説明

ヒートシンク

【課題】ヒートシンクに取付けられた被冷却体となる発熱体の熱をより均等に基板および放熱フィン側へ均一に拡散して伝達することができるようにする。
【解決手段】放熱フィン12が取付けられた放熱フィン12ベースの基板内部に、作動流体の相変化により熱を輸送する複数の熱拡散プレート20を、複数の発熱体の設置位置に相対して配置し、熱拡散プレート20を基板領域内に形成することで、発熱体の発熱を放熱フィン12全域に熱拡散することが可能となり、空気への放熱を効率よく行うことができるため、発熱部の温度上昇の極めて小さいヒートシンク10a〜10fを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子等の発熱密度の高い発熱体の冷却に適したヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は高集積化、高出力化に伴って損失が増加し、発熱量が増大するので、これを効果的に冷却することが必要となる。
【0003】
半導体素子の発生損失が数Wレベルまでは半導体素子の表面からの自然放熱でもよいが、数十Wレベルでは、これまで図5に示すようにアルミニウム等の熱良導体で構成された基板51に放熱フィン52を多数取付けて構成したヒートシンク50を用いるようにしていた。このヒートシンク50を半導体素子などの発熱体1に結合し、発熱体1の熱をこのヒートシンク50へ伝達し放熱フィン52から大気中への放熱することにより発熱体の熱の放熱が促進される。また、半導体素子などの発熱体の損失が数十W以上のレベルになった場合は、このヒートシンク50に電動ファン60により送風することにより放熱効率をさらに向上させるようにするのが一般的である。
【0004】
半導体素子の出力がさらに増大し、または実装密度が高密度化することにより、ヒートシンクにさらに高い単位面積あたりの放熱量が要求されるが、この場合は、一般に、図6に示すように、ヒートシンク50に設ける櫛歯状の放熱フィン52aの間隔を可能な限り小さくし、図7に示すように、放熱フィン52bを格子状にすることにより、放熱フィン52の放熱面積を増加させて放熱効率を高め、半導体素子の温度上昇を抑制するようにしている。
【0005】
近年、半導体素子の高集積化と実装密度の高密度化が進展する中で、ヒートシンクの単位面積あたりの放熱量が10W/cm2レベルを超えると前記したようなヒートシンクでは対応できなくなり、図8や図9に示すような熱分散型ヒートシンクが提案されている。
【0006】
図8は、特許文献1に記載されるもので、アルミニウム製の櫛歯状放熱フィン52を有するヒートシンク50の基板51内にそれぞれ密封された細孔53により独立して形成されたヒートパイプ7を複数分散して配設し、基板51の一部に結合された半導体素子1から発生する熱をこのヒートパイプ7により基板51全体に分散させて放熱フィン52に伝達するようにしたものである。これにより実効的なヒートシンクの放熱面積が拡大し、大気に対して低温度差での放熱が行えるようになる。
【0007】
また、図9は、特許文献2に示されるもので、蛇行細管ヒートパイプ8とコルゲート状フィン53を組み合わせて構成したものである。半導体素子1を取付けた基板51の裏面に蛇行細管ヒートパイプ8を配し、複数段のコルゲート状フィン53に接合させるようにしている。このような構成のヒートシンクは、蛇行細管ヒートパイプ8が基板51の熱を分散して多段構成されたコルゲート状フィン53の全体に伝達して放熱することができるので、ヒートシンク全体の実効的な放熱面積が拡大し、放熱効率を向上できる。また、このヒートシンクによれば、複数の半導体素子1に発生損失にバラツキがある場合でも、熱分散効果により基板51の温度分布を均一にできる。
【特許文献1】特開2001−156299号公報(2〜4頁、図1)
