説明

ヒートポンプ装置及び冷媒用往復動型圧縮機

【課題】簡素な構成で、往復動型圧縮機の吐出冷媒ガス温度を低下させることにより、体積効率の低下や、往復動型圧縮機が組み込まれたヒートポンプ装置の能力低下を防止する。
【解決手段】冷媒循環路2に往復動型圧縮機3、凝縮器5、膨張弁7及び蒸発器8を介設したヒートポンプサイクルを構成してなるヒートポンプ装置1において、凝縮器5で凝縮した冷媒液の一部を往復動型圧縮機3のシリンダ上部組立体に設けられた吐出室に戻す冷媒液戻し流路9を設け、該冷媒液戻し流路9を介して吐出室36に冷媒液の一部を供給し、冷媒液の蒸発潜熱により吐出ガス通路を冷却するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置等のヒートポンプ装置に組み込んだ往復動型圧縮機から吐出する冷媒ガスの温度上昇を抑えることにより、往復動型圧縮機の体積効率を向上させ、さらには、該往復動型圧縮機が組み込まれたヒートポンプ装置の能力向上を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、往復動型圧縮機では、ケーシング内に吸入ガス通路及び吐出ガス通路を設けるのが一般的である。冷凍装置等のヒートポンプ装置に組み込まれた往復動型圧縮機では、高温の吐出ガスと低温の吸入ガスがケーシングの壁面を介して熱交換し、吸入ガスがシリンダに吸い込まれるまでに吸入ガスの温度が上昇してしまう。そのため、吸入ガスがシリンダに吸入される前に膨張し、比容積が大きくなり、循環質量流量が無視できないほど減少する。従って、圧縮機での体積効率の低下を招き、往復動型圧縮機が組み込まれた冷凍装置の冷凍能力又はヒートポンプ装置の加熱能力を低下させることになる。
【0003】
特に、アンモニアガスは、比熱比が比較的大きいため、吐出温度が高く、また、図11に示すように、温度上昇に対して、比容積が大きくなる特性をもっている。このような熱媒を用いる場合は、圧縮機のケーシング内部での吸入ガスの加熱(温度上昇)をできるだけ抑える必要がある。
【0004】
特許文献1(特開2000−18154号公報)には、往復動型圧縮機において、圧縮時のシリンダ室内温度が過度に高くなることを抑えて、潤滑油の劣化や焼付きの問題を解消するための手段が開示されている。この手段は、ピストンが収納された複数のシリンダ室の周囲に空洞部を設け、該空洞部に冷却用媒体としてアキュムレータから帰還した帰還冷媒を導入することにより、シリンダ室を冷却する手段が開示されている。シリンダ室を冷却した帰還冷媒は連通孔を介して吸入室に導出される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−18154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された手段では、シリンダの周囲に空洞部を設け、該空洞部に帰還冷媒を導入することによって、シリンダの冷却を行なうものである。従って、吐出ガスを冷却するものではないため、吸入ガスがシリンダに吸入される前に、吸入ガスと吐出ガスがケーシングの壁面を通して熱交換してしまい、シリンダに吸入される前の吸入ガスの温度上昇を防止できない。従って、圧縮機での体積効率の低下を招き、往復動型圧縮機が組み込まれた冷凍装置の冷凍能力又はヒートポンプ装置の加熱能力を低下させることになる。
【0007】
また、シリンダ室の周囲に冷却用媒体を導入する空洞部を設けるため、圧縮機が大型化かつ重量化してしまうとともに、該空洞部に多量の冷却用媒体を供給するために、圧縮機が組み込まれた冷凍装置等のヒートポンプ装置の能力を低下させてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、簡素な構成で、往復動型圧縮機の吐出ガス温度を低下させることにより、往復動型圧縮機の体積効率の低下や、往復動型圧縮機が組み込まれたヒートポンプ装置の能力低下を防止することを目的とする。
より具体的には往復動型圧縮機において該圧縮機内部での吸入ガスの加熱を抑え、冷凍能力(体積効率)を向上させると共に、冷却水を使用しない往復動型圧縮機を用いた高効率ヒートポンプ装置や冷凍装置を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、本発明は、圧縮機の吐出側の(吐出室又は該吐出室に連通した吐出直後の吐出空間の)高温冷媒ガス空間に冷媒サイクルの冷媒液(凝縮液)を噴射して冷却して、前記高温冷媒ガスの吐出温度を低下させるもので、
より具体的には、本発明のヒートポンプ装置は、
冷媒循環路に往復動型圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を介設したヒートポンプサイクルを構成してなるヒートポンプ装置において、
凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体に設けられた吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に戻す冷媒液戻し流路を設け、
該冷媒液戻し流路を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給し、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成したものである。
【0010】
本発明のヒートポンプ装置では、往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体に設けられた吐出室から吐出しその後凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を吐出室又は該吐出空間に戻すようにする。そして、吐出室又は該吐出空間で該冷媒液を吐出ガスの熱で蒸発させ、吐出ガスから蒸発潜熱を奪うことによって、吐出室又は該吐出空間を冷却する。吐出室又は該吐出空間を冷却することによって、吐出室又は該吐出空間から吸入室又はガス通路への熱伝達を抑制するようにしたものである。
【0011】
これによって、シリンダに吸入される前の冷媒ガスの温度上昇を防止できる。従って、体積膨張を抑制して、往復動型圧縮機の体積効率の低下を防ぎ、往復動型圧縮機が組み込まれたヒートポンプ装置の能力低下を抑制することができる。
このように、冷媒の蒸発潜熱で吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間を冷却でき、冷却水等を使用しないため、砂漠地帯など冷却水がない所でも適用できる。そのため、低コストで環境問題も起こらない。
【0012】
