説明

ビタミンD又はその誘導体の固体分散体とビスホスホネートとを含む、骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤

本発明はビタミンD又はその誘導体とシクロデキストリンとを含む固体分散体;前記固体分散体とビスホスホネートとを含む、骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤;及び前記複合製剤の製造方法に関するものである。ビタミンD又はその誘導体及びビスホスホネートを含む本発明の複合製剤は、改善された薬物安定性を通じてビタミンD又はその誘導体の一定な治療的水準を維持することができ、ビスホスホネートによる服用上の不便さ及び副作用を最小化することで患者の順応度を向上させ得る。従って、本発明の複合製剤は骨粗鬆症の予防及び治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンD又はその誘導体とシクロデキストリンとを含む固体分散体、前記固体分散体とビスホスホネートとを含む骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤、及び前記複合製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症(osteoporosis)は骨ミネラル密度(BMD)が減少し、骨微細構造が破壊されて骨折危険性が高くなる代謝性骨疾患である。骨粗鬆症は先天性要因、閉経期、甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)、副甲状腺機能亢進症(hyperparathyroidism)、慢性腎不全、又はグルココルチコイド投与などに起因し、エストロゲン(estrogen)が欠乏する閉経期以後の女性に多発しており、造骨細胞の骨生成が破骨細胞による骨の再吸収(resorption)より低い場合に誘導され、また腸内カルシウム吸収が減少するとBMDが急激に減少する。
【0003】
骨粗鬆症の治療のためには、骨の再吸収を低減させるビスホスホネート(Bisphosphonate)系薬物が臨床段階で処方されており、市販中の代表的なビスホスホネート系薬物としては、アレンドロネート(Alendronate)(フォサマックス(登録商標)、Merck Sharp & Dohme社製、メキシコ;米国特許第4,621,077号)、エチドロネート(Etidronate)、クロドロネート(Clodronate)、パミドロネート(Pamidronate)、チルドロネート(Tiludronate)、リセドロネート(Risedronate)及びインカドロネート(Incadronate)などがある。
【0004】
しかし、ビスホスホネート系薬物は、二次性副甲状腺機能亢進症、カルシウム及びビタミンDの欠乏による低カルシウム血症、上部消化管粘膜への局所刺激による食道炎、食道侵食症(esophagitis)及び食道潰瘍のような副作用を惹起し、かつ服用が非常に不便で複雑である。
【0005】
骨生成機構が最近明かされることによって、BMDバランスを維持するビタミンD及びその誘導体の研究に焦点が合わされている。ビタミンD及びその誘導体は小腸におけるカルシウム吸収を促進させ、骨形成及び再吸収を調節する重要な役割をするので、骨粗鬆症を含む多様なカルシウム代謝異常の治療に用いられ得る。しかし、ビタミンD又はその誘導体のみを有効成分として含む治療剤を服用すると患者の血中カルシウム濃度を上昇させる副作用が起こると報告されている。
【0006】
従って、ビタミンDの不足によって誘導される低カルシウム血症及び骨軟化症などの副作用を予防するだけでなく、正常な骨形成及び骨無機質化を向上させるために、ビスホスホネート系薬物とビタミンDの併用投与方法及び前記二つの薬剤を含む複合製剤を開発するための多様な研究が行われている(Bruno F.ら, Clin. Drug Invest. Mar: 15(3), 1998;韓国特許出願第1999−45623号及び第2004−35646号)。
【0007】
しかし、かかる複合製剤は反応性の高いビタミンDが容易に分解するという問題点がある。例えば、40℃で4日間保管後の製剤内のビタミンD3の含量が、初期含量の約86.3%まで減少する。このようなビタミンD3の分解は、賦形剤や溶媒使用時に加速され得るので、ビタミンD3の場合の製造は難しいと報告されている(Jolanta Sawicka, Pharmazie 46, 1991)。従って、向上されたビタミンD安定性を有する複合製剤が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,621,077号
【特許文献2】韓国特許出願第1999−45623号
【特許文献3】韓国特許出願第2004−35646号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Bruno F.ら, Clin. Drug Invest. Mar: 15(3), 1998
【非特許文献2】Jolanta Sawicka, Pharmazie 46, 1991
【発明の概要】
【0010】
従って、本発明の目的は、改善されたビタミンD安定性を有する、ビタミンD又はその誘導体を含む固体分散体を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記固体分散体とビスホスホネートとを含み、副作用が減少した、骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤及び前記製剤の製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の一実施様態は、ビタミンD又はその誘導体とシクロデキストリンを含む固体分散体を提供する。
【0013】
本発明の他の実施態様は、前記固体分散体とビスホスホネートを含む、骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の実施様態は、(1)シクロデキストリン及びビタミンD又はその誘導体を溶媒に溶解させた後、得られた混合物から溶媒を除去して固体分散体を得る段階;(2)前記段階(1)で得られた固体分散体を圧縮して粉末を得る段階;及び(3)前記段階(2)で得られた粉末をビスホスホネートと混合した後、乾燥して得られて混合物を複合製剤の形態で製剤化する段階を含む、前記複合製剤の製造方法を提供する。
【0015】
本発明によるビタミンD又はその誘導体の固体分散体とビスホスホネートとを含む複合製剤は、改善された薬物安定性を通じてビタミンD又はその誘導体の安定的な治療的水準を維持することができ、ビスホスホネートの服用による不便さ及び副作用を最小化することによって患者の順応度を向上できるので、骨粗鬆症の予防及び治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の固体分散体、前記固体分散体を含む製剤、及び前記製剤の製造方法を次のように詳しく説明する。
【0017】
1.固体分散体
ビタミンD又はその誘導体の安定性を改善するために、本発明の固体分散体はシクロデキストリンとともに、有効成分としてビタミンD又はその誘導体を含む。
【0018】
ビタミンD又はその誘導体は、小腸におけるカルシウム吸収を促進させるとともに腎臓でのカルシウムの再吸収を増加させ、造骨細胞の活性及び破骨細胞成熟を誘導するなどの骨及びカルシウムの代謝に重要な役割をする脂溶性ビタミンである。本発明でビタミンD及びその誘導体の代表的な例としては、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、カルシトリオール、及びエルゴカルシトリオールが包含され、これらは単独で又は混合物として用いられ得る。好ましくは、本発明でビタミンD及びその誘導体は化(I)で表わされるコレカルシフェロール化合物である。
【化1】

