ビタビ復号装置、ビタビ復号方法、プログラム、およびプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
【課題】2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置において、トレリス状態の遷移を表すビットパターンにおける2次元変調のパターンの有無を考慮に入れたビタビ復号を行い、エラーレートを低減する。
【解決手段】ビタビ復号装置21は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づきパスメトリックを計算することによりビタビ復号する2次元ビタビ復号回路5を備え、2次元ビタビ復号回路5が上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号する。これにより、誤りパスを選択する確率を低減することができる。
【解決手段】ビタビ復号装置21は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づきパスメトリックを計算することによりビタビ復号する2次元ビタビ復号回路5を備え、2次元ビタビ復号回路5が上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号する。これにより、誤りパスを選択する確率を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムメモリ再生信号などの2次元信号をビタビ復号するビタビ復号装置、ビタビ復号方法、プログラム、およびプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラフィを用いて情報を2次元的に、すなわちページデータとして記録し再生するホログラムメモリが、次世代の高密度記録再生システムとして脚光を浴びつつある。
【0003】
図16を参照しながら、ホログラムメモリシステムの概要について説明する。図16は、ホログラムメモリシステムの概要を模式的に示す図である。図16に示すように、このシステムでは、情報データを記録する場合には、複数の画素よりなる空間光変調器60(例えば液晶パネルやDMD(Digital Micromirror Device)など)を用いて、記録すべき情報データに基づいて記録信号光を空間光変調し、レンズ61を通した記録信号光とコヒーレントな記録参照光とを干渉させることにより2次元的な干渉縞を生成し、この干渉縞により形成される像を2次元情報としてホログラム媒体62に記録する。
【0004】
ここで、ホログラム媒体62としては、ニオブ酸リチウムに代表される無機系のフォトリフラクティブ結晶を用いた書き換え型媒体や、有機高分子材料であるフォトポリマーを用いた追記型媒体がある。
【0005】
一方、記録された干渉縞をホログラム媒体62から読み出すことにより情報データを再生する場合には、ホログラム媒体62に対して記録参照光と同じ入射角度にて再生参照光を照射して生成される反射光あるいは透過光を、レンズ63を通して複数の画素を有する受光素子64(例えばCCDやCMOSセンサなど)により受光して再生信号を生成し、該生成された再生信号を用いて元の情報データを再生する。
【0006】
なお、上記のようにして得られた2次元的な再生信号は、信号の2次元波形を示していると捉えることもできる。また、上記2次元的な再生信号のうちある方向に沿って配列された再生信号は、信号の1次元波形を示していると捉えることもできる。このように、再生信号を波形と捉えて「再生波形信号」と称する場合もある。
【0007】
このように上記システムでは、2次元のページデータ単位で再生が行われるため、1次元で再生を行う従来の光ディスクよりも大幅に再生速度を向上させることが可能となる。
【0008】
(判定帰還ビタビ復号法)
ところで、ホログラムメモリシステムにおいては、その記録過程及び再生過程において種々の雑音が混入する(特に、記録媒体の不均質性に起因して雑音が発生する場合が多い)ことがあり、この雑音の影響によりSN比(信号対雑音電力比)が低下する。また、隣接する画素からの再生信号の影響、すなわち画素間干渉の発生もあり、これによっても正確に元の信号を再生できない場合がある。
【0009】
そこで、従来、雑音および画素間干渉の影響を低減して、正確に情報を再生する手法が検討されている。なかでも、受光素子から出力される再生信号をビタビ復号する手法が研究されている。特許文献1には、ビタビ復号の一手法である判定帰還ビタビ復号法(Decision Feedback Viterbi Algorithm)が開示されている。
【0010】
(差分検出法)
一方、従来のホログラムメモリシステムにおいては、差分検出法と呼ばれる検出方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0011】
差分検出法は、定重み符号と呼ばれる変調方式を用いて2次元変調されたページデータの2次元再生信号を復号する際に使用されるものである。代表的な定重み符号としては、変調ブロックが2つの画素からなる1:2差分符号や、変調ブロックが2×2、すなわち4つの画素からなる2:4符号などがある。
【0012】
(2:4符号)
図17を参照しながら、2:4符号について説明する。図17に示す2:4符号の場合、4つの画素のうち1画素だけが’1’、残りの3画素が’0’であるような変調ブロックに符号化される。したがって、このような変調ブロックは図17に示すように4種類ある。すなわち、[1,0;0,0]、[0,1;0,0]、[0,0;1,0]および[0,0;0,1]の4種類である([k,l;m,n]は、行ベクトル[k,l]および[m,n]を列方向に並べた行列を意味するものとする。以下においてもこの表記に準じて行列を表記する)。そして、2ビットの情報ビット(2の2乗、すなわち4通り)を変調して4画素の変調ブロックに変換することから、2:4符号と呼ばれる。図17では、2ビットの情報ビット「00」を[1,0;0,0]に、2ビットの情報ビット「01」を[0,1;0,0]に、2ビットの情報ビット「10」を[0,0;1,0]に、2ビットの情報ビット「11」を[0,0;0,1]に変換している。
【0013】
差分符号においては、論理値「1」は明画素(受光素子上の対応する画素が明るい点となる)に、また、論理値「0」は暗画素(受光素子上の対応する画素が暗い点となる)に対応してホログラム媒体に記録される。差分検出方式では、各変調ブロックの再生信号の4画素のうち最も輝度が高い画素、すなわち再生信号レベルが最も大きい画素を「1」と判定し、それ以外の画素を「0」と判定することによって復号ビットが決定される。
【特許文献1】米国特許第5、740、184号明細書(1998年4月14日発行)
【特許文献2】特開平9−197947号公報(公開日:平成9年7月31日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、ホログラムメモリシステムにおいては、ビタビ復号方式と差分検出方式という異なる方式が提案されていた。差分検出方式は、定重み符号で変調されたページデータを前提とする方式であるため、ホログラムメモリを規格化する場合は、ページデータの変調方式として所定の定重み符号を規定する必要がある。このような規格に基づくホログラムメモリ媒体の再生装置において、ビタビ復号方式を採用した場合、差分検出方式のように定重み符号の特徴を考慮に入れることができないため、復号エラーレートを十分に低減することができないという課題があった。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、定重み符号など所定の変調方式によって変調されたページデータに対して、ビタビ復号方式を用いてエラーレートの低いビット復号が可能なビタビ復号装置、ビタビ復号方法、プログラム、およびプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段を備え、上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係るビタビ復号方法は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップを含み、上記ビタビ復号ステップにて、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するにあたり、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、上記遷移を除去することができる。
【0019】
よって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)が削減されるため、誤りパスを選択する確率が低減される。
【0020】
したがって、ビタビ復号するにあたり、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段が、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含み、かつ、当該2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないとき、上記ビットパターンにより表されている遷移を除去することができる。
【0023】
よって、上記ビットパターン中の2次元変調のブロックとして特定された部分が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定するため、効率的な判定を行うことができる。
【0024】
したがって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を効率的に実行することができるという効果を奏する。
【0025】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置とに基づいて、上記復号対象の行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、上記2次元変調の変調方式と、上記ページデータにおける復号対象の行位置および列位置とを用いて、上記復号対象の行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないか否かを認識し、上記遷移を予め除去することができる。
【0027】
よって、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むことを判定する処理が不要となる。
【0028】
したがって、ビタビ復号するにあたり、簡易な回路構成によって、エラーレートが低いビット復号処理を行うことができるという効果を奏する。
【0029】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段と、上記ビタビ復号手段により復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力手段とを備え、上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0030】
また、本発明に係るビタビ復号方法は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップと、上記ビタビ復号ステップにより復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力ステップとを含み、上記ビタビ復号ステップにて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するにあたり、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、当該復号対象行の直前の行に対応する復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、上記遷移を除去することができる。
【0032】
よって、上記2次元再生信号における復号対象行が偶数行であっても、当該復号対象行の直前の行に対応する復号ビットよりなる行を使用することにより、復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移からなるパスを除去することができる。そのため、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)をより多く除去できるため、誤りパスを選択する確率がより低減される。
【0033】
したがって、ビタビ復号するにあたり、エラーレートがより低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0034】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段が、上記結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、上記結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含み、かつ、当該2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないとき、上記ビットパターンにより表されている遷移を除去することができる。
【0036】
よって、上記結合して得られるビットパターン中の2次元変調のブロックとして特定された部分が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定するため、効率的な判定を行うことができる。
【0037】
したがって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を効率的に実行することができるという効果を奏する。
【0038】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置および上記復号ビットとに基づいて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のパターンを含まないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0039】
上記の構成によれば、上記2次元変調の変調方式と、上記ページデータにおける復号対象の行位置および列位置および上記復号ビットとを用いて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないか否かを認識し、上記遷移を予め除去することができる。
【0040】
よって、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むことを判定する処理が不要となる。
【0041】
したがって、ビタビ復号するにあたり、簡易な回路構成によって、エラーレートが低いビット復号処理を行うことができるという効果を奏する。
【0042】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記ページデータが同期パターンを含んでおり、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、上記ブロック境界判定手段が、2次元変調のブロックの大きさと、上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置とに基づいて上記ビットパターンの位置を認識し、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定する構成としてもよい。
【0043】
上記の構成によれば、上記ページデータに含まれる同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて上記ビットパターンの位置を認識することができ、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定することができる。
【0044】
よって、上記ビットパターンの位置を容易に認識することができ、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むことを判定する処理を容易に行うことができる。
【0045】
したがって、ビタビ復号するにあたり、容易な処理で上記判定を実現でき、これによって、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を行い、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0046】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記ページデータが同期パターンを含んでおり、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて、上記復号対象ビットの行位置および列位置を決める構成としてもよい。
【0047】
上記の構成によれば、上記ページデータに含まれる同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて上記復号対象ビットの行位置および列位置を決めることができる。
【0048】
よって、上記ビットパターンの位置を容易に認識することができ、該ビットパターンの位置に基づいて、該ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含まないかどうかが容易にわかる。
【0049】
したがって、ビタビ復号するにあたり、簡易な回路構成によって、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を行い、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0050】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記同期パターンは、上記ページデータにおいて、2値のいずれか一方の値が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されている構成としてもよい。
【0051】
上記の構成によれば、上記同期パターンは、上記ページデータにおいて、2値のいずれか一方の値が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されている。
【0052】
よって、例えば、上記同期パターンは、2×2すなわち4画素の論理値「1」からなり、上記ページデータの左上隅に配置される。
【0053】
したがって、上記ページデータから上記同期パターンを検出することにより、該同期パターンその形状および大きさを得ることができるという効果を奏する。
【0054】
なお、上記ビタビ復号装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記ビタビ復号装置をコンピュータにて実現させるビタビ復号装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0055】
以上のように、本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段を備え、上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号する。
【0056】
また、本発明に係るビタビ復号方法は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップを含み、上記ビタビ復号ステップにて、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号する。
【0057】
よって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)が削減されるため、誤りパスを選択する確率が低減される。
【0058】
したがって、ビタビ復号するにあたり、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図13に基づいて説明すると以下の通りである。
【0060】
図1を参照しながら、本実施形態に係るビタビ復号装置21を含むホログラムメモリ再生システム20について説明する。図1は、本実施形態に係るビタビ復号装置21を含むホログラムメモリ再生システム20の構成を示すブロック図である。