本発明のヒートポンプ装置において、前記吐出室又は吐出空間に冷媒液戻し流路に接続された噴射ノズルを設け、冷媒液を該噴射ノズルから該吐出室又は吐出空間に噴射するように構成するとよい。これによって、吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間での冷媒液の蒸発を促進でき、冷却効果を高めることができる。
【0013】
本発明のヒートポンプ装置において、往復動型圧縮機が低段圧縮機と高段圧縮機とからなる多段圧縮機である場合、高段圧縮機から吐出され凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を低段圧縮機の吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に戻す冷媒液戻し流路を設け、該冷媒液戻し流路を介して低段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給するように構成するとよい。
【0014】
高段圧縮機から吐出され凝縮器で凝縮された冷媒液は、低段圧縮機の吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間より高圧であるので、増圧機を用いることなく、低段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に供給できる。このため、冷媒液を供給するための動力や機器類が不要になる。
【0015】
前記構成に加えて、高段圧縮機から吐出され凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を高段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に戻す第2の冷媒液戻し流路を設けると共に、該第2の冷媒液戻し流路に増圧機を介設し、第2の冷媒液戻し流路を介して高段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給するように構成してもよい。
高段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に凝縮器で凝縮した熱媒液の一部を供給する場合は、高段圧縮機の該吐出室又は吐出空間と凝縮器は同一圧力であるので、熱媒液戻し流路に例えば液ポンプ等の増圧機を介設する必要がある。
これによって、低段圧縮機及び高段圧縮機の両方の吸入ガスを冷却できる。
【0016】
また、本発明のヒートポンプ装置において、凝縮器と膨張弁間の冷媒循環路に冷媒液熱交換器を介設し、該冷媒液熱交換器に低段圧縮機から吐出した冷媒ガスを高段圧縮機の該吸入室又は吸入空間に導く冷媒循環路を接続して、凝縮器から出た冷媒液を低段圧縮機から吐出された冷媒ガスで冷却するように構成するとよい。
これによって、冷媒循環路を凝縮器から膨張弁に向う冷媒液を、該冷媒液熱交換器で低段圧縮機から吐出され冷却された冷媒ガスで冷却するようにしているので、冷凍装置等のヒートポンプ装置の能力を向上できる。
【0017】
なお、凝縮器と膨張弁間の冷媒循環路に冷媒液熱交換器を介設し、該冷媒液熱交換器に低段圧縮機から吐出した冷媒ガスを高段圧縮機の前記吸入室又は吸入空間に導く冷媒循環路を接続して、凝縮器から出た冷媒液を低段圧縮機から吐出された冷媒ガスで冷却するように構成し、
前記冷媒液熱交換器を冷媒液戻し流路又は第2の冷媒液戻し流路の上流側の冷媒循環路に介設し、該冷媒液熱交換器で冷却した冷媒液の一部を冷媒液戻し流路又は第2の冷媒液戻し流路に供給するように構成してもよい。
これによって、該冷媒液熱交換器で冷却された冷媒液を低段圧縮機又は高段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に供給できるので、吐出ガスの冷却効果をさらに高める高段圧縮機とができる。
【0018】
また、本発明のヒートポンプ装置において、凝縮器と膨張弁間の冷媒循環路に中間冷却器を介設し、該中間冷却器に低段圧縮機から吐出した冷媒ガスを高段圧縮機の該吸入室又は吸入空間に導く冷媒循環路を接続し、該中間冷却器で凝縮器から出た冷媒液の一部を蒸発させることにより、凝縮器から出た他の冷媒液及び低段圧縮機から吐出された冷媒ガスを冷却するように構成するとよい。
【0019】
これによって、ヒートポンプ装置の能力を向上できるとともに、中間冷却器で冷却された後の過冷却された高圧の冷媒液の一部を低段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に供給できるので、低段圧縮機の吐出ガスの冷却効果をさらに高めることができると共に、冷媒液の供給量を減少できるので、低段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に設けられる噴射ノズルを小型化することができる。
【0020】
冷媒として、比熱比が大きいNHを用いた場合、NHは温度上昇により比容積が他の冷媒と比べて大きくなる特性がある。シリンダへ吸入される前の吸入ガスの温度上昇による体積膨張が著しい。しかし、本発明を適用すれば、シリンダに吸入される前のNHガスの温度上昇を抑えることができるので、ヒートポンプ装置の能力低下を招かない。
【0021】
次に、前記本発明のヒートポンプ装置に適用可能な第1の本発明の冷媒用往復動型圧縮機は、
シリンダ上部組立体に吸入弁を介してシリンダと連通する吸入室と、吐出弁を介してシリンダと連通する吐出室とを備えてなる冷媒用往復動型圧縮機において、
吐出ガスを凝縮して得られた冷媒液の一部を受け入れる冷媒液供給口を吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に設け、該冷媒液供給口を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液を受け入れ、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成したものである。
【0022】
前記構成により、吐出ガスを凝縮して得られた冷媒液の一部を該吐出室又は吐出空間に供給し、該冷媒液の蒸発潜熱で該吐出室又は吐出空間を冷却できる。これによって、該吐出室又は吐出空間の温度上昇をなくし、シリンダに吸入される前の吸入ガスの昇温を防止できるので、吸入ガスの比容積の増大を抑えることができ、体積効率の低下を抑えることができる。従って、往復動型圧縮機が組み込まれたヒートポンプ装置の能力低下を抑制することができる。
【0023】
第1の本発明の冷媒用往復動型圧縮機において、該吐出室又は吐出空間に冷媒液供給口に連通した噴射ノズルを設け、冷媒液を該噴射ノズルを介して該吐出室又は吐出空間に噴射するように構成するとよい。これによって、該吐出室又は吐出空間での冷媒液の蒸発を促進でき、冷却効果を高めることができる。
【0024】
また、前記本発明のヒートポンプ装置に適用可能な第2の本発明の冷媒用往復動型圧縮機は、
