説明

ヒータの制御装置

【課題】ユーザが車両に搭載されたヒータのスイッチをオフにし忘れても、ヒータを十分に加熱した後は、無駄に電力を消費させる虞がないヒータの制御装置の提供。
【解決手段】車両に搭載され、バッテリBからの電力により加熱されるヒータ8への通電を制御するヒータの制御装置。外気温を検出する温度検出器6と、ヒータ8への通電量を検出する通電量検出手段3,9,10と、外気温及びヒータ8への通電量の対応関係を記憶した記憶手段4と、温度検出器6が検出した外気温に対応する通電量を、記憶手段4が記憶した対応関係から読出す手段3と、その読出した通電量を通電量検出手段3,9,10が検出したときに、ヒータ8への通電を停止する手段3とを備える構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるデアイサ(deicer)、デフォッガ(defogger)等のヒータへの通電を制御するヒータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される電装品の数が、安全性、利便性、快適性、商品力の面から増加の一途をたどっており、車両全体の消費電力量が増加している。一方、燃料価格の高騰及び環境対策の為、車両の燃費向上への要求も高まっている。燃費向上の一つの手段として、オルタネータ(車載発電機、交流発電機)の発電量を抑制することになる消費電力量の削減も有効である。
【0003】
特許文献1には、曇取装置への電力供給を高速にオン/オフ切換する半導体スイッチング素子を用いて、PWM制御により曇取装置を駆動する曇取装置の駆動回路が開示されている。第1期間の経過後の第2期間において、PWM信号をそのデューティ比を徐々に減少させつつ半導体スイッチング素子に与える。早急に曇りを除去したい第1期間(前半)では、フル電力で曇取装置を駆動できる一方、大部分の曇りが除去された後の第2期間(後半)では、電力を低減させて省エネルギを図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−69619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デアイサ等のヒータ負荷を使用する場合、ユーザがスイッチをオフにしなければ、十分に加熱され氷が除去され曇りが取れた後も、通電が続き、無駄に電力を消費するという問題がある。このような問題に対し、一定時間経過後にタイマで通電をオフにするという対策が有るが、一定時間経過する前に十分な過熱となり、無駄に電力を消費してしまう可能性が残るという問題がある。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザが車両に搭載されたヒータのスイッチをオフにし忘れても、ヒータを十分に加熱した後は、無駄に電力を消費させる虞がないヒータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係るヒータの制御装置は、車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるヒータへの通電を制御するヒータの制御装置において、外気温を検出する温度検出器と、前記ヒータへの通電量を検出する通電量検出手段と、外気温及び前記ヒータへの通電量の対応関係を記憶した記憶手段と、前記温度検出器が検出した外気温に対応する通電量を、前記記憶手段が記憶した対応関係から読出す手段と、該手段が読出した通電量を前記通電量検出手段が検出したときに、前記ヒータへの通電を停止する手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
このヒータの制御装置では、車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるヒータへの通電を制御する。温度検出器が外気温を検出し、通電量検出手段がヒータへの通電量を検出する。記憶手段が、外気温及びヒータへの通電量の対応関係を記憶しており、読出す手段が、温度検出器が検出した外気温に対応する通電量を、記憶手段が記憶した対応関係から読出す。通電量検出手段が、その読出した通電量を検出したときに、停止する手段が、ヒータへの通電を停止する。
【0008】
第2発明に係るヒータの制御装置は、車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるヒータへの通電を制御するヒータの制御装置において、外気温を検出する温度検出器と、前記ヒータへの通電時間を計時するタイマと、外気温及び前記ヒータへの通電時間の対応関係を記憶した記憶手段と、前記温度検出器が検出した外気温に対応する通電時間を、前記記憶手段が記憶した対応関係から読出す手段と、該手段が読出した通電時間を前記タイマが計時したときに、前記ヒータへの通電を停止する手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
このヒータの制御装置では、車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるヒータへの通電を制御する。温度検出器が外気温を検出し、タイマがヒータへの通電時間を計時する。記憶手段が、外気温及びヒータへの通電時間の対応関係を記憶しており、読出す手段が、温度検出器が検出した外気温に対応する通電時間を、記憶手段が記憶した対応関係から読出す。タイマが、その読出した通電時間を計時したときに、停止する手段が、ヒータへの通電を停止する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るヒータの制御装置によれば、ユーザが車両に搭載されたヒータのスイッチをオフにし忘れても、ヒータを十分に加熱した後は、無駄に電力を消費させる虞がないヒータの制御装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るヒータの制御装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すヒータの制御装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図3】外気温及びデアイサへの通電量の対応関係の例を示す説明図である。