【0061】
図1に示すように、ホログラムメモリ再生システム20は、ホログラムメモリ再生装置1、バッファメモリ2、ビタビ復号装置21を備えて構成される。そして、ビタビ復号装置21は、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4(同期パターン検出手段)、2次元ビタビ復号回路5(ビタビ復号手段)、復号ビット行出力回路6(復号ビット出力手段)、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、ブロック境界判定回路9(ブロック境界判定手段)、および変調則判定回路10(2次元変調パターン検出手段)を備えて構成される。
【0062】
なお、後述するように、ビタビ復号装置21は、エラーレートの観点から2次元波形等化回路3を備えて構成されることが望ましいが、回路規模の増大を抑える観点から2次元波形等化回路3を備えない構成としてもよい。
【0063】
(ホログラムメモリ再生装置1)
ホログラムメモリ再生装置1は、図16にて説明したホログラムメモリシステムのうち再生側の構成に相当するものである。すなわち、干渉縞として情報が記録されたホログラム媒体(図示せず)に対して再生参照光を照射することにより生成される反射光あるいは透過光(コヒーレント光)を、レンズを通して複数の画素を有する受光素子(例えばCCDやCMOSセンサなど)によって受光して再生信号を生成する装置である。なお、再生信号を波形と捉えて「再生波形信号」と称することもある。
【0064】
ここで、図2を参照しながら、ホログラムメモリ再生装置1における、図示しないホログラム媒体に記録されているページデータ50について説明する。図2は、ホログラムメモリ再生装置1における、図示しないホログラム媒体に記録されているページデータ50のフォーマットを模式的に示す図である。
【0065】
図示しないホログラム媒体には、図2に示すフォーマットのページデータ50が記録されている。図2に示すように、ページデータ50は、1つの同期パターン51と複数の変調ブロック52とから構成される。2次元変調が2:4符号の場合、同期パターン51は、2×2、すなわち4画素の論理値「1」からなり、通常、ページデータ50の左上隅に配置されている。ただし、同期パターン51が配置される位置は、ページデータ50の左上隅に限られるものではない。
【0066】
なお、論理値「1」は明画素、論理値「0」は暗画素に対応してホログラム媒体に記録される。なお、同期パターン51は4画素の論理値「1」から構成されることに限定されるものではない。
【0067】
変調ブロック52は、ユーザデータなどの情報ビットが、2:4符号によって2次元変調されている。なお、2:4符号とは、図17を用いて説明したように、2ビットの情報ビットを変調して4画素の変調ブロックに変換するものである。なお、変調ブロック52に対する2次元変調は2:4符号の定重み符号に限定されるものではない。
【0068】
(バッファメモリ2)
バッファメモリ2は、ホログラムメモリ再生装置1によって生成された再生信号をページデータ単位で記憶する記憶装置である。なお、バッファメモリ2に記憶されるページデータ単位の再生信号は、図16を用いて説明したように、隣接する画素からの再生信号の影響、すなわち画素間干渉の影響を受けた2次元再生信号となっている。
【0069】
(2次元波形等化回路3)
2次元波形等化回路3は、ホログラムメモリ再生装置1によって生成されてバッファメモリ2に記憶された再生波形信号に対して、2次元的な波形等化を施すことにより、該再生波形信号を想定波形レベル設定回路8において想定する信号に適した信号xに変換する回路である。なお、2次元波形等化回路3の構成および上記波形等化の処理内容は、一般的に知られている従来技術であるので、これらに関する詳細な説明は省略する。
【0070】
(同期パターン検出回路4)
同期パターン検出回路4は、2次元波形等化回路3によって波形等化された信号から同期パターン51を検出する回路である。
【0071】
ここで、同期パターン51が、論理値「1」が行方向および列方向に2ビットずつ隣接し合う、合計2×2すなわち4ビットパターンである場合、同期パターン51の再生信号は4倍のサイズを持つ明画素と見なすことができる。この場合、ビタビ復号を行うことを前提として高密度化されたシステムにおいても、同期パターン検出回路4は、ビタビ復号ではなく、回路構成が簡単なしきい値検出方式により実現することが可能である。なお、しきい値検出方式とは、各画素の再生信号レベルが所定しきい値より大きければ「1」、小さければ「0」に復号する方式である。
【0072】
このように、同期パターン51は、論理値「1」が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されているように構成されたパターンであることが好ましい。
【0073】
(2次元ビタビ復号回路5)
2次元ビタビ復号回路5は、2次元波形等化回路3によって波形等化された信号x、および、想定波形レベル設定回路8が算出した想定波形レベルwに基づき、上記想定波形レベルwに対する上記波形等化された信号xの2乗誤差の和を、トレリス遷移のブランチメトリックとして判定帰還ビタビ復号を行う回路である。このとき、所定のトレリス遷移を禁止(除去)する。所定のトレリス遷移を禁止(除去)する具体的な処理内容については後述する。
【0074】
(判定帰還ビタビ復号法)
ここで、2次元ビタビ復号回路5が実行する判定帰還ビタビ復号について、以下に説明する。上記判定帰還ビタビ復号法は、ページデータの横方向(すなわち行方向)に沿って、再生信号をビタビ復号する。そして、1行ずつ復号ビットを決定する処理を1行ずつ縦方向(すなわち列方向)にずらしながら行う。その際、直前の復号結果(フィードバック行)を次行のビタビ復号に利用する。
【0075】
図3および図4を参照しながら、判定帰還ビタビ復号法の概要について説明する。図3は、判定帰還ビタビ復号法における画素間干渉のインパルス応答を示す図である。また、図4は、判定帰還ビタビ復号法におけるトレリス線図である。トレリス線図とは、ビタビ復号過程に対応する状態遷移図のことである。
【0076】
図3に示すように、3行3列の行列で表される2次元インパルス応答hとして画素間干渉を表現すると、トレリス状態は2行2列の行列として定義される。そして、この場合のトレリス線図は図4に示すように表現される。
【0077】
なお、「2次元インパルス応答」とは、単位インパルス信号を線形システムに入力したときに当該線形システムが出力する出力信号を意味する。ここで、単位インパルス信号とは、(a)1ビットのみの信号レベルが1であり、(b)それ以外のビットの信号レベルが全て0であるような2次元ビット行列を意味する。
【0078】
図3に示す2次元インパルス応答hでは、中心の画素だけでなく、周辺の隣接画素においても信号レベルが生じている。すなわち、画素間干渉の発生が想定されている。
【0079】
トレリス状態を[k,l;m,n]と表記するものとする。ここで、k、l、m、およびnはいずれも1ビットの値(すなわち、0または1)であるので、2の4乗、すなわち16種類のトレリス状態が存在することになる。そして、図4に示すように、各トレリス状態から次のトレリス状態へのブランチ(遷移)は、トレリス状態ごとに4本ずつある。同様に、各トレリス状態に入力されるブランチは、トレリス状態ごとに4本ずつある。
【0080】
各ブランチが想定する想定波形レベルは、ブランチに繋がる2つのトレリス状態を結合した2行3列の行列に、その一つ上のフィードバック行を結合させた3行3列の行列によって決定される。
【0081】
例えば、[0,0;0,1]から[0,1;1,0]へのブランチが想定するレベル(トレリス状態の遷移に対して想定される想定信号値)について、一例として説明する。このブランチが想定するレベルは、その一つ上のフィードバック行が[1,1,0]であったとすると、行列[1,1,0;0,0,1;0,1,0]によって決定される。具体的には、2次元インパルス応答hと行列[1,1,0;0,0,1;0,1,0]とを2次元畳み込み演算することにより得られる値「0.31」が、このブランチの想定波形レベルとなる。
【0082】
判定帰還ビタビ復号処理は、ページデータにおける左から右に向かって、行方向に行われる。再生信号を行方向に走査することによって得られる波形を再生信号波形とすると、再生信号波形のレベルと各ブランチの想定波形レベルとの2乗誤差をブランチメトリックとし、また、各トレリス状態に至るパスの累積ブランチメトリックをパスメトリックとする。そして、各トレリス状態に入力される4本のパスのうちパスメトリックが最小のものを生き残りパスとして残す。パスメトリックとは、パスの理想信号に対する入力信号の誤差のことである。
【0083】
そして、上記処理をトレリス状態ごとに行い、かつ、行方向に繰り返す。これにより、所定時間だけ前(左方向)に遡れば、生き残りパスが1本に収束している。そこで、この生き残りパスを正解パスとして決定する。なお、上記所定時間は、パスメモリ長と呼ばれる。
【0084】
以上の過程は、従来の1次元ビタビ復号法と原理的に同じである。そこで、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0085】
ただし、正解パスの取り扱いが1次元ビタビ復号と異なる。すなわち、1次元の場合は、正解パスがビット系列そのものに対応するが、2次元の場合は、正解パスが行列になる。したがって、2次元の場合は、正解パスは複数のビット行に対応する。上記の例では2行のビット行である。
【0086】
これら2行のビット行のうち、2行目は、3行目以降のビット行からの影響が考慮されていない。すなわち画素間干渉の影響が部分的にしか考慮されてないため信頼性に乏しい。一方、1行目については、上下左右からの波形干渉が、全て考慮に入れられてビタビ復号されている。そこで1行目のみを復号ビットとして出力する。
【0087】
行方向のビタビ復号によって得られるのは、1行分のビット行である。そこで、ページデータ全体を復号するためには、この処理を1行ずつ列方向(下方向)にずらしながら繰り返す。これにより、2次元再生信号の全体を復号する。
【0088】
ここで、判定帰還の考え方を導入する。判定帰還は、現在の復号対象行の1つ上の行の復号結果をフィードバック行として、次の行のビタビ復号に反映させる手法である。具体的には以上に説明した通りである。すなわち1つ上の行の復号結果を、次の行のブランチの想定波形レベルを決める処理に用いる。これにより、復号結果を反映させる。
【0089】
判定帰還の手順について、以下に、さらに詳しく説明する。受光素子64の最上端の行で受光した再生波形信号に基づいて再生するときは、当該最上端の行のさらに上の行における受光量が0であると見なすことができる。そこで、最上行からの再生波形信号に基づいて情報を再生するときには、フィードバック行を全て0とする。
【0090】
次に、上から2行目からの再生波形信号に基づいて情報を再生する。このとき、1行目(すなわち最上端の行)においてビット行が正確に復号されたと仮定し、これをフィードバック行として2行目の復号に用いる。
【0091】
さらに、上から3行目の行からの再生波形信号に基づいて再生する。このとき、2行目においてビット行が正確に復号されたと仮定し、これをフィードバック行として3行目の復号に用いる。
【0092】
以上のように、判定帰還ビタビ復号法では、現在の復号対象行の直前の(1つ上の)行において復号処理が正確になされたと仮定する。そして該直前の(1つ上の)行の影響を考慮に入れつつ(すなわち列方向の判定帰還を行い)現在の行からの再生波形信号についてビタビ復号を行っている。そのため、列方向の画素間干渉の影響をより考慮に入れたビタビ復号処理が実行されている。従って、従来の1次元ビタビ復号処理、すなわち行方向のみの再生波形の変化を用いたビタビ復号処理に比べて、より正確にビタビ復号処理が実行できる。
【0093】
(復号ビット行出力回路6)
復号ビット行出力回路6は、2次元ビタビ復号回路5における復号によって生き残ったパスに含まれる復号ビット行のうち、復号対象行に対応する復号ビット行qを抽出して出力する回路である。すなわち、上下左右からの波形干渉が全て考慮に入れられてビタビ復号される1行目のビットのみが、復号ビット行出力回路6から復号ビットとして出力される。
【0094】
(復号ビットレジスタ7)
復号ビットレジスタ7は、復号ビット行出力回路6から出力された復号ビットを保持するレジスタである。
【0095】
(想定波形レベル設定回路8)
想定波形レベル設定回路8は、復号ビットレジスタ7に保持された復号ビットを用いて、2次元ビタビ復号回路5において使用する想定波形レベルを算出し、該算出した想定波形レベルwを2次元ビタビ復号回路5に送信する回路である。
【0096】
(ブロック境界判定回路9)
ブロック境界判定回路9は、バッファメモリ2から読み出した再生波形信号に対応するトレリス状態の各遷移を表すビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定する。すなわち、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51の位置と、2次元ビタビ復号回路5における現在の復号対象ビットの行位置および列位置とに基づいて、上記トレリス状態の各遷移を表すビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定する。
【0097】
このとき、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51のページデータ50におけるビット位置により、変調ブロック52の境界を認識する。すなわち、図2にて説明したように、2次元変調が2:4符号の場合、同期パターン51は、2×2、すなわち4画素の論理値「1」からなることから、同期パターン51のページデータ50におけるビット位置がわかれば、変調ブロック52の境界を認識することができる。
【0098】
なお、上記トレリス状態の各遷移を表すビットパターンについては、後述する。
【0099】
(変調則判定回路10)
変調則判定回路10は、ブロック境界判定回路9が2次元変調のブロックの全体を含むと判定した場合に、上記トレリス状態の各遷移を表すビットパターンが含む2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0100】
そのため、変調則判定回路10は、現在の復号対象ビットに関わるトレリス遷移の各遷移を表すビットパターンに含まれる変調ブロックを、2次元ビタビ復号回路5から受信する。そして、該受信した変調ブロックが2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0101】
なお、上述したように、ホログラムメモリ再生システム20に含まれる、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4、2次元ビタビ復号回路5、復号ビット行出力回路6、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、ブロック境界判定回路9、変調則判定回路10は、ビタビ復号装置21を構成している。
【0102】
(想定応答行列)
次に、図5を参照しながら、ホログラムメモリ再生装置1における所定の2次元インパルス応答行列PRについて説明する。図5は、ホログラムメモリ再生装置1における所定の2次元インパルス応答行列PRを模式的に示した図である。
【0103】
2次元ビタビ復号回路5は、例えば、図5に示した2次元インパルス応答行列PRをパーシャルレスポンス特性として想定して動作する。そこで、上記2次元インパルス応答行列PRを想定応答行列PRと称する。ここで、光学理論の見地に基づいて考えると、想定応答行列PRは光の振幅によって定義するのが適切である。なお、パーシャルレスポンス特性とは、前記理想パスメトリック差を算出するために使用され、2次元インパルス応答として表現される。
【0104】
なお、説明の簡略化のため、想定応答行列PRは画素間干渉のビット幅が「3」である場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、想定応答行列PRとして、ホログラムメモリ再生装置1の応答特性に近いものを想定すればよい。
【0105】
2次元ビタビ復号回路5の動作を表現するトレリス線図は、図4にて説明したトレリス線図と基本的に同様である。
【0106】
想定応答行列PRの画素間干渉のビット幅が3であり、判定帰還ビタビ復号法を適用しているため、2行2列の行列としてトレリス状態が定義される(なお、復号対象行の1つ上の行はフィードバック行を用いることができるため、行の幅が3−1、すなわち2となる)。トレリス状態を定義する行列が2行2列(すなわち、計4ビット)であるから、トレリス状態数は「2の4乗」通り、すなわち16通りであり、各トレリス状態に入力するブランチおよび出力するブランチはいずれも4本である。
【0107】
ただし、後述するように、2次元ビタビ復号回路5において、ブロック境界判定回路9と変調則判定回路10の出力に応じて所定のトレリス遷移が禁止(除去)される。
【0108】
(想定波形レベル)
次に、図6を参照しながら、ブランチの想定波形レベル(トレリス状態の遷移に対して想定される想定信号値)の一例として、トレリス状態[1,0;0,1]に入力する4本のブランチについての想定波形レベルについて説明する。図6は、ブランチの想定波形レベルの一例として、トレリス状態[1,0;0,1]に入力する4本のブランチについての想定波形レベルを示す図である。
【0109】
図6に示す想定波形レベルは、ブランチに対応するフィードバック行が[1,1,0]であった場合の想定波形レベルである。想定波形レベルは以下のようにして求められる。
【0110】
まず、トレリス状態[1,1;0,0]から[1,0;0,1]への遷移に対応するブランチが定めるビット行列は、フィードバック行[1,1,0]と合わせると、[1,1,0;1,1,0;0,0,1]となる。
【0111】
次に、図7に示すように、上記ビット行列と想定応答行列PRとの2次元畳み込み演算を行う。図7は、想定波形レベルを求めるための2次元畳み込み演算を行う式を示す図である。該演算の結果得られる行列の中心の値「7」が、上記トレリス状態の遷移において想定される光の振幅に対応する想定値となる。
【0112】
そして、CCDやCMOSセンサによって検出される信号は光の強度に対応した信号であるから、光の振幅と強度との関係、すなわち振幅の2乗が強度であることを考慮すると、光の振幅として得られた値「7」を2乗した値「49」が光の強度に対応する。
【0113】
従って、この値「49」を想定波形レベルとして用いれば、より正確な想定波形レベルを設定することができる。
【0114】
全てのブランチの想定波形レベルについて、上記と同様に求めることができる。すなわち、フィードバック行が[f1,f2,f3]であるとした場合、トレリス状態の[p,q;s,t]から[q,r;t,u]への遷移に対応するブランチの想定波形レベルwは、[f1,f2,f3;p,q,r;s,t,u]と想定応答行列PRとの2次元畳み込み演算により得られる行列の中心の値を2乗した値として求めることができる。
【0115】
上記の説明から分かるように、ブランチの想定波形レベルはフィードバック行の値によって変化する。従って、想定波形レベル設定回路8は、フィードバック行[f1,f2,f3]に基づいて各ブランチの想定波形レベルwを計算する。
【0116】
なお、想定波形レベル設定回路8は、復号ビットレジスタ7から出力されるフィードバック行[f1,f2,f3]に応じて、上記例に示したような計算を毎回行う構成であってもよいし、予め計算された想定波形レベルをルックアップテーブルなどのメモリに記憶しておき、フィードバック行に応じて対応する値を該メモリから読み出す構成であってもよい。
【0117】
なお、トレリス状態の[p,q;s,t]から[q,r;t,u]への遷移に対応するブランチが生き残った場合、復号ビットとして[q;t]の2ビットが決定される。しかし、上下左右からの波形干渉が全て考慮に入れられてビタビ復号される1行目のビットqのみが、復号ビット行出力回路6から復号ビットとして出力される。
【0118】
(再生動作の流れ)
次に、図8を参照しながら、ホログラムメモリ再生システム20による再生動作の流れについて説明する。図8は、ホログラムメモリ再生システム20による再生動作の流れを示すフローチャートである。