【0019】
本願で用いられた用語「IU」は、国際単位(International Unit)を意味するが、これはビタミンDの効能又は用量の通常的な測定単位である。1IUは結晶性又は純粋ビタミンD用国際標準0.025μgの生物学的活性として定義され、言い換えればビタミンD 1μgの生物学的活性は略40IUである。
【0020】
本発明において、シクロデキストリンは向上した溶解性を有する無定形固体分散体の形成のための必須成分であり、化(II)で表わされる置換されたα−、β−、又はγ−シクロデキストリンを含み得る。
【化2】

【0021】
前記式中、nは6、7、又は8であり、Rは、C1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、又はスルホ−C1−4アルキルエーテルである。
【0022】
前記シクロデキストリンの代表的な例には、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2,6−ジメチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−7−β−シクロデキストリン、(2−カルボキシメトキシ)プロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、及び2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンが含まれ、これらは単独で又は混合物として用いられ得る。望ましいシクロデキストリンの例としては、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2,6−ジメチル−β−シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル−7−β−シクロデキストリンが挙げられる。
【0023】
本発明の固体分散体で、活性成分(ビタミンD又はその誘導体)及びシクロデキストリン誘導体は1:1〜1:2,000の範囲、好ましくは1:100〜1:1,600の範囲の重量比に該当する量で用いられる。
【0024】
本発明の固体分散体は安定化剤及び/又は薬剤学的に許容される添加剤をさらに含み得る。
【0025】
2.複合製剤
また、本発明はビタミンD又はその誘導体の固体分散体とビスホスホネートとを含む、骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤を提供する。
【0026】
ビスホスホネートは、本発明の複合製剤で有効成分として用いられ、骨の再吸収を抑制することによって骨ミネラル密度を増加させる役割をする。本発明で用いられたビスホスホネートは化(III)で表わされる化合物又はその薬剤学的に許容される塩であってもよい:
【化3】

