものである。原稿圧着板は、一般的には原稿圧着板の端部がヒンジにより事務機器の本体の上面の端部に回動可能に連結される。
【0003】
このような原稿圧着板は、原稿を原稿読み取り部に密着させるためにある程度の重量を要する。また、原稿圧着板が原稿自動送り装置(Auto Document Feeder;ADF)を具備する場合、原稿圧着板の重量は更に増大する。
従って、従来の事務機器の本体と原稿圧着板とを連結するヒンジは、事務機器の本体に固定される取り付け部材と、原稿圧着板に固定される支持部材と、これらの部材の間に配置されるバネと、を具備し、当該バネの付勢力で原稿圧着板の重量を支えることにより、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)を任意の角度で保持し、ひいては作業者が原稿圧着板を回動(開閉)させて原稿読み取り部へ原稿を載置する作業を容易にしている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0004】
特許文献1に記載のヒンジには原稿圧着板(およびADF)の荷重、およびバネの付勢力(弾性力)が作用するので、当該ヒンジの主たる構造体を成す部材である取り付け部材および支持部材には相応の強度が要求される。
従って、特許文献1に記載のヒンジの取り付け部材および支持部材は、金属板を適宜折り曲げることにより製造される。
【0005】
近年、ヒンジの製造コストの削減等を目的として、ヒンジの主たる構造体を成す部材を樹脂材料で構成したヒンジも知られている。例えば、特許文献2に記載の如くである。
特許文献2に記載のヒンジは主としてヒンジハウジング、カムベース、プランジャおよびスプリングを具備し、スプリングを除く部材はプラスチック材からなる。
【0006】
しかし、ヒンジの構造体を成す部材にはスプリングの付勢力(弾性力)が常時作用する。
そのため、ヒンジの構造体を成す部材を種々の用途に用いられる一般的な樹脂材料(例えば、ポリオキシメチレン)で構成した場合、これらの部材の強度を確保し、スプリングの付勢力による破損を防止するためにはこれらの部材の各部を肉厚にする等の対策を施す必要がある。
その結果、主たる構造体を成す部材を樹脂材料で構成したヒンジは、これらの構造体を金属材料で構成したヒンジよりも大型化しやすい(外形寸法が大きくなる)という問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−212910号公報
【特許文献2】特開2003−129739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、付勢部材の付勢力による破損を防止しつつ外形寸法を小さくすることが可能なヒンジを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、
第一連結対象物に第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部に開口するとともに他端部に底面を有する収容室が形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか一方に固定される第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結され、前記第一ウイング部材の一端部に対向する部分にカムが形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか他方に固定される第二ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の収容室に収容され、前記収容室の内壁面に当接しつつ前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記第一ウイング部材の収容室に収容され、一端部が前記第一ウイング部材の収容室の底面に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記第二ウイング部材に接近する方向に付勢し、前記スライド部材を前記第二ウイング部材のカムに当接させることにより前記第二ウイング部材を第一ウイング部材に対して開く方向に回動させる付勢部材と、
を具備し、
前記第一ウイング部材はガラス繊維強化型ポリアミドで構成されるものである。
【0011】
請求項2においては、
金属材料からなり、前記第一ウイング部材の一端部に形成された一対の貫通孔および前記第二ウイング部材に形成された貫通孔に貫装されることにより前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する回動ピンを具備するものである。
【0012】
請求項3においては、
金属材料からなり、一端部が前記回動ピンに係止され、他端部が前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する補強部材を具備するものである。
【0013】
請求項4においては、
前記補強部材は、
一端部に前記回動ピンを貫装するための貫通孔が形成されるアーム部と、
前記アーム部の他端部に連なり、前記アーム部に対して屈曲されることにより前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する当接部と、
を具備するものである。
【0014】
請求項5においては、
前記アーム部には係合孔が形成され、
前記第一ウイング部材の外周面には前記係合孔に係合する係合突起が形成されるものである。
【0015】
請求項6においては、
前記第一ウイング部材の外周面には前記アーム部を収容する収容溝が形成されるものである。
【0016】
請求項7においては、
前記アーム部は一対の端面を有し、
前記収容溝は一対の壁面を有し、
前記アーム部が前記収容溝に収容されたとき、
前記アーム部の一対の端面は前記収容溝の一対の壁面に当接するものである。
【0017】
請求項8においては、
前記第一ウイング部材の外周面のうち前記収容室の底面に対応する部分には前記当接部を収容する副収容溝が形成されるものである。
【0018】
請求項9においては、
前記当接部は一対の端面を有し、
前記副収容溝は一対の壁面を有し、
前記当接部が前記副収容溝に収容されたとき、前記当接部の一対の端面は前記副収容溝の一対の壁面に当接するものである。
【0019】
請求項10においては、
金属材料からなり、前記第一ウイング部材の一端部に形成された一対の副貫通孔に貫装され、前記第二ウイング部材が第一ウイング部材に対して所定の回動角度まで開く方向に回動したときに前記第二ウイング部材に当接することにより、前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して所定の回動角度よりも大きい角度まで回動することを規制する回動規制ピンを具備するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、付勢部材の付勢力による破損を防止しつつヒンジの外形寸法を小さくすることが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るヒンジの第一実施形態および第二実施形態のうちいずれかを備える複合機を示す右側面図。
【図2】閉じているときの本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す斜視図。
【図3】閉じているときの本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面図。
【図4】閉じているときの本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面断面図。
【図5】本発明に係るヒンジの第一実施形態におけるケース部材を示す斜視図。
【図6】同じく本発明に係るヒンジの第一実施形態におけるケース部材を示す斜視図。
【図7】本発明に係るヒンジの第一実施形態における回動部材を示す斜視図。
【図8】(a)本発明に係るヒンジの第一実施形態および第二実施形態における回動ピンを示す斜視図、(b)本発明に係るヒンジの第一実施形態および第二実施形態における回動規制ピンを示す斜視図。
【図9】本発明に係るヒンジの第一実施形態におけるスライダを示す斜視図。
【図10】開いているときの本発明に係るヒンジの第一実施形態を示す右側面断面図。
【図11】閉じているときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す斜視図。
【図12】同じく閉じているときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す斜視図。
【図13】閉じているときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面図。
【図14】閉じているときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面断面図。
【図15】本発明に係るヒンジの第二実施形態におけるケース部材を示す斜視図。
【図16】同じく本発明に係るヒンジの第二実施形態におけるケース部材を示す斜視図。
【図17】本発明に係るヒンジの第二実施形態における回動部材を示す斜視図。
【図18】本発明に係るヒンジの第二実施形態におけるスライダを示す斜視図。
【図19】本発明に係るヒンジの第二実施形態における補強部材を示す斜視図。
【図20】開いているときの本発明に係るヒンジの第二実施形態を示す右側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では図1を用いて事務機器の実施の一形態である複合機1について説明する。
複合機1は本体2および原稿圧着板3を具備する。
また、複合機1はヒンジ100およびヒンジ200のうちのいずれかを具備する。
【0023】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置およびADFの動作を制御する。
