説明

ビデオゲーム装置、ビデオゲーム制御方法、ビデオゲーム制御プログラム、および、記録媒体

【課題】プレイヤのスキルを正確に評価してラップタイムや走破タイムに反映する。
【解決手段】仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置であって、ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する手段と、ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段と、ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段と、前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する手段と、設定されたゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、人等の所定のオブジェクトが仮想空間内の所定のコースに沿って移動する時間を競うタイプのビデオゲームの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオゲームの1つのジャンルとして、自動車等のオブジェクトを仮想空間内の所定のコースに沿って走らすレースゲームがある(特許文献1等を参照。)。
【0003】
この種のレースゲームにおいて、プレイヤのスキルを測る物差としてラップタイム(所定のコースを1周するのに要した時間)あるいは走破タイム(所定のコースを完走するのに要した時間)は最も重要な要素である。レースゲームの熱心なプレイヤは、ラップタイムや走破タイムを少しでも縮めようと繰り返しゲームにチャレンジし、スキルを磨いていく。従って、ビデオゲーム装置には、プレイヤのスキルを正確に評価し、プレイヤ間のスキルの差をきちんとラップタイムや走破タイムに反映することが求められる。
【特許文献1】特開2003−88682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、ビデオゲーム装置にはプレイヤのスキルを正確に評価することが求められるが、開発側で想定した走りをラップタイムや走破タイムに反映させるには、様々な壁が存在した。例えば、初心者のために壁に擦ってもあまり減速しないように設定すると、上級者は逆にその現象を利用して速く走ろうとしてしまう。また、様々なスピードでもクリアできるコーナを設定すると、なるべく速いスピードでコーナを曲がることだけが目的のゲームになってしまう。
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、ゲーム進行中のオブジェクトのその場その場の速度にラップタイムや走破タイムが左右されず、プレイヤのスキルを正確に評価してラップタイムや走破タイムに反映することのできるビデオゲーム装置、ビデオゲーム制御方法、ビデオゲーム制御プログラム、および、記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、請求項1に記載されるように、仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置であって、ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する手段と、ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段と、ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段と、前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する手段と、前記評価によって前記オブジェクトがゴールに到達する時間を設定し、該ゴールに到達する時間を基に前記コースに沿って予め設定された各位置における通過時間を設定し、所定のタイミングで前記オブジェクトに最も近い位置に設定された通過時間と現在時間とを比較して、設定された前記ゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する手段とを備えるビデオゲーム装置を要旨としている。
【0007】
また、請求項2に記載されるように、請求項1に記載のビデオゲーム装置において、ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの前記コース上の現在位置、および基準点からの走行距離である現在位置を示す信号を取得する手段、をさらに備え、前記評価の値を増減する手段は、前記現在位置に対応する標準距離よりも前記現在距離が小さい場合に評価の値を増加させ、前記標準距離よりも前記現在距離が大きい場合に評価の値を減少させ、前記減点対象の操作の発生があった場合に前記評価の値を減少させ、前記加点対象の操作の発生があった場合に前記評価の値を増加させるようにすることができる。
【0008】
また、請求項3に記載されるように、請求項1または2のいずれか一項に記載のビデオゲーム装置において、前記オブジェクトの速度は、ゲーム画面上に表示されない物理速度を加減速するようにすることができる。
【0009】
また、請求項4に記載されるように、請求項3に記載のビデオゲーム装置において、前記物理速度の加減速は、プレイヤに気付かれない所定の割合の範囲内で行うようにすることができる。
【0010】
また、請求項5に記載されるように、請求項3または4のいずれか一項に記載のビデオゲーム装置において、前記物理速度の加減速と並行して、前記オブジェクトのゲーム画面上に表示される表示速度の加減速を行うようにすることができる。