【0119】
まず、ホログラムメモリ再生装置1が、干渉縞として情報が記録されたホログラム媒体に対して再生参照光を照射することにより生成される反射光あるいは透過光(コヒーレント光)を、レンズを通して複数の画素を有する受光素子(例えばCCDやCMOSセンサなど)によって受光して2次元の再生波形信号を出力する。そして、上記出力された2次元の再生波形信号を、バッファメモリ2に記憶する(ステップS1)。ここで、ホログラム媒体には、図2にて説明したように、102×102ビットのページデータ50が記録されているものとする。
【0120】
次に、同期パターン検出回路4が、2次元波形等化回路3がバッファメモリ2から読み出した再生波形信号に対して波形等化した信号から同期パターン51を検出し、該検出した同期パターン51のページデータ50におけるビット位置に基づいて画素位置を決定し、行位置iを「1」とし、列位置jを「1」とする(ステップS2)。
【0121】
次に、行方向のビタビ復号を1列目から開始する(ステップS3)。すなわち、2次元波形等化回路3が、i行j列目に対応する再生波形信号をバッファメモリ2から読み出し、該再生波形信号に対して2次元的な波形等化を施した再生波形信号xを2次元ビタビ復号回路5に入力する(ステップS4)。
【0122】
なお、2次元波形等化回路3は、再生波形信号が図5にて説明した応答行列PRに近づくように2次元波形等化処理を行うものであり、この処理によって再生波形信号をそのままビタビ復号する構成に比べて更にエラーレートの低い復号を実現することが可能となる。したがって、エラーレートの減少という観点からは2次元波形等化回路3をホログラムメモリ再生システム20に備えておくことが望ましいが、回路規模の増大を抑えるという観点から2次元波形等化回路3を省く構成としてもよい。
【0123】
次に、2次元ビタビ復号回路5が、トレリス線図に基づいて行方向に2次元ビタビ復号を実行する。すなわち、入力されたi行j列目の記録ビットの再生波形信号xと、それに対応する想定波形レベルwとの2乗誤差の和(x−w)2をブランチメトリックとして求める。更に、各トレリス状態に至るまでに累積されたブランチメトリック、すなわちパスメトリックに基づいて生き残りパスの決定を行う(ステップS5)。
【0124】
ここで、ステップS5においては、復号対象行iが奇数行の場合には、ブロック境界判定回路9および変調則判定回路10により、トレリス線図において禁止(除去)するトレリス状態の遷移が決定される。この決定処理の詳細については後述する。
【0125】
次に、2次元ビタビ復号回路5のパスメモリ長をLとした場合、現在の復号対象である第j列が第L列を超えているか否か(すなわち、jの値がLの値より大きいか、または、jの値がLの値以下であるか)を判定する(ステップS6)。そして、第j列が第L列を超えている(すなわちjの値がLの値よりも大きい)場合(ステップS6にてYES)、復号ビット行出力回路6が、生き残りパスの第(j−L)列のトレリス状態のビット2行[b1;b2]のうち、1行目のビットb1だけを取り出し、復号ビット行として出力する(ステップS7)。
【0126】
この復号ビット行は、復号結果そのものであるが、同時に復号ビットレジスタ7にも記憶される(ステップS8)。
【0127】
なお、第j列が第L列を超えていない(すなわちjの値がLの値以下である)場合(ステップS6にてNO)、ステップS7およびステップS8の処理は行わない。
【0128】
次に、対象列を1列ずらし(ステップS9)、該ずらした後の対象列が第(100+L)列を超えたかどうか(すわなち、(100+L)列分の復号が終わったかどうか)を判定する(ステップS10)。なお、上記(100+L)とは、ページデータの列数である「100」に、パスメモリ長である「L」を加えた値である。
【0129】
そして、上記ずらした後の対象列が(100+L)列を超えている場合(ステップS10にてNO)、対象行を1行ずらし(ステップS11)、該ずらした後の対象行が、ページデータの行である100行を超えたかどうか(すわなち、100行分の復号が終わったかどうか)を判定する(ステップS12)。
【0130】
一方、上記ずらした後の対象列が(100+L)列を超えていない場合(ステップS10にてYES)、ステップS4からS9の処理を繰り返す。
【0131】
そして、ステップS12にて、上記ずらした後の対象行が、ページデータの行である100行を超えている場合(ステップS12にてNO)、処理を終了する。
【0132】
一方、ステップS12にて、上記ずらした後の対象行が、ページデータの行である100行を超えていない場合(ステップS12にてYES)、ステップS3からS11の処理を繰り返す。このとき、1行上の復号ビット行が復号ビットレジスタ7に記憶されているので、これをフィードバック行として次の行のビタビ復号に用いる。
【0133】
以上の動作により、最終的にページデータとしての復号結果のビットマップが得られる。
【0134】
(トレリス遷移の除去)
次に、ステップS5における、ブロック境界判定回路9と変調則判定回路10の出力に応じて、2次元ビタビ復号回路5が、所定のトレリス遷移を禁止(除去)する動作について、以下で詳しく説明する。
【0135】
ページデータ50は2:4符号で符号化されており、2×2すなわち4画素毎に変調ブロックを構成している。そのため、復号対象行iが奇数行である場合、トレリス状態と変調ブロックとは、列方向の境界が一致する。
【0136】
ここで、図9を参照しながら、変調ブロックの全体が2:4符号のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する例について、説明する。図9は、トレリス線図において列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移を表すビットパターンを示す図である。
【0137】
図9に示すように、トレリス線図において列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移を表すビットパターンは[p,q,r;s,t,u]である。
【0138】
ブロック境界判定回路9が、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51のビット位置と、復号対象ビットの位置(すなわち、復号対象行iおよび復号対象列j)とに基づき、上記ビットパターンが点線で図示した変調ブロック[p,q;s,t]を含んでいると判定した場合、変調則判定回路10が、この変調ブロック[p,q;s,t]が2:4符号のパターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0139】
ここで、2:4符号のパターンは、図17にて説明したように、[1,0;0,0]、[0,1;0,0]、[0,0;1,0]および[0,0;0,1]の4種類がある。
【0140】
よって、例えば、上記変調ブロック[p,q;s,t]の値が[0,0;0,1]である場合は、2:4符号のパターンの一つと合致すると判定する。一方、この変調ブロック[p,q;s,t]の値が[1,0;0,1]である場合は、2:4符号のパターンのいずれとも合致しないと判定する。
【0141】
同様に、列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]から列位置(j+2)のトレリス状態[r,v;u,z]への遷移を表すビットパターンについて説明する。ブロック境界判定回路9が、上記ビットパターンが点線で図示した変調ブロック[r,v;u,z]を含むと判定した場合、変調則判定回路10が、この変調ブロック[r,v;u,z]が2:4符号のパターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0142】
上記のように変調則判定回路10が、変調ブロックの全体が2:4符号のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、2次元ビタビ復号回路5が、対応するトレリス遷移を禁止する。すなわち、トレリス線図における対応するブランチを除去する。
【0143】
図10を参照しながら、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図について説明する。図10は、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図である。図10に示すトレリス線図と、ブランチを除去する前のトレリス線図(図4)とを比べると、多数のブランチが除去されている。そのため、上記のようにブランチを除去した後では、誤りパスを選択する確率が大きく低減される。
【0144】
また、上記の説明から分かるように、トレリス状態の遷移を表すビットパターンと変調ブロックとの位置関係に応じて、禁止(除去)される遷移は変わる。本実施形態では、ブロック境界判定回路9が、トレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、変調則判定回路10が、当該ビットパターンを含むブロックが2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合に、該遷移を禁止(除去)し、その結果を2次元ビタビ復号回路5に送る構成としている。この構成により、トレリス線図と変調ブロックの境界との位置関係に応じて禁止(除去)される遷移が変わっても、その結果を、2次元ビタビ復号回路5が行うビタビ復号処理に反映することを可能としている。
【0145】
なお、復号対象行iが奇数行であるか偶数行であるかに関わらず、本実施形態におけるビタビ復号を実行する構成としてもよい。このとき、復号対象行iが奇数行の場合、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれるため、その結果トレリス遷移を削減することができるが、復号対象行iが偶数行の場合には、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれないため、トレリス遷移が削減されない。
【0146】
また、復号対象行iが奇数行である場合は、本実施形態における構成によってビタビ復号を実行し、復号対象行iが偶数行である場合には、後述する実施の形態2における構成によってビタビ復号を実行する構成としてもよい。
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、復号対象行iが奇数行である場合、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれ、その結果トレリス遷移を削減することができる。これにより、誤りパスを選択する確率を低減可能とした。
【0147】
しかしながら、復号対象行iが偶数行である場合には、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれない。そのため、復号対象行iが偶数行である場合には、トレリス遷移が削減されることがなく、上述の効果を得ることができない。
【0148】
そこで、本実施形態では、復号対象行iが奇数行であるか偶数行であるかに関わらず、トレリス遷移を削減することができる形態について説明する。
【0149】
本発明の一実施形態について図11から図14に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0150】
図11を参照しながら、本実施形態に係るビタビ復号装置31を含むホログラムメモリ再生システム30について説明する。図11は、本実施形態に係るビタビ復号装置31を含むホログラムメモリ再生システム30の構成を示すブロック図である。
【0151】
図11に示すように、ホログラムメモリ再生システム30は、実施の形態1に係るホログラムメモリ再生システム20とほぼ同様の部材を備えて構成されるが、2次元ビタビ復号回路5に代えて2次元ビタビ復号回路5A(ビタビ復号手段)を備えている。また、ブロック境界判定回路9に代えてブロック境界判定回路9A(ブロック境界判定手段)を備えている。また、変調則判定回路10に代えて変調則判定回路10A(2次元変調パターン検出手段)を備えている。
【0152】
その他に、ホログラムメモリ再生システム30がホログラムメモリ再生システム20と異なる点は、1)復号ビットレジスタ7の出力であるフィードバック行がブロック境界判定回路9Aおよび変調則判定回路10Aに入力されるように構成されている点、および、2)変調則判定回路10Aからの入力を受けて2次元ビタビ復号回路5Aが所定のトレリス遷移を生き残りパスから除去する点である。
【0153】
なお、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4、2次元ビタビ復号回路5A、復号ビット行出力回路6、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、ブロック境界判定回路9A、および変調則判定回路10Aが、ビタビ復号装置31を構成している。
【0154】
(トレリス遷移の除去)
次に、ブロック境界判定回路9A、および変調則判定回路10Aの出力に基づいて、2次元ビタビ復号回路5Aが所定のトレリス遷移を禁止(除去)する動作について詳しく説明する。
【0155】
図12を参照しながら、ホログラムメモリ再生システム30による再生動作について説明する。図12に示すように、列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移と、対応するフィードバック行[d,e,f]とを結合して得られるビットパターンを例に挙げて説明する。図12は、列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移と、対応するフィードバック行[d,e,f]とを結合して得られるビットパターンを示す図である。
【0156】
ブロック境界判定回路9Aが、上記結合して得られるビットパターンが点線で図示した変調ブロック[d,e;p,q]を含むと判定した場合、変調則判定回路10Aが、この変調ブロック[d,e;p,q]が2:4符号パターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0157】
同様に、列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]から列位置(j+2)のトレリス状態[r,v;u,z]への遷移と、対応するフィードバック行[e,f,g]とを結合して得られるビットパターンについて説明する。ブロック境界判定回路9Aが、上記結合して得られるビットパターンが点線で図示した変調ブロック[f,g;r,v]を含むと判定した場合、変調則判定回路10Aは、この変調ブロック[f,g;r,v]が2:4符号パターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0158】
上記のようにして変調則判定回路10Aが、変調ブロックの全体が2:4符号のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、2次元ビタビ復号回路5Aが対応するトレリス遷移を禁止する。すなわち、トレリス線図における対応するブランチを除去する。
【0159】
図13を参照しながら、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図について説明する。図13は、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図である。図13に示すトレリス線図と、ブランチを除去する前のトレリス線図(図4)とを比べると、多数のブランチが除去されている。その結果、誤りパスを選択する確率が大きく低減される。
【0160】
また、上記の説明から分かるように、トレリス状態の遷移を表すビットパターンと変調ブロック52との位置関係だけでなく、復号ビットレジスタ7の出力であるフィードバック行に応じても、禁止(除去)される遷移は変わる。そこで本実施形態では、ブロック境界判定回路9Aが、フィードバック行とトレリス状態の各遷移とを結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、変調則判定回路10Aが、当該ビットパターンを含むブロックが2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合に、その遷移を禁止(除去)し、その結果を2次元ビタビ復号回路5Aに送る構成としている。この構成により、復号対象行の位置に関わらず、禁止(除去)される遷移が変わっても、その結果を、2次元ビタビ復号回路5が行うビタビ復号処理に反映することが可能となる。
【0161】
なお、本実施形態において、復号対象行iが奇数行である場合(特に復号対象行iが1行目である場合)、実施の形態1にて説明した構成(すなわち、フィードバック行を用いない構成)により、ビタビ復号処理を行ってもよい。
【0162】
(シミュレーション結果)
次に、図14を参照しながら、本実施形態の効果を確認するために、シミュレーションによって再生信号品質と復号結果のビットエラーレートとの関係を評価した実験結果について説明する。図14は、シミュレーションによって再生信号品質と復号結果のビットエラーレートとの関係を評価した実験結果のグラフを示す図である。
【0163】
まず、ランダムに発生させた0および1のビット系列を情報データとして、該情報データに対して6:8変調を施してページデータを作成した。ここで、「6:8変調」とは、6ビットの情報データを4×2、すなわち8画素の変調ブロックに変換する変調方式であり、各変調ブロックの8画素は「1」と「0」の比率が50%(すなわち、4つずつ)である特性を持っている。なお、このように「1」と「0」の比率が50%であるような特性を持つ変調方式はバランス符号と呼ばれる。
【0164】
次に、上記作成したページデータに対して、ホログラムメモリの再生特性をシミュレートしたモデルを用いて擬似再生信号を生成し、これに白色ガウスノイズを印加して入力信号とした。
【0165】
図14に示すグラフの横軸は再生信号のS/N比であり、縦軸は復号結果のビットエラーレートを表す。図14に示すように、本実施形態では、差分検出方式と比較した場合、同じ信号品質においてより低いビットエラーレートが得られていることが確認できる。
【0166】
以上に説明したとおり、本実施形態のように変調方式の特性に基づいてトレリス遷移を禁止(除去)するビタビ復号を行うことにより、誤った遷移が発生する確率を低減し、エラーレートの低い復号を実現できるという効果を得ることができる。
〔実施の形態3〕
実施の形態2では、フィードバック行とトレリス状態の各遷移を表す行列とを結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含み、かつ、当該ビットパターンが含むブロックが2次元変調のパターンのいずれとも合致しない場合に、所定のトレリス遷移を禁止(除去)する構成を説明した。該構成では、上記ビットパターンが含む2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かについて、変調則判定回路10Aがトレリス状態毎に毎回判定した。
【0167】
しかしながら、変調方式が2:4符号など所定の方式に決まっている場合、上記ビットパターンが含む2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かを毎回判定しなくても、現在の復号対象ビットの行位置および列位置に基づいて、禁止(除去)すべきトレリス状態の各遷移を予め一意に定めることができる。そのため、現在の復号対象ビットの行位置および列位置に基づいて、禁止(除去)されるトレリス遷移を考慮し、ビタビ復号処理を行うことができる。
【0168】
そこで、本実施形態では、現在の復号対象ビットの行位置および列位置と、フィードバック行とに基づいて、禁止(除去)されるトレリス遷移を予め考慮して、ビタビ復号処理を行う形態について説明する。これにより、2次元変調のブロックと2次元変調のパターンとの合致を判定するという構成を省略することができるので、実施の形態2における、変調則判定回路10Aによる判定は不要となる。
【0169】
本発明の一実施形態について図15に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1および2にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0170】
