説明

ヒータ制御装置

【課題】電圧系統を使用しなくても、ヒータ断線を確実に識別判定することができる。
【解決手段】交流電流の半周期区間毎に、温調制御信号に対応した位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタ13AをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整し、この電流実効値に基づき、ヒータへのヒータ電流を調整出力する電力調整装置13と、ヒータ電流に基づきヒータ断線を検出するヒータ断線検出装置16とを有し、ヒータ断線検出装置は、ヒータ電流に基づきサイリスタON継続時間、周期及び電流実効値を算出し、ON継続時間及び周期に基づき位相制御角を算出し、電流実効値及び位相制御角に基づき制御量100%相当の電流実効値を算出し、この電流実効値に基づき、ヒータ断線を識別判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工業炉ヒータ、半導体洗浄装置、プラスチック成形機等に使用される制御対象のヒータの温度を目標温度に設定するための温調制御信号を受信し、交流電流の半周期区間毎に前記温調制御信号に対応した位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整し、この調整した電流実効値に基づき、前記ヒータへのヒータ電流を調整出力する電力調整装置と、前記ヒータ電流に基づき、前記ヒータの断線を検出するヒータ断線検出装置とを有するヒータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒータ制御装置を使用した温度調整システムについて説明する。
【0003】
このような従来の温度調整システムにおいては、制御対象のヒータと、ヒータへのヒータ電流を供給する交流電源と、ヒータ及び交流電源間に配置され、温調制御信号に応じて交流電源からヒータへのヒータ電流供給量を調整する電力調整装置と、ヒータの温度を監視し、この監視結果に基づき、ヒータの温度を目標温度に設定すべく、温調制御信号を出力する温度調整装置と、ヒータ電流に基づき、ヒータ内部の断線を検出するヒータ断線検出装置とを有し、電力調整装置は、交流電流を位相制御するサイリスタと、このサイリスタを駆動制御する位相制御部とを有している。
【0004】
図3は一般的なサイリスタ位相制御の原理を端的に示す説明図である。
【0005】
電力調整装置内の位相制御部は、図3に示すように交流電源からの交流電流の半周期区間毎に、温調制御信号に対応した位相制御角θに基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFすることで、位相制御角θに対応した0〜100%範囲で制御量を調整し、その結果、交流電流の電流実効値を調整し、この調整した電流実効値に基づき、ヒータへのヒータ電流を調整出力するものである。
【0006】
また、ヒータ断線検出装置は、電流検出器を通じてヒータ電流を検出し、オームの法則を利用してヒータ電流及びヒータ電圧に応じてヒータ抵抗を算出し、このヒータ抵抗に基づき、ヒータ断線を判別するようにしている。
【0007】
しかしながら、上記従来のヒータ断線検出装置によれば、電流検出器を通じてヒータ電流を検出し、オームの法則を利用してヒータ電流及びヒータ電圧に応じてヒータ抵抗を算出するようにしたが、ヒータ電圧に変動が生じた場合、ヒータ抵抗も変動することになるため、ヒータ断線と誤判断してしまう虞がある。
【0008】
そこで、従来のヒータ断線検出装置としては、電流検出器の他に、ヒータ電圧を検出する電圧検出器を備え、これら電流検出器及び電圧検出器を通じてヒータ電流の瞬時値及びヒータ電圧の瞬時値を夫々検出し、これら検出したヒータ電流の瞬時値及びヒータ電圧の瞬時値に基づきオームの法則を利用してヒータ抵抗を算出するようにしたので、ヒータ電圧変動によるヒータ断線の誤判断を確実に防止することができる技術が広く知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−12578号公報(段落番号「0002」〜「0005」参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のヒータ断線検出装置によれば、電流検出器及び電圧検出器を通じてヒータ電流の瞬時値及びヒータ電圧の瞬時値を夫々検出し、これら検出したヒータ電流の瞬時値及びヒータ電圧の瞬時値に基づきオームの法則を利用してヒータ抵抗を算出し、このヒータ抵抗に基づきヒータ断線を判別するようにしたが、交流電源の一相毎に電流検出器及び電圧検出器で合計4本の配線を要し、三相の場合は、単純に合計12本の配線を要する。
【0010】
