説明

ヒートポンプシステム

【課題】二次冷媒による熱負荷の処理においてサイクル効率を向上させることが可能なヒートポンプシステムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素冷媒が循環しているヒートポンプ回路10は、低段側圧縮機21、高段側圧縮機25、膨張弁5、および、蒸発器4を有している。二次冷媒としての水が循環する暖房回路60は、ラジエータ61を有している。暖房用熱媒体としての水が循環する暖房回路は、互いに並列な中間圧側分岐路67と高圧側分岐路68とを有している。制御部11は、中間圧側分岐路67のうち中間圧水熱交換器40で加熱される二次冷媒の温度と、高圧側分岐路68のうち第2高圧水熱交換器52で加熱される二次冷媒の温度と、が同じになるように暖房混合弁64を操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一次冷媒が循環するヒートポンプサイクルと、二次冷媒が循環する二次側サイクルと、を用いて暖房運転を行うシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2004―177067号公報)に記載されているヒートポンプ式空気調和器では、高圧側の一次冷媒と低圧側の一次冷媒とを熱交換させ、暖められた低圧側の一次冷媒の熱を用いて暖房用の二次冷媒の加熱を補助することにより、効率の向上を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1(特開2004―177067号公報)に記載のヒートポンプ式空気調和器は、圧縮機構が1つだけの単段圧縮形式を想定しているため、圧縮機構において必要となる駆動力が多くなってしまっている。
【0005】
本発明の課題は、二次冷媒による熱負荷の処理においてサイクル効率を向上させることが可能なヒートポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明のヒートポンプシステムは、ヒートポンプ回路、第1熱負荷回路、第1熱交換器、第2熱交換器、第1流量調節機構、および、制御部を備えている。ヒートポンプ回路は、少なくとも低段側圧縮機構、高段側圧縮機構、膨張機構、および、蒸発器を有している。このヒートポンプ回路は、一次冷媒が循環している。第1熱負荷回路は、第1分岐部分、第2分岐部分、第1分岐路、第2分岐路、および、第1熱負荷処理部を有している。第1分岐路は、第1分岐部分と第2分岐部分とを接続している。第2分岐路は、第1分岐路と合流することなく第1分岐部分と第2分岐部分とを接続している。この第1熱負荷回路は、第1流体が循環している。第1熱交換器は、低段側圧縮機構の吐出側から高段側圧縮機構の吸入側に向けて流れる一次冷媒と、第1分岐路を流れる第1流体と、の間で熱交換を行わせる。第2熱交換器は、高段側圧縮機構から膨張機構に向けて流れる一次冷媒と、第2分岐路を流れる第1流体と、の間で熱交換を行わせる。第1流量調節機構は、第1分岐路における第1流体の流量と、第2分岐路における第1流体の流量と、の少なくともいずれか一方の流量を調節可能である。制御部は、第1流量調節機構を操作する流量調節制御を行う。この流量調節制御では、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と、第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と、の比が1となる場合を含む所定温度条件を満たす状態を維持させるように、若しくは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と、第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と、の差を小さくさせるように、第1流量調節機構が操作される。第1熱負荷回路において熱負荷処理された後の状態のままの第1流体が、第1熱交換器での熱交換に利用され、かつ、第2熱交換器での熱交換に利用される。なお、高段側圧縮機構と低段側圧縮機構以外にさらに圧縮機構を備えていてもよく、多段式圧縮システムとする場合についても当然本発明の範囲内に含まれる。
【0007】
このヒートポンプシステムでは、第1熱負荷処理部に供給される二次冷媒の熱量が同じ場合において、第1熱交換器で加熱された第1流体の温度と周囲温度との差および第2熱交換器で加熱された第1流体の温度と周囲温度との差のいずれの差についても、大きくならないようにすることができる。このため、第1熱交換器で加熱された第1流体の第1熱負荷処理部に到達するまでの間に放出する放熱ロスと、第2熱交換器で加熱された第1流体の第1熱負荷処理部に到達するまでの間に放出する放熱ロスと、の合計を小さく抑えることが可能になる。これにより、第1負荷熱交換器における熱負荷のヒートポンプシステムによる処理効率を向上させることが可能になる。
【0008】
第2発明のヒートポンプシステムは、第1発明のヒートポンプシステムにおいて、制御部は、第1熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度が、第1熱交換器に流れ込む第1流体の温度以上の温度になるようにしつつ、第2熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度が、第2熱交換器に流れ込む第1流体の温度以上の温度になるようにしつつ、第1熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度および第2熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度の両方が、第1熱負荷処理部において要求される第1熱負荷対応温度以上の温度となるように、低段側圧縮機構および高段側圧縮機構の出力を制御する。
【0009】
このヒートポンプシステムでは、第1熱交換器に流れ込む第1流体の温度を下げることなく、第1熱交換器に流れ込む一次冷媒によって第1流体の温度を確実に上げることができる。そして、高段側圧縮機構の吐出冷媒温度が異常に上昇することを防ぐことができる。同様に、第2熱交換器に流れ込む第1流体の温度を下げることなく、第2熱交換器に流れ込む一次冷媒によって第1流体の温度を確実に上げることができる。そして、第1流体が第1熱交換器および第2熱交換器において得る熱量のみによって、第1負荷熱交換器における熱負荷に対応することが可能になる。
【0010】
第3発明のヒートポンプシステムは、第2発明のヒートポンプシステムにおいて、第1熱負荷回路は、第1熱負荷処理部と第1分岐部分の間の部分と第1熱負荷処理部と第2分岐部分の間の部分とを接続する第1熱負荷バイパス回路、および、第1熱負荷バイパス回路を通過する第1流体の流量を調節可能な第1熱負荷バイパス流量調節機構をさらに有している。制御部は、流量調節制御において、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度の目標値および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度の目標値が、第1熱負荷対応温度を超える温度になるように制御を行う。制御部は、第1熱負荷処理部に供給される第1流体の温度が第1熱負荷対応温度となるように、第1熱負荷バイパス流量調節機構を操作して第1熱負荷バイパス回路を通過する第1流体の流量を調節する。
【0011】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度だけでなく第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度のいずれもが、第1熱負荷処理部において必要とされる第1熱負荷対応温度を超える温度となってしまう運転状況であっても、第1熱負荷バイパス流量調節機構によって第1熱負荷バイパス回路を通過する第1流体の流量を調節することにより、第1熱負荷処理部に供給される第1流体の温度を調節することが可能になる。これにより、ヒートポンプ回路の効率を上げるために、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度が第1熱負荷対応温度を超えてしまうことがあっても、第1熱負荷処理部に供給される第1流体の温度を第1負荷対応温度に近づけることが可能になる。
【0012】
第4発明のヒートポンプシステムは、第2発明のヒートポンプシステムにおいて、制御部は、流量調節制御において、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度の目標値、および、第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度の目標値が、第1熱負荷対応温度となるように制御する。
【0013】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度だけでなく第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度のいずれもが、第1熱負荷処理部において必要とされる第1熱負荷対応温度に近づくように制御される。これにより、第1熱負荷回路を流れている第1流体の温度が第1熱負荷対応温度を大きく超える状態を回避することができ、放熱ロスを効果的に低減させることが可能となる。
【0014】
なお、第1熱負荷対応温度を目指して第1流量調節機構が制御される場合には、第1熱負荷処理部に向かう第1流体の温度を調節する機能を第1熱負荷回路に備えさせる必要を無くすることが可能になる。
【0015】
第5発明のヒートポンプシステムは、第2発明から第4発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、制御部は、流量調節制御において、低段側圧縮機構における圧縮比と、高段側圧縮機構における圧縮比と、の比が1となる場合を含む所定圧縮比条件を満たした状態を維持させるように、若しくは、低段側圧縮機構における圧縮比と、高段側圧縮機構における圧縮比と、の差を小さくさせるように、低段側圧縮機構、高段側圧縮機構および膨張機構の少なくともいずれか1つを制御する。
【0016】
このヒートポンプシステムでは、第1熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度が第1熱交換器に流れ込む第1流体の温度以上の温度になるようにしつつ第2熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度が第2熱交換器に流れ込む第1流体の温度以上の温度になるようにしつつ第1熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度および第2熱交換器に流れ込む一次冷媒の温度の両方が第1熱負荷対応温度以上の温度となるように流量調節制御を行う場合において、高段側圧縮機構および低段側圧縮機構において必要となる圧縮機駆動力を小さく抑えることが可能になる。これにより、第1流体による放熱ロスを低減させるだけでなく、少ない駆動力によって第1熱負荷処理部における熱負荷に対応することが同時に実現でき、効率をよりいっそう向上させることが可能になる。
【0017】
第6発明のヒートポンプシステムは、第5発明のヒートポンプシステムにおいて、制御部は、流量調節制御を行う場合に、低段側圧縮機構の一次冷媒の吐出温度が上がる場合に、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度を上げる低段吸入過熱度制御を行う。
【0018】
一般に、低段側圧縮機構の一次冷媒の吐出温度の目標値が高い場合には、低段側圧縮機構の圧縮比も大きくなる傾向がある。また、これによって、高段側圧縮機構の圧縮比も大きくなってしまう。このため、圧縮機構の必要駆動力が増大してしまい、消費エネルギが増大してしまう。
【0019】
これに対して、このヒートポンプシステムでは、低段側圧縮機構の一次冷媒の吐出温度の目標値が上げられる場合には、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度の目標値を上げる低段吸入過熱度制御を行う。このため、低段側圧縮機構の一次冷媒の吐出温度が目標値に達するために必要となる低段側圧縮機構の圧縮比を小さく抑えることができる。これに付随して、高段側圧縮機構の圧縮比も小さく抑えることができる。これにより、圧縮機構の必要駆動力をより小さく抑えることが可能になる。他方、低段側圧縮機構の一次冷媒の吐出温度の目標値が低くなる場合には、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度を小さくすることで、低段側圧縮機構の圧縮比の増大を抑えることにより高段側圧縮機構の圧縮比の増大も抑えつつ、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の比体積を下げることができる。これにより、圧縮比の増大を抑えつつ、循環量を確保して、能力を増大させることが可能になる。
【0020】
第7発明のヒートポンプシステムは、第6発明のヒートポンプシステムにおいて、ヒートポンプ回路は、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒と、第2熱交換器を通過した後であって膨張機構に向かって流れる一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる一次冷媒間熱交換器をさらに有している。制御部は、一次冷媒間熱交換器を用いて低段吸入過熱度制御を行う。
【0021】
このヒートポンプシステムでは、膨張機構に流入する前の一次冷媒を冷やすための熱を、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度を上げるための熱として回収することができる。これにより、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度を上げることができるだけでなく、膨張機構における一次冷媒の通過量の低減を抑制することができ、能力を向上させることが可能になる。
【0022】
第8発明のヒートポンプシステムは、第5発明から第7発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、制御部は、流量調節制御を行う場合に、第1熱負荷処理部から第1熱交換器および第2熱交換器に向けて流れる第1流体の温度が上昇した場合には、低段側圧縮機構の一次冷媒の吐出温度の目標値を低下させつつ、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度を小さくする負荷低減時制御を行う。
【0023】
このヒートポンプシステムでは、第1熱負荷回路から第1熱交換器および第2熱交換器に向けて流れる第1流体の温度が上昇した場合には、第1熱負荷処理部における熱負荷が小さくなった状況であるため、上記効率的な運転状態に変化させた場合であっても負荷に対応することができる。しかも、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の密度を上げることができ、一次冷媒の循環量を増大させることができる。これにより、負荷変動に対応しつつヒートポンプ回路の能力を増大させることが可能になる。
【0024】
第9発明のヒートポンプシステムは、第8発明のヒートポンプシステムにおいて、第2熱負荷部を有しており、第2流体が循環する第2熱負荷回路と、第2熱負荷回路を循環する第2流体と、高段側圧縮機構から第2熱交換器に向かう途中の一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる第3熱交換器と、をさらに備えている。
【0025】
このヒートポンプシステムでは、高段側圧縮機構が吐出する一次冷媒の熱を、第1熱負荷回路おける熱負荷処理と第2熱負荷回路における熱負荷処理との両方に用いることができるようになるだけでなく、第1熱負荷回路において必要となる温度範囲以外を第2熱負荷回路において利用することが可能になる。
【0026】
第10発明のヒートポンプシステムは、第9発明のヒートポンプシステムにおいて、第2熱負荷回路を通過する第2流体のうち第2熱負荷処理部から第3熱交換器に向かう第2流体と、第2熱交換器を通過した後であって膨張機構に向かう途中の一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる第4熱交換器をさらに備えている。
【0027】
このヒートポンプシステムでは、第1熱負荷処理部における第1流体の温度変化範囲が、第2熱負荷処理部における第2流体の温度変化範囲に含まれている場合には、高段側圧縮機構が吐出する一次冷媒のうち高温状態の一次冷媒との熱交換と低温状態の一次冷媒との熱交換とを第2流体との熱交換に割り当てて、中温状態の一次冷媒を第1流体との熱交換に利用することができる。これにより、第1流体および第2流体と、一次冷媒と、の温度差を小さく抑えたままで、第2熱交換器、第3熱交換器および第4熱交換器における熱交換を行わせることができるため、熱交換効率を向上させることが可能になる。
【0028】
第11発明のヒートポンプシステムは、第9発明または第10発明のヒートポンプシステムにおいて、制御部は、低段側圧縮機構が吐出する一次冷媒の温度の目標値が高段側圧縮機構が吐出する一次冷媒の温度の目標値よりも低い場合に、第3熱交換器を通過する一次冷媒の温度が低段側圧縮機構が吐出する一次冷媒の温度の目標値に近づくように、第2熱負荷回路を循環する第2流体の循環量を調節する。
【0029】
このヒートポンプシステムでは、第1熱交換器を流れる一次冷媒の最高温度と第2熱交換器を流れる一次冷媒の最高温度とを近づけることで、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とを近づけやすくなる。
【0030】
なお、例えば、第1熱負荷処理部へ供給される第1流体の流量を低く抑えたい場合において、第1流体が第1熱交換器を通過する時間や第2熱交換器を通過する時間が長くなったとしても、第1熱交換器を流れる一次冷媒の温度と第2熱交換器を流れる一次冷媒の温度が近づいている。このため、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度のいずれについても、上記第1熱交換器を流れる一次冷媒の温度(第2熱交換器を流れる一次冷媒の温度)近傍の値に収束させることが可能になる。
【0031】
第12発明のヒートポンプシステムは、第9発明から第11発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、第2熱負荷処理部は、給湯用のタンクである。第2流体は、給湯用の水である。
【0032】
このヒートポンプシステムでは、高段側圧縮機構から吐出される一次冷媒の温度を利用してお湯をつくることができるようになる。
【0033】
第13発明のヒートポンプシステムは、第2発明から第12発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、制御部は、流量調節制御では、第1流量調節機構を操作することにより、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とのうち、温度が低い方の流量を下げる。
【0034】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と、第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と、のうち温度が低い方の流量を下げることにより、温度が低い方の流速が低下して加熱される時間を長くすることができる。これにより、第1熱交換器および第2熱交換器のうち流量を下げた側における一次冷媒からの熱回収量を増大させることが可能になる。
【0035】
なお、例えば、一次冷媒の入口温度まで加熱されることなく、早い流速で第1熱交換器もしくは第2熱交換器を通過していた場合には、通過速度を落として熱交換可能時間を長くすることで、熱回収量を増大させることができる。
【0036】
第14発明のヒートポンプシステムは、第13発明のヒートポンプシステムにおいて、第1流量調節機構は、第1分岐路を流れる第1流体の流量と第2分岐路を流れる第1流体の流量との比率を調節可能である。制御部は、流量調節制御では、第1流量調節機構を操作することにより、第1熱負荷処理部に供給する第1流体の流量を一定に保ちつつ、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とのうち、温度が低い方の流量比率を下げる。
【0037】
このヒートポンプシステムでは、流量比率を調節することにより、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とのうち、温度が高い方の流速が増大して加熱時間が短くなり、温度が低い方の流速が低下して加熱時間が長くなる。これにより、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度との両方を、温度差を少なくするように変化させることが可能になる。また、第1熱負荷処理部における熱負荷に変更が無い場合には、温度差を小さくできるだけでなく第1熱負荷処理部に供給される第1流体の流量を維持することで第1熱負荷処理部における熱負荷に対応させることが可能になる。
【0038】
