説明

ヒートシール性フィルム及びその製造方法

【課題】セロハンフィルムを基材とし、高いヒートシール性及び防湿性(水蒸気バリア性)を有するヒートシール性フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セロハンフィルムの少なくとも一方の面に、塩化ビニル含量が80重量%以上であって、遊離の酢酸ビニル含量0.1重量%以下の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体100重量部に対して、硬化剤(ポリイソシアネートなど)1〜12重量部と、低分子量の可塑剤2〜25重量部とを含むヒートシール層を形成し、ヒートシール性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温シール性に優れ、食品などの包装材料として有用なヒートシール性フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品などの包装用フィルムには、通常、酸素、水蒸気などに対するバリア性のほか、ヒートシール性が要求される。このような包装用フィルムとして、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリプロピレン系フィルムに、ガスバリア性の高い樹脂を含む塗布剤(塩化ビニリデン系樹脂やポリビニルアルコール系樹脂)を塗布し、ガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムが知られている。しかし、このようなガスバリア層はヒートシール性が劣る。
【0003】
包装用フィルムとして、酸素ガスバリア性が比較的高いセロハンフィルムも利用されている。しかし、セロハンフィルムは水蒸気バリア性及びヒートシール性がないため、包装体を形成するためには、水蒸気バリア性とともにヒートシール性を付与する必要がある。
【0004】
特開平4−334442号公報(特許文献1)には、基材フィルムの一方の面がヒートシール層で被覆され、他方の面が耐油性層で被覆された被覆フィルムが開示されている。この文献には、ヒートシール層を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体で形成してもよいことが記載されているが、塩化ビニリデン−アクリル酸メチルなどの塩化ビニリデン系共重合体で形成するのが好ましいと記載されている。
【0005】
特開平5−42640号公報(特許文献2)には、基材フィルムの一方の面に、塩化ビニル含量70〜90重量%、平均重合度350以上の酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体を含む塗布液を塗布し、ヒートシール性フィルムを製造することが記載されている。
【0006】
特開平8−336927号公報(特許文献3)には、基材フィルムの少なくとも一方の面に、アンカーコート層を介して無機質薄膜層を形成したバリア性複合フィルムが開示され、前記アンカーコート層を、(A)塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体などの塩素含有樹脂100重量部に対して、(B)ポリイソシアネート化合物10〜500重量部、(C)ガラス転移温度−10〜20℃及び数平均分子量1×10〜5×10を有し、前記ポリイソシアネート化合物に対して実質的に非反応性の飽和ポリエステル樹脂1〜50重量部を含むコーティング剤で形成することも記載されている。前記特許文献1には、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体として、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体(塩素含有量48.8%、平均重合度430、ガラス転移温度43℃、無水マレイン酸に起因する酸価約10mgKOH/g)、飽和ポリエステル樹脂として、テレフタル酸及びエチレングリコールを主成分とするポリエステル樹脂(数平均分子量22,000,ガラス転移温度7℃,水酸基価4.8mgKOH/g)を用いた例も記載されている。さらに、無機質薄膜層上にはガスバリア性樹脂層やヒートシール層を形成してもよいことも記載されている。
【0007】
しかし、前記アンカーコート層をセロハンフィルムに適用すると、密着性とともに、100℃以下の温度でのヒートシール性に劣る。そのため、セロハンフィルム及びその包装体に高い防湿性を付与することも困難である。
【特許文献1】特開平4−334442号公報([特許請求の範囲]、段落[0016])
【特許文献2】特開平5−42640号公報([特許請求の範囲]、段落[0024])
【特許文献3】特開平8−336927号公報([特許請求の範囲]、段落[0041]、[実施例])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、セロハンフィルムに対して優れたヒートシール性が付与されたヒートシール性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、優れたヒートシール層及び密着性を有し、防湿性(水蒸気バリア性)にも優れたヒートシール性フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、セロハンフィルムを、所定の塩素含有樹脂と硬化剤(ポリイソシアネートなど)と可塑剤(脂肪族系可塑剤など)とを含む所定のコーティング剤で塗布すると、セロハンフィルムに対して優れたヒートシール性を付与できるとともに、防湿性(水蒸気バリア性)も改善できることを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明のヒートシール性フィルムは、セロハンフィルムの少なくとも一方の面に、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤(ポリイソシアネートなど)と可塑剤(脂肪族系可塑剤など)とを含むヒートシール層が形成されている。
【0012】
