説明

ビスマス化合物、アンチモン化合物および環状カーボネート製造用触媒

【課題】新規なビスマス化合物又はアンチモン化合物を提供すること、及びそれら新規な化合物からなる環状カーボネート合成触媒を提供すること。
【解決手段】一般式(I)


(式中、Mはビスマスまたはアンチモン原子を、Xはヨウ素原子、炭素数1−20アルコキシ基等を、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子等を意味する)で表される新規化合物。この化合物は環状カーボネート合成触媒として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビスマス化合物、アンチモン化合物およびその化合物からなる環状カーボネート製造用触媒に関するものである。また、その触媒を用いた環状カーボネート製造用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からカーボネートの製法として所謂ホスゲン法が知られていたが、近年、そのホスゲン法よりも環境に優しい製法である所謂二酸化炭素固定化法についての研究が盛んに行われている。この二酸化炭素固定化法の一つとして、エポキサイドに炭酸ガスを反応させて環状カーボネートを製造する方法があり、その反応触媒として、タングステン酸化物またはモリブデン酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の酸化物を主体とするヘテロポリ酸、またはその塩(特許文献1)、3−八面体型スメクタイト及び/又はアルカリ金属包含3−八面体型スメクタイトの少なくとも一種(特許文献2)、第4級アンモニウム基を交換基として有する固体強塩基性アニオン交換体(特許文献3)、第4級ホスホニウム基を交換基として有するアニオン交換樹脂(特許文献4)等が報告されている。
【0003】
一方、ジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシン骨格を持つリン化合物(非特許文献1、2)が知られている。しかし、この化合物が環状カーボネート製造用触媒として有効であるとは知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−206847号公報
【特許文献2】特開2003−96074号公報
【特許文献3】特公平8−32700号公報
【特許文献4】特開平9−235252号公報
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc.115 p2690(1993)
【非特許文献2】Inorg. Chem. 36 p5082(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的・課題は環状カーボネート合成触媒として利用可能な新規なビスマス及びアンチモン化合物を提供することにあり、特に、エポキシドと二酸化炭素との反応による環状カーボネート合成触媒として利用可能な新規なビスマス及びアンチモン化合物を提供することにある。また、新規なビスマス及びアンチモン化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的・課題を達成するため鋭意研究を続ける間に、分子内に配位可能なイオウ原子を含む環状のジフェノキシド骨格を有するビスマス化合物およびアンチモン化合物に到達し、これらの化合物が意外にも環状カーボネート合成触媒として機能することを見出した。しかも、これらの化合物が、特に、エポキシドと二酸化炭素との反応による環状カーボネート合成触媒として有効であることを見出した。そのうえ、これらのビスマス化合物およびアンチモン化合物が文献未記載の化合物であることも判明した。これらの知見に基づいてさらに研究を重ね、遂に本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(I)
【化1】

式中、Mはビスマスまたはアンチモン原子を、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1−20アルコキシ基を、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基またはハロゲン原子を意味する)で表される化合物、およびそれらの環状カーボネート合成触媒としての用途に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、新規なビスマス化合物およびアンチモン化合物が提供される。これら化合物は環状カーボネート合成触媒に利用可能であり、特に、エポキシドと二酸化炭素との反応による環状カーボネート合成触媒として利用可能である。
また、本発明により、各種環状カーボネートが低圧条件、かつ低減された触媒使用量で効率よく合成できるので、その点でも有利である。
本発明の新規なビスマス化合物は、有機ビスマス化合物への中間体として有用であるばかりか、二酸化炭素との結合力が優れているところから、二酸化炭素センサとして有望である。また、本発明の新規なアンチモン化合物も同様に、有機アンチモン化合物への中間体として有用であるばかりか、二酸化炭素との結合力が優れているところから、二酸化炭素センサとして有望である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における上記一般式(I)で示される化合物において、Mはビスマス原子またはアンチモン原子であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1−20アルコキシ基である。前記アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、イロプロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基などが挙げられる。また、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基またはハロゲン原子を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イロプロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基などのアルコキシ基およびフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0010】
一般式(I)で示される化合物は、一般式(II)
【化2】