第15発明のヒートポンプシステムは、第13発明のヒートポンプシステムにおいて、第1流量調節機構は、第1熱負荷処理部に供給する前記第1流体の流量を調節可能である。制御部は、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とのうち温度が低い方の流量比率が小さい場合において、流量調節制御では、第1流量調節機構を操作することにより第1熱負荷処理部に供給する第1流体の流量を下げる。
【0039】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とのうち温度が低い方の流量比率が小さい場合に、第1熱負荷処理部に供給する第1流体の流量を下げると、温度の高い方の温度上昇分よりも、温度の低い方の温度上昇分の方が大きくなる。これにより、温度差を少なくするように変化させることが可能になる。また、第1熱負荷処理部における熱負荷が低下した場合には、温度差を小さくできるだけでなく第1熱負荷処理部における熱負荷に対応させることが可能になる。
【0040】
第16発明のヒートポンプシステムは、第13発明のヒートポンプシステムにおいて、第1流量調節機構は、第1分岐路を流れる第1流体の流量と第2分岐路を流れる第1流体の流量との比率を調節する比率調節部と、第1熱負荷処理部に供給する第1流体の流量を調節する流量調節部とを含んでいる。制御部は、流量調節制御では、第1流量調節機構を操作することにより、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とのうち、第1熱負荷対応温度を超えている方の流量を増大させ、および/または、第1熱負荷対応温度に満たない方の流量を低下させるとともに、制御部は、第1熱負荷処理部に供給する第1流体の温度が第1熱負荷対応温度を超えている場合において、第1熱負荷処理部に供給する第1流体の温度が上がれば上がるほど第1熱負荷処理部に供給する第1流体の流量を下げる。
【0041】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度との差を小さくしつつ、第1熱負荷回路を流れる第1流体の流量を第1熱負荷処理部における熱負荷に対応させた量にすることが可能になる。
【0042】
第17発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第16発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度を把握する第1分岐路温度検知手段と、第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度を把握する第2分岐路温度検知手段と、をさらに備えている。
【0043】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度を直接把握することができるため、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0044】
第18発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第16発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、分岐部分温度検知手段、および、合流部温度検知手段を備えている。分岐部分温度検知手段は、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度の少なくともいずれか一方を把握する。合流部分温度検知手段は、第1分岐路を通過した第1流体と第2分岐路を通過した第1流体とが合流した後に第1熱負荷処理部に向けて流れる第1流体の温度を把握する。
【0045】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度のいずれかを分岐部分温度検知手段によって、合流後の第1流体の温度を合流部分温度検知手段によって、を直接把握することができる。これにより、分岐部分温度検知手段が把握する温度と合流部分温度検知手段が把握する温度との差が小さくなるように制御することで、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0046】
第19発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第16発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、第1分岐路を流れる第1流体の流量を把握する第1分岐路流量検知手段と、第2分岐路を流れる第1流体の流量を把握する第2分岐路流量検知手段と、をさらに備えている。
【0047】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路を流れる第1流体の流量および第2分岐路を流れる第1流体の流量を直接把握することができるため、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0048】
第20発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第16発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、第1分岐路を流れる第1流体の流量および第2分岐路を流れる第1流体の流量の少なくともいずれか一方を把握する分岐部分流量検知手段と、第1分岐路を流れる第1流体と第2分岐路を流れる第1流体とが合流した後に第1熱負荷処理部に向けて流れる第1流体の流量を把握する合流部分流量検知手段と、をさらに備えている。
【0049】
このヒートポンプシステムでは、第1分岐路を流れる第1流体の流量および第2分岐路を流れる第1流体の流量のいずれかを分岐部分流量検知手段によって、合流後の第1流体の流量を合流部分流量検知手段によって、を直接把握することができる。これにより、第1分岐路と第2分岐路のうち分岐部分流量検知手段が設けられていない側の流量を、分岐部分流量検知手段が把握する流量と合流部分流量検知手段が把握する流量との差として把握することができる。これにより、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0050】
第21発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第20発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、第1熱交換器では、低段側圧縮機構の吐出側から高段側圧縮機構の吸入側に向けて流れる一次冷媒と、第1分岐路を流れる第1流体とは、対向流の関係にある。第2熱交換器では、高段側圧縮機構から膨張機構に向けて流れる一次冷媒と、第2分岐路を流れる第1流体とは、対向流の関係にある。
【0051】
このヒートポンプシステムでは、低段側圧縮機構から吐出される一次冷媒の温度および高段側圧縮機構から吐出される一次冷媒の温度として必要な温度を低く抑えることが可能になる。これにより、圧縮機構の駆動力を小さく抑えることが可能になる。
【0052】
第22発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第21発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、第1熱負荷処理部は、配置されている対象空間の空気を暖める暖房用熱交換器である。第1流体は、二次冷媒である。
【0053】
このヒートポンプシステムでは、第1熱負荷処理部が配置されている空間を暖めることが可能になる。
【0054】
第23発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第22発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、低段側圧縮機構および高段側圧縮機構は、それぞれ回転駆動することで圧縮仕事を行うための共通の回転軸を有している。
【0055】
このヒートポンプシステムでは、回転軸を共通化させつつ180度の位相差を設けることで、駆動効率を上げることが可能になる。
【0056】
第24発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第23発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、制御部は、流量調節制御において、高段側圧縮機構の吐出圧力を一次冷媒の臨界圧力以上の圧力に維持している。第1熱負荷処理部の周囲温度が一次冷媒の臨界温度以下の温度である環境下で用いられる。
【0057】
このヒートポンプシステムでは、一次冷媒の臨界温度を下回る温度の熱負荷に対して臨界圧力を超えた状態の一次冷媒が供給されることで、モリエル線図上において一次冷媒の等温線の傾斜がなだらかになっているエリアで放熱処理を行うことができる。このため、一次冷媒の放熱工程の開始と終了との間におけるエンタルピ差を増大させた運転を行うことが可能になる。
【0058】
第25発明のヒートポンプシステムは、第1発明から第24発明のいずれかのヒートポンプシステムにおいて、一次冷媒は、二酸化炭素である。
【0059】
このヒートポンプシステムでは、自然冷媒を用いてヒートポンプ回路の冷凍サイクルを実現できる。
【発明の効果】
【0060】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0061】
第1発明では、第1負荷熱交換器における熱負荷のヒートポンプシステムによる処理効率を向上させることが可能になる。
【0062】
第2発明では、第1流体が第1熱交換器および第2熱交換器において得る熱量のみによって、第1負荷熱交換器における熱負荷に対応することが可能になる。
【0063】
第3発明では、ヒートポンプ回路の効率を上げるために、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度および第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度が第1熱負荷対応温度を超えてしまうことがあっても、第1熱負荷処理部に供給される第1流体の温度を第1負荷対応温度に近づけることが可能になる。
【0064】
第4発明では、第1熱負荷回路を流れている第1流体の温度が第1熱負荷対応温度を大きく超える状態を回避することができ、放熱ロスを効果的に低減させることが可能となる。
【0065】
第5発明では、第1流体による放熱ロスを低減させるだけでなく、少ない駆動力によって第1熱負荷処理部における熱負荷に対応することが同時に実現でき、効率をよりいっそう向上させることが可能になる。
【0066】
第6発明では、圧縮比の増大を抑えつつ、循環量を確保して、能力を増大させることが可能になる。
【0067】
第7発明では、低段側圧縮機構が吸入する一次冷媒の過熱度を上げることができるだけでなく、膨張機構における一次冷媒の通過量の低減を抑制することができ、能力を向上させることが可能になる。
【0068】
第8発明では、負荷変動に対応しつつヒートポンプ回路の能力を増大させることが可能になる。
【0069】
第9発明では、高段側圧縮機構が吐出する一次冷媒の熱を、第1熱負荷回路おける熱負荷処理と第2熱負荷回路における熱負荷処理との両方に用いることができるようになるだけでなく、第1熱負荷回路において必要となる温度範囲以外を第2熱負荷回路において利用することが可能になる。
【0070】
第10発明では、第1流体および第2流体と、一次冷媒と、の温度差を小さく抑えたままで、第2熱交換器、第3熱交換器および第4熱交換器における熱交換を行わせることができるため、熱交換効率を向上させることが可能になる。
【0071】
第11発明では、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度とを近づけやすくなる。
【0072】
第12発明では、高段側圧縮機構から吐出される一次冷媒の温度を利用してお湯をつくることができるようになる。
【0073】
第13発明では、第1熱交換器および第2熱交換器のうち流量を下げた側における一次冷媒からの熱回収量を増大させることが可能になる。
【0074】
第14発明では、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度との両方を、温度差を少なくするように変化させることが可能になり、第1熱負荷処理部における熱負荷に変更が無い場合には、温度差を小さくできるだけでなく第1熱負荷処理部に供給される第1流体の流量を維持することで第1熱負荷処理部における熱負荷に対応させることが可能になる。
【0075】
第15発明では、温度差を少なくするように変化させることが可能になる。また、第1熱負荷処理部における熱負荷が低下した場合には、温度差を小さくできるだけでなく第1熱負荷処理部における熱負荷に対応させることが可能になる。
【0076】
第16発明では、第1分岐路のうち第1熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度と第2分岐路のうち第2熱交換器を通過した部分を流れる第1流体の温度との差を小さくしつつ、第1熱負荷回路を流れる第1流体の流量を第1熱負荷処理部における熱負荷に対応させた量にすることが可能になる。
【0077】
第17発明では、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0078】
第18発明では、分岐部分温度検知手段が把握する温度と合流部分温度検知手段が把握する温度との差が小さくなるように制御することで、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0079】
第19発明では、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0080】
第20発明では、流量調節制御の精度を向上させることが可能になる。
【0081】
第21発明では、圧縮機構の駆動力を小さく抑えることが可能になる。
【0082】
第22発明では、第1熱負荷処理部が配置されている空間を暖めることが可能になる。
【0083】
第23発明では、回転軸を共通化させつつ180度の位相差を設けることで、駆動効率を上げることが可能になる。
【0084】
第24発明では、一次冷媒の放熱工程の開始と終了との間におけるエンタルピ差を増大させた運転を行うことが可能になる。
【0085】
第25発明では、自然冷媒を用いてヒートポンプ回路の冷凍サイクルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図2】第1実施形態にかかるヒートポンプ回路の圧力−エンタルピ線図である。
【図3】第1実施形態にかかるヒートポンプ回路の温度−エントロピ線図である。
【図4】第2実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図5】第3実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図6】第4実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図7】第5実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図8】第5実施形態の変形例Aにかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図9】第5実施形態の変形例Bにかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図10】第5実施形態の変形例Cにかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図11】第6実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図12】第6実施形態の変形例Aにかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図13】第7実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図14】第8実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図15】第9実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図16】第10実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図17】第11実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図18】第12実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図19】第13実施形態にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図20】各実施形態の変形例<14−5>にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図21】各実施形態の変形例<14−5>にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図22】各実施形態の変形例<14−8>のモリエル線図を示す図である。
【図23】各実施形態の変形例<14−9>のモリエル線図を示す図である。
【図24】各実施形態の変形例<14−11>にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図25】各実施形態の変形例<14−12>にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図26】各実施形態の変形例<14−13>にかかるヒートポンプシステムの概略構成図である。
【図27】各実施形態の変形例<14−17>のモリエル線図についての比較例を示す図である。
【図28】各実施形態の変形例<14−17>のモリエル線図を示す図である。
【図29】各実施形態の変形例<14−18>のモリエル線図を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
<1>第1実施形態
<1−1>ヒートポンプシステム1の構成
図1は、本発明の一実施形態である第1実施形態にかかるヒートポンプシステム1の概略構成図である。
【0088】
ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプ回路10、暖房回路60、給湯回路90、中間圧水熱交換器40、および、高圧水熱交換器50を備えている。ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプ回路10によって得られる熱を、暖房回路60を介して暖房用の熱として利用するだけでなく、給湯回路90を介して給湯用の熱として利用するシステムである。
【0089】
(中間圧水熱交換器40)
中間圧水熱交換器40では、ヒートポンプ回路10を循環する一次冷媒としての二酸化炭素と、暖房回路60を循環する二次冷媒としての水と、の間で熱交換を行わせる。
【0090】
(高圧水熱交換器50)
高圧水熱交換器50は、第1高圧水熱交換器51、第2高圧水熱交換器52、および、第3高圧水熱交換器53を有している。第1高圧水熱交換器51では、ヒートポンプ回路10を循環する一次冷媒としての二酸化炭素と、給湯回路90を循環する給湯用の水と、の間で熱交換を行わせる。第2高圧水熱交換器52では、ヒートポンプ回路10を循環する一次冷媒としての二酸化炭素と、暖房回路60を循環する二次冷媒としての水と、の間で熱交換を行わせる。第3高圧水熱交換器53では、ヒートポンプ回路10を循環する一次冷媒としての二酸化炭素と、給湯回路90を循環する給湯用の水と、の間で熱交換を行わせる。
【0091】
(ヒートポンプ回路10)
ヒートポンプ回路10は、一次冷媒としての二酸化炭素が循環している自然冷媒を用いた回路である。ヒートポンプ回路10は、低段側圧縮機21、高段側圧縮機25、エコノマイザ熱交換器7、インジェクション路70、一次冷媒間熱交換器8、一次バイパス80、膨張弁5a、蒸発器4、中間圧管23、高圧管27、低圧管20、ファン4f、および、制御部11を備えている。蒸発器4は、例えば、屋外に設置されている。
【0092】
中間圧管23は、低段側圧縮機21の吐出側と高段側圧縮機25の吸入側とを接続している。中間圧管23は、第1中間圧管23a、第2中間圧管23b、第3中間圧管23c、および、第4中間圧管23dを有している。
【0093】
第1中間圧管23aは、低段側圧縮機21の吐出側と、中間圧水熱交換器40の上流側端部と、を低段吐出ポイントBを介しつつ、接続している。この第1中間圧管23aには、通過する一次冷媒の温度を検知する中間圧温度センサ23Tが取り付けられている。第2中間圧管23bは、二次冷媒としての暖房用の水と混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒としての二酸化炭素を流しつつ、中間圧水熱交換器40内を通過している。第3中間圧管23cは、中間圧水熱交換器40の下流側端部とインジェクション合流ポイントDとを、中間圧水熱交換器通過ポイントCを介して接続している。第4中間圧管23dは、インジェクション合流ポイントDと、高段側圧縮機25の吸入側と、を接続している。この第4中間圧管23dには、通過する一次冷媒の圧力を検知する高段吸入圧力センサ24P、および、通過する一次冷媒の温度を検知する高段吸入温度センサ24Tが取り付けられている。
【0094】