前記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、塩化ビニルと、酢酸ビニルと、カルボキシル基又は酸無水物基を有する単量体との共重合体(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体)であってもよい。また、前記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、塩化ビニル含量が80重量%以上であってもよい。さらに、ヒートシール層は、遊離の酢酸ビニル含量0.1重量%以下の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体を含むコーティング剤で形成してもよい。硬化剤はポリイソシアネートであってもよく、ポリイソシアネートは3以上のイソシアネート基を有していてもよい。前記可塑剤は、脂肪族系可塑剤であってもよい。また、可塑剤は、クエン酸エステル系可塑剤、C6−10脂肪族ジカルボン酸ジC4−12アルキルエステル系可塑剤(アジピン酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤など)、ポリエステル系可塑剤などであってもよく、ポリエステル系可塑剤は、C2−6アルカンジオールと、C4−10アルカンジカルボン酸又はその反応性誘導体との重合体;C4−10ラクトンの重合体;C2−6アルカンジオールと、C4−10アルカンジカルボン酸又はその反応性誘導体と、C4−10ラクトンとの重合体から選択された少なくとも一種(例えば、C2−6アルカンジオールとアジピン酸との重合体)であってもよい。さらに、可塑剤は低分子量であってもよく、可塑剤の数平均分子量は200〜3500(例えば、300〜3000)程度であってもよい。前記ヒートシール層を形成する各成分の割合は、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体100重量部に対して、硬化剤(ポリイソシアネートなど)1〜12重量部、可塑剤2〜25重量部程度であってもよく、このような成分を含むコーティング剤で形成することができる。本発明のヒートシール性フィルムは、水蒸気バリア性及びヒートシール性に優れており、例えば、水蒸気バリア性は、300g/m・MPa・day以下、ヒートシール層同士を90℃の温度で密着させたとき、ヒートシール強度は800mN/15mm以上であってもよい。
【0013】
本発明は、セロハンフィルムの少なくとも一方の面に、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤(ポリイソシアネートなど)と可塑剤(脂肪族系可塑剤など)とを含むヒートシール層を形成するヒートシール性フィルムの製造方法も包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、セロハンフィルムの表面に所定の成分で構成されたヒートシール層を形成するため、セロハンフィルムに対して優れたヒートシール性を付与できる。また、優れた密着性を有し、防湿性(水蒸気バリア性)にも優れている。さらに、本発明では、塗布という簡単な操作で前記特性を有するヒートシール性フィルムを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のヒートシール性フィルムは、基材としてのセロハンフィルムと、このセロハンフィルムの少なくとも一方の面に形成されたヒートシール層とで構成されており、前記ヒートシール層は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤(ポリイソシアネートなど)と可塑剤とを含む。
【0016】
本明細書において「セロハンフィルム」とは、少なくともセロハン層を表面に有する(又は表面にセロハン面が露出した)フィルムを意味する。従って、セロハンフィルムは、少なくとも表面にセロハン層を有する限り、単層フィルムであってもよく、セロハン層の一方の面が被覆された積層フィルムであってもよい。従って、本発明のヒートシール性フィルムは、少なくとも一方の表面に少なくともセロハン層を有する基材フィルムと、この基材フィルムの少なくとも一方のセロハン面に形成されたヒートシール層とで構成されていると言うこともできる。
【0017】
積層フィルムにおいて、セロハン層と積層される層としては、例えば、オレフィン系樹脂フィルム[例えば、ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体など);ポリエチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど);環状ポリオレフィン系樹脂などのオレフィン系樹脂フィルム]、スチレン系樹脂フィルム(例えば、ポリスチレンフィルム、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのスチレン系樹脂フィルム)、ビニルアルコール系樹脂フィルム(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂フィルム)、ポリエステル系樹脂フィルム(ポリブチレンアジペートなどの脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート;ポリアリレートなどの芳香族ポリエステル系樹脂フィルム)、ポリアミド系樹脂フィルム(ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド611,ポリアミド612などの脂肪族ポリアミド;脂環族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂フィルム)、セルロースエステル系樹脂フィルム(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステル系樹脂フィルム)などの樹脂フィルム;アルミニウム箔などの金属箔;紙;又はこれらの層が積層された複合フィルムなどが例示できる。
【0018】
さらに、セロハンフィルムは、セロハン層の一方の面に、直接又は接着剤層を介してバリア層が形成された積層フィルムであってもよい。バリア層は酸素バリア性に優れた樹脂(例えば、塩化ビニリデン系共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール系重合体)、水蒸気バリア性の高い樹脂(例えば、塩化ビニリデン系共重合体)で形成できる。