【0027】
前記式中、
は、クロロ、メチル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、4−クロロフェニルチオ、2−(N−メチル−N−n−ペンチル)アミノエチル、3−ピリジルメチル、シクロヘプチルアミノ、(1−イミダゾリル)メチル、又は1−ピロリジニルエチルであり;Rは、水素、クロロ、又はヒドロキシであり;Mは水素又はナトリウムであり;zは正数である。
【0028】
前記ビスホスホネートの薬剤学的に許容される塩はビスホスホネートのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアンモニウム塩などを含む。
【0029】
本発明でビスホスホネートは、好ましくは、アレンドロネート(Alendronate)((4−アミノ−1−ヒドロキシ−ブチリデン)ビスホスホン酸一ナトリウム三水和物;米国特許第4,621,077号)、エチドロネート(Etidronate)、クロドロネート(Clodronate)、パミドロネート(Pamidronate)、チルドロネート(Tiludronate)、リセドロネート(Risedronate)、インカドロネート(Incadronate)、ゾレドロネート(zoledronate)及びこれらの薬剤学的に許容される塩、及びこれらの水和物又は部分水和物からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上であってもよい。より好ましくは、前記ビスホスホネートはアレンドロネート又はその薬学的に許容される塩若しくは水和物であってもよく、最も好ましくはアレンドロネート一ナトリウム、アレンドロネートナトリウム一水和物又はアレンドロネートナトリウム三水和物である。
【0030】
ビスホスホネートは複合製剤の総重量を基準として0.5〜90重量%、好ましくは1〜30重量%の範囲の量で用いられる。
【0031】
固体分散体は複合製剤の総重量を基準として0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%の範囲の量で用いられる。
【0032】
また、ビタミンD又はその誘導体は複合製剤の総重量を基準として0.0005〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%の範囲の量で用いられる。
【0033】
また、本発明の複合製剤でビタミンD又はその誘導体及びビスホスホネートは1:100〜1:50,000、好ましくは1:200〜1:20,000の範囲の重量比に該当する量で用いられ得る。
【0034】
本発明の複合製剤は安定化剤及び/又は薬剤学的に許容される添加剤をさらに含み得る。
【0035】
固体分散体又は複合製剤において、前記安定化剤は薬理活性成分であるビタミンDの酸化を防止する公知の安定化剤のうちいずれか一つであってもよい。前記安定化剤の代表的な例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸(Erythorbic acid)、アスコルビン酸(ascorbic acid)及びトコフェロール(tocopherol)があり、これらは単独で又は混合物として用いられ得る。前記安定化剤は複合製剤の総重量を基準として0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%の範囲の量で用いられる。
【0036】
また、本発明の固体分散体又は複合製剤は少なくとも一つ以上の薬剤学的に許容される添加剤を含み得るが、前記薬剤学的に許容される添加剤は、担体、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、希釈剤、賦形剤、充填剤、圧搾補助剤、緩衝剤、被覆剤、懸濁剤、乳剤、界面活性剤及び着色剤を含み得る。
【0037】
前記担体又は賦形剤は、マンニトール、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、デキストロース、ラクトース、澱粉、スクロース、グルコース、メチルセルロース、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ゼラチン、タルク、ソルビトール及びクロスカルメロースナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含み得るが、これらに限定されない。