【図4】本発明に係るヒータの制御装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示すヒータの制御装置の動作の例を示すフローチャートである。
【図6】外気温及びデアイサへの通電時間の対応関係の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係るヒータの制御装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
このヒータの制御装置は、マイクロコンピュータを備えたヒータ制御部3が、半導体スイッチング素子7により、デアイサ8への通電をオン/オフする。半導体スイッチング素子7は、例えばIPS(Intelligent Power Switch)であり、内蔵する電流検出手段10が検出したデアイサ8に流れる電流値は、ヒータ制御部3に与えられる。
【0013】
デアイサ8の電源は、車両に搭載されたバッテリB、及びバッテリBを充電するオルタネータ(車載発電機、交流発電機)1から与えられる。
バッテリBの出力電圧値は、ヒータ制御部3が内蔵する電圧検出手段9により検出される。ヒータ制御部3は、電圧検出手段9が検出した電圧値、及び電流検出手段10が検出した電流値を乗算した電力値を積算することにより、デアイサ8への通電量を検出する。ヒータ制御部3には、イグニッションスイッチ2及びデアイサ8のスイッチSWの各オン/オフ信号が与えられる。
【0014】
温度検出器6が検出した外気温がヒータ制御部3に与えられる。温度検出器6は、車両の例えばバンパーの内側に設けられている。
ヒータ制御部3が内蔵するメモリ(記憶手段)4には、図3に示すような外気温及びデアイサ8への通電量の対応関係がテーブルとして記憶されている。外気温及びデアイサ8への通電量の対応関係は、実験により定めてあり、低温時は最大通電量(100%)で十分に加熱し、高温時は温度に応じて少し加熱する、又は通電を停止するように定めてある。これにより、必要なときには、ヒータの機能を十分に得ることができ(利便性が低下しない)、不要なときには、通電を抑制又は停止することにより、消費電力を削減することができる。
【0015】
以下に、このような構成のヒータの制御装置の動作の例を、それを示す図2のフローチャートを参照しながら説明する。
ヒータ制御部3は、先ず、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定し(S1)、オンになっていれば、デアイサ8のスイッチSWがオンになっているか否かを判定する(S3)。
ヒータ制御部3は、デアイサ8のスイッチSWがオンになっていれば(S3)、通電量が設定されているか否かを判定する(S5)。通電量が設定されておらず、通電量を記憶していなければ、温度検出器6が検出した外気温を読込む(S7)。
【0016】
ヒータ制御部3は、外気温を読込むと(S7)、読込んだ外気温が、図3に示す所定温度T1以上であるか否かを判定する(S9)。外気温が所定温度T1以上でなければ、メモリ4のテーブルから、検出した外気温に対応する通電量(W・h)を読出して設定する(S11)。
ヒータ制御部3は、次に、半導体スイッチング素子7によりデアイサ8への通電を開始する(S13)。次いで、電圧検出手段9が検出した電圧値、及び電流検出手段10が検出した電流値を読込み(S15)、読込んだ電圧値及び電流値を乗算して電力値を算出し、算出した電力値を積算して通電量(W・h)を算出する(S17)。
【0017】
ヒータ制御部3は、次に、積算した通電量が、設定した通電量(S11)以上であるか否かを判定し(S19)、設定した通電量以上でなければ、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S1)。
ヒータ制御部3は、積算した通電量が、設定した通電量以上であれば(S19)、半導体スイッチング素子7でデアイサ8への通電を停止した(S23)後、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S1)。尚、デアイサ8の通電を停止した(S23)ときは、設定してある通電量(S11)をリセット(=0)する。
【0018】
ヒータ制御部3は、外気温が所定温度T1以上であれば(S9)、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S1)。
ヒータ制御部3は、通電量が設定されていれば(S5)、電圧検出手段9が検出した電圧値、及び電流検出手段10が検出した電流値を読込む(S15)。
ヒータ制御部3は、イグニッションスイッチ2がオンになっていなければ(S1)、又はデアイサ8のスイッチSWがオンになっていなければ(S3)、デアイサ8が通電中であるか否かを判定する(S21)。デアイサ8が通電中でなければ、イグニッションスイッチ2がオンであるか否かを判定する(S1)。
ヒータ制御部3は、デアイサ8が通電中であれば(S21)、デアイサ8への通電を停止した(S23)後、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S1)。
【0019】
(実施の形態2)
図4は、本発明に係るヒータの制御装置の実施の形態2の概略構成を示すブロック図である。