【0019】
セロハンフィルムは、未延伸であってもよく、一軸または二軸延伸処理されていてもよい。積層フィルムは、セロハン層の一方の面に、前記樹脂フィルムなどの層を接着剤で貼り合わせることにより調製してもよく、接着剤を用いることなく溶融ラミネートなどの方法で貼り合わせることにより調製してもよい。積層フィルムは、セロハン層の一方の面にバリア性樹脂を積層する方法、バリア性樹脂を含む塗布剤を塗布する方法などにより調製できる。
【0020】
セロハンフィルムとしては、通常、セロハンの単層フィルムを用いる場合が多い。
【0021】
セロハンフィルムの厚みは、例えば、3〜100μm程度の範囲から選択でき、通常、5〜50μm、好ましくは10〜45μm、さらに好ましくは15〜45μm(例えば、20〜40μm)程度であってもよい。セロハンフィルムの表面には、必要により表面処理(例えば、コロナ放電処理など)が施されていてもよい。
【0022】
ヒートシール層はセロハンフィルムの少なくとも一方の面(セロハン面)を、プライマー層やアンカーコート層又は接着剤などの中間層を介して被覆してもよいが、通常、前記セロハン面を直接被覆する場合が多い。
【0023】
ヒートシール層の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、塩化ビニル及び酢酸ビニルを重合性単量体とする共重合体であればよく、さらに塩化ビニル及び酢酸ビニルと共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、例えば、オレフィン類(エチレン、プロピレン、ブテンなどのα−C2−6オレフィン類など)、(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなど]、カルボキシル基又は酸無水物基を有する重合性単量体[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸など]などが例示できる。これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい共重合性単量体は、(メタ)アクリル系単量体、カルボキシル基又は酸無水物基を有する重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸など]である。なお、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニル単位の一部は加水分解によりビニルアルコール単位に変換されていてもよい。
【0024】
好ましい塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルと酢酸ビニルと共重合性単量体[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸など]との共重合体である。後者の共重合体としては、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸共重合体などが例示できる。特に好ましい塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体である。このような共重合体はセロハンとの密着性を大きく改善できる。
【0025】
塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体において、塩化ビニルと酢酸ビニルとの割合は、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル(重量比)=98/2〜50/50、好ましくは97/3〜65/35、さらに好ましくは95/5〜75/25程度の範囲から選択する場合が多い。塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体において、塩化ビニル含有量は多くてもよく、例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル(重量比)=97/3〜80/20、好ましくは95/5〜83/17(例えば、93/7〜85/15)程度であってもよい。塩化ビニル及び酢酸ビニルの総量と共重合性単量体との割合は、前者/後者(重量比)=99.9/0.1〜85/15、好ましくは99.5/0.5〜90/10、さらに好ましくは99/1〜95/5程度であってもよい。本発明では、塩化ビニル含有量が80重量%以上(例えば、80〜98重量%)、好ましくは83〜95重量%、さらに好ましくは85〜93重量%(例えば、85〜90重量%)程度の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体を用いる場合が多い。通常、このような共重合体をそのまま用いても、セロハンフィルムとの密着性およびコーティング層同士の100℃以下の温度でのヒートシール性が発現しない。しかし、塩化ビニル含有量が80重量%以上の共重合体を、前記硬化剤(ポリイソシアネートなど)及び可塑剤と組み合わせることにより、高い密着力でヒートシール層をセロハン面に積層でき、優れたヒートシール性及び水蒸気バリア性を付与できる。しかも、後述するように、このような塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は遊離の酢酸ビニル含量が少ない場合が多いため、作業環境の点からも好ましい。
【0026】
塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、通常、硬化剤(ポリイソシアネートなど)に対して実質的に非反応性である。すなわち、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は硬化剤(ポリイソシアネートなど)に対して非反応性であるか、反応性の活性水素原子を有していたとしても活性水素原子の濃度は低濃度である。塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体の酸価は、例えば、0〜30mgKOH/g、好ましくは0〜20mgKOH/g程度である。なお、前記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体のガラス転移温度は、例えば、50〜85℃(例えば、60〜83℃)、好ましくは65〜80℃(例えば、70〜80℃)程度である場合が多い。塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体の分子量は、例えば、数平均分子量0.5×10〜10×10、好ましくは0.7×10〜7×10、さらに好ましくは1×10〜5×10程度である。
【0027】
塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体において、遊離の酢酸ビニル含量は、0.1重量%以下(例えば、0〜700ppm、工業的には5〜500ppm、好ましくは10〜300ppm、さらに好ましくは20〜250ppm)であるのが好ましい。このような塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、塩化ビニル含量が80重量%以上である場合が多い。また、上記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体は、固体の形態(例えば、ペレット、樹脂粉末などの形態)で市販されている場合が多い。このような塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体を用いると、ヒートシール性フィルムの製造工程で臭気を発生することがない。なお、セロハンフィルムに対する密着性と100℃以下の温度でのヒートシール性とを確保するためには、酢酸ビニル含量25〜40重量%、平均分子量8,000〜40,000の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体(塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体など)を用いるのが有利である。このような共重合体は、有機溶媒(酢酸エチルなど)に溶解した溶液の形態で市販されている。しかし、このようなビニル−酢酸ビニル系共重合体は、溶液重合法により調製されるためか、遊離の酢酸ビニル含有量が6〜8重量%程度と多く、塗布工程で臭気が発生するため、作業環境の点で好ましくない。
【0028】
硬化剤には、ヒートシール層の密着性を改善できる種々の硬化剤又は架橋剤が使用でき、このような硬化剤にはポリイソシアネートなどが含まれる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ジフェニルアルカンジイソシアネート類[ジフェニルメタンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネート−3−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−イソシアネートフェニル)プロパンなど]、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;ポリイソシアネートの変性体などが例示される。ポリイソシアネートの変性体には、例えば、多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどテトラオールなど)に対してポリイソシアネートが付加したアダクト体、二量体、イソシアヌレート環を有する三量体、アロハネート変性体、ウレア変性ポリイソシアネート、ビュレット変性ポリイソシアネートなどが含まれる。これらのポリイソシアネートは単独で又は二種以上使用できる。
【0029】
好ましいポリイソシアネートには、分子中に3以上のイソシアネート基を有する低分子量化合物、例えば、トリメチロールプロパン1モルにポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどジイソシアネートなど)3モルが付加したアダクト体、イソシアヌレート環を有するジイソシアネートの三量体、プレポリマーなどが含まれる。さらに、ポリイソシアネートの分子量(又は数平均分子量)は、例えば、150〜1000、好ましくは300〜1000程度の範囲から選択できる。
【0030】
フタル酸エステル系可塑剤(フタル酸C1−12アルキルエステルなど)であってもヒートシール性などが有効に発現するが、安全衛生上の観点から、可塑剤は非フタル酸エステル系可塑剤であるのが好ましい。可塑剤としては、例えば、脂肪族系可塑剤(脂肪族多価カルボン酸アルキルエステル、多価アルコール脂肪酸エステル(トリアセチンなど)、ポリエステル成分など)、トリメリット酸エステル系可塑剤(トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸C4−16アルキルエステルなど)、リン酸エステル系可塑剤(トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのトリアリールホスフェート;トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェートなど)、エポキシ誘導体(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油など)などが例示できる。これらの可塑剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
