説明

ヒートシール性積層体及び包装体

【課題】 重量物を包装するのに十分なヒートシール強度を有し、腰感が良好で、開封時の引裂き性が良好で容易に開封できる、包装用途に好適なヒートシール性積層体及びかかる積層体を用いてなる包装体を提供すること。
【解決手段】 基材フイルムとヒートシール性フイルムからなる少なくとも2層以上の積層体であって、ヒートシール強度が8N/15mm以上であり、積層体の流れ方向(MD)と、該流れ方向に直行する方向(TD)の引張弾性率の積が4.0〜6.0(GPa)2であり、尚且つ積層体の流れ方向(MD)に直行する方向(TD)の引裂伝播抵抗が120mN以下であることを特徴とするヒートシール性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール性積層体及び包装体に関し、さらに詳しくは、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度を有し、透明性が良好で包装用途に好適に用いることができ、袋開封時に抵抗なく開封することができるヒートシール性積層体及びかかる積層体を用いてなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装用に使用するヒートシール性積層体としては、一般的に、無延伸ポリエチレン系樹脂フイルム又は無延伸ポリプロピレン系樹脂フイルムに、延伸ポリプロピレン系樹脂フイルム又は延伸ポリエチレンテレフタレートフイルム又は延伸ポリアミドフイルムをラミネートした積層体が多用されている。しかしながら、この様にラミネートしたフイルムでは、フイルムの流れ方向と直交する方向に袋をカットする場合、フイルムが伸びてしまい、開封しにくいという問題があった。
これに対して、特開平9−48101には、基材フイルムに特殊なポリアミドフイルムを使用すると伴に接着剤の特性を規定して基材フイルムとヒートシール性フイルムの接着力を向上させることでカット性を改善する方策が提案されているが、この様な方法では、基材フイルムと接着剤が限定される為、用途が限定され、汎用性に劣るものであった。一方、特開平9−174776には、基材フイルムとして二軸延伸ナイロンフイルムを用い、シーラントフイルムとして直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体層を有するフイルムを、積層することでカット性を改善するとあるが、直鎖状エチレン−α−オレフィン共重合体は耐衝撃性に優れる反面、フイルムの腰感がなくなる為、ヒートシール性積層体を用いて包装した商品を取り扱う際、取り扱い性に劣るものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記従来のヒートシール性積層体の有する問題点を解決し、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度を有し、腰感が良好で、開封時の引裂き性が良好で容易に開封できる、包装用途に好適なヒートシール性積層体及びかかる積層体を用いてなる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明の包装用フィルムは、基材フイルムとヒートシール性フイルムからなる少なくとも2層以上の積層体であって、ヒートシール強度が8N/15mm以上であり、積層体の流れ方向(MD)と、該流れ方向に直行する方向(TD)の引張弾性率の積が4.0〜6.0(GPa)2であり、尚且つ積層体の流れ方向(MD)に直行する方向(TD)の引裂伝播抵抗が120mN以下であることを特徴とする。
【0005】
上記の構成からなる本発明のヒートシール性積層体は、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度を有し、製袋加工性が良好で、商品包装後の取り扱い性、開封性を向上させることができる。
【0006】
この場合において、前記基材フイルム及びヒートシール性フイルムが延伸されてなることが好適である。
【0007】
また、この場合において、前記ヒートシール性フイルムが3層以上の構成よりなり、結晶性ポリプロピレン系樹脂からなる基材層と融点が150℃以下の熱融着層と基材層と熱融着層の間に中間層を少なくとも有するフイルムであることが好適である。
【0008】
さらにまた、この場合において、前記ヒートシール性フイルムの中間層が、冷キシレン可溶分3重量%以下のα−オレフィン共重合体を含むものであることが好適である。
