説明

ヒートポンプ式給湯機

【課題】井戸水などの地下水を給水源として用いた場合であっても水熱交換器の腐食および詰まりを抑制することができるヒートポンプ式給湯機を提供する。
【解決手段】ヒートポンプ式給湯機11は、水熱交換器21を有し、冷媒配管を通じて冷媒が循環する冷媒回路13と、水が貯留されるタンク15、このタンク15の水を水熱交換器21に送る入水配管27および水熱交換器21により加熱された水をタンク15に戻す出湯配管29を有する貯湯回路17と、給水源からタンク15に水を給水する給水配管37およびタンク15に貯留された高温の水を給湯する給湯配管35と、入水配管27または給水配管37を流れる水からこの水に溶け込んでいるガスを分離可能な脱気モジュール41と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ式給湯機は、圧縮機、水熱交換器、膨張弁および空気熱交換器をこの順に配管で接続した冷媒回路と、水が貯留されるタンク、このタンクの水を水熱交換器に送る入水配管、および水熱交換器により加熱された水をタンクに戻す出湯配管を有する貯湯回路とを備えている。このヒートポンプ式給湯機では、タンクに貯留される水は、通常、水道水などを給水源としている。
【0003】
ところで、水道水の硬度は地域によっては比較的高いところがあり、また、井戸水などの地下水の硬度は水道水と比べて高い場合が多い。仮に、上記のような硬度の高い水をタンクの給水源として用いると、カルシウム塩などのスケールが析出しやすくなる。特に、水熱交換器の出口側に多くのスケールが析出して詰まりなどの原因となることがある。
【0004】
そこで、特許文献1には、カルシウムを除去して水の硬度を下げる軟水化ユニット、水の酸性度を上げてスケールの析出を抑制するpH改善ユニット、カルシウムを含む結晶を微細化してこの結晶が水熱交換器内を流れやすくする結晶微細化ユニット、またはカルシウムを含む結晶核がタンク内に入る前に捕集除去するフィルタユニットを備えたヒートポンプ式給湯機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−30959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のヒートポンプ式給湯機では、スケールの析出を抑制する効果が得られ、水熱交換器において詰まりが生じるのを抑制できるものの、例えば井戸水などの地下水をタンクの給水源として用いると、水道水を用いる場合と比較して、水熱交換器の配管などが腐食しやすい。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、井戸水などの地下水を給水源として用いた場合であっても水熱交換器の腐食および詰まりを抑制することができるヒートポンプ式給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通常、水には二酸化炭素、酸素などの種々のガスが溶け込んでおり、特に井戸水などの地下水は、地中において高圧環境下にさらされたり、種々のガスが存在する雰囲気下にさらされることにより、二酸化炭素および酸素の他、塩素、硫化水素、二酸化硫黄などの溶存ガスの量が水道水よりも多い。しかも、井戸水などの地下水は一般に硬度が高い。スケールは、例えば炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウムなどの化合物である。
【0009】
そこで、本発明のヒートポンプ式給湯機は、前記の目的を達成するため、給水源の水に溶け込んでいるガスを分離可能な脱気モジュールを備えている。すなわち、このヒートポンプ式給湯機は、水熱交換器(21)を有し、冷媒配管を通じて冷媒が循環する冷媒回路(13)と、水が貯留されるタンク(15)、このタンク(15)の水を前記水熱交換器(21)に送る入水配管(27)および前記水熱交換器(21)により加熱された水を前記タンク(15)に戻す出湯配管(29)を有する貯湯回路(17)と、給水源から前記タンク(15)に水を給水する給水配管(37)および前記タンク(15)に貯留された高温の水を給湯する給湯配管(35)と、前記入水配管(27)または前記給水配管(37)を流れる水からこの水に溶け込んでいるガスを分離可能な脱気モジュール(41)と、を備えている。
【0010】
この構成では、水が水熱交換器(21)に送られる前に、入水配管(27)または給水配管(37)に設けられた脱気モジュール(41)によって溶存ガスの一部を除去することができる。これにより、例えば井戸水などの地下水のように溶存ガスの量が多い水を給水源として用いた場合であっても、水熱交換器(21)において炭酸塩、硫酸塩などの溶存ガス成分に起因するスケールの生成が抑制されるので、水熱交換器(21)において詰まりが生じるのを抑制できる。しかも、酸素、塩素、硫化水素、二酸化硫黄などのガスは腐食性を有しているので、これらのガスの一部を除去することにより、水熱交換器(21)の配管などが腐食するのを抑制できる。