また、上記特許文献1のヒータ断線検出装置によれば、ヒータ断線の誤判断を防止するには、位相ズレなく、ヒータ電流及びヒータ電圧の瞬時値を取得する必要があるが、位相ズレなく、ヒータ電流及びヒータ電圧の瞬時値を取得するためには検出精度の高い電流検出器及び電圧検出器を配置しなければならず、部品コストが嵩む。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電圧系統の配線を要することなく、電流検出器等の電流系統の配線のみで位相ズレを考慮することなく、ヒータ断線を確実に識別判定することができる安価なヒータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明のヒータ制御装置は、制御対象のヒータの温度を目標温度に設定するための温調制御信号を受信し、交流電流の半周期区間毎に前記温調制御信号に対応した位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整し、この調整した電流実効値に基づき、前記ヒータへのヒータ電流を調整出力する電力調整装置と、前記ヒータ電流に基づき、前記ヒータの断線を検出するヒータ断線検出装置とを有するヒータ制御装置であって、前記ヒータ断線検出装置は、前記ヒータ正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶した基準電流実効値記憶手段と、前記ヒータ電流の電流波形を検出するヒータ電流波形検出手段と、このヒータ電流波形検出手段にて検出した前記ヒータ電流の電流波形に基づき、所定半周期区間内のON継続時間を測定するON継続時間測定手段と、前記ヒータ電流波形検出手段にて検出した前記ヒータ電流の電流波形に基づき、前記所定半周期区間の周期を測定する周期測定手段と、前記ヒータ電流波形検出手段にて検出した前記ヒータ電流の電流波形に基づき、前記所定半周期区間の電流実効値を算出する第1電流実効値算出手段と、前記ON継続時間測定手段にて測定した前記所定半周期区間内のON継続時間及び、前記周期測定手段にて測定した前記所定半周期区間の周期に基づき、この所定半周期区間の前記位相制御角を算出する位相制御角算出手段と、前記第1電流実効値算出手段にて算出した前記所定半周期区間の電流実効値及び、前記位相制御角算出手段にて算出した前記所定半周期区間の前記位相制御角に基づき、前記所定制御量相当の電流実効値を算出する第2電流実効値算出手段と、この第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値と、前記基準電流実効値記憶手段に記憶中の基準電流実効値とを比較し、この比較結果に基づき、前記ヒータの断線を識別判定するヒータ断線判定手段とを有するようにした。
【0013】
従って、本発明のヒータ制御装置によれば、交流電流の半周期区間毎に、位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整する際に、同半周期区間内のサイリスタON継続時間に比例した電流実効値が得られるというサイリスタ位相制御の原理に着目し、前記ヒータ正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶しておき、前記ヒータ電流の電流波形を検出し、この電流波形に基づき、所定半周期区間内のON継続時間、周期及び電流実効値を測定し、所定半周期区間内のON継続時間及び周期に基づき位相制御角を算出すると共に、この所定半周期区間の位相制御角及び電流実効値に基づき、所定制御量相当の電流実効値を算出し、この所定制御量相当の電流実効値及び基準電流実効値の比較結果に基づきヒータ断線を識別判定するようにしたので、電圧系統の配線を要することなく、ヒータ電流波形検出手段等の電流検出器の電流系統の配線のみで、しかも、位相ズレを考慮することなく、ヒータ断線を確実に識別判定することができる。
【0014】
また、本発明のヒータ制御装置は、前記ヒータ断線判定手段が、前記第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値が前記基準電流実効値よりも小さい場合、前記ヒータの断線と識別判定するようにした。
【0015】
従って、本発明のヒータ制御装置によれば、第2電流実効値算出手段にて算出した所定制御量相当の電流実効値が基準電流実効値よりも小さい場合、ヒータの断線と識別判定するようにしたので、ヒータ断線を確実に識別判定することができる。
【0016】
また、本発明のヒータ制御装置は、前記所定制御量が100%の制御量に相当するようにした。
【0017】
従って、本発明のヒータ制御装置によれば、基準電流実効値をヒータ正常時の制御量100%相当の電流実効値に設定することで、この基準電流実効値に基づき、制御量100%未満の制御量の基準電流実効値も順次算出することが可能になる。
【0018】
また、本発明のヒータ制御装置は、前記基準電流実効値記憶手段が、前記ヒータ内の複数のヒータ本数の内、各本数に応じた正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として夫々記憶しておき、前記ヒータ断線判定手段は、前記第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値と、前記基準電流実効値記憶手段に記憶中の各本数に応じた基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、前記ヒータの断線本数を識別判定するようにした。
【0019】