【0038】
前記結合剤は、澱粉、ゼラチン、天然糖(例:グルコース、無水ラクトース、遊離流動ラクトース、β−ラクトース及びコーン甘味料)、天然又は合成ゴム(例:アカシア、グアー、トラガカント及びアルギン酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール及びワックスからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含み得るが、これらに限定されない。
【0039】
前記潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含み得るが、これらに限定されない。
【0040】
前記崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム、及び変性澱粉又はセルロース重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含み得るが、これらに限定されない。
【0041】
本発明で圧搾補助剤として用いられる希釈剤は、ラクトース、リン酸二カルシウム、セルロース及び微細結晶セルロースからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の成分を含み得るがこれに限定されない。
【0042】
向上された流動性を有する粉末混合物を得るため、本発明の複合製剤は接着防止剤(antiadhesive agent)をさらに含み得、前記接着防止剤の代表的な例としはコロイド状二酸化ケイ素及びタルクなどがある。
【0043】
薬剤学的に許容される添加剤は、複合製剤の総重量を基準として0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜20重量%の量で用いられる。
【0044】
3.複合製剤の製造方法
また、本発明は下記の段階を含む前記複合製剤の製造方法を提供する:
1)シクロデキストリン及びビタミンD又はその誘導体を溶媒に溶解させた後、得た混合物から溶媒を除去して固体分散体を得る段階;
2)段階1)で得た固体分散体を圧縮して粉末を得る段階;及び
3)段階2)で得た粉末をビスホスホネートと混合した後、乾燥して得られる混合物を複合製剤の形態で製剤化する段階。
【0045】
まず、段階1)で、シクロデキストリンは溶媒中に溶解又は分散され、ここにビタミンD又はその誘導体が溶解され、得られた混合物から前記溶媒を除去して固体分散体を得ることができる。前記溶媒は水、有機溶媒、又はこれらの混合物であってもよく、前記有機溶媒は、担体を溶解させ得る公知の有機溶媒のうちいずれか一つであってもよく、好ましくは、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン又はクロロホルムからなる群から選ばれる少なくとも一つ以上の溶媒を含むが、これに限定されない。前記溶媒は噴霧乾燥、ローラー乾燥、溶媒沈殿及び凍結乾燥法、好ましくは噴霧乾燥法のような通常的な方法によって混合物から除去され得る。
【0046】
段階2)で、段階1)で得たビタミンD又はその誘導体の固体分散体が薬剤学的に許容される添加剤とともに混合及び圧縮され、製剤化工程に適宜な粉末混合物を得ることができる。
【0047】
段階3)で、段階2)で得た粉末混合物がビスホスホネートと混合し、この混合物を通常の方法によって製剤化して本発明の複合製剤を得ることができる。
【0048】
前記方法によって製造された本発明の複合製剤は経口投与用として製剤化され得る。例えば、前記製剤は、錠剤、チュアブル錠、コーティング錠、丸薬、散剤、カプセル剤、小袋剤、シロップ剤、エマルション、マイクロエマルション、又は懸濁液の形態であってもよい。
【0049】
段階1)又は段階3)における混合物は安定化剤及び/又は薬剤学的に許容される添加剤をさらに含み得、前記安定化剤及び薬剤学的に許容される添加剤の代表的な例は上述した通りである。
【0050】
また、本発明の複合製剤は、ビスホスホネート投与による食道疾患及び服用の不便さのような副作用を克服するためだけでなく、患者順応度を改善するために腸溶性コーティング物質でコーティングされ得る。
