説明

ヒーター

【課題】サイズが小さな場合であっても、潤滑系流体を過度に加熱することなく潤滑系流体の温度を速やかに上げることが可能なヒーターを提供する。
【解決手段】セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁7と隔壁7に区画形成されて一方の端部9aから他方の端部9bまで貫通して潤滑系流体の流路となる複数のセル5とを有するハニカム構造部6と、ハニカム構造部6に接触してハニカム構造部6の隔壁7を通電させるための陽極4aおよび陰極4bとなる一対の電極4と、を備えるヒーター1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンオイルやトランスミッションフルードなどの潤滑系流体を加熱するために使用することができるヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
機械の中には、部品同士を擦り合わせながら動作するものがある。例えば、エンジンなどの内燃機関は、シリンダー内をピストンが上下運動する過程で、多くの部品が互いに擦れ合う。このように部品同士が擦れ合うと、部品に摩耗や発熱を生じ、機械に不具合が生じてしまう。そこで、部品同士が擦れ合う際の摩擦を低減させて摩耗や発熱を抑えるために、潤滑系流体を使用する。例えば、エンジンにおける部品の摩耗や発熱の抑制には潤滑系流体としてエンジンオイルを使用する。このように機械を良好に動作させるには潤滑系流体が欠かせない。しかし、潤滑系流体が低温状態にある場合には、潤滑系流体の粘性が高くなってしまう。その結果、摩擦を十分に低減できないという問題が生じる。また、潤滑系流体を目的の箇所まで供給できないという問題等が生じる。この問題に対処するため、ヒーターを用いて潤滑系流体を加熱して温度を上げることにより、潤滑系流体の粘性を適当に低くすることが行われている。このように、ヒーターを用いると、潤滑系流体の粘性を低くすることが可能になる。一方で、ヒーターによって潤滑系流体を過度に加熱してしまうと、潤滑系流体の劣化を引き起こしてしまうという不都合が生じる。そのため、潤滑系流体を過度に加熱しない仕組みを備えるヒーターが開示されている(例えば、特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−74789号公報
【特許文献2】特開昭63−16114号公報
【特許文献3】実開昭63−12607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のヒーターでは、潤滑系流体を過度に加熱しない仕組みを有効にしたままで潤滑系流体の温度を速やかに上げることは困難であった。例えば、特許文献1には、ヒーターをシェルに収容して潤滑油を間接加熱することにより、潤滑油の劣化を防止しようとする凍結防止構造が記載されている。特許文献1に記載の発明は、ヒーターがシェル内に収容されていることにより、速やかな昇温が難しいと考えられる。また、特許文献2,3には、ヒーターに、自らは発熱しない放熱部材や自らは発熱しないフィンを取り付けて、伝熱面積(熱交換面積)を拡大しようとするエンジンオイルの加熱装置(オイルヒータ)が記載されている。特許文献2,3に記載の発明は、放熱部材やフィンが発熱しないため、速やかな昇温が難しいと考えられる。それでも敢えて「潤滑系流体を過度に加熱しない仕組みを有効にしたままで潤滑系流体の温度を速やかに上げる」という目的を達成しようとするには、ヒーターのサイズを大きくせざるを得なかった。しかしながら、車体内の空間的制約が強く、ヒーターを小型化したいという要望が強かった。
【0005】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、サイズが小さな場合であっても、潤滑系流体を過度に加熱することなく潤滑系流体の温度を速やかに上げることが可能なヒーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した目的を達成するものである。具体的には、本発明は、以下に示す、ヒーターである。
【0007】
[1] セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁と前記隔壁により区画形成されて一方の端部から他方の端部まで貫通して潤滑系流体の流路となる複数のセルとを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部に接触して前記ハニカム構造部の前記隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極と、を備えるヒーター。
【0008】
[2] 前記ハニカム構造部は、前記隔壁の厚さが0.10〜0.51mmであり、かつセル密度が15〜280セル/cmである前記[1]に記載のヒーター。
【0009】
[3] 前記ハニカム構造部は、前記隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmである前記[1]または[2]に記載のヒーター。
【0010】
[4] 前記隔壁は、SiC、金属含浸SiC、金属複合SiC、及び金属複合Siからなる群から選ばれる1種を主成分とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のヒーター。
【0011】
[5] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、一方の前記電極から他方の前記電極に向かう方向に直交する隔壁を有さない前記[1]〜[4]のいずれかに記載のヒーター。
【0012】
[6] 前記隔壁の表面に、絶縁破壊強度が10〜1000V/μmである絶縁層を有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載のヒーター。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヒーターは、サイズが小さな場合であっても、潤滑系流体を過度に加熱することなく潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のヒーターの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A’断面を示す模式図である。
【図3】本発明のヒーターの他の実施形態を示す斜視図である。
【図4A】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図4B】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、一対の電極と電流方向との関係を示す模式図である。
【図5】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図6】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図7】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図8】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図9】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図10】本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【図11】本発明のヒーターの更に他の実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11におけるB−B’断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0016】
本発明のヒーターは、「セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁」と「隔壁により区画形成されて一方の端部から他方の端部まで貫通して潤滑系流体の流路となる複数のセル」とを有するハニカム構造部と、ハニカム構造部に接触してハニカム構造部の隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極とを備える。ハニカム構造部は、「一方の端部(端面)から他方の端部(端面)まで延びる複数のセル」を区画形成する隔壁、を備える構造である。
【0017】
本発明のヒーターでは、通電によって隔壁そのものが発熱する。そのため、潤滑系流体が一方の端部(流入端部)から他方の端部(流出端部)までセル内を流れていく過程では、隔壁によって潤滑系流体を加熱しつづけることができる。隔壁そのものが発熱しない場合には、潤滑系流体によって隔壁が冷まされてしまう。そのため、他方の端部(流出端部)の近傍まで潤滑系流体を到達させたときには隔壁によって潤滑系流体を加熱できないということが生じうる。このようなことは、本発明のヒーターでは生じにくい。このように、本発明のヒーターでは、ハニカム構造により接触面積を大きくすることが実現出来る。そのため、本発明のヒーターは、セル内を流れている潤滑系流体を常に加熱できる。従って、本発明のヒーターは、潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。
【0018】
また、本発明のヒーターは、上述したようにセル内で潤滑系流体を加熱しつづけることが可能である。そのため、本発明のヒーターは、隔壁の単位面積あたりの発熱量を少なくする場合であっても、潤滑系流体の温度を確実に上げることができる。このように隔壁の単位面積あたりの発熱量を少なくすると、潤滑系流体を過度に加熱することを防ぐことができる。したがって、本発明のヒーターは、オイルを過度に加熱することなく潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。また、本発明のヒーターは、上述のように潤滑系流体を過度に加熱しない。そのため、本発明のヒーターを使用すると、潤滑系流体の劣化を抑えることができる。
【0019】