好ましい可塑剤は、脂肪族系可塑剤、特に、脂肪族多価カルボン酸アルキルエステル、ポリエステル成分(又はポリエステル系可塑剤)である。脂肪族多価カルボン酸アルキルエステルとしては、ヒドロキシポリカルボン酸系可塑剤、脂肪族ジカルボン酸系可塑剤が例示できる。代表的なヒドロキシポリカルボン酸系可塑剤としては、クエン酸エステル系可塑剤(アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリオクチル、アセチルクエン酸トリ(2−エチルヘキシル)などのアセチルクエン酸トリC4−12アルキルエステルなど)が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸系可塑剤としては、C4−12脂肪族ジカルボン酸ジC2−12アルキルエステル、例えば、アジピン酸系可塑剤(ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸ジC4−12アルキルエステルなど)、アゼライン酸系可塑剤(ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソデシルアゼレートなどのアゼライン酸ジC4−12アルキルエステルなど)、セバシン酸系可塑剤(ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソデシルセバケートなどのセバシン酸ジC4−12アルキルエステルなど)、これらのアルキルエステルに対応するピメリン酸ジアルキルエステル、スベリン酸ジアルキルエステルなどが例示できる。
【0032】
脂肪族ポリエステル成分(又はポリエステル系可塑剤)を形成する反応性成分(単量体)としては、ジオール類及びジカルボン酸類(ジカルボン酸又はその反応性誘導体);ラクトン類;及びオキシカルボン酸類又はその反応性誘導体が例示でき、ジオール類及びジカルボン酸類は、ラクトン類及び/又はオキシカルボン酸類と組み合わせてもよい。また、ジカルボン酸の反応性誘導体には、酸無水物、酸ハライド(酸クロライドなど)、低級アルキルエステル(C1−2アルキルエステルなど)などが含まれ、オキシカルボン酸の反応性誘導体には、酸ハライド(酸クロライドなど)、低級アルキルエステル(C1−2アルキルエステルなど)などが含まれる。
【0033】
ジオール類としては、脂肪族ジオール(鎖状ジオール)、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリオキシC2−4アルキレングリコールなどが例示できる。これらのジオール類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジオール類のうちC2−6アルカンジオール(特にC2−4アルカンジオール)を用いる場合が多い。
【0034】
ジカルボン酸類としては、脂肪族ジカルボン酸(鎖状ジカルボン酸)、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4−16アルカンジカルボン酸およびそれらの反応性誘導体などが挙げられる。これらのジカルボン酸類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸類のうちアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和C4−10アルカンジカルボン酸(特にC4−6アルカンジカルボン酸)又はその反応性誘導体を用いる場合が多い。
【0035】
ラクトン類には、例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ラウロラクトンなどのC3−10ラクトン;ヒドロキシカルボン酸類の二量体、例えば、グリコリド、ラクチドなどのC4−10環状ジエステルなどが挙げられる。これらのラクトン類は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいラクトン類は、C4−8ラクトン(特にε−カプロラクトンなどのC4−6ラクトン)である。
【0036】
オキシカルボン酸類には、例えば、グリコール酸、乳酸、β−オキシプロピオン酸、α−オキシ酪酸などのヒドロキシC2−10アルカンカルボン酸などが例示できる。ヒドロキシカルボン酸は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらのヒドロキシカルボン酸のうち、α−ヒドロキシC2−6アルカンカルボン酸、特にα−ヒドロキシC2−4アルカンカルボン酸(乳酸など)が使用される。
【0037】
なお、必要に応じて、脂環族成分(シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環族ジオール、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸など)、芳香族成分(ビスフェノール類とアルキレンオキサイドとの付加物などの芳香族多価アルコール、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸など)、多官能性単量体(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオール、ピロメリト酸などの多価カルボン酸など)を使用してもよい。また、残存するヒドロキシル基やカルボキシル基を封鎖するため、末端封鎖剤として、一価アルコール、モノカルボン酸などを用いてもよい。
【0038】
脂肪族ポリエステル成分(又はポリエステル系可塑剤)は、ジオールとジカルボン酸又はその反応性誘導体との縮合反応による重合体、ラクトン類の重合体、オキシカルボン酸類の重合体、ジオールと、ジカルボン酸又はその反応性誘導体と、ラクトン類及びオキシカルボン酸類から選択された反応成分との重合体、ラクトン類とオキシカルボン酸類との重合体であってもよい。好ましい脂肪族ポリエステル成分(又はポリエステル系可塑剤)は、C2−6アルカンジオールと、C4−10アルカンジカルボン酸又はその反応性誘導体との重合体[ポリ(アルキレンアジペート)、ポリ(アルキレンアゼラエート)、ポリ(アルキレンセバケート)など];C4−10ラクトンの重合体(ポリカプロラクトンなど);C2−6アルカンジオールと、C4−10アルカンジカルボン酸又はその反応性誘導体と、C4−10ラクトンとの重合体[ポリ(アルキレンアジペート)−カプロラクトングラフト共重合体など]などであってもよい。脂肪族ポリエステル成分(又はポリエステル系可塑剤)は、C2−6アルカンジオールと、C4−10アルカンジカルボン酸又はその反応性誘導体との重合体である場合が多い。
【0039】
なお、脂肪族ポリエステル成分は、不飽和ポリエステルであってもよいが、通常、飽和ポリエステルである。また、脂肪族ポリエステル成分は、結晶質であってもよいが、通常、非結晶質である場合が多い。