シリンダ上部組立体に吸入弁を介してシリンダと連通する吸入室と、吐出弁を介してシリンダと連通する吐出室とを備えてなる冷媒用往復動型圧縮機において、
吸入室と吐出室間に断熱材を介装し、吸入室と吐出室間の伝熱を遮断するように構成したものである。
【0025】
かかる構成によれば、吐出室と吸入室との間に断熱材を介装するという簡易な手段で、吐出室の熱が吸入室に伝達するのを防止できる。これによって、シリンダに吸入される前の冷媒ガスの昇温を防止できるので、該冷媒ガスの比容積の増大を抑え、体積効率の低下を抑えることができる。これによって、往復動型圧縮機が組み込まれたヒートポンプ装置の能力低下を抑制することができる。
【0026】
さらに、第1の本発明の往復動型圧縮機と第2の本発明の往復動型圧縮機の構成を組み合わせることにより、吐出室から吸入室への熱伝熱を相乗的に抑制することができる。
即ち、吐出ガスを凝縮して得られた冷媒液の一部を受け入れる冷媒液供給口を該吐出室又は吐出空間に設け、該冷媒液供給口を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液を受け入れ、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成すると共に、吐出室と吸入室との間に断熱材を介装したことにより、吐出室から吸入室への伝熱を効果的に抑えることができる。
【0027】
また、第1の本発明又は第2の本発明の冷媒用往復動型圧縮機において、シリンダ上部組立体を、シリンダを遮蔽し吐出ガス通路を形成すると共に、該吐出ガス通路に吐出弁を設けた遮蔽板と、該遮蔽板の上方を覆って吐出室を形成したヘッドカバーと、該遮蔽板の下方に配置されシリンダを内包するとともに吸入弁を内蔵したバルブプレートと、該バルブプレートの下方に配置され吸入室を形成したシリンダ外包体とで構成するとともに、バルブプレートとシリンダ外包体との間に板状の断熱性ガスケットを介装し、バルブプレート及び断熱性ガスケットを拡径してバルブプレート及び断熱性ガスケットの外周端縁部を前記ヘッドカバーとシリンダ外包体の接合部で両側から挟持固定するとよい。
【0028】
かかる構成とすれば、断熱性ガスケットをバルブプレートとシリンダ外包体との間に容易に固定できる。そして、バルブプレートとシリンダ外包体との間に断熱性ガスケットを配置することによって、シリンダ外包体形成された吸入室と、遮蔽板の上方に形成された吐出室との間の遮熱を効果的に行なうことができる。
【0029】
また、シリンダ外包体が複数のシリンダを内包する場合には、複数のシリンダで挟まれる領域で、断熱性ガスケットとの間に断熱空間を形成するとよい。これによって、さらに断熱効果を向上できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のヒートポンプ装置によれば、冷媒循環路に往復動型圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を介設したヒートポンプサイクルを構成してなるヒートポンプ装置において、
凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体に設けられた吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に戻す冷媒液戻し流路を設け、該冷媒液戻し流路を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給し、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成したことにより、往復動型圧縮機の吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間から吸入室又は該吸入室に連通した吸入空間への伝熱を抑制して、シリンダに吸入される前の吸入ガスの温度上昇と体積膨張を抑え、往復動圧縮機の体積効率の低下を防止できる。これによって、NH等比熱比の大きな冷媒を用いた場合であっても、ヒートポンプ装置の能力低下を防止できる。また、冷却水等を使用しないため、砂漠地帯など冷却水がない所でも適用でき、低コストで環境汚染も起こらない。
【0031】
第1の本発明の冷媒用往復動型圧縮機によれば、シリンダ上部組立体に吸入弁を介してシリンダと連通する吸入室と、吐出弁を介してシリンダと連通する吐出室とを備えてなる冷媒用往復動型圧縮機において、吐出ガスを凝縮して得られた冷媒液の一部を受け入れる冷媒液供給口を吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に設け、該冷媒液供給口を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液を受け入れ、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成したことにより、該吐出室又は吐出空間から吸入室又は該吸入室に連通した吸入空間への伝熱を抑制して、シリンダに吸入される前の吸入ガスの温度上昇と体積膨張を抑え、往復動圧縮機の体積効率の低下を防止できる。これによって、前記本発明のヒートポンプ装置に適用することで、ヒートポンプ装置の能力低下を防止できる。
【0032】
第2の本発明の往復動型圧縮機によれば、シリンダ上部組立体に吸入弁を介してシリンダと連通する吸入室と、吐出弁を介してシリンダと連通する吐出室とを備えてなる冷媒用往復動型圧縮機において、吸入室と吐出室間に断熱材を介装し、吸入室と吐出室間の伝熱を遮断するように構成したことにより、簡易な手段で、吐出室の熱が吸入室に伝達するのを抑制でき、前記第1の本発明の往復動型圧縮機と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図2】前記第1実施形態の冷凍装置に組み込まれる往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体を示す立面断面図である。
【図3】前記第1実施形態に係る往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体の展開斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図9】本発明の第7実施形態に係る冷凍装置に組み込まれる往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体を示す立面断面図である。
【図10】本発明の第8実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【図11】アンモニアガスの比容積の変化を示す線図である。