高圧管27は、高段側圧縮機25の吐出側と、膨張弁5もしくは一次バイパス膨張弁5bと、を接続している。高圧管27は、第1高圧管27a、第2高圧管27b、第3高圧管27c、第4高圧管27d、第5高圧管27e、第6高圧管27f、第7高圧管27g、第8高圧管27h、第9高圧管27i、第10高圧管27j、第11高圧管27k、第12高圧管27l、および、第13高圧管27mを有している。
【0095】
第1高圧管27aは、高段側圧縮機25の吐出側と、第1高圧水熱交換器51と、を高段吐出ポイントEを介しつつ、接続している。この第1高圧管27aには、通過する一次冷媒の圧力を検知する高圧圧力センサ27P、および、通過する一次冷媒の温度を検知する高圧温度センサ27Tが取り付けられている。第2高圧管27bは、給湯用の水と混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒としての二酸化炭素を流しつつ、第1高圧水熱交換器51内を通過している。第3高圧管27cは、第1高圧水熱交換器51の下流側端部と、第2高圧水熱交換器52の上流側端部と、を第1高圧ポイントFを介しつつ、接続している。第4高圧管27dは、暖房用二次冷媒としての水と混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒としての二酸化炭素を流しつつ、第2高圧水熱交換器52内を通過している。第5高圧管27eは、第2高圧水熱交換器52の下流側端部と、第3高圧水熱交換器53の上流側端部と、を第2高圧ポイントGを介しつつ、接続している。第6高圧管27fは、暖房用二次冷媒としての水と混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒としての二酸化炭素を流しつつ、第3高圧水熱交換器53内を通過している。第7高圧管27gは、第3高圧水熱交換器53の下流側端部と、第3高圧ポイントHと、を接続している。第8高圧管27hは、第3高圧ポイントHと、エコノマイザ熱交換器7中の膨張弁5a側に向かう一次冷媒の流れ方向における上流側端部と、を接続している。第9高圧管27iは、インジェクション路70を流れる一次冷媒との間で混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒を流しつつ、エコノマイザ熱交換器7を通過している。第10高圧管27jは、エコノマイザ熱交換器7中の膨張弁5a側に向かう一次冷媒の流れ方向における下流側端部と、第4高圧ポイントIと、を接続している。第11高圧管27kは、第4高圧ポイントIと、一次冷媒間熱交換器8中の膨張弁5a側に向かう一次冷媒の流れ方向における上流側端部と、を接続している。第12高圧管27lは、低圧管20を流れる一次冷媒との間で混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒を流しつつ、一次冷媒間熱交換器8を通過している。第13高圧管27mは、一次冷媒間熱交換器8中の膨張弁5a側に向かう一次冷媒の流れ方向における下流側端部と、膨張弁5aと、を第5高圧ポイントJを介しつつ、接続している。
【0096】
低圧管20は、第1低圧管20a、第2低圧管20b、第3低圧管20c、第4低圧管20d、および、第5低圧管20eを有している。第1低圧管20aは、膨張弁5aと、第3低圧ポイントMと、を第1低圧ポイントKを介して接続している。第2低圧管20bは、第3低圧ポイントMと、蒸発器4の上流側端部と、を接続している。第3低圧管20cは、蒸発器4の下流側端部と、一次冷媒間熱交換器8の低圧管20中の一次冷媒の流れ方向における上流側端部と、を第4低圧ポイントNを介しつつ、を接続している。第4低圧管20dは、第12高圧管27lを流れる一次冷媒との間で混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒を流しつつ、一次冷媒間熱交換器8を通過している。第5低圧管20eは、一次冷媒間熱交換器8の低圧管20中の一次冷媒の流れ方向における下流側端部と、低段側圧縮機21の吸入側である吸入ポイントAと、を接続している。この第5低圧管20eには、通過する一次冷媒の圧力を検知する低圧圧力センサ20P、および、通過する一次冷媒の温度を検知する低圧温度センサ20Tが取り付けられている。
【0097】
インジェクション路70は、インジェクション膨張弁73、第1インジェクション管72、第2インジェクション管74、第3インジェクション管75、および、第4インジェクション管76を有している。
【0098】
第1インジェクション管72は、第3高圧ポイントHと、インジェクション膨張弁73と、を接続している。第2インジェクション管74は、インジェクション膨張弁73と、エコノマイザ熱交換器7中のインジェクション路70を流れる一次冷媒の流れ方向における上流側端部と、をインジェクション中間圧ポイントQを介しつつ、接続している。第3インジェクション管75は、第9高圧管27iを流れる一次冷媒との間で混ざり合うことがないように、内部に一次冷媒を流しつつ、エコノマイザ熱交換器7を通過している。第4インジェクション管76は、エコノマイザ熱交換器7中のインジェクション路70を流れる一次冷媒の流れ方向における下流側端部と、インジェクション合流ポイントDと、をエコノマイザ熱交後ポイントRを介しつつ、接続している。
【0099】
このように、ヒートポンプ回路10では、インジェクション路70が採用されているため、ヒートポンプ回路の成績係数を向上させることができている。そして、例えば、暖房負荷が小さい場合等、ヒートポンプ回路10の効率向上のための中間圧水熱交換器40での一次冷媒の冷却効果を十分に得られない場合であっても、このインジェクション路70を通過するインジェクション量を増大させることで、運転効率を向上させることができる。なお、ヒートポンプ回路10では、インジェクション合流ポイントDは、中間圧水熱交換器40と高段側圧縮機25との間に設けられている。このため、低段側圧縮機21から吐出された高温の一次冷媒は、中間圧水熱交換器40に到達する前に冷やされることがなく、高温状態を維持したままで中間圧水熱交換器40に供給することができる。このため、中間圧水熱交換器40を通過する暖房用の水を十分高温にすることができている。さらに、第3高圧ポイントHは、エコノマイザ熱交換器7の上流側において一次冷媒の一部をインジェクション路70へ分岐させることができる位置に設けられている。このため、低段側圧縮機21から高段側圧縮機25に向かう一次冷媒を冷却し過ぎてしまうことによる能力低下を回避することがきている。
【0100】
一次バイパス80は、第14高圧管27n、第6低圧管20f、および、一次バイパス膨張弁5bを有している。第14高圧管27nは、第4高圧ポイントIと、一次バイパス膨張弁5bと、を接続している。第6低圧管20fは、一次バイパス膨張弁5bと、第3低圧ポイントMと、第2低圧ポイントLを介して接続している。なお、一次バイパス80に一次バイパス膨張弁5bが設けられているため、制御部11は、一次冷媒間熱交換器8側を通過する一次冷媒の量を調節することができる。このため、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒が適当な過熱度を有するように調節することが可能になっている。具体的には、制御部11は、一次バイパス膨張弁5bの弁開度を下げた場合には、一次冷媒間熱交換器8を通過する一次冷媒の流量が増大し、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を上げることができ、これにより、低段側圧縮機21の吐出冷媒温度が目標温度となるために必要となる圧縮比を小さく抑えることができる。また、制御部11は、一次バイパス膨張弁5bの弁開度を上げた場合には、一次冷媒間熱交換器8を通過する一次冷媒の流量が減少し、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を下げることができ、これにより、低段側圧縮機21の吸入冷媒密度が著しく減少して循環量を確保できなくなってしまう事態を回避することができる。
【0101】
制御部11は、上述した中間圧温度センサ23T、高段吸入圧力センサ24P、高段吸入温度センサ24T、高圧圧力センサ27P、高圧温度センサ27T、低圧圧力センサ20P、および、低圧温度センサ20T等が検知する値に基づいて、低段側圧縮機21、高段側圧縮機25、インジェクション膨張弁73、膨張弁5a、一次バイパス膨張弁5b、ファン4f等を制御する。
【0102】
(暖房回路60)
暖房回路60は、二次冷媒としての水が循環している。暖房回路60は、ラジエータ61、分流機構62、暖房往き管65、暖房戻り管66、中間圧側分岐路67、および、高圧側分岐路68を有している。分流機構62は、暖房混合弁64、および、暖房ポンプ63を含んでいる。ラジエータ61は、暖房を行う対象となる空間に設置されており、内部を二次冷媒としての暖かい水が流れることにより、対象空間の空気を暖めて暖房を行う。ラジエータ61には、内部を流れる暖房用の水の温度を検知するためのラジエータ温度センサ61Tが設けられている。ラジエータ61は、図示しないが、暖房ポンプ63から送られてくる暖かい水を受け入れるための往き口と、ラジエータ61において放熱した後の水を中間圧水熱交換器40および第2高圧水熱交換器52に送り出すための戻り口と、を有している。暖房戻り管66は、ラジエータ61の戻り口と、暖房分岐ポイントXとを接続している。暖房分岐ポイントXでは、ラジエータ61における放熱を終えた水を、中間圧水熱交換器40側に送る中間圧側分岐路67と、第2高圧水熱交換器52側に送る高圧側分岐路68と、に分流させる。暖房戻り管66には、通過する暖房用の二次冷媒の温度を検知する暖房戻り温度センサ66Tが設けられている。
【0103】
中間圧側分岐路67は、第1中間圧側分岐路67a、第2中間圧側分岐路67b、および、第3中間圧側分岐路67cを有している。第1中間圧側分岐路67aは、分岐ポイントXと、中間圧水熱交換器40の中間圧側分岐路67中の水の流れ方向における上流側端部と、を接続している。第2中間圧側分岐路67bは、第2中間圧管23b内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と混ざり合うことがないように、内部に二次冷媒としての暖房用の水を流しつつ、中間圧水熱交換器40内を通過している。ここで、中間圧水熱交換器40では、第2中間圧管23b内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と、第2中間圧側分岐路67b内を流れている二次冷媒としての暖房用の水とは、互いに対向する方向に流れている対向流形式が採用されている。第3中間圧側分岐路67cは、中間圧水熱交換器40の中間圧側分岐路67中の水の流れ方向における下流側端部と、暖房合流ポイントYと、を接続している。第3中間圧側分岐路67cには、通過する暖房用の水の温度を検知するための中間圧側分岐路温度センサ67Tが設けられている。
【0104】
高圧側分岐路68は、第1高圧側分岐路68a、第2高圧側分岐路68b、および、第3高圧側分岐路68cを有している。第1高圧側分岐路68aは、分岐ポイントXと、第2高圧水熱交換器52の高圧側分岐路68中の水の流れ方向における上流側端部と、を接続している。第2高圧側分岐路68bは、第4高圧管27d内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と混ざり合うことがないように、内部に二次冷媒としての暖房用の水を流しつつ、第2高圧水熱交換器52内を通過している。ここで、第2高圧水熱交換器52では、第4高圧管27d内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と、第2高圧側分岐路68b内を流れている二次冷媒としての暖房用の水とは、互いに対向する方向に流れている対向流形式が採用されている。第3高圧側分岐路68cは、第2高圧水熱交換器52の高圧側分岐路68中の水の流れ方向における下流側端部と、暖房合流ポイントYと、を接続している。第3高圧側分岐路68cには、通過する暖房用の水の温度を検知するための高圧側分岐路温度センサ68Tが設けられている。
【0105】
なお、第1中間圧側分岐路67aを流れている暖房用の水の温度、および、第1高圧側分岐路68aを流れている暖房用の水の温度は、いずれも暖房分岐ポイントXで分岐されたまま、外部との熱のやりとりが無いため、同一の温度分布となっている。これに対して、第3中間圧側分岐路67cを流れている暖房用の水の温度は、中間圧水熱交換器40において第2中間圧管23bを流れる一次冷媒との熱交換によって得られる熱量に応じた温度となる。また、第3高圧側分岐路68cを流れている暖房用の水の温度は、第2高圧水熱交換器52において第4高圧管27dを流れている一次冷媒との熱交換によって得られる熱量に応じた温度となる。このため、第3中間圧側分岐路67cを流れている暖房用の水の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れている暖房用の水の温度とは、異なる温度になる場合がある。
【0106】
暖房往き管65は、暖房合流ポイントYと、ラジエータ61の往き口と、を接続している。この暖房往き管65の途中には、暖房往き管65を通過する暖房用の水の流量を調節する暖房ポンプ63が設けられている。暖房混合弁64は、第3中間圧側分岐路67cを通過した暖房用の水と、第3高圧側分岐路68cを通過した暖房用の水と、が合流する暖房傍流ポイントYに設けられている。暖房混合弁64は、第3中間圧側分岐路67c側に接続されている部分の開度および第3高圧側分岐路68c側に接続されている部分の開度をそれぞれ調節することにより、中間圧側分岐路67に流す暖房用の水の流量と、第3高圧側分岐路68cに流す暖房用の水の流量と、の比率を調節する。
【0107】
なお、制御部11は、上述したラジエータ温度センサ61T、中間圧側分岐路温度センサ67T、高圧側分岐路温度センサ68T等が検知する温度等に基づいて、ラジエータ61において要求される温度の二次冷媒を供給することができるように、暖房混合弁64における分流比率および暖房ポンプ63の流量を制御する。
【0108】
(給湯回路90)
給湯回路90は、給湯用の水が循環している。給湯回路90は、貯湯タンク91、給水管94、給湯管98、給湯バイパス管99、給湯混合弁93、給湯ヒートポンプ管95、および、給湯ポンプ92を有している。
【0109】
貯湯タンク91には、図示しないが、循環往き口、および、循環戻り口が設けられている。図示しない外部の市水を通じた後、給水管94を介して、常温の水が、貯湯タンク91の下端部近傍から貯湯タンク91内へと供給される。給湯ヒートポンプ管95は、第1給湯ヒートポンプ管95a、第2給湯ヒートポンプ管95b、第3給湯ヒートポンプ管95c、第4給湯ヒートポンプ管95d、第5給湯ヒートポンプ管95e、および、第6給湯ヒートポンプ管95fを有している。
【0110】
第1給湯ヒートポンプ管95aは、貯湯タンク91の循環往き口と、給湯ポンプ92と、を接続している。第1給湯ヒートポンプ管95aには、通過する給湯用の水の温度を検知する給湯入水温度センサ94Tが設けられている。第2給湯ヒートポンプ管95bは、給湯ポンプ92と、第3高圧水熱交換器53の給湯ヒートポンプ管95中の水の流れ方向における上流側端部と、を接続している。第3給湯ヒートポンプ管95cは、第6高圧管27f内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と混ざり合うことがないように、内部に給湯用の水を流しつつ、第3高圧水熱交換器53内を通過している。ここで、第3高圧水熱交換器53では、第6高圧管27f内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と、第3給湯ヒートポンプ管95c内を流れている給湯用の水とは、互いに対向する方向に流れている対向流形式が採用されている。第4給湯ヒートポンプ管95dは、第3高圧水熱交換器53の給湯ヒートポンプ管95中の水の流れ方向における下流側端部と、第1高圧水熱交換器51の給湯ヒートポンプ管95中の水の流れ方向における上流側端部と、を接続している。第4給湯ヒートポンプ管95dでは、通過する給湯用の水の温度を検知する給湯中間温度センサ95Tが設けられている。第2高圧水熱交換器52では、給湯用の水と、一次冷媒としての二酸化炭素と、の間での熱交換は行われていない。第5給湯ヒートポンプ管95eは、第2高圧管27b内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と混ざり合うことがないように、内部に給湯用の水を流しつつ、第1高圧水熱交換器51内を通過している。ここで、第1高圧水熱交換器51では、第2高圧管27b内を流れている一次冷媒としての二酸化炭素と、第5給湯ヒートポンプ管95e内を流れている給湯用の水とは、互いに対向する方向に流れている対向流形式が採用されている。第6給湯ヒートポンプ管95fは、第1高圧水熱交換器51の給湯ヒートポンプ管95中の水の流れ方向における下流側端部と、貯湯タンク91の循環戻り口とを接続している。第6給湯ヒートポンプ管95fには、通過する給湯用の水の温度を検知する給湯出湯温度センサ98Tが設けられている。
【0111】
給湯管98は、貯湯タンク91の上端部近傍から貯湯タンク91内に溜められているお湯を、図示しない利用される場所まで導く。給水管94は、貯湯タンク91側に向かう流れから分岐させる分岐部分である給水分岐ポイントWが設けられている。給湯管98は、貯湯タンク91から利用される場所に向かう流れに合流させる給湯合流ポイントZが設けられている。給湯バイパス管99は、この給水分岐ポイントWと、この給湯合流ポイントZと、を接続している。給湯合流ポイントZには、給湯管98を通じて貯湯タンク91から送られてくるお湯と、給湯バイパス管99を通じて市水から供給される常温の水と、の混合比率を調節できる給湯混合弁93が設けられている。この給湯混合弁93における混合比率が調節されることにより、利用される場所に送られる水の温度が調節される。
【0112】
なお、制御部11は、上述した給湯入水温度センサ94T、給湯中間温度センサ95T、給湯出湯温度センサ98T等が検知する温度等に基づいて、給湯ポンプ92の流量を制御する。
【0113】
<1−2>ヒートポンプ回路10の運転
図2は、ヒートポンプシステム1が運転された場合の圧力−エンタルピ線図である。図3は、ヒートポンプシステム1が運転された場合の温度−エントロピ線図である。
【0114】
以下、一次冷媒の温度分布状態について、1つの具体例を挙げつつ説明する。
【0115】
低段側圧縮機21は、低圧管20を流れてきた22℃程度の一次冷媒(点A)を、目標吐出温度が90℃程度に到達するように圧縮を行う(点B)。なお、ここで低圧管20を流れる一次冷媒の圧力は、蒸発器4を設置している周囲温度によって、一次冷媒としての二酸化炭素を蒸発させることが可能な圧力となるまで下げられた圧力(蒸発圧力)となるように制御部11によって調節されている。
【0116】
低段側圧縮機21から吐出された一次冷媒は、第1中間圧管23aを通じて、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧管23bに流入する。中間圧水熱交換器40に流入した一次冷媒は、第2中間圧側分岐路67bを通過している暖房用二次冷媒としての水との間で熱交換を行うことで、35℃程度まで冷却される(点C)。ここで、中間圧水熱交換器40における一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧管23bの出口近傍では、ラジエータ61で放熱して冷えた状態の30℃程度の二次冷媒によって効果的に冷却される。
【0117】
中間圧水熱交換器40を通過した一次冷媒は、第3中間圧管23cのインジェクション合流点Dにおいて、インジェクション路70を通じて流入してくる27℃程度の一次冷媒と合流することで、さらに冷却され、30℃程度となる(点D)。ここで、インジェクション合流点Dにおいて合流した後の一次冷媒は、過熱度を有するか、もしくは、超臨界状態となるように、制御部11が制御を行う。さらに、ここで、制御部11は、インジェクション合流点Dにおいて合流した後の一次冷媒が、低段側圧縮機21における圧縮比と同一の圧縮比で高段側圧縮機25を駆動させつつ高段側圧縮機25から吐出される一次冷媒の目標温度が低段側圧縮機21から吐出される一次冷媒の目標温度と同じ90℃とすることができるように、制御を行う。また、制御部11は、高段側圧縮機25に吸入される一次冷媒について、中間圧水熱交換器40およびインジェクション路70での熱収支を調節するように制御を行う。
【0118】
インジェクション合流点Dで合流した一次冷媒は、高段側圧縮機25に吸入され、目標吐出温度が低段側圧縮機21の吐出冷媒の目標温度と同じ温度である90℃程度に到達するように、さらに一次冷媒を圧縮させる。ここでは、高段側圧縮機25は、一次冷媒の吐出冷媒圧力が一次冷媒の超臨圧力を超える圧力になるまで圧縮するように、制御部11によって制御されている(点E)。
【0119】
高段側圧縮機25によって吐出された一次冷媒は、第1高圧管27aを通じて、第1高圧水熱交換器51内の第2高圧管27bに流入する。第1高圧水熱交換器51に流入した一次冷媒は、第5給湯ヒートポンプ管95eを通過している給湯用の水との間で熱交換を行うことで、85℃程度まで冷却される(点F)。一次冷媒は、臨界圧力を超えた状態を維持しながら放熱を行うため、連続的に温度変化が生じる。ここで、第1高圧水熱交換器51における一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、第1高圧水熱交換器51内の第2高圧管27bの出口近傍では、未だ十分に加熱されていない30℃程度の給湯用の水によって効果的に冷却される。