【0011】
前記脱気モジュール(41)は、前記水に溶け込んでいるガスを透過してこのガスを前記水から分離可能な分離膜(46)と、この分離膜(46)により隔てられた一方側に位置し、前記入水配管(27)または前記給水配管(37)を流れる水が流入する通水路(53)と、前記分離膜(46)により隔てられた他方側に位置する分離用通路(55)と、この分離用通路(55)を減圧する減圧手段(43)とを含んでいるのが好ましい。
【0012】
この構成では、前記分離膜(46)により前記通水路(53)と隔てられた前記分離用通路(55)を減圧手段(43)により減圧して前記通水路(53)を流れる水に溶け込んでいるガスの一部を除去する構造であるので、水とガスとを精度よく分離することができる。
【0013】
前記入水配管(27)または前記給水配管(37)における前記脱気モジュール(41)よりも上流側には、減圧弁(47)が設けられているのが好ましい。
【0014】
この構成では、前記入水配管(27)または前記給水配管(37)における前記脱気モジュール(41)よりも上流側に減圧弁(47)が設けられているので、タンク(15)内の圧力または給水源の圧力が比較的高い場合であっても、脱気モジュール(41)における水とガスとの分離精度が低下するのを抑制できる。すなわち、タンク(15)内の圧力または給水源の圧力が比較的高い場合にその圧力のままで水が脱気モジュール(41)に流入すると、水圧が分離膜(46)の耐圧性能を超えてしまってガスが分離膜(46)を通過するだけでなく水までもが分離膜(46)を通過してしまうおそれがある。本構成ではこのような不具合が生じるのを抑制できるので、脱気モジュール(41)における水とガスとの分離精度が低下するのを抑制できる。
【0015】
前記水が前記減圧弁(47)を通過しているときに前記減圧手段(43)を作動させるように制御する制御部(33)を備えている場合には、脱気する必要があるタイミング、すなわち減圧弁(47)を水が通過しているときに脱気モジュール(41)の減圧手段(43)を作動させることができるので、無駄な運転動作を減らすことができる。
【0016】
前記脱気モジュール(41)が前記入水配管(27)に設けられており、前記入水配管(27)における前記脱気モジュール(41)よりも下流側には、前記脱気モジュール(41)を通過した水を前記水熱交換器(21)および前記出湯配管(29)を通じて前記タンク(15)に送水可能なポンプ(31)が設けられているのが好ましい。
【0017】
この構成では、入水配管(27)における脱気モジュール(41)よりも下流側に前記ポンプ(31)が設けられているので、減圧弁(47)で減圧された水を水熱交換器(21)および出湯配管(29)を通じてタンク(15)に確実に戻すことができる。
【0018】
前記ポンプ(31)と前記減圧手段(43)を連動させるように制御する制御部(33)を備えている場合には、脱気する必要があるタイミング、すなわちポンプ(31)が作動しているときに脱気モジュール(41)の減圧手段(43)を作動させることができるので、無駄な運転動作を減らすことができる。
【0019】
前記タンク(15)に給水される水の給水源に応じて前記減圧手段(43)の作動要否を設定可能な設定部を備えている場合には、例えば溶存ガスの量が少ない水を給水源として用いる場合、溶存ガスの量が多い井戸水などの地下水を給水源として用いる場合など、給水源の溶存ガスの量に応じて装置の設定を変更することができる。
【0020】
前記分離膜(46)としては、例えば中空糸膜を用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、例えば井戸水などの地下水のように溶存ガスの量が多い水を給水源として用いた場合であっても、水熱交換器において腐食および詰まりが生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態のヒートポンプ式給湯機を示す構成図であり、給水源として井戸水を用いた場合を示している。
【図2】脱気モジュールの一例を示す斜視図である。
【図3】図2の脱気モジュールの断面図である。
【図4】第1実施形態のヒートポンプ式給湯機を示す構成図であり、給水源として水道水を用いた場合を示している。