さらにまた、この場合において、前記のヒートシール性積層体を用いてなる包装体が重量物の包装にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のヒートシール性積層体によれば、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度を有し、腰感が良好で開封時の抵抗が無く、カット口より容易に開封することのできる包装用途に好適なフイルムとして用いることができる。
【0010】
本発明の包装体によれば、重量物の包装が可能な十分なヒートシール強度を有し、腰感がよく取り扱いが良好で、容易に開封することができる包装体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明のヒートシール性積層体及び包装体の実施の形態を説明する。
【0012】
本発明において、ヒートシール性積層体に用いる基材フイルムは、特に限定されるものではないが、一軸延伸フイルムあるいは二軸延伸フイルム等が好適に用いられ、一軸延伸フイルムの場合は、主としてポリオレフィンが、また二軸延伸フイルムの場合は、二軸延伸ポリエステルフイルム、二軸延伸ポリプロピレンフイルム、二軸延伸ナイロンフイルム等が用いられる。基材フイルムは、強度、寸法安定性、及び印刷、ラミネート加工適正を具備しておればよいが、フイルム強度とラミネート加工適正を考慮すると、二軸延伸フイルムが望ましい。
【0013】
本発明のヒートシール性積層体に用いるヒートシール性フイルムは、基材層、熱融着層、及び基材層と熱融着層の間に中間層を設けた3層以上のフイルムを用いることが好ましい。
基材層は結晶性ポリプロピレン系樹脂よりなることが好ましい。本発明の積層フイルムの基材層に用いる結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、通常の押出成形などで使用するn−へプタン不溶性のアイソタクチックのプロピレン単独重合体又はプロピレンを70重量%以上含有するポリプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体であればよい。
n−ヘプタン不溶性とは、ポリプロピレンの結晶性を指標すると同時に食品包装用として使用する際の安全性を示すものであり、本発明では、昭和57年2月厚生省告示第20号によるn−ヘプタン不溶性(25℃、60分抽出した際の溶出分が150pPm以下〔使用温度が100℃を超えるものは30pPm以下〕)に適合するものを使用することが好ましい態様である。
共重合成分としてのα−オレフィンは、炭素数が2〜8のα−オレフィン、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテンなどが好ましい。ここで共重合体とは、ランダム又はブロック共重合体が含まれる。また、メルトフローレート(MFR)は0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜20g/10min、さらに好ましくは、1.0〜10g/10minの範囲のものを例示することができる。さらに、ここで用いる結晶性ポリプロピレン樹脂は、2種以上の混合物であってもよい。
【0014】
また、本発明のヒートシール性積層体に用いるヒートシール性フイルムの熱融着層に用いる樹脂は融点が150℃以下の熱可塑性樹脂であって、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の炭素数が2〜10のα−オレフィン系モノマーから選ばれた2種以上を重合して得たランダム共重合体又はブロック共重合体が好ましく、また、この共重合体は単独又は混合して使用することができる。
【0015】
特に熱融着層を構成する樹脂が、ブチン含有量の多いプロピレン−ブテン共重合体を含
むものであるのが好ましい。ここで、上記プロピレン−ブテン共重合体におけるブテン含
有量は20質量%以上であるのが好ましい。なお、ブテン含有量の上限は特に限定されな
いが、ブテン含有量が多すぎるとフィルム表面がべたつき、滑り性や耐ブロッキング性が
低下する場合があるため、かかる不良を生じない範囲で適宜決定すればよい。上記ブテン
含有量の多いプロピレン−ブテン共重合体としては、例えば、住友化学工業(株)製「S
PX78J1」などを例示することができる。
【0016】
上記プロピレンーブテン共重合体は、熱融着層を構成する樹脂成分中、65質量%以上