(式中、R、R、R及びRは前記と同じ意味を示し、Zはアルカリ金属原子を示す)で表される化合物と
一般式(III)
MX (III)
(式中、MおよびXは前記と同じ意味を示す)で表される化合物を反応させることにより製造することができる。前記Zとしては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子が好ましい。
前記式(II)の化合物は対応するジフェノール化合物から公知の方法により容易に調製することができる。また、前記式(III)の化合物は市販品を利用すればよい。
【0011】
一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物を原料とする一般式(I)で表される化合物の製造において、2つの原料の混合比は反応の経済性を考えると1:1であることが好ましいが、一方の原料を過剰に用いることもでき、一般式(II)と一般式(III)で示される原料の比は1:2〜2:1(モル)の間で実施できる。
反応温度は、−100℃から+150℃の間で実施できるが、経済性や反応の選択性を考慮すると−30℃から80℃の間で行うのが好ましい。
反応時間は、0.1−50時間の間で行えばよい。
【0012】
前記反応は、必ずしも溶媒を必要としないが、反応の効率を考えると溶媒を使用して実施することが好ましい。好ましい溶媒としては、エーテル系溶媒、芳香族炭素系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられ、具体的にはテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、トルエン、キシレン、ベンゼン、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどが例示される。また、一般式(I)においてXが炭素数1−20のアルコキシ基の場合には、アルコキシ基と同一の炭素鎖を持つアルコールを溶媒として利用することもできる。
【0013】
一般式(I)で示される化合物は環状カーボネート製造用触媒として有用であり、特にエポキシ化合物と二酸化炭素との反応による環状カーボネートの製造用触媒として有用である。エポキシ化合物としては、特に式(IV)に示される化合物が好ましい。
【化3】