【0051】
従って、本発明の方法は少なくとも一つ以上の腸溶性コーティング物質を溶媒に溶解させてコーティング液を得、段階3)で得た複合製剤を前記コーティング液でコーティングする段階をさらに含み得る。前記コーティング工程はパンコート機又は流動層造粒機を用いた噴霧コーティング法、静電気を用いた粉末コーティング法、乾燥コーティング法、及びホット−メルトコーティング法のような一つ以上の通常的な方法によって行われ得る。
【0052】
前記腸溶性コーティング物質は、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸ポリマー及び酢酸フタル酸セルロースを含み得、これらは複合製剤の総重量基準として0.5〜30重量%、好ましくは1〜15重量%の範囲の量で用いられるが、これらに限定されない。
【0053】
前記コーティング液の製造工程に用いられる溶媒は、水、有機溶媒又はこれらの混合物であってもよく、前記有機溶媒は経口投与され得、高い揮発性を有する公知の有機溶媒のいずれか一つ、例えば、アセトン、エタノール、塩化メチレン及びこれらの混合物であってもよい。
【0054】
前記コーティング液はさらに可塑剤を含み得、また色素剤、抗酸化剤、タルク、二酸化チタン及び香味剤をさらに含み得る。前記可塑剤はアセチル−置換されたモノグリセリド、クエン酸トリエチル、ポリエチレングリコール又はプロピレングリコールであってもよい。
【0055】
本発明の複合製剤の一日投与量は公知された投与量の範囲内で適宜に決定され得る。例えば、アレンドロネートの一日及び一週間の投与量はそれぞれ約10mg及び70mgであり、処理される対象及び条件、患者の重症度、投与頻度及び医者処方を含む多様な関連要因を考慮して決定され得る。一部の場合において、本発明の複合製剤を患者に副作用を起こさない範囲内で公知された量より少ないか多い投与量で投与した方が望ましい。本発明の複合製剤は一日一回多い投与量で投与するか、一日数回少ない投与量で投与され得る。
【0056】
ビタミンD又はその誘導体及びビスホスホネートを含む本発明の複合製剤は、改善された薬物安定性を通じてビタミンD又はその誘導体の一定な治療的水準を維持することができ、ビスホスホネート投与による服用不便さ及び副作用を最小化することによって患者の順応度を向上させ得る。よって、本発明の複合製剤は骨粗鬆症の予防及び治療に有用である。
【0057】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、これらの実施例は本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の権利範囲はこれらによって制限されない。
【0058】
[実施例1]
表1に記載された量によって、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(アルドリッチ社製)をエタノール/水の混合液に入れて溶液が透明になるまで攪拌した後、これにコレカルシフェロール(Fluka社製、Chemie GmbH、Buchs)を添加した。得られた混合物を噴霧乾燥器(Buchi社製、 Mini Spray Dryer、 B-191、スイス)を用いて噴霧乾燥させて固体分散体を得た。前記噴霧乾燥は入り口温度50℃及びポンプ速度は30rpmで行い、固体分散体は噴霧後2時間50℃で乾燥させた。
【0059】
[実施例2]
d,l−α−トコフェロール(BASF社製)0.02mgをさらに添加することを除いては実施例1と同一な方法によってビタミンD又はその誘導体の固体分散体を製造した。
【0060】
[実施例3]
アスコルビン酸(BASF社製)0.05mgをさらに添加することを除いては実施例1と同一な方法によってビタミンD又はその誘導体の固体分散体を製造した。
【0061】
[実施例4]
d,l−α−トコフェロール(BASF社製)0.02mg及びアスコルビン酸(BASF社製)0.05mgをさらに添加することを除いては実施例1と同一な方法によってビタミンD又はその誘導体の固体分散体を製造した。
【0062】
[実施例5]
溶媒でエタノール/水の混合液の代りに純粋なエタノール200gを用いたことを除いては実施例1と同一な方法によってビタミンD又はその誘導体の固体分散体を製造した。
【表1】