【0011】
また、請求項6に記載されるように、請求項5に記載のビデオゲーム装置において、前記表示速度の加減速は、プレイヤに気付かれない所定の割合の範囲内で行うようにすることができる。
【0012】
また、請求項7に記載されるように、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のビデオゲーム装置において、前記減点対象の操作は、カーレースゲームにおける壁ヒットおよび/もしくはステアリング切り過ぎであり、前記加点対象の操作は、カーレースゲームにおけるドリフトであるものとすることができる。
【0013】
また、請求項8に記載されるように、請求項7に記載のビデオゲーム装置において、前記物理速度の加減速と並行して、壁ヒットに対する壁減速の軽減および復帰を行うようにすることができる。
【0014】
また、請求項9に記載されるように、仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置の制御方法であって、ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する工程と、ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する工程と、ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する工程と、前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する工程と、前記評価によって前記オブジェクトがゴールに到達する時間を設定し、該ゴールに到達する時間を基に前記コースに沿って予め設定された各位置における通過時間を設定し、所定のタイミングで前記オブジェクトに最も近い位置に設定された通過時間と現在時間とを比較して、設定された前記ゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する工程とを備えるビデオゲーム制御方法として構成することができる。
【0015】
また、請求項10に記載されるように、仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置を構成するコンピュータを、ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する手段、ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段、ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段、前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する手段、前記評価によって前記オブジェクトがゴールに到達する時間を設定し、該ゴールに到達する時間を基に前記コースに沿って予め設定された各位置における通過時間を設定し、所定のタイミングで前記オブジェクトに最も近い位置に設定された通過時間と現在時間とを比較して、設定された前記ゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する手段として機能させるビデオゲーム制御プログラムとして構成することができる。
【0016】
また、請求項11に記載されるように、請求項10に記載のビデオゲーム制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のビデオゲーム装置、ビデオゲーム制御方法、ビデオゲーム制御プログラム、および、記録媒体にあっては、ゲーム進行中のオブジェクトのその場その場の速度にラップタイムや走破タイムが左右されず、プレイヤのスキルを正確に評価してラップタイムや走破タイムに反映することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
【0019】
<構成>
図1は本発明の一実施形態にかかるビデオゲーム装置のハードウェア構成例を示す図である。
【0020】
図1において、ビデオゲーム装置1は、主たる制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)101と、ポリゴンを用いた3次元グラフィックスの描画処理を行うジオメトリプロセッサ102と、実行中のプログラムおよびデータを保持するRAM(Random Access Memory)等のシステムメモリ103と、制御プログラムおよび各種データを保持するROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、CD(Compact Disk)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disk)ドライブ等の記憶装置104と、起動プログラムを保持するブートROM105と、ボタン、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル等のデバイスとのインタフェースを行うペリフェラルI/F(Interface)106とを備え、これらはシステムバスの調停を行うバスアービタ107に接続されている。
【0021】
また、バスアービタ107には、グラフィックメモリ109を用いて画面描画を行うレンダリングプロセッサ108を介して表示用のモニタ110が接続されるとともに、オーディオメモリ112を用いて音声出力を行うオーディオプロセッサ111を介して音声出力用のスピーカ113が接続されている。更に、バスアービタ107には通信I/F114が接続され、通信I/F114の他端はネットワークに接続され、他のビデオゲーム装置や管理用サーバに接続される。