【図12】本発明の第9実施形態に係る冷凍装置の系統図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0035】
(実施形態1)
本発明を冷凍装置に適用した第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る(往復動型圧縮機3が単段機の例)冷凍装置の系統図である。
図1において、冷凍装置1は、冷媒としてNHを用いる冷媒循環路2を備え、該冷媒循環路2に、往復動型圧縮機3と、往復動型圧縮機3の下流側に順に、油分離器4と、凝縮器5と、受液器6と、膨張弁7と、蒸発器8とが介設されて、冷凍サイクルを構成している。
【0036】
往復動型圧縮機3は、シリンダ301と吐出弁302を介して連通する吐出室303と、シリンダ301と吸入弁304を介して連通する吸入室305とを備えている。吐出室303は、吐出弁302のすぐ出口側に設けられ、冷媒循環路2に連通している。吸入室305は吸入弁304のすぐ出口側に設けられ、冷媒循環路2に連通している。シリンダ301で圧縮され高圧となった冷媒ガスは、吐出弁302から吐出室303に吐出される。
【0037】
吐出室303から冷媒循環路2に吐出された冷媒ガスは、油分離器4で潤滑油を分離された後、凝縮器5で放熱し凝縮する。凝縮した冷媒液は、一旦受液器6に貯留される。受液器6から出た冷媒液は、膨張弁7で減圧され、蒸発器8で蒸発する。蒸発器8では負荷から蒸発潜熱を吸収する。その後、冷媒ガスは往復動圧縮機2の吸入室305に吸入され、さらに吸入弁304を介してシリンダ301に吸入される。図1中の各部位に記入された温度は、その部位での冷媒(NH)の温度を示す。
【0038】
本実施形態では、受液器6の下流側で冷媒液を冷媒循環路2から分岐する分岐路9が設けられている。分岐路9は吐出室303の内壁に設けられた噴射ノズル306に接続されている。分岐路9には液ポンプ11と液ポンプ11の下流側に圧力調整弁12が介設されている。冷媒液の一部は分岐路9を通り、液ポンプ11の回転数制御及び圧力調整弁12で圧力調整され、吐出室303より高圧となって、噴射ノズル306から吐出室303の内部に噴霧される。吐出室303内に噴射された冷媒液は、吐出室303内の冷媒ガスから蒸発潜熱を吸収して蒸発する。
【0039】
これによって、吐出室303内の温度を低下させるため、吐出室303から吸入室305への伝熱を抑制できる。従って、シリンダ301に吸入される前の冷媒ガスの昇温を抑制できる。
尚、本実施例においては、凝縮器5に空冷凝縮器を、又往復動型圧縮機3の潤滑油の冷却高圧液式又は直膨式オイルクーラー(不図示)を用いることにより冷却水を使用しない往復動型圧縮機の高効率のヒートポンプ装置や冷凍装置が可能となる。
更に本実施例においては、往復動型圧縮機3に対して受液器6の位置を重力方向に上方に高くして液ヘッドをつけることにより、液ポンプ11を省くことも可能である。(下記の他の実施例についても同様である。)
【0040】
図2及び図3は、往復動型圧縮機3のシリンダ上部組立体20の具体的な構造例を示す。本実施形態の往復動型圧縮機3は、2個のシリンダが組みになっている。
図2において、シリンダ21の内部にピストン22が摺動自在に配置されている。シリンダ21はシリンダ外包体23に装着されている。シリンダ外包体23の上部にはバルブプレート31が配置され、バルブプレート31の開口31aは、シリンダ21の上部開口に合わせて配置されている。バルブプレート31に空洞部が穿設され、該空洞部にリング形をなす板状の吸入弁25とその上方に筍スプリング26が収納されている。
【0041】
筍スプリング26の弾性力が吸入弁25をシリンダ21の上端に設けられた弁座27に押し付けるように作用している。吸入弁25の下方には吸入室24が設けられ、吸入室24は、吸入弁25に作用している筍スプリング26の弾性力に抗して冷媒ガスにより吸入弁25を押し上げることにより、シリンダ21の内部と連通する。
【0042】
バルブプレート31の上部に円板形状をなすバルブケージ32を設けてバルブプレート31の開口31aを遮蔽している。バルブケージ32の下面には、ボルト33により截頭円錐形の弁プレート34が結合されている。弁プレート34のバルブケージ32に対する位置決めは、位置合わせ棒35を両者の位置決め孔に通すことによって行なわれる。弁プレート34の形状はピストン22の頭部形状に嵌合し、ピストン22がシリンダ21の上端に達した時に、シリンダ21内に空間ができないようにしている。
【0043】
バルブケージ32には吐出ガス通路36aが穿設されるとともに、吐出ガス通路36aに筍スプリング37が装着され、筍スプリング37の下方に、リング形をなす板状の吐出弁38が装着されている。吐出弁38の下方には、弁プレート34の周縁部に形成された弁座34aと、バルブプレート31と一体の弁座31bが配置されている。シリンダ21の吐出ガス圧が小さい時に、吐出弁38は、筍スプリング37の弾性力によって弁座34a及び31bに押し付けられて、吐出ガス通路36aを遮断している。ピストン22が上昇してシリンダ21の吐出ガス圧が大きくなると、吐出ガスが吐出弁38を押し上げて吐出ガス通路36aを開放する。
【0044】
シリンダ外包体23とバルブプレート31の間には、断熱材からなる板状の断熱性ガスケット39が介装されている。バルブケージ32の上方には、ヘッドカバー40が配置され、バルブケージ32の上方に吐出室36を形成している。吐出室36は吐出ガス通路36aに連通すると共に、シリンダ21から吐出した高圧の吐出ガスを冷媒循環路2に送る。ヘッドカバー40に穿設された貫通孔40aには分岐管路9が接続され、ヘッドカバー内壁の開口には噴射ノズル306が取り付けられている。これによって、分岐管路9内の冷媒液が吐出室36に噴霧される。
【0045】
図3に示すように、ヘッドカバー40の周縁部にはボルト座41が設けられるとともに、ボルト座41、バルブプレート31、断熱性ガスケット39及びシリンダ外包体23の周縁部にはボルト孔42〜45が穿設され、これらの部材をボルト孔42〜45を介して図示しないボルトによって一体に結合している。
【0046】
なお、本実施形態では、シリンダ外包体23は2個のシリンダ21を内包するものである。そのため、シリンダ外包体23には2個のシリンダ21が嵌合される2個の開口23aが穿設されている。そして、2個の開口23aの間には凹部46が設けられており、この凹部46が断熱性ガスケット39との間に断熱空間iを形成している。
【0047】
図2及び図3の往復動型圧縮機3は、ピストン22が下降した時にシリンダ21内に低圧が形成され、これによって、吸入ガスgが筍スプリング26の弾性力に抗して吸入弁25を押し上げ、シリンダ21内に導入される。次に、ピストン22が上昇してシリンダ21内を高圧にすると、高圧の吐出ガスgが筍スプリング37の弾性力に抗して吐出弁38を押し上げ、吐出ガス通路36aを経て吐出室36に排出される。