【0040】
これらの脂肪族系可塑剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましい可塑剤は、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪族ジカルボン酸ジアルキルエステル系可塑剤(アジピン酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤などのC6−10脂肪族ジカルボン酸ジC4−12アルキルエステルなど)、脂肪族ポリエステル成分[C2−6アルカンジオールとアジピン酸などのC6−10アルカンジカルボン酸又はその反応性誘導体との重合体(ポリ(1,3−ブチレンアジペート)などのポリ(C2−6アルキレンアジペート)など)]である。ヒートシール層からの可塑剤のブリードアウト又は移行を抑制するためには、脂肪族ポリエステル成分(ポリエステル系可塑剤)が有利である。
【0041】
可塑剤は、前記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と同じく、硬化剤(ポリイソシアネートなど)に対して実質的に非反応性であってもよい。可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)のOH価は、例えば、0〜15mgKOH/g、好ましくは0〜10mgKOH/g程度であり、0〜5mgKOH/g程度である場合が多い。また、可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)の酸価は、例えば、0〜10mgKOH/g、好ましくは0〜7mgKOH/g程度であり、0〜5mgKOH/g程度である場合が多い。
【0042】
可塑剤は、室温(15〜25℃)で固体であってもよいが、粘稠液又は液体であってもよい。可塑剤のガラス転移温度は、例えば、−80℃〜20℃、好ましくは−60℃〜15℃(例えば、−50℃〜15℃)程度であり、−30℃〜20℃程度である場合が多い。
【0043】
可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(基準ポリマー:ポリスチレン)において、比較的高分子量(例えば、数平均分子量3×10〜20×10)程度の脂肪族ポリエステル系可塑剤であってもよく、可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)の分子量は、数平均分子量0.1×10〜1×10程度であってもよい。可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)の分子量は、比較的低分子量(オリゴマー領域の分子量)(例えば、数平均分子量200〜5000、好ましくは250〜4000程度)である場合が多い。比較的低分子量の可塑剤の分子量は、例えば、数平均分子量200〜3500(例えば、250〜3000)程度であってもよく、通常、300〜3500(例えば、350〜3200)、好ましくは400〜3000(例えば、400〜2500)程度である。なお、低分子量可塑剤(例えば、アジピン酸系可塑剤など)の数平均分子量は、可塑剤の化学式に基づいて算出することができる。
【0044】
前記ヒートシール層は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、硬化剤(ポリイソシアネートなど)及び可塑剤で構成することができ、各成分の割合はヒートシール性及びバリア性を損なわない範囲で選択できる。硬化剤(ポリイソシアネートなど)の使用量は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体100重量部に対して、1〜12重量部、好ましくは2.5〜10重量部(例えば、3〜9重量部)、さらに好ましくは3.5〜8重量部(例えば、4〜7重量部)程度であってもよい。また、可塑剤の使用量は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体100重量部に対して、2〜25重量部(例えば、2.5〜23重量部)、好ましくは3〜20重量部(例えば、4〜18重量部)、さらに好ましくは5〜15重量部(例えば、7〜12重量部)程度であってもよい。
【0045】
ヒートシール層の厚みは、例えば、0.1〜10μm(例えば、0.2〜7μm)、好ましくは0.25〜5μm(例えば、0.3〜3μm)程度の範囲から選択でき、0.2〜1μm(例えば、0.2〜0.7μm)程度であってもガスバリア性を低下させることなく、優れたヒートシール性を示す。
【0046】
なお、前記セロハンフィルム及び/又はヒートシール層は、必要により、種々の添加剤、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など);帯電防止剤;結晶核成長剤;フタル酸エステルなどの可塑剤;充填剤;ワックス類(高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸とその塩、高級脂肪酸エステル、鉱物系、植物系などの天然ワックス、ポリエチレンなどの合成ワックスなど);微粒子状滑剤(シリカ系微粒子、アルミナ系微粒子などの無機滑剤、ポリエチレン系微粒子、アクリル系微粒子などの有機滑剤など);着色剤などを含有していてもよい。これらの添加剤の使用量は、添加剤の種類、添加する層の種類などに応じて適当に選択できる。例えば、ヒートシール層において、安定剤は、層を構成する樹脂成分に対して10〜1000ppm程度の範囲で使用する場合が多く、ワックス類は、層を構成する樹脂成分100重量部に対して0.1〜5重量部(例えば、0.5〜3重量部)程度の割合で使用し、微粒子状滑剤は、層を構成する樹脂成分100重量部に対して0.05〜2重量部(例えば、0.1〜1重量部、好ましくは0.2〜0.5重量部)程度の割合で使用する場合が多い。
【0047】