さらに、本発明のヒーターでは、潤滑系流体を複数のセル内へと振り分けて流す。すなわち、潤滑系流体を小分けし、これら小分けした潤滑系流体のそれぞれを各セルに流す。このように潤滑系流体小分けして流すと、潤滑系流体と隔壁との接触面積が大きくなる。そして、これに伴って隔壁と潤滑系流体との接触による伝熱量も多くなる。このように隔壁との接触による伝熱量が多くなると、潤滑系流体がセル内を流れていく過程では、隔壁から潤滑系流体への伝熱量が潤滑系流体内での熱拡散によって散逸してしまう熱量よりも大きくなる。そのため、潤滑系流体の温度が速やかに上がりやすくなる。また、本発明のヒーターでは、上述したように潤滑系流体と隔壁との接触面積が大きい。そのため、隔壁の単位面積あたりの発熱量を少なくする場合であっても、潤滑系流体の温度を確実に上げることができる。その結果、潤滑系流体を過度に加熱することを防ぐことができる。
【0020】
また、本発明のヒーターでは、サイズが小さな場合であっても、セル密度を大きくすることにより、潤滑系流体と隔壁との接触面積を大きくすることが可能である。その結果、潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。また、セル密度を大きくすることによって潤滑系流体と隔壁との接触面積が十分に大きくなっている場合には、セルの長さを短くしても、潤滑系流体を十分に加熱することが可能である。セルの長さを短くするということは、ヒーターのサイズを小さくすることを意味する。したがって、サイズが小さな場合であっても、セル密度を大きくすることにより潤滑系流体と隔壁との接触面積を大きくすると、隔壁の単位面積あたりの発熱量を少なくした態様で加熱しても、潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。このように、本発明のヒーターは、サイズが小さな場合であっても、潤滑系流体を過度に加熱することなく潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。
【0021】
本明細書にいう潤滑系流体とは、エンジンオイル、トランスミッションフルード、ギアオイル、デフオイル、ブレーキフルード、パワーステアリングフルードなど機械系部品の潤滑に用いられる流体の総称を意味する。
【0022】
本発明のヒーターでは、ハニカム構造部は、隔壁の厚さが0.1〜0.51mm、かつセル密度が15〜280セル/cmであることが好ましい。ハニカム構造部の隔壁の厚さ及びセル密度を上記範囲とすることにより、潤滑系流体を過度に加熱することなく潤滑系流体の温度を速やかに上げるという効果を高めることができる。さらに、ハニカム構造部は、「隔壁の厚さが0.25〜0.51mm、かつセル密度が15〜62セル/cm」であることがより好ましく、「隔壁の厚さが0.30〜0.38mm、かつセル密度が23〜54セル/cm」であることが更に好ましい。ハニカム構造部内に潤滑系流体を流した際の圧力損失を小さくできるためである。
【0023】
ここで、本明細書にいうセラミックスを主成分とするとは、セラミックスを50質量%以上含むことをいう。すなわちセラミックスを主成分とする隔壁とは、セラミックスを50質量%以上含んだ隔壁のことを意味する。また、本発明に適用可能な「通電により発熱するセラミックス」としては、SiC、金属含浸SiC、金属複合SiC、金属複合Siを挙げることができる。
【0024】
SiCには、再結晶SiC及び反応焼結SiCが含まれる。再結晶SiCは、例えば以下のように作製されるものである。まず、SiC粉体、有機質バインダー、及び「水または有機溶剤」を含有する原料を、混合、混練して坏土を調製する。次に、この坏土を成形して成形体を作製する。次に、得られた成形体を、不活性ガス雰囲気中において、1600〜2300℃で焼成して、焼成体を得る。このようにして得られたものが「再結晶SiC」である。そして、得られた焼成体は主に多孔質となる。再結晶SiCは、原料、粒径、不純物量などを変化させることにより比抵抗を変化させることができる。例えばSiC中に不純物を固溶させることにより、比抵抗を変化させることができる。具体的には、窒素雰囲気中で焼成することにより、SiCに窒素を固溶させて再結晶SiCの比抵抗を小さくすることができる。
【0025】
反応焼結SiCは、原料間の反応を利用して生成させたSiCである。反応焼結SiCとしては、多孔質の反応焼結SiC、及び緻密質の反応焼結SiCを挙げることができる。多孔質の反応焼結SiCは、例えば以下のように作製されるものである。まず、窒化珪素粉末、炭素質物質、炭化珪素及び黒鉛粉末を混合、混練して坏土を調製する。なお、炭素質物質は、窒化珪素を還元する物質である。炭素質物質としては、カーボンブラック、アセチレンブラック等の固体カーボン粉末、フェノール、フラン、ポリイミド等の樹脂等を挙げることができる。次に、この坏土を成形して成形体を作製する。次に、非酸化性雰囲気中において上記成形体を一次焼成して一次焼成体を得る。次に、得られた一次焼成体を酸化性雰囲気中で加熱して脱炭することにより、残存する黒鉛を除去する。次に、非酸化性雰囲気中において「脱炭された一次焼成体」を1600〜2500℃で二次焼成して二次焼成体を得る。このようにして得られたものが「多孔質の反応焼結SiC」である。
【0026】
緻密質の反応焼結SiCは、例えば以下のように作製されるものである。まず、SiC粉体及び黒鉛粉末を混合、混練して坏土を調製する。次に、この坏土を成形して成形体を作製する。次に、この成形体に「溶融した珪素(Si)」を含浸させる。これにより、黒鉛を構成する炭素と、含浸させた珪素とを反応させてSiCを生成させる。上記のように、成形体に「溶融した珪素(Si)」を「含浸」させることにより、気孔が無くなり易い。すなわち、気孔が塞がれ易い。そのため、緻密な成形体を得ることができる。このようにして得られたものが「緻密質の反応焼結SiC」である。
【0027】
また、本発明に適用可能な「通電により発熱するセラミックス」としての金属含浸SiCには、Si含浸SiC、「金属Siと「その他の種類の金属」とを含浸させたSiC」などを挙げることができる。上記「その他の種類の金属」としては、例えば、Al、Ni、Cu,Ag、Be、Mg、Ti、Niなどを挙げることができる。本発明のヒーターでは、隔壁が「Si含浸SiC」や「金属Siとその他の種類の金属とを含浸させたSiC」を主成分とする場合には、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性、酸やアルカリなどに対する耐蝕性が優れたものになる。本明細書において、「Si含浸SiC」は、金属SiとSiCとを構成成分として含む焼結体の総称である。特に、金属含浸SiCでは、SiC粒子を主成分とした多孔質体に、溶融した金属を含浸させるため、比較的気孔が少ない緻密体を得ることが出来るという特徴がある。このSi含浸SiCは、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)の凝固物が取り囲むとともに、金属Siを介してSiC粒子同士が結合した構造を有している。また、本明細書において、「金属Siとその他の種類の金属とを含浸させたSiC」は、金属Siとその他の種類の金属とSiCとを構成成分として含む焼結体の総称である。「金属Siとその他の種類の金属とを含浸させたSiC」は、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)やその他の種類の金属の凝固物が取り囲むとともに、「金属Siやその他の種類の金属」を介してSiC粒子同士が結合した構造を有している。
【0028】
更に、本発明に適用可能な「通電により発熱するセラミックス」としての金属複合SiCには、「Si複合SiC」、「金属Siと「その他の種類の金属」とを複合焼結させたSiC」などを挙げることができる。上記「その他の種類の金属」としては、例えば、Al、Ni、Cu,Ag、Be、Mg、Ti、Niなどを挙げることができる。以下、「金属Siと「その他の種類の金属」とを複合焼結させたSiC」を「複合焼結SiC」とする。ここで金属複合SiCは、SiC粒子と金属粉末とを混合焼結したものである。SiC粒子と金属粉末とを混合焼結する方法は、SiC粒子と金属粉末の接触する接点において焼結が進行するため、比較的多くの気孔を含有した多孔質体を得ることが出来るという特徴がある。また、金属複合SiCは、気孔を介在しながら、金属相を介してSiC粒子が連結した構造を取るものである。例えば、Si複合SiCは、SiC粒子の表面に金属Si(金属珪素)相が結合した形で、気孔を形成しながら、金属Siを介してSiC粒子同士が結合した構造を有している。また、上記「複合焼結SiC」は、SiC粒子の表面に、「金属Si及び「その他の種類の金属」」により形成された相が結合するとともに、気孔を形成しながら、「金属Si及び「その他の種類の金属」」を介してSiC粒子同士が結合した構造を有している。
【0029】
隔壁が金属含浸SiC、または金属複合SiCを主成分とする場合には、含浸または複合させる金属の量や成分を調整することにより、隔壁の比抵抗を大きくしたり、小さくしたりできる。隔壁が金属含浸SiC、または金属複合SiCを主成分とする場合には、一般に、含浸または複合させる金属の量が多くなるにつれて、隔壁の比抵抗が小さくなる。
【0030】
また、本発明のヒーターでは、隔壁の気孔率を調整することにより、隔壁の比抵抗を大きくしたり、小さくしたりすることができる。一般に、隔壁の気孔率が小さくなるほど、比抵抗が小さくなる。その結果、隔壁に電気が流れやすくなる。
【0031】
また、隔壁の主成分によって、隔壁の気孔率の好ましい範囲が異なってくる。例えば金属複合SiCを主成分とすると、隔壁の気孔率は、30〜90%が好ましい。また、金属複合SiCを主成分とすると、隔壁に開気孔が多く存在し、気孔が大きくなる。そして、金属複合SiCを主成分とする隔壁は、隣り合うセル間を連通する連通気孔が多く存在する。そのため、この連通気孔によって潤滑系流体が隔壁内部を通過することが可能になる。従って、隔壁と潤滑系流体との接触面積が大きくなる。そのため、金属複合SiCを主成分とする隔壁を有するハニカム構造部を備えるヒーターは、加熱効率(すなわち、熱交換効率)が向上する。一方、例えば金属含浸SiCを主成分とすると、隔壁の気孔率は、0〜10%が好ましい。また、金属含浸SiCを主成分とすると、隔壁の気孔が小さくなり、開気孔が少なくなる。そのため、金属含浸SiCを主成分とする隔壁には、潤滑系流体が浸入し難い。そのため、隔壁の気孔内に留まって流れなくなる潤滑系流体が少なくなる。そのため、潤滑系流体が過熱されて劣化することを防止できる。また、セル間を連通する気孔が無いため、潤滑系流体が隔壁の内部を通過することが無くなる。そのため、潤滑系流体についてセル内のみを流動させることができる。
【0032】
また、本発明のヒーターでは、原料として使用するSiCの種類(α−SiC、β−SiC)、純度(不純物量)や原料の混合割合によっても隔壁の比抵抗を調整することができる。