図15を参照しながら、本実施形態に係るビタビ復号装置41を含むホログラムメモリ再生システム40について説明する。図15は、本実施形態に係るビタビ復号装置41を含むホログラムメモリ再生システム40の構成を示すブロック図である。
【0171】
図15に示すように、ホログラムメモリ再生システム40は、実施の形態2に係るホログラムメモリ再生システム30とほぼ同様の部材を備えて構成されるが、2次元ビタビ復号回路5Aに代えて2次元ビタビ復号回路5B(ビタビ復号手段)およびビット位置ポインタ14を備えている。なお、ブロック境界判定回路9Aおよび変調則判定回路10Aは備えていない。
【0172】
その他に、ホログラムメモリ再生システム40がホログラムメモリ再生システム30と異なる点は、1)復号ビットレジスタ7の出力であるフィードバック行が2次元ビタビ復号回路5Bに入力されるように構成されている点、および、2)2次元ビタビ復号回路5Bによるトレリス遷移の禁止処理の内容である。
【0173】
なお、ホログラムメモリ再生システム40のうち、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4、2次元ビタビ復号回路5B、復号ビット行出力回路6、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、およびビット位置ポインタ14が、ビタビ復号装置41を構成している。
【0174】
ビット位置ポインタ14は、バッファメモリ2がビタビ復号装置41に出力している再生信号のページデータ50におけるビット位置(すなわち、現在の復号対象ビットのページデータ50における行位置および列位置)を指し示すポインタを出力する。
【0175】
また、ビット位置ポインタ14は、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51のページデータ50におけるビット位置に基づいて、復号対象ビットの行位置および列位置を定める。これにより、復号対象ビットのページデータ50内における位置を正しく出力することができる。
【0176】
2次元ビタビ復号回路5Bは、ビット位置ポインタ14が出力する復号対象ビットの行位置と列位置、および、復号ビットレジスタ7が出力するフィードバック行のみに基づいて、ビタビ復号処理を行う。ここで、ページデータ50の変調方式が所定の2:4符号であると分かっているので、特定の行位置および列位置が左上隅となるトレリス状態の遷移を表す行列に、上記フィードバック行を結合して得られるビットパターンが、2:4符号のパターンのいずれをも含まないことは予め判定しておくことができる。従って、2次元ビタビ復号回路5Bは、特定の行位置と列位置、およびフィードバック行に応じて、そのようなトレリス状態の遷移が最初から禁止(除去)された構成としておくことができる。
【0177】
以上のように、本実施形態では、実施の形態1または2と比べて簡易な回路構成により、ページデータ50内のビット位置に応じて変化するトレリス線図の禁止遷移をビタビ復号に反映することが可能となる。
【0178】
なお、本実施形態では、フィードバック行、および、現在の復号対象ビットの行位置および列位置に基づいて、どのトレリス遷移を禁止(除去)するかを判定したが、フィードバック行を用いず、現在の復号対象ビットの行位置および列位置のみに基づいて、どのトレリス遷移を禁止(除去)するかを予め判定しておき、除去するトレリス遷移を最初からビタビ復号回路5Bに反映させた構成であってもよい。
【0179】
なお、例えば複数の異なるホログラムメモリ規格に対応する再生装置など、ページデータ50の変調方式が所定の方式に決まっていない場合は、実施形態1または2のように毎回判定する構成が適する。その場合、実施の形態1の変調則判定回路10または実施の形態2の変調則判定回路10Aが判定に用いる変調規則を、再生するホログラムメモリ規格に応じて切り替える構成とすればよい。
【0180】
(付記事項)
また、本発明の各実施形態におけるホログラムメモリ再生システムでは、行方向で2次元ビタビ復号を実行し、これを列方向に繰り返すことによって2次元再生信号全体を復号するビタビ復号方法を用いたが、これに限定されるものではない。すなわち、列方向で2次元ビタビ復号を実行し、これを行方向に繰り返すことによって2次元再生信号全体を復号するビタビ復号方法であってもよい。
【0181】
また、本発明の各実施形態で説明した「上」と「下」との関係、および「左」と「右」との関係は、これに限定されるものではない。すなわち、上と下とを、また、左と右とを入れ替えてなる構成であってもよい。
【0182】
また、本発明はビタビ復号の遷移を禁止する制約を課すものであるため、特定の変調方式で変調されたページデータの再生信号に対してビタビ復号を行う限りにおいてその効果は得られるものであるから、トレリス状態の行列のサイズ(すなわち、行数および列数)、変調方式、判定帰還に用いるフィードバック行の行数などに依存するものではない。
【0183】
なお、実施の形態は上述の他に、以下のようにも表現できる。
【0184】
[1]本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置において、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行に関するトレリス状態の遷移に基づき、当該遷移において想定される想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を、当該遷移のメトリックとしてビタビ復号するビタビ復号手段を備え、上記ビタビ復号手段は、トレリス状態の各遷移が表すビットパターンが2次元変調のパターンとして存在しない場合、当該遷移を禁止するものであってもよい。
【0185】
[2]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、トレリス状態の各遷移が表すビットパターンが2次元変調のブロック境界を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、上記ブロック境界判定手段がブロック境界を含むと判定した場合に、当該ビットパターンが含むブロック境界が2次元変調のパターンとして存在するパターンであるか否かを判定する変調則判定手段とを更に備え、上記ビタビ復号手段は、上記変調則判定手段によって当該ビットパターンに含まれるブロック境界が2次元変調のパターンとして存在しないと判定された場合に、当該遷移を禁止するものであってもよい。
【0186】
[3]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ビタビ復号の結果生き残ったパスのうち、復号対象行に対応する復号ビット行を復号結果として出力する復号ビット出力手段と、上記復号ビット出力手段が出力した復号ビット行を記憶する復号ビット記憶手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段は、上記復号ビット記憶手段が記憶する復号ビット行とトレリス状態の各遷移とで表されるビットパターンが2次元変調のブロック境界を含むか否かを判定するものであってもよい。
【0187】
[4]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ページデータには2次元変調のブロック境界を判定するための同期パターンが含まれており、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段は、上記同期パターン検出手段によって検出された同期パターンに基づいて、ブロック境界の判定を行うものであってもよい。
【0188】
[5]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ビタビ復号手段においてトレリス状態の遷移の誤差を計算する対象となっている上記2次元再生信号の行位置と列位置を出力する再生信号位置出力手段を更に備え、上記ビタビ復号手段は、再生信号位置出力手段が出力する行位置と列位置に応じて決まる所定の遷移を禁止するものであってもよい。
【0189】
[6]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ビタビ復号の結果生き残ったパスのうち、復号対象行に対応する復号ビット行を復号結果として出力する復号ビット出力手段と、上記復号ビット出力手段が出力した復号ビット行を記憶する復号ビット記憶手段とを更に備え、上記ビタビ復号手段は、上記再生信号位置出力手段が出力する行位置と列位置、および上記復号ビット記憶手段が記憶する復号ビット行に応じて決まる所定の遷移を禁止するものであってもよい。
【0190】
[7]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ページデータには2次元変調のブロック境界を判定するための同期パターンが含まれており、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段とを更に備え、上記再生信号位置出力手段は、上記同期パターン検出手段によって検出された同期パターンに基づいて、出力する行位置と列位置を特定するものであってもよい。
【0191】
[8]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記同期パターンは、明画素が複数個隣接し合うように構成されたパターンであってもよい。
【0192】
[9]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記2次元変調は、定重み符号化方式であってもよい。
【0193】
[10]本発明に係るビタビ復号処理は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法において、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行に関するトレリス状態の遷移に基づき、当該遷移において想定される想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を、当該遷移のメトリックとしてビタビ復号するビタビ復号処理を備え、上記ビタビ復号処理は、トレリス状態の各遷移が表すビットパターンが2次元変調のパターンとして存在しない場合、当該遷移を禁止するものであってもよい。
【0194】
最後に、実施形態1から3で説明したホログラムメモリ再生システム20・30・40の各ブロックは、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよいし、ハードウェアロジックによって構成してもよい。
【0195】
ソフトウェアによって実現する場合は、ビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、ビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU(Micro Processing Unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0196】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0197】
また、ビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0198】
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。さらに、1つの手段の機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。
【0199】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明は、2次元信号に対してエラーレートの低い復号を可能とする復号装置に適用することが可能であり、特に、2次元信号を再生するホログラムメモリ再生装置や、QRコードに代表される2次元バーコード再生装置などに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】本発明の実施形態に係るビタビ復号装置を含むホログラムメモリ再生システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1で示したホログラムメモリ再生システムにおけるホログラム媒体に記録されているページデータのフォーマットを模式的に示す図である。
【図3】判定帰還ビタビ復号法における画素間干渉のインパルス応答を示す図である。
【図4】判定帰還ビタビ復号法におけるトレリス線図である。
【図5】図1で示したホログラムメモリ再生システムにおける所定の想定応答行列を模式的に示した図である。
【図6】図1で示したホログラムメモリ再生システムにおける、トレリス状態[1,0;0,1]に入力する4本のブランチについての想定波形レベルを示す図である。
【図7】図6に示した想定波形レベルを求めるための2次元畳み込み演算を行う式を示す図である。
【図8】図1で示したホログラムメモリ再生システムによる再生動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】トレリス線図において列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移によって表されるビットパターンを示す図である。
【図10】図1で示したホログラムメモリ再生システムにより、ブランチを除去した後のトレリス線図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るビタビ復号装置を含むホログラムメモリ再生システムの構成を示すブロック図である。
【図12】列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移と、フィードバック行[d,e,f]とによって表されるビットパターンを示す図である。
【図13】図11で示したホログラムメモリ再生システムにより、ブランチを除去した後のトレリス線図である。
【図14】図11で示したホログラムメモリ再生システムにより、シミュレーションによって再生信号品質と復号結果のビットエラーレートとの関係を評価した実験結果のグラフを示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るビタビ復号装置を含むホログラムメモリ再生システムの構成を示すブロック図である。
【図16】従来のホログラムメモリシステムの概要を模式的に示す図である。
【図17】従来の定重み符号の一つである2:4符号を説明する図である。
【符号の説明】
【0202】
1 ホログラムメモリ再生装置
2 バッファメモリ
3 2次元波形等化回路
4 同期パターン検出回路(同期パターン検出手段)
5、5A、5B 2次元ビタビ復号回路(ビタビ復号手段)
6 復号ビット行出力回路(復号ビット出力手段)
7 復号ビットレジスタ
8 想定波形レベル設定回路
9、9A ブロック境界判定回路(ブロック境界判定手段)
10、10A 変調則判定回路(2次元変調パターン検出手段)
14 ビット位置ポインタ
20、30、40 ホログラムメモリ再生システム
21、31、41 ビタビ復号装置
50 ページデータ
51 同期パターン
52 変調ブロック
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラムメモリ再生信号などの2次元信号をビタビ復号するビタビ復号装置、ビタビ復号方法、プログラム、およびプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホログラフィを用いて情報を2次元的に、すなわちページデータとして記録し再生するホログラムメモリが、次世代の高密度記録再生システムとして脚光を浴びつつある。
【0003】
図16を参照しながら、ホログラムメモリシステムの概要について説明する。図16は、ホログラムメモリシステムの概要を模式的に示す図である。図16に示すように、このシステムでは、情報データを記録する場合には、複数の画素よりなる空間光変調器60(例えば液晶パネルやDMD(Digital Micromirror Device)など)を用いて、記録すべき情報データに基づいて記録信号光を空間光変調し、レンズ61を通した記録信号光とコヒーレントな記録参照光とを干渉させることにより2次元的な干渉縞を生成し、この干渉縞により形成される像を2次元情報としてホログラム媒体62に記録する。
【0004】
ここで、ホログラム媒体62としては、ニオブ酸リチウムに代表される無機系のフォトリフラクティブ結晶を用いた書き換え型媒体や、有機高分子材料であるフォトポリマーを用いた追記型媒体がある。
【0005】
一方、記録された干渉縞をホログラム媒体62から読み出すことにより情報データを再生する場合には、ホログラム媒体62に対して記録参照光と同じ入射角度にて再生参照光を照射して生成される反射光あるいは透過光を、レンズ63を通して複数の画素を有する受光素子64(例えばCCDやCMOSセンサなど)により受光して再生信号を生成し、該生成された再生信号を用いて元の情報データを再生する。
【0006】
なお、上記のようにして得られた2次元的な再生信号は、信号の2次元波形を示していると捉えることもできる。また、上記2次元的な再生信号のうちある方向に沿って配列された再生信号は、信号の1次元波形を示していると捉えることもできる。このように、再生信号を波形と捉えて「再生波形信号」と称する場合もある。
【0007】
このように上記システムでは、2次元のページデータ単位で再生が行われるため、1次元で再生を行う従来の光ディスクよりも大幅に再生速度を向上させることが可能となる。
【0008】
(判定帰還ビタビ復号法)
ところで、ホログラムメモリシステムにおいては、その記録過程及び再生過程において種々の雑音が混入する(特に、記録媒体の不均質性に起因して雑音が発生する場合が多い)ことがあり、この雑音の影響によりSN比(信号対雑音電力比)が低下する。また、隣接する画素からの再生信号の影響、すなわち画素間干渉の発生もあり、これによっても正確に元の信号を再生できない場合がある。
【0009】
そこで、従来、雑音および画素間干渉の影響を低減して、正確に情報を再生する手法が検討されている。なかでも、受光素子から出力される再生信号をビタビ復号する手法が研究されている。特許文献1には、ビタビ復号の一手法である判定帰還ビタビ復号法(Decision Feedback Viterbi Algorithm)が開示されている。
【0010】
(差分検出法)
一方、従来のホログラムメモリシステムにおいては、差分検出法と呼ばれる検出方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0011】
差分検出法は、定重み符号と呼ばれる変調方式を用いて2次元変調されたページデータの2次元再生信号を復号する際に使用されるものである。代表的な定重み符号としては、変調ブロックが2つの画素からなる1:2差分符号や、変調ブロックが2×2、すなわち4つの画素からなる2:4符号などがある。
【0012】
(2:4符号)
図17を参照しながら、2:4符号について説明する。図17に示す2:4符号の場合、4つの画素のうち1画素だけが’1’、残りの3画素が’0’であるような変調ブロックに符号化される。したがって、このような変調ブロックは図17に示すように4種類ある。すなわち、[1,0;0,0]、[0,1;0,0]、[0,0;1,0]および[0,0;0,1]の4種類である([k,l;m,n]は、行ベクトル[k,l]および[m,n]を列方向に並べた行列を意味するものとする。以下においてもこの表記に準じて行列を表記する)。そして、2ビットの情報ビット(2の2乗、すなわち4通り)を変調して4画素の変調ブロックに変換することから、2:4符号と呼ばれる。図17では、2ビットの情報ビット「00」を[1,0;0,0]に、2ビットの情報ビット「01」を[0,1;0,0]に、2ビットの情報ビット「10」を[0,0;1,0]に、2ビットの情報ビット「11」を[0,0;0,1]に変換している。
【0013】
差分符号においては、論理値「1」は明画素(受光素子上の対応する画素が明るい点となる)に、また、論理値「0」は暗画素(受光素子上の対応する画素が暗い点となる)に対応してホログラム媒体に記録される。差分検出方式では、各変調ブロックの再生信号の4画素のうち最も輝度が高い画素、すなわち再生信号レベルが最も大きい画素を「1」と判定し、それ以外の画素を「0」と判定することによって復号ビットが決定される。