また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は本体2の上面前部に配置される。
【0024】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADFおよび読取後原稿収容トレイを具備する。
ADF(Auto Document Feeder)は読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0025】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0026】
以下で詳述するヒンジ100およびヒンジ200はいずれも複合機1の本体2に原稿圧着板3を開閉可能(回動可能)に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材のうちの一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体にトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)を開閉可能に連結する用途、自動車の車体にボンネットを開閉可能に連結する用途、便器に便座を開閉可能に連結する用途、等が挙げられる。
【0027】
以下の説明では、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向(原稿圧着板3の下面が本体2の上面から離間する方向)に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(図1および図10参照)。
【0028】
以下では、図1から図10を用いて本発明に係るヒンジの第一実施形態であるヒンジ100について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ100は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
【0029】
図2、図3および図4に示す如く、ヒンジ100はケース部材110、回動部材120、回動ピン130、回動規制ピン140、Eリング145、スライダ150およびバネ161・162を具備する。
【0030】
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100を構成する各部材の形状を説明する(図1から図4参照)。
【0031】
図5および図6に示すケース部材110は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。
ケース部材110は筒部111および支持部116を具備する。本実施形態のケース部材110は樹脂材料からなり、筒部111および支持部116が一体的に成形される。
ケース部材110を構成する樹脂材料の具体例については後述する。
【0032】
筒部111はケース部材110の下半部を成す部分である。筒部111の外形は概ね円柱形状であり、筒部111は外周面および下端面を有する。
【0033】
図6に示す如く、筒部111の外周面の下端部かつ後端部となる部分には突起112が形成される。本実施形態の突起112は板状であり、筒部111の外周面の下端部かつ後端部となる部分から筒部111の後方に向かって突出する。
【0034】
図4から図6に示す如く、筒部111の内部には収容室113が形成される。
収容室113は本発明に係る収容室の実施の一形態であり、筒部111の内部に形成される空間である。収容室113は筒部111の上端部(一端部)に開口する。換言すれば、収容室113は筒部111の上端部において筒部111の外部と連通している。
【0035】
図4に示す如く、収容室113は内壁面114および底面115を有する。
内壁面114は収容室113の内周面のうち収容室113の開口部分に連なる面であり、筒部111の外周面に対応する(筒部111の外周面の裏側の面を成す)。
底面115は収容室113の内周面のうち内壁面114に連なる面であり、筒部111の下端面に対応する(筒部111の下端面の裏側の面を成す)。
【0036】
図5および図6に示す如く、内壁面114にはガイド溝114a・114b・114c・114dが形成される。
ガイド溝114aは内壁面114の前端部に形成される溝である。ガイド溝114bは内壁面114の左端部に形成される溝である。ガイド溝114cは内壁面114の後端部に形成される溝である。ガイド溝114dは内壁面114の右端部に形成される溝である。
ガイド溝114a・114b・114c・114dはいずれも上下方向に延びており、筒部111の上下略中央部から筒部111の上端部(収容室113の開口部分)まで切り通されている。
【0037】
支持部116はケース部材110の上半部を成す部分である。支持部116は筒部111の上端部に連なっており、筒部111の収容室113の開口部分に沿って設けられる。
【0038】
支持部116の左側部の上端部には貫通孔117Lが形成される。貫通孔117Lは支持部116の左側部を左右方向に貫通する。
支持部116の右側部の上端部には貫通孔117Rが形成される。貫通孔117Rは支持部116の右側部を左右方向に貫通する。
貫通孔117L・117Rは側面視で重なる(一致する)。
貫通孔117L・117Rは本発明に係る「第一ウイング部材の一端部に形成された一対の貫通孔」の実施の一形態である。
【0039】
支持部116の左側部において貫通孔117Lの後下方となる部分には副貫通孔118Lが形成される。副貫通孔118Lは支持部116の左側部を左右方向に貫通する。
支持部116の右側部において貫通孔117Rの後下方となる部分には副貫通孔118Rが形成される。副貫通孔118Rは支持部116の右側部を左右方向に貫通する。
副貫通孔118L・118Rは側面視で重なる(一致する)。
副貫通孔118L・118Rは本発明に係る「第一ウイング部材の一端部に形成された一対の副貫通孔」の実施の一形態である。
【0040】
支持部116の前部には摩擦溝119L・119M・119Rが形成される。
摩擦溝119L・119M・119Rは前後方向に延びた溝であり、左から右に向かって摩擦溝119L、摩擦溝119M、摩擦溝119Rの順に所定の間隔を空けて並んだ状態で配置される。
【0041】
本実施形態では複合機1の本体2の上面後端部に形成された平面視円形の固定穴(不図示)にケース部材110の筒部111を差し込むことにより、ケース部材110が本体2に固定される(図1参照)。
【0042】
ケース部材110が上記固定穴に差し込まれたとき、筒部111の外周面が固定穴の内周面に当接することにより、本体2に対するケース部材110、ひいてはヒンジ100の位置が定められる。
【0043】
また、ケース部材110が上記固定穴に差し込まれたとき、突起112は上記固定穴の後側の内周面の下半部に形成された「上下方向に延びた溝」に係合する。
このように構成することにより、ヒンジ100に過負荷が作用した場合(例えば、分厚い原稿を原稿圧着板3で本体2の上面に押し付けた場合等)に本体2に対するケース部材110(ひいてはヒンジ100)の上下方向の移動を許容して当該過負荷を回避し、かつ、ヒンジ100(ひいては原稿圧着板3)が本体2から脱落することを防止することが可能である。
【0044】
図7に示す回動部材120は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。
回動部材120はカム部121および取り付け部126を具備する。本実施形態の回動部材120は樹脂材料からなり、カム部121および取り付け部126が一体的に成形される。回動部材120を構成する樹脂材料の具体例については、後述する。
【0045】
カム部121は回動部材120の後半部を成す部分である。換言すれば、回動部材120の後半部にはカム部121が形成される。カム部121は本発明に係るカムの実施の一形態である。
カム部121は左右一対の側面およびカム面122を有する。図4および図7の(b)に示す如く、本実施形態のカム面122は滑らかな曲面であり、実質的にはカム部121の下面および後面を合わせたものである。
図7に示す如く、カム部121には貫通孔123が形成される。貫通孔123はカム部121を左右方向に貫通する。貫通孔123は本発明に係る「第二ウイング部材に形成された貫通孔」の実施の一形態である。
図7の(b)に示す如く、カム部121には摩擦突起124L・124M・124Rが形成される。摩擦突起124L・124M・124Rはカム部121の前下部から下方に向かって突出する突起であり、左から右に向かって摩擦突起124L・124M・124Rの順に所定の間隔を空けて並んだ状態で配置される。
【0046】
取り付け部126は回動部材120の前半部を成す部分であり、カム部121に連なっている。
取り付け部126には取り付け孔126a・126b・126c・126dが形成される。
取り付け孔126aは取り付け部126の左端部に配置される。取り付け孔126bは取り付け部126の左右中央部に配置される。取り付け孔126cは取り付け部126の右端部に配置される。取り付け孔126dは取り付け部126の左右中央部かつ取り付け孔126bの前方となる部分に配置される。
取り付け孔126a・126b・126c・126dはいずれも取り付け部126を上下方向に貫通する。
【0047】
本実施形態では取り付け孔126a・126b・126c・126dにネジ(不図示)を貫装し、これらのネジを複合機1の原稿圧着板3の下面後端部に形成されたネジ孔(不図示)に螺装することにより、取り付け部126、ひいては回動部材120が原稿圧着板3に固定される(図1参照)。
【0048】
図8の(a)に示す回動ピン130は本発明に係る回動ピンの実施の一形態である。
回動ピン130は胴体部131および頭部132を有する。本実施形態の回動ピン130は金属材料からなる。より詳細には、回動ピン130はステンレス鋼の線材を圧延加工することにより製造される。
【0049】