【0033】
隔壁の比抵抗の大きさは、原料として使用する金属中の不純物量によっても変化させることが可能である。また、金属に合金材を使用したり、製造時に合金化させることによっても隔壁の比抵抗を変化させることが可能である。
【0034】
また、本発明のヒーターでは、隔壁の単位表面積あたりの発熱量は、ハニカム構造部の大きさ、隔壁の比抵抗、隔壁の厚さ、セル密度に依存している。そのため、本発明のヒーターでは、ヒーターを配置する空間の広さによってハニカム構造部の大きさが予め定まっている場合には、隔壁の厚さやセル密度や隔壁の比抵抗を調整することにより、隔壁の単位表面積あたりの発熱量を適度に抑えることができる。その結果として、潤滑系流体を過度に加熱してしまうことを防止できる。上記「ハニカム構造部の大きさ」とは、ハニカム構造部の長さや幅のことである。
【0035】
本発明のヒーターでは、一般に、ハニカム構造部の長さ(セルの長さ)を大きくする場合には、隔壁の比抵抗を小さくしても、潤滑系流体を十分に加熱することが可能になる。その結果、潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。また、ハニカム構造部の長さ(セルの長さ)が小さい場合であっても、セル数を増やす(例えば、セル密度を増やす)ことにより、潤滑系流体を十分に加熱することが可能になる。その結果、潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。本発明のヒーターでは、隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmであることが好ましい。隔壁の比抵抗は、0.03〜10Ω・cmであることが更に好ましく、0.07〜5Ω・cmであることが特に好ましい。潤滑系流体を十分に加熱可能な状態のままでハニカム構造部を小型化できるためである。
【0036】
本発明のヒーターは、セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁と、隔壁により区画形成されて一方の端部から他方の端部まで貫通してオイルの流路となる複数のセルとを有するハニカム構造部と、ハニカム構造部に接触してハニカム構造部の隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極と、を備え、隔壁の表面に、絶縁破壊強度が10〜1000V/μmである絶縁層を有するものであることが好ましい。絶縁層の絶縁破壊強度は、100〜1000V/μmであることが更に好ましい。潤滑系流体は、部品から生じた金属性磨耗粉や水分などを含んでいることがある。特に、金属性磨耗粉はオイルフィルターなどにより大部分が除去されるが、除去されずに潤滑系流体中に残るものがある。そのため、ヒーターを長期間使用することより、除去されずに残った金属性磨耗粉が隔壁に付着したり、堆積して目詰まりすることがある。このような場合、ヒーターが短絡してしまう可能性がある。ハニカム構造部の隔壁の表面に、絶縁破壊強度が10〜1000V/μmである絶縁層を有すると、潤滑系流体に含まれる金属性磨耗粉が隔壁に付着や堆積して目詰まりすることに起因してヒーターが短絡してしまうことを防ぐことができる。
【0037】
上記絶縁層としては、隔壁に含まれるセラミックス成分が酸化して作られる酸化膜を挙げることができる。このような酸化膜は、酸化雰囲気下で高温処理することにより形成することができる。
【0038】
あるいは、隔壁の表面を絶縁性樹脂によってコーティングすることにより、絶縁層を設けることも可能である。本発明のヒーターでは、隔壁の表面の絶縁層が絶縁性樹脂からなる場合、絶縁性樹脂としては、例えば、EPDM、エチレンプロピレン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの一般的に用いられている樹脂を用いることができる。
【0039】
絶縁層として、セラミックコート層、SiO系のガラスコート層、または、セラミックと「SiO系のガラス」との混合物のコート層からなるものを設けることも可能である。
【0040】
セラミックコート層としては、Al、MgO、ZrO、TiO、CeOなどの酸化物を主成分とするものや、窒化物を主成分とするものを挙げることができる。酸化物を主成分とするものと窒化物を主成分とするものでは、酸化物を主成分とするものの方が大気中における安定性が高い。一方、窒化物を主成分とするものは、より熱伝導に優れる。SiO系のガラスコート層としては、SiOを主成分とするものを挙げることができる。セラミックとSiO系のガラスとの混合物のコート層としては、SiOと「Al、MgO、ZrO、TiO、CeOなどの成分」との混合物を主成分とするものを挙げることができる。尚、絶縁層の構成成分は、耐電圧の要求値に応じて適宜選択することができる。
【0041】
セラミックコート層、SiO系のガラスコート層、及びセラミックとSiO系のガラスとの混合物のコート層の形成には、それぞれ湿式による方法または乾式による方法を採用することができる。
【0042】
湿式による方法としては、ハニカム焼結体を、絶縁層形成用スラリー、絶縁層形成用コロイド、及び絶縁層形成用溶液のいずれかに浸漬し、その後、余剰分を除去し、乾燥させた後、焼成する方法を挙げることができる。
【0043】
例えば、「酸化物を主成分とする絶縁層」を形成する場合、絶縁層形成用スラリー、及び絶縁層形成用コロイドとしては、Al、Mg、Si、Zr、Ti、Ce等の金属源またはその酸化物を含むものを用いることができる。「酸化物を主成分とする絶縁層」は、Al、MgO、SiO、ZrO、TiO、CeOなどを主成分とする絶縁層のことである。また、絶縁層形成用溶液としては、Al(OC、Si(OCなどの金属アルコキシド溶液を用いることができる。湿式による方法における焼結温度は、主成分によって適宜決定することができる。湿式による方法における焼結温度は、例えばSiOを主成分とする絶縁層の場合、1100〜1200℃であることが好ましい。また、Alを主成分とする絶縁層の場合、1300〜1400℃であることが好ましい。
【0044】
「窒化物を主成分とする絶縁層」を形成する場合、ハニカム成形体を、絶縁層形成用スラリー、及び絶縁層形成用コロイド、絶縁層形成用溶液のいずれかに浸漬し、その後、余剰分を除去し、乾燥させる。その後、窒素またはアンモニアを含む還元雰囲気にて窒化する。このようにして、窒化物を主成分とする絶縁層を形成することができる。窒化物としては、絶縁性を有しながら熱伝導が高いAlN、Si等を挙げることができる。
【0045】
乾式による方法は、静電スプレー法などを挙げることができる。静電スプレー法により絶縁層を形成するには、例えば以下ように行うことができる。まず、絶縁性物質の粉末(絶縁性粒子)または「絶縁性粒子を含むスラリー」に電圧を印加して負(または正)に帯電させる。その後、正(または負)に帯電させたハニカム構造部に、帯電させた「絶縁性粒子、または絶縁性粒子を含むスラリー」を吹き付ける。このようにして絶縁層を形成する。
【0046】
絶縁層の膜厚は、所望の耐電圧に応じて適宜設定することができる。絶縁層の膜厚が厚いと、絶縁性が高くなるものの潤滑系流体を加熱するには熱抵抗が大きくなる。これは、絶縁層が隔壁に比較して熱伝導が低くなりやすいためである。更に、ヒーターの圧力損失が大きくなる。そのため、絶縁層の膜厚は絶縁性が確保できる範囲内において薄い方が好ましい。具体的には、絶縁層の膜厚は、隔壁の膜厚よりも薄いことが好ましい。更に具体的には、材質毎の絶縁破壊強度に拠るが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることが更に好ましく、3μm以下であることが特に好ましい。絶縁層の膜厚が上記範囲であると、熱抵抗を低く維持しつつ、ハニカム構造部の圧力損失が増加することを防止できる。絶縁層の膜厚は、絶縁層の平均膜厚を意味する。絶縁層の膜厚は、断面サンプルを用いて光学顕微鏡や電子顕微鏡により観察して計測した値である。ここで、「断面サンプル」は、ヒーターの一部を切り出したサンプルであり、隔壁の壁面に直交する切断面を有するサンプルである。また、例えば、絶縁層が酸化膜である場合に、上記のような厚さの酸化膜を形成するためには、焼成温度を1200〜1400℃とすることが好ましい。また、水蒸気雰囲気下で焼成し、酸化膜を形成することも好ましい方法である。更に、焼成時間を調整することにより、酸化膜の膜厚を調整することもできる。焼成時間が長くなるほど、酸化膜の厚さは厚くなる。
【0047】
本発明のヒーターは、例えば、自動車のエンジンオイルやトランスミッションフルートを加熱するために使用することができる。一般に、自動車を冬季に走行させたり、寒冷地で走行させたりする場合には、エンジンオイルやトランスミッションフルードが低温になりやすく、これらの粘性が高いときがしばしば生じる。その結果、エンジンやトランスミッションについては、部品に生じる摩擦が大きい状態のまま動作する時間が増えてしまう。このような状態でエンジンやトランスミッションを動作させると、燃費の悪化を招く。本発明のヒーターを使用すると、エンジンオイルやトランスミッションフルードの温度を速やかに上げることが可能である。そのため、エンジンオイルやトランスミッションフルードが低温になっている時間を短縮することができる。その結果として、燃費を向上させることができる。また、一般に、トランスミッションフルードはエンジンオイルよりも燃費悪化への寄与が大きい。そのため、従来技術では、トランスミッションフルードを十分に加熱するためには、大型のヒーターを使用しなければならなかった。本発明のヒーターによれば、ヒーターを小型化した場合であっても、トランスミッションフルードを十分に加熱することができる。そのため、燃費を高めることができる。すなわち、本発明のヒーターは、自動車のようにヒーターを設置するための空間の広さが限られている場合に使用すると、その効果を十分に発揮させることができる。
【0048】
以下、本発明のヒーターの具体的な実施形態を参照しつつ、その内容を詳しく説明する。
【0049】