【0022】
図2はビデオゲーム装置1の主としてコンピュータプログラムにより実現される機能構成例を示す図である。
【0023】
図2において、ビデオゲーム装置1は、ゲーム制御部121と評価計算部122と加減速制御部123と位置・時間テーブル124と評価保持部125とを備えている。
【0024】
ゲーム制御部121は、ビデオゲームの進行を制御する機能を有している。
【0025】
評価計算部122は、ゲーム制御部121から、自動車等のオブジェクトのコース上の現在の位置を示す位置信号(例えば、X,Y,Zの座標値など)と、スタートからの経過時間を示す時間信号(例えば、秒数やスタートからのフレーム数など)と、スタートからの走行距離を示す距離信号と、コースのサイドに設けられた壁への衝突(ヒット)の状況を示す壁コリジョンの深さ信号と、ステアリングの切り過ぎを示すステアオーバの角度信号と、ドリフトの状況を示すドリフトの角度・速度信号とを入力し、リアルタイムに評価(ポイント)の値を計算して評価保持部125に格納する機能を有している。評価とは、標準的に走行した場合のゴール到達時間(標準ゴール時間)に対して加減算する時間である。図3は評価とゴール到達時間の対応関係の例を示す図であり、評価が「0」の場合はゴール到達時間への影響が「0」秒となり、評価が高いほどゴール到達時間から秒数が減算され、評価が低いほどゴール到達時間に秒数が加算される。
【0026】
図2に戻り、位置・時間テーブル124は、コース上の各位置(パス)における標準的な走行距離(標準距離)と経過時間(標準通過時間)の対応関係を保持しており、評価計算部122における評価計算および加減速制御部123における加減速制御において参照される。なお、各位置(パス)は、コース上の標準的な走行位置に設定される。
【0027】
図4はレースゲームにおけるコース(サーキット)の例を示す図であり、図5は位置・時間テーブル124に格納されるコース上の走行距離(標準距離)と経過時間(標準通過時間)の関係の例を示す図である。位置・時間テーブル124に格納される走行距離(標準距離)と経過時間(標準通過時間)は、標準的な走行を行った場合の走行距離(標準距離)および経過時間(標準通過時間)としてゲーム開発者が予め想定して設定した値である。なお、図5では位置(距離)と時間の関係を連続的に示してあるが、位置・時間テーブル124上ではコース上の離散的な複数(多数)の位置(パス)に対して走行距離(標準距離)と経過時間(標準通過時間)の対のデータが格納される。図6は位置・時間テーブル124の例を示す図であり、パス座標(x,y,z)と走行距離と標準通過時間と設定通過時間が対応して格納されている。ここで、設定通過時間は、評価によって設定されるゴール到達時間(設定ゴール時間)を基に計算され、評価の値が変更された場合に、逐次更新される。図の設定通過時間は、評価の値が高く、各通過時間が標準通過時間より短縮された一例である。
【0028】
図2に戻り、加減速制御部123は、評価計算部122を介してゲーム制御部121から取得する位置信号、時間信号、位置・時間テーブル124の参照値および評価保持部125に保持された評価の値に基づき、ゲーム制御部121に対し、オブジェクトのゲーム画面上に表示されない物理速度を加減速する物理速度制御信号と、オブジェクトのゲーム画面上に表示される表示速度を加減速する表示速度制御信号と、壁ヒットに対する壁減速の軽減・復帰を行う壁減速制御信号とを与え、オブジェクトの速度を制御する機能を有している。
【0029】
<動作>
図7は上記の実施形態の主たる制御処理の例を示すフローチャートである。
【0030】
図7において、ゲームの進行と並行して、評価計算(ステップS1)と、加減速制御(ステップS2)の処理が、例えば、1フレーム(1/60秒)おきに繰り返し処理される。なお、前述した各位置(パス座標)を、コースを横断する直線として定義し、当該直線上をオブジェクトが通過したタイミング毎に処理を行ってもよい。
【0031】
図8は評価計算部122による評価計算(図7のステップS1)の処理例を示すフローチャートである。
【0032】
図8において、評価計算部122は評価計算の処理を開始すると(ステップS101)、ゲーム制御部121から取得した壁コリジョンの深さ信号に基づいて壁ヒットがあったか否か判断し(ステップS102)、壁ヒットがあったと判断した場合(ステップS102のYes)には評価保持部125に保持される評価の値を所定の値だけ減少させる(ステップS103)。壁ヒットは減点対象の操作であるため、スキルの評価を下げる。壁ヒットがあったと判断しなかった場合(ステップS102のNo)には特に処理を行わない。
【0033】
次いで、評価計算部122はゲーム制御部121から取得した位置信号の示す現在位置から最も近い位置(パス)を、ゲーム制御部121から取得したオブジェクトの位置信号による座標値とパス座標値とを比較して最も近いパスを求める。そして、当該位置(パス)の走行距離(標準距離)と、ゲーム制御部121から取得した距離信号の示す現在距離とを比較して、走行距離(標準距離)よりも現在距離が小さいか否か判断し(ステップS104)、標準距離よりも現在距離が小さいと判断した場合(ステップS104のYes)には評価保持部125に保持される評価の値を所定の値だけ増加させる(ステップS105)。標準距離よりも現在距離が小さいということは、標準的な走行ラインよりも距離が小さい有利な走行ラインを走っているため、加点対象の操作の結果としてスキルの評価を上げる。標準距離よりも現在距離が小さいと判断しなかった場合(ステップS104のNo)には評価の値を所定の値だけ減少させる(ステップS106)。標準距離よりも現在距離が小さくないということは、標準的な走行ラインに比して無駄な走行をしているため、減点対象の操作の結果としてスキルの評価を下げる。