【特許文献1】米国特許第5、740、184号明細書(1998年4月14日発行)
【特許文献2】特開平9−197947号公報(公開日:平成9年7月31日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、ホログラムメモリシステムにおいては、ビタビ復号方式と差分検出方式という異なる方式が提案されていた。差分検出方式は、定重み符号で変調されたページデータを前提とする方式であるため、ホログラムメモリを規格化する場合は、ページデータの変調方式として所定の定重み符号を規定する必要がある。このような規格に基づくホログラムメモリ媒体の再生装置において、ビタビ復号方式を採用した場合、差分検出方式のように定重み符号の特徴を考慮に入れることができないため、復号エラーレートを十分に低減することができないという課題があった。
【0015】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、定重み符号など所定の変調方式によって変調されたページデータに対して、ビタビ復号方式を用いてエラーレートの低いビット復号が可能なビタビ復号装置、ビタビ復号方法、プログラム、およびプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段を備え、上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係るビタビ復号方法は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップを含み、上記ビタビ復号ステップにて、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するにあたり、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、上記遷移を除去することができる。
【0019】
よって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)が削減されるため、誤りパスを選択する確率が低減される。
【0020】
したがって、ビタビ復号するにあたり、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段が、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含み、かつ、当該2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないとき、上記ビットパターンにより表されている遷移を除去することができる。
【0023】
よって、上記ビットパターン中の2次元変調のブロックとして特定された部分が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定するため、効率的な判定を行うことができる。
【0024】
したがって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を効率的に実行することができるという効果を奏する。
【0025】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置とに基づいて、上記復号対象の行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、上記2次元変調の変調方式と、上記ページデータにおける復号対象の行位置および列位置とを用いて、上記復号対象の行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないか否かを認識し、上記遷移を予め除去することができる。
【0027】
よって、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むことを判定する処理が不要となる。
【0028】
したがって、ビタビ復号するにあたり、簡易な回路構成によって、エラーレートが低いビット復号処理を行うことができるという効果を奏する。
【0029】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段と、上記ビタビ復号手段により復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力手段とを備え、上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0030】
また、本発明に係るビタビ復号方法は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップと、上記ビタビ復号ステップにより復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力ステップとを含み、上記ビタビ復号ステップにて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴としている。
【0031】
上記の構成によれば、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するにあたり、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、当該復号対象行の直前の行に対応する復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、上記遷移を除去することができる。
【0032】
よって、上記2次元再生信号における復号対象行が偶数行であっても、当該復号対象行の直前の行に対応する復号ビットよりなる行を使用することにより、復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移からなるパスを除去することができる。そのため、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)をより多く除去できるため、誤りパスを選択する確率がより低減される。
【0033】
したがって、ビタビ復号するにあたり、エラーレートがより低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0034】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段が、上記結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0035】
上記の構成によれば、上記結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含み、かつ、当該2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないとき、上記ビットパターンにより表されている遷移を除去することができる。
【0036】
よって、上記結合して得られるビットパターン中の2次元変調のブロックとして特定された部分が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定するため、効率的な判定を行うことができる。
【0037】
したがって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を効率的に実行することができるという効果を奏する。
【0038】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置および上記復号ビットとに基づいて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のパターンを含まないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号する構成としてもよい。
【0039】
上記の構成によれば、上記2次元変調の変調方式と、上記ページデータにおける復号対象の行位置および列位置および上記復号ビットとを用いて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないか否かを認識し、上記遷移を予め除去することができる。
【0040】
よって、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むことを判定する処理が不要となる。
【0041】
したがって、ビタビ復号するにあたり、簡易な回路構成によって、エラーレートが低いビット復号処理を行うことができるという効果を奏する。
【0042】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記ページデータが同期パターンを含んでおり、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、上記ブロック境界判定手段が、2次元変調のブロックの大きさと、上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置とに基づいて上記ビットパターンの位置を認識し、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定する構成としてもよい。
【0043】
上記の構成によれば、上記ページデータに含まれる同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて上記ビットパターンの位置を認識することができ、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定することができる。
【0044】
よって、上記ビットパターンの位置を容易に認識することができ、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むことを判定する処理を容易に行うことができる。
【0045】
したがって、ビタビ復号するにあたり、容易な処理で上記判定を実現でき、これによって、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を行い、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0046】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記ページデータが同期パターンを含んでおり、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて、上記復号対象ビットの行位置および列位置を決める構成としてもよい。
【0047】
上記の構成によれば、上記ページデータに含まれる同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて上記復号対象ビットの行位置および列位置を決めることができる。
【0048】
よって、上記ビットパターンの位置を容易に認識することができ、該ビットパターンの位置に基づいて、該ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含まないかどうかが容易にわかる。
【0049】
したがって、ビタビ復号するにあたり、簡易な回路構成によって、トリレス線図におけるブランチ(遷移)の除去処理を行い、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【0050】
さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記の構成において、上記同期パターンは、上記ページデータにおいて、2値のいずれか一方の値が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されている構成としてもよい。
【0051】
上記の構成によれば、上記同期パターンは、上記ページデータにおいて、2値のいずれか一方の値が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されている。
【0052】
よって、例えば、上記同期パターンは、2×2すなわち4画素の論理値「1」からなり、上記ページデータの左上隅に配置される。
【0053】
したがって、上記ページデータから上記同期パターンを検出することにより、該同期パターンその形状および大きさを得ることができるという効果を奏する。
【0054】
なお、上記ビタビ復号装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記ビタビ復号装置をコンピュータにて実現させるビタビ復号装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0055】
以上のように、本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段を備え、上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号する。
【0056】
また、本発明に係るビタビ復号方法は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップを含み、上記ビタビ復号ステップにて、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号する。
【0057】
よって、ビタビ復号するにあたり、トリレス線図におけるブランチ(遷移)が削減されるため、誤りパスを選択する確率が低減される。
【0058】
したがって、ビタビ復号するにあたり、エラーレートの低いビット復号を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1から図13に基づいて説明すると以下の通りである。
【0060】
図1を参照しながら、本実施形態に係るビタビ復号装置21を含むホログラムメモリ再生システム20について説明する。図1は、本実施形態に係るビタビ復号装置21を含むホログラムメモリ再生システム20の構成を示すブロック図である。
【0061】
図1に示すように、ホログラムメモリ再生システム20は、ホログラムメモリ再生装置1、バッファメモリ2、ビタビ復号装置21を備えて構成される。そして、ビタビ復号装置21は、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4(同期パターン検出手段)、2次元ビタビ復号回路5(ビタビ復号手段)、復号ビット行出力回路6(復号ビット出力手段)、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、ブロック境界判定回路9(ブロック境界判定手段)、および変調則判定回路10(2次元変調パターン検出手段)を備えて構成される。
【0062】
なお、後述するように、ビタビ復号装置21は、エラーレートの観点から2次元波形等化回路3を備えて構成されることが望ましいが、回路規模の増大を抑える観点から2次元波形等化回路3を備えない構成としてもよい。
【0063】
(ホログラムメモリ再生装置1)
ホログラムメモリ再生装置1は、図16にて説明したホログラムメモリシステムのうち再生側の構成に相当するものである。すなわち、干渉縞として情報が記録されたホログラム媒体(図示せず)に対して再生参照光を照射することにより生成される反射光あるいは透過光(コヒーレント光)を、レンズを通して複数の画素を有する受光素子(例えばCCDやCMOSセンサなど)によって受光して再生信号を生成する装置である。なお、再生信号を波形と捉えて「再生波形信号」と称することもある。
【0064】
ここで、図2を参照しながら、ホログラムメモリ再生装置1における、図示しないホログラム媒体に記録されているページデータ50について説明する。図2は、ホログラムメモリ再生装置1における、図示しないホログラム媒体に記録されているページデータ50のフォーマットを模式的に示す図である。
【0065】
図示しないホログラム媒体には、図2に示すフォーマットのページデータ50が記録されている。図2に示すように、ページデータ50は、1つの同期パターン51と複数の変調ブロック52とから構成される。2次元変調が2:4符号の場合、同期パターン51は、2×2、すなわち4画素の論理値「1」からなり、通常、ページデータ50の左上隅に配置されている。ただし、同期パターン51が配置される位置は、ページデータ50の左上隅に限られるものではない。
【0066】
なお、論理値「1」は明画素、論理値「0」は暗画素に対応してホログラム媒体に記録される。なお、同期パターン51は4画素の論理値「1」から構成されることに限定されるものではない。
【0067】
変調ブロック52は、ユーザデータなどの情報ビットが、2:4符号によって2次元変調されている。なお、2:4符号とは、図17を用いて説明したように、2ビットの情報ビットを変調して4画素の変調ブロックに変換するものである。なお、変調ブロック52に対する2次元変調は2:4符号の定重み符号に限定されるものではない。
【0068】
(バッファメモリ2)
バッファメモリ2は、ホログラムメモリ再生装置1によって生成された再生信号をページデータ単位で記憶する記憶装置である。なお、バッファメモリ2に記憶されるページデータ単位の再生信号は、図16を用いて説明したように、隣接する画素からの再生信号の影響、すなわち画素間干渉の影響を受けた2次元再生信号となっている。
【0069】
(2次元波形等化回路3)
2次元波形等化回路3は、ホログラムメモリ再生装置1によって生成されてバッファメモリ2に記憶された再生波形信号に対して、2次元的な波形等化を施すことにより、該再生波形信号を想定波形レベル設定回路8において想定する信号に適した信号xに変換する回路である。なお、2次元波形等化回路3の構成および上記波形等化の処理内容は、一般的に知られている従来技術であるので、これらに関する詳細な説明は省略する。
【0070】
(同期パターン検出回路4)
同期パターン検出回路4は、2次元波形等化回路3によって波形等化された信号から同期パターン51を検出する回路である。
【0071】
ここで、同期パターン51が、論理値「1」が行方向および列方向に2ビットずつ隣接し合う、合計2×2すなわち4ビットパターンである場合、同期パターン51の再生信号は4倍のサイズを持つ明画素と見なすことができる。この場合、ビタビ復号を行うことを前提として高密度化されたシステムにおいても、同期パターン検出回路4は、ビタビ復号ではなく、回路構成が簡単なしきい値検出方式により実現することが可能である。なお、しきい値検出方式とは、各画素の再生信号レベルが所定しきい値より大きければ「1」、小さければ「0」に復号する方式である。
【0072】
このように、同期パターン51は、論理値「1」が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されているように構成されたパターンであることが好ましい。
【0073】
(2次元ビタビ復号回路5)
2次元ビタビ復号回路5は、2次元波形等化回路3によって波形等化された信号x、および、想定波形レベル設定回路8が算出した想定波形レベルwに基づき、上記想定波形レベルwに対する上記波形等化された信号xの2乗誤差の和を、トレリス遷移のブランチメトリックとして判定帰還ビタビ復号を行う回路である。このとき、所定のトレリス遷移を禁止(除去)する。所定のトレリス遷移を禁止(除去)する具体的な処理内容については後述する。
【0074】
(判定帰還ビタビ復号法)
ここで、2次元ビタビ復号回路5が実行する判定帰還ビタビ復号について、以下に説明する。上記判定帰還ビタビ復号法は、ページデータの横方向(すなわち行方向)に沿って、再生信号をビタビ復号する。そして、1行ずつ復号ビットを決定する処理を1行ずつ縦方向(すなわち列方向)にずらしながら行う。その際、直前の復号結果(フィードバック行)を次行のビタビ復号に利用する。
【0075】
図3および図4を参照しながら、判定帰還ビタビ復号法の概要について説明する。図3は、判定帰還ビタビ復号法における画素間干渉のインパルス応答を示す図である。また、図4は、判定帰還ビタビ復号法におけるトレリス線図である。トレリス線図とは、ビタビ復号過程に対応する状態遷移図のことである。
【0076】