図1は、本発明のヒーターの一実施形態の斜視図である。本実施形態のヒーター1は、ハニカム構造部6と、このハニカム構造部6の外周壁3に接合する一対の電極4とを有する。ハニカム構造部6は、一方の端部9aおよびもう一方の端部9bで共に開口する円筒状の外周壁3を有している。ハニカム構造部6は、外周壁3の筒の内部が隔壁7によって区画されている。具体的には、ハニカム構造部6は、外周壁3が抜けている方向(端部9aと端部9bとを結ぶ方向:Z方向)に対して垂直な断面からみると、互いに直交する隔壁7によって、外周壁3に囲まれた内部が方眼紙のます目のように四角形に区画されている。その結果、外周壁3の内部の各区画にはセル5が形成されることになる。なお、本実施形態のヒーター1では、ハニカム構造部6の外周壁3の断面形状(セルの延びる方向に垂直な断面の形状)が円形であるが、円形以外にも、楕円形や四角形などであってもよい。また、セル5の断面形状についても、四角形の他に、六角形や円形など任意の形状を適用できる。
【0050】
本実施形態のヒーター1では、ハニカム構造部6は、外周壁3および隔壁7がSi複合SiC、Si含浸SiC、再結晶SiC、または反応焼結SiCを主成分としていることが好ましい。更に、ハニカム構造部6は、外周壁3および隔壁7の比抵抗が0.01〜50Ω・cmであることが好ましい。Si複合SiCを主成分としたハニカム構造部6を作製する際には、まず、SiC粉体、金属Si粉体、水、有機バインダーなどを混ぜ合わせ、混練して坏土を作製する。そして、この坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製する。その後、得られたハニカム成形体を不活性ガス雰囲気中において焼成することにより、Si含浸SiCを主成分としたハニカム構造部を製造することができる。また、Si含浸SiCを主成分としたハニカム構造部6を作製する際には、まず、「SiC粉体、金属Si粉体、水、有機バインダーなど」を混ぜ合わせ、混練して坏土を作製するか、または「SiC粉体、水、有機バインダーなど」を混ぜ合わせ、混練して坏土を作製する。そして、この坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製する。その後、得られたハニカム成形体を不活性ガス雰囲気中において焼成することによりハニカム構造体を形成する。その後、得られたハニカム構造体に、不活性ガス雰囲気中においてSiを含浸することにより、Si含浸SiCを主成分としたハニカム構造部6を製造することができる。尚、再結晶SiC及び反応焼結SiCの作製については先述の通りである。また、外周壁3および隔壁7を構成する、比抵抗が0.01〜50Ω・cmの材料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。炭化珪素、Fe−16Cr−8Al、SrTiO(perovslite)、Fe(corundum)、SnO(rutile)、ZnO(wurzite)等である。炭化珪素の比抵抗は、一般的に幅が広く1〜1000Ω・cmであり、SiC単独であれば、先述の比抵抗範囲内にするのが好ましい。Si及びSi系合金と複合化する場合では、微構造組織にもよるが、最大1000Ω・cmまで適用することが可能である。Fe−16Cr−8Alの比抵抗は、0.03Ω・cmとなる。SrTiO(perovslite)の比抵抗は0.1Ω・cm以下である。Fe(corundum)の比抵抗は約10Ω・cmである。SnO(rutile)の比抵抗は0.1Ω・cm以下である。ZnO(wurzite)の比抵抗は0.1Ω・cm以下である。
【0051】
ここで、ハニカム構造部6については、金属Siの含有量/(Siの含有量+SiCの含有量)の値が5〜50であることが好ましく、さらに、金属Siの含有量/(Siの含有量+SiCの含有量)の値が10〜40であることがより好ましい。外周壁3や隔壁7の強度を保ちながら比抵抗を適当な大きさにできるためである。
【0052】
ハニカム構造部6の外周壁3は、厚肉であると更に好ましい。外周壁3が厚肉であるとは、外周壁3が隔壁7より厚いことを意味する。外周壁3が厚肉であると、外周壁3の構造体としての強度が増大する。そのため、電極の接合時における熱応力に対する耐性を向上させることができる。その結果、外周壁3におけるクラックの生成などを抑制し易くなる。また、外周壁3が厚肉であると、外周壁3の熱容量が増大する。そのため、通電時における外周壁3の温度上昇を減少させることができる。ここで、外周壁3は、エンジンオイルなどの潤滑系流体との接触面積が小さいので過熱し易い。そのため、上記のように、通電時における外周壁3の温度上昇を減少させることが好ましい。また、ヒーターのハウジングの少なくとも一部に樹脂が使用されている場合、ヒーターが局所的に過熱することによって当該樹脂が劣化し損傷することがある。そのため、ハニカム構造部の外周壁を厚肉にすることにより、当該樹脂の劣化による損傷を抑制することが可能になる。
【0053】
外周壁3の厚さは、外周壁3の気孔率などにも拠るが、0.3〜5mmが好ましく、0.5〜3mmが更に好ましい。
【0054】
また、ハニカム構造部6の外周壁3は、緻密であると更に好ましい。外周壁3が緻密であると、外周壁3内部を通過して潤滑系流体がヒーターの外部に漏れ出ることを抑制できる。ここで、通常、ハウジング内にヒーターを収納する際には、ハウジング内に潤滑系流体が漏れ出ることを防止するために、ヒーターの外周にシール材が配置される。外周壁3を緻密すれば、上記のように潤滑系流体がヒーターの外部に漏れ出ることを抑制できるため、上記シール材が不要になる。
【0055】
「緻密な外周壁3」は、例えば、金属を含浸させることにより緻密化したものが好ましい。また、「緻密な外周壁3」は、緻密な「Al、MgO、SiO、Si、AlN、又はBN」またはこれらの複合物により形成されても良い。
【0056】
このような「緻密な外周壁3」を有するハニカム構造部は、例えば「隔壁7を構成する材料」と、この「隔壁7を構成する材料」と異なる種類の「外周壁3を構成する材料」とを、共押出しすることにより作製できる。
【0057】
また、「金属が含浸されることにより緻密化した外周壁3」を有するハニカム構造部は、乾燥後のハニカム成形体、または焼成後のハニカム焼結体に金属を含浸させて形成することが好ましい。そして、上記乾燥後のハニカム成形体、または焼成後のハニカム焼結体に金属を含浸させるには、外周壁のみが含浸されるように含浸Si量を調整する方法がある。または、上記乾燥後のハニカム成形体、または焼成後のハニカム焼結の両端面に含浸阻害材をコーティングしたり、上記両端面に板状の治具を載置したりする方法がある。これらの方法により、外周壁に優先的に金属を含浸させることができる。含浸阻害材としては、例えば、酸化物系、特にAlなどを挙げることができる。
【0058】
さらに、本実施形態のヒーター1では、隔壁7の表面には、SiCが酸化してSiOが生成されたことにより、酸化膜が形成されている。隔壁7の表面に酸化膜を形成する際には、大気などの酸化雰囲気下で高温処理を施す。本実施形態のヒーター1が備えるハニカム構造部6のように、隔壁の主成分がSiC、Si含浸SiC、またはSi複合SiCである場合には、例えば、大気中で1200℃〜1400℃で熱処理することにより、隔壁7の表面に酸化膜を形成することができる。
【0059】
さらに、本実施形態のヒーター1では、このハニカム構造部6の外周壁3に一対の電極4(陽極4a、陰極4b)が接合している。本実施形態のヒーター1では、陽極4aと陰極4bとによってハニカム構造部6が側方から挟み込まれている。そのため、ハニカム構造部6に通電すると、隔壁7を発熱させることができる。一対の電極4の形状は、それぞれ、長方形状、棒状などとすることができる。
【0060】
図2は、図1におけるA−A’断面を示す模式図である。図2に示されるように、複数のセル5は、外周壁3に囲まれた内部を端部9aから端部9bまで貫いている。ここで、ハニカム構造部6の端部9aからヒーター1の内部に潤滑系流体を流すと、潤滑系流体が複数のセル5に振り分けられ、各セル5の内部を流れていく。このとき、ハニカム構造部6を通電させておくと、各セル5を区画する隔壁7を発熱させておくことができる。その結果、潤滑系流体がセル5内を通過する際、潤滑系流体を加熱しつづけることができる。
【0061】
図3は、本発明のヒーターの他の実施形態を示す斜視図である。本実施形態のヒーター21では、ハニカム構造部26と、一対の電極24(陽極24aと陰極24b)とを備えている。ハニカム構造部26は、中空の四角柱状の外周壁23の内部が、隔壁27によって区画されている。具体的には、セルの延びる方向(長さLの方向)に対して垂直な断面からみると、互いに直交する隔壁27によって、外周壁23に囲まれた内部が方眼紙のます目のように四角形に区画されている。その結果、外周壁23の内部には、複数のセル25が形成されることになる。これら複数のセル25は、外周壁23に囲まれた内部を端部29aから端部29bまで貫いている。また、本実施形態のヒーター21を長さLの方向に垂直な断面からみると、外周壁23は幅Wを一辺の長さとした正方形になっている。そして、ハニカム構造部26の外周壁23の4面のうち、平行な一対の面のそれぞれに、電極24(陽極24aまたは陰極24b)が接合している。これら陽極24aおよび陰極42bのそれぞれの幅及び長さは、接合しているそれぞれの外周壁23の面と同じ幅及び長さである(幅W×長さL)。即ち、陽極24aおよび陰極42bは、それぞれ、「接合している外周壁23の面」の全部を覆うように配設されている。このような形態の本実施形態のヒーター21において、例えば、以下に示す形状にしたときに、電圧36V、ヒーター出力4kWで運転する場合、ヒーター21の長さLが30〜100mmであっても、ワット密度3.5W/cm以下を実現できる。上記形状は、外周壁23の幅Wが25mm、外周壁23の厚さが1mm、隔壁27の厚さが0.25〜0.51mm、セル密度が15〜62セル/cm、隔壁27および外周壁23の比抵抗が0.1〜3Ω・cmである。なお、ここでいうワット密度とは、ヒーターの放熱部分の単位表面積あたりの電力のことを意味する。従って、本実施形態のヒーター21においては、隔壁27の単位表面積あたりの電力を意味する。また、ワット密度3.5W/cmは、通常、機械に用いる潤滑系流体を過度に加熱しない限界値(「許容ワット密度」と称されている)とおよそ同じ大きさである。すなわち、上述した形態と使用態様の下では、本実施形態のヒーター21は、40mm×40mm×40mmという小型化された状態でも、機械に用いる潤滑系流体を過度に加熱せずに、潤滑系流体の温度を速やかに上げることができる。
【0062】
図1に示されるヒーター1及び図3に示されるヒーター21については、端部9aに流入してくる潤滑系流体の温度が所定値以上の場合には、ハニカム構造部6への通電を停止する機構を備えてもよい。この機構により、潤滑系流体を劣化させない程度で適当な温度にすることができる。
【0063】