【0120】
第1高圧水熱交換器51を通過した一次冷媒は、第3高圧管27cを通じて、第2高圧水熱交換器52内の第4高圧管27dに流入する。第2高圧水熱交換器52に流入した一次冷媒は、第2高圧側分岐路68bを通過している暖房用二次冷媒としての水との間で熱交換を行うことで、35℃程度まで冷却される(点G)。ここで、第2高圧水熱交換器52における一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、第2高圧水熱交換器52内の第4高圧管27dの出口近傍では、ラジエータ61で放熱して冷えた状態の30℃程度の二次冷媒によって効果的に冷却される。
【0121】
第2高圧水熱交換器52を通過した一次冷媒は、第5高圧管27eを通じて、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fに流入する。第3高圧水熱交換器53に流入した一次冷媒は、第3給湯ヒートポンプ管95cを通過している給湯用の水との間で熱交換を行うことで、さらに冷却され、30℃程度となる(点H)。ここで、第3高圧水熱交換器53における一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fの出口近傍では、貯湯タンク91において混ざり合うことで市水の温度からわずかに上昇した程度である20℃程度の給湯用の水によって効果的に冷却される。そして、第3高圧水熱交換器53を通過した一次冷媒は、第7高圧管27gを通じて第3高圧ポイントHに到達する。
【0122】
ここでは、高圧水熱交換器50が3つの熱交換器に別れており、高圧水熱交換器50を流れる一次冷媒が両臨界状態であるために放熱過程において温度変化が生じており、かつ、暖房回路60を循環する二次冷媒としての水の温度変化範囲(30℃〜65℃)が給湯回路90における給湯用の水の温度変化範囲(20℃〜90℃)に含まれている。そして、この温度分布に対応させるように、高段側圧縮機25が吐出する一次冷媒のうち比較的高温状態である一次冷媒との熱交換および比較的低温状態である一次冷媒との熱交換、を給湯用の熱交換に割り当てて、中間温度状態である一次冷媒との熱交換を、暖房用の二次冷媒との熱交換に割り当てている。これにより、一次冷媒と給湯用の水との熱交換だけでなく一次冷媒と暖房用の水との熱交換のいずれにおいても、熱交換を行う流体同士の温度差を小さく抑えることができ、熱交換効率を向上させることができている。
【0123】
第3高圧ポイントHに到達した一次冷媒は、第8高圧管27hを通じて膨張弁5a側に向かう流れと、インジェクション路70側に向かう流れと、に分流される。ここでの分流程度は、制御部11が、インジェクション膨張弁73の弁開度を調節することにより制御される。インジェクション路70側に分流された一次冷媒は、第1インジェクション管72を通じた後、インジェクション膨張弁73において減圧され、23℃程度まで一次冷媒の温度が下がる(点Q)。
【0124】
インジェクション膨張弁73において減圧された一次冷媒は、第2インジェクション管74を通じて、エコノマイザ熱交換器7内の第3インジェクション管75に流入する。エコノマイザ熱交換器7に流入した一次冷媒は、第9高圧管27iを流れる30℃程度の一次冷媒との間で熱交換を行い、27℃程度まで加熱される(点R)。
【0125】
エコノマイザ熱交換器7内の第3インジェクション管75を通過した27℃程度の一次冷媒は、第4インジェクション管76を通じて、上述したインジェクション合流点Dにおいて、中間圧管23を流れている一次冷媒と合流する。
【0126】
第3高圧ポイントHに到達した一次冷媒のうち、インジェクション路70側に流れていかない30℃程度の一次冷媒は、第8高圧管27hを通じて、エコノマイザ熱交換器7内の第9高圧管27iに流入する。エコノマイザ熱交換器7内の第9高圧管27iに流入した30℃程度の一次冷媒は、上述したように、第3インジェクション管75を流れる27℃程度の一次冷媒との間で熱交換を行うことで、25℃程度までさらに冷却される(点I)。エコノマイザ熱交換器7内の第9高圧管27iを通過した一次冷媒は、第10高圧管27jを通じて第4高圧ポイントIに到達する。
【0127】
第4高圧ポイントIに到達した一次冷媒は、一次バイパス80側に向かう流れと、第11高圧管27k側に向かう流れと、に分流される。ここでの分流程度は、制御部11が、一次バイパス膨張弁5bの弁開度を制御することにより調節される。第11高圧管27kを流れた一次冷媒は、一次冷媒間熱交換器8内の第12高圧管27lに流入する。一次冷媒間熱交換器8内の第12高圧管27lに流入した25℃程度の一次冷媒は、第4低圧管20dを流れる−3℃程度の一次冷媒との間で熱交換を行い、20℃程度まで冷却される(点J)。
【0128】
一次冷媒間熱交換器8内の第12高圧管12を通過した一次冷媒は、第13高圧管27mを通じて、膨張弁5aまで流れる。膨張弁5aでは、制御部11によって弁開度が調節されることで、通過する一次冷媒の減圧程度が調節され、通過した一次冷媒の冷媒圧力が下がり、冷媒温度も−3℃程度まで下がる(点K)。ここでは、一次冷媒は、制御部11による減圧程度の調節によって、臨界圧力以下の圧力となるまで減圧され、気液二相状態となる。
【0129】
なお、ヒートポンプ回路10では、一次冷媒をエコノマイザ熱交換器7によって冷却させるだけでなく、さらに一次冷媒間熱交換器8によって冷却させることができる。そして、一次冷媒間熱交換器8を流れる一次冷媒の冷却において、ヒートポンプ回路10において最も低い温度の一次冷媒が流れている低段側圧縮機21の吸入側の一次冷媒を用いることができる。これにより、膨張弁5aを通過する一次冷媒の密度を上げることができ、ヒートポンプ回路10における一次冷媒の循環量を増大させることができている。
【0130】
膨張弁5aを通過した一次冷媒は、第1低圧管20aを通じて、第3低圧ポイントMまで流れていき、第6低圧管20fを流れてくる一次冷媒と合流する(点M)。
【0131】
第4高圧ポイントIに到達した一次冷媒のうち、第11高圧管27k側に流れていかない25℃程度の一次冷媒は、一次バイパス80側に流れていき、第14高圧管27nを通じて、一次バイパス膨張弁5bまで流れていく。一次バイパス膨張弁5bは、制御部11によって弁開度が調節されることで、通過する一次冷媒の減圧程度が調節され、通過した一次冷媒の冷媒圧力が下がり、冷媒温度も−3℃程度まで下がる(点L)。ここでも、点Kと同様に、一次冷媒は、制御部11による減圧程度の調節によって、臨界圧力以下の圧力となるまで減圧され、気液二相状態となる。
【0132】
一次バイパス膨張弁5bを通過した一次冷媒は、第6低圧管20fを通じて、第3低圧ポイントMまで流れていき、上述した第1低圧管20aを通じて流れてきた一次冷媒と合流する(点M)。
【0133】
第3低圧ポイントMで合流した−3℃程度の一次冷媒は、第2低圧管20bを通じて、蒸発器4に流入する。蒸発器4に流入した一次冷媒は、蒸発器4に対してファン4fによって積極的に供給される空気との間で熱交換を行う。蒸発器4での熱交換によって、気液二相状態の−3℃程度の一次冷媒は、温度を一定に維持したままで蒸発して(潜熱変化を行って)乾き度が増大していき、飽和状態に近い状態となる(点N)。
【0134】
蒸発器4を通過した一次冷媒は、第3低圧管20cを通じて、一次冷媒間熱交換器8内の第4低圧管20dに流入する。一次冷媒間熱交換器8内の第4低圧管20dを流れる−3℃程度の一次冷媒は、上述したように、第12高圧管27lを流れる25℃程度の一次冷媒との間で熱交換を行うことで、22℃程度まで加熱され、過熱度がついた状態となる(点A)。
【0135】
一次冷媒間熱交換器8内の第4低圧管20dを通過した一次冷媒は、過熱状態となって、低段側圧縮機21に吸入される。
【0136】
ヒートポンプ回路10では、以上のようにして、一次冷媒が循環している。
【0137】
<1−3>暖房回路60の運転
ラジエータ61が設置された空間を暖めるために、ラジエータ61には、65℃程度の二次冷媒としての水が供給されるように、制御部11が制御を行っている。
【0138】
以下、暖房用の二次冷媒の温度分布状態について、1つの具体例を挙げつつ説明する。
【0139】
ラジエータ61内を通過しながら放熱をした暖房用の二次冷媒としての水は、ラジエータ61の性能および暖房負荷の程度にもよるが、35℃程度の温度に下がって、暖房戻り管66を通じて、暖房分岐ポイントXまで流れていく。
【0140】
暖房分岐ポイントXでは、中間圧側分岐路67に向かう流れと、高圧側分岐路68側に向かう流れとに分けられる。
【0141】
暖房分岐ポイントXから中間圧側分岐路67側に向けて流れた二次冷媒は、第1中間圧側分岐路67aを通じて、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧側分岐路67bに流入していく。中間圧水熱交換器40内の第2中間圧側分岐路67bを流れる二次冷媒は、上述したように、第2中間圧管23bを通過する一次冷媒によって加熱されることで、30℃程度の二次冷媒の温度が65℃程度まで上げられる。なお、上述したように、中間圧水熱交換器40内での一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧側分岐路67bの出口近傍は、比較的高温である90℃程度の一次冷媒によって効率的に加熱される。そして、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧側分岐路67bを通過して65℃程度まで暖められた二次冷媒は、第3中間圧側分岐路67cを通過して、暖房合流ポイントYまで流れていく。
【0142】
暖房分岐ポイントXから高圧側分岐路68側に向けて流れた二次冷媒は、第1高圧側分岐路68aを通じて、第2高圧水熱交換器52内の第2高圧側分岐路68bに流入していく。第2高圧水熱交換器52内の第2高圧側分岐路68bを流れる二次冷媒は、上述したように、第4高圧管27dを通過する一次冷媒によって加熱されることで、30℃程度の二次冷媒の温度が65℃程度まで上げられる。なお、上述したように、第2高圧水熱交換器52内での一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、第2高圧水熱交換器52内の第2高圧側分岐路68bの出口近傍は、比較的高温である85℃程度の一次冷媒によって効率的に加熱される。そして、第2高圧水熱交換器52内の第2高圧側分岐路68bを通過して65℃程度まで暖められた二次冷媒は、第3高圧側分岐路68cを通過して、暖房合流ポイントYまで流れていく。
【0143】
暖房合流ポイントYでは、第3中間圧側分岐路67cを通過してきた二次冷媒と、第3高圧側分岐路68cを通過してきた二次冷媒と、が合流する。なお、制御部11が、暖房混合弁64における、中間圧側分岐路67側の弁開度と高圧側分岐路68側の弁開度とを調節することにより、中間圧側分岐路67側を流れる二次冷媒の流量と高圧側分岐路68側を流れる二次冷媒の流量とを調節することができる。これにより、制御部11は、暖房回路60を循環している二次冷媒が中間圧水熱交換器40側で加熱される程度と第2高圧水熱交換器52側で加熱される程度との比率を調節しつつ、暖房ポンプ63を通過する二次冷媒の流量を調節することで、暖房合流ポイントYにおいて合流した二次冷媒の温度がラジエータ61において要求される温度となるように制御することができる。
【0144】
このようにして、暖房合流ポイントYにおいて合流した65℃程度まで加熱された二次冷媒は、暖房往き管65を通じてラジエータ61まで供給される。暖房回路60では、以上のようにして二次冷媒が循環している。
【0145】
<1−4>給湯回路90の運転
貯湯タンク91内に90℃程度のお湯を溜められるように、制御部11は、給湯ポンプ92の流量制御を行っている。
【0146】
以下、給湯用の水の温度分布状態について、1つの具体例を挙げつつ説明する。
【0147】
市水が流入した貯湯タンク91の下方の比較的低温の水は、20℃程度の温度で給湯ヒートポンプ管95に向けて流れていく。
【0148】
第1給湯ヒートポンプ管95aおよび第2給湯ヒートポンプ管95bを通過した20℃程度の給湯用の水は、第3高圧水熱交換器53内の第3給湯ヒートポンプ管95cに流入していく。第3高圧水熱交換器53内の第3給湯ヒートポンプ管95cを流れる給湯用の水は、上述したように、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fを通過する35℃程度の一次冷媒によって加熱されることで、20℃程度の給湯用の水の温度が30℃程度まで上げられる。なお、上述したように、第3高圧水熱交換器53内での一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、第3高圧水熱交換器53内の第3給湯ヒートポンプ管95cの出口近傍は、比較的高温である35℃程度の一次冷媒によって効率的に加熱される。
【0149】
第3高圧水熱交換器53において30℃程度に暖められた給湯用の水は、第4給湯ヒートポンプ管95dを通過して、第1高圧水熱交換器51内の第5給湯ヒートポンプ管95eに流入する。第1高圧水熱交換器51内の第5給湯ヒートポンプ管95eを流れる給湯用の水は、上述したように、第1高圧水熱交換器51内の第2高圧管27bを通過する90℃程度の一次冷媒によって加熱されることで、30℃程度の給湯用の水の温度が90℃程度まで上げられる。なお、上述したように、第1高圧水熱交換器51内での一次冷媒と二次冷媒とは対向流形式で流れているため、第1高圧水熱交換器51内の第5給湯ヒートポンプ管95eの出口近傍は、比較的高温である90℃程度の一次冷媒によって効率的に加熱される。
【0150】
第1高圧水熱交換器51において90℃程度まで加熱された給湯用の水は、第6給湯ヒートポンプ管95fを通過して、貯湯タンク91の上方に流入する。
【0151】
このようにして、給湯回路90を給湯用の水が循環することで、貯湯タンク91内に溜められている給湯用の水の温度を上げていくことができる。
【0152】
<1−5>二次冷媒温度統一制御
上述のように、ヒートポンプ回路10については、制御部11は、暖房回路60の暖房負荷だけでなく給湯回路90の給湯負荷にも対応することができるような熱量を各回路に供給できるようにしつつ、サイクル効率をできるだけ良好に保つことができるように運転している。なお、暖房回路60については、具体的には、制御部11は、中間圧水熱交換器40に流れ込む一次冷媒の温度が、中間圧水熱交換器40に流れ込む暖房用の二次冷媒の温度よりも高温となるようにしつつ、第2高圧水熱交換器52に流れ込む一次冷媒の温度が、第2高圧水熱交換器52に流れ込む暖房用の二次冷媒の温度よりも高温となるようにしつつ、中間圧水熱交換器40に流れ込む一次冷媒の温度および第2高圧水熱交換器52に流れ込む一次冷媒の温度のいずれもが、ラジエータ61において要求される温度より高い温度となるように、低段側圧縮機21、高段側圧縮機25および膨張弁5a等の制御を行っている。
【0153】
そして、制御部11は、低段側圧縮機21の目標吐出温度がラジエータ61において要求される温度よりも高温となるようにしつつ、高段側圧縮機25の目標吐出温度から第1高圧水熱交換器51通過時に放出する熱を差し引いた後の温度がラジエータ61において要求される温度よりも高温となるように、制御を行っている。また、制御部11は、蒸発器4の設置環境に基づいて蒸発温度を定めた上で低段側圧縮機21の圧縮比と高段側圧縮機25の圧縮比ができるだけ小さな圧縮比で同等となるように、制御を行っている。そして、これらの目的に沿うように、制御部11は、具体的には、ヒートポンプ回路10の低段側圧縮機21、高段側圧縮機25、膨張弁5a、インジェクション膨張弁73、一次バイパス膨張弁5b、および、ファン4fの制御を行っている。なお、制御部11は、一次冷媒の温度が高温になりすぎると、熱交換を行っている暖房用の二次冷媒が流れる管内壁面や、熱交換を行っている給湯用の水の管内壁面に、スケール(湯垢等)が生じてしまうおそれがあるため、一次冷媒の温度が所定の高温制限値以下となるように制御される。
【0154】
以上のヒートポンプ回路10側のサイクル効率の良好な運転状態をできるだけ維持することができるようにしつつ、制御部11は、暖房回路60の第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度および第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度が同じ温度となるように、二次冷媒温度統一制御を行っている。そして、制御部11は、単に第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度とが統一されるように制御を行うだけでなく、その統一される温度がラジエータ61において要求されている温度と一致するように制御を行う。具体的には、制御部11は、暖房混合弁64の混合比率を制御することで中間圧側分岐路67を流れる暖房用の二次冷媒の流量と高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の流量との比率を調節する混合比率制御と、暖房ポンプ63の流量を制御することでラジエータ61に供給する暖房用の二次冷媒の流量を調節する流量制御と、によって、ラジエータ61において要求されている温度において統一させる。
【0155】
第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、を同じ温度とするために、制御部11は、中間圧側分岐路温度センサ67Tが検知する温度と、高圧側分岐路温度センサ68Tが検知する温度と、のうち低温側の二次冷媒の流量が下がって高温側の二次冷媒の流量が上がるように、暖房混合弁64の制御を行う。これにより、低温側の二次冷媒については、流量が下げられることで流速が遅くなり、二次冷媒が一次冷媒との熱交換において一次冷媒からの熱を受ける時間を長くすることができ、温度が上がることになる。他方、高温側の二次冷媒については、流量が上げられることで流速が早くなり、二次冷媒が一次冷媒との熱交換において一次冷媒からの熱を受ける時間を短くすることができ、温度が下がることになる。このようにして、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、は、その差が小さくなっていくことになる。
【0156】
なお、ここで、ラジエータ61において要求される温度とは、以下に述べるように、ある一定の幅を持った温度の値をいう。
【0157】
暖房回路60では、ユーザが必要とする暖房用の二次冷媒のラジエータ61での放熱量を設定入力することができる。そして、制御部11は、ユーザが要求するラジエータ61での放熱量を確保することができるように、暖房混合弁64と暖房ポンプ63とを制御する。具体的には、ラジエータ61において要求される放熱量を確保する制御として、暖房ポンプ63を通過する暖房用の二次冷媒の流量を増大させつつ暖房用の二次冷媒の温度を低めに抑える場合や、暖房ポンプ63を通過する暖房用の二次冷媒の流量を減少させつつ暖房用の二次冷媒の温度を高めにする場合等がある。すなわち、同一の熱量を確保する場合において、暖房ポンプ63の流量をある値まで増大させた場合に暖房用の二次冷媒の温度として必要となる温度は、暖房ポンプ63の流量をこのある値より少なくした場合に暖房用の二次冷媒の温度として必要となる温度よりも、低い温度となる。反対に、同一の熱量を確保する場合において、暖房ポンプ63の流量を他の値まで減少させた場合に暖房用の二次冷媒の温度として必要となる温度は、暖房ポンプ63の流量をこの他の値より多くした場合に暖房用の二次冷媒の温度として必要となる温度よりも、高い温度となる。さらに、ラジエータ61に供給される二次冷媒の温度は、ラジエータ61が設置されている周囲の空間の空気を暖めることを目的としているために、ラジエータ61の周囲温度(ラジエータ温度センサ61Tで検知される温度)よりも高温である必要がある。ラジエータ61において要求される温度とは、このようにラジエータ温度センサ61Tで検知される温度より高温であって、ラジエータ61において要求される放熱量を確保できる流量の範囲に対応する温度幅を持っている。なお、さらにラジエータ61自体の放熱性能を反映させて温度幅を限定してもよい。
【0158】
暖房往き管65をラジエータ61に向けて流れる暖房用の二次冷媒の温度は、中間圧側分岐路67を流れてきた暖房用の二次冷媒と、高圧側分岐路68を流れてきた暖房用の二次冷媒と、が暖房合流ポイントYにおいて合流した後の温度である。
【0159】
このため、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度と、が同じ温度となっている場合には、暖房合流ポイントYにおいて合流した後の二次冷媒の温度も合流前の温度と同じ温度となり、ラジエータ61に向けて供給される暖房用の二次冷媒の温度となる。
【0160】
(熱量増大処理)
上記二次冷媒温度統一制御を行いつつ、二次冷媒温度統一制御によって統一された温度が、ラジエータ61において要求される温度に満たない場合には、制御部11は、暖房ポンプ63の流量を下げる熱量増大制御を行う。
【0161】
これにより、中間圧側分岐路67を流れている二次冷媒の流速と、高圧側分岐路68を流れている二次冷媒の流速と、のいずれの流速についても下げることができる。これにより、中間圧側分岐路67を流れている二次冷媒が一次冷媒から熱を受ける時間も、高圧側分岐路68を流れている二次冷媒が一次冷媒から熱を受ける時間も、いずれの時間も長くすることができる。これにより、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、をラジエータ61において要求される温度において統一させることができ、ラジエータ61における熱負荷に対応することができるようになる。