胴体部131は回動ピン130の胴体を成す略円柱形状の部分である。胴体部131の一端部(先端部)にはカシメ穴131aが形成される。
カシメ穴131aは胴体部131の一端部(先端部)の端面に形成された穴である。カシメ穴131aが形成されることにより、胴体部131の一端部(先端部)には薄肉部(略円筒形状の部分)が形成される。
【0050】
頭部132は胴体部131の他端部(基端部)に連なる略円盤形状の部分である。頭部132の外径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも大きい。
【0051】
図2、図3、図5および図8の(a)に示す如く、回動ピン130の胴体部131はケース部材110の支持部116の右側部に形成された貫通孔117Rに貫装され、回動部材120のカム部121に形成された貫通孔123に貫装され、ケース部材110の支持部116の左側部に形成された貫通孔117Lに貫装される。
【0052】
貫通孔123の内径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりもわずかに小さく、かつ貫通孔117Lおよび貫通孔117Rの内径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりもわずかに大きい。
従って、回動ピン130の胴体部131が貫通孔123に貫装されたとき、回動ピン130は回動部材120に圧入されることとなり、回動部材120に脱落不能(軸線方向に移動不能)かつ相対回転不能に固定される。
また、回動ピン130の胴体部131が貫通孔117L・117Rに貫装されたとき、回動ピン130はケース部材110に回転可能に軸支される。
【0053】
結果として、回動部材120は回動ピン130によりケース部材110の一端部(上端部)に回動可能に連結され、ひいては、ヒンジ100により原稿圧着板3(の下面後端部)が本体2(の上面後端部)に回動可能に連結される。
このように、回動ピン130はヒンジ100のケース部材110に対する回動部材120の回動軸を成す。
なお、回動部材120がケース部材110の一端部(上端部)に回動可能に連結されたとき、カム面122、ひいてはカム部121はケース部材110の一端部に対向する。
【0054】
回動ピン130の頭部132の外径(直径)は貫通孔117Rの内径(直径)よりも大きい。
また、回動ピン130の胴体部131の一端部(先端部)に形成された薄肉部を回動ピン130の半径方向(軸線方向に垂直な方向)に押し広げるようにカシメる(塑性変形させる)ことにより、回動ピン130の一端部、すなわちカシメられた部分の外径(直径)を貫通孔117Lの内径(直径)よりも大きくすることが可能である。
従って、回動ピン130の胴体部131を貫通孔117R、貫通孔123および貫通孔117Lに貫装した状態で胴体部131の一端部(先端部)に形成された薄肉部(カシメ穴131aに対応する部分)をカシメることにより、回動ピン130をケース部材110に対して脱落不能に固定することが可能である。
【0055】
本実施形態では回動ピン130をケース部材110および回動部材120に対して別体としたが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係る第一ウイング部材または第二ウイング部材のいずれか一方に「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸(第一ウイング部材に第二ウイング部材を回動可能に連結するための回動軸)」を一体的に形成しても良い。
ただし、本発明のヒンジの強度を向上させる観点からは、「第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動軸(第一ウイング部材に第二ウイング部材を回動可能に連結するための回動軸)」を金属材料(第一ウイング部材を構成する樹脂材料および第二ウイング部材を構成する樹脂材料よりも高い強度を有する材料)で構成することが望ましい。
【0056】
図8の(b)に示す回動規制ピン140は本発明に係る回動規制ピンの実施の一形態である。
回動規制ピン140は胴体部141および頭部142を有する。本実施形態の回動規制ピン140は金属材料からなる。より詳細には、回動規制ピン140はステンレス鋼の線材を圧延加工することにより製造される。
【0057】
胴体部141は回動規制ピン140の胴体を成す略円柱形状の部分である。胴体部141の外周面の一端部(先端部)にはリング状の嵌合溝141aが形成される。
【0058】
頭部142は胴体部141の他端部(基端部)に連なる略円盤形状の部分である。頭部142の外径(直径)は胴体部141の外径(直径)よりも大きい。
【0059】
図2、図3、図5および図8の(b)に示す如く、回動規制ピン140の胴体部141はケース部材110の支持部116に形成された副貫通孔118Rに貫装され、ケース部材110の支持部116の左側部に形成された副貫通孔118Lに貫装される。
【0060】
回動規制ピン140の頭部142の外径(直径)は副貫通孔118Rの内径(直径)よりも大きい。
図2に示す如く、回動規制ピン140の胴体部141を貫通孔117Rおよび貫通孔117Lに貫装した状態でEリング145を嵌合溝141aに嵌装することにより、回動規制ピン140をケース部材110に対して脱落不能に固定することが可能である。
【0061】
図9に示すスライダ150は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
スライダ150は上面151、外周面152および下面153を有する概ね円柱形状の部材である。本実施形態のスライダ150は樹脂材料を一体的に成形することにより製造される。
【0062】
スライダ150には当接突起151aが形成される。当接突起151aは上面151の前半部に形成され、左右方向に延びるとともに上方に向かって突出する突起(凸条)である。
【0063】
スライダ150にはガイド突起152a・152b・152c・152dが形成される。
ガイド突起152aは外周面152の前端部に配置される。ガイド突起152aは上下方向に延びるとともに前方に向かって突出する突起(凸条)である。
ガイド突起152bは外周面152の左端部に配置される。ガイド突起152bは上下方向に延びるとともに左側方に向かって突出する突起(凸条)である。
ガイド突起152cは外周面152の後端部に配置される。ガイド突起152cは上下方向に延びるとともに後方に向かって突出する突起(凸条)である。
ガイド突起152dは外周面152の右端部に配置される。ガイド突起152dは上下方向に延びるとともに右側方に向かって突出する突起(凸条)である。
【0064】
図9の(b)に示す如く、スライダ150にはバネ受け穴153aが形成される。
バネ受け穴153aは下面153に開口し、上下方向に延びた穴である。バネ受け穴153aの形状は底面視で円形である。バネ受け穴153aは内周面および頂面を有する。
【0065】
図4に示す如く、スライダ150はケース部材110の収容室113に収容される。
スライダ150がケース部材110の収容室113に収容されたとき、スライダ150の外周面152は内壁面114に当接する。
また、ガイド突起152aはガイド溝114aに嵌合し、ガイド突起152bはガイド溝114bに嵌合し、ガイド突起152cはガイド溝114cに嵌合し、ガイド突起152dはガイド溝114dに嵌合する(図5、図6および図9参照)。
従って、スライダ150は、ケース部材110に対して上下方向に移動(摺動)可能であるが、ケース部材110に対して前後方向および左右方向に移動不能かつケース部材110に対して相対回転不能である。
このように、ケース部材110の収容室113に収容されたスライダ150は、ケース部材110の収容室113の内壁面114に当接しつつ、上下方向、ひいてはケース部材110に回動可能に連結された回動部材120に接近する方向および回動部材120から離間する方向に移動することが可能である。
図4に示す如く、スライダ150がケース部材110の収容室113に収容されたとき、スライダ150の上面151および当接突起151aは回動部材120(より詳細には、カム部121のカム面122)に対向する。
【0066】
図4に示すバネ161・162は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
本実施形態のバネ161・162はいずれも金属製の(金属材料からなる)巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。
バネ161・162はケース部材110の収容室113に収容される。
本実施形態のバネ161の内径はバネ162の外径よりも大きく、バネ161・162がケース部材110の収容室113に収容されたとき、バネ162はバネ161に貫装される。
バネ161・162がケース部材110の収容室113に収容されたとき、バネ161・162の一端部(下端部)は収容室113の底面115に当接し、バネ161・162の他端部(上端部)はスライダ150のバネ受け穴153aに挿入されてバネ受け穴153aの頂面に当接する。
バネ161・162はスライダ150をケース部材110の開口部分(上端部)から外部に突出する方向、すなわちケース部材110に回動可能に連結された回動部材120に接近する方向(本実施形態では上方)に付勢し、スライダ150の上面151に形成された当接突起151aを回動部材120のカム部121のカム面122に当接させる。
そのため、バネ161・162の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ161・162が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ150を経て回動部材120に伝達される。
結果として、バネ161・162は、バネ161・162の付勢力により回動部材120をケース部材110に対して右側面視で反時計回りに(開く方向に)回動させ、原稿圧着板3を本体2に対して開く方向に回動させる(図4および図10参照)。