このヒータの制御装置は、実施の形態1で説明したヒータの制御装置の概略構成(図1)と比較して、電圧検出手段9及び電流検出手段10が存在せず、ヒータ制御部3に代えて、ヒータ制御部3aがタイマ5を内蔵している。
【0020】
ヒータ制御部3aが内蔵するメモリ(記憶手段)4aには、図6に示すような外気温及びデアイサ8への通電時間の対応関係がテーブルとして記憶されている。外気温及びデアイサ8への通電時間の対応関係は、実験により定めてあり、低温時は最長通電時間(t1)で十分に加熱し、高温時は温度に応じて短く加熱する、又は通電を停止するように定めてある。これにより、必要なときには、ヒータの機能を十分に得ることができ(利便性が低下しない)、不要なときには、通電時間を抑制又は通電を停止することにより、消費電力を削減することができる。その他の概略構成は、実施の形態1で説明したヒータの制御装置の概略構成(図1)と同様であるので、説明を省略する。
【0021】
以下に、このような構成のヒータの制御装置の動作の例を、それを示す図5のフローチャートを参照しながら説明する。
ヒータ制御部3aは、先ず、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定し(S31)、オンになっていれば、デアイサ8のスイッチSWがオンになっているか否かを判定する(S33)。
ヒータ制御部3aは、デアイサ8のスイッチSWがオンになっていれば(S33)、通電時間が設定されているか否かを判定する(S35)。通電時間が設定されておらず、通電時間を記憶していなければ、温度検出器6が検出した外気温を読込む(S37)。
【0022】
ヒータ制御部3aは、外気温を読込むと(S37)、読込んだ外気温が、図6に示す所定温度T1以上であるか否かを判定する(S39)。外気温が所定温度T1以上でなければ、メモリ4aのテーブルから、検出した外気温に対応する通電時間を読出して設定する(S41)。
ヒータ制御部3aは、次に、半導体スイッチング素子7によりデアイサ8への通電を開始し(S43)、タイマ5に計時を開始させる(S45)。
【0023】
ヒータ制御部3aは、次に、タイマ5が計時した時間が、設定した通電時間(S41)以上であるか否かを判定し(S47)、設定した通電時間以上でなければ、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S31)。
ヒータ制御部3aは、タイマ5が計時した時間が、設定した通電時間(S41)以上であれば(S47)、半導体スイッチング素子7でデアイサ8への通電を停止し(S51)、タイマ5をリセットする(S53)。次いで、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S1)。尚、デアイサ8への通電を停止した(S51)ときは、設定してある通電時間(S41)をリセット(=0)する。
【0024】
ヒータ制御部3aは、外気温が所定温度T1以上であれば(S39)、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S31)。
ヒータ制御部3aは、通電時間が設定されていれば(S35)、タイマ5が計時した時間が、設定した通電時間(S41)以上であるか否かを判定する(S47)。
【0025】
ヒータ制御部3aは、イグニッションスイッチ2がオンになっていなければ(S31)、又はデアイサ8のスイッチSWがオンになっていなければ(S33)、デアイサ8が通電中であるか否かを判定する(S49)。デアイサ8が通電中でなければ、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S31)。
ヒータ制御部3aは、デアイサ8が通電中であれば(S49)、デアイサ8の通電を停止し(S51)、タイマ5をリセットした(S53)後、イグニッションスイッチ2がオンになっているか否かを判定する(S31)。
【符号の説明】
【0026】
1 オルタネータ(車載発電機、交流発電機)
2 イグニッションスイッチ
3 ヒータ制御部(通電量検出手段、読出す手段、停止する手段)
3a ヒータ制御部(読出す手段、停止する手段)
4,4a メモリ
5 タイマ
6 温度検出器
7 半導体スイッチング素子
8 デアイサ(ヒータ)
9 電圧検出手段(通電量検出手段)
10 電流検出手段(通電量検出手段)
B バッテリ
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるヒータへの通電を制御するヒータの制御装置において、
外気温を検出する温度検出器と、前記ヒータへの通電量を検出する通電量検出手段と、外気温及び前記ヒータへの通電量の対応関係を記憶した記憶手段と、前記温度検出器が検出した外気温に対応する通電量を、前記記憶手段が記憶した対応関係から読出す手段と、該手段が読出した通電量を前記通電量検出手段が検出したときに、前記ヒータへの通電を停止する手段とを備えることを特徴とするヒータの制御装置。
【請求項2】
車両に搭載され、バッテリからの電力により加熱されるヒータへの通電を制御するヒータの制御装置において、
外気温を検出する温度検出器と、前記ヒータへの通電時間を計時するタイマと、外気温及び前記ヒータへの通電時間の対応関係を記憶した記憶手段と、前記温度検出器が検出した外気温に対応する通電時間を、前記記憶手段が記憶した対応関係から読出す手段と、該手段が読出した通電時間を前記タイマが計時したときに、前記ヒータへの通電を停止する手段とを備えることを特徴とするヒータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−162953(P2010−162953A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4947(P2009−4947)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】