【0162】
(熱量低減処理)
上記二次冷媒温度統一制御を行いつつ、二次冷媒温度統一制御によって統一された温度が、ラジエータ61において要求される温度を超えてしまう場合には、制御部11は、暖房ポンプ63の流量を上げる熱量減少制御を行う。
【0163】
これにより、中間圧側分岐路67を流れている二次冷媒の流速と、高圧側分岐路68を流れている二次冷媒の流速と、のいずれの流速についても上げることができる。これにより、中間圧側分岐路67を流れている二次冷媒が一次冷媒から熱を受ける時間も、高圧側分岐路68を流れている二次冷媒が一次冷媒から熱を受ける時間も、いずれの時間も短く抑えることができる。これにより、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、をラジエータ61において要求される温度において統一させることができ、ラジエータ61における熱負荷に対応することができるようになる。
【0164】
<1−6>第1実施形態の特徴
第1実施形態のヒートポンプシステム1では、制御部11は、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度とが統一されるように制御を行っている。ここで、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒および第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒は、いずれもラジエータ61まで到達するまでの間、より低い温度である周囲に対して放熱をしてしまい、放熱ロスが生じる。しかし、第1実施形態のヒートポンプシステム1では、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度だけでなく、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度についても、高くなりすぎない温度とすることができ、周囲温度との差異を小さく抑えることができる。このため、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度だけでなく、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度についても、周囲への放熱ロスを小さく抑えることができている。
【0165】
さらに、制御部11は、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度とが、ラジエータ61において要求されている温度において統一されるように制御を行っている。このため、暖房合流ポイントYにおいて合流した後の暖房用の二次冷媒の温度がラジエータ61において要求される温度になるように加熱もしくは冷却することによる温度調節を行う必要が無い。これにより、このような温度調節ヒータもしくはクーラを不要にすることができている。
【0166】
なお、第1実施形態のヒートポンプシステム1におけるヒートポンプ回路10では、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒は、中間圧水熱交換器40を通過する際に暖房用の二次冷媒によって冷却され、インジェクション路70を流れてくる一次冷媒によってもさらに冷却されている。このため、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の密度を上げることができ、ヒートポンプ回路10の効率を向上させることができる。
【0167】
さらに、高段側圧縮機25に吸入される一次冷媒を冷やすことで暖房用の二次冷媒が得る熱は、ラジエータ61における暖房負荷に利用することができる。
【0168】
また、給湯用の水を要求される水温に上げるために必要な熱を高圧水熱交換器50を流れる一次冷媒から得た場合であっても、なお高圧水熱交換器50を流れる一次冷媒の温度が暖房用の二次冷媒を加熱できる温度範囲となっている。このため、ヒートポンプ回路10の運転効率を良好にすることができる範囲内において、高圧水熱交換器50の一部である第2高圧水熱交換器52を流れる一次冷媒の熱を暖房用の二次冷媒を加熱するために有効利用することができている。これにより、ヒートポンプ回路10の運転効率を良好にしつつ、高圧水熱交換器50を流れる一次冷媒の熱を有効利用することができている。
【0169】
また、例えば、暖房用の二次冷媒もしくは給湯用の水を、中間圧水熱交換器40で暖めた後に高圧水熱交換器50でさらに暖めようとする場合には、高圧水熱交換器50に流入しようとする暖房用の二次冷媒もしくは給湯用の水はすでに暖められているため、高圧水熱交換器50を流れる一次冷媒の有する熱を十分に有効利用することができない。すなわち、モリエル線図上で一次冷媒の放熱工程におけるエンタルピ変化を十分にとることができない。同様に、暖房用の二次冷媒もしくは給湯用の水を、高圧水熱交換器50で暖めた後に中間圧水熱交換器40で暖めようとする場合には、中間圧水熱交換器40に流入しようとする暖房用の二次冷媒もしくは給湯用の水はすでに暖められているため、中間圧水熱交換器40を流れる一次冷媒の有する熱を十分に利用することができず、多段圧縮形式のヒートポンプ回路10の運転効率を向上させることが困難になる場合がある。これに対して、第1実施形態のヒートポンプシステム1では、ヒートポンプ回路10において、ラジエータ61において冷やされた二次冷媒を分割して、中間圧側分岐路67を通過させつつ中間圧水熱交換器40で行う加熱と、高圧側分岐路68を通過させつつ第2高圧水熱交換器52で行う加熱と、に分けられている。これにより、ラジエータ61で冷やされた後であって未だ暖められていない状態の二次冷媒を中間圧水熱交換器40および第2高圧水熱交換器52に供給することができる。これにより、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の冷却効果を向上させつつ、中間圧管23を流れる一次冷媒の熱を十分に有効利用することができている。
【0170】
<2>第2実施形態
第2実施形態のヒートポンプシステム201は、図4に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1において一次バイパス80(第14高圧管27n、一次バイパス膨張弁5b、第6低圧管20f)が設けられることなく、循環する一次冷媒の全てが一次冷媒間熱交換器8を通過するシステムである。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0171】
ヒートポンプ回路10を循環する一次冷媒の全てを一次冷媒間熱交換器8において熱交換させても能力および効率に問題が生じにくい使用環境の場合には、部品点数を削減ができるだけでなく、一次バイパス膨張弁5bの制御が不要になる。
【0172】
<3>第3実施形態
第3実施形態のヒートポンプシステム301は、図5に示すように、中間圧管23に対する一次冷媒のインジェクションが行われず、中間圧管23を流れる一次冷媒の冷却は中間圧水熱交換器40において全て行われるシステムである。すなわち、第3実施形態のヒートポンプシステム301は、第1実施形態のヒートポンプシステム1において、エコノマイザ熱交換器7、インジェクション路70(インジェクション膨張弁73、第1インジェクション管72、第2インジェクション管74、第3インジェクション管75、第4インジェクション管76)、第8高圧管27h、第9高圧管27i、第10高圧管27j、第3中間圧管23c、および、第4中間圧管23dが設けられることなく、代わりに第33中間圧管323cおよび第38高圧管327hが設けられたシステムである。第33中間圧管323cは、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧管23bと、高段側圧縮機25の吸入側とを接続している。第38高圧管327hは、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fと、第4高圧ポイントIとを接続している。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0173】
このヒートポンプシステム301では、高段側圧縮機25が吸入する冷媒が湿り状態となってしまうほど冷却される状態を回避することができ、部品点数を少なく抑えて回路構成を単純化させることができる。
【0174】
また、このヒートポンプシステム301では、インジェクション路70が設けられていないため、中間圧水熱交換器40を通過する一次冷媒の温度が二次冷媒温度統一制御によって低下し過ぎたとしても、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒が湿り状態とならない範囲で高圧水熱交換器50に向かう一次冷媒の量を増大させることができるようになる。
【0175】
<4>第4実施形態
第4実施形態のヒートポンプシステム401は、図6に示すように、インジェクション路70側への分岐がエコノマイザ熱交換器7の下流側に配置されたシステムである。すなわち、第4実施形態のヒートポンプシステム401は、第1実施形態のヒートポンプシステム1において、第3高圧ポイントHの代わりに第43高圧ポイント4Hを、第7高圧管27gの代わりに第47高圧管427gを、第8高圧管27hの代わりに第48高圧管427hを、第9高圧管27iの代わりに第49高圧管427iを、第10高圧管27jの代わりに第410高圧管427jを、それぞれ設けたシステムである。第43高圧ポイント4Hは、ヒートポンプ回路10における一次冷媒の流れ方向において、エコノマイザ熱交換器7の下流側であって第4高圧ポイントIの上流側に設けられており、インジェクション路70が分岐している。第47高圧管427gは、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fと、エコノマイザ熱交換器7内の第48高圧管427hと、を接続している。第49高圧管427iは、エコノマイザ熱交換器7内の第48高圧管427hと、第43高圧ポイント4Hと、を接続している。第410高圧管427jは、第43高圧ポイント4Hと、第4高圧ポイントIと、を接続している。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0176】
このヒートポンプシステム401では、第1実施形態のヒートポンプシステム1のインジェクション路70を流れる一次冷媒と比較して、インジェクション路70を流れる一次冷媒の温度をより低温にすることができるため、インジェクション合流ポイントDでの冷却効果を向上させることができる。
【0177】
<5−1>第5実施形態
第5実施形態のヒートポンプシステム501は、図7に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1において第3高圧水熱交換器53を取り除いたシステムである。すなわち、第5実施形態のヒートポンプシステム501は、第1実施形態のヒートポンプシステム1において、第2給湯ヒートポンプ管95b、第3給湯ヒートポンプ管95c、第4給湯ヒートポンプ管95dの代わりに第52給湯ヒートポンプ管595bを、第5高圧管27e、第6高圧管27f、第7高圧管27gの代わりに第55高圧管527eを、それぞれ設けたシステムである。ここでは、第1実施形態のヒートポンプシステム1において用いられている給湯中間温度センサ95Tが不要になっている。なお、第52給湯ヒートポンプ管595bは、給湯ポンプ92と、第1高圧水熱交換器51内の第5給湯ヒートポンプ管95eの給湯用の水の流れにおける上流側端部と、を接続している。第55高圧管527eは、第2高圧水熱交換器52内の第4高圧管27dの一次冷媒の流れ方向における下流側端部と、第3高圧ポイントHと、を接続している。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0178】
このヒートポンプシステム501では、例えば、貯湯タンク91内に蓄えられている給湯用の水の温度が上昇しており、給湯入水温度センサ94Tが検知する給湯用の水の温度が、第2高圧水熱交換器52内の第4高圧管27dの出口を通過する一次冷媒の温度よりも高い場合であっても、第3高圧ポイントHに向かう一次冷媒を暖めてしまうことがなく、給湯用の水を冷やしてしまうことがない。このため、給湯負荷が小さい状況においても、効率の良い運転が可能となっている。
【0179】
<5―2>第5実施形態の変形例
(A)
図8に示すように、上記第5実施形態のヒートポンプシステム501において、第4実施形態で説明したインジェクション路470を適用しつつ、第47高圧管427gの代わりに上述の第55高圧管527eを用いたヒートポンプシステム501Aとしてもよい。
【0180】
この場合には、さらに第4実施形態のヒートポンプシステム401に類似した効果を得ることができる。
【0181】
(B)
図9に示すように、上記第5実施形態のヒートポンプシステム501において、第3実施形態で説明したようにインジェクション路70を削除しつつ、上述の第55高圧管527eの接続先を第4高圧ポイントIとしたヒートポンプシステム501Bとしてもよい。
【0182】
この場合には、さらに第3実施形態のヒートポンプシステム301に類似した効果を得ることができる。
【0183】
(C)
図10に示すように、上記第5実施形態の変形例(B)のヒートポンプシステム501Bにおいて、第2実施形態で説明したように一次バイパス80を削除したヒートポンプシステム501Cとしてもよい。
【0184】
この場合には、さらに第2実施形態のヒートポンプシステム201に類似した効果を得ることができる。
【0185】
<6−1>第6実施形態
第6実施形態のヒートポンプシステム601は、図11に示すように、インジェクション路70を有していない第3実施形態のヒートポンプシステム301において、気液分離インジェクション路630を設けたシステムである。気液分離インジェクション路630は、分離前気液管631、気液分離器632、分離後液管633、分離後気管634、分離後気管開閉弁635、および、気液分離膨張弁605を有している。分離前気液管631は、第3低圧ポイントMから気液分離器632の上方の気相空間まで伸びている。気液分離器632は、分離前気液管631から流れ込んでくる一次冷媒を上方空間における気相領域と、下方空間における液相領域と、に分離する。分離後液管633は、気液分離器632の液相領域に存在している一次冷媒を気液分離膨張弁605まで導く。気液分離膨張弁605では、通過する一次冷媒の圧力をさらに下げる。分離後気管634は、気液分離器632の気相領域に存在している一次冷媒をインジェクション合流ポイントDまで導く。分離後気管開閉弁635は、分離後気管634における一次冷媒の通過を許可する状態もしくは許可しない状態とを切り換えることができる。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0186】
このヒートポンプシステム601では、膨張弁5aおよび/または一次バイパス膨張弁5bにおける一次冷媒の減圧は、中間圧管23を流れる一次冷媒と同等の臨界圧力より低い圧力まで下げられることで、気液二相状態となる。このうち液状態の一次冷媒は、気液分離膨張弁605において低圧管20を流れる一次冷媒の圧力まで下げられる。そして、分離後気管634は気液分離器632の気相領域から伸びているため、分離後気管634には、液状態の一次冷媒が混ざり込みにくく、気体状態の一次冷媒が流れることになる。これにより、インジェクション合流ポイントDで中間圧管23を流れる一次冷媒と合流した後において、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒が湿り状態になりにくい。これにより、高段側圧縮機25が吸入する冷媒密度を高めて効率を上げつつ、高段側圧縮機25での液圧縮を防止することが可能になっている。なお、膨張弁5aにおける一次冷媒の減圧では、低圧管20を流れている一次冷媒の圧力まで下げられることなく、中間圧管23を流れている一次冷媒の圧力の程度までしか下げられない。このため、分離後気管634を流れる一次冷媒の温度が下がり過ぎることによって生じうる高段側圧縮機25の液圧縮の発生を抑制することができる。また、中間圧水熱交換器40を通過する一次冷媒の温度が二次冷媒温度統一制御によって低下し過ぎたとしても、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒が湿り状態とならない範囲で高圧水熱交換器50に向かう一次冷媒の量を増大させることができるようになる。
【0187】
<6―2>第6実施形態の変形例
(A)
図12に示すように、上記第6実施形態のヒートポンプシステム601において、第5実施形態で説明したように第3高圧水熱交換器53を有していないヒートポンプシステム601Aとしてもよい。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0188】
<7>第7実施形態
第7実施形態のヒートポンプシステム701は、図13に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1においてインジェクション合流ポイントDの位置を、低段側圧縮機21の吐出側と中間圧水熱交換器40内の第2中間圧管23bの下流側端部とを接続する第1中間圧管23aの途中であるインジェクション合流ポイント7Dとしたシステムである。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0189】
このヒートポンプシステム701では、例えば、高段側圧縮機25の吐出冷媒温度として目標温度が得られるように高段側圧縮機25の圧縮比が上げられつつこの高段側圧縮機25の圧縮比と同等の圧縮比で低段側圧縮機21を運転させて駆動効率を上げようとする場合に、低段側圧縮機21の吐出冷媒温度が、中間圧水熱交換器40において加熱される暖房用の二次冷媒にとって高すぎるようになる場合がある。このような場合であっても、インジェクション合流ポイント7Dを第1中間圧管23aの途中に設けることで、暖房用二次冷媒の温度の上がり過ぎを抑制することが可能になる。
【0190】
また、このヒートポンプシステム701においても、インジェクション路70を通過してくる一次冷媒がインジェクション合流ポイントDで合流した後であって、中間圧水熱交換器40を通過した後の、高段側圧縮機25が吸入しようとする一次冷媒の温度および圧力を、高段吸入圧力センサ24Pおよび高段吸入温度センサ24Tが検知する値といて、制御部11が把握して、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒が湿り状態になることを抑制する制御を行うことができる。
【0191】
<8>第8実施形態
第8実施形態のヒートポンプシステム801は、図14に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1におけるエコノマイザ熱交換器7と一次冷媒間熱交換器8との順序を逆にしたシステムである。すなわち、第8実施形態のヒートポンプシステム801は、第1実施形態のヒートポンプシステム1における第3高圧ポイントHの代わりに第3低圧ポイントMの下流側における第83中間圧ポイント8Hを設け、この第83中間圧ポイント8Hからインジェクション路870を分岐させたシステムである。第810高圧管827jは、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fの下流側端部と、第4高圧ポイントIと、を接続している。第87高圧管827gは、第3低圧ポイントMと、第83中間圧ポイント8Hと、を接続している。第88高圧管827hは、第83中間圧ポイント8Hと、エコノマイザ熱交換器7内の第89高圧管827iの上流側端部と、を接続している。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0192】
このヒートポンプシステム801では、一次冷媒間熱交換器8では、エコノマイザ熱交換器7で冷やされる前の比較的暖かい一次冷媒によって、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒を暖めることができる。これにより、中間圧水熱交換器40を通過する一次冷媒の温度が二次冷媒温度統一制御によって低下し過ぎたとしても、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒が湿り状態とならない範囲で高圧水熱交換器50に向かう一次冷媒の量を増大させることができるようになる。
【0193】
<9>第9実施形態
第9実施形態のヒートポンプシステム901は、図15に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1における第2高圧水熱交換器52においても、給湯用の水を温めるようにしたシステムである。すなわち、第9実施形態のヒートポンプシステム901は、第1実施形態のヒートポンプシステム1における第4給湯ヒートポンプ管95dの代わりに、第95上流接続管995x、第95給湯ヒートポンプ管995d、および、第95下流接続管995yを、それぞれ設け、第95上流接続管995xを通過する給湯用の水の温度を検知する上流接続温度センサ95Txおよび第95下流接続管995yを通過する給湯用の水の温度を検知する下流接続温度センサ95Tyを設けたシステムである。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0194】