図3に示すように、3行3列の行列で表される2次元インパルス応答hとして画素間干渉を表現すると、トレリス状態は2行2列の行列として定義される。そして、この場合のトレリス線図は図4に示すように表現される。
【0077】
なお、「2次元インパルス応答」とは、単位インパルス信号を線形システムに入力したときに当該線形システムが出力する出力信号を意味する。ここで、単位インパルス信号とは、(a)1ビットのみの信号レベルが1であり、(b)それ以外のビットの信号レベルが全て0であるような2次元ビット行列を意味する。
【0078】
図3に示す2次元インパルス応答hでは、中心の画素だけでなく、周辺の隣接画素においても信号レベルが生じている。すなわち、画素間干渉の発生が想定されている。
【0079】
トレリス状態を[k,l;m,n]と表記するものとする。ここで、k、l、m、およびnはいずれも1ビットの値(すなわち、0または1)であるので、2の4乗、すなわち16種類のトレリス状態が存在することになる。そして、図4に示すように、各トレリス状態から次のトレリス状態へのブランチ(遷移)は、トレリス状態ごとに4本ずつある。同様に、各トレリス状態に入力されるブランチは、トレリス状態ごとに4本ずつある。
【0080】
各ブランチが想定する想定波形レベルは、ブランチに繋がる2つのトレリス状態を結合した2行3列の行列に、その一つ上のフィードバック行を結合させた3行3列の行列によって決定される。
【0081】
例えば、[0,0;0,1]から[0,1;1,0]へのブランチが想定するレベル(トレリス状態の遷移に対して想定される想定信号値)について、一例として説明する。このブランチが想定するレベルは、その一つ上のフィードバック行が[1,1,0]であったとすると、行列[1,1,0;0,0,1;0,1,0]によって決定される。具体的には、2次元インパルス応答hと行列[1,1,0;0,0,1;0,1,0]とを2次元畳み込み演算することにより得られる値「0.31」が、このブランチの想定波形レベルとなる。
【0082】
判定帰還ビタビ復号処理は、ページデータにおける左から右に向かって、行方向に行われる。再生信号を行方向に走査することによって得られる波形を再生信号波形とすると、再生信号波形のレベルと各ブランチの想定波形レベルとの2乗誤差をブランチメトリックとし、また、各トレリス状態に至るパスの累積ブランチメトリックをパスメトリックとする。そして、各トレリス状態に入力される4本のパスのうちパスメトリックが最小のものを生き残りパスとして残す。パスメトリックとは、パスの理想信号に対する入力信号の誤差のことである。
【0083】
そして、上記処理をトレリス状態ごとに行い、かつ、行方向に繰り返す。これにより、所定時間だけ前(左方向)に遡れば、生き残りパスが1本に収束している。そこで、この生き残りパスを正解パスとして決定する。なお、上記所定時間は、パスメモリ長と呼ばれる。
【0084】
以上の過程は、従来の1次元ビタビ復号法と原理的に同じである。そこで、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0085】
ただし、正解パスの取り扱いが1次元ビタビ復号と異なる。すなわち、1次元の場合は、正解パスがビット系列そのものに対応するが、2次元の場合は、正解パスが行列になる。したがって、2次元の場合は、正解パスは複数のビット行に対応する。上記の例では2行のビット行である。
【0086】
これら2行のビット行のうち、2行目は、3行目以降のビット行からの影響が考慮されていない。すなわち画素間干渉の影響が部分的にしか考慮されてないため信頼性に乏しい。一方、1行目については、上下左右からの波形干渉が、全て考慮に入れられてビタビ復号されている。そこで1行目のみを復号ビットとして出力する。
【0087】
行方向のビタビ復号によって得られるのは、1行分のビット行である。そこで、ページデータ全体を復号するためには、この処理を1行ずつ列方向(下方向)にずらしながら繰り返す。これにより、2次元再生信号の全体を復号する。
【0088】
ここで、判定帰還の考え方を導入する。判定帰還は、現在の復号対象行の1つ上の行の復号結果をフィードバック行として、次の行のビタビ復号に反映させる手法である。具体的には以上に説明した通りである。すなわち1つ上の行の復号結果を、次の行のブランチの想定波形レベルを決める処理に用いる。これにより、復号結果を反映させる。
【0089】
判定帰還の手順について、以下に、さらに詳しく説明する。受光素子64の最上端の行で受光した再生波形信号に基づいて再生するときは、当該最上端の行のさらに上の行における受光量が0であると見なすことができる。そこで、最上行からの再生波形信号に基づいて情報を再生するときには、フィードバック行を全て0とする。
【0090】
次に、上から2行目からの再生波形信号に基づいて情報を再生する。このとき、1行目(すなわち最上端の行)においてビット行が正確に復号されたと仮定し、これをフィードバック行として2行目の復号に用いる。
【0091】
さらに、上から3行目の行からの再生波形信号に基づいて再生する。このとき、2行目においてビット行が正確に復号されたと仮定し、これをフィードバック行として3行目の復号に用いる。
【0092】
以上のように、判定帰還ビタビ復号法では、現在の復号対象行の直前の(1つ上の)行において復号処理が正確になされたと仮定する。そして該直前の(1つ上の)行の影響を考慮に入れつつ(すなわち列方向の判定帰還を行い)現在の行からの再生波形信号についてビタビ復号を行っている。そのため、列方向の画素間干渉の影響をより考慮に入れたビタビ復号処理が実行されている。従って、従来の1次元ビタビ復号処理、すなわち行方向のみの再生波形の変化を用いたビタビ復号処理に比べて、より正確にビタビ復号処理が実行できる。
【0093】
(復号ビット行出力回路6)
復号ビット行出力回路6は、2次元ビタビ復号回路5における復号によって生き残ったパスに含まれる復号ビット行のうち、復号対象行に対応する復号ビット行qを抽出して出力する回路である。すなわち、上下左右からの波形干渉が全て考慮に入れられてビタビ復号される1行目のビットのみが、復号ビット行出力回路6から復号ビットとして出力される。
【0094】
(復号ビットレジスタ7)
復号ビットレジスタ7は、復号ビット行出力回路6から出力された復号ビットを保持するレジスタである。
【0095】
(想定波形レベル設定回路8)
想定波形レベル設定回路8は、復号ビットレジスタ7に保持された復号ビットを用いて、2次元ビタビ復号回路5において使用する想定波形レベルを算出し、該算出した想定波形レベルwを2次元ビタビ復号回路5に送信する回路である。
【0096】
(ブロック境界判定回路9)
ブロック境界判定回路9は、バッファメモリ2から読み出した再生波形信号に対応するトレリス状態の各遷移を表すビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定する。すなわち、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51の位置と、2次元ビタビ復号回路5における現在の復号対象ビットの行位置および列位置とに基づいて、上記トレリス状態の各遷移を表すビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定する。
【0097】
このとき、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51のページデータ50におけるビット位置により、変調ブロック52の境界を認識する。すなわち、図2にて説明したように、2次元変調が2:4符号の場合、同期パターン51は、2×2、すなわち4画素の論理値「1」からなることから、同期パターン51のページデータ50におけるビット位置がわかれば、変調ブロック52の境界を認識することができる。
【0098】
なお、上記トレリス状態の各遷移を表すビットパターンについては、後述する。
【0099】
(変調則判定回路10)
変調則判定回路10は、ブロック境界判定回路9が2次元変調のブロックの全体を含むと判定した場合に、上記トレリス状態の各遷移を表すビットパターンが含む2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0100】
そのため、変調則判定回路10は、現在の復号対象ビットに関わるトレリス遷移の各遷移を表すビットパターンに含まれる変調ブロックを、2次元ビタビ復号回路5から受信する。そして、該受信した変調ブロックが2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0101】
なお、上述したように、ホログラムメモリ再生システム20に含まれる、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4、2次元ビタビ復号回路5、復号ビット行出力回路6、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、ブロック境界判定回路9、変調則判定回路10は、ビタビ復号装置21を構成している。
【0102】
(想定応答行列)
次に、図5を参照しながら、ホログラムメモリ再生装置1における所定の2次元インパルス応答行列PRについて説明する。図5は、ホログラムメモリ再生装置1における所定の2次元インパルス応答行列PRを模式的に示した図である。
【0103】
2次元ビタビ復号回路5は、例えば、図5に示した2次元インパルス応答行列PRをパーシャルレスポンス特性として想定して動作する。そこで、上記2次元インパルス応答行列PRを想定応答行列PRと称する。ここで、光学理論の見地に基づいて考えると、想定応答行列PRは光の振幅によって定義するのが適切である。なお、パーシャルレスポンス特性とは、前記理想パスメトリック差を算出するために使用され、2次元インパルス応答として表現される。
【0104】
なお、説明の簡略化のため、想定応答行列PRは画素間干渉のビット幅が「3」である場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、想定応答行列PRとして、ホログラムメモリ再生装置1の応答特性に近いものを想定すればよい。
【0105】
2次元ビタビ復号回路5の動作を表現するトレリス線図は、図4にて説明したトレリス線図と基本的に同様である。
【0106】
想定応答行列PRの画素間干渉のビット幅が3であり、判定帰還ビタビ復号法を適用しているため、2行2列の行列としてトレリス状態が定義される(なお、復号対象行の1つ上の行はフィードバック行を用いることができるため、行の幅が3−1、すなわち2となる)。トレリス状態を定義する行列が2行2列(すなわち、計4ビット)であるから、トレリス状態数は「2の4乗」通り、すなわち16通りであり、各トレリス状態に入力するブランチおよび出力するブランチはいずれも4本である。
【0107】
ただし、後述するように、2次元ビタビ復号回路5において、ブロック境界判定回路9と変調則判定回路10の出力に応じて所定のトレリス遷移が禁止(除去)される。
【0108】
(想定波形レベル)
次に、図6を参照しながら、ブランチの想定波形レベル(トレリス状態の遷移に対して想定される想定信号値)の一例として、トレリス状態[1,0;0,1]に入力する4本のブランチについての想定波形レベルについて説明する。図6は、ブランチの想定波形レベルの一例として、トレリス状態[1,0;0,1]に入力する4本のブランチについての想定波形レベルを示す図である。
【0109】
図6に示す想定波形レベルは、ブランチに対応するフィードバック行が[1,1,0]であった場合の想定波形レベルである。想定波形レベルは以下のようにして求められる。
【0110】
まず、トレリス状態[1,1;0,0]から[1,0;0,1]への遷移に対応するブランチが定めるビット行列は、フィードバック行[1,1,0]と合わせると、[1,1,0;1,1,0;0,0,1]となる。
【0111】
次に、図7に示すように、上記ビット行列と想定応答行列PRとの2次元畳み込み演算を行う。図7は、想定波形レベルを求めるための2次元畳み込み演算を行う式を示す図である。該演算の結果得られる行列の中心の値「7」が、上記トレリス状態の遷移において想定される光の振幅に対応する想定値となる。
【0112】
そして、CCDやCMOSセンサによって検出される信号は光の強度に対応した信号であるから、光の振幅と強度との関係、すなわち振幅の2乗が強度であることを考慮すると、光の振幅として得られた値「7」を2乗した値「49」が光の強度に対応する。
【0113】
従って、この値「49」を想定波形レベルとして用いれば、より正確な想定波形レベルを設定することができる。
【0114】
全てのブランチの想定波形レベルについて、上記と同様に求めることができる。すなわち、フィードバック行が[f1,f2,f3]であるとした場合、トレリス状態の[p,q;s,t]から[q,r;t,u]への遷移に対応するブランチの想定波形レベルwは、[f1,f2,f3;p,q,r;s,t,u]と想定応答行列PRとの2次元畳み込み演算により得られる行列の中心の値を2乗した値として求めることができる。
【0115】
上記の説明から分かるように、ブランチの想定波形レベルはフィードバック行の値によって変化する。従って、想定波形レベル設定回路8は、フィードバック行[f1,f2,f3]に基づいて各ブランチの想定波形レベルwを計算する。
【0116】
なお、想定波形レベル設定回路8は、復号ビットレジスタ7から出力されるフィードバック行[f1,f2,f3]に応じて、上記例に示したような計算を毎回行う構成であってもよいし、予め計算された想定波形レベルをルックアップテーブルなどのメモリに記憶しておき、フィードバック行に応じて対応する値を該メモリから読み出す構成であってもよい。
【0117】
なお、トレリス状態の[p,q;s,t]から[q,r;t,u]への遷移に対応するブランチが生き残った場合、復号ビットとして[q;t]の2ビットが決定される。しかし、上下左右からの波形干渉が全て考慮に入れられてビタビ復号される1行目のビットqのみが、復号ビット行出力回路6から復号ビットとして出力される。
【0118】
(再生動作の流れ)
次に、図8を参照しながら、ホログラムメモリ再生システム20による再生動作の流れについて説明する。図8は、ホログラムメモリ再生システム20による再生動作の流れを示すフローチャートである。
【0119】
まず、ホログラムメモリ再生装置1が、干渉縞として情報が記録されたホログラム媒体に対して再生参照光を照射することにより生成される反射光あるいは透過光(コヒーレント光)を、レンズを通して複数の画素を有する受光素子(例えばCCDやCMOSセンサなど)によって受光して2次元の再生波形信号を出力する。そして、上記出力された2次元の再生波形信号を、バッファメモリ2に記憶する(ステップS1)。ここで、ホログラム媒体には、図2にて説明したように、102×102ビットのページデータ50が記録されているものとする。
【0120】
次に、同期パターン検出回路4が、2次元波形等化回路3がバッファメモリ2から読み出した再生波形信号に対して波形等化した信号から同期パターン51を検出し、該検出した同期パターン51のページデータ50におけるビット位置に基づいて画素位置を決定し、行位置iを「1」とし、列位置jを「1」とする(ステップS2)。
【0121】
次に、行方向のビタビ復号を1列目から開始する(ステップS3)。すなわち、2次元波形等化回路3が、i行j列目に対応する再生波形信号をバッファメモリ2から読み出し、該再生波形信号に対して2次元的な波形等化を施した再生波形信号xを2次元ビタビ復号回路5に入力する(ステップS4)。
【0122】
なお、2次元波形等化回路3は、再生波形信号が図5にて説明した応答行列PRに近づくように2次元波形等化処理を行うものであり、この処理によって再生波形信号をそのままビタビ復号する構成に比べて更にエラーレートの低い復号を実現することが可能となる。したがって、エラーレートの減少という観点からは2次元波形等化回路3をホログラムメモリ再生システム20に備えておくことが望ましいが、回路規模の増大を抑えるという観点から2次元波形等化回路3を省く構成としてもよい。
【0123】
次に、2次元ビタビ復号回路5が、トレリス線図に基づいて行方向に2次元ビタビ復号を実行する。すなわち、入力されたi行j列目の記録ビットの再生波形信号xと、それに対応する想定波形レベルwとの2乗誤差の和(x−w)2をブランチメトリックとして求める。更に、各トレリス状態に至るまでに累積されたブランチメトリック、すなわちパスメトリックに基づいて生き残りパスの決定を行う(ステップS5)。
【0124】
ここで、ステップS5においては、復号対象行iが奇数行の場合には、ブロック境界判定回路9および変調則判定回路10により、トレリス線図において禁止(除去)するトレリス状態の遷移が決定される。この決定処理の詳細については後述する。
【0125】
次に、2次元ビタビ復号回路5のパスメモリ長をLとした場合、現在の復号対象である第j列が第L列を超えているか否か(すなわち、jの値がLの値より大きいか、または、jの値がLの値以下であるか)を判定する(ステップS6)。そして、第j列が第L列を超えている(すなわちjの値がLの値よりも大きい)場合(ステップS6にてYES)、復号ビット行出力回路6が、生き残りパスの第(j−L)列のトレリス状態のビット2行[b1;b2]のうち、1行目のビットb1だけを取り出し、復号ビット行として出力する(ステップS7)。
【0126】
この復号ビット行は、復号結果そのものであるが、同時に復号ビットレジスタ7にも記憶される(ステップS8)。
【0127】
なお、第j列が第L列を超えていない(すなわちjの値がLの値以下である)場合(ステップS6にてNO)、ステップS7およびステップS8の処理は行わない。
【0128】
次に、対象列を1列ずらし(ステップS9)、該ずらした後の対象列が第(100+L)列を超えたかどうか(すわなち、(100+L)列分の復号が終わったかどうか)を判定する(ステップS10)。なお、上記(100+L)とは、ページデータの列数である「100」に、パスメモリ長である「L」を加えた値である。
【0129】
そして、上記ずらした後の対象列が(100+L)列を超えている場合(ステップS10にてNO)、対象行を1行ずらし(ステップS11)、該ずらした後の対象行が、ページデータの行である100行を超えたかどうか(すわなち、100行分の復号が終わったかどうか)を判定する(ステップS12)。
【0130】
一方、上記ずらした後の対象列が(100+L)列を超えていない場合(ステップS10にてYES)、ステップS4からS9の処理を繰り返す。
【0131】
そして、ステップS12にて、上記ずらした後の対象行が、ページデータの行である100行を超えている場合(ステップS12にてNO)、処理を終了する。
【0132】
一方、ステップS12にて、上記ずらした後の対象行が、ページデータの行である100行を超えていない場合(ステップS12にてYES)、ステップS3からS11の処理を繰り返す。このとき、1行上の復号ビット行が復号ビットレジスタ7に記憶されているので、これをフィードバック行として次の行のビタビ復号に用いる。
【0133】
以上の動作により、最終的にページデータとしての復号結果のビットマップが得られる。
【0134】
(トレリス遷移の除去)
次に、ステップS5における、ブロック境界判定回路9と変調則判定回路10の出力に応じて、2次元ビタビ復号回路5が、所定のトレリス遷移を禁止(除去)する動作について、以下で詳しく説明する。
【0135】
ページデータ50は2:4符号で符号化されており、2×2すなわち4画素毎に変調ブロックを構成している。そのため、復号対象行iが奇数行である場合、トレリス状態と変調ブロックとは、列方向の境界が一致する。
【0136】
ここで、図9を参照しながら、変調ブロックの全体が2:4符号のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する例について、説明する。図9は、トレリス線図において列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移を表すビットパターンを示す図である。
【0137】
図9に示すように、トレリス線図において列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移を表すビットパターンは[p,q,r;s,t,u]である。
【0138】