【0034】
次いで、評価計算部122はゲーム制御部121から取得したステアオーバの角度信号に基づいてステアリング切り過ぎがあったか否か判断し(ステップS107)、ステアリング切り過ぎがあったと判断した場合(ステップS107のYes)には評価保持部125に保持される評価の値を所定の値だけ減少させる(ステップS108)。ステアリング切り過ぎは減点対象の操作であるため、スキルの評価を下げる。ステアリング切り過ぎがあったと判断しなかった場合(ステップS107のNo)には特に処理を行わない。
【0035】
次いで、評価計算部122はゲーム制御部121から取得したドリフトの角度・速度信号に基づいて有効なドリフトがなされたか否か判断し(ステップS109)、有効なドリフトがなされたと判断した場合(ステップS109のYes)には評価保持部125に保持される評価の値を所定の値だけ増加させる(ステップS110)。有効なドリフトは加点対象の操作であるため、スキルの評価を上げる。有効なドリフトがなされたと判断しなかった場合(ステップS109のNo)には特に処理を行わない。その後、評価計算部122は評価計算の処理を終了する(ステップS111)。
【0036】
図9は加減速制御部123による加減速制御(図7のステップS2)の処理例を示すフローチャートである。
【0037】
図9において、加減速制御部123は加減速制御の処理を開始すると(ステップS21)、位置・時間テーブル124から位置信号の示すオブジェクトの現在位置から最も近い位置(パス)に格納された設定通過時間と、現在位置までの時間(時間信号の示す現在時間)とを比較し、前者が少ないか否か判断する(ステップS22)。この設定通過時間が現在時間よりも少ないと判断した場合(ステップS22のYes)にはオブジェクトの加速を行い(ステップS23)、少なくないと判断した場合(ステップS22のNo)にはオブジェクトの減速を行なう(ステップS24)。その後、加減速制御部123は加減速制御の処理を終了する(ステップS25)。
【0038】
図10は加速(図9のステップS23)および減速(図9のステップS24)の処理例を示すフローチャートである。
【0039】
図10において、加減速制御部123は処理を開始すると(ステップS201)、オブジェクトのゲーム画面上の速度計には表示されない物理速度を加減速する(ステップS202)。このときの速度計の値の表示は、アクセル入力操作部の入力時間や入力加減などから算出された通常の値が表示される。この場合、オブジェクトの物理速度の加速および減速は、プレイヤに気付かれない所定の割合の範囲内、例えば速度計で表示される速度の±10%の範囲内で行うことが望ましい。なお、先に述べた設定通過時間と現在時間の差が大きい場合には、最大10%の加減速を行い、差が小さい場合には、差に応じた割合の加減速を行うこともできる。
【0040】
図11は現在時間におけるコース上の自動車等のオブジェクトに対する評価を加味した位置(評価位置)を考慮した観点で示したものであり、評価位置に近づけるための加減速制御による補正作用の概念を示す図である。例えば、上述した各パスは、スタートから標準ゴール時間までの標準的な走行位置を1フレーム(1/60秒)毎に区切って設定してもよい。つまり、上述した各パスの標準通過時間を単位時間で設定するものである。このとき、標準ゴール時間が5分00秒であれば、コース上の標準的な走行位置に、18000個のパスを設定する。かかる場合、位置・時間テーブル124の標準ゴール時間や設定ゴール時間もフレーム数として設定される。これにより、現在時間をスタートからのフレーム数として換算することができ、現在時間(フレーム数)に対して、オブジェクトが居るべきパスの位置を、図11の評価位置P0として示すことができる。この評価位置P0とは、現在時間(フレーム数)が設定通過時間として設定されているパスの位置(座標)のことである。この場合、図9のS22は、走行距離によって順に番号付けされたパスに基づいて、現在時間(フレーム数)におけるオブジェクトに最も近いパス番号と、評価位置P0のパス番号とを比較して加減速処理を行うこともできる。
【0041】
図11において、コース上の現在位置P1にオブジェクトがいて太矢印方向に移動しているものとし、この時点で評価を加味した評価位置P0が先に存在する場合、オブジェクトは、評価位置P0に近づく方向に加速される。これにより、コース上の各位置(パス)における設定通過時間のタイムに近づき、ゴールタイムが設定ゴール時間に収束していく。また、コース上の現在位置P2にオブジェクトがいて太矢印方向に移動しているものとし、この時点で評価を加味した評価位置P0が後ろに存在する場合、オブジェクト評価位置P0に近づく方向に減速される。この場合もコース上の各位置(パス)における設定通過時間のタイムに近づき、ゴールタイムが設定ゴール時間に収束していく。
【0042】
図10に戻り、加減速制御部123は物理速度の加速(ステップS202)と並行して、オブジェクトのゲーム画面上に表示され速度計にも表示される表示速度の加速および減速を行うこともできる(ステップS203)。すなわち、プレイヤに気付かれない範囲の物理速度の加減速(±10%の範囲)だけでは評価を加味した現在時間の評価位置に誘導することが困難な場合があるため、表示速度の加減速を併せて行なうことで評価を加味した評価位置にオブジェクトを誘導(補正)することが容易になる。この場合の表示速度の加速および減速も、プレイヤに気付かれない所定の割合の範囲内、例えばオブジェクトが発揮することができる(設定された能力値による)速度の±10%の範囲内で行うことが望ましい。なお、先に述べた設定通過時間と現在時間の差が大きい場合には、最大10%の加減速を行い、差が小さい場合には、差に応じた割合の加減速を行うことができる。