【特許文献2】特開2001−223308号公報(3〜4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体素子などの高集積化と実装密度の高密度化に対応して単位面積あたりの放熱量が10W/cm2以上のレベルを超えるような発熱体を冷却する場合には、前記のようなヒートパイプを組み込んだヒートシンクの採用が検討されているが、図8に示したヒートシンクの基板51内にヒートパイプ7を組み込む形式のヒートシンクの場合は、複数のヒートパイプ7が独立して形成されているのでヒートシンクの基板51内での熱分散方向が、ヒートパイプ7の長手方向に限られるため、実効的な放熱面積の拡大はできても複数の半導体素子などの発熱体の発熱分布のバラツキを十分に吸収することができない。これを改善するためには、特に大容量の半導体変換装置の冷却装置に適用した場合、より多数のヒートパイプを設ける必要があり、基板51への細孔の加工およびヒートパイプにかかる費用が嵩む問題がある。
【0009】
また、図9に示した蛇行細管ヒートパイプ8とコルゲート状フィン53を組み合わせたヒートシンクでは、熱拡散の性能は優れているが、蛇行細管内のヒートパイプの作動液の振動により熱移動を行うため、熱輸送限界値が図8の従来装置に比べて低く、放熱量が熱輸送限界を超えると受熱部温度が急激に上昇し、半導体素子などの焼損事故を招く不都合がある。
【0010】
さらに、高発熱密度の放熱方法として水冷方式をとることもできるが、電気的装置に適用する場合は、電気部品の絶縁手段の追加設置、冷却水循環系の漏洩防止構造、冷却水循環ポンプの信頼性確保のための冗長化、水と空気の熱交換器設置などが必要となり、空気冷却器と比べ信頼性の低下や、価格の高騰を招く欠点がある。
【0011】
このように、従来の空冷式および水冷式ヒートシンクにおける問題点に鑑みて、本発明は、熱拡散性能の制限を解消するとともに、発熱体の熱をヒートシンクの全体に拡散し低温度差で効率よく放熱を行うことのできる熱拡散型のヒートシンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するため、請求項1の発明は、熱良導体からなる平板状基板の一方の主面には複数の放熱フィンが植設され、前記基板の他方の主面には被冷却体となる発熱体が1つまたは複数取付けられ、前記基板内部には作動流体の相変化により熱を輸送する1つまたは複数の熱拡散プレートが組み込まれたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載のヒートシンクにおいて、前記熱拡散プレートを基板内部に組み込むための組込み孔が基板の発熱体取付け位置の直下に設けられ、前記基板の側面に開口されたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は熱良導体からなる平板状基板の一方の主面には複数の放熱フィンが植設され、前記基板の内に他方の主面側に開口させて作動流体の相変化により熱を輸送する1つまたは複数の熱拡散プレートを組み込むための組込み溝または組込み穴が設けられ、前記組込み溝または組込み穴に熱拡散プレートが組み込まれ、この熱拡散プレート上に被冷却媒体となる発熱体が接合されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、熱良導体からなる平板状基板の一方の主面には複数の放熱フィンが植設され、前記基板の他方の主面には作動流体の相変化により熱を輸送する1つまたは複数の熱拡散プレートを組み込むための組込み溝または組込み穴が設けられた第1の基板と、被冷却体となる発熱体の取付けられる熱良導体の平板状基板からなる第2の基板とから構成され、前記組込み溝または組込み穴に前記熱拡散プレートが組み込まれた前記第1の基板の他方の主面に第2の基板を接合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、放熱フィンが取付けられた基板内部に、作動流体の相変化により熱を輸送する複数の熱拡散プレートを、複数の発熱体の設置位置に相対して配置して基板内部に組み込むことで、この熱拡散プレーを介して発熱体の発生する熱を放熱フィン全域に拡散することが可能となり、大気中への放熱を効率よく行うことができるため、発熱部の温度上昇を小さく抑えることのできるヒートシンクを得ることができる。
【0017】
また、従来のヒートシンクに比べて、構造がシンプルであり、かつ押し出し成形法により製作できる細孔型の熱拡散プレートを用いることにより低価格のヒートシンクを提供することが可能となる。
【0018】