このヒートポンプシステム901では、例えば、第2高圧水熱交換器52において、第4高圧管27dから放出される熱のうち第2高圧側分岐路68bを流れる暖房用の二次冷媒が吸収しきれない熱を、第95給湯ヒートポンプ管995dを流れる給湯用の水が吸収することができるため、第4高圧管27dから放出される熱のロスを小さく抑えて有効利用することができる。また、一次冷媒の有する熱を暖房用の二次冷媒と給湯用の水との両方が同時に受け取る部分が設けられることになるため、給湯用の水を要求される水温まで加熱するのに必要な熱交換器の大きさをコンパクトにすることができる。
【0195】
<10>第10実施形態
第10実施形態のヒートポンプシステム1xは、図16に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1において、給湯回路90を取り除くようにして構成されたシステムである。すなわち、第14実施形態のヒートポンプシステム5xは、第1実施形態のヒートポンプシステム1における第1高圧水熱交換器51と第3高圧水熱交換器53と給湯回路90とを取り除き、第1高圧管27aと第2高圧管27bと第3高圧管27cの代わりに第14上流高圧管127aを設け、第5高圧管27eと第6高圧管27fと第7高圧管27gの代わりに第14下流高圧管127eを設けシステムである。第14上流高圧管127aは、高段側圧縮機25の吐出側と、第2高圧水熱交換器52内の第4高圧管27dの上流側端部と、を接続している。第14下流高圧管127eは、第2高圧水熱交換器52内の第4高圧管27dの下流側端部と、第3高圧ポイントHと、を接続している。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0196】
このヒートポンプシステム5xでは、給湯回路90が設けられていない場合であっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0197】
<11−1>第11実施形態
第11実施形態のヒートポンプシステム2xは、図17に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1において給湯回路90を流れる給湯用の水についても、暖房用の二次冷媒と同様に、高圧水熱交換器50側だけでなく中間圧水熱交換器40においても一次冷媒との間で熱交換を行うようにしたシステムである。すなわち、第11実施形態のヒートポンプシステム2xは、中間圧水熱交換器40を通過した一次冷媒と給湯用の水との間で熱交換を行わせる第2中間圧水熱交換器153を備えている。第2分岐給湯ヒートポンプ管195bは、第2給湯ヒートポンプ管95bの途中で分岐した後に、第2中間圧水熱交換器153の下流側端部まで伸びている。第2中間圧水熱交換器153では、第2分岐給湯ヒートポンプ管195bを介して第3分岐給湯ヒートポンプ管195cに流入する給湯用の水と、中間圧水熱交換器40を通過した後に第3中間圧管23cの一部である第11中間圧管123cに流入する一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる。第2中間圧水熱交換器153内の第3分岐給湯ヒートポンプ管195cを通過した給湯用の水は、第4分岐給湯ヒートポンプ管195dを通じて、分岐給湯混合弁193まで流れ、第4給湯ヒートポンプ管95dを通過してきた給湯用の水と合流する。分岐給湯混合弁193において合流した給湯用の水は、合流給湯連絡管196を通じて、第1高圧水熱交換器51内の第5給湯ヒートポンプ管95eに流入する。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0198】
このヒートポンプシステム2xでは、例えば、貯湯タンク91からヒートポンプ回路10側に流れ出る給湯用の水の温度が、市水の温度である常温に近い状態である場合には、中間圧水熱交換器40内の第2中間圧管23bを通過しながら冷却された後の一次冷媒であっても、高段側圧縮機25で液圧縮が生じない範囲で、さらに冷却したほうが効率が上がる場合がある。このような場合には、第11実施形態のヒートポンプシステム2xでは、給湯用の冷たい水を、高圧水熱交換器50側だけでなく、中間圧水熱交換器40の下流側と高段側圧縮機25の吸入側との間を流れる一次冷媒の熱を利用して加熱することができる。
【0199】
このようにすることで、上述した二次冷媒温度統一制御によって、ヒートポンプ回路10のサイクル効率を多少悪化させてしまうことがあるような場合であっても、制御部11は、さらに、分岐給湯混合弁193を制御することで第4分岐給湯ヒートポンプ管195dの流量と第4給湯ヒートポンプ管95dの流量とを調節することで、ヒートポンプ回路10のサイクル効率の悪化を小さく抑えることができる。
【0200】
例えば、上述した二次冷媒温度統一制御によって暖房回路60の中間圧側分岐路67の流量が減少することによりヒートポンプ回路10のサイクル効率が多少悪化する場合には、制御部11は、分岐給湯混合弁193を制御することで第4分岐給湯ヒートポンプ管195dの流量を増大させて、ヒートポンプ回路10のサイクル効率の悪化を小さく抑えることができる。
【0201】
<11―2>第11実施形態の変形例
(A)
上記第11実施形態のヒートポンプシステム2xでは、低段側圧縮機21から高段側圧縮機25に向けて一次冷媒が流れている中間圧管23において、暖房用の二次冷媒との間での熱交換(中間圧水熱交換器40)だけでなく、給湯用の水との間での熱交換(第2中間圧水熱交換器153)を行う場合について、例に挙げて説明した。
【0202】
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、以下のような熱交換が可能なヒートポンプシステムであってもよい。
【0203】
例えば、低段側圧縮機21から高段側圧縮機25に向けて一次冷媒が流れている中間圧管23において、第1実施形態の高圧水熱交換器50における一次冷媒と暖房用の二次冷媒と給湯用の水との間での熱交換のように、3カ所で熱交換を行うことができるようにしてもよい。この場合においても、高圧水熱交換器50と同様に、給湯用の水と中間圧管23を流れる一次冷媒との熱交換は、暖房用の二次冷媒と一次冷媒との熱交換が行われている上流側と下流側との2カ所に別れて行われるようにすることが好ましい。
【0204】
(B)
また、給湯用の水については、高圧水熱交換器50における一次冷媒との熱交換を行わせることなく、低段側圧縮機21から高段側圧縮機25に向けて一次冷媒が流れている中間圧管23において熱交換を行うようにしてもよい。
【0205】
<12>第12実施形態
第12実施形態のヒートポンプシステム3xは、図18に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1において、暖房回路60においてバイパス路が設けられたシステムである。すなわち、第12実施形態のヒートポンプシステム3xは、第1実施形態のヒートポンプシステム1における暖房回路60において、暖房戻り管66の途中の暖房バイパス分岐ポイントZと、暖房合流ポイントYと、を接続する暖房バイパス路69をさらに設け、第1実施形態における暖房混合弁64の代わりに第12暖房混合弁164を設けたシステムである。第12暖房混合弁164では、暖房バイパス路69から流れてくるラジエータ61で放熱を終えたばかりの冷たい暖房用の二次冷媒と、中間圧側分岐路67を介して流れてくる暖められた暖房用の二次冷媒と、高圧側分岐路68を介して流れてくる暖められた暖房用の二次冷媒と、の混合比率が、制御部11の指示により調節される。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0206】
上記第1実施形態のヒートポンプシステム1では、上述した二次冷媒温度統一制御を行いつつ、さらに熱量減少処理を行ったとしても、ラジエータ61において要求される熱量を超える熱量をラジエータ61に対して流してしまうことになる場合がある。このようにラジエータ61に対する熱量が過剰になりそうな状況となっても、第12実施形態のヒートポンプシステム3xでは、制御部11は、第12暖房混合弁164を操作して、暖房バイパス路69を暖房合流ポイントYに向けて流れてくる暖房用の二次冷媒の流量を調節することができる。これにより、ラジエータ61において要求されている温度を超えている温度の二次冷媒と、ラジエータ61において放熱を終えた後のラジエータ61において要求されている温度未満の温度の二次冷媒と、が混合される。制御部11は、第12暖房混合弁164において、これらの混合比率を調節することで、混合後の二次冷媒の温度がラジエータ61において要求されている温度となるように調節する。
【0207】
これにより、高段側圧縮機25における液圧縮の発生を抑制しつつ、ラジエータ61において要求されている温度の二次冷媒をラジエータ61に対して供給することができるようになる。
【0208】
<13>第13実施形態
第13実施形態のヒートポンプシステム4xは、図19に示すように、第1実施形態のヒートポンプシステム1において、エコノマイザ熱交換器7および第3高圧ポイントHが、第3低圧ポイントと、一次冷媒間熱交換器8に向かう流れと一次バイパス80に向かう流れとで分岐する部分と、によって挟まれるように構成されたシステムである。すなわち、第13実施形態のヒートポンプシステム4xは、第1実施形態のヒートポンプシステム1における第4高圧ポイントIが変更され、第3高圧ポイントHの上流側であって第3高圧水熱交換器53よりも下流側の第13高圧ポイント13Iとなっている、第13一次バイパス80xおよび第13インジェクション路70xを備えたシステムである。第7高圧管127gは、第3高圧水熱交換器53内の第6高圧管27fの下流側端部と、第13高圧ポイント13Iと、を接続している。バイパス上流エコノマイザ高圧管127nは、第13高圧ポイント13Iと、第3高圧ポイントHと、を接続している。バイパス下流エコノマイザ高圧管127jは、エコノマイザ熱交換器7内の第9高圧管27iの下流側端部と、一次バイパス膨張弁5bと、の間を接続している。他の構成は上記第1実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。
【0209】
このヒートポンプシステム3xでは、例えば、膨張弁5aに向かう一次冷媒を、エコノマイザ熱交換器7によって冷却させる流路と、一次冷媒間熱交換器8によって冷却させる流路と、に別れているため、どちらでどれだけ一次冷媒を冷却させるかを調節することができるようになる。
【0210】
<14>上記各実施形態について適用可能な変形例
上記第1実施形態から第13実施形態において各ヒートポンプシステムを具体的に説明した。しかし、本発明は、これに限られるものではく、発明の要旨を変更しない範囲で、各実施形態のヒートポンプシステムを以下に述べるような形態としたものも、本発明に含まれる。
【0211】
<14−1>
上記各実施形態では、一次冷媒として二酸化炭素を用いた場合について例に挙げて説明した。
【0212】
しかし、上記いずれの実施形態においても、一次冷媒として、二酸化炭素以外の冷媒であるエチレン、エタンや酸化窒素等を採用してもよい。この場合、採用された冷媒としては、高段側圧縮機25の吐出冷媒圧力が超臨圧力を超えて用いられ、かつ、各圧縮機の駆動力を小さく抑えることができる冷媒が好ましい。
【0213】
<14−2>
上記各実施形態では、暖房回路60においては、二次冷媒としての水が循環する場合について例に挙げて説明した。
【0214】
しかし、上記いずれの実施形態においても、二次冷媒としては、水に限られず、他の熱媒体としてブライン等を用いてもよい。
【0215】
<14−3>
上記各実施形態では、低段側圧縮機21と高段側圧縮機25とがそれぞれ設けられている場合について例に挙げて説明した。
【0216】
しかし、上記いずれの実施形態においても、低段側圧縮機21と高段側圧縮機25とにおいて共通の駆動軸が採用されている、いわゆる一軸二段、もしくは、一軸多段タイプの圧縮機構が設けられていてもよい。この場合には、各圧縮機構において180度の位相差を設けることで、駆動効率を上げることが可能になる。
【0217】
<14−4>
上記各実施形態では、低段側圧縮機21と高段側圧縮機25とが直列に接続された場合について例に挙げて説明した。
【0218】
しかし、上記いずれの実施形態においても、3つ以上の圧縮機構が直列に接続された形態を用いてもよい。その場合には、各圧縮機構の間を流れる一次冷媒の熱を用いて熱負荷処理を行うようにしてもよい。また、圧縮機構は、2つ以上の直列接続回路が設けられていれば、さらに他の圧縮機構を並列もしくは直列に設けてもよい。
【0219】
<14−5>
上記各実施形態では、暖房回路60の中間圧側分岐路67および高圧側分岐路68を流れる二次冷媒の温度を、ラジエータ61において要求される温度において一致させるように制御する場合について例に挙げて説明した。
【0220】
しかし、上記いずれの実施形態においても、ヒートポンプ回路10におけるサイクル効率の好適化を、ラジエータ61において要求される熱量の供給よりも、絶対的に優先するようにしてもよい。この場合において、ヒートポンプ回路10のサイクル効率を良好に維持するためにラジエータ61への熱量の供給が不足する場合が生じうる。この場合には、図20に示すように、暖房回路60の第3高圧側分岐路68cを含む下流側もしくは第3中間圧側分岐路67cを含む下流側からラジエータ61までの間において、通過する暖房用の二次冷媒を加熱するための外部熱源部60Aを備えたヒートポンプシステム5xとしてもよい。この場合には、蒸発器4の設置されている環境の変化や暖房負荷の変化もしくは給湯負荷の変化が生じることでヒートポンプ回路10のサイクル効率を良好に維持するために暖房負荷に対応できなくなる状況が生じた場合であっても、ヒートポンプ回路10のサイクル効率を良好に維持したままで、暖房負荷に対応することができるようになる。この外部熱源部60Aと同様の熱供給部を、給湯回路90にのみ設けてもよいし、暖房回路60および給湯回路90の両方に設けてもよい。
【0221】
また、ヒートポンプ回路10のサイクル効率を良好に維持するためにラジエータ61への熱量の供給が過剰となる場合が生じうる。この場合には、図21に示すように、暖房回路60の第3高圧側分岐路68cを含む下流側もしくは第3中間圧側分岐路67cを含む下流側からラジエータ61までの間において、通過する暖房用の二次冷媒を冷却するための外部冷却源部60Bを備えたヒートポンプシステム6xとしてもよい。この外部冷却源部60Bとしては、例えば、外部の常温の市水が流れている給水管94の一部を給水分岐弁94Bおよび給水分岐路194によってバイパスさせて、常温の市水と、暖房往き管65を流れる暖房用の二次冷媒と、の間で熱交換を行わせることによって暖房往き管65を流れる二次冷媒の冷却を行うようにしてもよい。この場合には、蒸発器4の設置されている環境の変化や暖房負荷の変化もしくは給湯負荷の変化が生じることでヒートポンプ回路10のサイクル効率を良好に維持するために暖房負荷に対応できなくなる状況が生じた場合であっても、ヒートポンプ回路10のサイクル効率を良好に維持したままで、暖房負荷に対応することができるようになる。なお、給水分岐弁94Bを用いた場合には、暖房回路60の二次冷媒に対してヒートポンプ回路10が与えすぎた熱を、給水用の熱として回収することで、ヒートポンプシステムとしての効率を上げることもできる。この外部冷却源部60Bと同様の熱供給部を、給湯回路90にのみ設けてもよいし、暖房回路60および給湯回路90の両方に設けてもよい。
【0222】
<14−6>
上記各実施形態では、暖房回路60のラジエータ61において要求される温度や、給湯回路90において貯湯タンク91に流入する第6給湯ヒートポンプ管95fを流れる給湯用の水について要求される温度と、ヒートポンプ回路10の中間圧水熱交換器40や高圧水熱交換器50を流れる一次冷媒の温度と、の関係については特に限定しない場合について例に挙げて説明した。
【0223】
しかし、上記いずれの実施形態においても、中間圧水熱交換器40を流れる一次冷媒の温度が、暖房回路60のラジエータ61において要求される温度を超えるように、制御部11が、膨張弁5aの弁開度や、低段側圧縮機21の駆動周波数や、高段側圧縮機25の駆動周波数等を制御することを前提とした条件下で、ヒートポンプ回路10のサイクル効率の向上を図るようにしてもよい。この場合には、暖房回路60は、中間圧水熱交換器40側である中間圧側分岐路67側を流れる二次冷媒が得る熱のみによって、ラジエータ61において要求される温度の二次冷媒を作りだすことも可能になる。
【0224】
<14−7>
上記各実施形態では、ヒートポンプ回路10のサイクル効率を上げるために低段側圧縮機21の圧縮比と高段側圧縮機25の圧縮比とを同等にする場合について例に挙げて説明した。
【0225】
しかし、上記いずれの実施形態においても、必ずしも低段側圧縮機21の圧縮比と高段側圧縮機25の圧縮比とが同じになる場合に限られず、例えば、両圧縮比の差が少なくなるように制御することも含まれる。
【0226】
<14−8>
例えば、上記実施形態で説明した二次冷媒温度統一制御を行う場合において、統一される温度がラジエータ61において要求される温度を超えている場合に、制御部11が、暖房ポンプ63の流量を上げて熱交換可能な時間を短くするように制御することがある。しかし、このように暖房ポンプ63の流量を上げるように制御してしまうと、中間圧水熱交換器40における一次冷媒がより冷却されるようになるため、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の過熱度が小さくなったり、湿り状態になったりするおそれがある。
【0227】
このような場合には、制御部11は、例えば、低段側圧縮機21の目標吐出温度を変更することなく、高段側圧縮機25の目標吐出温度を変更することなく、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を上げる低段吸入過熱度制御を行うようにしてもよい。
【0228】
例えば、図22のモリエル線図において点線で示すように、ヒートポンプ回路10のサイクルが実行されるようになり、暖房ポンプ63の流量を上げたとする。ここで、制御部11は、低段吸入過熱度制御を行うことで、低段側圧縮機21の目標吐出温度を変更することなく、高段側圧縮機25の目標吐出温度を変更することなく、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を上げる。これにより、図22のモリエル線図において実線で示すようにヒートポンプ回路10のサイクルが実行されるようになる。ここで、図22のモリエル線図において、高段側圧縮機25が一次冷媒を吸入するポイントについて、点線のサイクルと実線のサイクルとを比較すると、実線のサイクルの方が、飽和蒸気線から離れる方向に移動しており、過熱度が増している。これにより、低段側圧縮機21の吸入冷媒密度が多少減少するものの、暖房負荷の増大等の周囲条件の変化によって高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の過熱度が小さくなっていったとしても、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の状態は、飽和蒸気線から離れる方向に移動することで過熱度が増している状態にある。このため、高段側圧縮機25において液圧縮が生じにくくなっている。また、このように図22のモリエル線図において実線で示すサイクルが行われたとしても、低段側圧縮機21の目標吐出温度および高段側圧縮機25の目標吐出温度については変更されていない。このため、中間圧水熱交換器40における熱交換による暖房用の二次冷媒の加熱、および、高圧水熱交換器50における熱交換による暖房用の二次冷媒の加熱についても、十分に行うことができている。また、低段側圧縮機21の圧縮比および高段側圧縮機25の圧縮比を共に小さくすることができているため、ヒートポンプ回路10の効率を向上させることもできている。
【0229】
なお、上述した低段吸入過熱度制御は、例えば、上記実施形態および変形例で示したヒートポンプシステムのうち、一次バイパス80および一次バイパス膨張弁5bを有しているヒートポンプ回路10においては、この一次バイパス膨張弁5bの弁開度を制御部11が制御することにより一次冷媒間熱交換器8における熱交換の程度を調節できる。このようにして、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を調節することができる。
【0230】
<14−9>
上記各実施形態では、低段側圧縮機21の目標吐出温度と高段側圧縮機25の目標吐出温度とが同じである場合等を例に挙げて説明した。
【0231】
しかし、上記いずれの実施形態においても、低段側圧縮機21の目標吐出温度と高段側圧縮機25の目標吐出温度とが異なるように、制御部11が、低段側圧縮機21の駆動周波数、高段側圧縮機25の駆動周波数、および、膨張弁5aの弁開度等を制御するようにしてもよい。この場合に、低段側圧縮機21の目標吐出温度を下げる、低段吐出温度低下制御を行ってもよい。
【0232】