【0063】
[実施例6]〜[実施例9]
表2に記載された量によって2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを用いたことを除いては実施例1と同一な方法によってビタミンD又はその誘導体の固体分散体を製造した。
【表2】

【0064】
[比較例1]
2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン56.00mgをコレカルシフェロール0.07mgと均質に混合して固体分散体を得た。
【0065】
[比較例2]
コレカルシフェロール0.07mgのみを用いて固体分散体を得た。
【表3】

【0066】
[製剤例1]
表4に記載された量によって、実施例1で製造されたビタミンD又はその誘導体の固体分散体を低置換されたヒドロキシプロピルセルロース及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)と均質に混合し、得られた混合物を圧縮した後、粒子に粉砕し、30メッシュの篩いを通過させて均質した粉末を得た。得られた粉末をアレンドロネート(Medichem社製、スペイン)、マンニトール、低置換されたヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及び二酸化チタンと均質に混合した後、ここにステアリン酸マグネシウムを添加し、乾燥−混合物を錠剤に製剤化した。
【0067】
[製剤例2]
表4に記載された量によって、実施例1で製造されたビタミンD又はその誘導体の固体分散体をブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)とのみ均質に混合することを除いては前記製剤例1と同一な方法によって錠剤を得た。
【表4】

【0068】
[比較製剤例1]
表5に記載された量によって、コレカルシフェロール粉末(乾燥ビタミンD3 100CWS;Roche社製)を80メッシュの篩いにかけて、マンニトールと均質に混合してから、低置換されたヒドロキシプロピルセルロース及びBHTと均質に混合した後、アレンドロネート、クロスカルメロースナトリウム及び二酸化チタンと均質に混合し、ここにステアリン酸マグネシウムを添加して得られた乾燥混合物を錠剤に製剤化した。
【0069】
[比較製剤例2]
コレカルシフェロール粉末として乾燥ビタミンD3 100BHT(BASF社製)を用いたことを除いては、前記比較製剤例1と同一な方法によって錠剤を得た。
【表5】

【0070】
[製剤例3]
製剤例1で製造した複合製剤325mgをフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HP−55)、アセチルモノグリセリド(Myvacet 9−40)、酸化チタン、及びタルクをアセトン及びエタノールの混合物に溶解させて製造した腸溶性コーティング液でコーティングした。1錠のコーティング工程に用いられたコーティング物質の量はそれぞれ表6に記載されている。
【表6】

【0071】
[製剤例4]
製剤例1で製造した複合製剤の代りに製剤例2で製造した複合製剤を用いたことを除いては、製剤例3と同一な方法によって腸溶性コーティングされた複合製剤を得た。
【0072】
[比較製剤例3]
製剤例1で製造した複合製剤の代りに比較製剤例1で製造した複合製剤を用いたことを除いては、製剤例3と同一な方法によって腸溶性コーティングされた複合製剤を得た。
【0073】
[比較製剤例4]
製剤例1で製造した複合製剤の代わりに比較製剤例2で製造した複合製剤を用いたことを除いては、製剤例3と同一な方法によって腸溶性コーティングされた複合製剤を得た。
【0074】
[試験例1]
ビタミンD又はその誘導体を含む固体分散体の安定性試験
試験物質として比較例2(コレカルシフェロール0.07mg)及び実施例1〜4で製造した固体分散体を用い、前記試験物質を60℃の乾燥オーブンで保管しながら、経時による各試験物質のコレカルシフェロール含量の変化を分析した。
【0075】
各試験物質はコレカルシフェロール分析の前に下記のように前処理を行った。
【0076】
各試験物質をコレカルシフェロール約28mgに該当する量で50mL容量のフラスコに入れ、ここに0.01M塩酸5mLを添加し、前記混合物を3分間超音波処理し、前記フラスコをエタノールで満たした。得られた液15mLを精製水5mL及びn−ヘキサン20mLと5分間混合した後、5分間2,000rpmで遠心分離した。上澄液10mLを取って減圧蒸発した後、ここに2mLのn−ヘキサンを添加した。各試験物質中のコレカルシフェロール含量を下記の条件下でHPLCによって分析した。結果は表7に示されている。
【0077】
−カラム:シリカカラム(5μm、4.6mm×250mm)
−移動相:(クロロホルム:n−ヘキサン:テトラヒドロフラン=650:350:10)(v/v)
−注入量:100μL
−流速:1.0mL/分
−検出機:紫外吸光光度計(波長254nm;L−7400、HITACHI社製、日本)。
【表7】