【0067】
以下では、図4および図10を用いて原稿圧着板3を閉じるときのヒンジ100の挙動について説明する。
より詳細には、原稿圧着板3が完全に開いているときのヒンジ100の状態、「フリーストップ領域」におけるヒンジ100の挙動、および「落下領域」におけるヒンジ100の挙動について順に説明する。
【0068】
(原稿圧着板3が完全に開いているときのヒンジ100の状態について)
図10に示す如く、本実施形態では原稿圧着板3が完全に開いたとき(回動角度θが最大になったとき)の原稿圧着板3の回動角度θは60°である。
回動角度θが60°のとき、回動部材120のカム部121は回動規制ピン140の胴体部141に当接する。そのため、回動部材120はそれ以上開く方向に回動することができない。
換言すれば、回動規制ピン140が回動部材120に当接することにより、回動部材120がケース部材110に対して回動角度θが60°よりも大きい角度となるまで回動することが規制される。
【0069】
(「フリーストップ領域」におけるヒンジ100の挙動について)
本実施形態では、原稿圧着板3の回動角度θが10°以上(θ≧10°)の場合には原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する。
本実施形態における「フリーストップ領域」は、(A)「原稿圧着板3の重量に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(トルク)」と(B)「バネ161・162の付勢力に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(トルク)」とが概ね平衡する領域である。
ここで、『本実施形態における「フリーストップ領域」では(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡する』としたのは、本実施形態における「フリーストップ領域」には、(α)「(A)の回転力と(B)の回転力とが完全に平衡する領域((A)−(B)=0が成立する領域)」だけでなく、(β)「(A)の回転力と(B)の回転力との間に差分があり((A)−(B)≠0)、かつカム部121と当接突起151aとの当接部分に発生する摩擦力が当該差分を相殺可能な領域」も含まれるからである。なお、(A)の回転力と(B)の回転力との間の差分は、正の値の場合も負の値の場合もあり得る。
【0070】
原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向(原稿圧着板3の回動角度θが小さくなる方向)に回動した場合、(A)の回転力は増大する。
これは、原稿圧着板3に作用する重力を回動ピン130の半径方向(側面視で原稿圧着板3の前端部と回動ピン130を結ぶ方向)の成分および周方向(側面視で回動ピン130の半径方向に垂直な方向)の成分に分解した場合、原稿圧着板3の回動角度θが小さくなるほど周方向の成分、すなわち(A)の回転力が大きくなることによる。
【0071】
一方、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属する状態で原稿圧着板3が閉じる方向に回動した場合、回動部材120がケース部材110に対して右側面視で時計回りに回動し、回動部材120のカム部121のカム面122とスライダ150の当接突起151aとが当接する位置が変化し、スライダ150は下方に移動する(押し下げられる)。
スライダ150が下方に移動することにより、バネ161・162は圧縮され(バネ161・162の全長は小さくなり)、バネ161・162の付勢力が増大し、(B)の回転力が増大する。
その結果、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するとき、原稿圧着板3の回動角度θが変化しても(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡する。
より厳密には、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するときには原稿圧着板3の回動角度θが変化しても(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡するように回動部材120(カム部121)およびスライダ150(当接突起151a)の形状が予め設定される。
従って、原稿圧着板3が「フリーストップ領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3の回動角度θは保持される。
【0072】
(「落下領域」におけるヒンジ100の挙動について)
本実施形態では、原稿圧着板3の回動角度θが10°未満(0°≦θ<10°)の場合には原稿圧着板3が「落下領域」に属する。
本実施形態における「落下領域」は(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる領域である。より厳密には、本実施形態における「落下領域」は「(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きく、かつカム部121と当接突起151aとの当接部分に発生する摩擦力が(A)の回転力と(B)の回転力との差分を相殺不能な領域」である。
原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合、原稿圧着板3は自重(厳密には、(A)の回転力と(B)の回転力との差分)により閉じる方向に回動する。
【0073】
本実施形態では、原稿圧着板3が「落下領域」に属するとき、原稿圧着板3の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ150の位置がほとんど変化しない。
より厳密には、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときには原稿圧着板3の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ150の位置がほとんど変化しないように回動部材120(カム部121)およびスライダ150(当接突起151a)の形状が予め設定される。
その結果、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときには(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる。
【0074】
本実施形態では、原稿圧着板3が「落下領域」に属するとき、回動部材120に形成された摩擦突起124L・124M・124Rがケース部材110に形成された摩擦溝119L・119M・119Rに嵌合する(図4、図5、図7の(b)参照)。
このとき、摩擦突起124Lの左右の側面と摩擦溝119Lの左右の壁面とが当接し、摩擦突起124Mの左右の側面と摩擦溝119Mの左右の壁面とが当接し、摩擦突起124Rの左右の側面と摩擦溝119Rの左右の壁面とが当接する。
そして、摩擦突起124L・124M・124Rおよび摩擦溝119L・119M・119Rの間の当接部分において摩擦力が発生し、当該摩擦力により(A)の回転力と(B)の回転力との差分の一部が相殺される。
その結果、原稿圧着板3が「落下領域」に属するときに原稿圧着板3が閉じる方向に回動する速度が低下するので、原稿圧着板3が本体2に対して柔らかく閉じられる(原稿圧着板3が本体2に対して閉じられるときに原稿圧着板3は本体2に激しく衝突しない)。
【0075】
以下では、ケース部材110を構成する樹脂材料について説明する。
本実施形態のケース部材110は、「ガラス繊維強化型ポリアミド」で構成される。
本実施形態のケース部材110を構成する「ガラス繊維強化型ポリアミド」の具体例としては、(a)レニー(三菱ガス化学株式会社の登録商標)1002H、(b)レオナ(旭化成株式会社の登録商標)90G50、(c)レオナ(旭化成株式会社の登録商標)90G55、(d)レオナ(旭化成株式会社の登録商標)90G60、等が挙げられる。
「ガラス繊維強化型ポリアミド」は樹脂材料の一種であり、ポリアミド(Polyamide;PA)およびガラス繊維の混合物を指す。
「ガラス繊維強化型ポリアミド」を構成するポリアミドの具体例としては、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミドMXD6(PA−MXD6)等が挙げられる。
【0076】
上記(a)の引張強度(乾燥時、室温)は180MPa程度である。上記(a)におけるガラス繊維の混合比率は30重量%である。
上記(b)の引張強度(乾燥時、室温)は240MPa程度である。上記(b)におけるガラス繊維の混合比率は50重量%である。
上記(c)の引張強度(乾燥時、室温)は230MPa程度である。上記(c)におけるガラス繊維の混合比率は55重量%である。
上記(d)の引張強度(乾燥時、室温)は190MPa程度である。上記(d)におけるガラス繊維の混合比率は60重量%である。
【0077】
一般的な樹脂材料の引張強度(乾燥時、室温)を以下に示す。
ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene;POM)の引張強度(乾燥時、室温)は60MPa程度である。
ポリブチレンテレフタレート(Polybutyleneterephtalate;PBT)の引張強度(乾燥時、室温)は60MPa程度である。
ポリフェニレンスルファイド(Polyphenylenesulfide;PPS)の引張強度(乾燥時、室温)は80MPa程度である。
ポリアミド6の引張強度(乾燥時、室温)は160MPa程度である。
【0078】
このように、ケース部材110を「ガラス繊維強化型ポリアミド」で構成した場合、ケース部材110を一般的な樹脂材料で構成した場合よりもケース部材110の引張強度が向上するので、その分だけバネ161・162の付勢力による破損を防止することが可能である。