【図5】本発明の第2実施形態のヒートポンプ式給湯機を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1に示すように、第1実施形態のヒートポンプ式給湯機11は、冷媒が循環する冷媒回路13と、この冷媒回路13の冷媒と熱交換して低温の水を沸き上げ、タンク15に高温の水を貯留する貯湯回路17とを備えている。
【0025】
冷媒回路13は、圧縮機19と、水熱交換器21と、電動膨張弁23と、空気熱交換器25と、これらを接続する配管とを有している。本実施形態では、冷媒回路13を循環する冷媒として二酸化炭素を用いている。この二酸化炭素は圧縮機19により臨界圧力以上に圧縮される。冷媒は、水熱交換器21において貯湯回路17を循環する水と熱交換してこの水を加熱し、空気熱交換器25において外気と熱交換して外気から熱を吸収する。
【0026】
貯湯回路17は、水が貯留されるタンク15と、このタンク15の水を水熱交換器21に送る入水配管27と、水熱交換器21と熱交換して加熱された水をタンク15に戻す出湯配管29とを有している。
【0027】
給湯機11は、入水配管27を流れる水からこの水に溶け込んでいるガスを分離可能な脱気モジュール41を備えている。この脱気モジュール41は、入水配管27に接続されたモジュール本体42と、このモジュール本体42に配管44を介して接続された真空ポンプ43とを備えている。モジュール本体42は、入水配管27を構成する上流側入水配管27aと下流側入水配管27bとの間に設けられている。
【0028】
図2および図3に示すように、モジュール本体42は、円筒ケース45と、この円筒ケース45の内部に配置された円筒状の中空糸膜46と、円筒ケース45の両端部にそれぞれ取り付けられたキャップ47,48とを有している。
【0029】
中空糸膜46は、その軸方向が円筒ケース45の軸方向とほぼ平行になるように配置されている。この中空糸膜46は、水に溶け込んでいるガスを透過してこのガスを水から分離可能な分離膜である。
【0030】
キャップ47は、円筒ケース45の一方の端部に例えばOリング(図示略)を介して取り付けられている。このキャップ47は、円筒ケース45の軸方向に沿って外側に延びる円筒状の水流入口47aを有している。キャップ48は、円筒ケース45の他方の端部に例えばOリング(図示略)を介して取り付けられている。このキャップ48は、円筒ケース45の軸方向に沿って外側に延びる円筒状の水流出口48aを有している。水流入口47aは上流側入水配管27aに接続され、水流出口48aは下流側入水配管27bに接続される。
【0031】
円筒ケース45の内部は、中空糸膜46により2つの空間に分割されている。一方の空間は、水流入口47aおよび水流出口48aに連通し、上流側入水配管27aから流入する水が流れる通水路53であり、他方の空間は、通水路53を流れる水から分離されたガスが流れる分離用通路55である。
【0032】
通水路53は、中空糸膜46の中空部53aと、この中空部53aに連通し、キャップ47の内面および円筒ケース45の一方の端部の内周面に囲まれた空間53bと、キャップ48の内面および円筒ケース45の他方の端部の内周面に囲まれた空間53cとを含む。分離用通路55は、中空糸膜46の外周側に位置しており、中空糸膜46の外周面と円筒ケース45の内周面との間に位置する空間である。
【0033】
中空糸膜46の両端部の外周面と円筒ケース45の内周面との隙間には、リング状に封止部材49がそれぞれ配設されている。これにより、前記隙間は水密および気密の状態に封止され、封止部材49、中空糸膜46の外周面、および円筒ケース45の内周面に囲まれた空間が分離用通路55となる。封止部材49としては、例えば前記隙間に充填可能な接着剤を用いることができる他、前記隙間の形状に合わせて予めリング状に成形されたゴム、樹脂などからなる弾性成形体を用いることもできる。
【0034】
円筒ケース45は、その外側面から半径方向外側に延び、分離用通路55に連通する円筒状の2つのガス吸引口45aを有している。これらのガス吸引口45aには、分岐した配管44の一端がそれぞれ接続されている。各ガス吸引口45aに接続された配管44は、途中で合流し、他端が真空ポンプ43に接続されている。
【0035】
モジュール本体42よりも上流側に位置する入水配管27、すなわち上流側入水配管27aには減圧弁47が設けられている。この減圧弁47は、モジュール本体42に流入する水の水圧が中空糸膜46の耐圧性能を超えないように上流側入水配管27a内の水圧を所定の大きさまで減圧する。
【0036】
脱気モジュール41よりも下流側に位置する入水配管27、すなわち下流側入水配管27bにはポンプ31が設けられている。このポンプ31は、減圧弁47により減圧された入水配管27内の水を加圧して水熱交換器21および出湯配管29を通じてタンク15に送水する。
【0037】