【0048】
往復動型圧縮機2が冷凍装置1に組み込まれた場合、例えば、吸入室24の温度は−20〜0℃、吸入圧は0.2〜0.4MPaであり、吐出室36の温度は120〜140℃、吐出圧は1.3〜1.6MPaである。
【0049】
シリンダ上部組立体20は、高温となった吐出ガスgにより加熱されるが、本実施形態では、分岐管路9から吐出室36内に冷媒液が噴射ノズル306を介して噴霧され、噴霧された冷媒液が吐出ガスから蒸発潜熱を吸収して吐出ガスを冷却すると共に、バルブプレート31とシリンダ外包体23との間に断熱性ガスケット39を介装しているので、吐出ガスgの熱がシリンダ外包体23まで伝達して吸入室24を流れる吸入ガスgを加熱するのを効率的に抑制できる。
【0050】
従って、シリンダ21内に吸入される前の吸入ガスgの昇温を抑制することができるので、吸入ガスgの体積膨張を抑制できる。例えば、図1に示すように、噴射ノズル306に35℃の冷媒液を噴射することで、吐出室303内の吐出ガス温度を50℃に抑制でき、吸入室305内の吸入ガス温度を−10℃に抑制できる。そのため、シリンダ21内に吸入される冷媒ガスの体積膨張を防止でき、往復動型圧縮機3の体積効率の低下を抑制することができる。これによって、往復動型圧縮機3が組み込まれた冷凍装置1の冷凍能力の低下を抑制することができる。
【0051】
特に、冷媒として用いているNHは比熱比が大きく、温度上昇により体積膨張が著しいので、往復動型圧縮機の体積効率の低下が大きくなる。しかし、本発明により、往復動型圧縮機3の体積効率の低下を抑え、冷凍装置1の冷凍能力を維持させることができる。
また、本実施形態では、冷媒液の蒸発潜熱と断熱性ガスケット19によって吸入ガスの温度上昇を抑えており、冷却水等を必要としないので、砂漠地帯でも適用可能であり、しかも環境汚染を生じない利点がある。
【0052】
本実施形態において、冷媒液を噴射ノズル306により吐出室36に微細粒として噴霧しているので、吐出ガスからの蒸発潜熱の吸収効果を向上できる。また、断熱性ガスケット39は、吸入室24からシリンダ外包体23の周縁部まで延設されているので、断熱性ガスケット39が配設された広い領域で吐出ガス熱を遮断している。従って、吐出ガス熱がシリンダ外包体23側まで伝達するのを有効に遮断できる。
加えて、シリンダ外包体23で複数のシリンダ21の間に断熱空間iを設けているので、さらに断熱効果を向上させることができる。
【0053】
(実施形態2)
次に、本発明の冷凍装置に係る第2実施形態(往復動型圧縮機3a、3bが組合せ二段機及び単機二段機の場合で、二段圧縮一段膨張において受液器6と蒸発器8入口側の膨張器7との間の冷媒経路2aに中間冷却器を用いていない例である。)を図4に基づいて説明する。図4において、本実施形態の冷凍装置は、往復動圧縮機が低段圧縮機3aと高段圧縮機3bとからなる2段圧縮機で構成されている。低段圧縮機3a及び高段圧縮機3bのシリンダ上部組立体の構成は、図2及び図3に示す前記第1実施形態の構成と同一である。
受液器6から出た冷媒液は冷媒循環路2aを通って膨張弁7に至る。膨張弁7で減圧された冷媒液は、蒸発器8で負荷から蒸発潜熱を奪って蒸発し、蒸発した冷媒ガスは、低段圧縮機3aの吸入室305に吸入される。吸入室305に吸入された冷媒ガスは、吸入弁304を介してシリンダ301に吸入され、シリンダ301で圧縮される。
【0054】
シリンダ301で圧縮された冷媒ガスは、吐出弁302を経て吐出室303に到り、吐出室303から冷媒循環路2bに吐出される。冷媒循環路2bに吐出された冷媒ガスは、油分離器4aで潤滑油を分離された後、高段圧縮機3bの吸入室305に吸入される。
高段圧縮機3bの吸入室305に吸入された冷媒ガスは、高段圧縮機3bのシリンダ301内で圧縮され、吐出室303から冷媒循環路2cに吐出される。冷媒循環路2cに吐出された冷媒ガスは、油分離器4bで潤滑油を分離された後、凝縮器5で放熱して凝縮する。
【0055】
本実施形態では、受液器6の下流側で冷媒循環路2aから分岐する分岐路51を設けている。分岐路51には液ポンプ52及び圧力調整弁53が介設されている。分岐路51の末端は高段圧縮機3bの吐出室303に接続されている。冷媒液は、液ポンプ53の回転数制御及び圧力調整弁53の圧力制御により、高段圧縮機3bの吐出室303より高い圧力に加圧され、吐出室303内で噴射ノズル306から噴霧される。
【0056】
分岐路51より下流側の冷媒循環路2aから分岐路54が分岐され、分岐路54は低段圧縮機3aの吐出室303の内壁面に設けられた噴射ノズル306に接続されている。低段圧縮機3aの吐出室303内は、分岐路54より低圧であるので、冷媒液を増圧させる必要がなく、そのまま吐出室303内に供給できる。
【0057】
本実施形態では、分岐路51及び54から高段圧縮機3b及び低段圧縮機3aの吐出室303に冷媒液を噴霧し、該冷媒液を吐出室303内の吐出ガスの保有熱で蒸発させ、吐出ガスから蒸発潜熱を奪って吐出ガスを冷却する。従って、低段圧縮機3a及び高段圧縮機3bにおいて、吐出室303から吸入室305への熱伝達を抑えることができる。
また、図2及び図3に示すように、低段圧縮機3a及び高段圧縮機3bのシリンダヘッド20には、バルブプレート31とシリンダ外包体23との間に断熱性ガスケット39を介装しているので、断熱性ガスケット39によって吐出室36から吸入室24への熱伝達を抑制できる。
【0058】
図4に示すように、低段圧縮機3aの吸入室305の温度を−25℃に抑え、高段圧縮機3bの吸入室305の温度を15℃に抑えることができるので、往復動型圧縮機の体積効率の低下を抑え、冷凍装置1の冷凍能力を維持できる。
【0059】
なお、高段圧縮機3bの吐出室303と分岐路51の圧力は同一であるので、冷媒液を分岐路51から高段圧縮機3bの吐出室303に供給する場合には、液ポンプ52及び圧力調整弁53で増圧する必要がある。一方、低段圧縮機3aの吐出室303は分岐路54より低圧であるので、冷媒液を分岐路54から低段圧縮機3aの吐出室303に供給する場合に増圧する必要はない。従って、増圧機が不要であり、動力低減を可能とする。
【0060】
低段圧縮機3aの吸入ガス温度は、高段圧縮機3bの吸入ガス温度と比べて低い。例えば、低段圧縮機3aの吸入ガス温度は−30℃であり、高段圧縮機側と比べて吐出ガスとの温度差が大きい。従って、吐出ガスからの熱伝達による吸入ガスの温度上昇の影響は、低段圧縮機3aのほうが受けやすい。そのため、少なくとも低段圧縮機3aの吐出室303に分岐路54から冷媒液を供給するようにすれば、吸入ガスの温度抑制効果をより大きくし、冷凍能力の低下をより抑えることができる。
【0061】
(実施形態3)