また、ケース部材110を「ガラス繊維強化型ポリアミド」で構成した場合、ケース部材110を一般的な樹脂材料で構成した場合と同等の強度を保持しつつ、ケース部材110の外形寸法(肉厚)を小さくすることが可能である。
【0079】
本実施形態では、ケース部材110だけでなく、回動部材120およびスライダ150を構成する樹脂材料も「ガラス繊維強化型ポリアミド」であるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジの用途(要求される強度)に応じて、本発明に係る第二ウイング部材およびスライド部材を「ガラス繊維が混合されていない樹脂材料(「ガラス繊維強化型ポリアミド」ではない樹脂材料)」、あるいは金属材料で構成しても良い。
【0080】
以上の如く、ヒンジ100は、
複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部(上端部)に開口するとともに他端部(下端部)に底面115を有する収容室113が形成され、本体2に固定されるケース部材110と、
ケース部材110の一端部(上端部)に回動可能に連結され、ケース部材110の一端部(上端部)に対向する部分にカム部121が形成され、原稿圧着板3に固定される回動部材120と、
ケース部材110の収容室113に収容され、収容室113の内壁面114に当接しつつ回動部材120に接近する方向および回動部材120から離間する方向に移動可能なスライダ150と、
ケース部材110の収容室113に収容され、一端部がケース部材110の収容室113の底面115に当接するとともに他端部がスライダ150に当接し、スライダ150を回動部材120に接近する方向に付勢し、スライダ150を回動部材120のカム部121に当接させることにより回動部材120をケース部材110に対して開く方向に回動させるバネ161・162と、
を具備し、
ケース部材110はガラス繊維強化型ポリアミドで構成される。
このように構成することにより、バネ161・162の付勢力による破損を防止しつつヒンジ100の外形寸法を小さくすることが可能である。
【0081】
また、ヒンジ100は、
金属材料からなり、ケース部材110の一端部(上端部)に形成された一対の貫通孔117L・117Rおよび回動部材120に形成された貫通孔123に貫装されることにより回動部材120をケース部材110の一端部(上端部)に回動可能に連結する回動ピン130を具備する。
このように構成することにより、ケース部材110に対する回動部材120の回動軸たる回動ピン130の強度を確保することが可能である。
【0082】
また、ヒンジ100は、
金属材料からなり、ケース部材110の一端部に形成された一対の副貫通孔118L・118Rに貫装され、回動部材120がケース部材110に対して所定の回動角度(本実施形態の場合、θ=60°)まで開く方向に回動したときに回動部材120に当接することにより、回動部材120がケース部材110に対して所定の回動角度よりも大きい角度まで回動することを規制する回動規制ピン140を具備する。
このように構成することにより、簡素な構造でケース部材110に対する回動部材120の回動角度の上限値を設定することが可能である。
また、ケース部材110において一対の副貫通孔118L・118Rが形成される位置を変更することにより、ケース部材110に対する回動部材120の回動角度の上限値を容易に変更することが可能である。
【0083】
本実施形態ではケース部材110が複合機1の本体2に固定され、回動部材120が原稿圧着板3に固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、本体2および原稿圧着板3の形状によっては、ケース部材110が原稿圧着板3に固定され、回動部材120が本体2に固定されても良い。
このように、本発明に係る第一ウイング部材が第一連結対象物または第二連結対象物のいずれか一方に固定され、本発明に係る第二ウイング部材が第一連結対象物または第二連結対象物のいずれか他方(第一連結対象物または第二連結対象物のうち、第一ウイング部材が固定されなかった方の部材)に固定されれば良い。
【0084】
以下では、図1、図8、および図11から図20を用いて本発明に係るヒンジの第二実施形態であるヒンジ200について説明する。
図1に示す如く、ヒンジ200は複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
【0085】
図11から図14に示す如く、ヒンジ200はケース部材210、回動部材220、回動ピン230、回動規制ピン240、Eリング245、スライダ250、バネ261・262および補強部材270を具備する。
【0086】
以下では便宜上、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ200の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ200を構成する各部材の形状を説明する(図1および図11から図14参照)。
【0087】
図15および図16に示すケース部材210は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。
ケース部材210は筒部211および支持部216を具備する。本実施形態のケース部材210は樹脂材料からなり、筒部211および支持部216が一体的に成形される。
ケース部材210を構成する樹脂材料の具体例は、前述のケース部材110を構成する樹脂材料と同様である。
【0088】
筒部211はケース部材210の下半部を成す部分である。筒部211の外形は概ね円柱形状であり、筒部211は外周面および下端面を有する。
【0089】
図12および図15に示す如く、筒部211の外周面の下端部かつ後端部となる部分には突起212が形成される。本実施形態の突起212は板状であり、筒部211の外周面の下端部かつ後端部となる部分から筒部211の後方に向かって突出する。
【0090】
図14および図15に示す如く、筒部211の内部には収容室213が形成される。
収容室213は本発明に係る収容室の実施の一形態であり、筒部211の内部に形成される空間である。収容室213は筒部211の上端部(一端部)に開口する。換言すれば、収容室213は筒部211の上端部において筒部211の外部と連通している。
【0091】
図14に示す如く、収容室213は内壁面214および底面215を有する。
内壁面214は収容室213の内周面のうち収容室213の開口部分に連なる面であり、筒部211の外周面に対応する(筒部211の外周面の裏側の面を成す)。
底面215は収容室213の内周面のうち内壁面214に連なる面であり、筒部211の下端面に対応する(筒部211の下端面の裏側の面を成す)。
【0092】
図15に示す如く、内壁面214にはガイド溝214a・214cが形成される。
ガイド溝214aは内壁面214の前端部に形成される溝である。ガイド溝214cは内壁面214の後端部に形成される溝である。
ガイド溝214a・214cはいずれも上下方向に延びており、筒部211の上下略中央部から筒部211の上端部(収容室213の開口部分)まで切り通されている。
【0093】
支持部216はケース部材210の上半部を成す部分である。支持部216は筒部211の上端部に連なっており、筒部211の収容室213の開口部分に沿って設けられる。
【0094】
支持部216の左側部の上端部には貫通孔217Lが形成される。貫通孔217Lは支持部216の左側部を左右方向に貫通する。
支持部216の右側部の上端部には貫通孔217Rが形成される。貫通孔217Rは支持部216の右側部を左右方向に貫通する。貫通孔217L・217Rは側面視で重なる(一致する)。
貫通孔217L・217Rは本発明に係る「第一ウイング部材の一端部に形成された一対の貫通孔」の実施の一形態である。
【0095】
支持部216の左側部において貫通孔217Lの後下方となる部分には副貫通孔218Lが形成される。副貫通孔218Lは支持部216の左側部を左右方向に貫通する。
支持部216の右側部において貫通孔217Rの後下方となる部分には副貫通孔218Rが形成される。副貫通孔218Rは支持部216の右側部を左右方向に貫通する。副貫通孔218L・218Rは側面視で重なる(一致する)。
副貫通孔218L・218Rは本発明に係る「第一ウイング部材の一端部に形成された一対の副貫通孔」の実施の一形態である。
【0096】
ケース部材210の外周面の右端部には収容溝219aが形成される。収容溝219aは本発明に係る収容溝の実施の一形態である。
収容溝219aはケース部材210の支持部216の右側部の右側面から筒部211の外周面の右端部にかけて形成される溝であり、上下方向に延びている。収容溝219aは前後方向に対して平行な面である一対の壁面219b・219c、および左右方向に対して平行な面である底面219dを有する。
収容溝219aの上端部は貫通孔217Rの上方まで到達し、収容溝219aの下端部は筒部211の外周面の右下端部まで到達する。
【0097】
ケース部材210の外周面には係合突起219eが形成される。係合突起219eは本発明に係る係合突起の実施の一形態である。
本実施形態の係合突起219eはケース部材210の外周面のうち収容溝219aの底面219dの上下略中央部かつ前後略中央部となる部分に形成され、右側方に向かって突出する。係合突起219eの形状は右側面視で概ね上下方向にやや長い長方形である。
なお、本実施形態の係合突起219eの右側方への突出量(係合突起219eの基部から先端部までの高さ)を収容溝219aの深さよりも小さくすることにより、係合突起219eの先端部が収容溝219aの開口部分よりも右側方に突出しない(係合突起219eの先端部は収容溝219aの開口部分よりも左側に配置される)。
【0098】
図16に示す如く、ケース部材210の筒部111の下端面、すなわちケース部材210の外周面のうち収容室113の底面115に対応する(底面115と表裏を成す)部分には副収容溝219fが形成される。副収容溝219fは本発明に係る副収容溝の実施の一形態である。