図1に示すように、タンク15の上部には、タンク15内に貯留された高温の水を取り出して浴槽などへ給湯するための給湯配管35が接続されている。また、タンク15の底部には、給水源からタンク15内に低温の水を給水するための給水配管37が接続されている。
【0038】
タンク15へ水を給水する給水源としては、例えば水道水や、井戸水などの地下水を利用することができる。井戸水を給水源として用いる場合には、図1に示すように、例えば井戸71内の水中に配置された水中ポンプ72を駆動して配管75を通じて井戸水を地上に吸い上げる。水中ポンプ72は運転ユニット73により制御される。配管75の下流側の端部には給水栓74が取り付けられている。この給水栓74に給水配管37の上流側の端部が接続されている。
【0039】
また、水道水を給水源として用いる場合には、図4に示すように、給水配管37の上流側の端部が止水栓61を介して水道配管81に接続される。給水配管37には減圧逆止弁63が設けられている。水道配管81内の水圧は例えば200kPa〜500kPa程度であるが、給水配管37内の水圧は減圧逆止弁63により例えば200kPa程度にまで減圧される。この減圧された水がタンク15内に供給される。減圧逆止弁63は、水の逆流を防止する役割も果たす。
【0040】
給湯機11は、マイクロコンピュータ、入出力回路などからなる制御部33と、各種設定値、温度データなどを記憶するメモリーとを備えている。制御部33は、タンク15、水熱交換器21、配管などに設けられた図略の温度センサにより測定された温度データなどに基づいて冷媒回路13および貯湯回路17を制御する。
【0041】
また、給湯機11は、タンク15に給水される水の給水源に応じて真空ポンプ43の作動要否のモード設定が可能な図略の設定部を備えている。設定部において設定されたモードは前記メモリーに記憶される。この設定部におけるモード設定は、例えば設置業者による給湯機11の設置時やメンテナンス時に業者が行ってもよく、必要に応じてユーザが行ってもよい。この設定部は、例えば給湯機11の初期設定やメンテナンスを行う図略の操作盤などに設けられている。
【0042】
具体的には、例えば溶存ガスの量が少ない水道水を給水源として用いる場合、すなわち水から溶存ガスを除去する必要性が乏しい場合には、設置業者またはユーザは、例えば初期設定時、メンテナンス時などに前記設定部において真空ポンプ43を作動させないモードに設定する。一方、溶存ガスの量が多い井戸水などの地下水を給水源として用いる場合、すなわち水から溶存ガスを除去する必要がある場合には、設置業者またはユーザは、例えば初期設定時、メンテナンス時などに前記設定部において真空ポンプ43を作動可能なモードに設定する。
【0043】
また、前記設定部は、後述するようにポンプ31と真空ポンプ43の動作を連動させるか否かを設定することもできる。ポンプ31と真空ポンプ43の動作を連動させるモード設定がされている場合には、制御部33は、ポンプ31が駆動すると真空ポンプ43も駆動させ、ポンプ31が停止すると真空ポンプ43も停止させるように制御する。
【0044】
次に、第1実施形態の給湯機11の動作について説明する。タンク15内の水を沸上げる沸上げ運転では、制御部33は、冷媒回路13の圧縮機19を駆動させ、電動膨張弁23の開度を調節するとともに、貯湯回路17のポンプ31を駆動させる。これにより、図1に示すように、タンク15の底部に設けられた出水口からタンク15内の低温の水が入水配管27を通じて水熱交換器21に送られ、水熱交換器21において加熱される。加熱された高温の水は出湯配管29を通じてタンク15の上部に設けられた入水口からタンク15内に戻される。これにより、タンク15内には、その上部から順に高温の水が貯湯されていく。
【0045】
前記設定部において真空ポンプ43を作動可能なモード設定がされている場合には、前記沸上げ運転において、タンク15の水が水熱交換器21に送られる前に、この水に溶け込んでいる溶存ガスの一部が以下のようにして脱気モジュール41により除去される。
【0046】
すなわち、ポンプ31の駆動によりタンク15の下部から上流側入水配管27aに排出される水は、減圧弁47によって中空糸膜46の耐圧性能を超えない大きさの水圧に調整され、上流側入水配管27aからモジュール本体42の通水路53に流入する。
【0047】
一方で、制御部33は、ポンプ31の駆動に連動させて真空ポンプ43を駆動させる。この真空ポンプ43はモジュール本体42の分離用通路55に存在するガスを吸引して分離用通路55を減圧する。これにより、分離用通路55の圧力は通水路53よりも低くなるので、通水路53を流れる水に溶け込んでいるガスの一部が中空糸膜46を透過して分離用通路55に移動する。分離用通路55に移動したガスは、配管44を通じて真空ポンプ43に送られる。真空ポンプ43に達したガスは、ガス成分、ガスの吸引量などを考慮し、必要に応じて回収されるか、大気中に放出される。その結果、モジュール本体42を通過した水は通過前よりも溶存ガスの量が減少する。