(式中、Rはアルキル基、アラルキル基、ハロアルキル基、アリール基を示す)。
【0014】
上記式(IV)で示される化合物において、アルキル基はメチル基、エチル基、プロピル基、t-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ヘキサデシル基などの炭素数1−20のアルキル基、アラルキル基は前記アルキル基のアリール置換基、ハロアルキル基は前記アルキル基のハロゲン原子置換基、アリール基はフェニル基、アルキル基置換フェニルキ、ハロゲン原子置換フェニル基などが挙げられる。
好ましいエポキシ化合物としては、具体的には、プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、エポキシプロパン、エポキシブタン、エポキシオクタン、スチレンオキシド等が例示される。
【0015】
前記式(IV)の反応の反応温度は特に制限はないが、0℃から300℃、好ましくは20℃−150℃で行われる。反応時間も特に制限はないが、0.1−50時間で行われる。また、前記反応における二酸化炭素圧も特に制限はないが、好ましくは101.3−1014kPaの範囲で行われる。
原料となるエポキシ化合物と触媒との比率は、100000:1〜1:1(モル)の範囲で実施できるが、反応の効率および経済性を考慮すると30000:1〜10:1(モル)で行うのがこのましく、10000:1〜100:1(モル)で行うのがより好ましい。
前記式(IV)の反応は、溶媒を必要としないが、溶媒を使用して実施することもできる。用いることのできる溶媒としては、エーテル系、塩素化炭化水素系、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系などが挙げられ、具体的にはジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ヘキサン等が例示される。
【0016】
本反応では、一般式(I)で示される化合物を単独で触媒として用いることもできるが、反応効率を高めるためには塩類を助触媒として用いることが好ましい。助触媒として用いることができる塩類としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化リチウム、塩化リチウム等のハロゲン化アルカリ金属、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウムなどのハロゲン化アルカリ土類金属、ヨウ化アンモニウムなどのアンモニウム塩、臭化テトラブチルアンモニウムなどの有機アンモニウム塩、ヨウ化フェニルトリメチルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウムなどの有機ホスホニウム塩などが例示される。
前記触媒と前記助触媒の比率は、10:1〜1:100(モル)の範囲で実施できる。
【0017】
反応生成混合物から所望の目的生成物を分離するには、蒸留、再結晶、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィーなどの通常の分離精製方法を適用することにより容易に達成される。
【0018】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
【0019】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンの合成
【0020】
ナトリウムメトキシド0.27g(5.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)に窒素雰囲気下2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(0.90g、2.5mmol)を加え室温で5時間撹拌し、ナトリウム2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノラート)のテトラヒドロフラン溶液を調製した。この溶液を0℃に冷却したのち、0℃に冷却した三ヨウ化ビスマス(1.47g、2.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(20mL)中に約10分かけて加えた。反応液を0℃で1時間撹拌した後、自然に室温まで昇温した。溶媒を減圧下留去後、残渣をトルエンにて抽出しトルエンを減圧下留去することにより表題化合物を得た(1.30g、収率75%)。
この化合物の分析データ等は下記のとおりであった。
1H NMR (C6D6, 499.1 MHz): δ1.59 (18H, s), 2.09 (6H, s), 7.04(2H, d, J = 2 Hz), 7.24(2H, d, J = 2 Hz). 13C NMR (CDCl3, 125.4 MHz): δ20.35, 30.04, 35.56, 122.95, 129.17, 130.55, 133.90, 145.13, 158.19.
元素分析:計算値(C22H28BiIO2S)C, 38.16; H, 4.08. 実測値 C, 38.15; H, 4.02.
高分解能質量分析:計算値(C22H28BiIO2S)692.0658. 実測値 692.0629
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図1に示す(水素原子は省略してある)。
(実施例2)
【0021】
2−メトキシジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンの合成
【0022】
ナトリウム1.28g(55.7mmol)とメタノール50mLを反応させ、ナトリウムメトキシド溶液を調製した。この溶液に窒素雰囲気下で三塩化ビスマス(5.72g、18.1mmol)を0℃で加え、ビスマストリメトキシドとナトリウムメトキシドの混合物を調製した。30分撹拌後、0℃で2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(6.50g、18.1mmol)を一度に加えることにより、ナトリウム2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノラート)を発生させると同時にビスマストリメトキシドと反応させ、表題化合物を生成させた。反応は0℃で1時間撹拌し、その後自然に室温まで昇温して行った。溶媒を減圧下留去後、残渣をトルエンにて抽出しトルエンを減圧下留去することにより表題化合物を得た(6.80g、収率63%)。
この化合物の分析データ等は下記のとおりであった。
1H NMR (CDCl3, 499.1 MHz): δ1.39(18H, s), 2.29(6H, s), 4.54(3H, s), 7.07(2H, s), 7.28(2H, s). 13C NMR (CDCl3, 125.4 MHz): δ20.35, 29.78, 35.19, 52.68, 121.87, 127.67, 129.69, 134.39, 142.46, 160.75.
元素分析: 計算値(C23H31BiO3S)C, 46.31; H, 5.24. 実測値 C, 46.64; H, 5.26.
高分解能質量分析:計算値(C23H31BiO3S)596.1798. 実測値 596.1835
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図2に示す(水素原子は省略してある)。
(実施例3)
【0023】
2−メトキシジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアスチボシンの合成
【0024】
ナトリウム0.690g(30.0mmol)とメタノール50mLを反応させ、ナトリウムメトキシド溶液を調製した。この溶液に窒素雰囲気下で三塩化アンチモン(2.28g、10.0mmol)を0℃で加え、アンチモントリメトキシドとナトリウムメトキシドの混合物を調製した。30分撹拌後、0℃で2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(3.59g、10.0mmol)を一度に加えることにより、ナトリウム2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノラート)を発生させると同時にアンチモントリメトキシドと反応させ、表題化合物を生成させた。反応は0℃で1時間撹拌し、その後50℃で20分加熱することにより行った。溶媒を減圧下留去後、残渣をトルエンにて抽出しトルエンを減圧下留去することにより表題化合物を得た(4.70g、収率92%)。
この化合物の分析データ等は下記のとおりであった。
1H NMR (C6D6, 499.1 MHz): δ1.50 (18H, s), 2.02 (6H, s), 4.14(3H, s), 7.06(2H, s), 7.37(2H, s). 13C NMR (C6D6, 125.4 MHz): δ20.34, 30.07, 35.60, 52.68, 121.94, 129.14, 130.36, 132.93, 140.57, 158.13.
元素分析: 計算値(C23H31O3SSb)C, 54.24; H, 6.13. 実測値 C, C, 54.54; H, 6.14.
高分解能質量分析:計算値(C23H31O3SSb)508.1032. 実測値 508.1034.
単結晶X線構造解析で得られた構造図を図3に示す(水素原子は省略してある)。
(実施例4)
【0025】
攪拌子を入れた容積100mLのオートクレーブに窒素雰囲気下、2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシン0.028mmol、(トリメチル)(フェニル)ホスホニウムヨージド0.112mmol、プロピレンオキシド69mmolを加えた後、室温にて1823.4kPa(18気圧)の二酸化炭素を充填した。100℃で80分撹拌しながら反応させた。オートクレーブを0℃に冷却した後、残存する二酸化炭素を放出させ、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率52%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率52%であることを確認した。
【比較例1】
【0026】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを加えなかった以外は、実施例4と同様に反応を行ったが、プロピレンカーボネートを得ることができなかった。
1H NMR及びGC-MS分析によりプロピレンオキシドは全く消費されておらず、プロピレンカーボネートの収率も0%であることを確認した。
(実施例5)
【0027】
(トリメチル)(フェニル)ホスホニウムヨージドの代わりにヨウ化リチウムを用い、反応時間を60分とした以外は実施例4と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率81%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率81%であることを確認した。
【比較例2】
【0028】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを加えなかった以外は、実施例5と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率、プロピレンカーボネートの選択率、収率が表1のとおりであることを確認した。
[実施例6−14]
【0029】
実施例4におけるプロピレンカーボネート合成において、触媒の種類と量、CO2圧および反応時間をそれぞれ表1に示すとおり変えたこと以外は、実施例4と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率、プロピレンカーボネートの選択率、収率が表1のとおりであることを確認した。
【0030】
実施例4−14および比較例1−2で得られた結果を表1に示す。
【表1】