従って、本発明のヒータ制御装置によれば、前記ヒータ内の複数のヒータ本数の内、各本数に応じた正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として夫々記憶しておき、前記ヒータ断線判定手段にて、前記第2電流実効値算出手段にて算出した所定制御量相当の電流実効値と、記憶中の各本数に応じた基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、ヒータの断線本数を識別判定するようにしたので、ヒータ断線を断線本数単位で確実に識別判定することができる。
【0020】
また、本発明のヒータ制御装置は、前記ヒータ断線判定手段が、前記第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値と前記基準電流実効値記憶手段に記憶中の各本数に応じた基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、前記複数の基準電流実効値の内、前記第2電流実効値算出手段にて算出した電流実効値以下の基準電流実効値の内、最大の基準電流実効値を検索し、この検索した最大の基準電流実効値に対応した本数を全ヒータ本数から減算した本数をヒータ断線本数と識別判定するようにした。
【0021】
従って、本発明のヒータ制御装置によれば、前記第2電流実効値算出手段にて算出した所定制御量相当の電流実効値と記憶中の各本数に応じた基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、複数の基準電流実効値の内、第2電流実効値算出手段にて算出した電流実効値以下の基準電流実効値の内、最大の基準電流実効値を検索し、この検索した最大の基準電流実効値に対応した本数を全ヒータ本数から減じた本数をヒータ断線本数と判定するようにしたので、ヒータ断線を断線本数単位で確実に識別判定することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記のように構成された本発明のヒータ制御装置によれば、交流電流の半周期区間毎に、位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整する際に、同半周期区間内のサイリスタON継続時間に比例した電流実効値が得られるというサイリスタ位相制御の原理に着目し、前記ヒータ正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶しておき、前記ヒータ電流の電流波形を検出し、この電流波形に基づき、所定半周期区間内のON継続時間、周期及び電流実効値を測定し、所定半周期区間内のON継続時間及び周期に基づき位相制御角を算出すると共に、この所定半周期区間の位相制御角及び電流実効値に基づき、所定制御量相当の電流実効値を算出し、この所定制御量相当の電流実効値及び基準電流実効値の比較結果に基づきヒータ断線を識別判定するようにしたので、電圧系統の配線を要することなく、ヒータ電流波形検出手段等の電流検出器の電流系統の配線のみで、しかも、位相ズレを考慮することなく、ヒータ断線を確実に識別判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明のヒータ制御装置に関わる実施の形態を示す温度調整システムについて説明する。図1は本実施の形態を示す温度調整システム内部の概略構成を示すブロック図である。
【0024】
図1に示す温度調整システム1は、例えば射出成形機内のシリンダに配置された制御対象のヒータ11と、ヒータ11へヒータ電流を供給する交流電源12と、これらヒータ11及び交流電源12間に配置され、温調制御信号に応じて交流電源12からの交流電流を位相制御して電流実効値を調整し、この調整した電流実効値に基づきヒータ電流を調整出力する電力調整装置13と、図示せぬ温度センサでヒータ11の温度を監視し、この監視結果に基づき、ヒータ11の温度を目標温度に設定すべく、温調制御信号を出力する温度調整装置14と、ヒータ電流を検出する電流検出器15と、この電流検出器15にて検出したヒータ電流に基づき、ヒータ断線を検出するヒータ断線検出装置16とを有している。
【0025】
電力調整装置13は、交流電源12からの交流電流を位相制御するサイリスタ13Aと、このサイリスタ13Aを駆動制御する位相制御部13Bとを有し、交流電源12からの交流電流の半周期区間毎に、温調制御信号に対応した位相制御角θに基づき、同半周期区間内でサイリスタ13AをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタ13BをOFFすることで、位相制御角θに対応した0〜100%範囲内で制御量を調整し、その結果、交流電流の電流実効値を調整し、この調整した電流実効値に基づき、ヒータ11へのヒータ電流を調整出力するものである。
【0026】
基本的に、図3に示すように、サイリスタ13Aを使用して交流電流の位相制御を実行する場合、交流電流の半周期区間毎に、位相制御角θに基づき同半周期区間内でサイリスタ13AをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタ13BをOFFして交流電流の電流実効値を調整する際に、サイリスタ位相制御の原理上、同半周期区間内のサイリスタON継続時間及び電流実効値間にはある一定の比例関係がある。