【0048】
溶存ガスが除去される過程についてより具体的に説明すると次のようになる。すなわち、モジュール本体42に流入する前の水に溶け込んでいるガスは、水と水和した状態、イオン化した状態などの種々の状態で水中において存在し、これらは化学平衡の状態に達している。この水がモジュール本体42に流入し、前記のようにこの水に溶け込んでいるガスの一部が中空糸膜46を透過して分離用通路55側に移動すると、通水路53における水中ではその変化を打ち消す方向に平衡が移動する。すなわち、水中において水和した状態、イオン化した状態などのガス由来の化合物の一部がガスとなって水から除去されやすくなる方向に平衡が移動する。したがって、水に溶け込んでいるガスは脱気モジュール41によって効率的に除去される。
【0049】
モジュール本体42において溶存ガスの一部が除去された水は、ポンプ31によりモジュール本体42の水流出口48aから下流側入水配管27bに流入し、水熱交換器21に送られ、冷媒と熱交換して加熱される。加熱された高温の水は、水熱交換器21から出湯配管29に排出されてタンク15に戻される。
【0050】
以上説明したように、前記実施形態では、入水配管27を流れる水からこの水に溶け込んでいるガスを分離可能な脱気モジュール41を備えているので、水が水熱交換器21に送られる前に、入水配管27に設けられた脱気モジュール41によって溶存ガスの一部を除去することができる。これにより、例えば井戸水などの地下水のように溶存ガスが多く溶け込んだ水を給水源として用いた場合であっても、水熱交換器21において炭酸塩、硫酸塩などの溶存ガス成分に起因するスケールの生成が抑制されるので、水熱交換器21において詰まりが生じるのを抑制できる。しかも、酸素、塩素、硫化水素、二酸化硫黄などのガスは腐食性を有しているので、これらのガスの一部を除去することにより、水熱交換器21の配管などが腐食するのを抑制できる。
【0051】
また、前記実施形態では、脱気モジュール41は、中空糸膜46により通水路53と隔てられた前記分離用通路55を真空ポンプ43により吸引して通水路53を流れる水に溶け込んでいるガスの一部を除去する構造であるので、水とガスとを精度よく分離することができる。
【0052】
また、前記実施形態では、入水配管27における脱気モジュール41よりも上流側に、減圧弁47が設けられているので、タンク15内の圧力が比較的高い場合であっても、脱気モジュール41における水とガスとの分離精度が低下するのを抑制できる。
【0053】
また、前記実施形態では、脱気モジュール41が入水配管27に設けられており、入水配管27における脱気モジュール41よりも下流側には、脱気モジュール41を通過した水を水熱交換器21および出湯配管29を通じてタンク15に送水可能なポンプ31が設けられているので、減圧弁47で減圧された水を水熱交換器21および出湯配管29を通じてタンク15に確実に戻すことができる。
【0054】
また、前記実施形態では、ポンプ31と真空ポンプ43を連動させるように制御する制御部33を備えているので、脱気する必要があるタイミング、すなわちポンプ31が作動しているときに脱気モジュール41の真空ポンプ43を作動させることができる。これにより、無駄な運転動作を減らすことができるので、電力消費量を低減することができる。
【0055】
また、前記実施形態では、タンク15に給水される水の給水源に応じて真空ポンプ43の作動要否の設定が可能な前記設定部を備えているので、給水源に応じて装置の設定を変更することができる。
【0056】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態のヒートポンプ式給湯機11を示す構成図である。図5に示すように、この第2実施形態では、脱気モジュール41が給水配管37に設けられている点が第1実施形態とは異なっている。なお、第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
この第2実施形態では、モジュール本体42は、給水配管37を構成する上流側入水配管37aと下流側給水配管37bとの間に設けられている。上流側給水配管37aには減圧弁47が設けられている。この減圧弁47は、モジュール本体42に流入する水の水圧が中空糸膜46の耐圧性能を超えないように上流側給水配管37aを流れる水の水圧を調整する。
【0058】