例えば、図23のモリエル線図において点線で示すように、ヒートポンプ回路10のサイクルが実行され、暖房ポンプ63の流量が上げられたとする。ここで、制御部11は、低段吐出温度低下制御を行うことで、低段側圧縮機21の目標吐出温度を下げて、高段側圧縮機25の目標吐出温度を変更することなく、中間圧水熱交換器40内を流れる暖房用の二次冷媒の流量を下げつつ第2高圧水熱交換器52を流れる暖房用の二次冷媒の流量を上げる。ここで、低段側圧縮機21の目標吐出温度は、暖房回路60のラジエータ61において要求されている温度以下とならないように、例えば、65℃とする。これにより、図23のモリエル線図において実線で示すようにヒートポンプ回路10のサイクルが実行されるようになる。ここで、図23のモリエル線図において、高段側圧縮機25が一次冷媒を吸入するポイントについて、点線のサイクルと実線のサイクルとを比較すると、実線のサイクルの方が、飽和蒸気線から離れる方向に移動しており、過熱度が増している。これにより、暖房ポンプ63の流量が増大されて高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の過熱度が小さくなっていくことがあったとしても、高段側圧縮機25が吸入する一次冷媒の状態は、飽和蒸気線から離れる方向に移動することで過熱度が増している状態にあるため、高段側圧縮機25において液圧縮が生じにくくなっている。また、このように図23のモリエル線図において実線で示すサイクルが行われたとしても、高段側圧縮機25の目標吐出温度については変更されていない。また、低段側圧縮機21の目標吐出温度は下げられてはいるが、中間圧水熱交換器40を通過する暖房用の二次冷媒の流量も同様に下げられているため、負荷に対応することが可能な状況を維持することができる。また、低段側圧縮機21の圧縮比および高段側圧縮機25の圧縮比を共に小さくすることができているため、ヒートポンプ回路10の効率を向上させることもできている。
【0233】
なお、上述した低段吐出温度低下制御は、例えば、膨張弁5aの弁開度、低段側圧縮機21の駆動周波数、および、高段側圧縮機25の駆動周波数等を制御部11が制御することで実現できる。
【0234】
<14−10>
上記各実施形態では、ヒートポンプシステムが使用されるラジエータ61の周囲温度環境の条件については、特に限定しない場合について例に挙げて説明した。
【0235】
しかし、上記いずれの実施形態においても、ラジエータ61で放熱した二次冷媒の温度が、一次冷媒としての二酸化炭素の臨界温度と臨界温度より5度程度低い温度との間の温度範囲条件であることという条件を、ヒートポンプシステムの使用環境条件として限定してもよい。
【0236】
このような使用環境下でヒートポンプシステムが用いられる場合には、一次冷媒としての二酸化炭素の臨界温度を下回る温度の熱負荷に対して使用されることになる。このため、臨界圧力を超えた状態の一次冷媒が臨界温度よりも低い温度の二次冷媒との間で高圧水熱交換器50において熱交換を行うことができ、モリエル線図上において一次冷媒の等温線の傾斜がなだらかになっているエリアで放熱処理を行うことができる。このため、一次冷媒の放熱工程の開始と放熱工程の終了との間におけるエンタルピ差を増大させた運転を行うことができる。
【0237】
<14−11>
上記各実施形態では、中間圧側分岐路温度センサ67Tおよび高圧側分岐路温度センサ68Tが検知する温度に基づいて、制御部11が暖房混合弁64や暖房ポンプ63の流量制御を行い、暖房回路60の第3中間圧側分岐路67cおよび第3高圧側分岐路68cにおける二次冷媒の流量については把握できなくてもかまわないシステムを例に挙げて説明した。
【0238】
しかし、上記いずれの実施形態においても、図24に示すように、中間圧側分岐路温度センサ67Tおよび高圧側分岐路温度センサ68Tの代わりに、中間圧側分岐路67を流れる暖房用の二次冷媒の流量を把握する中間圧側分岐路流量計67Qと、高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の流量を把握する高圧側分岐路流量計68Qと、をそれぞれ設けたヒートポンプシステム7xとしてもよい。
【0239】
このヒートポンプシステム7xでは、制御部11は、中間圧側分岐路流量計67Qが把握する流量および高圧側分岐路流量計68Qが把握する流量に基づいて、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度との差が少なくなるように、暖房混合弁64および/または暖房ポンプ63の流量の制御を行う。なお、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と、が同一温度となるように制御部11が制御してもよい。
【0240】
制御部11は、中間圧水熱交換器40を流れる一次冷媒の温度を中間圧温度センサ23Tによって把握し、中間圧水熱交換器40を流れる一次冷媒の流量を低段側圧縮機21の駆動周波数、中間圧温度センサ23Tの検知温度および高段吸入圧力センサ24Pの検知圧力によって把握する。また、制御部11は、第1中間圧側分岐路67aを通過する暖房用の二次冷媒の温度を暖房戻り温度センサ66Tが検知する温度によって把握する。制御部11は、さらに、中間圧側分岐路流量計67Qによって中間圧側分岐路67を流れている二次冷媒の流量を把握する。これにより、制御部11は、中間圧水熱交換器40における一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差および各流量に基づいて、暖房用の二次冷媒が得る熱量を算出し、第3中間圧側分岐路67cを通過する暖房用の二次冷媒の温度として予想される値を算出する。
【0241】
制御部11は、高圧温度センサ27T、高圧圧力センサ27Pおよび高段側圧縮機25の駆動周波数等と、給湯中間温度センサ95Tおよび給湯ポンプ92の流量等から、第2高圧水熱交換器52を流れる一次冷媒の温度および流量を把握する。また、制御部11は、第1高圧側分岐路68aを通過する暖房用の二次冷媒の温度を暖房戻り温度センサ66Tが検知する温度によって把握する。制御部11は、さらに、高圧側分岐路流量計68Qによって高圧側分岐路68を流れている二次冷媒の流量を把握する。これにより、制御部11は、第2高圧水熱交換器52における一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差および各流量に基づいて、暖房用の二次冷媒が得る熱量を算出し、第3高圧側分岐路68cを通過する暖房用の二次冷媒の温度として予想される値を算出する。
【0242】
制御部11は、以上のようにして算出された第3中間圧側分岐路67cを通過する暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを通過する暖房用の二次冷媒の温度との差が小さくなるように、暖房混合弁64および/または暖房ポンプ63を制御する。ここでの算出された第3中間圧側分岐路67cを通過する暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを通過する暖房用の二次冷媒の温度とを用いた、具体的な制御の内容については、上記実施形態において説明した内容と同様である。
【0243】
このようにして、中間圧側分岐路温度センサ67Tおよび高圧側分岐路温度センサ68Tが設けられていないヒートポンプシステム7xであっても、第3中間圧側分岐路67cを通過する暖房用の二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを通過する暖房用の二次冷媒の温度と、の差を小さくすることができる。
【0244】
<14−12>
なお、図25に示すように、上記変形例<14−11>において説明したように高圧側分岐路流量計68Qを設ける代わりに、往き管流量計65Qを設けたヒートポンプシステム8xとしてもよい。
【0245】
往き管流量計65Qは、暖房往き管65を通過する暖房用の二次冷媒の流量を把握することができる。この中間圧側分岐路流量計67Qおよび往き管流量計65Qによっても、往き管流量計65Qから把握できる暖房往き管65の流量から、中間圧側分岐路流量計67Qが把握する流量を差し引くことで、高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の流量を把握することができる。他の制御方法および算出方法は、上記変形例<14−11>と同様にすることができる。
【0246】
また、往き管流量計65Qは、高圧側分岐路流量計68Qの代わりとしてではなく、低圧側分岐路流量計67Qを設ける代わりとして設けるようにしてもよい。
【0247】
<14−13>
なお、図26に示すように、上記各実施形態において説明した高圧側分岐路温度センサ68Tの代わりに、往き管温度センサ65Tを設けたヒートポンプシステム9xとしてもよい。
【0248】
往き管温度センサ65Tは、暖房往き管65を通過する暖房用の二次冷媒の温度を把握することができる。この中間圧側分岐路温度センサ67Tおよび往き管温度センサ65Tによっても、往き管温度センサ65Tから把握できる暖房往き管65の温度から、暖房往き管65を流れる暖房用の二次冷媒の有する熱量を算出し、中間圧側分岐路温度センサ67Tが把握する温度から得られる中間圧側分岐路67を流れる暖房用の二次冷媒が有する熱量を差し引くことで、高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の熱量を把握することができる。そして、高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の流量が把握できる場合には、このようにして把握される高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の熱量から、高圧側分岐路68を流れる二次冷媒の温度を把握することができる。このようにして、中間圧側分岐路67を流れる暖房用の二次冷媒の温度と、高圧側分岐路68を流れる暖房用の二次冷媒の温度を把握した後の制御については、上記各実施形態において説明した内容と同様とすることができる。
【0249】
また、往き管温度センサ65Tは、高圧側分岐路温度センサ68Tの代わりとしてではなく、低圧側分岐路温度センサ67Tを設ける代わりとして設けるようにしてもよい。
【0250】
なお、上述のように、往き管温度センサ65Tが設けられている場合には、制御部11は、往き管温度センサ65Tが検知する暖房用の二次冷媒の温度と、他の温度センサ(例えば、中間圧側分岐路温度センサ67T)が把握する暖房用の二次冷媒の温度と、の差が少なくなるように、暖房混合弁64と暖房ポンプ63を制御するようにしてもよい。この場合であっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0251】
<14−14>
上記各実施形態では、二次冷媒温度統一制御において、第3中間圧側分岐路67cおよび第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度を統一させる場合について例に挙げて説明した。
【0252】
しかし、本発明は、上記いずれの実施形態においても、完全に同一の温度に統一させる場合に限られず、単に、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度と、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度と、の差を小さくするような制御であってもよい。
【0253】
さらに、第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度との差を小さくするのではなく、この差が所定値以下であるという条件を満たすように、制御を行うようにしてもよい。
【0254】
<14−15>
上記各実施形態では、二次冷媒温度統一制御を行う場合において暖房混合弁64における流量比率を制御する場合について例に挙げて説明した。
【0255】
しかし、上記いずれの実施形態においても、暖房混合弁64における流量比率の制御によって第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度との差を小さくするという制御に限られず、例えば、制御部11が、暖房ポンプ63の流量を上げるもしくは暖房ポンプ63の流量を下げる制御によって、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度との差を小さくするようにする場合も本発明に含まれる。
【0256】
例えば、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度の方が第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度よりも低い場合において、第2高圧水熱交換器52において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差のほうが、中間圧水熱交換器40において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差よりも大きい状況では、制御部11が暖房ポンプ63の流量を下げる制御を行うことで、温度差を小さくすることも可能になる。この場合には、暖房ポンプ63の流量を下げることによっていずれの熱交換器においても一次冷媒から熱を受ける時間が長くなるが、この長時間化による温度上昇効果が大きいのは、一次冷媒と二次冷媒との温度差が大きい第2高圧水熱交換器52側を通過する暖房用の二次冷媒ということになるためである。
【0257】
また、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度の方が第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度よりも高い場合において、第2高圧水熱交換器52において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差のほうが、中間圧水熱交換器40において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差よりも大きい状況では、制御部11が暖房ポンプ63の流量を上げる制御を行うことで、温度差を小さくすることも可能になる。この場合には、暖房ポンプ63の流量を上げることによっていずれの熱交換器においても一次冷媒から熱を受ける時間が短くなるが、この短時間化による温度下降効果が大きいのは、一次冷媒と二次冷媒との温度差が大きい第2高圧水熱交換器52側を通過する暖房用の二次冷媒ということになるためである。
【0258】
また、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度の方が第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度よりも低い場合において、第2高圧水熱交換器52において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差のほうが、中間圧水熱交換器40において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差よりも小さい状況では、制御部11が暖房ポンプ63の流量を上げる制御を行うことで、温度差を小さくすることも可能になる。この場合には、暖房ポンプ63の流量を上げることによっていずれの熱交換器においても一次冷媒から熱を受ける時間が短くなるが、この短時間化による温度下降効果が大きいのは、一次冷媒と二次冷媒との温度差が大きい中間圧水熱交換器40側を通過する暖房用の二次冷媒ということになるためである。
【0259】
また、第3高圧側分岐路68cを流れる二次冷媒の温度の方が第3中間圧側分岐路67cを流れる二次冷媒の温度よりも高い場合において、第2高圧水熱交換器52において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差のほうが、中間圧水熱交換器40において熱交換を行う一次冷媒と暖房用の二次冷媒との温度差よりも小さい状況では、制御部11が暖房ポンプ63の流量を下げる制御を行うことで、温度差を小さくすることも可能になる。この場合には、暖房ポンプ63の流量を下げることによっていずれの熱交換器においても一次冷媒から熱を受ける時間が長くなるが、この長時間化による温度上昇効果が大きいのは、一次冷媒と二次冷媒との温度差が大きい中間圧水熱交換器40側を通過する暖房用の二次冷媒ということになるためである。
【0260】
<14−16>
上記各実施形態では、中間圧水熱交換器40を流れる一次冷媒の温度と、第2高圧水熱交換器52を流れる一次冷媒の温度と、の関係については特に制御を行わない場合について例に挙げて説明した。
【0261】
しかし、上記いずれの実施形態においても、例えば、第1高圧水熱交換器51を通過する給湯用の水の流量を調節することにより、第2高圧水熱交換器52に流入する一次冷媒の温度を調節して、中間圧水熱交換器40に流入する一次冷媒の温度に近づくように、制御部11が給湯ポンプ92を制御するようにしてもよい。
【0262】
例えば、低段側圧縮機21の目標吐出温度よりも高段側圧縮機25の目標吐出温度の方が高く設定されている場合に、高段側圧縮機25から吐出される一次冷媒の温度を下げなければ、中間圧水熱交換器40の一次冷媒の入口温度と第2高圧水熱交換器52の一次冷媒の入口温度とを近づけることができない。このような場合に、制御部11が、給湯中間温度センサ95Tが検知する温度に基づいて、第1高圧水熱交換器51において一次冷媒を冷却させるために必要となる給湯用の水が供給されるように給湯ポンプ92を制御してもよい。
【0263】
この場合には、暖房用の二次冷媒の出口側に相当する中間圧水熱交換器40の一次冷媒の入口近傍の温度と、暖房用の二次冷媒の出口に相当する第2高圧水熱交換器52の一次冷媒の入口近傍の温度とが近い値になっているため、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度とを、近づけることが容易になる。例えば、暖房ポンプ63の流量を下げるような場合には、温度の統一がより容易になる。また、第3中間圧側分岐路67cを流れる暖房用の二次冷媒の温度と第3高圧側分岐路68cを流れる暖房用の二次冷媒の温度とを、近づけることが容易になるため、二次冷媒温度統一制御によって生じるヒートポンプ回路10におけるサイクル効率の悪化の程度を小さく抑えることができる。
【0264】
<14−17>
上記各実施形態では、ヒートポンプ回路10側の制御については特段明示していない場合について例に挙げて説明した。
【0265】
しかし、暖房回路60における二次冷媒温度統一制御が行われることにより、運転状況が変化するが、ヒートポンプ回路10のサイクル効率の悪化を抑制できたり、改善できたりする場合がある。
【0266】
ここで、例えば、図27のモリエル線図に示すように、暖房負荷に対応させるために低段側圧縮機21の目標吐出温度を上げることになった場合には、低段側圧縮機21における圧縮比が大きくなる傾向がある(点線から一点鎖線への変化参照)。また、これに伴って圧縮比を揃えようとしている高段側圧縮機25の圧縮比も大きくなってしまう。このため、必要駆動力が増大してしまい、消費エネルギが増大してしまうことになる。
【0267】
これに対して、例えば、図28のモリエル線図に示すように、制御部11が、点線のサイクルから実線のサイクルに運転状況を変更させるようにしてもよい(点線から実線への変化参照)。すなわち、低段側圧縮機21の目標吐出温度が上げられる場合に、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度が大きくなるようにする低段吸入過熱度制御を行うようにしてもよい。これにより、低段側圧縮機21の目標吐出温度を達成するために必要となる低段側圧縮機21の圧縮比を小さく抑えることができる。これに付随して、高段側圧縮機25の圧縮比も小さく抑えることができる。これにより、必要駆動力をより小さく抑えることが可能になる。
【0268】
他方、低段側圧縮機21の目標吐出温度が下げられるようにサイクル状態を変更する場合には、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度が小さくなるようにする低段吸入過熱度制御を行うようにしてもよい。これにより、低段側圧縮機21の圧縮比の増大を抑えることにより高段側圧縮機25の圧縮比の増大も抑えつつ、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の比体積を下げることができる。このため、圧縮比の増大を抑えつつ、循環量を確保して、能力を増大させることが可能になる。
【0269】
なお、上述した制御は、例えば、上記実施形態および変形例で示したヒートポンプシステムのうち、一次バイパス80および一次バイパス膨張弁5bを有しているヒートポンプ回路10においては、この一次バイパス膨張弁5bの弁開度を制御部11が制御することにより一次冷媒間熱交換器8における熱交換の程度を調節できる。このようにして、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を調節することができる。
【0270】
<14−18>
上記各実施形態では、ヒートポンプ回路10側の制御については特段明示していない場合について例に挙げて説明した。
【0271】
しかし、暖房回路60における二次冷媒温度統一制御が行われることにより、運転状況が変化するが、ヒートポンプ回路10のサイクル効率の悪化を抑制できたり、改善できたりする場合がある。
【0272】
ここで、例えば、暖房負荷が小さくなること等でラジエータ61において暖房用の二次冷媒の温度があまり低下しない場合には、中間圧水熱交換器40を流れる一次冷媒の温度として、高温が必要とされなくなる場合がある。