次に本発明に係る冷凍装置の第3実施形態(二段圧縮機3a、3bの一段膨張において中間冷却器61を用いる場合の1で、中間冷却器61は受液器6よりの冷媒液を伝熱管61aを通して膨張弁7及び蒸発器8へ送り、中間冷却器61では冷媒液の膨張はさせていない。)を図5に基づいて説明する。図5において、本実施形態では、受液器6の下流側で冷媒循環路2aに液ガス熱交換器61を介在させ、液ガス熱交換器61に油分離器4aの下流側の冷媒循環路2bを接続している。そして、受液器6から出た冷媒液と油分離器4aの下流側の吐出冷媒ガスとを液ガス熱交換器61で熱交換させ、該吐出冷媒ガスによって該冷媒液を冷却するようにしている。その他の構成は、図4に示す前記第2実施形態と同一である。同一構成の部材又は機器には、第2実施形態と同一の符号を付しており、それらの説明を省略する。
【0062】
低段圧縮機3aの吐出室303には、分岐路54を介して受液器6の下流側の冷媒液を供給し、該冷媒液を図2に示すように、噴射ノズル306を介して吐出室303に噴霧している。そして、該冷媒液を蒸発させて吐出室303内の吐出ガスの温度を低下させている。例えば、凝縮温度が35℃で、蒸発温度が−30℃の場合、凝縮器5及び受液器6内の冷媒液の温度は35℃であり、この冷媒液を吐出室303内で蒸発させ、蒸発潜熱を吸収することにより、吐出室303内の吐出ガス温度を10℃に冷却できる。
【0063】
この10℃の吐出ガスを液ガス熱交換器61に導入し、液ガス熱交換器61で受液器6から出た35℃の冷媒液を30℃に冷却することができる。
【0064】
このように、本実施形態によれば、前記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができるほか、液ガス熱交換器61において、低段圧縮機3aの吐出ガスで受液器6出口側の冷媒液を冷却するようにしているので、冷凍装置1の冷凍能力をさらに向上させ、COPを向上させることができる。
本実施例の高段側往復圧縮機3bについては、ヘッドカバー(吐出室303)内への液インジェクション(噴射ノズル306)を省きヘッドカバーを水冷にしてもよく、又は温度条件により空冷にしてもよい。
【0065】
(実施形態4)
次に本発明の冷凍装置に係る第4実施形態(二段圧縮機3a、3bの一段膨張において中間冷却器61を用いる場合の2で、中間冷却器61に関しては第3実施形態と同様な構成である。)を図6に基づいて説明する。図6において、本実施形態では、液ガス熱交換器61の下流側で冷媒出口管路70から分岐路71を分岐させ、分岐路71を低段圧縮機3aの吐出室303に接続している。その他の構成は、前記第3実施形態と同一であるので、同一の部材又は機器の説明を省略する。
分岐路71の末端は低段圧縮機3aの吐出室303内に配設された噴射ノズル306に接続されており、吐出室303の構成も前記第1〜第3実施形態と同一である。
【0066】
本実施形態によれば、低段圧縮機3a及び高段圧縮機3bの吐出室303における吐出ガスの冷却効果に加えて、液ガス熱交換器61で過冷却された後の低温度(30℃)の冷媒液を分岐路71を介して低段圧縮機32aの吐出室303に供給しているので、該吐出室303の吐出ガスの冷却効果をさらに向上できる。そのため、分岐路71に供給する冷媒液量を少なくできるので、噴射ノズル306を小型化できる利点がある。
又、本実施例においても、高段側往復圧縮機3bについては、ヘッドカバー(吐出室303)内への液インジェクション(噴射ノズル306)を省きヘッドカバーを水冷にしてもよく、又は温度条件により空冷にしてもよいことは前記実施例と同様である。
【0067】
(実施形態5)
次に、本発明の冷凍装置に係る第5実施形態を図7(二段圧縮機3a、3bの一段膨張において中間冷却器81を用いる場合の3で、中間冷却器81内を、膨張弁83により冷媒液を液噴射して強制冷却している。)に基づいて説明する。本実施形態は、図6に示す前記第4実施形態の液ガス熱交換器61を中間冷却器81に置き換えたものであり、中間冷却器81廻り以外の他の構成は第4実施形態と同一である。中間冷却器81では、中間冷却器81の上流側で冷媒循環路2aから分岐する分岐路82を設け、分岐路82に膨張弁83を介設している。
【0068】
本実施形態の中間冷却器81は、中間冷却器81の内部に冷媒循環路2aに連通した伝熱管路81aが配設され、管路81aの外側に低段圧縮機3aの吐出冷媒ガスが充満する空間が形成される。そして、管路81a内を流れる冷媒液と吐出冷媒ガスとは、管路81aの管壁を通して熱交換される。
又、中間冷却器81の伝熱管路81aの熱交換された冷媒液は、出口側管路70を介して膨張弁7に導かれる。
又、液ガス熱交換器61の下流側で冷媒出口管路70から分岐路71を分岐させ、分岐路71を低段圧縮機3aの吐出室303に接続している。
【0069】
かかる構成において、分岐路82に流入した冷媒液は膨張弁83を通って減圧された後、中間冷却器81に流入する。該冷媒液は中間冷却器81内で蒸発し蒸発潜熱を奪うので、冷媒循環路2aから中間冷却器81の管路81aに流入した冷媒液の冷却効果を増すことができる。中間冷却器81で冷媒液は、例えば25℃に冷却される。
【0070】
従って、本実施形態によれば、前記第4実施形態と比べて、中間冷却器81による冷媒液の冷却効果を高めることができるので、中間冷却器81の出口側の熱媒液の温度をさらに低減できる。そのため、分岐路71から低段圧縮機3aの吐出室303に供給される冷媒液の温度をさらに低下できるので、低段圧縮機3aの吐出ガスの温度抑制効果を第4実施形態と比べてさらに向上できる。また、膨張弁7に流入する冷媒液の冷却効果も向上するため、冷凍装置1の冷凍能力をさらに向上できる。
【0071】
(実施形態6)
次に、本発明の冷凍装置に係る第6実施形態(二段圧縮二段膨張の場合で、本実施例は中間冷却器91を設け、受液器6よりの冷媒液は膨張弁92より、中間冷却器91内の膨張空間91aに噴出され、その下方の液空間に受液した冷媒液を膨張弁7を介して蒸発器8に導かれ、これにより二段膨張が可能となる。)を図8に基づいて説明する。本実施形態は、図5に示す第3実施形態と比べて、第3実施形態の液ガス熱交換器61を中間冷却器91と置き換えたものである。そして、中間冷却器91の上流側の冷媒循環路2aに膨張弁92を介設している。その他の構成は第3実施形態と同一である。
【0072】
かかる構成により、冷媒循環路2aの冷媒液は膨張弁92を通って減圧され、中間冷却器91の内部で低段圧縮機3aの吐出ガスから蒸発潜熱を奪って蒸発する。なお、本実施形態の中間冷却器91は、内部空間が形成された密閉容器形状をなし、内部空間で冷媒液と吐出ガスとが接触熱交換を行なう方式のものである。
【0073】