更に、熱拡散プレートを発熱部の取付け位置に対応した位置に配置することで、発熱部の熱を効果的に拡散して基板へ伝導できるので放熱効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明の実施の形態を図に示す実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、この発明によるヒートシンク10aの全体を示すものであり、アルミニウムや銅などの熱良導体により平板状に形成した基板11aの一方の主面に、多数の放熱フィン12がこれと一体的に植設され、この主面と対向する一方の主面に半導体素子等の被冷却体となる発熱体1が所要数熱的におよび機械的に結合されている。
【0021】
このように構成されたこの発明のヒートシンクにおいては、放熱性能をさらに向上させるために、図1の(A)、(B)に示すように、基板11aに取付けられた発熱体1の直下に位置する部分の基板11a内部に熱拡散プレート20を組み込んで内設することにより被冷却体となる発熱体1から発せられる局所的な熱は、基板11aの熱拡散プレート20と接する部分全体に拡散し、放熱フィンを介して大気中へと効果的に放熱される。
【0022】
図1の(A)は、熱良導体から構成された平板状基板11aの内部に熱拡散プレート20を組み込んだ状態を示したもので、(B)は、前記熱拡散プレート20を、基板11aの側面に開口した組込み孔15aへ挿入しようとしている状態を示したものである。
【0023】
図1(A)と(B)に示すように、この実施例1のヒートシンク10aは、熱良導体からなる平板状基板11aの一方の主面13aに複数の放熱フィン12が間隔をおいて一体的に植設され、前記基板11aこの主面13aに対向する他方の主面14aには、半導体素子等の被冷却体となる3個の発熱体1が均等な間隔で配列して取付けられている。
【0024】
また、この基板11aの内部には、基板11aの主面に取付けられた発熱体1が稼動することによって発生する熱をより効率的に基板11aの全域に拡散して伝導して、放熱フィン12を介して大気中への放熱を促進するための熱拡散プレート20を挿入して組み込むための組込み孔15aが設けられる。組込み孔15aは、基板11aの各発熱体1の取付けられた位置の直下の基板内部にそれぞれ基板11aを貫通して設けられ、対向する両側面16aに組込み孔15aが開口する。
【0025】
なお、基板11aに設けられたに組込み孔15aに、熱拡散プレート20を組込む際には、両者の熱接触を良好に保つため、熱伝導性の高いグリースなどを熱拡散プレート20の表面に塗布した上で、組込み孔15aに挿入することが好ましい。そのために基板11aに設けられる組込み孔15aは、グリースなどを塗布した熱拡散プレート20が挿入可能なように熱拡散プレート20のその外形よりわずかに大きく形成してある。
【0026】
ここで、熱拡散プレートの構造については、発熱体1により発生した熱をより効率的に基板11aの熱拡散プレートとの接触領域の全域に拡散することができる構造のものが好ましい。
【0027】
本発明で用いる熱拡散プレートの一例としては、図4(A)、(B)、(C)に示すような基板21内に細孔22を設けたループ型サーモサイフォン熱拡散プレート20を用いるのがよい。
【0028】
このループ型サーモサイフォン熱拡散プレートの基本構成は、図4の(B)に示すように、熱良導体から構成された平板状基板21の内部に、上下方向に延びている複数の直線状の細孔22が同一平面状に分散して配設された細孔列が形成されている。
【0029】
基板21の上下端部は、それぞれ基板21のほぼ全幅に渡って設けられた各細孔22に連通した溝からなるヘッダ部24、25を形成している。このヘッダ部24、25により全部の細孔22が両端で相互に連通される。このような細孔22内は、真空排気の上で2相凝縮性の冷却媒体を封入して密封された循環路を構成する。
【0030】
前記基板の内部に設けられている細孔列の各細孔22のうち、基板21の両外側に位置する細孔(以下還流路という)の断面積は、他の細孔22の断面積よりも大きく形成して、還流路23としている。このように形成することで、還流路内23の流動抵抗が低減し、2相凝縮性の冷却媒体17は、細孔22から還流路23への流入をスムーズ行い冷却媒体の循環を促進させることができる。
【0031】
次に、このループ型サーモサイフォン熱拡散プレート20の熱輸送循環メカニズムを説明する。
【0032】