副収容溝219fは筒部111の下端面に形成される溝であり、左右方向に延びている。
副収容溝219fは、前後方向に対して平行な面である一対の壁面219g・219h、および上下方向に対して平行な面である底面219iを有する。
副収容溝219fの右端部は筒部111の下端面の右端部まで到達し、収容溝219aの下端部に連なる。副収容溝219fの左端部は筒部111の下端面の左端部まで到達する。
【0099】
ケース部材210の筒部111の外周面の左下端部には係合溝219jが形成される。
本実施形態の係合溝219jは上下方向にわずかに延びた溝であり、係合溝219jは前後方向に対して平行な一対の壁面、上下方向に対して平行な上端面、および左右方向に対して平行な底面を有する。係合溝219jの下端部は副収容溝219fの左端部に連なる。
【0100】
本実施形態では複合機1の本体2の上面後端部に形成された平面視円形の固定穴(不図示)にケース部材210の筒部211を差し込むことにより、ケース部材210が本体2に固定される(図1参照)。
【0101】
ケース部材210が上記固定穴に差し込まれたとき、筒部211の外周面が固定穴の内周面に当接することにより、本体2に対するケース部材210、ひいてはヒンジ200の位置が定められる。
【0102】
また、ケース部材210が上記固定穴に差し込まれたとき、突起212は上記固定穴の後側の内周面の下半部に形成された「上下方向に延びた溝」に係合する。
このように構成することにより、ヒンジ200に過負荷が作用した場合(例えば、分厚い原稿を原稿圧着板3で本体2の上面に押し付けた場合等)に本体2に対するケース部材210(ひいてはヒンジ200)の上下方向の移動を許容して当該過負荷を回避し、かつ、ヒンジ200(ひいては原稿圧着板3)が本体2から脱落することを防止することが可能である。
【0103】
図17に示す回動部材220は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。
回動部材220はカム部221および取り付け部226を具備する。本実施形態の回動部材220は樹脂材料からなり、カム部221および取り付け部226が一体的に成形される。回動部材220を構成する樹脂材料は、先述の回動部材120を構成する樹脂材料と同様である。
【0104】
カム部221は回動部材220の後半部を成す部分である。換言すれば、回動部材220の後半部にはカム部221が形成される。カム部221は本発明に係るカムの実施の一形態である。
カム部221は左右一対の側面およびカム面222を有する。図14および図17の(b)に示す如く、本実施形態のカム面222は滑らかな曲面であり、実質的にはカム部221の下面および後面を合わせたものである。
図17に示す如く、カム部221には貫通孔223が形成される。貫通孔223はカム部221を左右方向に貫通する。貫通孔223は本発明に係る「第二ウイング部材に形成された貫通孔」の実施の一形態である。
【0105】
取り付け部226は回動部材220の前半部を成す部分であり、カム部221に連なっている。
取り付け部226には取り付け孔226a・226b・226c・226dが形成される。取り付け孔226aは取り付け部226の左端部に配置され、取り付け孔226bは取り付け部226の左右中央部に配置され、取り付け孔226cは取り付け部226の右端部に配置され、取り付け孔226dは取り付け部226の左右中央部かつ取り付け孔226bの前方となる部分に配置される。取り付け孔226a・226b・226c・226dはいずれも取り付け部226を上下方向に貫通する。
【0106】
本実施形態では取り付け孔226a・226b・226c・226dにネジ(不図示)を貫装し、これらのネジを複合機1の原稿圧着板3の下面後端部に形成されたネジ孔(不図示)に螺装することにより、取り付け部226、ひいては回動部材220が原稿圧着板3に固定される(図1参照)。
【0107】
図8の(a)に示す回動ピン230は本発明に係る回動ピンの実施の一形態である。
回動ピン230は胴体部231および頭部232を有する。胴体部231の一端部(先端部)にはカシメ穴231aが形成される。
本実施形態の回動ピン230の形状は先述した回動ピン130の形状と同じであるため、回動ピン230の形状についての説明は省略する。
本実施形態の回動ピン230は金属材料からなる。より詳細には、回動ピン230はステンレス鋼の線材を圧延加工することにより製造される。
【0108】
図11から図17に示す如く、回動ピン230の胴体部231はケース部材210の支持部216の右側部に形成された貫通孔217Rに貫装され、回動部材220のカム部221に形成された貫通孔223に貫装され、ケース部材210の支持部216の左側部に形成された貫通孔217Lに貫装される。
その結果、回動部材220は回動ピン230によりケース部材210の一端部(上端部)に回動可能に連結され、ひいては、ヒンジ200により原稿圧着板3(の下面後端部)が本体2(の上面後端部)に回動可能に連結される。
このように、回動ピン230はヒンジ200のケース部材210に対する回動部材220の回動軸を成す。
なお、回動部材220がケース部材210の一端部(上端部)に回動可能に連結されたとき、カム面222、ひいてはカム部221はケース部材210の一端部に対向する。
【0109】
図8の(b)に示す回動規制ピン240は本発明に係る回動規制ピンの実施の一形態である。
回動規制ピン240は胴体部241および頭部242を有する。胴体部241の外周面の一端部(先端部)にはリング状の嵌合溝241aが形成される。
本実施形態の回動規制ピン240の形状は先述した回動規制ピン140の形状と同じであるため、回動規制ピン240の形状についての説明は省略する。
本実施形態の回動規制ピン240は金属材料からなる。より詳細には、回動規制ピン240はステンレス鋼の線材を圧延加工することにより製造される。
【0110】
図11から図16に示す如く、回動規制ピン240の胴体部241はケース部材210の支持部216に形成された副貫通孔218Rに貫装され、ケース部材210の支持部216の左側部に形成された副貫通孔218Lに貫装される。
図11に示す如く、回動規制ピン240の胴体部241を貫通孔217Rおよび貫通孔217Lに貫装した状態でEリング245を嵌合溝241aに嵌装することにより、回動規制ピン240をケース部材210に対して脱落不能に固定することが可能である。
【0111】
図18に示すスライダ250は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
スライダ250は上面251、外周面252および下面253を有する概ね円柱形状の部材である。本実施形態のスライダ250は樹脂材料を一体的に成形することにより製造される。スライダ250を構成する樹脂材料は、先述のスライダ150を構成する樹脂材料と同様である。
【0112】
スライダ250には当接突起251aが形成される。当接突起251aは上面251の前半部に形成され、左右方向に延びるとともに上方に向かって突出する突起(凸条)である。
【0113】
スライダ250にはガイド突起252a・252cが形成される。
ガイド突起252aは外周面252の前端部に配置される。ガイド突起252aは上下方向に延びるとともに前方に向かって突出する突起(凸条)である。
ガイド突起252cは外周面252の後端部に配置される。ガイド突起252cは上下方向に延びるとともに後方に向かって突出する突起(凸条)である。
【0114】
図18の(b)に示す如く、スライダ250にはバネ受け穴253aが形成される。
バネ受け穴253aは下面253に開口し、上下方向に延びた穴である。バネ受け穴253aの形状は底面視で円形である。バネ受け穴253aは内周面および頂面を有する。
【0115】
図14に示す如く、スライダ250はケース部材210の収容室213に収容される。
スライダ250がケース部材210の収容室213に収容されたとき、スライダ250の外周面252は内壁面214に当接する。
また、ガイド突起252aはガイド溝214aに嵌合し、ガイド突起252cはガイド溝214cに嵌合する(図15および図18参照)。
従って、スライダ250は、ケース部材210に対して上下方向に移動(摺動)可能であるが、ケース部材210に対して前後方向および左右方向に移動不能かつケース部材210に対して相対回転不能である。
このように、ケース部材210の収容室213に収容されたスライダ250は、ケース部材210の収容室213の内壁面214に当接しつつ、上下方向、ひいてはケース部材210に回動可能に連結された回動部材220に接近する方向および回動部材220から離間する方向に移動することが可能である。
図14に示す如く、スライダ250がケース部材210の収容室213に収容されたとき、スライダ250の上面251および当接突起251aは回動部材220(より詳細には、カム部221のカム面222)に対向する。
【0116】
図14に示すバネ261・262は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
本実施形態のバネ261・262はいずれも金属製の(金属材料からなる)巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。
バネ261・262はケース部材210の収容室213に収容される。
本実施形態のバネ261の内径はバネ262の外径よりも大きく、バネ261・262がケース部材210の収容室213に収容されたとき、バネ262はバネ261に貫装される。
バネ261・262がケース部材210の収容室213に収容されたとき、バネ261・262の一端部(下端部)は収容室213の底面215に当接し、バネ261・262の他端部(上端部)はスライダ250のバネ受け穴253aに挿入されてバネ受け穴253aの頂面に当接する。