ブロック境界判定回路9が、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51のビット位置と、復号対象ビットの位置(すなわち、復号対象行iおよび復号対象列j)とに基づき、上記ビットパターンが点線で図示した変調ブロック[p,q;s,t]を含んでいると判定した場合、変調則判定回路10が、この変調ブロック[p,q;s,t]が2:4符号のパターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0139】
ここで、2:4符号のパターンは、図17にて説明したように、[1,0;0,0]、[0,1;0,0]、[0,0;1,0]および[0,0;0,1]の4種類がある。
【0140】
よって、例えば、上記変調ブロック[p,q;s,t]の値が[0,0;0,1]である場合は、2:4符号のパターンの一つと合致すると判定する。一方、この変調ブロック[p,q;s,t]の値が[1,0;0,1]である場合は、2:4符号のパターンのいずれとも合致しないと判定する。
【0141】
同様に、列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]から列位置(j+2)のトレリス状態[r,v;u,z]への遷移を表すビットパターンについて説明する。ブロック境界判定回路9が、上記ビットパターンが点線で図示した変調ブロック[r,v;u,z]を含むと判定した場合、変調則判定回路10が、この変調ブロック[r,v;u,z]が2:4符号のパターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0142】
上記のように変調則判定回路10が、変調ブロックの全体が2:4符号のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、2次元ビタビ復号回路5が、対応するトレリス遷移を禁止する。すなわち、トレリス線図における対応するブランチを除去する。
【0143】
図10を参照しながら、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図について説明する。図10は、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図である。図10に示すトレリス線図と、ブランチを除去する前のトレリス線図(図4)とを比べると、多数のブランチが除去されている。そのため、上記のようにブランチを除去した後では、誤りパスを選択する確率が大きく低減される。
【0144】
また、上記の説明から分かるように、トレリス状態の遷移を表すビットパターンと変調ブロックとの位置関係に応じて、禁止(除去)される遷移は変わる。本実施形態では、ブロック境界判定回路9が、トレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、変調則判定回路10が、当該ビットパターンを含むブロックが2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合に、該遷移を禁止(除去)し、その結果を2次元ビタビ復号回路5に送る構成としている。この構成により、トレリス線図と変調ブロックの境界との位置関係に応じて禁止(除去)される遷移が変わっても、その結果を、2次元ビタビ復号回路5が行うビタビ復号処理に反映することを可能としている。
【0145】
なお、復号対象行iが奇数行であるか偶数行であるかに関わらず、本実施形態におけるビタビ復号を実行する構成としてもよい。このとき、復号対象行iが奇数行の場合、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれるため、その結果トレリス遷移を削減することができるが、復号対象行iが偶数行の場合には、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれないため、トレリス遷移が削減されない。
【0146】
また、復号対象行iが奇数行である場合は、本実施形態における構成によってビタビ復号を実行し、復号対象行iが偶数行である場合には、後述する実施の形態2における構成によってビタビ復号を実行する構成としてもよい。
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、復号対象行iが奇数行である場合、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれ、その結果トレリス遷移を削減することができる。これにより、誤りパスを選択する確率を低減可能とした。
【0147】
しかしながら、復号対象行iが偶数行である場合には、2次元変調ブロックの全体がトレリス状態を表すビットパターンに含まれない。そのため、復号対象行iが偶数行である場合には、トレリス遷移が削減されることがなく、上述の効果を得ることができない。
【0148】
そこで、本実施形態では、復号対象行iが奇数行であるか偶数行であるかに関わらず、トレリス遷移を削減することができる形態について説明する。
【0149】
本発明の一実施形態について図11から図14に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0150】
図11を参照しながら、本実施形態に係るビタビ復号装置31を含むホログラムメモリ再生システム30について説明する。図11は、本実施形態に係るビタビ復号装置31を含むホログラムメモリ再生システム30の構成を示すブロック図である。
【0151】
図11に示すように、ホログラムメモリ再生システム30は、実施の形態1に係るホログラムメモリ再生システム20とほぼ同様の部材を備えて構成されるが、2次元ビタビ復号回路5に代えて2次元ビタビ復号回路5A(ビタビ復号手段)を備えている。また、ブロック境界判定回路9に代えてブロック境界判定回路9A(ブロック境界判定手段)を備えている。また、変調則判定回路10に代えて変調則判定回路10A(2次元変調パターン検出手段)を備えている。
【0152】
その他に、ホログラムメモリ再生システム30がホログラムメモリ再生システム20と異なる点は、1)復号ビットレジスタ7の出力であるフィードバック行がブロック境界判定回路9Aおよび変調則判定回路10Aに入力されるように構成されている点、および、2)変調則判定回路10Aからの入力を受けて2次元ビタビ復号回路5Aが所定のトレリス遷移を生き残りパスから除去する点である。
【0153】
なお、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4、2次元ビタビ復号回路5A、復号ビット行出力回路6、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、ブロック境界判定回路9A、および変調則判定回路10Aが、ビタビ復号装置31を構成している。
【0154】
(トレリス遷移の除去)
次に、ブロック境界判定回路9A、および変調則判定回路10Aの出力に基づいて、2次元ビタビ復号回路5Aが所定のトレリス遷移を禁止(除去)する動作について詳しく説明する。
【0155】
図12を参照しながら、ホログラムメモリ再生システム30による再生動作について説明する。図12に示すように、列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移と、対応するフィードバック行[d,e,f]とを結合して得られるビットパターンを例に挙げて説明する。図12は、列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移と、対応するフィードバック行[d,e,f]とを結合して得られるビットパターンを示す図である。
【0156】
ブロック境界判定回路9Aが、上記結合して得られるビットパターンが点線で図示した変調ブロック[d,e;p,q]を含むと判定した場合、変調則判定回路10Aが、この変調ブロック[d,e;p,q]が2:4符号パターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0157】
同様に、列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]から列位置(j+2)のトレリス状態[r,v;u,z]への遷移と、対応するフィードバック行[e,f,g]とを結合して得られるビットパターンについて説明する。ブロック境界判定回路9Aが、上記結合して得られるビットパターンが点線で図示した変調ブロック[f,g;r,v]を含むと判定した場合、変調則判定回路10Aは、この変調ブロック[f,g;r,v]が2:4符号パターンとして存在する4種類のパターンのいずれかと合致するか否かを判定する。
【0158】
上記のようにして変調則判定回路10Aが、変調ブロックの全体が2:4符号のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、2次元ビタビ復号回路5Aが対応するトレリス遷移を禁止する。すなわち、トレリス線図における対応するブランチを除去する。
【0159】
図13を参照しながら、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図について説明する。図13は、上記のようにブランチを除去した後のトレリス線図である。図13に示すトレリス線図と、ブランチを除去する前のトレリス線図(図4)とを比べると、多数のブランチが除去されている。その結果、誤りパスを選択する確率が大きく低減される。
【0160】
また、上記の説明から分かるように、トレリス状態の遷移を表すビットパターンと変調ブロック52との位置関係だけでなく、復号ビットレジスタ7の出力であるフィードバック行に応じても、禁止(除去)される遷移は変わる。そこで本実施形態では、ブロック境界判定回路9Aが、フィードバック行とトレリス状態の各遷移とを結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、変調則判定回路10Aが、当該ビットパターンを含むブロックが2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合に、その遷移を禁止(除去)し、その結果を2次元ビタビ復号回路5Aに送る構成としている。この構成により、復号対象行の位置に関わらず、禁止(除去)される遷移が変わっても、その結果を、2次元ビタビ復号回路5が行うビタビ復号処理に反映することが可能となる。
【0161】
なお、本実施形態において、復号対象行iが奇数行である場合(特に復号対象行iが1行目である場合)、実施の形態1にて説明した構成(すなわち、フィードバック行を用いない構成)により、ビタビ復号処理を行ってもよい。
【0162】
(シミュレーション結果)
次に、図14を参照しながら、本実施形態の効果を確認するために、シミュレーションによって再生信号品質と復号結果のビットエラーレートとの関係を評価した実験結果について説明する。図14は、シミュレーションによって再生信号品質と復号結果のビットエラーレートとの関係を評価した実験結果のグラフを示す図である。
【0163】
まず、ランダムに発生させた0および1のビット系列を情報データとして、該情報データに対して6:8変調を施してページデータを作成した。ここで、「6:8変調」とは、6ビットの情報データを4×2、すなわち8画素の変調ブロックに変換する変調方式であり、各変調ブロックの8画素は「1」と「0」の比率が50%(すなわち、4つずつ)である特性を持っている。なお、このように「1」と「0」の比率が50%であるような特性を持つ変調方式はバランス符号と呼ばれる。
【0164】
次に、上記作成したページデータに対して、ホログラムメモリの再生特性をシミュレートしたモデルを用いて擬似再生信号を生成し、これに白色ガウスノイズを印加して入力信号とした。
【0165】
図14に示すグラフの横軸は再生信号のS/N比であり、縦軸は復号結果のビットエラーレートを表す。図14に示すように、本実施形態では、差分検出方式と比較した場合、同じ信号品質においてより低いビットエラーレートが得られていることが確認できる。
【0166】
以上に説明したとおり、本実施形態のように変調方式の特性に基づいてトレリス遷移を禁止(除去)するビタビ復号を行うことにより、誤った遷移が発生する確率を低減し、エラーレートの低い復号を実現できるという効果を得ることができる。
〔実施の形態3〕
実施の形態2では、フィードバック行とトレリス状態の各遷移を表す行列とを結合して得られるビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含み、かつ、当該ビットパターンが含むブロックが2次元変調のパターンのいずれとも合致しない場合に、所定のトレリス遷移を禁止(除去)する構成を説明した。該構成では、上記ビットパターンが含む2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かについて、変調則判定回路10Aがトレリス状態毎に毎回判定した。
【0167】
しかしながら、変調方式が2:4符号など所定の方式に決まっている場合、上記ビットパターンが含む2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれかと合致するか否かを毎回判定しなくても、現在の復号対象ビットの行位置および列位置に基づいて、禁止(除去)すべきトレリス状態の各遷移を予め一意に定めることができる。そのため、現在の復号対象ビットの行位置および列位置に基づいて、禁止(除去)されるトレリス遷移を考慮し、ビタビ復号処理を行うことができる。
【0168】
そこで、本実施形態では、現在の復号対象ビットの行位置および列位置と、フィードバック行とに基づいて、禁止(除去)されるトレリス遷移を予め考慮して、ビタビ復号処理を行う形態について説明する。これにより、2次元変調のブロックと2次元変調のパターンとの合致を判定するという構成を省略することができるので、実施の形態2における、変調則判定回路10Aによる判定は不要となる。
【0169】
本発明の一実施形態について図15に基づいて説明すると以下の通りである。なお、説明の便宜上、実施の形態1および2にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0170】
図15を参照しながら、本実施形態に係るビタビ復号装置41を含むホログラムメモリ再生システム40について説明する。図15は、本実施形態に係るビタビ復号装置41を含むホログラムメモリ再生システム40の構成を示すブロック図である。
【0171】
図15に示すように、ホログラムメモリ再生システム40は、実施の形態2に係るホログラムメモリ再生システム30とほぼ同様の部材を備えて構成されるが、2次元ビタビ復号回路5Aに代えて2次元ビタビ復号回路5B(ビタビ復号手段)およびビット位置ポインタ14を備えている。なお、ブロック境界判定回路9Aおよび変調則判定回路10Aは備えていない。
【0172】
その他に、ホログラムメモリ再生システム40がホログラムメモリ再生システム30と異なる点は、1)復号ビットレジスタ7の出力であるフィードバック行が2次元ビタビ復号回路5Bに入力されるように構成されている点、および、2)2次元ビタビ復号回路5Bによるトレリス遷移の禁止処理の内容である。
【0173】
なお、ホログラムメモリ再生システム40のうち、2次元波形等化回路3、同期パターン検出回路4、2次元ビタビ復号回路5B、復号ビット行出力回路6、復号ビットレジスタ7、想定波形レベル設定回路8、およびビット位置ポインタ14が、ビタビ復号装置41を構成している。
【0174】
ビット位置ポインタ14は、バッファメモリ2がビタビ復号装置41に出力している再生信号のページデータ50におけるビット位置(すなわち、現在の復号対象ビットのページデータ50における行位置および列位置)を指し示すポインタを出力する。
【0175】
また、ビット位置ポインタ14は、同期パターン検出回路4が検出した同期パターン51のページデータ50におけるビット位置に基づいて、復号対象ビットの行位置および列位置を定める。これにより、復号対象ビットのページデータ50内における位置を正しく出力することができる。
【0176】
2次元ビタビ復号回路5Bは、ビット位置ポインタ14が出力する復号対象ビットの行位置と列位置、および、復号ビットレジスタ7が出力するフィードバック行のみに基づいて、ビタビ復号処理を行う。ここで、ページデータ50の変調方式が所定の2:4符号であると分かっているので、特定の行位置および列位置が左上隅となるトレリス状態の遷移を表す行列に、上記フィードバック行を結合して得られるビットパターンが、2:4符号のパターンのいずれをも含まないことは予め判定しておくことができる。従って、2次元ビタビ復号回路5Bは、特定の行位置と列位置、およびフィードバック行に応じて、そのようなトレリス状態の遷移が最初から禁止(除去)された構成としておくことができる。
【0177】
以上のように、本実施形態では、実施の形態1または2と比べて簡易な回路構成により、ページデータ50内のビット位置に応じて変化するトレリス線図の禁止遷移をビタビ復号に反映することが可能となる。
【0178】
なお、本実施形態では、フィードバック行、および、現在の復号対象ビットの行位置および列位置に基づいて、どのトレリス遷移を禁止(除去)するかを判定したが、フィードバック行を用いず、現在の復号対象ビットの行位置および列位置のみに基づいて、どのトレリス遷移を禁止(除去)するかを予め判定しておき、除去するトレリス遷移を最初からビタビ復号回路5Bに反映させた構成であってもよい。
【0179】
なお、例えば複数の異なるホログラムメモリ規格に対応する再生装置など、ページデータ50の変調方式が所定の方式に決まっていない場合は、実施形態1または2のように毎回判定する構成が適する。その場合、実施の形態1の変調則判定回路10または実施の形態2の変調則判定回路10Aが判定に用いる変調規則を、再生するホログラムメモリ規格に応じて切り替える構成とすればよい。
【0180】
(付記事項)
また、本発明の各実施形態におけるホログラムメモリ再生システムでは、行方向で2次元ビタビ復号を実行し、これを列方向に繰り返すことによって2次元再生信号全体を復号するビタビ復号方法を用いたが、これに限定されるものではない。すなわち、列方向で2次元ビタビ復号を実行し、これを行方向に繰り返すことによって2次元再生信号全体を復号するビタビ復号方法であってもよい。
【0181】
また、本発明の各実施形態で説明した「上」と「下」との関係、および「左」と「右」との関係は、これに限定されるものではない。すなわち、上と下とを、また、左と右とを入れ替えてなる構成であってもよい。
【0182】
また、本発明はビタビ復号の遷移を禁止する制約を課すものであるため、特定の変調方式で変調されたページデータの再生信号に対してビタビ復号を行う限りにおいてその効果は得られるものであるから、トレリス状態の行列のサイズ(すなわち、行数および列数)、変調方式、判定帰還に用いるフィードバック行の行数などに依存するものではない。
【0183】
なお、実施の形態は上述の他に、以下のようにも表現できる。
【0184】
[1]本発明に係るビタビ復号装置は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置において、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行に関するトレリス状態の遷移に基づき、当該遷移において想定される想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を、当該遷移のメトリックとしてビタビ復号するビタビ復号手段を備え、上記ビタビ復号手段は、トレリス状態の各遷移が表すビットパターンが2次元変調のパターンとして存在しない場合、当該遷移を禁止するものであってもよい。
【0185】
[2]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、トレリス状態の各遷移が表すビットパターンが2次元変調のブロック境界を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、上記ブロック境界判定手段がブロック境界を含むと判定した場合に、当該ビットパターンが含むブロック境界が2次元変調のパターンとして存在するパターンであるか否かを判定する変調則判定手段とを更に備え、上記ビタビ復号手段は、上記変調則判定手段によって当該ビットパターンに含まれるブロック境界が2次元変調のパターンとして存在しないと判定された場合に、当該遷移を禁止するものであってもよい。
【0186】