配合することが好ましい。より好ましくは、70質量%以上であり、99質量%以下であ
るのが好ましく、より好ましくは95質量%以下である。上記プロピレンーブテン共重合
体の配合量が少なすぎる場合にはシール時の融着力が低くなり、十分なヒートシールエネ
ルギーが得られ難い場合があり、一方、多すぎる場合には、中間層との層間強度が低下す
る場合がある。
【0017】
さらにまた、熱融着層を形成する熱可塑性樹脂の融点は150℃以下、好ましくは60〜150℃にすることが望ましい。このようにすることにより、ヒートシール性積層体に十分なヒートシール強度を与えることができる。熱融着層を形成する熱可塑性樹脂の融点が60℃未満ではヒートシール部の耐熱性が乏しく、150℃を越えるとヒートシール強度の向上が期待できない。
また、MFRは0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜20g/10min、さらに好ましくは、1.0〜10g/10minの範囲のものを例示することができる。
【0018】
この他、本発明のヒートシール性積層体に用いるヒートシール性フイルムには、基材層と熱融着層の間に基材層を構成する樹脂とプロピレン−α−オレフィン共重合体からなる樹脂を含む中間層を設けることが好ましい。ここで基層を構成する樹脂とプロピレン−α−オレフィン共重合体よりなる樹脂の配合量は、特に限定されるものではなく、同種のポリプロピレン系樹脂及び他の熱可塑性樹脂を含有しても良い。基層を構成する樹脂の好ましい配合量は、10重量%から90重量%であり、10%未満だと腰がなくなる傾向にあり、商品の取り扱い上、好ましくない。また、90%を越える場合は、基材層と熱融着層との接着が不十分となり、シール強度が低下する場合があり好ましくない。同様に、プロピレン−α−オレフィン共重合体よりなる樹脂の配合量としては、10重量%から90重量%であり、10%未満だと基材層と熱融着層との接着が不十分となり、シール強度が低下する場合があり好ましくない。また、90%を越える場合は、腰がなくなる傾向にあり、商品の取り扱い上、好ましくない。
また、ここで用いるプロピレン−α−オレフィン共重合体は特に限定されるものではないが、冷キシレン可溶分(CXS)が3重量%以下のプロピレン−α−オレフィン共重合体であることが好ましい。冷キシレン可溶分(CXS)が3重量%を越えるプロピレン−α−オレフィン共重合体を用いる場合は、腰がなくなる傾向にあり好ましくない。
【0019】
α−オレフィン共重合体は、衝撃強度や引き裂き特性などの機械的強度や低温特性、耐侯性などに優れるものであり、かかる成分を配合することで、積層フィルムに優れた特性を付与することができる。しかしながら、α−オレフィン共重合体は、主成分のα−オレフィン分子鎖中に、第2成分や第3成分として異種のα一オレフィンがランダムに導入された構造を有しているため、結晶化が抑制されて、ホモポリプロピレンなどのα−オレfフィンのホモポリマーに比べて結晶性が低く、α−オレフィン共重合体の配合は、結果としてフィルムの腰感を低下させることとなる。
【0020】
上記「冷キシレン可溶分」とは、α−オレフィン共重合体に含まれる非晶部の量を示し
ており、「冷キシレン可溶分が3質量%以下」であると言うことは、非晶部が少なく結晶
性の高いα−オレフィン共重合体を意味している。
ここで、冷キシレン可溶分とは、試料1gを沸騰キシレン100mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、4時間放置、その後、これを析出物と溶液とにろ別し、ろ液を乾固して減圧下70℃で乾燥した際の重量を測定して重量%を求めたもののことをいう。
【0021】
上記冷キシレン可溶分3質量%以下のα−オレフィンとしては、特開2003−277
412号に記載の連続気相重合法により合成された重合体が例示でき、たとえば、「FS
X66E8」(住友化学工業〔株〕製)を使用することができる。
【0022】
本発明におけるヒートシール性積層体は、商品包装時の取り扱い性を確保する観点から、JIS−K−7127の規定に準じて測定されるフイルムの流れ方向(MD)およびこれと直交する方向(TD)の引張弾性率の積が4.0(GPa)2以上、6.0(GPa)2以下であることが要求される。好ましくは4.2(GPa)2以上、より好ましくは4.5(GPa)2以上であり、好ましくは5.9(GPa)2以下、より好ましくは5.8(GPa)2以下である。