【0043】
また、加減速制御部123は物理速度の加速(ステップS202)と並行して、壁減速の軽減/復帰を併せて行なうことができる(ステップS204)。すなわち、ゲーム制御部121によるゲーム進行では、一般にコースのサイドの壁にオブジェクトが接触した場合に所定量の減速を行なう処理が行われるが、この減速が却って評価を加味した評価位置に誘導することを困難にする原因となる。そこで、評価が高く加速を行なうべき場合には、併せて壁減速の軽減を行ない、評価が低く減速を行なうべき場合には壁減速の復帰を行なうことで、評価を加味した評価位置に誘導しやすくしている。
【0044】
その後、加減速制御部123は加速もしくは減速の処理を終了する(ステップS205)。
【0045】
なお、上述した実施形態ではゲーム進行の全般にわたって評価計算を行い、評価の値に基づいてオブジェクトの加速もしくは減速を行なっているが、評価の値に基づくオブジェクトの加速もしくは減速の制御を、コースの所定領域や、ゲーム開始からの所定時間帯に限定して行なわせることもできる。この場合、評価の値に基づくオブジェクトの加速もしくは減速が行なわれない領域では、プレイヤの操作がダイレクトにゲーム進行に反映されることとなり、白熱した対戦を行なわせることができ、ゲーム性を高めることができる。この場合でも、他の領域で評価の値に基づくオブジェクトの加速もしくは減速を行なうことで、ラップタイムや走破タイムをプレイヤのスキルに応じた値に誘導することができる。
【0046】
<総括>
以上説明したように、本発明の実施形態によれば次のような利点がある。
(1)ゲーム進行中のオブジェクトのその場その場の速度にラップタイムや走破タイムが左右されず、プレイヤのスキルを正確に評価してラップタイムや走破タイムに反映することができる。
(2)標準的なパターンを中心にスキルに応じた評価で前後する位置および時間の幅の中にオブジェクトの走行が収束しやすくなるため、開発側で用意した評価システムでゲームを管理することができる。
(3)ネットワークを介して他のビデオゲーム装置と対戦を行なう場合、通信途絶により相手方の走行データが取得できなくなった場合、従来は標準的な走行データを用いてその後のゲーム進行を補っていたが、通信途絶の直前に取得した相手プレイヤの評価を用いることにより実際の走行データに近いシミュレーションを行なうことができる。
(4)オブジェクトに設定された性能(加速、最高速、コーナリングの能力)に差があったとしても、本発明でその差を吸収することができ、タイムアタックや複数人での対戦において接戦を演出することが容易にできる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態にかかるビデオゲーム装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図2】ビデオゲーム装置の主としてコンピュータプログラムにより実現される機能構成例を示す図である。
【図3】評価とゴール到達時間の対応関係の例を示す図である。
【図4】レースゲームにおけるコース(サーキット)の例を示す図である。
【図5】位置・時間テーブルに格納されるコース上の走行距離(標準距離)と経過時間(標準通過時間)の関係の例を示す図である。
【図6】位置・時間テーブルの例を示す図である。
【図7】実施形態の主たる制御処理の例を示すフローチャートである。
【図8】評価計算の処理例を示すフローチャートである。
【図9】加減速制御の処理例を示すフローチャートである。
【図10】加速および減速の処理例を示すフローチャートである。
【図11】コース上の自動車等のオブジェクトに対する加減速制御による補正作用の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ビデオゲーム装置
101 CPU
102 ジオメトリプロセッサ
103 システムメモリ
104 記憶装置
105 ブートROM
106 ペリフェラルI/F
107 バスアービタ
108 レンダリングプロセッサ
109 グラフィックメモリ
110 モニタ
111 オーディオプロセッサ
112 オーディオメモリ
113 スピーカ
114 通信I/F
121 ゲーム制御部
122 評価計算部
123 加減速制御部
124 位置・時間テーブル
125 評価保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置であって、
ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する手段と、
ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段と、
ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段と、
前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する手段と、
前記評価によって前記オブジェクトがゴールに到達する時間を設定し、該ゴールに到達する時間を基に前記コースに沿って予め設定された各位置における通過時間を設定し、所定のタイミングで前記オブジェクトに最も近い位置に設定された通過時間と現在時間とを比較して、設定された前記ゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する手段と