本発明のフィルムは、前記セロハン面をヒートシール層で被覆することにより、水蒸気バリア性を大きく改善できる。例えば、単層のセロハンフィルムの一方の面に前記ヒートシール層を形成すると、水蒸気バリア性(単位:g/m・MPa・day)は、300以下(例えば、10〜250程度)、好ましくは200以下(例えば、20〜180程度)、さらに好ましくは170以下(例えば、30〜170程度)であり、通常、40〜170(例えば、50〜160)程度である。
【0048】
また、単層のセロハンフィルムの一方の面に前記ヒートシール層を形成し、ヒートシール層同士を90℃の温度で密着させたとき、ヒートシール強度(単位:mN/15mm)は、800以上乃至破断強度(例えば、900〜2500)、好ましくは1000以上乃至破断強度(例えば、1100〜2300)、さらに好ましくは1100以上乃至破断強度(例えば、1200〜2200)程度であり、通常、1300〜2200(例えば、1500〜2000)程度である。
【0049】
本発明のヒートシール性フィルムは、セロハンフィルムの少なくとも一方の面に、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤(ポリイソシアネートなど)と可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)とを含むヒートシール層を形成することにより製造できる。セロハン面を被覆するヒートシール層は、前記成分を含む樹脂組成物層を直接又は接着剤を介してラミネートすることにより形成してもよいが、前記成分を含むコーティング剤を塗布することにより形成する場合が多い。
【0050】
コーティング剤は、前記塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤(ポリイソシアネートなど)と可塑剤(脂肪族ポリエステル成分など)とで構成された樹脂組成物の形態(例えば、溶融コーティング組成物の形態)であってもよいが、通常、溶媒を含む溶液又は分散液のいずれの形態である場合が多い。溶媒としては、例えば、炭化水素類(ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタンなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、セロソルブアセテート類などが例示できる。これらの溶媒は混合溶媒として使用してもよい。なお、必要であれば、活性水素原子を有する溶媒、例えば、アルコール類(エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類、カルビトール類などを併用してもよい。
【0051】
前記コーティング剤は、前記各種添加剤を含有していてもよく、また、塗布性を高めるため、例えば、消泡剤、粘度調整剤などの慣用の添加剤を含有していてもよい。
【0052】
前記コーティング剤は、セロハンフィルムの少なくとも一方の面(セロハン面)に塗布すればよく、両面に塗布してもよい。塗布方法は、特に制限されず、慣用の方法、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ディップコート法、スプレー法などが採用できる。前記コーティング剤を塗布した後、例えば、50〜150℃程度の温度で乾燥し、必要により熟成又は硬化させることにより、ヒートシール層を形成できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のヒートシール性フィルムは、前記のように優れたヒートシール性及び水蒸気ガスバリア性(防湿性)を有する。しかも、透明性も高く、内容物を容易に視認できる。そのため、ヒートシール性フィルムは、食品、医薬品、電子部品(精密電子部品など)などの各種包装用材料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0055】
実施例1
塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体(ダウ・ケミカル社製、UCAR Solution Vinyl Resins VMCH,数平均分子量:27000)を、トルエンとメチルエチルケトンとの混合溶剤(重量比:トルエン/メチルエチルケトン=1/1)に固形分濃度10重量%で溶解し、上記塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体100重量部に対して、3官能のポリイソシアネート(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)5重量部、数平均分子量1300〜1700のポリ(1,3-ブチレンアジペート)(大八化学工業(株)製、BAA−15)10重量部、融点125℃のパラフィンワックス2重量部、シリカ微粒子0.3重量部を添加した後、70℃で1時間攪拌してコーティング液を調製した。#300のセロハンフィルム(厚み20μm、坪量30g/m)の片面に上記コーティング液を乾燥後の塗布量0.9g/mで塗布し、乾燥してヒートシール層を形成し、ヒートシール性フィルムを得た。
【0056】
実施例2〜9及び比較例1〜3
実施例1に記載の塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体樹脂と、ポリイソシアネートおよびポリエステル系可塑剤とを表1に記載の割合(重量部)で用いるとともに、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体100重量部に対して、融点125℃のパラフィンワックス2重量部、シリカ微粒子0.3重量部を用い、実施例1と同様にしてコーティング液を調製した。これらのコーティング液を、#300のセロハンフィルム(厚み20μm、坪量30g/m)の片面に乾燥後の塗布量0.9g/mで塗布し、乾燥してヒートシール層を形成し、ヒートシール性フィルムを得た。
【0057】
なお、表1の記号は以下の成分を示す。
【0058】
(A1):塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体;ダウ・ケミカル社製、「UCAR Solution Vinyl Resins VMCH」、数分子量27000、塩化ビニル86重量%、酢酸ビニル13重量%、マレイン酸1重量%