【0023】
一般的に、包装材料として使用するヒートシール性積層体の引張弾性率は、包装材料取り扱い時の腰感と相関があることが知られている。なお、本発明では、引張弾性率ではなく、MD及びTDにおける引張弾性率の積をフイルム積層体の腰感の判断基準として採用しているが、これは、たとえば、フイルム積層体を袋状の包装体として使用する場合には、フイルム積層体の流れ方向(MD)とこれに直交する方向(TD)の両方の腰感が必要とされることによるものである。
【0024】
従って、引張弾性率の積が上記範囲に満たない場合にはフイルム積層体の腰感が低下し、包装体の取り扱い性が悪くなる傾向がある。一方、上記範囲を越える場合には、フイルム積層体が硬くなる傾向があり、包装体を開封する際にフイルム積層体にはいる亀裂が伝播し易くなり、意図しない方向に裂け、開封時に内容物がこぼれてしまうおそれがある。
【0025】
なお、引張弾性率の積が上記範囲内に含まれるのであれば、MD,TDそれぞれの引張弾性率の値は特に限定されないが、MDにおける引張弾性率は1.40GPa以上であるのが好ましく、より好ましくは1.45GPaであり、TDにおける引張り弾性率は2.25GPa以上であるのが好ましく、より好ましくは2.35GPa以上である。
【0026】
また、本発明のヒートシール性積層体は、フイルム積層体のヒートシール強度が8N/15mm以上となることが必要である。上記ヒートシール強度が8N/15m血以上となるようにフィルムのMDおよびTDをシールしたとき」との規定は、ヒートシール強度が8N/15mm以上であれば、重量物の包装にも十分な強度を有するものと判断できることによる。これは、ヒートシール温度の特定では、積層フィルムを構成する各層を構成する樹脂の種類や層の厚みによっては、上述のヒートシール強度が得られ難くなる場合があるからである。
従って、ヒートシール強度が上記値に満たない場合は、フイルム積層体を袋状の包装体として用いる場合、輸送時の振動や衝撃、あるいは流通途上の落下などによりシール部が破袋してしまうことがある。この現象は、特に重量物を包装した場合に顕著である。そこで、本発明では、包装体が重量物の包装にも耐え得るヒートシール強度の値として8N/15mm以上との規定を設けた。
【0027】
本発明におけるヒートシール強度の規定は、下記の測定方法により測定される値を意味するものである。
ヒートシール強度:フイルムの流れ方向が袋の長さ方向となるようにして切り出した試料を、袋のシール部の断面が図1に示すようなT字形となるようにヒートシール(シール幅:10mm)して(中央合掌シール形)、サイズ185mm×255mmのセンタープレスシール袋を作成する。ヒートシールは、シール温度150℃、圧力2kg/cm2、ヒート
シール時間2秒の条件で行う。
【0028】
得られた袋の長さ方向(MD)および幅方向(TD)のそれぞれに平行なシール部より、幅15mm、長さ50mmの試験片を切り出す。ついで、この試験片を、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中に24時間放置した後、東洋精機社製「テンシロン」(UTM−IIIL)を用いて、チャック間距離20mmとし(ヒートシール部から10mmの位
置を把持する)、200mm/分の速度(チャート速度200mm/分)で180度剥離した際の強度を測定し、ヒートシール強度[N/15mm]とした。図1に作成した袋の形状と、ヒートシール強度測定用試験片の模式図を示す。
【0029】
さらに、本発明のヒートシール性積層体は、易開封性を目的としたものであり、特に、三方シール機等で形成された袋をフイルムの流れ方向と直交する方向にカットする場合において、十分なカット性を得るには、JIS−P−8116の規定に準じて測定されるヒートシール性積層体の流れ方向と直交する方向(TD)の引裂伝播抵抗値が120mN以下である必要がある。好ましくは、115mN以下、さらに好ましくは、110mN以下であり、好ましくは、85mN以上、さらに好ましくは、86mN以上である。TD方向の引裂伝播抵抗値が120mNを越える場合は、カット性が不十分となり、85mN未満の場合は、包装体として取り扱い時、輸送の振動、衝撃等により破袋の心配がある。一方、ヒートシール性積層体の流れ方向(MD)の引裂伝播抵抗値は、特に規定されるものではないが、TD方向と同様に輸送の振動、衝撃等により破袋の心配を少なくする為にも85mN以上であることが好ましい。
【0030】