バネ261・262はスライダ250をケース部材210の開口部分(上端部)から外部に突出する方向、すなわちケース部材210に回動可能に連結された回動部材220に接近する方向(本実施形態では上方)に付勢し、スライダ250の上面251に形成された当接突起251aを回動部材220のカム部221のカム面222に当接させる。
そのため、バネ261・262の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ261・262が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ250を経て回動部材220に伝達される。
結果として、バネ261・262は、バネ261・262の付勢力により回動部材220をケース部材210に対して右側面視で反時計回りに(開く方向に)回動させ、原稿圧着板3を本体2に対して開く方向に回動させる(図14および図20参照)。
【0117】
図19に示す補強部材270は本発明に係る補強部材の実施の一形態である。
本実施形態の補強部材270は金属板(より詳細には、ステンレス鋼からなる板状の部材)を適宜折り曲げることにより製造される。
補強部材270はアーム部271、当接部272および係合部273を具備する。
【0118】
アーム部271は本発明に係るアーム部の実施の一形態であり、補強部材270の一端部(上端部)から中途部にかけての部分を成す。
本実施形態のアーム部271は左右一対の板面271a・271bおよび前後一対の端面271c・271dを有する上下方向に細長い板状の部分である(図12、図13および図19参照)。
板面271aはアーム部271の左側の板面を成し、板面271bはアーム部271の右側の板面を成す。端面271cはアーム部271の前側の端面を成し、端面271dはアーム部271の後側の端面を成す。
【0119】
図19に示す如く、アーム部271の一端部(上端部)には貫通孔271eが形成される。貫通孔271eはアーム部271の一端部(上端部)においてアーム部271の左右一対の板面271a・271bを貫通する。
【0120】
アーム部271には弾性突起271fが形成される。
弾性突起271fは貫通孔271eの内周面の下端部に形成される突起である。弾性突起271fの基部(下端部)は貫通孔271eの内周面の下端部に連なる。弾性突起271fはその中途部において右側方にわずかに屈曲している。
従って、弾性突起271fの先端部(上端部)はアーム部271の右側の板面271bよりもわずかに右側方に突出している。
【0121】
アーム部271には係合孔271gが形成される。係合孔271gは本発明に係る係合孔の実施の一形態である。
係合孔271gはアーム部271の上下中途部かつ前後略中央部においてアーム部271の左右一対の板面271a・271bを貫通する。
係合孔271gの形状は右側面視で概ね上下方向にやや長い長方形である。
【0122】
当接部272は本発明に係る当接部の実施の一形態であり、補強部材270の他端部(下端部)を成す。
本実施形態の当接部272は上下一対の板面272a・272bおよび前後一対の端面272c・272dを有する左右方向に細長い板状の部分である(図12、図13および図19参照)。
板面272aは当接部272の上側の板面を成し、板面272bは当接部272の下側の板面を成す。端面272cは当接部272の前側の端面を成し、端面272dは当接部272の後側の端面を成す。
図19に示す如く、当接部272の右端部はアーム部271の他端部(下端部)に連なっており、当接部272はアーム部271に対して屈曲される。より詳細には、一枚の金属板を所定の折目で直角に折り曲げることにより、当該折目を境界として一方がアーム部271を成し、他方が当接部272を成す。
【0123】
係合部273は当接部272とともに補強部材270の他端部(下端部)を成す。
本実施形態の係合部273は左右一対の板面、前後一対の端面および上端面を有する前後方向に細長い板状の部分である。
係合部273の下端部は当接部272の左端部に連なっており、係合部273は当接部272に対して屈曲される。より詳細には、一枚の金属板を所定の折目で直角に折り曲げることにより、当該折目を境界として一方が当接部272を成し、他方が係合部273を成す。
【0124】
図12、図13および図19に示す如く、補強部材270はケース部材210の右側面から下端面にかけての部分に巻き付けるように装着される。
より詳細には、補強部材270のアーム部271は収容溝219aに収容され、補強部材270の当接部272は副収容溝219fに収容され、補強部材270の係合部273は係合溝219jに収容される。
【0125】
図15および図19に示す如く、アーム部271が収容溝219aに収容されたとき、アーム部271の前後一対の端面271c・271dはそれぞれ収容溝219aの前後一対の壁面219b・219cに当接し、アーム部271の一対の板面271a・271bのうちケース部材210に対向する面(すなわち、板面271a)は収容溝219aの底面219dに当接する。
アーム部271が収容溝219aに収容され、一対の端面271c・271dがそれぞれ一対の壁面219b・219cに当接することにより、ケース部材210に対するアーム部271(ひいては補強部材270)の前後方向の移動が規制される。
【0126】
図12および図13に示す如く、アーム部271が収容溝219aに収容されたとき、ケース部材210の係合突起219eはアーム部271の係合孔271gに係合する。
その結果、ケース部材210に対するアーム部271(ひいては補強部材270)の上下方向および前後方向の移動が規制される。
【0127】
図14、図16および図19に示す如く、当接部272が副収容溝219fに収容されたとき、当接部272の前後一対の端面272c・272dはそれぞれ副収容溝219fの前後一対の壁面219g・219hに当接し、当接部272の一対の板面272a・272bのうちケース部材210に対向する面(すなわち、板面272a)は副収容溝219fの底面219iに当接する。
当接部272が副収容溝219fに収容され、一対の端面272c・272dがそれぞれ一対の壁面219g・219hに当接することにより、ケース部材210に対する当接部272(ひいては補強部材270)の前後方向の移動が規制される。
【0128】
図12から図14に示す如く、補強部材270の他端部(下端部)を成す部分である当接部272が副収容溝219fに収容されたとき、当接部272は「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分(ケース部材210の筒部111の下端部)」にバネ261・262の反対側(下側)から当接する。
その結果、「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」は、バネ261・262および当接部272により挟まれる位置に配置されることとなる。
【0129】
図16および図19に示す如く、係合部273が係合溝219jに収容されたとき、係合部273の前後一対の端面はそれぞれ係合溝219jの前後一対の壁面に当接し、係合部273の一対の板面うちケース部材210に対向する面(すなわち、右側の板面)は係合溝219jの底面に当接する。
係合部273が係合溝219jに収容され、係合部273の一対の端面がそれぞれ係合溝219jの一対の壁面に当接することにより、ケース部材210に対する係合部273(ひいては補強部材270)の前後方向の移動が規制される。
【0130】
アーム部271が収容溝219aに収容されたとき、補強部材270のアーム部271に形成された貫通孔271eは右側面視でケース部材210に形成された貫通孔217Rに重なる(一致する)。
回動ピン230を貫通孔271e、貫通孔217R、貫通孔223および貫通孔217Lに貫装することにより、アーム部271の上端部は回動ピン230を介してケース部材210に固定される(図12、図15、図17および図19参照)。
【0131】
アーム部271の上端部を回動ピン230を介してケース部材210に固定し、回動ピン230の胴体部231の一端部(先端部)に形成された薄肉部(カシメ穴231aに対応する部分)をカシメたとき、アーム部271の弾性突起271fは回動ピン230の頭部232およびケース部材210に挟まれて弾性変形した状態となる。
その結果、弾性突起271fの弾性力(弾性変形した弾性突起271fが元の形状に戻ろうとする力)によりアーム部271、ひいては補強部材270がケース部材210の外周面に押し付けられる(本実施形態の場合、収容溝219aの奥に押し込まれる)。
【0132】
以上の如く、ヒンジ200は、
複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部(上端部)に開口するとともに他端部(下端部)に底面215を有する収容室213が形成され、本体2に固定されるケース部材210と、
ケース部材210の一端部(上端部)に回動可能に連結され、ケース部材210の一端部(上端部)に対向する部分にカム部221が形成され、原稿圧着板3に固定される回動部材220と、
ケース部材210の収容室213に収容され、収容室213の内壁面214に当接しつつ回動部材220に接近する方向および回動部材220から離間する方向に移動可能なスライダ250と、
ケース部材210の収容室213に収容され、一端部がケース部材210の収容室213の底面215に当接するとともに他端部がスライダ250に当接し、スライダ250を回動部材220に接近する方向に付勢し、スライダ250を回動部材220のカム部221に当接させることにより回動部材220をケース部材210に対して開く方向に回動させるバネ261・262と、
を具備し、
ケース部材210はガラス繊維強化型ポリアミドで構成される。
このように構成することにより、バネ261・262の付勢力による破損を防止しつつヒンジ200の外形寸法を小さくすることが可能である。
【0133】
また、ヒンジ200は、
金属材料からなり、ケース部材210の一端部(上端部)に形成された一対の貫通孔217L・217Rおよび回動部材220に形成された貫通孔223に貫装されることにより回動部材220をケース部材210の一端部(上端部)に回動可能に連結する回動ピン230を具備する。