を備えたことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項2】
請求項1に記載のビデオゲーム装置において、
ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの前記コース上の現在位置、および基準点からの走行距離である現在位置を示す信号を取得する手段、
をさらに備え、
前記評価の値を増減する手段は、
前記現在位置に対応する標準距離よりも前記現在距離が小さい場合に評価の値を増加させ、
前記標準距離よりも前記現在距離が大きい場合に評価の値を減少させ、
前記減点対象の操作の発生があった場合に前記評価の値を減少させ、
前記加点対象の操作の発生があった場合に前記評価の値を増加させる
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載のビデオゲーム装置において、
前記オブジェクトの速度は、ゲーム画面上に表示されない物理速度を加減速する
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項4】
請求項3に記載のビデオゲーム装置において、
前記物理速度の加減速は、プレイヤに気付かれない所定の割合の範囲内で行う
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項5】
請求項3または4のいずれか一項に記載のビデオゲーム装置において、
前記物理速度の加減速と並行して、前記オブジェクトのゲーム画面上に表示される表示速度の加減速を行う
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項6】
請求項5に記載のビデオゲーム装置において、
前記表示速度の加減速は、プレイヤに気付かれない所定の割合の範囲内で行う
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のビデオゲーム装置において、
前記減点対象の操作は、カーレースゲームにおける壁ヒットおよび/もしくはステアリング切り過ぎであり、
前記加点対象の操作は、カーレースゲームにおけるドリフトである
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項8】
請求項7に記載のビデオゲーム装置において、
前記物理速度の加減速と並行して、壁ヒットに対する壁減速の軽減および復帰を行う
ことを特徴とするビデオゲーム装置。
【請求項9】
仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置の制御方法であって、
ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する工程と、
ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する工程と、
ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する工程と、
前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する工程と、
前記評価によって前記オブジェクトがゴールに到達する時間を設定し、該ゴールに到達する時間を基に前記コースに沿って予め設定された各位置における通過時間を設定し、所定のタイミングで前記オブジェクトに最も近い位置に設定された通過時間と現在時間とを比較して、設定された前記ゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する工程と
を備えたことを特徴とするビデオゲーム制御方法。
【請求項10】
仮想空間内にコースを設定し、プレイヤの操作に応答して前記コースに沿ってオブジェクトを移動させ、オブジェクトが移動する時間を競うゲームのプログラムを実行可能なビデオゲーム装置を構成するコンピュータを、
ゲーム進行に伴う前記オブジェクトの、基準点からの経過時間である現在時間を示す信号を取得する手段、
ゲーム進行に伴うプレイヤの減点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段、
ゲーム進行に伴うプレイヤの加点対象の操作の発生を示す信号を取得する手段、
前記減点対象の操作の発生または前記加点対象の操作の発生に基づいて評価の値を増減する手段、
前記評価によって前記オブジェクトがゴールに到達する時間を設定し、該ゴールに到達する時間を基に前記コースに沿って予め設定された各位置における通過時間を設定し、所定のタイミングで前記オブジェクトに最も近い位置に設定された通過時間と現在時間とを比較して、設定された前記ゴールに到達する時間に収束させるように前記オブジェクトの速度を変更する手段
として機能させるビデオゲーム制御プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のビデオゲーム制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−4963(P2010−4963A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165123(P2008−165123)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】