本発明において、ヒートシール性積層体を形成するフイルムまたはその各層には、必要に応じてフイルムおよび各層の特性を阻害しない範囲で、各種添加材、充填材、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、顔料、染料、抗菌剤、紫外線吸収剤、紫外線カット剤、赤外線吸収剤、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、酸化亜鉛等を添加することができる。さらにまた、その他の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム類、炭化水素樹脂、石油樹脂等を本発明のヒートシール性積層体の特性を害さない範囲で配合してもよい。
【0031】
本発明のヒートシール性積層体に使用する基材フイルムの厚み構成は、特に限定されるものではないが、20μmから60μmの二軸延伸ポリプロピレンフイルム、12μmから25μmの2軸延伸ポリエステルフイルム、15μmから25μmの二軸延伸ナイロンフイルムを例示する事ができる。
また、本発明のヒートシール性積層体に用いるヒートシール性フイルムの厚み構成は、特に限定されるものではないが、全層厚みとして、15μmから50μm、その中において、基材層は全層厚みの10〜50%、熱融着層は1〜20%、中間層は30〜89%の範囲で設定することが好ましい。さらに好ましい範囲としては、基材層は全層厚みの15〜45%、熱融着層は1.5〜15%、中間層は40〜83.5%である。基材層の厚み比率が小さいと腰がなくなり、大きいとシール強度が出ないことがあり好ましくない。一方、熱融着層、中間層の厚み比率が小さいと十分なシール強度が出ないことがあり、大きいとカット性が不足したり、腰がなくなったりする事があるので好ましくない。
【0032】
延伸温度、倍率などをもう少し詳しく書いてください。実施例の各条件の意味がわかるようにしてください。
本発明のヒートシール性積層体に使用する基材フイルム及びヒートシール性フイルムはそれ自体公知の方法で任意に製造することができ、特に制限するものではない。例えば、積層数に見合う押出し機を用いてTダイ法又はインフレーション法等で溶融積層した後、冷却ロール法、水冷法又は空冷法で冷却して積層フイルムとし、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法、チューブ延伸法等で延伸する方法を例示することができる。
樹脂をここで、逐次2軸延伸法にて製造する際の条件を例示すると、T型のダイスより溶融押出しした樹脂をキャスティング機にて冷却固化させて、原反シートを作成する。この際、溶融キャスティングするロール温度は、樹脂の結晶化を抑え、透明性を向上させる目的で15℃から40℃の間に設定する事が好ましい。次に、延伸に適した温度まで原反シートを加熱後、延伸ロール間の速度差を利用してシートの流れ方向に延伸する、この際の延伸倍率は、延伸のムラがなく安定して製造する事を考えると3倍から6倍の間に設定することが好ましい。次に、縦延伸したシートの両耳部をテンタークリップで把持し、熱風で延伸に適した温度まで加熱しながらシートの流れと直角方向に、順次拡げながら延伸する。この際の横延伸倍率は、厚み変動と生産性を考慮して7倍から10倍の間に設定することが好ましい。
また、本発明のヒートシール性積層体における基材フイルムとヒートシール性フイルムの貼り合わせ方法は、特に限定されるものではなく、ウレタン系接着剤で代表される接着剤を用いて、ドライラミネートする方法や、基材フイルム上にヒートシール性フイルムをエクストルージョンラミネートする方法を例示することができる。
【0033】
本発明のヒートシール性積層体に使用する基材フイルム及びヒートシール性フイルムは、その特性を害さない範囲で、ポリプロピレン系樹脂層及びエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリビニルアルコール等のガスバリア性樹脂層を積層してもよく、アルミ蒸着、酸化ケイ素等の透明蒸着を実施したものであってもよい。また、基材フイルムとヒートシール性フイルムを貼りあわせる際に、アルミ箔等の他の素材を挟み込んでもよい。
【0034】