本実施形態によれば、第3実施形態と比べて、液ガス熱交換器61の代わりに中間冷却器91を配設しているため、膨張弁7に至る冷媒液の冷却効果をさらに向上できると共に(例えば1℃に冷却可能)、高段圧縮機3bの吸入室305に供給される冷媒ガスの冷却効果も向上できる(例えば6℃に冷却可能)。
また、図7に示す第5実施形態と比べて、中間冷却器91の内部に配設される伝熱管が不要となり、設備コストを低減することができる。
【0074】
(実施形態7)
次に、本発明の冷凍装置に係る第7実施形態を図9に基づいて説明する。図9は、本発明の冷凍装置に組み込まれた往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体100を示す。本実施形態の往復動型圧縮機は、2個のシリンダが対になって構成されている。
図9において、シリンダ101の内部にピストン102が摺動自在に配置されている。シリンダ101はシリンダ外包体103に装着されている。シリンダ外包体103の上部にはバルブプレート111が配置され、バルブプレート111の開口111aが、シリンダ101の上部開口と同心上に配置されている。バルブプレート111に空洞部が穿設され、該空洞部にリング形をなす板状の吸入弁105とその上方に筍スプリング106が収納されている。
【0075】
筍スプリング106の弾性力が吸入弁105をシリンダ101の上端に押し付けるように作用している。吸入弁105の下方には吸入ガス通路104a及び吸入ガス通路104aに連通した吸入室104が設けられている。ピストン102がシリンダ101内を下降した時、シリンダ101内は低圧となり、吸入室104との間で差圧を生じる。この時冷媒ガスgが吸入弁105を押し上げて、シリンダ101内に吸入される。
【0076】
バルブプレート111の上部に円板形状をなすバルブケージ112を取り付けて、バルブプレート111の開口111aを遮蔽している。バルブケージ112の下面には、ボルト113により截頭円錐形の弁プレート114が結合されている。
バルブケージ112には吐出ガス通路116aが穿設されるとともに、バルブケージ112に筍スプリング117が装着され、筍スプリング117の下方に、吐出ガス通路116aに面してリング形をなす板状の吐出弁118が装着されている。
ピストン102が上昇してシリンダ101の吐出ガス圧が大きくなると、吐出ガスgが吐出弁118を押し上げて吐出ガス通路116aに吐出する。
【0077】
バルブケージ112の上方は、ヘッドカバー121で覆われ、バルブケージ112の上方に吐出室116を形成している。吐出室116は吐出ガス通路116aに連通すると共に、シリンダ101から吐出した高圧の吐出ガスを冷媒循環路に送る。
吐出ガス通路116aから吐出室116に吐出された冷媒ガスgは、シリンダ外包体103に形成された通路107を通って、冷媒循環路に送られる。通路107は、吸入室104及び吸入ガス通路104aとシリンダ外包体103の隔壁を隔てて隣接配置されている。
【0078】
図9に示すように、ヘッドカバー121及びシリンダ外包体103には、夫々貫通孔121a及び121bが設けられ、該貫通孔には、夫々図1の分岐管路9に相当する分岐管路122a及び122bが接続されている。貫通孔121aはヘッドカバー内壁に開口し、貫通孔121bは通路107に開口している。そして、これら開口に夫々噴射ノズル123a及び123bが取り付けられている。これによって、図示しない受液器から凝縮した冷媒液が、分岐管路122a及び122bを通って吐出室116及び通路107に噴霧される。
ヘッドカバー121の表面には冷却水ジャケット124で被覆されて密閉された冷却水充填空間125を形成している。冷却水ジャケット124に冷却水供給孔124aが設けられ、冷却水供給孔124aから冷却水wが充填される。
【0079】
本実施形態によれば、冷媒液を噴射ノズル123a、123bにより吐出室116及び通路107に微細粒として噴霧しているので、吐出ガスからの蒸発潜熱の吸収効果を向上できる。
通路107は吸入室104及び吸入ガス通路104aとシリンダ外包体103の隔壁を隔てて隣接配置されているが、通路107に噴射ノズル123bで冷媒液を噴霧し、吐出ガスの温度上昇を抑えているので、通路107を通る冷媒ガスによって吸入室104及び吸入ガス通路104aを通る吸入ガスが加温するのを抑えることができる。
【0080】
(実施形態8)
本発明の冷凍装置に係る第8実施形態を図10に基づいて説明する。図10において、
本実施形態は、図1〜図3に示す前記第1実施形態と比べて、冷凍装置1の受液器6の下流側で冷媒液を分岐する分岐路9をなくすと共に、単段の往復動型圧縮機3の吐出室303内では、分岐管路9を接続しておらず、かつ噴射ノズル306を装着していない。その他の構成は第1実施形態と同一である。
【0081】
本実施形態では、凝縮した冷媒液の蒸発潜熱を利用した吐出室36内の吐出ガスの冷却を行なっていない。そして、吸入室36と吐出室24間の熱伝達をバルブプレート31とシリンダ外包体23との間に介装した断熱性ガスケット39で遮断するようにして、吸入室24の吸入ガスの昇温を抑制している。また、図3に示すように、複数のシリンダ21間でシリンダ外包体23に断熱空間iを設けることで、断熱効果を増すようにしている。
これによって、シリンダ21に吸入される前の吸入ガスの昇温を抑えることができるので、往復動型圧縮機の体積効率の低下を抑え、冷凍装置1の冷凍能力を維持できる。
【0082】
(実施形態9)
次に、本発明の冷凍装置に係る第9実施形態を図12(二段圧縮機3a、3bの一段膨張において中間冷却器81を用いる場合で、中間冷却器81内を、膨張弁83により冷媒液を液噴射して強制冷却しているとともに、受液器6の常温液冷媒を低段圧縮機3aの吐出室303に供給している図である。)に基づいて説明する。本実施形態は、図7に示す前記第5実施形態の中間冷却器81廻り以外の他の構成は第5実施形態と同一である。受液器6出口側の冷媒循環路2aは中間冷却器81を通す経路2aと該経路2aを分岐して中間冷却器81をバイパスする経路2b及び71aが設けられ、受液器6の常温液冷媒を低段圧縮機3aの吐出室303のノズル306に接続している。
【0083】
このような構成を取ることにより、中間熱交換器81を通った低温液冷媒を低段圧縮機3aの吐出室303に供給する場合に比較してより好ましい下記のような効果がある。
【0084】
中間熱交換器81及び低温液体配管81aは外気(又は機械室温)からの加熱を避けるため断熱される。
特にバルブ等で液封状態において外部から熱侵入があると液膨脹を起こして配管部の弱いところから破壊が生じる恐れがあるが、本実施例では中間冷却器81を通す経路2aと該経路2aを分岐して中間冷却器81をバイパスする経路2b及び71aが設けられて、受液器6の常温液冷媒を低段圧縮機3aの吐出室303に直接導いているので、前記した課題が解決出来る。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、往復動型圧縮機内部での吸入冷媒ガスの温度上昇を抑制することによって、高密度の冷媒ガスを吸入できるので、体積効率を向上でき、それによって、往復動型圧縮機が組み込まれた冷凍装置等のヒートポンプ装置の能力を向上させることができる。