上記ヒーター1及びヒーター21については、潤滑系流体が低温の場合にのみ使用するようにしてもよい。この場合には、ヒーター1またはヒーター21と、潤滑系流体が所定の温度以上のときに加熱を停止する機構を備えた別種のヒーター(例えば、特許文献1〜3に記載のヒーター)とを併用するのが好ましい。このように2種のヒーターを併用した場合には、ヒーター1またはヒーター21を使用して低温の状態にある潤滑系流体を所定の温度まで速やかに温め、その後は、もう一方の別種のヒーターにより潤滑系流体を所定の温度で保持することが可能になる。このように2種のヒーターを併用した場合には、併用する別種のヒーターについては、潤滑系流体の温度を速やかに上げるという機能を備えていなくてもよい。そのため、この別種のヒーターのサイズを小さくすることができる。その結果、2種類の小型のヒーターを装備することにより、小型の機器においても使用可能である。また、潤滑系流体を加熱して速やかに粘度を下げるという目的を十分に達成することができる。
【0064】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図4Aに示すように、セル35の延びる方向に直交する断面において、一方の電極34(陽極)から他方の電極34(陰極)に向かう方向Eを「電流方向E」とする。本発明のヒーターの更に他の実施形態は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないものである。換言すれば、本実施形態のヒーター31は、セル35の延びる方向に直交する断面において、全ての隔壁が、電流方向Eに対して「0°以上、90°未満」の角度(補角では、「180°以下、90°超」の角度)を形成している。尚、隔壁と電流方向Eとにより形成される角度は、0°と90°の場合を除くと、2種類(2種類の角度を合計すると180°になる)存在する。ここで、上記「隔壁と電流方向Eとにより形成される角度」は、2種類の角度の中の小さい側の角度を示している。「補角」は、大きい側の角度になる。また、「隔壁が電流方向Eに対して0°の角度を形成する」場合、隔壁と電流方向Eとは平行になっている。ここで、「一方の電極から他方の電極に向かう方向に直交する隔壁」は、ヒーターに電圧を印加したときに、当該隔壁全体がほぼ等電位になる。そのため、上記「一方の電極から他方の電極に向かう方向に直交する隔壁」には、電流がほとんど流れず、ほとんど発熱しない。これに対し、上記本実施形態のヒーター31は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないため、全ての隔壁を発熱させることが可能となる。これにより、ヒーター31をより小型化することが可能となる。図4Aは、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0065】
ここで、「一方の電極から他方の電極に向かう方向(電流方向)」の意味は、以下の通りである。まず、図4Bに示すように、一方の電極34の両端部34x,34yのそれぞれと、他方の電極34の両端部34z,34wのそれぞれとを、交差しないように線分xz,ywで結ぶ。そのときの、それぞれの線分(2本の線分)xz,ywの中点Cxz,Cyw同士を結んだ直線L1に直交する方向Dを意味する。「直線L1」は、中点Cxz及び中点Cywを通る直線である。例えば、図4Aに示すヒーター31の場合、セル35の延びる方向に直交する断面において直線状に延びる一対の電極34,34が、平行に配置されている。そのため、直線L1が各電極34,34に平行になる。従って、各電極34,34に直交する方向が電流方向Eとなる。尚、「一方の電極から他方の電極に向かう方向(電流方向)に直交する」隔壁は、直線L1に平行な隔壁ということもできる。図4Bは、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、一対の電極と電流方向との関係を示す模式図である。
【0066】
本実施形態のヒーター31を構成するハニカム構造部36は、図4Aに示すように、隔壁37によって潤滑系流体の流路となる複数のセル35が形成されている。そして、ハニカム構造部36は、外周に外周壁33を有している。また、セル35の延びる方向に直交する断面において、セル35の形状は六角形であり、ハニカム構造部36の外周形状は長方形である。また、一対の電極34,34は、セル35の延びる方向に直交する断面において、長方形のハニカム構造部36の平行な一対の辺のそれぞれの表面(外周壁表面)に配設されている。本実施形態のヒーター31においては、セル35の延びる方向に直交する断面において、電流方向Eは、六角形のセル35の対角線方向になっている。従って、六角形のセル35の全ての辺(六つの辺)が、電流方向Eとは直交していない。セル35の延びる方向に直交する断面において、隔壁と電流方向Eとの角度(小さい側の角度)は、0°又は60°となっている。
【0067】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図5に示すように、本実施形態のヒーター41は、潤滑系流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル45を区画形成する隔壁47と、外周に位置する外周壁43と、を有する筒状のハニカム構造部46を備えるものである。更に、本実施形態のヒーター41は、ハニカム構造部46の外周に、一対の電極44,44を備えている。また、セル45の延びる方向に直交する断面において、セル45の形状は長方形(正方形)であり、ハニカム構造部46の外周形状は長方形である。また、一対の電極44,44は、セル45の延びる方向に直交する断面において、長方形のハニカム構造部46の平行な一対の辺のそれぞれの表面(外周壁表面)に配設されている。図5は、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0068】
本実施形態のヒーター41は、セル45の延びる方向に直交する断面において、一方の電極44から他方の電極44に向かう方向E(電流方向E)に直交する隔壁を有さないものである。このように、本実施形態のヒーター41は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないため、全ての隔壁を発熱させることが可能となる。これにより、ヒーター41をより小型化することが可能となる。本実施形態のヒーター41においては、セル45の延びる方向に直交する断面において、電流方向Eは、長方形のセル45の対角線方向になっている。すなわち、長方形のセル45の全ての辺(四つの辺)と、電流方向Eとの角度(小さい側の角度)が、45°となっている。
【0069】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図6に示すように、本実施形態のヒーター51は、潤滑系流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル55を区画形成する隔壁57と、外周に位置する外周壁53と、を有する筒状のハニカム構造部56を備えるものである。更に、本実施形態のヒーター51は、ハニカム構造部56の外周に、一対の電極54,54を備えている。また、セル55の延びる方向に直交する断面において、セル55の形状は円形であり、ハニカム構造部56の形状は長方形である。また、一対の電極54,54は、セル55の延びる方向に直交する断面において、長方形のハニカム構造部56の平行な一対の辺のそれぞれの表面(外周壁表面)に配設されている。図6は、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0070】
本実施形態のヒーター51は、セル55の延びる方向に直交する断面において、一方の電極54から他方の電極54に向かう方向E(電流方向E)に直交する隔壁を有さないものである。このように、本実施形態のヒーター51は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないため、全ての隔壁を発熱させることが可能となる。これにより、ヒーター51をより小型化することが可能となる。
【0071】
本実施形態のヒーター51のように、セル55の延びる方向に直交する断面において、セル55の形状が円形の場合、隔壁57の延びる方向は、「当該隔壁57を挟んで隣接する2つの円形のセル55,55の、中心間を結ぶ線分」に直交する方向とする。上記「隔壁57の延びる方向」は、隔壁57の、電流方向Eとの角度を規定する方向のことである。従って、本実施形態のヒーター51においては、全ての「隣接する2つのセル55,55の中心間を結ぶ線分」は、電流方向Eに平行ではない。
【0072】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図7に示すように、本実施形態のヒーター61は、潤滑系流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル65を区画形成する隔壁67と、外周に位置する外周壁63と、を有する筒状のハニカム構造部66を備えるものである。更に、本実施形態のヒーター61は、ハニカム構造部66の外周に、一対の電極64,64を備えている。また、セル65の延びる方向に直交する断面において、セル65の形状は六角形であり、ハニカム構造部66の外周形状は円形である。図7は、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0073】
本実施形態のヒーター61は、セル65の延びる方向に直交する断面において、一方の電極64から他方の電極64に向かう方向E(電流方向E)に直交する隔壁を有さないものである。このように、本実施形態のヒーター61は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないため、全ての隔壁を発熱させることが可能となる。これにより、ヒーター61をより小型化することが可能となる。
【0074】
本実施形態のヒーター61においては、セル65の延びる方向に直交する断面において、電極64,64が、それぞれ、ハニカム構造部66の外周に沿って円弧状に形成されている。また、セル65の延びる方向に直交する断面において、一対の電極64,64における一方の電極64は、一対の電極64,64における他方の電極64に対して、ハニカム構造部66の中心を挟んで反対側に配置されている。
【0075】