【0027】
また、ヒータ断線検出装置16は、ヒータ11内に並列接続で構成する複数本のヒータ線の内、一本のヒータ線が断線したとしても、ヒータ電流に基づき、同ヒータ1内のヒータ断線を識別判定できるものである。
【0028】
ヒータ断線検出装置16は、図2に示すように、電流検出器15にて検出したヒータ電流に比例した電圧に変換して電流波形を得る電圧変換部21と、この電圧変換部21にて得た電流波形を所定レベルまで増幅する増幅部22と、この増幅部22にて増幅した電流波形をパルス変換するパルス変換部23と、増幅部22にて増幅した電流波形を数値化するA/D変換部24と、ヒータ断線検出装置16全体を制御するCPU25とを有している。
【0029】
また、CPU25内部は、ヒータ正常時の制御量100%相当のヒータ電流の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶した基準電流実効値記憶部31と、パルス変換部23にてパルス変換したヒータ電流の電流波形に基づき、同電流波形の所定半周期区間内のON継続時間を測定するON継続時間測定部32と、同電流波形の所定半周期区間内の周期を測定する周期測定部33と、ON継続時間測定部32にて測定した所定半周期区間内のON継続時間及び、周期測定部33にて測定した所定半周期区間の周期に基づき同所定半周期区間内の位相制御角θを算出する位相制御角算出部34と、A/D変換部24にて数値化した電流波形に基づき、同所定半周期区間内の電流実効値を算出する第1電流実効値算出部35と、位相制御角算出部34にて算出した同所定半周期区間内の位相制御角θ及び、第1電流実効値算出部35にて算出した同所定半周期区間内の電流実効値に基づき、制御量100%相当の電流実効値を算出する第2電流実効値算出部36と、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値と基準電流実効値記憶部31に記憶中の基準電流実効値とを比較し、この比較結果に基づきヒータ断線を識別判定するヒータ断線判定部37と、このヒータ断線判定部37の判定結果に基づき、ヒータ断線発生の警告音又は警告表示を出力制御する警告出力制御部38とを有している。
【0030】
尚、ON継続時間測定部32、周期測定部33及び第1電流実効値算出部35は、同一の所定半周期区間の電流波形でON継続時間、周期及び実効電流値を得るものである。
【0031】
また、位相制御角算出部34は、ON継続時間をt、周期をT及び位相制御角θとした場合、θ=t/T*2πの数式で所定半周期区間の位相制御角θを算出するものである。
【0032】
また、第2電流実効値算出部36は、第1電流実効値算出部35にて算出した電流実効値I、制御量100%相当の電流実効値Imaxとした場合、(数1)で所定半周期区間の制御量100%相当の電流実効値Imaxを算出するものである。
【0033】
【数1】

また、ヒータ断線判定部37は、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値Imaxと、基準電流実効値記憶部31に記憶中のヒータ正常時の制御量100%相当の電流実効値としての基準電流実効値とを比較し、この比較結果、すなわち第2電流実効値算出部36にて算出した電流実効値Imaxが基準電流実効値よりも小さい場合、ヒータ断線が発生したものと識別判定するものである。
【0034】
尚、請求項記載のヒータ制御装置は電力調整装置13及びヒータ断線検出装置16、ヒータはヒータ11、電力調整装置は電力調整装置13、サイリスタはサイリスタ13A、ヒータ断線検出装置はヒータ断線検出装置16、基準電流実効値記憶手段は基準電流実効値記憶部31、ヒータ電流波形検出手段は電流検出器15、ON継続時間測定手段はON継続時間測定部32、周期測定手段は周期測定部33、位相制御角算出手段は位相制御角算出部34、第1電流実効値算出手段は第1電流実効値算出部35、第2電流実効値算出手段は第2電流実効値算出部36、ヒータ断線判定手段はヒータ断線判定部37に相当するものである。
【0035】
次に本実施の形態を示す温度調整システム1内部の動作について説明する。
【0036】
ヒータ断線検出装置16側の電圧変換部21は、電流検出器15にて検出したヒータ電流に比例した電圧に変換して電流波形を増幅部22に供給する。
【0037】
増幅部22は、電圧変換部21からの電流波形を所定レベルまで増幅し、この増幅した電流波形をA/D変換部24及びパルス変換部23に供給する。
【0038】
A/D変換部24は、増幅した電流波形を数値化し、この数値化したデータをCPU25内の第1電流実効値算出部35に供給する。また、パルス変換部23は、増幅した電流波形をパルス変換し、このパルス変換した電流波形をCPU25内のON時間継続測定部32に供給する。
【0039】
CPU25内部のON継続時間測定部32は、パルス変換部23にてパルス変換したヒータ電流の電流波形に基づき、同電流波形の所定半周期区間内のON継続時間を測定する。
【0040】
さらに、周期測定部33は、パルス変換部23にてパルス変換した電流波形に基づき、同電流波形の所定半周期区間の周期を測定する。