【0078】
表7で示されたように、比較例2の純粋なコレカルシフェロールの含量は厳しい試験条件下で1週後に顕著に低減したが、これに対して本発明の複合製剤(実施例1〜4)の含量は4週間ほとんど変わらなかった。
【0079】
[試験例2]
固体分散体の安定性比較試験
実施例1の固体分散体、市販中のコレカルシフェロール粉末である乾燥ビタミンD3 CWS 100(Roche社製)及び乾燥ビタミンD3 100 BHT(BASF社製)を用いて安定性試験を行った。
【0080】
乾燥ビタミンD3 100 CWS(Roche社製)はコレカルシフェロールを含んだ食用油脂に(1)ゼラチンと砂糖でコーティングされた澱粉及び(2)抗酸化剤d,l−α−トコフェロールを分散させることによって製造されたコレカルシフェロール粉末であり、90,000〜110,000IU/gのコレカルシフェロールを含んでいる。
【0081】
乾燥ビタミンD3 100 BHT(BASF社製)はコレカルシフェロールを油脂に溶かして得られた混合物を澱粉及び砂糖メトリックス内で分散させて製造されたコレカルシフェロール粉末であり、安定化剤としてBHTを用い、ケイ酸アルミニウムナトリウム及び90,000〜110,000IU/gのコレカルシフェロールを含んでいる。
【0082】
試験物質を60℃の乾燥オーブンで保管しながら、経時による各試験物質のコレカルシフェロール含量の変化を、試験例1に記載された方法と同一な方法によってHPLCで分析した。その結果は表8に示されている。
【表8】

【0083】
表8に示されたように、実施例1の固体分散体は厳しい条件下で市販中の乾燥ビタミンD3の粉末に比べて改善された安定性を有する。
【0084】
同時に、経時による各試験物質の色相の変化を観察し、その結果は表9に示されている。表9に示されているように、乾燥ビタミンD3 CWS100の色相は時間依存方式で茶色に変わった。
【表9】

【0085】
[試験例3]
複合製剤の安定性試験
試験物質、即ち、製剤例1、2及び比較製剤例1、2で製造した複合製剤を60℃の乾燥オーブンで保管しながら、経時による各試験物質中のコレカルシフェロール含量の変化を試験例1に記載された方法と同一な方法によって分析した。その結果は表10に示されている。
【表10】

【0086】
表10に示されているように、本発明の固体分散体を含む製剤例1及び2の複合製剤は市販中のビタミンD乾燥粉末を用いて製造された比較製剤例1及び2の複合製剤に比べて改善された安定性を有する。
【0087】
[試験例4]
腸溶性コーティングされた複合製剤の安定性試験
試験物質、即ち、製剤例3、4及び比較製剤例3、4で製造した複合製剤を60℃の乾燥オーブンで保管しながら、経時による各試験物質中のコレカルシフェロール含量の変化を試験例1と同一な方法によって分析した。その結果は表11に示されている。
【表11】

【0088】
表11に示されているように、本発明の腸溶性コーティングされた複合製剤は市販中のビタミンD乾燥粉末を用いて製造された製剤例3及び4の腸溶性コーティングされた複合製剤に比べて改善された安定性を有する。
【0089】
ビタミンD又はその誘導体及びビスホスホネートを含む本発明の複合製剤は改善された薬物安定性を通じてビタミンD又はその誘導体の一定な治療的水準を維持することができ、ビスホスホネートによる服用上の不便さ及び副作用を最小化することによって患者の順応度を向上し得る。よって、本発明の複合製剤は骨粗鬆症の予防及び治療に有用である。
【0090】
以上本発明を実施例により説明したが、本発明の属する技術分野における熟練者であれば本発明の技術思想及び特許請求の範囲を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることはもちろんのことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンD又はその誘導体とシクロデキストリンとを含む固体分散体。
【請求項2】
前記ビタミンD又はその誘導体がコレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、カルシトリオール、エルゴカルシトリオール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
前記シクロデキストリンが化(II)で表わされる、請求項1に記載の固体分散体:
【化1】