そして更に、圧縮機内部での吸入ガスの温度上昇を抑え且つ冷却水を使用しないことも可能とした往復動型圧縮機の高効率のヒートポンプ装置や冷凍装置を得ることが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒循環路に往復動型圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を介設したヒートポンプサイクルを構成してなるヒートポンプ装置において、
凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を往復動型圧縮機のシリンダ上部組立体に設けられた吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に戻す冷媒液戻し流路を設け、
該冷媒液戻し流路を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給し、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成したことを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記吐出室又は吐出空間に冷媒液戻し流路に接続された噴射ノズルを設け、冷媒液を該噴射ノズルから該吐出室又は吐出空間に噴射するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
往復動型圧縮機が低段圧縮機と高段圧縮機とからなり、高段圧縮機から吐出され凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を低段圧縮機の吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に戻す冷媒液戻し流路を設け、
該冷媒液戻し流路を介して低段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ装置。
【請求項4】
高段圧縮機から吐出され凝縮器で凝縮した冷媒液の一部を高段圧縮機の前記吐出室又は吐出空間に戻す第2の冷媒液戻し流路を設けると共に、該第2の冷媒液戻し流路に増圧機を介設し、
第2の冷媒液戻し流路を介して高段圧縮機の該吐出室又は吐出空間に冷媒液の一部を供給するように構成したことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項5】
凝縮器と膨張弁間の冷媒循環路に冷媒液熱交換器を介設し、該冷媒液熱交換器に低段圧縮機から吐出した冷媒ガスを高段圧縮機の前記吸入室又は吸入空間に導く冷媒循環路を接続して、凝縮器から出た冷媒液を低段圧縮機から吐出された冷媒ガスで冷却するように構成したことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項6】
凝縮器と膨張弁間の冷媒循環路に冷媒液熱交換器を介設し、該冷媒液熱交換器に低段圧縮機から吐出した冷媒ガスを高段圧縮機の前記吸入室又は吸入空間に導く冷媒循環路を接続して、凝縮器から出た冷媒液を低段圧縮機から吐出された冷媒ガスで冷却するように構成し
前記冷媒液熱交換器を冷媒液戻し流路又は第2の冷媒液戻し流路の上流側の冷媒循環路に介設し、該冷媒液熱交換器で冷却した冷媒液の一部を冷媒液戻し流路又は第2の冷媒液戻し流路に供給するように構成したことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプ装置。
【請求項7】
凝縮器と膨張弁間の冷媒循環路に中間冷却器を介設し、該中間冷却器に低段圧縮機から吐出した冷媒ガスを高段圧縮機の前記吸入室又は吸入空間に導く冷媒循環路を接続し、
該中間冷却器で凝縮器から出た冷媒液の一部を蒸発させることにより、凝縮器から出た他の冷媒液及び低段圧縮機から吐出された冷媒ガスを冷却するように構成したことを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプ装置。
【請求項8】
冷媒として、比熱比が大きいNHを用いることを特徴とする請求項1記載のヒートポンプ装置。
【請求項9】
シリンダ上部組立体に吸入弁を介してシリンダと連通する吸入室と、吐出弁を介してシリンダと連通する吐出室とを備えてなる冷媒用往復動型圧縮機において、
吐出ガスを凝縮して得られた冷媒液の一部を受け入れる冷媒液供給口を吐出室又は該吐出室に連通した吐出空間に設け、
該冷媒液供給口を介して該吐出室又は吐出空間に冷媒液を受け入れ、冷媒液の蒸発潜熱により該吐出室又は吐出空間を冷却するように構成したことを特徴とする冷媒用往復動型圧縮機。
【請求項10】
前記吐出室又は吐出空間に冷媒液供給口に連通した噴射ノズルを設け、冷媒液を該噴射ノズルを介して該吐出室又は吐出空間に噴射するように構成したことを特徴とする請求項9に記載の冷媒用往復動型圧縮機。
【請求項11】
吸入室と吐出室間に断熱材を介装し、吸入室と吐出室間の伝熱を遮断するように構成したことを特徴とする請求項9に記載の冷媒用往復動型圧縮機。
【請求項12】
シリンダ上部組立体を、
シリンダを遮蔽し吐出ガス通路を形成すると共に、該吐出ガス通路に吐出弁を設けた遮蔽板と、
該遮蔽板の上方を覆って吐出室を形成したヘッドカバーと、
該遮蔽板の下方に配置されシリンダを内包するとともに吸入弁を内蔵したバルブプレートと、
該バルブプレートの下方に配置され吸入室を形成したシリンダ外包体とで構成するとともに、
バルブプレートとシリンダ外包体との間に板状の断熱性ガスケットを介装し、
バルブプレート及び断熱性ガスケットを拡径してバルブプレート及び断熱性ガスケットの外周端縁部を前記ヘッドカバーとシリンダ外包体の接合部で両側から挟持固定したことを特徴とする請求項11に記載の冷媒用往復動型圧縮機。
【請求項13】
シリンダ外包体が複数のシリンダを内包し、該複数のシリンダで挟まれる領域で断熱性ガスケットとの間に断熱空間を形成されてなることを特徴とする請求項12に記載の冷媒用往復動型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−163192(P2011−163192A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26088(P2010−26088)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】