この第2実施形態において、前記設定部ではモジュール本体42内を水が流れているか否かの流水状況と真空ポンプ43の動作とを連動させるように設定可能である。具体的には、例えば減圧弁47またはその近傍に図略のセンサを配設することにより、減圧弁47を水が通過しているか否か検知することができる。この連動設定がされている場合には、制御部33は、給水源からの水が減圧弁47を通過しているときに真空ポンプ43を作動させ、水が減圧弁47を通過していないときには真空ポンプ43を停止するように制御する。また、設定部においては、第1実施形態と同様に給水源に応じて真空ポンプ43の作動要否のモード設定が可能である。
【0059】
次に、第2実施形態の給湯機11の動作について説明する。この給湯機11のタンク15内の水を沸上げる沸上げ運転では、制御部33は、第1実施形態と同様にして冷媒回路13の圧縮機19を駆動させ、電動膨張弁23の開度を調節するとともに、貯湯回路17のポンプ31を駆動させる。これにより、タンク15内には、その上部から順に高温の水が貯湯されていく。
【0060】
ユーザによりタンク15内の高温の水が使用されると、その使用量に応じてタンク15には給水配管37を通じて水が給水される。このとき、前記設定部において真空ポンプ43を作動可能なモード設定がされている場合には、井戸水に溶け込んでいる溶存ガスの一部が以下のようにして脱気モジュール41により除去される。
【0061】
まず、タンク15への給水時には、制御部33は、給水栓74を開放するとともに、運転ユニット73を介して水中ポンプ72を駆動して井戸水を吸い上げる。配管75を通じて吸い上げられた井戸水は、その水圧が上流側給水配管37aに設けられた減圧弁47によって所定の大きさまで小さく調整された後、モジュール本体42に流入する。
【0062】
一方で、制御部33は、減圧弁47を水が通過していることを図略の流速計、圧力計などのセンサにより検知すると、この検知結果に連動させて真空ポンプ43を駆動する。この真空ポンプ43は、モジュール本体42の分離用通路55に存在するガスを吸引して分離用通路55を減圧する。これにより、分離用通路55の圧力は通水路53よりも低くなるので、通水路53を流れる水に溶け込んでいるガスの一部が中空糸膜46を透過して分離用通路55に移動する。分離用通路55に移動したガスは、配管44を通じて真空ポンプ43に送られる。モジュール本体42において溶存ガスの一部が除去された水は、モジュール本体42の水流出口48aから下流側供給配管37bに流入し、タンク15に送られる。
【0063】
この第2実施形態では、制御部33は、減圧弁47を水が通過しているときに真空ポンプ43を作動させるように制御するので、脱気する必要がある適切なタイミングで脱気モジュール41の真空ポンプ43を作動させることができる。これにより、無駄な運転動作を減らすことができる。
【0064】
また、この第2実施形態では、タンク15に水が給水される前にこの水の溶存ガスの一部を除去するので、水熱交換器21における腐食を抑制できるだけでなく、タンク15、入水配管27などにおける腐食も抑制することができる。
【0065】
なお、その他の構成、作用および効果はその説明を省略するが第1実施形態と同様である。
【0066】
<他の実施形態>
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、溶存ガスの量が多い井戸水などの地下水を給水源として用いる場合に設定部において真空ポンプ43を作動可能なモードに設定し、水道水を給水源として用いる場合には設定部において真空ポンプ43を作動させないモードに設定することとしたが、これに限定されない。本発明では、水道水を給水源として用いる場合であっても設定部において真空ポンプ43を作動可能なモードに設定し、水道水から溶存ガスの一部を除去するようにしてもよい。
【0067】
また、前記実施形態では、中空糸膜46の中空部53aを水が通過し、中空糸膜46の外周面とケース45との間を減圧する場合を例に挙げて説明したが、水が通過する空間と減圧される空間が逆の構成であってもよい。
【0068】
また、前記実施形態では、ケース45の内部に1本の中空糸膜46が配置されている場合を例に挙げて説明したが、ケース45の内部に複数の中空糸膜46が配置された形態であってもよい。
【0069】
また、前記実施形態では、脱気モジュール41の分離膜として円筒状の中空糸膜を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。分離膜としては、水からガスを除去できるものであれば他の分離膜を用いてもよく、円筒状ではなく、例えばシート状の分離膜などを用いてもよい。
【0070】