図4(B)において、基板21の内部には、上下方向に延びる同一平面上に分散して並列に配設された細孔22が設けられており、その上下端はヘッダ部24、25によって全細孔が連通されている。これによって、冷却媒体17の循環経路は下部のヘッダ部25−細孔22−上部のヘッダ部24−貫流路23−下部のヘッダ部25というように1つの閉ループの循環路が形成される。
【0033】
図4(B)に点線で示すように熱拡散プレート20の下部に取付けられた発熱体1が作動して熱が発生すると、基板21を介して下部のヘッダ部25および細孔22内にされた液状の冷却媒体17が加熱される。液状の冷却媒体17は加熱により沸騰し気化することによって蒸気泡27が発生する。液より密度の小さい蒸気泡27は、その浮力によって上方へ移動する。それらが連続発生して、蒸気流28となり細孔列22を上部へと上昇する。冷却媒体17がこのように気化するときその大きな気化潜熱により発熱体1の熱を奪い発熱体1を冷却する。
【0034】
発熱体1が接触していない基板21の中間部及び上部は、発熱体が接触している基板21の部分より温度が低いため、加熱により沸騰し気化した冷却媒体17によって運ばれた熱は基板面21から放熱フィン21を介して大気中へと放熱30され、これによって、気化した冷却媒体17が冷却され凝縮して液化する。
【0035】
このように凝縮して液化した冷却媒体17は、さらに蒸気流28に同伴して細孔22上部への移動し、気液2相流29となって、上部のヘッダ部24内を経て還流路23へ至る。還流路23内は、各細孔22の断面積よりも大きく、発熱体1が直接接触していないので、細孔22内よりも圧力が低く、またこれに重力作用も伴って、気液2相流29は還流路23内を伝わって下部のヘッダ部25へと流下し液溜りを作り、再び沸騰循環サイクルを形成する。
【0036】
このように、基板21の内部に複数の細孔22からなる細孔列を形成し、上下端にヘッダ部24、25と基板の両外側に位置する部分に還流路23を設けることで、基板21内を冷却媒体17が循環し、発熱体1によって局部的に加わる熱が基板21の全体に均一に伝達拡散され、基板21の放熱効率を高めることができる。
【0037】
なお、基板21への半導体素子などの被冷却体となる発熱体1の取付け位置は、図4の(B)の四角の点線で示された、鉛直方向に立設した基板21の主面の下部で、還流路23の領域に重ならない位置に取付けることが好ましい。このよう位置に取付けることによって、細孔22と還流路23とに温度差を持たせて内圧差を生じさせることができるので、気相化された冷却媒体17をスムーズに還流させることができる。
【0038】
なお、図示はしないが、前述のような幅方向で2相凝縮性の作動媒体を循環させる構造を有する熱拡散プレートの他に、基板内の上下方向に直線状に延びる多数の細孔を形成し、それを基板の厚さ方向に2列に配列した上で、基板の上下端に、これと一体的に結合された基板のほぼ全幅にわたる溝を有し、溝により全部の細孔を両端で相互に連通させ密封し、この密封された細孔に2相凝縮性の作動媒体を封入し構成した、厚み方向で作動媒体を循環させる構造を有する熱拡散プレートを用いることも可能である。
【0039】
ただし、本発明に用いられる熱拡散プレート20の構造は、図4に示したものや本文中に詳述した構成に限るものではない。
【0040】
次に、図1(C)に、実施例1を変形したヒートシンクを示す。
【0041】
図1(C)は、図1(A)、(B)と同様にヒートシンクの全体の構成を示すものである。
【0042】
図1(C)に示すようにヒートシンク10bは、熱良導体からなる平板状基板11bの一方の主面13bには複数の放熱フィン12が間隔をおいて一体的に植設され、前記基板11bの主面13bに対向する他方の主面14bには、半導体素子等の被冷却体となる発熱体1が取付けられている。
【0043】
また、この基板11bの内部には、基板11bの主面14bに取付けられた発熱体1が稼動することによって発生する熱を、より効率的に基板11bへ拡散して伝達し、放熱フィン12を介して空気中への放熱を促進するための1個の熱拡散プレート20が、3個の発熱体1に対して共通に組込まれている。
【0044】
この熱拡散プレート20を組み込むために、前記基板11bの長手方向に対抗する両側面17bから前記熱拡散プレート20を組込み可能なような組込み孔15bを所要数(本実施例では1つ)、3個の発熱体1の取付け直下に共通する位置に基板11bを貫通して設けられている。