前記式中、nは6、7、又は8であり;RはC1−6アルキル、ヒドロキシ−C1−6アルキル、カルボキシ−C1−6アルキル、又はスルホ−C1−4アルキルエーテルである。
【請求項4】
前記シクロデキストリンが、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2,6−ジメチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−7−β−シクロデキストリン、(2−カルボキシメトキシ)プロピル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシエチル−γ−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項3に記載の固体分散体。
【請求項5】
前記シクロデキストリンが、2−ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、2,6−ジメチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−7−β−シクロデキストリン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項3に記載の固体分散体。
【請求項6】
前記ビタミンD又はその誘導体に対するシクロデキストリンの重量比が1:1〜1:2,000の範囲である、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項7】
安定化剤、薬剤学的に許容される添加剤、又はこれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項8】
前記安定化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸、アスコルビン酸、トコフェロール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項7に記載の固体分散体。
【請求項9】
請求項1に記載の固体分散体とビスホスホネートとを含む、骨粗鬆症の予防又は治療用複合製剤。
【請求項10】
前記ビスホスホネートが化(III)で表わされる、請求項9に記載の複合製剤:
【化2】

前記式中、
はクロロ、メチル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、4−クロロフェニルチオ、2−(N−メチル−N−n−ペンチル)アミノエチル、3−ピリジルメチル、シクロヘプチルアミノ、(1−イミダゾリル)メチル、又は1−ピロリジニルエチルであり;Rは水素、クロロ、又はヒドロキシであり;Mは水素又はナトリウムであり;zは正数である。
【請求項11】
前記ビスホスホネートが、アレンドロネート(Alendronate)、エチドロネート(Etidronate)、クロドロネート(Clodronate)、パミドロネート(Pamidronate)、チルドロネート(Tiludronate)、リセドロネート(Risedronate)、インカドロネート(Incadronate)、ゾレドロネート(zoledronate)、及びこれらの薬剤学的に許容される塩、及びこれらの水和物又は部分水和物からなる群から選ばれる、請求項9に記載の複合製剤。
【請求項12】
前記ビスホスホネートの量が複合製剤の総重量を基準として0.5〜90重量%の範囲である、請求項9に記載の複合製剤。
【請求項13】
前記固体分散体の量が前記複合製剤の総重量を基準として0.1〜80重量%の範囲である、請求項9に記載の複合製剤。
【請求項14】
前記ビタミンD又はその誘導体の量が複合製剤の総重量を基準として0.0005〜20重量%の範囲である、請求項9に記載の複合製剤。
【請求項15】
安定化剤、薬剤学的に許容される添加剤、又はこれらの混合物をさらに含む、請求項9に記載の複合製剤。
【請求項16】
前記安定化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、エリソルビン酸、アスコルビン酸、トコフェロール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項15に記載の複合製剤。
【請求項17】
前記安定化剤の量が複合製剤の総重量を基準として0.001〜10重量%の範囲である、請求項15に記載の複合製剤。
【請求項18】
1)シクロデキストリン及びビタミンD又はその誘導体を溶媒に溶解させた後、得られた混合物から溶媒を除去して固体分散体を得る段階;
2)段階1)で得られた固体分散体を圧縮して粉末を得る段階;及び
3)段階2)で得られた粉末をビスホスホネートと混合した後、乾燥して得られて混合物を複合製剤の形態で製剤化する段階を含む、請求項9に記載の複合製剤の製造方法。
【請求項19】
前記段階1)に用いられる溶媒が水、有機溶媒、又はこれらの混合物である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機溶媒がエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記段階3)で得られた複合製剤を腸溶性コーティング物質でコーティングする段階をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記腸溶性コーティング物質が複合製剤の総重量を基準として0.5〜30重量%の範囲の量で用いられる、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2010−509320(P2010−509320A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536157(P2009−536157)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005572
【国際公開番号】WO2008/056926
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】