【0041】
位相制御角算出部34は、ON継続時間測定部32にて測定した所定半周期区間内のON継続時間t及び周期測定部33にて測定した所定半周期区間の周期Tに基づき、θ=t/T*2πの数式で所定半周期区間の位相制御角θを算出する。
【0042】
さらに、CPU25内部の第1電流実効値算出部35は、A/D変換部24にて数値化したデータに基づき所定半周期区間内の電流実効値を算出する。
【0043】
第2電流実効値算出部36は、位相制御角算出部34にて算出した所定半周期区間の位相制御角θ及び、第1電流実効値算出部35にて算出した所定半周期区間の電流実効値Iに基づき、(数1)で所定半周期区間の制御量100%相当の電流実効値Imaxを算出する。
【0044】
そして、ヒータ断線判定部37は、第2電流実効値算出部36にて算出した所定半周期区間内の制御量100%相当の電流実効値Imaxと、基準電流実効値記憶部31に記憶中のヒータ正常時の制御量100%相当の電流実効値としての基準電流実効値とを比較し、この比較結果に基づき、第2電流実効値算出部36にて算出した電流実効値が基準電流実効値よりも小さい場合、ヒータ断線が発生したものと判断する。
【0045】
警告出力制御部38は、ヒータ断線判定部37にてヒータ断線が発生したものと判断されると、警告音又は警告表示を外部出力することになる。
【0046】
また、ヒータ断線判定部37は、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が基準電流実効値よりも小さくない場合、ヒータ断線が発生してないと判断することになる。
【0047】
本実施の形態によれば、交流電流の半周期区間毎に、位相制御角θに基づき、同半周期区間内でサイリスタ13AをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタ13AをOFFして同交流電流の電流実効値を調整する際に、同半周期区間内のサイリスタ13AのON継続時間に比例した電流実効値が得られるというサイリスタ位相制御の原理に着目し、ヒータ正常時のヒータ電流に関わる制御量100%相当の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶しておき、ヒータ電流の電流波形を検出し、この電流波形に基づき、所定半周期区間内のON継続時間、周期及び電流実効値を測定し、所定半周期区間内のON継続時間及び周期に基づき位相制御角θを算出すると共に、この所定半周期区間の位相制御角及び電流実効値に基づき、制御量100%相当の電流実効値を算出し、この制御量100%相当の電流実効値及び基準電流実効値の比較結果に基づきヒータ断線を識別判定するようにしたので、電圧系統の配線を要することなく、電流検出器15の電流系統の配線のみで、しかも、位相ズレを考慮することなく、ヒータ断線を確実に識別判定することができる。
【0048】
また、本実施の形態によれば、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が基準電流実効値よりも小さい場合、ヒータ断線と判定するようにしたので、ヒータ断線を確実に識別判定することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、基準電流実効値をヒータ正常時の制御量100%相当の電流実効値に設定することで、この基準電流実効値に基づき、制御量100%未満の制御量の基準電流実効値も順次算出することが可能になる。
【0050】
尚、上記実施の形態においては、ヒータ正常時の制御量100%相当の電流実効値を基準電流実効値として基準電流実効値記憶部31に記憶し、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値及び基準電流実効値を比較し、この比較結果に基づき、ヒータ断線の有無を判定するようにしたが、例えばヒータ11内のヒータ本数毎の制御量100%相当の電流実効値を基準電流実効値として基準電流実効値記憶部31に予め記憶しておき、ヒータ断線判定部37にて、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値と基準電流実効値記憶部31に記憶中の各基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、複数の基準電流実効値の内、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値以下の基準電流実効値の内、最大の基準電流実効値を検索し、この検索した最大の基準電流実効値に対応したヒータ本数を全ヒータ本数から減じた本数をヒータ断線本数と識別判定するようにしても良い。
【0051】
この場合、基準電流実効値記憶部31は、例えばヒータ11内部の全ヒータ本数が10本の場合、ヒータ本数が10本の制御量100%相当の電流実効値、9本の制御量100%相当の電流実効値、8本の制御量100%相当の電流実効値、7本の制御量100%相当の電流実効値、6本の制御量100%相当の電流実効値、5本の制御量100%相当の電流実効値、4本の制御量100%相当の電流実効値、3本の制御量100%相当の電流実効値、2本の制御量100%相当の電流実効値、1本の制御量100%相当の電流実効値を基準電流実効値とし、ヒータ本数に応じた基準電流実効値を予め記憶しておくものである。