また、一つの電極64の、セル65の延びる方向に直交する断面における長さ(ハニカム構造部66の周方向における長さ)は、ハニカム構造部66の、セル65の延びる方向に直交する断面における外周の長さの5〜40%が好ましい。また、一対の電極64,64のそれぞれの長さは、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0076】
また、電極64は、セルの延びる方向において、ハニカム構造部66の両端部間に亘るようにして、ハニカム構造部66の側面に配設されていてもよいし、電極64の端部とハニカム構造部66の端部との間に隙間が開いていてもよい。電極64が、セルの延びる方向において、ハニカム構造部66の両端部間に亘るようにして、ハニカム構造部66の側面に配設された状態においては、電極64とハニカム構造部66とは、以下に示すようになっている。すなわち、電極64の、セルの延びる方向における長さと、ハニカム構造部66の、セルの延びる方向における長さが、同じになっている。また、電極64の端部とハニカム構造部66の端部との間に隙間が開いた状態においては、電極64の、セルの延びる方向における長さが、ハニカム構造部66の、セルの延びる方向における長さより、短くなっている。
【0077】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図8に示すように、本実施形態のヒーター71は、潤滑系流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル75を区画形成する隔壁77と、外周に位置する外周壁73と、を有する筒状のハニカム構造部76を備えるものである。更に、本実施形態のヒーター71は、ハニカム構造部76の外周に、一対の電極74,74を備えている。また、セル75の延びる方向に直交する断面において、セル75の形状は長方形(正方形)であり、ハニカム構造部76の外周形状は円形である。図8に示すように、本実施形態のヒーター71は、上記本発明のヒーターの更に他の実施形態のヒーター61(図7を参照)において、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状を、長方形(正方形)にしたものである。図8は、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0078】
本実施形態のヒーター71は、セル75の延びる方向に直交する断面において、一方の電極74から他方の電極74に向かう方向E(電流方向E)に直交する隔壁を有さないものである。このように、本実施形態のヒーター71は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないため、全ての隔壁を発熱させることが可能となる。これにより、ヒーター71をより小型化することが可能となる。本実施形態のヒーター71においては、セル75の延びる方向に直交する断面において、電流方向Eは、長方形のセル75の対角線方向になっている。長方形のセル75の全ての辺(四つの辺)と、電流方向Eとの角度が、45°となっている。
【0079】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図9に示すように、本実施形態のヒーター81は、潤滑系流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル85を区画形成する隔壁87と、外周に位置する外周壁83と、を有する筒状のハニカム構造部86を備えるものである。更に、本実施形態のヒーター81は、ハニカム構造部86の外周に、一対の電極84,84を備えている。また、セル85の延びる方向に直交する断面において、セル85の形状は円形であり、ハニカム構造部86の外周形状は円形である。図9に示すように、本実施形態のヒーター81は、上記本発明のヒーターの更に他の実施形態のヒーター61(図7を参照)において、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状を、円形にしたものである。図9は、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0080】
本実施形態のヒーター81は、セル85の延びる方向に直交する断面において、一方の電極84から他方の電極84に向かう方向E(電流方向E)に直交する隔壁を有さないものである。このように、本実施形態のヒーター81は、電流方向Eに直交する隔壁を有さないため、全ての隔壁を発熱させることが可能となる。これにより、ヒーター81をより小型化することが可能となる。
【0081】
次に、本発明のヒーターの更に他の実施形態について説明する。図10に示すように、本実施形態のヒーター91は、潤滑系流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル95を区画形成する隔壁97と、外周に位置する外周壁93と、を有する筒状のハニカム構造部96を備えるものである。更に、本実施形態のヒーター91は、ハニカム構造部96の外周に、一対の電極94,94を備えている。更に、本実施形態のヒーター91は、セル95の延びる方向に直交する断面において、一方の電極94から他方の電極94に向かう方向(電流方向E)に直交する集電層98を有する。すなわち、集電層98は、セル95の延びる方向に直交する断面において、電流方向Eに直交するように配置されている。そのため、ヒーター91に電圧を印加したときに集電層98上の電位は一定になる。そのため、集電層は、発熱し難い部分である。図10は、本発明のヒーターの更に他の実施形態における、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0082】
このように、本実施形態のヒーター91は、集電層98を有するため、隔壁97に、より均一な電流を流すことが可能となる。
【0083】
本発明のヒーターは、ハニカム構造部に均一に電流を流すために、ハニカム構造部を構成する隔壁が均一に形成されていることが好ましい。しかし、隔壁は、複雑で微細なハニカム構造を形成しているため、形状や材質に僅かな偏りが生じることがある。このように、隔壁の形状や材質に偏りが生じた場合には、ヒーターに(一対の電極に)電圧を印加したときに、電流が均一に流れ難くなることがある。これに対し、本実施形態のヒーター91に電圧を印加したときには、電極(陽極)から流れ出た電流が、隔壁を流れる際に若干不均一になったとしても、集電層98を通過する際に集電層98内で均一に広がる。そのため、集電層から隔壁に均一に電流が送られることになる。これにより、本実施形態のヒーター91に電圧を印加する場合には、隔壁を流れる電流が、全体的に、より均一になる。
【0084】
本実施形態のヒーター91は、セル95の延びる方向に直交する断面において、セル95の形状は六角形であり、ハニカム構造部96の外周形状は長方形である。集電層98の、セルの延びる方向における長さは、電極94の、セルの延びる方向における長さと同じであることが好ましい。
【0085】
図10に示すように、本実施形態のヒーター91は、上記本発明のヒーターの更に他の実施形態のヒーター31(図4Aを参照)において、セルの延びる方向に直交する断面において、電流方向Eに直交する集電層98を有するものである。
【0086】
本実施形態のヒーター91において、集電層98の材質は、隔壁の材質と同じであってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0087】
集電層の材質が隔壁の材質と同じ場合、集電層は、隔壁と一体的に形成されたものであることが好ましい。「集電層が隔壁と一体的に形成された」とは、集電層と隔壁との間に境界がなく、材質的に連続した状態であることを意味する。例えば、セラミック原料を押出成形する際に、隔壁とともに集電層を形成し、その後、隔壁とともに集電層を焼成することにより、集電層と隔壁とが一体的に形成されたハニカム構造部を得ることができる。この方法により、集電層を効率的に形成することができる。尚、集電層が隔壁と一体的に形成された場合には、集電層は隔壁より厚さが厚いことが好ましい。また、セルの延びる方向に直交する断面を「直交断面」とする。直交断面において、「規則的に並ぶ」複数のセルが、隔壁によって区画形成されているときに、その規則性に反するようにして「電流方向に直交する隔壁」が形成されている場合には、その「電流方向に直交する隔壁」は、隔壁ではなく集電層になる。上記「その規則性に反するようにして」とは、「一部のセルの形状が不規則に変形するようにして」ということもできる。例えば、図10に示されるヒーター91は、隔壁と集電層とが一体的に形成されていない例である。隔壁と集電層との関係は、「規則的に並ぶ六角形のセルを区画形成している隔壁の中に、六角形のセルを形成しない(六角形のセルを他の形状に変形させる)ように集電層が形成されている」という関係にある。
【0088】
また、集電層の材質と隔壁の材質とが同じである場合でも、集電層と隔壁とが一体的に形成されていなくてもよい。集電層と隔壁とが一体的に形成されていないハニカム構造部は、例えば、以下のように作製することが好ましい。まず、集電層を挿入するための「切込み(集電層と同じ形状の孔)」を形成したハニカム構造部を形成する。次に、当該ハニカム構造部とは別に集電層を作製する。その後、ハニカム構造部の「切込み」に集電層を挿入する。このようにして、集電層を有するハニカム構造部を作製することが好ましい。また、以下のように作製することもできる。まず、セラミック材料を押出成形することにより複数のハニカム成形体を形成する。次に、集電層を作製する。次に、集電層を間に挟んだ状態で複数のハニカム成形体を積層し、その後焼成する。このようにして、集電層を有するハニカム構造部を作製してもよい。また、集電層の材質と隔壁の材質とが異なる場合にも、上記のような作製方法を採用することができる。すなわち、集電層を「切り込みが形成されたハニカム構造部」に挿入する方法や、複数のハニカム成形体で集電層を挟み込み、その状態で焼成してハニカム構造部を形成する製造方法を採用することができる。
【0089】
また、集電層の材質が、隔壁の材質と異なる場合には、集電層の比抵抗(Ω・cm)は、隔壁の比抵抗(Ω・cm)よりも小さいことが好ましい。集電層の比抵抗が、隔壁の比抵抗よりも小さいことにより、集電層による「ハニカム構造部を流れる電流を均一化する」という効果が、より高くなる。
【0090】