[3]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ビタビ復号の結果生き残ったパスのうち、復号対象行に対応する復号ビット行を復号結果として出力する復号ビット出力手段と、上記復号ビット出力手段が出力した復号ビット行を記憶する復号ビット記憶手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段は、上記復号ビット記憶手段が記憶する復号ビット行とトレリス状態の各遷移とで表されるビットパターンが2次元変調のブロック境界を含むか否かを判定するものであってもよい。
【0187】
[4]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ページデータには2次元変調のブロック境界を判定するための同期パターンが含まれており、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段とを更に備え、上記ブロック境界判定手段は、上記同期パターン検出手段によって検出された同期パターンに基づいて、ブロック境界の判定を行うものであってもよい。
【0188】
[5]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ビタビ復号手段においてトレリス状態の遷移の誤差を計算する対象となっている上記2次元再生信号の行位置と列位置を出力する再生信号位置出力手段を更に備え、上記ビタビ復号手段は、再生信号位置出力手段が出力する行位置と列位置に応じて決まる所定の遷移を禁止するものであってもよい。
【0189】
[6]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ビタビ復号の結果生き残ったパスのうち、復号対象行に対応する復号ビット行を復号結果として出力する復号ビット出力手段と、上記復号ビット出力手段が出力した復号ビット行を記憶する復号ビット記憶手段とを更に備え、上記ビタビ復号手段は、上記再生信号位置出力手段が出力する行位置と列位置、および上記復号ビット記憶手段が記憶する復号ビット行に応じて決まる所定の遷移を禁止するものであってもよい。
【0190】
[7]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記ページデータには2次元変調のブロック境界を判定するための同期パターンが含まれており、上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段とを更に備え、上記再生信号位置出力手段は、上記同期パターン検出手段によって検出された同期パターンに基づいて、出力する行位置と列位置を特定するものであってもよい。
【0191】
[8]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記同期パターンは、明画素が複数個隣接し合うように構成されたパターンであってもよい。
【0192】
[9]さらに、本発明に係るビタビ復号装置は、上記2次元変調は、定重み符号化方式であってもよい。
【0193】
[10]本発明に係るビタビ復号処理は、2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法において、上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行に関するトレリス状態の遷移に基づき、当該遷移において想定される想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を、当該遷移のメトリックとしてビタビ復号するビタビ復号処理を備え、上記ビタビ復号処理は、トレリス状態の各遷移が表すビットパターンが2次元変調のパターンとして存在しない場合、当該遷移を禁止するものであってもよい。
【0194】
最後に、実施形態1から3で説明したホログラムメモリ再生システム20・30・40の各ブロックは、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよいし、ハードウェアロジックによって構成してもよい。
【0195】
ソフトウェアによって実現する場合は、ビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、ビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU(Micro Processing Unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0196】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0197】
また、ビタビ復号装置21、ビタビ復号装置31、およびビタビ復号装置41を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0198】
このように本明細書において、手段とは必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能がソフトウェアによって実現される場合も含む。さらに、1つの手段の機能が2つ以上の物理的手段により実現されても、もしくは2つ以上の手段の機能が1つの物理的手段により実現されてもよい。
【0199】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0200】
本発明は、2次元信号に対してエラーレートの低い復号を可能とする復号装置に適用することが可能であり、特に、2次元信号を再生するホログラムメモリ再生装置や、QRコードに代表される2次元バーコード再生装置などに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】本発明の実施形態に係るビタビ復号装置を含むホログラムメモリ再生システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1で示したホログラムメモリ再生システムにおけるホログラム媒体に記録されているページデータのフォーマットを模式的に示す図である。
【図3】判定帰還ビタビ復号法における画素間干渉のインパルス応答を示す図である。
【図4】判定帰還ビタビ復号法におけるトレリス線図である。
【図5】図1で示したホログラムメモリ再生システムにおける所定の想定応答行列を模式的に示した図である。
【図6】図1で示したホログラムメモリ再生システムにおける、トレリス状態[1,0;0,1]に入力する4本のブランチについての想定波形レベルを示す図である。
【図7】図6に示した想定波形レベルを求めるための2次元畳み込み演算を行う式を示す図である。
【図8】図1で示したホログラムメモリ再生システムによる再生動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】トレリス線図において列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移によって表されるビットパターンを示す図である。
【図10】図1で示したホログラムメモリ再生システムにより、ブランチを除去した後のトレリス線図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係るビタビ復号装置を含むホログラムメモリ再生システムの構成を示すブロック図である。
【図12】列位置jのトレリス状態[p,q;s,t]から列位置(j+1)のトレリス状態[q,r;t,u]への遷移と、フィードバック行[d,e,f]とによって表されるビットパターンを示す図である。
【図13】図11で示したホログラムメモリ再生システムにより、ブランチを除去した後のトレリス線図である。
【図14】図11で示したホログラムメモリ再生システムにより、シミュレーションによって再生信号品質と復号結果のビットエラーレートとの関係を評価した実験結果のグラフを示す図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るビタビ復号装置を含むホログラムメモリ再生システムの構成を示すブロック図である。
【図16】従来のホログラムメモリシステムの概要を模式的に示す図である。
【図17】従来の定重み符号の一つである2:4符号を説明する図である。
【符号の説明】
【0202】
1 ホログラムメモリ再生装置
2 バッファメモリ
3 2次元波形等化回路
4 同期パターン検出回路(同期パターン検出手段)
5、5A、5B 2次元ビタビ復号回路(ビタビ復号手段)
6 復号ビット行出力回路(復号ビット出力手段)
7 復号ビットレジスタ
8 想定波形レベル設定回路
9、9A ブロック境界判定回路(ブロック境界判定手段)
10、10A 変調則判定回路(2次元変調パターン検出手段)
14 ビット位置ポインタ
20、30、40 ホログラムメモリ再生システム
21、31、41 ビタビ復号装置
50 ページデータ
51 同期パターン
52 変調ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段を備え、
上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号装置。
【請求項2】
上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、
上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、
上記ブロック境界判定手段が、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、
上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号することを特徴とする請求項1に記載のビタビ復号装置。
【請求項3】
上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置とに基づいて、上記復号対象の行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号することを特徴とする請求項1に記載のビタビ復号装置。
【請求項4】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段と、
上記ビタビ復号手段により復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力手段とを備え、
上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号装置。
【請求項5】
上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、
上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、
上記ブロック境界判定手段が、上記結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、
上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号することを特徴とする請求項4に記載のビタビ復号装置。
【請求項6】
上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置および上記復号ビットとに基づいて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のパターンを含まないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号することを特徴とする請求項4に記載のビタビ復号装置。
【請求項7】
上記ページデータが同期パターンを含んでおり、
上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、
上記ブロック境界判定手段が、2次元変調のブロックの大きさと、上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置とに基づいて上記ビットパターンの位置を認識し、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定することを特徴とする請求項2または5に記載のビタビ復号装置。
【請求項8】
上記ページデータが同期パターンを含んでおり、
上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、
上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて、上記復号対象ビットの行位置および列位置を決めることを特徴とする請求項3または6に記載のビタビ復号装置。
【請求項9】
上記同期パターンは、上記ページデータにおいて、2値のいずれか一方の値が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載のビタビ復号装置。
【請求項10】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップを含み、
上記ビタビ復号ステップにて、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号方法。
【請求項11】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップと、
上記ビタビ復号ステップにより復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力ステップとを含み、
上記ビタビ復号ステップにて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載のビタビ復号装置を動作させるプログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段を備え、
上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号装置。
【請求項2】
上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、
上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、
上記ブロック境界判定手段が、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、
上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号することを特徴とする請求項1に記載のビタビ復号装置。
【請求項3】
上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置とに基づいて、上記復号対象の行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表すビットパターンが上記2次元変調のパターンとして存在しないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号することを特徴とする請求項1に記載のビタビ復号装置。
【請求項4】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号装置であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号手段と、
上記ビタビ復号手段により復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力手段とを備え、
上記ビタビ復号手段が、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号装置。
【請求項5】
上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが、2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定するブロック境界判定手段と、
上記2次元変調のブロックの全体が2次元変調のパターンのいずれとも合致しないことを判定する2次元変調パターン検出手段とを更に備え、
上記ブロック境界判定手段が、上記結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のブロックの全体を含むと判定し、かつ、
上記2次元変調パターン検出手段が、当該2次元変調のブロックの全体が上記2次元変調のパターンのいずれとも合致しないと判定した場合、上記ビタビ復号手段が上記遷移を除去してビタビ復号することを特徴とする請求項4に記載のビタビ復号装置。
【請求項6】
上記2次元変調の変調方式と、復号対象ビットの上記ページデータにおける行位置および列位置および上記復号ビットとに基づいて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンが上記2次元変調のパターンを含まないことが予めわかるとき、上記ビタビ復号手段が上記遷移を予め除去してビタビ復号することを特徴とする請求項4に記載のビタビ復号装置。
【請求項7】
上記ページデータが同期パターンを含んでおり、
上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、
上記ブロック境界判定手段が、2次元変調のブロックの大きさと、上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置とに基づいて上記ビットパターンの位置を認識し、上記ビットパターンが2次元変調のブロックの全体を含むか否かを判定することを特徴とする請求項2または5に記載のビタビ復号装置。
【請求項8】
上記ページデータが同期パターンを含んでおり、
上記2次元再生信号から上記同期パターンを検出するための同期パターン検出手段を更に備え、
上記同期パターン検出手段が検出した上記同期パターンのページデータにおけるビット位置に基づいて、上記復号対象ビットの行位置および列位置を決めることを特徴とする請求項3または6に記載のビタビ復号装置。
【請求項9】
上記同期パターンは、上記ページデータにおいて、2値のいずれか一方の値が行方向または列方向に複数個隣接して、識別可能に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載のビタビ復号装置。
【請求項10】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップを含み、
上記ビタビ復号ステップにて、上記トレリス状態の遷移を表すビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号方法。
【請求項11】
2次元変調されたページデータの2次元再生信号をビタビ復号するビタビ復号方法であって、
上記2次元再生信号における復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移に基づき、上記遷移に対して想定した想定信号値に対する上記2次元再生信号の誤差を上記遷移のブランチメトリックとしてパスメトリックを計算することによりビタビ復号するビタビ復号ステップと、
上記ビタビ復号ステップにより復号対象行の直前の行をビタビ復号した結果得られた復号ビットを出力する復号ビット出力ステップとを含み、
上記ビタビ復号ステップにて、上記復号対象行を含む複数行についてのトレリス状態の遷移を表す行列に、上記復号ビットよりなる行を結合して得られるビットパターンと、上記2次元変調のパターンとに基づいて、当該トレリス状態の遷移を除去してビタビ復号することを特徴とするビタビ復号方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に記載のビタビ復号装置を動作させるプログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−48727(P2009−48727A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215292(P2007−215292)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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