【0045】
なお、基板11bに設けられたに組込み孔15bに、熱拡散プレート20を組込む際には、両者の熱接触を良好に保つため、熱伝導性の高いグリースなどを熱拡散プレート20の表面に塗布した上で、組込み孔15bに挿入することが好ましい。そのために基板11bに設けられる組込み孔15bは、グリースなどを塗布した熱拡散プレート20が挿入可能なように熱拡散プレート20のその外形よりわずかに大きく形成してある。
【0046】
熱拡散プレート20については図1の(A)、(B)にて説明したものと同様な構造のものを利用する事が好ましい。
【実施例2】
【0047】
図2にこの発明の第2の実施例を示す。
【0048】
図2の(A)と(B)は本発明の実施例2によるヒートシンク10cの基本構成を示す斜視図である。
【0049】
図2の(A)は、熱良導体から構成された平板状基板11cの一方の主面13cに熱拡散プレート20を嵌合した状態を示したもので、(B)は、基板11cの組込み溝15cに前記熱拡散プレート20を組み込む前の状態を示したものである。
【0050】
図2(A)と(B)に示すように、実施例2のヒートシンク10cは、熱良導体からなる平板状基板11cの一方の主面13cに複数の放熱フィン12が間隔をおいて一体的に植設され、前記基板11cの主面13cに対向する他方の主面14c上に、熱拡散プレート20を嵌合して組み込むための組込み溝15cが、所要数(本実施例では3つ)、基板全体に分散して設けられている。
【0051】
この組込み溝15cは前記基板11cの主面14cおよび長手の両側面16cに開口され、これらに熱拡散プレート20を嵌め込んだ後、発熱体1を前記熱拡散プレート20上に接触させて熱的におよび機械的に結合される(図2(A))。
【0052】
なお、熱拡散プレート20への発熱体1の取付け位置は、実施例1と同様である。
【0053】
なお、基板11cに設けられたに組込み溝15cに、熱拡散プレート20を嵌め込む際には、両者の熱接触を良好に保つため、熱伝導性の高いグリースなどを熱拡散プレート20の表面に塗布した上で、組込み溝15cに嵌め込むことが好ましい。そのために基板11cに設けられる組込み溝15cは、グリースなどを塗布した熱拡散プレート20が嵌め込み可能なように熱拡散プレート20のその外形よりわずかに大きく形成してある。
【0054】
熱拡散プレート20については実施例1にて説明したものと同様な構造のものを利用する事が好ましい。
【0055】
次に、図2(C)に、実施例2を変形したヒートシンクの例を示す。
【0056】
図2(C)に示すようにヒートシンク10dは、熱良導体からなる平板状基板11dの一方の主面には複数の放熱フィン12が間隔を置いて一体的に植設され、前記基板11dの主面に対向する他方の主面には、熱拡散プレート20を嵌合するための組込み溝15dが、前記基板11dの長手方向に基板を横断するように所要数(本実施例では1つ)設けられている。このような組込み溝15dには、熱拡散プレート20を嵌め込んだ後、3個の発熱体1を並列して共通の熱拡散プレート20上に接触させて熱的におよび機械的に結合されている(図2(C))。
【0057】
なお、熱拡散プレート20への発熱体1の取付け位置は、実施例1と同様である。
【0058】
なお、基板11dに設けられたに組込み溝15dに、熱拡散プレート20を嵌め込む際には、両者の熱接触を良好に保つため、熱伝導性の高いグリースなどを熱拡散プレート20の表面に塗布した上で、組込み溝15dに嵌め込むことが好ましい。そのために基板11dに設けられる組込み溝15dは、グリースなどを塗布した熱拡散プレート20が嵌め込み可能なように熱拡散プレート20のその外形よりわずかに大きく形成してある。
【0059】
熱拡散プレート20については実施例1にて説明したものと同様な構造のものを利用する事が好ましい。
【実施例3】
【0060】
図3Aと図3Bにこの発明の第3の実施例を示す。
【0061】
図3Aの(A)と(B)は本発明の実施例3によるヒートシンク10eの基本構成を示す斜視図である。
【0062】