図10に示すように、本実施形態のヒーター91においては、一方の電極94からの距離が同じになる位置に(電流方向Eに直交する方向に並ぶように)、複数の集電層98が、それぞれ間隔を空けて配置されている。換言すれば、本実施形態のヒーター91においては、セルの延びる方向に直交する断面において、複数の集電層98が、電流方向Eに直交する方向に並ぶように、それぞれ間隔を空けて配置されている。本実施形態のヒーター91は、複数の集電層98が、電流方向Eに直交する方向に、それぞれ間隔を空けて並んでいるが、電流方向Eに直交する方向に延びるように、一枚の集電層が配置されていてもよい。電流方向Eに直交する方向に延びるように、一枚の集電層が配置される場合、電流方向Eに直交する方向における隙間は存在しないことになる。このように、電流方向Eに直交する方向に延びるように、一枚の集電層が配置される場合においても、一旦この集電層にて集電して、電流方向Eに直行する方向において電流を均一化する効果を奏する。ここで、セルの延びる方向に直交する断面において、電流方向Eに直交する方向に並ぶ複数の集電層98のことを、「等電位集電層群」と称することにする。
【0091】
本実施形態のヒーター91においては、3つの集電層が、一方の電極94からの距離が同じになる位置に(セルの延びる方向に直交する断面において、電流方向Eに直交する方向に並ぶように)配置されている。
【0092】
また、図10に示すように、本実施形態のヒーター91は、セルの延びる方向に直交する断面において、一方の電極94からの距離が異なる2つの「等電位集電層群98a,98b」を有するものである。電極と等電位集電層群との距離、及び等電位集電層群間の距離は特に限定されない。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
(実施例1)
まず、Si複合SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。具体的には、SiC粉体、金属Si粉体、水、有機バインダーを混ぜ合わせ、混練して坏土を調製した。次に、この坏土をハニカム形状に成形して、ハニカム成形体を作製した。次に、得られたハニカム成形体を、不活性ガス雰囲気中において焼成することにより、Si複合SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。
【0095】
次に、ハニカム構造部の側面に電極形成原料として銀(Ag)ペーストを塗布した。電極形成原料は、ハニカム構造部の側面上の2箇所に塗布した。それぞれの塗膜の形状は、長方形(帯状)とした。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の「電極形成原料による塗膜」のなかの一方が、他方に対して、ハニカム成形体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。その後、大気炉にて脱脂した後に焼成し、ハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。Agペーストは、40〜95質量%の銀からなるペースト状のものである。
【0096】
作製したヒーターにおけるハニカム構造部の隔壁の気孔率は40%であった。ハニカム構造部のセル形状は、四角であった。ハニカム構造部のセル形状は、ハニカム構造部の「セルの延びる方向に直交する断面」における、セルの形状である。ヒーターの比抵抗(室温)は30Ω・cmであった。ハニカム構造部のセル密度は31セル/cmであった。ハニカム構造部の隔壁厚さは0.3mmであった。ハニカム構造部の外周壁の厚さは、0.5mmであった。ハニカム構造部の端面(セルの延びる方向に直交する断面)の形状は正方形であり、当該正方形の一辺の長さ(断面の一辺の長さ)は40mmであった。ハニカム構造部のセルの延びる方向における長さ(ハニカム構造部の長さ)は50mmであった。ハニカム構造部の体積は80cmであった。ヒーターの抵抗は、37Ωであった。
【0097】
得られたヒーターについて、以下に示す方法で、「通電試験」を行った。
【0098】
(通電試験)
作製したヒーターの電極の表面に、形状が変形し易い純アルミニウム(Al)板(板厚0.5mm)を配置し、純アルミニウム板の表面に、通電電源側の接続部(電極)を配置する。即ち、ヒーターの電極と、通電電源側の接続部(電極)とで、純アルミニウム板を挟むようにする。次に、ヒーターの電極と通電電源側の接続部(電極)とを機械的に(ボルト締めにより)接続する。次に、このヒーターに所定の電圧を印加し、所定の電圧を印加したときに得られる出力(kW)を確認する。
【0099】
実施例1において、300.0Vの電圧を印加したところ、2.4kWの出力が得られた。表1の「出力(kW)」の欄に、「通電試験」の結果を示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
(実施例2〜12、55〜58)
表1に示すようにハニカム形状の条件を変更するとともに使用する材料を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてヒーターを作製した。作製したヒーターについて実施例1と同様にして「通電試験」を行った。結果を表1、2に示す。
【0103】
(実施例13〜18、59、60)
まず、Si含浸SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。具体的には、SiC粉体、有機質バインダー、及び水を混ぜ合わせ、混練して坏土を調製した。次に、この坏土を表1または2に示す所定のハニカム形状になるように成形体を作製した。次に、得られた成形体上に金属Siの塊を載置し、減圧アルゴン(Ar)ガス雰囲気中において成形体中にSi含浸させた。このようにして、Si含浸SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、実施例1と同様にして塗膜を形成してハニカム構造部の側面に一対の電極を形成した。このようにして、ハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。
【0104】
次に、作製したヒーターについて実施例1と同様にして「通電試験」を行った。結果を表1、2に示す。
【0105】
(実施例19〜36、61〜66)
まず、再結晶SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。具体的には、SiC粉体、有機質バインダー、及び水を混ぜ合わせ、混練して坏土を調製した。次に、この坏土を表1または2に示す所定のハニカム形状になるように成形体を作製した。次に、得られた成形体を、窒素ガス雰囲気中において焼成した。このようにして、再結晶SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、実施例1と同様にして塗膜を形成してハニカム構造部の側面に一対の電極を形成した。このようにして、ハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。
【0106】
次に、作製したヒーターについて実施例1と同様にして「通電試験」を行った。結果を表1、2に示す。
【0107】
(実施例37〜42、67〜68)
まず、多孔質の反応焼結SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。具体的には、窒化珪素粉末、カーボンブラック、炭化珪素及び黒鉛粉末を混合、混練して坏土を調製した。次に、この坏土を表1または2に示す所定のハニカム形状になるように成形体を作製した。得られた成形体を、非酸化性雰囲気中において一次焼成して一次焼成体を得た。次に、得られた一次焼成体を大気中で脱炭し、残存する黒鉛を除去した。その後、非酸化性雰囲気中において2000℃で二次焼成した。このようにして、多孔質の反応焼結SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、実施例1と同様にして塗膜を形成してハニカム構造部の側面に一対の電極を形成した。このようにして、ハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。
【0108】
次に、作製したヒーターについて実施例1と同様にして「通電試験」を行った。結果を表1、2に示す。
【0109】
(実施例43〜54、69〜72)
まず、緻密質の反応焼結SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。具体的には、SiC粉体及び黒鉛粉末を混合、混練して坏土を調製した。次に、この坏土を表1または2に示す所定のハニカム形状になるように成形体を作製した。得られた成形体上に金属Siの塊を載せ、減圧アルゴン(Ar)雰囲気中にて含浸させた。このようにして、緻密質の反応焼結SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、実施例1と同様にして塗膜を形成してハニカム構造部の側面に一対の電極を形成した。このようにして、ハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。
【0110】
次に、作製したヒーターについて実施例1と同様にして「通電試験」を行った。結果を表1、2に示す。
【0111】
(実施例73、74)
表2に示す材料(BaTiO(チタン酸バリウム)またはV(三酸化バナジウム))に、焼結助剤、水、有機バインダーを混ぜ合わせ、混練して坏土を調製した。次に、この坏土を表2に示す所定のハニカム形状になるように成形体を作製した。得られた成形体を大気中で焼成した。このようにして、BaTiOまたはVを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、実施例1と同様にして塗膜を形成してハニカム構造部の側面に一対の電極を形成した。このようにして、ハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。
【0112】
次に、作製したヒーターについて実施例1と同様にして「通電試験」を行った。結果を表2に示す。
【0113】
実施例73のヒーターは、一般にPTCヒーターとして知られる代表的なものである。実施例73のヒーターは、比抵抗が「50Ω・cm」より大きなヒーターの例である。この実施例73のヒーターは抵抗が大きすぎる。そのため、実用的な出力(1〜5kW)を得るには、ヒーターに高電圧を印加する必要がある。従って、比抵抗が「50Ω・cm」より大きい実施例73のヒーターは、車載用途を考えた場合、実用性に欠けるものである。
【0114】