また、前記実施形態では、脱気モジュール41として中空糸膜46と真空ポンプ43を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。脱気モジュール41は、入水配管または給水配管を流れる水からこの水に溶け込んでいるガスを分離可能なものであれば、他の構成であってもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、前記設定部において真空ポンプ43の作動要否のモード設定、モジュール本体42内を水が流れているか否かの流水状況と真空ポンプ43の動作との連動設定などが可能である場合を例に挙げて説明したが、本発明では前記設定部は必須ではなく、省略してもよい。
【0072】
また、前記実施形態では、冷媒回路を循環する冷媒として二酸化炭素を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。冷媒としては、二酸化炭素の他、エチレン、エタン、酸化窒素等の超臨界圧力で使用する冷媒であってもよく、さらには、超臨界圧力で使用する冷媒ではなく、例えばR410Aのような冷媒を使用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
11 給湯機
13 冷媒回路
15 タンク
17 貯湯回路
21 水熱交換器
27 入水配管
29 出湯配管
31 ポンプ
33 制御部
35 給湯配管
37 給水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水熱交換器(21)を有し、冷媒配管を通じて冷媒が循環する冷媒回路(13)と、
水が貯留されるタンク(15)、このタンク(15)の水を前記水熱交換器(21)に送る入水配管(27)および前記水熱交換器(21)により加熱された水を前記タンク(15)に戻す出湯配管(29)を有する貯湯回路(17)と、
給水源から前記タンク(15)に水を給水する給水配管(37)および前記タンク(15)に貯留された高温の水を給湯する給湯配管(35)と、
前記入水配管(27)または前記給水配管(37)を流れる水からこの水に溶け込んでいるガスを分離可能な脱気モジュール(41)と、を備えたヒートポンプ式給湯機。
【請求項2】
前記脱気モジュール(41)は、前記水に溶け込んでいるガスを透過してこのガスを前記水から分離可能な分離膜(46)と、この分離膜(46)により隔てられた一方側に位置し、前記入水配管(27)または前記給水配管(37)を流れる水が流入する通水路(53)と、前記分離膜(46)により隔てられた他方側に位置する分離用通路(55)と、この分離用通路(55)を減圧する減圧手段(43)とを含む、請求項1に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項3】
前記入水配管(27)または前記給水配管(37)における前記脱気モジュール(41)よりも上流側には、減圧弁(47)が設けられている、請求項2に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項4】
前記水が前記減圧弁(47)を通過しているときに前記減圧手段(43)を作動させるように制御する制御部(33)を備えている、請求項3に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項5】
前記脱気モジュール(41)が前記入水配管(27)に設けられており、
前記入水配管(27)における前記脱気モジュール(41)よりも下流側には、前記脱気モジュール(41)を通過した水を前記水熱交換器(21)および前記出湯配管(29)を通じて前記タンク(15)に送水可能なポンプ(31)が設けられている、請求項3または4に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項6】
前記ポンプ(31)と前記減圧手段(43)を連動させるように制御する制御部(33)を備えている、請求項5に記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項7】
前記タンク(15)に給水される水の給水源に応じて前記減圧手段(43)の作動要否を設定可能な設定部を備えている、請求項1〜6のいずれかに記載のヒートポンプ式給湯機。
【請求項8】
前記分離膜(46)が中空糸膜である、請求項1〜7のいずれかに記載のヒートポンプ式給湯機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−276303(P2010−276303A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130919(P2009−130919)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】