【0052】
また、ヒータ断線判定部37は、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が10本相当の基準電流実効値と比較し、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が10本相当の基準電流実効値よりも小さい場合、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が9本相当の基準電流実効値と比較し、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が9本相当の基準電流実効値よりも小さい場合、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が8本相当の基準電流実効値と比較し、さらに第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が8本相当の基準電流実効値よりも小さい場合、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が7本相当の電流実効値と比較し、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値を6本相当の電流実効値→5本相当の電流実効値→4本相当の電流実効値→3本相当の電流実効値→2本相当の電流実効値→1本相当の電流実効値の順に順次比較するものである。
【0053】
この際、ヒータ断線判定部37は、例えば第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が7本相当の電流実効値と比較し、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値が7本相当の電流実効値よりも大きい場合、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値以下の基準電流実効値の内、最大の基準電流実効値、すなわち7本相当の基準電流実効値を検索し、この検索した基準電流実効値に対応した本数、7本を全ヒータ本数である10本から減じた本数、すなわち3本のヒータ断線が発生したことを認識することができるものである。
【0054】
その結果、ヒータ11内の複数のヒータ本数の内、各本数に応じた正常時のヒータ電流に関わる制御量100%相当の電流実効値を基準電流実効値として記憶しておき、ヒータ断線判定部37にて、第2電流実効値算出部36にて算出した制御量100%相当の電流実効値と、記憶中の各本数に応じた制御量100%相当の基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、複数の基準電流実効値の内、第2電流実効値算出部36にて算出した電流実効値以下の基準電流実効値の内、最大の基準電流実効値を検索し、この検索した最大の基準電流実効値に対応した本数を全ヒータ本数から減じた本数をヒータ断線本数と判定するようにしたので、ヒータ断線を断線本数単位で確実に識別判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のヒータ制御装置によれば、交流電流の半周期区間毎に、位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整する際に、同半周期区間内のサイリスタON継続時間に比例した電流実効値が得られるというサイリスタ位相制御の原理に着目し、前記ヒータ正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶しておき、前記ヒータ電流の電流波形を検出し、この電流波形に基づき、所定半周期区間内のON継続時間、周期及び電流実効値を測定し、所定半周期区間内のON継続時間及び周期に基づき位相制御角を算出すると共に、この所定半周期区間の位相制御角及び電流実効値に基づき、所定制御量相当の電流実効値を算出し、この所定制御量相当の電流実効値及び基準電流実効値の比較結果に基づきヒータ断線を識別判定するようにしたので、電圧系統の配線を要することなく、ヒータ電流波形検出手段等の電流検出器の電流系統の配線のみで、しかも、位相ズレを考慮することなく、ヒータ断線を確実に識別判定することができる、例えば工業炉ヒータ等を温度調整する温度調整システムに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のヒータ制御装置に関わる実施の形態を示す温度調整システム内部の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態に関わるヒータ断線検出装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】一般的なサイリスタ位相制御の原理を端的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0057】