【0273】
これに対して、例えば、図29のモリエル線図に示すように、制御部11が、点線のサイクルから実線のサイクルに運転状況を変更させるようにしてもよい(点線から実線への変化参照)。すなわち、低段側圧縮機21の目標吐出温度を下げつつ、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度も下げるように制御を行うようにしてもよい。これにより、高段側圧縮機25の圧縮比と低段側圧縮機21の圧縮比が同程度になり、低圧側圧縮機21および高段側圧縮機25の駆動力を小さく抑えた効率的な運転が可能になる。そして、このように低段側圧縮機21の目標吐出温度を下げたとしても、ラジエータ61において要求されている熱負荷が小さくなっている状況なので、負荷に対応することもできている。これにより、負荷変動に対応しつつ圧縮駆動力をより低減させることができる。
【0274】
なお、上述した制御は、例えば、上記実施形態および変形例で示したヒートポンプシステムのうち、一次バイパス80および一次バイパス膨張弁5bを有しているヒートポンプ回路10においては、この一次バイパス膨張弁5bの弁開度を制御部11が制御することにより一次冷媒間熱交換器8における熱交換の程度を調節できる。このようにして、低段側圧縮機21が吸入する一次冷媒の過熱度を調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本発明の冷凍装置は、二次冷媒による熱負荷の処理においてサイクル効率を向上させることが可能になるため、多段圧縮式の圧縮要素を備えたヒートポンプ回路を用いて熱負荷を処理するにヒートポンプシステムに適用した場合に特に有用である。
【符号の説明】
【0276】
1 ヒートポンプシステム
4 蒸発器
4f ファン
5a 膨張弁
5b 一次バイパス膨張弁
7 エコノマイザ熱交換器
8 一次冷媒間熱交換器
10 ヒートポンプ回路
20 低圧管
20a〜f 第1〜6低圧管
20P 低圧圧力センサ
20T 低圧温度センサ
21 低段側圧縮機
23 中間圧管
23a〜d 第1〜4中間圧管
23T 中間圧温度センサ
24P 高段吸入圧力センサ
24T 高段吸入温度センサ
25 高段側圧縮機
27 高圧管
27a〜n 第1〜14高圧管
27P 高圧圧力センサ
27T 高圧温度センサ
40 中間圧水熱交換器
50 高圧水熱交換器
51〜53 第1〜3高圧水熱交換器
60 暖房回路
61 ラジエータ
61T ラジエータ温度センサ
62 分流機構(第1流量調節機構)
63 暖房ポンプ(流量調節部)
64 暖房混合弁
65 暖房往き管
65T 往き管温度センサ
65Q 往き管流量計
66 暖房戻り管
66T 暖房戻り温度センサ
67 中間圧側分岐路
67T 中間圧側分岐路温度センサ
67Q 中間圧側分岐路流量計
67a〜c 第1〜3中間圧側分岐路
68 高圧側分岐路
68T 高圧側分岐路温度センサ
68Q 高圧側分岐路流量計
69 暖房バイパス路(第1熱負荷バイパス路)
70 インジェクション路
72 第1インジェクション管
74 第2インジェクション管
75 第3インジェクション管
76 第4インジェクション管
73 インジェクション膨張弁
80 一次バイパス
90 給湯回路
91 貯湯タンク
92 給湯ポンプ
93 給湯混合弁
94 給水管
94T 給湯入水温度センサ
95 給湯ヒートポンプ管
95a〜f 第1〜6給湯ヒートポンプ管
95T 給湯中間温度センサ
98 給湯管
98T 給湯出湯温度センサ
99 給湯バイパス管
164 第12暖房混合弁(第1熱負荷バイパス流量調節機構)
A 吸入ポイント
B 低段吐出ポイント
C 中間圧水熱交換器通過ポイント
D インジェクション合流ポイント
E 高段吐出ポイント
F 第1高圧ポイント
G 第2高圧ポイント
H 第3高圧ポイント
I 第4高圧ポイント
J 第5高圧ポイント
K 第1低圧ポイント
L 第2低圧ポイント
M 第3低圧ポイント
N 第4低圧ポイント
Q インジェクション中間圧ポイント
R エコノマイザ熱交後ポイント
X 暖房分岐ポイント
Y 暖房合流ポイント
W 給水分岐ポイント
Z 給湯合流ポイント
【先行技術文献】
【特許文献】
【0277】
【特許文献1】特開2004―177067号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも低段側圧縮機構(21)、高段側圧縮機構(25)、膨張機構(5a、5b)、および、蒸発器(4)を有しており、一次冷媒が循環するヒートポンプ回路(10)と、
第1分岐部分(X)、第2分岐部分(Y)、前記第1分岐部分(X)と前記第2分岐部分(Y)とを接続する第1分岐路(67)、前記第1分岐路(67)と合流することなく前記第1分岐部分(X)と前記第2分岐部分(Y)とを接続する第2分岐路(68)、および、第1熱負荷処理部(61)を有しており、第1流体が循環する第1熱負荷回路(60)と、
前記低段側圧縮機構(21)の吐出側から前記高段側圧縮機構(25)の吸入側に向けて流れる前記一次冷媒と、前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体と、の間で熱交換を行わせる第1熱交換器(40)と、
前記高段側圧縮機構(25)から前記膨張機構(5)に向けて流れる前記一次冷媒と、前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体と、の間で熱交換を行わせる第2熱交換器(52)と、
前記第1分岐路(67)における前記第1流体の流量と、前記第2分岐路(68)における前記第1流体の流量と、の少なくともいずれか一方の流量を調節可能な第1流量調節機構(62)と、
前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と、前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と、の比が1となる場合を含む所定温度条件を満たす状態を維持させるように、若しくは、
前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と、前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と、の差を小さくさせるように、
前記第1流量調節機構(62)を操作する流量調節制御を行う制御部(11)と、
を備え、
前記第1熱負荷回路(60)において熱負荷処理された後の状態のままの前記第1流体が、前記第1熱交換器(40)での熱交換に利用され、かつ、前記第2熱交換器(52)での熱交換に利用される、
ヒートポンプシステム(1)。
【請求項2】
前記制御部(11)は、
前記第1熱交換器(40)に流れ込む前記一次冷媒の温度が、前記第1熱交換器(40)に流れ込む前記第1流体の温度以上の温度になるようにしつつ、
前記第2熱交換器(52)に流れ込む前記一次冷媒の温度が、前記第2熱交換器(52)に流れ込む前記第1流体の温度以上の温度になるようにしつつ、
前記第1熱交換器(40)に流れ込む前記一次冷媒の温度および前記第2熱交換器(52)に流れ込む前記一次冷媒の温度の両方が、前記第1熱負荷処理部(61)において要求される第1熱負荷対応温度以上の温度となるように、
前記低段側圧縮機構(21)および前記高段側圧縮機構(25)の出力を制御する、
請求項1に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項3】
前記第1熱負荷回路(60)は、前記第1熱負荷処理部(61)と前記第1分岐部分(X)の間の部分と前記第1熱負荷処理部(61)と前記第2分岐部分(Y)の間の部分とを接続する第1熱負荷バイパス回路(69)、および、前記第1熱負荷バイパス回路(69)を通過する前記第1流体の流量を調節可能な第1熱負荷バイパス流量調節機構(164)をさらに有しており、
前記制御部(11)は、前記流量調節制御において、前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度の目標値および前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度の目標値が、前記第1熱負荷対応温度を超える温度になるように制御を行い、
前記制御部(11)は、前記第1熱負荷処理部(61)に供給される前記第1流体の温度が前記第1熱負荷対応温度となるように、前記第1熱負荷バイパス流量調節機構(164)を操作して前記第1熱負荷バイパス回路(69)を通過する前記第1流体の流量を調節する、
請求項2に記載のヒートポンプシステム(3x)。
【請求項4】
前記制御部(11)は、前記流量調節制御において、前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度の目標値および前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度の目標値が、前記第1熱負荷対応温度となるように制御する、
請求項2に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項5】
前記制御部(11)は、前記流量調節制御において、
前記低段側圧縮機構(21)における圧縮比と、前記高段側圧縮機構(25)における圧縮比と、の比が1となる場合を含む所定圧縮比条件を満たした状態を維持させるように、若しくは、
前記低段側圧縮機構(21)における圧縮比と、前記高段側圧縮機構(25)における圧縮比と、の差を小さくさせるように、
前記低段側圧縮機構(21)、前記高段側圧縮機構(25)および前記膨張機構(5)の少なくともいずれか1つを制御する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項6】
前記制御部(11)は、前記流量調節制御を行う場合に、前記低段側圧縮機構(21)の前記一次冷媒の吐出温度が上がる場合に、前記低段側圧縮機構(21)が吸入する前記一次冷媒の過熱度を上げる低段吸入過熱度制御を行う、
請求項5に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項7】
前記ヒートポンプ回路(10)は、前記低段側圧縮機構(21)が吸入する前記一次冷媒と、前記第2熱交換器(52)を通過した後であって前記膨張機構(5)に向かって流れる前記一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる一次冷媒間熱交換器(8)をさらに有しており、
前記制御部(11)は、前記一次冷媒間熱交換器(8)を用いて前記低段吸入過熱度制御を行う、
請求項6に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項8】
前記制御部(11)は、前記流量調節制御を行う場合に、前記第1熱負荷処理部(61)から前記第1熱交換器(40)および前記第2熱交換器(52)に向けて流れる前記第1流体の温度が上昇した場合には、前記低段側圧縮機構(21)の前記一次冷媒の吐出温度の目標値を低下させつつ、前記低段側圧縮機構(21)が吸入する前記一次冷媒の過熱度を小さくする負荷低減時制御を行う、
請求項5から7のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項9】
前記第2熱負荷部(91)を有しており、第2流体が循環する第2熱負荷回路(90)と、
前記第2熱負荷回路(90)を循環する前記第2流体と、前記高段側圧縮機構(25)から前記第2熱交換器(52)に向かう途中の前記一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる第3熱交換器(51)と、
をさらに備えた、
請求項8に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項10】
前記第2熱負荷回路(90)を通過する前記第2流体のうち前記第2熱負荷処理部(91)から前記第3熱交換器(51)に向かう前記第2流体と、前記第2熱交換器(52)を通過した後であって前記膨張機構(5)に向かう途中の前記一次冷媒と、の間で熱交換を行わせる第4熱交換器(53)をさらに備えた、
請求項9に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項11】
前記制御部(11)は、前記低段側圧縮機構(21)が吐出する前記一次冷媒の温度の目標値が前記高段側圧縮機構(25)が吐出する前記一次冷媒の温度の目標値よりも低い場合に、前記第3熱交換器(51)を通過する前記一次冷媒の温度が前記低段側圧縮機構(21)が吐出する前記一次冷媒の温度の目標値に近づくように、前記第2熱負荷回路(90)を循環する前記第2流体の循環量を調節する、
請求項9または10に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項12】
前記第2熱負荷処理部(91)は、給湯用のタンク(91)であり、
前記第2流体は、給湯用の水である、
請求項9から11のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項13】
前記制御部(11)は、前記流量調節制御では、前記第1流量調節機構(62)を操作することにより、前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度とのうち、温度が低い方の流量を下げる、
請求項2から12のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項14】
前記第1流量調節機構(62)は、前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体の流量と前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体の流量との比率を調節可能であり、
前記制御部(11)は、前記流量調節制御では、前記第1流量調節機構(62)を操作することにより、前記第1熱負荷処理部に供給する前記第1流体の流量を一定に保ちつつ、前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度とのうち、温度が低い方の流量比率を下げる、
請求項13に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項15】
前記第1流量調節機構(62)は、前記第1熱負荷処理部(61)に供給する前記第1流体の流量を調節可能であり、
前記制御部(11)は、前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度とのうち温度が低い方の流量比率が小さい場合において、前記流量調節制御では、前記第1流量調節機構(62)を操作することにより前記第1熱負荷処理部(61)に供給する前記第1流体の流量を下げる、
請求項13に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項16】
前記第1流量調節機構(62)は、前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体の流量と前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体の流量との比率を調節する比率調節部(64)と、前記第1熱負荷処理部(61)に供給する前記第1流体の流量を調節する流量調節部(63)とを含んでおり、
前記制御部(11)は、前記流量調節制御では、前記第1流量調節機構(62)を操作することにより、前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度と前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度とのうち、前記第1熱負荷対応温度を超えている方の流量を増大させ、および/または、前記第1熱負荷対応温度に満たない方の流量を低下させるとともに、
前記制御部(11)は、前記第1熱負荷処理部(61)に供給する前記第1流体の温度が前記第1熱負荷対応温度を超えている場合において、前記第1熱負荷処理部(61)に供給する前記第1流体の温度が上がれば上がるほど前記第1熱負荷処理部(61)に供給する前記第1流体の流量を下げる、
請求項13に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項17】
前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度を把握する第1分岐路温度検知手段(67T)と
前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度を把握する第2分岐路温度検知手段(68T)と、
をさらに備えた、
請求項1から16のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項18】
前記第1分岐路(67)のうち前記第1熱交換器(40)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度および前記第2分岐路(68)のうち前記第2熱交換器(52)を通過した部分を流れる前記第1流体の温度の少なくともいずれか一方を把握する分岐部分温度検知手段(67T)と、
前記第1分岐路(67)を通過した前記第1流体と前記第2分岐路(68)を通過した前記第1流体とが合流した後に前記第1熱負荷処理部(61)に向けて流れる前記第1流体の温度を把握する合流部分温度検知手段(65T)と、
をさらに備えた、
請求項1から16のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項19】
前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体の流量を把握する第1分岐路流量検知手段(67Q)と、
前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体の流量を把握する第2分岐路流量検知手段(68Q)と、
をさらに備えた、
請求項1から16のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1x)。
【請求項20】
前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体の流量および前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体の流量の少なくともいずれか一方を把握する分岐部分流量検知手段(67Q)と、
前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体と前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体とが合流した後に前記第1熱負荷処理部(61)に向けて流れる前記第1流体の流量を把握する合流部分流量検知手段(65Q)と、
をさらに備えた、
請求項1から16のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(2x)。
【請求項21】
前記第1熱交換器(40)では、前記低段側圧縮機構(21)の吐出側から前記高段側圧縮機構(25)の吸入側に向けて流れる前記一次冷媒と、前記第1分岐路(67)を流れる前記第1流体とは、対向流の関係にあり、
前記第2熱交換器(52)では、前記高段側圧縮機構(25)から前記膨張機構(5)に向けて流れる前記一次冷媒と、前記第2分岐路(68)を流れる前記第1流体とは、対向流の関係にある、
請求項1から20のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項22】
前記第1熱負荷処理部(61)は、配置されている対象空間の空気を暖める暖房用熱交換器(61)であり、
前記第1流体は、二次冷媒である、
請求項1から21のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項23】
前記低段側圧縮機構(21)および前記高段側圧縮機構(25)は、それぞれ回転駆動することで圧縮仕事を行うための共通の回転軸を有している、
請求項1から22のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項24】
前記制御部(11)は、前記流量調節制御において、前記高段側圧縮機構(25)の吐出圧力を前記一次冷媒の臨界圧力以上の圧力に維持しており、
前記第1熱負荷処理部(61)の周囲温度が前記一次冷媒の臨界温度以下の温度である環境下で用いられる、
請求項1から23のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。
【請求項25】
前記一次冷媒は、二酸化炭素である、
請求項1から24のいずれか1項に記載のヒートポンプシステム(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2011−21882(P2011−21882A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245268(P2010−245268)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【分割の表示】特願2009−61902(P2009−61902)の分割
【原出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】