本発明のヒートシール性積層体に使用する基材フイルム及びヒートシール性フイルムは、濡れ張力を向上させるために表面処理を行うことが好ましい。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が例示でき、特に制限はない。連続処理が可能であり、このフイルムの製造過程の巻き取り工程前に容易に実施できるコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理を行うのが好ましい。また、用途に応じて、フイルムに穴あけ加工などの特殊加工を施してもよい。例えば、1〜500μmの穴あけ加工を施したフィルムは、青果物の鮮度保持包装として使用すること
ができる。
【0035】
本発明のヒートシール性積層体は、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度と開封時の易裂き性を有し、透明性が良好で小麦粉、米、麦などの穀物類や板・糸こんにゃく類、たくあん漬、醤油漬、奈良漬などの各種漬物類、各種味噌類、だしのもと、めんつゆ、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズなどの包装材料として好適であり、また、これらは、ペーパーカートン、チューブ用、袋用、カップ用、スタンディングパック用、トレイ用などの包装体として用いることができる。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の具体例を実施例によってさらに説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中における特性は下記の方法により評価をおこなった。
【0037】
(ヒートシール強度)
下記実験で得られたヒートシール性積層体から、該積層体フイルムの流れ方向が袋の長さ方向となるようにして切り出した試料を、袋のシール部の断面が図1に示すようなT字形となるようにヒートシール(シール幅:10mm)して(中央合掌シール形)、サイズ185mm×255mmのセンタープレスシール袋を作成した。尚、ヒートシールは、西部機械社製シーラー「テストシーラー」を用い、シール温度150℃、圧力196kPa(2kg/cm2)、ヒートシール時間2秒の条件で行った。
得られた袋の長さ方向(MD)および幅方向(TD)のそれぞれに平行なシール部より、幅15mm、長さ50mmの試験片を切り出す。ついで、この試験片を、温度20℃、湿度65%RHの雰囲気中に24時間放置した後、東洋精機社製「テンシロン」(UTM−IIIL)を用いて、チャック間距離20mmとし(ヒートシール部から10mmの位置
を把持する)、200mm/分の速度(チャート速度200mm/分)で180度剥離した際の強度を測定し、ヒートシール強度[N/15mm]とした。図1に作成した袋の形状と、ヒートシール強度測定用試験片の模式図を示す。
【0038】
(引張弾性率)
JIS−K−7127法に準じて、フイルムの流れ方向(MD)およびフイルム流れ直交方向(TD)の引張弾性率(GPa)を測定した。測定はそれぞれの方向について3回行い、これらの平均値を各方向の引張弾性率とした。
【0039】
(引裂伝播抵抗)
JIS−P−8116法に準じて、フイルムの流れ方向(MD)およびフイルム流れ直交方向(TD)の引裂伝播抵抗(mN)を測定した。測定はそれぞれの方向について3回行い、これらの平均値を各方向の引裂伝播抵抗とした。
【0040】
(商品取り扱い性)
上記ヒートシール強度測定法と同様にして作成した袋の中に、重量約4g、大きさ25mm×75mmの米菓を、厚み25μm、大きさ80mm×140mmのポリエチレンフイルムでひねり包装したものを入れて、商品の取り扱い性を評価した。
評価5級:フイルムに腰があり、箱詰め、箱だし、陳列作業が容易にできる
評価4級:袋を持ったとき、多少たよりなく感じるが、作業は問題なく行える
評価3級:腰がない感じがして、手に持った際たよりなく感じ多少、作業がしずらくなる
評価2級:腰がなく、手に持った際たよりなく感じ、作業しずらい
評価1級:腰がまったくなく、作業が困難
【0041】
(易裂き性)
下記実験で得られたヒートシール性積層体フイルムについて、170mm(MD)×130mm(TD)に裁断したもの2枚を用意し、ヒートシール面同士を内面として合わせ、西部機械社製シーラー「テストシーラー」を用い、シール温度150℃、圧力196kPa(2kg/cm2)、ヒートシール時間2秒の条件にて、4方を10mm幅でヒートシールした袋を得た。得られた袋の長辺側ヒートシール部中央付近に深さ1mmのノッチを形成したものを各10袋用意し、ノッチ部からTDに平行に手で引き裂いたときに10回とも抵抗なくスムーズに裂けたものを○、僅かながら抵抗を感じものを△、抵抗を強く感じ避け難いと感じたものを×と評価した。ここで、ノッチとはカットの切り口のことをいう。