11 ヒータ
13 電力調整装置(ヒータ制御装置)
13A サイリスタ
15 電流検出器(ヒータ電流波形検出手段)
16 ヒータ断線検出装置(ヒータ制御装置)
31 基準電流実効値記憶部(基準電流実効値記憶手段)
32 ON継続時間測定部(ON継続時間測定手段)
33 周期測定部(周期測定手段)
34 位相制御角算出部(位相制御角算出手段)
35 第1電流実効値算出部(第1電流実効値算出手段)
36 第2電流実効値算出部(第2電流実効値算出手段)
37 ヒータ断線判定部(ヒータ断線判定手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象のヒータの温度を目標温度に設定するための温調制御信号を受信し、交流電流の半周期区間毎に前記温調制御信号に対応した位相制御角に基づき、同半周期区間内でサイリスタをONした後、同半周期区間の零クロス位置で同サイリスタをOFFして同交流電流の電流実効値を調整し、この調整した電流実効値に基づき、前記ヒータへのヒータ電流を調整出力する電力調整装置と、前記ヒータ電流に基づき、前記ヒータの断線を検出するヒータ断線検出装置とを有するヒータ制御装置であって、
前記ヒータ断線検出装置は、
前記ヒータ正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として予め記憶した基準電流実効値記憶手段と、
前記ヒータ電流の電流波形を検出するヒータ電流波形検出手段と、
このヒータ電流波形検出手段にて検出した前記ヒータ電流の電流波形に基づき、所定半周期区間内のON継続時間を測定するON継続時間測定手段と、
前記ヒータ電流波形検出手段にて検出した前記ヒータ電流の電流波形に基づき、前記所定半周期区間の周期を測定する周期測定手段と、
前記ヒータ電流波形検出手段にて検出した前記ヒータ電流の電流波形に基づき、前記所定半周期区間の電流実効値を算出する第1電流実効値算出手段と、
前記ON継続時間測定手段にて測定した前記所定半周期区間内のON継続時間及び、前記周期測定手段にて測定した前記所定半周期区間の周期に基づき、この所定半周期区間の前記位相制御角を算出する位相制御角算出手段と、
前記第1電流実効値算出手段にて算出した前記所定半周期区間の電流実効値及び、前記位相制御角算出手段にて算出した前記所定半周期区間の前記位相制御角に基づき、前記所定制御量相当の電流実効値を算出する第2電流実効値算出手段と、
この第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値と、前記基準電流実効値記憶手段に記憶中の基準電流実効値とを比較し、この比較結果に基づき、前記ヒータの断線を識別判定するヒータ断線判定手段とを有することを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
前記ヒータ断線判定手段は、
前記第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値が前記基準電流実効値よりも小さい場合、前記ヒータの断線と識別判定することを特徴とする請求項1記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記所定制御量は、
100%の制御量に相当することを特徴とする請求項1又は2記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記基準電流実効値記憶手段は、
前記ヒータ内の複数のヒータ本数の内、各本数に応じた正常時のヒータ電流に関わる所定制御量相当の電流実効値を基準電流実効値として夫々記憶しておき、
前記ヒータ断線判定手段は、
前記第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値と、前記基準電流実効値記憶手段に記憶中の各本数に応じた基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、前記ヒータの断線本数を識別判定することを特徴とする請求項1、2又は3記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
前記ヒータ断線判定手段は、
前記第2電流実効値算出手段にて算出した前記所定制御量相当の電流実効値と前記基準電流実効値記憶手段に記憶中の各本数に応じた基準電流実効値とを順次比較し、この比較結果に基づき、前記複数の基準電流実効値の内、前記第2電流実効値算出手段にて算出した電流実効値以下の基準電流実効値の内、最大の基準電流実効値を検索し、この検索した最大の基準電流実効値に対応した本数を全ヒータ本数から減算した本数をヒータ断線本数と識別判定することを特徴とする請求項4記載のヒータ制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−70682(P2009−70682A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237909(P2007−237909)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】