(A2):塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体;日信化学工業(株)製、「SOLBIN M」、数分子量32000、塩化ビニル86重量%、酢酸ビニル13重量%、マレイン酸1重量%
(B1):ポリイソアネート;日本ポリウレタン工業(株)製、「コロネートL」、固形分75重量%、イソアネート含量12%
(B2):ポリイソシアネート;三井化学ポリウレタン(株)製、「タケネートA−3」、固形分75重量%、イソアネート含量12.2〜13.2%(トリメチロールプロパンアダクト体)
(B3):ポリイソアネート;日本ポリウレタン工業(株)製、「コロネートHL」、固形分75重量%、イソアネート含量12%
(C1):ポリエステル系可塑剤「ポリ(1,3−ブチレンアジペート)」;大八化学工業(株)製、「BAA−15」、数平均分子量1300〜1700
(C2):脂肪族ジカルボン酸エステル系可塑剤「ジイソノニルアジペート」;大八化学工業(株)製、「DINA」
(C3):脂肪族ジカルボン酸エステル系可塑剤「ジブチルセバケート」;大八化学工業(株)製、「DBS」
実施例及び比較例で得られたフィルムのヒートシール強度及び水蒸気透過率を以下のようにして測定した。
【0059】
[ヒートシール強度]
実施例および比較例のフィルムを20℃、相対湿度65%下に2時間放置後、小片に裁断して、2枚の小片のヒートシール層表面を互いに密着させ、1kg/cm、90℃および120℃の条件でヒートシールした後、15mm幅にカットして試験片を作製した。この試験片を20℃、相対湿度65%下に2時間放置後、試験片の2枚のフィルムの各端部を、引張試験機を用いてそれぞれ反対方向へクロスヘッドスピード300mm/分で引張り、最高強度をヒートシール強度とした。また、測定は、試験片3サンプルで行い測定値はその平均値とした。単位は、mN/15mmである。
【0060】
[水蒸気透過率]
水蒸気バリア性を評価するため、水蒸気透過率をJIS Z0208の測定方法(カップ法)で測定した。単位は、g/m・MPa・24hr(day)である。
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では高いヒートシール強度と水蒸気バリア性が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロハンフィルムの少なくとも一方の面に、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤と可塑剤とを含むヒートシール層が形成されているヒートシール性フィルム。
【請求項2】
可塑剤の数平均分子量が200〜3500である請求項1記載のヒートシール性フィルム。
【請求項3】
可塑剤が、クエン酸エステル系可塑剤、C6−10脂肪族ジカルボン酸ジC4−12アルキルエステル系可塑剤及びポリエステル系可塑剤から選択された少なくとも一種である請求項1又は2記載のヒートシール性フィルム。
【請求項4】
可塑剤が、アジピン酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、およびC2−6アルカンジオールとアジピン酸との重合体から選択された少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項5】
硬化剤がポリイソシアネートである請求項1〜4のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項6】
塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体が、塩化ビニルと、酢酸ビニルと、カルボキシル基又は酸無水物基を有する単量体との共重合体であって、塩化ビニル含量が80重量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項7】
塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体が、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体である請求項1〜6のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項8】
ヒートシール層が、遊離の酢酸ビニル含量0.1重量%以下の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体を含むコーティング剤で形成されている請求項1〜7のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項9】
ヒートシール層が、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体100重量部に対して、硬化剤1〜12重量部、可塑剤2〜25重量部の割合で含むコーティング剤で形成されている請求項1〜8のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項10】
水蒸気バリア性が、300g/m・MPa・day以下であり、ヒートシール層同士を90℃の温度で密着させたとき、ヒートシール強度が800mN/15mm以上である請求項1〜9のいずれかに記載のヒートシール性フィルム。
【請求項11】
セロハンフィルムの少なくとも一方の面に、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体と硬化剤と可塑剤とを含むヒートシール層を形成するヒートシール性フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−154527(P2009−154527A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228098(P2008−228098)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(505339058)ダイセルバリューコーティング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】