【0042】
下記製造例で使用した各層を構成する樹脂は次の通りである。
プロピレン単独重合体:住友化学工業(株)製「FS2011DG3」,MFR:2.5
g/10分,融点:158℃,冷キシレン可溶分(CXS):3.3質量%
プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体一1:住友化学工業(株)製「FSX6
6E8」,エチレン含有量:2.5モル%,ブテン含有量:7モル%,MFR:3.1g
/10分,融点:133℃,冷キシレン可溶分(CXS):1.6質量%
プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体一21住友化学工業(株)製「W171
」,エチレン含有量:4.6モル%,ブテン含有量:4.2モル%,MFR:4.6g/
10分,融点:128℃,冷キシレン可溶分(CXS):4.6質量%
プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体一3:住友化学工業(株)製「WF58
4S」,エチレン:含有量2.6モル%,ブテン含有量15.4モル%,MFR:4.O
g/10分,融点:135℃,冷キシレン可溶分(CXS):3.6質量%(溶液重合法
により製造されたものである。)
プロピレン・ブテン共重合体一1:住友化学工業(株)製rSPX78J1」,ブテン含
有量:25モル%,MFR:8.5g/10分,融点:128℃,冷キシレン可溶分(C
XS):14.O質量%
プロピレン・ブテン共重合体一2:住友化学工業(株)製「SP8932」,ブテン含有
量:33モル%,MFR:9.0g/10分,融点:130℃
【0043】
(実施例1)
(ヒートシール性フイルムの製造方法)
3台の溶融押出機を用い、第1の押出機にてプロピレン単独重合体(密度0.90g/cm3、MFR2.5g/10分、融点157℃、冷キシレン可溶分3.3重量%)を基材層Aとして、第2の押出機にて、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体(密度0.89g/cm3、MFR3.1g/10分、融点133℃、冷キシレン可溶分1.6重量%)を10重量%、プロピレン・ブテンランダム共重合体密度0.89g/cm3、MFR9.0g/10分、融点130℃、冷キシレン可溶分14.0重量%)を90重量%とした混合樹脂を熱融着層Cとして、第3の押出機にて、プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体(密度0.89g/cm3、MFR3.1g/10分、融点133℃、冷キシレン可溶分1.6重量%)を50重量%、プロピレン単独重合体(密度0.90g/cm3、MFR2.5g/10分、融点157℃、冷キシレン可溶分3.3重量%)を50重量%とした混合樹脂を基材層と熱融着層の中間に位置する層Bとして、ダイス内にてA/B/Cとるように、Tダイ方式にて溶融共押出し後、20℃のチルロールにて冷却固化し、縦方向に4.5倍、横方向に8倍延伸し、A/B/C構成の厚みがそれぞれ順に6μm、12μm、2μmである積層フイルムを得た。得られたヒートシール性フイルムの基材層Aの表面にコロナ放電処理を行い、コロナ放電処理後の基材層A表面の濡れ張力が37mN/mとなるようにした。
【0044】
(ヒートシール性積層体の製造方法)
基材フイルムとして厚み20μmの2軸延伸ポリプロピレンフイルム(商品名パイレンP2161(東洋紡績(株)製))を準備し、上記方法によって得られたヒートシール性フイルムを、ポリエステル系接着剤(商品名TM590/CAT56(東洋モートン(株)製、塗布量:3.0g(dry)/m2)を介してドライラミネーション法で貼り合わせた後、40℃で72時間エージング処理を施してヒートシール性積層体を得た。表1に評価結果を示す。得られたヒートシール性積層体は、十分なヒートシール強度と腰感、易裂き性を有し、取り扱い性、商品開封時の開封性のすべてに優れるものであった。
【0045】
(比較例1)
実施例1に於いてヒートシール性フイルムとして、未延伸ポリプロピレンフイルム(商品名パイレンP1128 20μm(東洋紡績(株)製))を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フイルムを得た。得られた積層フイルムは、腰がなく取り扱い性に劣る上に、引裂き性も満足するものではなかった。