このように構成することにより、ケース部材210に対する回動部材220の回動軸たる回動ピン230の強度を確保することが可能である。
【0134】
また、ヒンジ200は、
金属材料からなり、一端部(上端部)が回動ピン230に係止され、他端部(下端部)が「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分(筒部211の下端部)」にバネ261・262の反対側(下側)から当接する補強部材270を具備し、
補強部材270は、
一端部(上端部)に回動ピン230を貫装するための貫通孔271eが形成されるアーム部271と、
アーム部271の他端部(下端部)に連なり、アーム部271に対して屈曲されることにより「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」にバネ261・262の反対側(下側)から当接する当接部272と、
を具備する。
このように構成することにより、補強部材270はケース部材210に作用するバネ261・262の付勢力の一部を「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」を介して支持することが可能であり、ケース部材210がバネ261・262の付勢力により破損することを防止することが可能である。
【0135】
また、補強部材270のアーム部271には係合孔271gが形成され、
ケース部材210の外周面には係合孔271gに係合する係合突起219eが形成される。
このように構成することにより、アーム部271がケース部材210に対して前後方向に移動することが防止され、ひいては当接部272が「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」から離間する(外れる)ことを防止することが可能である。
また、係合突起219eはアーム部271がケース部材210に対して上下方向に移動することを防止し、ひいては回動ピン230とともにアーム部271に作用するバネ261・262の付勢力を支持することが可能である。
【0136】
なお、本実施形態では係合突起219eがケース部材210の外周面に形成された収容溝219aの底面219dから突出するが、本発明に係る係合突起はこれに限定されない。
すなわち、第一ウイング部材に収容溝が形成されない場合には係合突起が第一ウイング部材の外周面から突出すれば良い。
【0137】
また、ケース部材210の外周面にはアーム部271を収容する収容溝219aが形成される。
このように構成することにより、アーム部271がケース部材210の外周面よりも外側に突出することがない。
従って、ケース部材210を複合機1の本体2に固定するときにアーム部271が他の部材等に干渉するといった事態を回避することが可能である。
【0138】
また、アーム部271は一対の端面271c・271dを有し、
収容溝219aは一対の壁面219b・219cを有し、
アーム部271が収容溝219aに収容されたとき、アーム部271の一対の端面271c・271dは収容溝219aの一対の壁面219b・219cに当接する。
このように構成することにより、アーム部271がケース部材210に対して前後方向に移動することが防止され、ひいては当接部272が「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」から離間する(外れる)ことを防止することが可能である。
【0139】
また、ケース部材210の外周面のうち収容室213の底面215に対応する部分(筒部111の下端面)には当接部272を収容する副収容溝219fが形成される。
このように構成することにより、当接部272がケース部材210の下端面よりも外側(下方)に突出することがない。
従って、ケース部材210を複合機1の本体2に固定するときに当接部272が他の部材等に干渉するといった事態を回避することが可能である。
【0140】
また、当接部272は一対の端面272c・272dを有し、
副収容溝219fは一対の壁面219g・219hを有し、
当接部272が副収容溝219fに収容されたとき、当接部272の一対の端面272c・272dは副収容溝219fの一対の壁面219g・219hに当接する。
このように構成することにより、当接部272がケース部材210に対して前後方向に移動することが防止され、ひいては当接部272が「ケース部材210において収容室213の底面215に対応する部分」から離間する(外れる)ことを防止することが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 複合機
2 本体(第一連結対象物)
3 原稿圧着板(第二連結対象物)
100 ヒンジ(第一実施形態)
110 ケース部材(第一ウイング部材)
113 収容室
114 内壁面
115 底面
117L 貫通孔
117R 貫通孔
120 回動部材(第二ウイング部材)
121 カム部(カム)
123 貫通孔
130 回動ピン(回動軸)
140 回動規制ピン
150 スライダ(スライド部材)
161 バネ(付勢部材)
162 バネ(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部に開口するとともに他端部に底面を有する収容室が形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか一方に固定される第一ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結され、前記第一ウイング部材の一端部に対向する部分にカムが形成され、前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか他方に固定される第二ウイング部材と、
前記第一ウイング部材の収容室に収容され、前記収容室の内壁面に当接しつつ前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記第一ウイング部材の収容室に収容され、一端部が前記第一ウイング部材の収容室の底面に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記第二ウイング部材に接近する方向に付勢し、前記スライド部材を前記第二ウイング部材のカムに当接させることにより前記第二ウイング部材を第一ウイング部材に対して開く方向に回動させる付勢部材と、
を具備し、
前記第一ウイング部材はガラス繊維強化型ポリアミドで構成される、
ヒンジ。
【請求項2】
金属材料からなり、前記第一ウイング部材の一端部に形成された一対の貫通孔および前記第二ウイング部材に形成された貫通孔に貫装されることにより前記第二ウイング部材を前記第一ウイング部材の一端部に回動可能に連結する回動ピンを具備する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
金属材料からなり、一端部が前記回動ピンに係止され、他端部が前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する補強部材を具備する、
請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記補強部材は、
一端部に前記回動ピンを貫装するための貫通孔が形成されるアーム部と、
前記アーム部の他端部に連なり、前記アーム部に対して屈曲されることにより前記第一ウイング部材において前記収容室の底面に対応する部分に前記付勢部材の反対側から当接する当接部と、
を具備する、
請求項3に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記アーム部には係合孔が形成され、
前記第一ウイング部材の外周面には前記係合孔に係合する係合突起が形成される、
請求項4に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記第一ウイング部材の外周面には前記アーム部を収容する収容溝が形成される、
請求項4または請求項5に記載のヒンジ。
【請求項7】
前記アーム部は一対の端面を有し、
前記収容溝は一対の壁面を有し、
前記アーム部が前記収容溝に収容されたとき、前記アーム部の一対の端面は前記収容溝の一対の壁面に当接する、
請求項6に記載のヒンジ。
【請求項8】
前記第一ウイング部材の外周面のうち前記収容室の底面に対応する部分には前記当接部を収容する副収容溝が形成される、
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項9】
前記当接部は一対の端面を有し、
前記副収容溝は一対の壁面を有し、
前記当接部が前記副収容溝に収容されたとき、前記当接部の一対の端面は前記副収容溝の一対の壁面に当接する、
請求項8に記載のヒンジ。
【請求項10】
金属材料からなり、前記第一ウイング部材の一端部に形成された一対の副貫通孔に貫装され、前記第二ウイング部材が第一ウイング部材に対して所定の回動角度まで開く方向に回動したときに前記第二ウイング部材に当接することにより、前記第二ウイング部材が前記第一ウイング部材に対して所定の回動角度よりも大きい角度まで回動することを規制する回動規制ピンを具備する、
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載のヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−191728(P2011−191728A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156960(P2010−156960)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3159672号
【原出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】