実施例74のヒーターは、比抵抗が「0.01Ω・cm」より小さい例である。実施例74のヒーターは抵抗が小さすぎる。そのため、実用的な出力(1〜5kW)を得るには、大電流(本実施例では2000A以上)を流す必要がある。そのため、接続する電線部が放熱することを考慮すると、電線部は大口径となる。その結果、電線部が嵩張るとともに重量が増えてしまう。従って、比抵抗が「0.01Ω・cm」より小さい実施例74のヒーターは、車載用途を考えた場合、実用性に欠けるものである。
【0115】
(実施例75、76)
表3に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様にしてヒーターを作製した。得られたヒーターについて、以下に示す方法で原理試験として「昇温確認試試験」を行った。
【0116】
(昇温確認試験)
潤滑系流体として代表的にエンジンオイルを用いる。まず、昇温確認試験装置として、オイルポンプ、流量計が連結された配管を用意する。次に、昇温確認試験装置の上記配管にヒーターが収納されたハウジングを連結する。このようにして、エンジンオイルが循環する構造とする。ヒーターには、直流電源が接続されており、定電圧で直流電流が供給される。ここで、ヒーターが収納されたハウジングの前後(すなわち、ハウジングの入口側及び出口側の位置)に熱電対を配置し、エンジンオイルの温度を測定する。エンジンオイルの温度を測定することにより、加熱可否について評価する。本試験において、エンジンオイルの供給流量は、約10L/minとする。循環させるエンジンオイルは、エクソンモービル社製の「モービル1」とする。エンジンオイルの量は、1000cmとし、室温から60℃までの加熱可否について評価する。
【0117】
実施例75のヒーターは、「昇温確認試験」において動作電圧(表2中、単に「電圧」と示す)を200Vとしたとき、「室温から60℃まで」108秒でエンジンオイルを昇温させることが可能であることが分かった。従って、実施例75のヒーターは、ハニカム型構造(複数のセルを有するハニカム形状)にすることで、ヒーターをコンパクトにしながら、エンジンオイルである潤滑系流体の温度を速やかに上げることが可能であることが分かった。また、実施例76では、Si複合SiCの比抵抗を低下させている。このようにSi複合SiCの比抵抗を低下させと、動作電圧を弱電範囲の60V以下である40Vまで低減しても「室温から60℃まで」199秒でエンジンオイルを昇温させることが可能であった。
【0118】
【表3】

【0119】
(実施例77)
まず、作製されるハニカム構造部のセル密度が47セル/cmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にしてSi複合SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、このハニカム構造部のセルに、絶縁性粒子を含むコロイド溶液を流し込み、隔壁の表面に上記コロイド溶液の塗工層を形成した。次に、「塗工層が形成されたハニカム構造部」を高周波誘電で加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で乾燥した。「絶縁性粒子を含むコロイド溶液」としては、アルミニウムアセチルアセナート(Al(C)、ローズマリー油、及びアセチルアセトンを主成分として含有するものを用いた。その後、大気炉にて1300℃まで温度を上げて「乾燥した塗工層」を焼結した。このようにしてハニカム構造部の隔壁の表面に、緻密化した絶縁層を形成した。絶縁層の主成分はAlであった。また、この絶縁層は、ハニカム構造部を構成するSi複合SiCと若干反応していた。そのため、絶縁層とハニカム構造部の隔壁の界面で、Al−SiO層が形成されていた。
【0120】
次に、ハニカム構造部の側面上にも絶縁層が形成されているため、この絶縁層を除去した。具体的には、絶縁層が形成されたハニカム構造部の互いに平行な側面のそれぞれを機械加工して電極を配置する部分の絶縁層を除去し、ハニカム構造部の外周壁を露出させた。その後、露出させた外周壁に電極形成原料である銀(Ag)ペーストを塗布した。塗膜の形状は、長方形(帯状)とした。その後、実施例1と同様にして大気炉にて脱脂した後に焼成し、絶縁層コーティングされたハニカム構造部と一対の電極とを備えるヒーターを作製した。Agペーストは、40〜95質量%の銀からなるペースト状のものである。
【0121】
本実施例のヒーターにおける絶縁層は、絶縁破壊強度が16V/μmであった。絶縁層の平均膜厚は10μmであった。表4における「平均膜厚」の欄は、「絶縁層の平均膜厚」を示す。絶縁層の耐電圧は160Vであった。絶縁層の「平均膜厚」は、「断面サンプル」を作製し、この断面サンプルにおける絶縁層について電子顕微鏡と光学顕微鏡を用いて観察して測定した値である。また、絶縁層の「耐電圧」は、JIS C 2141に示される方法に従って測定した。具体的には、まず、隔壁の表面に形成された絶縁層が露出するようにヒーターを切断して、ヒーターから板状の試験片を切り出した。この板状の試験片の表面及び裏面には絶縁層が配置されていた。次に、直流耐電圧試験機を用い、切り出した試験片の表面及び裏面のそれぞれに直流耐電圧試験機のプローブを当て、10V/秒の速度で電圧を上げていった。その後、試験片が破壊し短絡した時の電圧を読み取った。測定は10回行い、平均値を絶縁破壊電圧の測定値とした。結果を表4に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
(実施例78〜81)
絶縁層の主成分が表4に示すものとなるようにコロイド溶液を、MgまたはSiを含有するコロイド溶液に変更した以外は、実施例77と同様にして、ヒーターを作製した。得られたヒーターにおける絶縁層の「絶縁破壊強度」、「平均膜厚」、及び「耐電圧」を表4に示す。
【0124】
(実施例82、83)
まず、実施例77と同様にしてSi複合SiCを主成分とするハニカム構造部を作製した。次に、絶縁層の主成分が表4に示すものとなるようにコロイド溶液を、AlまたはSiを含有するコロイド溶液を用いて、ハニカム構造部の隔壁の表面に上記コロイド溶液の塗工層を形成した。次に、「塗工層が形成されたハニカム構造部」を高周波誘電で加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で乾燥した。その後、還元雰囲気にするためにカーボン炉中にてNガスを流しながら1300℃まで温度を上げて「乾燥した塗工層」を窒化させて絶縁層を形成した。このようにしてハニカム構造部の隔壁の表面に絶縁層を形成した。その後、実施例77と同様にして電極を作製した。このようにしてヒーターを作製した。得られたヒーターにおける絶縁層の「絶縁破壊強度」、「平均膜厚」、及び「耐電圧」を表4に示す。
【0125】
(実施例84)
実施例1と同様にして「電極形成原料が塗布されたハニカム構造部」を作製した。得られた「電極形成原料が塗布されたハニカム構造部」を、水蒸気雰囲気中、1300℃で焼成した。「電極形成原料が塗布されたハニカム構造部」を焼成する際に、隔壁を構成するSiCが酸化されて、隔壁の表面に、SiOを主成分とした酸化膜が形成された。このようにして、ハニカム構造部と一対の電極とを備え、ハニカム構造部の隔壁の表面に絶縁層が形成されたヒーターを作製した。絶縁層の平均膜厚は1μmであった。絶縁層の耐電圧は870Vであった。絶縁層は、絶縁破壊強度が870V/μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、エンジンオイルやトランスミッションフルードなどの潤滑系流体を加熱するために使用可能なヒーターとして利用できる。
【符号の説明】
【0127】
1:ヒーター、3:外周壁、4:電極、4a:陽極、4b:陰極、5:セル、6:ハニカム構造部、7:隔壁、9,9a,9b:端部、21:ヒーター、23:外周壁、24:電極、24a:陽極、24b:陰極、25:セル、26:ハニカム構造部、27:隔壁、28:絶縁層、29,29a,29b:端部、31,41,51,61,71,81,91,101:ヒーター、33,43,53,63,73,83,93:外周壁、34,44,54,64,74,84,94:電極、34x,34y,34z,34w:電極の端部、35,45,55,65,75,85,95:セル、36,46,56,66,76,86,96:ハニカム構造部、37,47,57,67,77,87,97:隔壁、98:集電層、xz,yw:線分、Cxz,Cyw:中点、L1:直線、D:直線L1に直交する方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁と前記隔壁により区画形成されて一方の端部から他方の端部まで貫通してオイルの流路となる複数のセルとを有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部に接触して前記ハニカム構造部の前記隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極と、を備えるヒーター。
【請求項2】
前記ハニカム構造部は、前記隔壁の厚さが0.1〜0.51mmであり、かつセル密度が15〜280セル/cmである請求項1に記載のヒーター。
【請求項3】
前記ハニカム構造部は、前記隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmである請求項1または2に記載のヒーター。
【請求項4】
前記隔壁は、SiC、金属含浸SiC、金属複合SiC、及び金属複合Siからなる群から選ばれる1種を主成分とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒーター。
【請求項5】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、一方の前記電極から他方の前記電極に向かう方向に直交する隔壁を有さない請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒーター。
【請求項6】
前記隔壁の表面に、絶縁破壊強度が10〜1000V/μmである絶縁層を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−20936(P2013−20936A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−18868(P2012−18868)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】