【0046】
(比較例2)
実施例1に於いてヒートシール性フイルムとして、2軸延伸ポリプロピレンフイルム(商品名パイレンP3162 20μm(東洋紡績(株)製))を用いた以外は、実施例1と同様にして積層フイルムを得た。得られた積層フイルムは、ヒートシール強度が低く、製袋実包品の輸送、取り扱い時にシール部から破袋し、実用上問題のあるものであった。
【0047】
(実施例2)
実施例1に於いてポリエステル系接着剤の替わりに、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤(商品名TM329/CAT8B(東洋モートン(株)製、塗布量:2.0g(dry)/m2)を介してドライラミネーション法で貼り合わせた以外は、実施例1と同様にして積層フイルムを得た。得られたヒートシール性積層体は、十分なヒートシール強度と腰感、易裂き性を有し、取り扱い性、商品開封時の開封性のすべてに優れるものであった。
【0048】
(比較例3)
実施例2に於いて、ヒートシール性フイルムとして、未延伸ポリプロピレンフイルム(商品名パイレンP1128 20μm(東洋紡績(株)製))を用いた以外は、実施例2と同様にして積層フイルムを得た。得られた積層フイルムは、引裂き性評価時に基材フイルムとヒートシール性フイルム間の接着剤による接着界面で剥離が起こり、引裂き性が著しく悪く、開封性に問題のあるものであった。
【0049】
上記結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のヒートシール性積層体は、重量物を包装するのに十分なヒートシール強度を有するのは勿論のこと、取扱い性にも優れ、また透明性も良好であるため、小麦粉、米、麦などの穀物類;ジャガイモ、ダイコン・ニンジンなどの根菜類;板糸こんにやく類;た
くあん漬、醤油漬、奈良漬などの各種漬物類;各種味噌類;だしのもと・めんつゆ、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズなどの外装材、ラーメン等の個包装を数個まとめて包装する集合包装用包装材に好適である。特に、防曇性を必要とする、業務用のカット野菜などの包装に最適な包装材料として用いることができる。
【0052】
また、本発明の積層フィルムは、ぺ一パーカートン、チューブ用、袋用、カップ用、ス
タンディングパック用、トレイ用などの包装体としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例で作成した袋の形状とヒートシール強度測定用の試験片の模式図である。
【図2】ヒートシール強度測定時のチャートの例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フイルムとヒートシール性フイルムからなる少なくとも2層以上の積層体であって、ヒートシール強度が8N/15mm以上であり、積層体の流れ方向(MD)と、該流れ方向に直行する方向(TD)の引張弾性率の積が4.0〜6.0(GPa)2であり、尚且つ積層体の流れ方向(MD)に直行する方向(TD)の引裂伝播抵抗が120mN以下であることを特徴とするヒートシール性積層体。
【請求項2】
上記基材フイルム及びヒートシール性フイルムが延伸されてなることを特徴とする請求項1記載のヒートシール性積層体。
【請求項3】
上記ヒートシール性フイルムが3層以上の構成よりなり、結晶性ポリプロピレン系樹脂からなる基材層と融点が150℃以下の熱融着層と基材層と熱融着層の間に中間層を少なくとも有するフイルムであることを特徴とする請求項1,2記載のヒートシール性積層体。
【請求項4】
上記ヒートシール性フイルムの中間層が、冷キシレン可溶分3重量%以下のα−オレフィン共重合体を含むものであることを特徴とする請求項1,2,3記載のヒートシール性積層体。
【請求項5】
請求項1,2,3記載のヒートシール性積層体を用いてなることを特徴とする包装体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−150737(P2006−150737A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343994(P2004−343994)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】