図3Aの(A)のヒートシンク10eは、熱良導体から構成された平板状基板11eの一方の主面に、基板11eの短手方向にこれを横断するように熱拡散プレート20を組込み、発熱体1を取付けた発熱体支持板18eを基板11eと一体に結合した状態を示したもので、(B)は、(A)のヒートシンク10eであって基板11eとベース板13とを一体に結合する前の状態を示したものである。
【0063】
なお、基板11eおよび放熱フィン12並びに熱拡散プレート20の組込み溝15eのこれらの構成については、図2で示す実施例2と同様であるので省略する。
【0064】
図3Aの(A)、(B)に示すように、ヒートシンク10eは放熱フィン12と3枚の熱拡散プレート20が嵌合して組み込まれた基板11eと、発熱体1が取付けられた、基板11eと同じ面積を有する熱良導体から構成された平板状の発熱体支持板18eとからなり、熱拡散プレート20が取付けられている前記基板11eの上面と、発熱体1が取付けられている支持板18eの下面とを接合して一体に結合することによってヒートシンク10eが完成する(図3A(B))。
【0065】
ここで、基板11eと支持板18eを結合するとき、両者間に熱伝導率の高いグリースなど塗布するか、あるいはローを介在させて一体結合することによって両者間の熱的結合を良好にすることができる。
【0066】
このような組込み溝15eに組み込まれた熱拡散プレートによって発熱体1より発生した熱をより効果的に放熱させるために、発熱体1の支持板18eへの取付け位置は、基板11eとベース板13を結合した場合に、発熱体1の直下に熱拡散プレート20が当る位置に選ばれている(図3Aの(A))。
【0067】
また、熱拡散プレート20については図1の(A)、(B)にて説明したものと同様な構造のものを利用する事が好ましい。
【0068】
次に、図3B(C)、(D)に、実施例3を変形したヒートシンクを示す。
【0069】
図3Bの(C)、(D)に示すように、ヒートシンク10fは放熱フィン12と1枚の熱拡散プレート20が組み込まれた基板11fと、発熱体1が取付けられた、基板11dと同じ面積を有する熱良導体から構成された発熱体支持板18fとからなり、熱拡散プレート20が取付けられている前記基板11fの上面と、発熱体1が取付けられている支持板18fの下面とを接合して一体に結合することによってヒートシンク10fが完成する(図3B(D))。
【0070】
ここで、基板11fと支持板18f結合するときは、両者間に熱伝導率の高いグリースなど塗布するか、あるいはローを介在させて一体結合することによって両者間の熱的結合を良好にすることができる。
【0071】
このような基板11fに設けられた組込み溝15fに嵌合して組込まれた1個の熱拡散プレート20によって3個の発熱体1より発生した熱をより効果的に放熱させるために、発熱体1の支持板18fへの取付け位置は、基板11fとベース板13を熱接続させた場合に、発熱体1の直下に熱拡散プレート20が当る位置に選ばれている(図3B(C))。
【0072】
また、熱拡散プレート20については図1の(A)、(B)にて説明したものと同様な構造のものを利用する事が好ましい。
【0073】
なお、本実施例1から3までに示したヒートシンクにあっては、図1の(A)〜(C)、図2の(A)〜(C)、図3Aの(A)、(B)および図3Bの(C)〜(D)に示すように、基板の対抗する両側面間に通して熱拡散プレート20を組込むための組込み孔または組込み溝を設けたが、図示はしないが、半導体素子等の被冷却体となる発熱体1の発熱条件や設置環境または熱拡散プレートの構造や形状に応じて基板の対抗する両側面に通して設ける必要はなく、両側面の中間にも設けるようにしてもよい。
【0074】
以上のように、これら実施例1から実施例3までに示した熱拡散プレート20を配置した本発明のヒートシンクにあっては、発熱部1から発生した熱を基板全域に拡散し放熱フィンにより放熱することが可能になるので、熱拡散プレート20の無いヒートシンクに比べて、放熱密度が低下し、発熱部と外気の温度差は小さくなり、これにより、発熱体1の温度上昇を大幅に低減でき、高密度な半導体モジュールの実装が可能となる。
【0075】
また、従来のヒートシンクに比べて、構造がシンプルであり、かつ押し出し成形法により製作できる細孔型の熱拡散プレート20を用いることにより低価格のヒートシンクを提供することが可能となる。
【0076】