a Bi-cat1:2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシン.
Bi-cat2:2−メトキシジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシン.
Sb-cat1:2−メトキシジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアスチボシン.
表1中、実施例9、10、11でのCO圧はそれぞれ25、30、40気圧であるが、実施例9、10、11以外の実施例、及び比較例1、2でのCO圧はすべて18気圧である。
(実施例15)
【0031】
攪拌子を入れた容積400mLのガラス製フラスコに窒素雰囲気下、2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシン0.028mmol、ヨウ化リチウム0.112mmol、プロピレンオキシド23mmolを加えた後、室温にて101.3kPa(1気圧)の二酸化炭素を充填し、そのまま室温にて撹拌し、24時間反応させた。反応の進行と共に二酸化炭素圧が減少したので二酸化炭素圧が101.3kPa(1気圧)となるようにときどき二酸化炭素を追加充填した。フラスコを0℃に冷却した後、残存する二酸化炭素を放出させ、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率98%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率98%であることを確認した。
【比較例3】
【0032】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを加えなかった以外は、実施例15と同様に反応を行行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率26%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率26%であることを確認した。
(実施例16)
【0033】
ヨウ化リチウムの代わりにヨウ化ナトリウムを用いたこと以外は実施例15と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率91%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率91%であることを確認した。
【比較例4】
【0034】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを加えなかった以外は、実施例16と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率14%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率14%であることを確認した。
(実施例17)
【0035】
ヨウ化リチウムの代わりに(トリメチル)(フェニル)ホスホニウムヨージドを用いたこと以外は実施例15と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率76%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率76%であることを確認した。
【比較例5】
【0036】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを加えなかった以外は、実施例17と同様に反応を行ったが、プロピレンカーボネートを得ることができなかった。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシドは全く消費されておらず、プロピレンカーボネートの収率も0%であることを確認した。
(実施例18)
【0037】
ヨウ化リチウムの代わりにテトラブチルアンモニウムヨージドを用いたこと以外は実施例15と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率77%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率77%であることを確認した。
【比較例6】
【0038】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを加えなかった以外は、実施例18と同様に反応を行ったが、プロピレンカーボネートを得ることができなかった。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシドは全く消費されておらず、プロピレンカーボネートの収率も0%であることを確認した。
(実施例19)
【0039】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンの代わりに2−メトキシジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンを用いたこと以外は、実施例15と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率92%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率92%であることを確認した。
(実施例20)
【0040】
2−ヨードジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアビスモシンの代わりに2−メトキシジベンゾ[d,g][1,3,6,2]ジオキサチアスチボシンを用いたこと以外は、実施例15と同様に反応を行い、プロピレンカーボネートを得た。
1H NMR及びGC-MS分析により、プロピレンオキシド転化率87%、プロピレンカーボネートの選択率100%、収率87%であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図
【図2】実施例2の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図
【図3】実施例5の化合物の単結晶X線構造解析で得られた構造図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

(式中、Mはビスマスまたはアンチモン原子を、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1−20アルコキシ基を、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基またはハロゲン原子を意味する)
【請求項2】
一般式(I)で表される、環状カーボネート製造用触媒。
【化2】

(式中、Mはビスマスまたはアンチモン原子を、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1−20アルコキシ基を、R、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1−20のアルキル基、炭素数1−20のアルコキシ基またはハロゲン原子を意味する)
【請求項3】
環状カーボネートが下記一般式(II)で表される請求項2記載の環状カーボネート製造用触媒。
【化3】

【請求項4】
請求項2又は3記載の触媒存在下、エポキシ化合物を二酸化炭素と反応させることを特徴とする環状カーボネートの製造方法。
【請求項5】
環状カーボネートが下記一般式(II)で表される請求項4記載の環状カーボネートの製造方法。
【化4】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−189608(P2008−189608A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26634(P2007−26634)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】