更に、熱拡散プレートを発熱部に対応した位置に配置することで、必要な熱拡散を必要最小限度のコストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】(A)と(B)は本発明の実施例1によるヒートシンクの基本構成を示す斜視図であり、(C)は他の実施の形態に係わるヒートシンクの構成を示す斜視図である。
【図2】(A)と(B)は本発明の実施例2によるヒートシンクの基本構成を示す斜視図であり、(C)は他の実施の形態に係わるヒートシンクの構成を示す斜視図である。
【図3A】(A)と(B)は本発明の実施例3によるヒートシンクの基本構成を示す斜視図である。
【図3B】(C)と(D)は、図3Aにおける実施例の、他の実施の形態に係わるヒートシンクの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明で用いる熱拡散プレートの基本構造の説明図であり、(A)はヒートシンクの外観を表し、(B)は(A)におけるB−B線断面図、(C)は(A)におけるC−C線断面図である。
【図5】従来のヒートシンクの構成を示す斜視図である。
【図6】従来のヒートシンクの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図7】従来のヒートシンクの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図8】従来のヒートシンクの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図9】従来のヒートシンクの構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 :発熱体
10a〜10f:ヒートシンク 11a〜11f:基板
12:放熱フィン 13a〜13f:主面
14a〜14b:主面 15a、15b:組込み孔
15c〜15f:組込み溝 16a〜16f:側面
17a〜17f:側面 18e、18f:発熱体支持板
20:熱拡散プレート 21:基板
22:細孔 23:還流路
24:上部ヘッダ部 25:下部ヘッダ部
27:蒸気泡 28:蒸気流
28a:液流 29:気液2相流
30:放熱



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱良導体からなる平板状基板の一方の主面には複数の放熱フィンが植設され、前記基板の他方の主面には被冷却体となる発熱体が1つまたは複数取付けられ、前記基板内部には作動流体の相変化により熱を輸送する1つまたは複数の熱拡散プレートが組み込まれたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
請求項1記載のヒートシンクにおいて、前記熱拡散プレートを基板内部に組み込むための組込み孔が基板の発熱体取付け位置の直下に設けられ、前記基板の側面に開口されたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
熱良導体からなる平板状基板の一方の主面には複数の放熱フィンが植設され、前記基板の内に他方の主面側に開口させて作動流体の相変化により熱を輸送する1つまたは複数の熱拡散プレートを組み込むための組込み溝または組込み穴が設けられ、前記組込み溝または組込み穴に熱拡散プレートが組み込まれ、この熱拡散プレート上に被冷却媒体となる発熱体が接合されたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
熱良導体からなる平板状基板の一方の主面には複数の放熱フィンが植設され、前記基板の他方の主面には作動流体の相変化により熱を輸送する1つまたは複数の熱拡散プレートを組み込むための組込み溝または組込み穴が設けられた第1の基板と、被冷却体となる発熱体の取付けられる熱良導体の平板状基板からなる第2の基板とから構成され、前記組込み溝または組込み穴に前記熱拡散プレートが組み込まれた前記第1の基板の他方の主面に第2の基板を接合したことを特徴とするヒートシンク。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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