説明

ビデオテレフォニー品質評価方法及び装置

ビデオテレフォニーシステムにおいて、ビデオテレフォニーメディアを含むマルチメディア信号に対する品質評価の方法において、マルチメディア信号が受信され(S10)、前記マルチメディア信号の複数のパラメータが抽出され(S20)、抽出されたパラメータのうち少なくとも2つの表現に基づいて、客観的な品質基準がビデオテレフォニーメディアに対して判定される(S30)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、通信システム関するものであり、特に、そのようなシステムにおけるビデオテレフォニー(video telephony:テレビ電話)メディアに対する品質評価に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サービスの体験の良好な品質を保証するために、通信システムのオペレータ(無線ネットワーク及び有線ネットワークの双方の)は、初期の段階でネットワークまたはサービスの問題の場所を特定し且つ防止するためにツール及び測定値を使用する。適切なツールにより、ネットワークは、特定のネットワークリソースを考慮してより多くのユーザが供給されるサービスの「十分に適切な」体験ができるように最適化される。いくつかのサービスは、スループット等のいくつかのネットワークパラメータが測定され、エンドユーザに対して品質の適切な推定値を与えることのみを必要とする。ビデオテレフォニー等のメディアサービスに関しては、メディア自体を含む品質低下をもたらすいくつかの要因が存在するため、体験の品質を測定するタスクは重要である。
【0003】
ビデオテレフォニーメディアの品質を判定する最も周知の方法は、参加者が各ビデオテレフォニー通話を主観的に格付けし、主観的品質スコア(例えば、MOS)を与えることである。当然、これは実際にはリアルタイムでは実行不可能である。その代わりに、主観的に知覚されるビデオ品質は、客観的品質評価モデルにより推定可能である。
【0004】
客観的ビデオ品質評価に使用される最も周知の解決策は、復号化ビデオ画像上で実行するビデオ画像解析アルゴリズムに基づいている。それらの多くは、ビデオテレフォニーの品質をある程度測定するために使用可能である。最適な結果、フルリファレンスモデルを与える解決策は、比較する参照ビデオを必要とする。他の解決策は、劣化したビデオ自体のみを評価することにより品質を推定することに依存する。
【0005】
現在、ビデオテレフォニーの品質を評価するために使用される複数の市販の製品またはツールが存在する。
【0006】
・OpticomのPEVQ[非特許文献1]は、画像解析に基づくフルリファレンスモデルである。アルゴリズムは、MOSのようなスコアを出力する。
【0007】
・SwissQualのVQuad[非特許文献2]は、画像解析に基づくフルリファレンスモデルである。SwissQualは、Vmonと呼ばれるノンリファレンスモデルを更に有する。双方ともビデオ品質を判定するために使用される。
【0008】
・GenistaのOptimacyツール[非特許文献3]は、画像解析に基づくフルリファレンスモデル及びノンリファレンスモデルの双方である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】OpticomのPEVQ http://www.opticom.de
【非特許文献2】SwissCalのVQuad及びVmonアルゴリズム http://www.swissqual.com
【非特許文献3】GenistaのOptimacyツール http://www.genista.com
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ビデオ画像解析に基づく従来のアルゴリズムは、計算上の要求が非常に厳しく、多くの処理能力量を必要とする。それらのアルゴリズムの多くがほぼリアルタイムで実行可能であるが、アルゴリズムの複雑さは軽減されており、それによりビデオ品質の推定値が悪くなる可能性が高い。
【0011】
従来のアルゴリズムの多くは、劣化したビデオと比較する参照ビデオを必要とするフルリファレンスモデルである。これは、他のビデオコンテンツをテストしたい場合に常に便利であるとは限らない。フルリファレンスモデルは、一般的なビデオコンテンツに対する平均スコアではなく、特定のビデオシーケンスに対するスコアを常に与える。平均スコアは、移動オペレータ(または有線オペレータ)が通常要求するスコアである。そして、有効なスコアを得るために、フルリファレンスモデルにおける参照ビデオと劣化ビデオとの同期が厳密である必要がある。
【0012】
従って、特に、参照ビデオテレフォニー通話との比較を必要としない改善された客観的ビデオテレフォニー品質評価を可能にする方法及び装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、従来の装置及び方法の上記欠点及び他の欠点を克服する。
【0014】
1つの側面に従えば、本発明は、ビデオテレフォニーサービスの改善された品質評価を提供する。
【0015】
更なる側面に従えば、本発明は、部分的に復号化されたビデオテレフォニーセッションに基づく客観的な品質評価を可能にする。
【0016】
本発明の更に別の側面は、送信パラメータ及び符号化パラメータの双方を考慮する品質評価モデルを可能にする。
【0017】
簡単に説明すると、本発明は、ビデオテレフォニーシステムにおいてビデオテレフォニーメディアを含むマルチメディア信号に対する品質評価の方法を含んでいる。この方法において、マルチメディア信号が受信され(S10)、前記マルチメディア信号を表す複数のパラメータが抽出され(S20)、抽出されたパラメータのうちの少なくとも2つの表現に基づいて、客観的な品質基準がビデオテレフォニーメディアに対して判定される(S30)。
【0018】
本発明の利点は以下を含んでいる。
【0019】
ビデオテレフォニーサービスに対する改善された品質評価モデル;
メディアが完全に復号化されることを必要としないパラメトリック品質評価モデル;
ビデオテレフォニーセッションの客観的な品質基準。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を含むシステムを示す概略ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態を含む更なるシステムを示す概略ブロック図である。
【図3】本発明に従う方法の一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【図4】本発明に従う装置を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
略語
AMR−NB 適応マルチレート狭帯域(Adaptive Multi Rate-Narrow Band)
BLER ブロック誤りレート(Block Error Ratio)
CRC 巡回冗長検査(Cyclic Redundancy Check)
CS 回線交換(Circuit Switched)
DTX 不連続送信(Discontinuous Transmission)
GOB ブロックのグループ(Group Of Blocks)
MOS 平均オピニオンスコア(Mean Opinion Score)
MTU 移動テストユニット(Mobile Test Unit)
PS パケット交換(Packet Switched)
RTCP リアルタイム制御プロトコル(Real-Time Control Protocol)
RTP リアルタイムプロトコル(Real-Time Protocol)
本発明は、ビデオテレフォニーセッション(双方向または一方向)がビデオテレフォニープロバイダと受信装置との間で有効である一般的なビデオテレフォニーシステムに関して説明する。この受信装置は、移動端末または他の移動機器(例えば、ラップトップ、PDA等)、セッション及びシステムの少なくとも一方の品質を評価するテスト端末、あるいは中間ネットワークノードであってもよい。
【0022】
最も一般的な面において、本発明は、ネットワーク自体及び実際のビデオテレフォニーメディアストリームの符号化(コーディング)からの情報を利用することによって、移動ネットワークまたは固定ネットワークにおけるビデオテレフォニーサービスまたはメディアに対して知覚されるオーディオ品質、ビデオ品質または総合品質に関する品質スコアまたは基準を客観的に推定することを可能にする。客観的推定値は、MOSスコア等の主観的品質スコアにマップできるかまたは主観的品質スコアと比較できる。以下の開示では、メディアという用語は、オーディオ及びビデオの組み合わせを含むものとして使用される。
【0023】
従って、本発明の基本的な実施形態は、ビデオテレフォニーシステムにおいてマルチメディア信号のビデオテレフォニーストリーム/メディア/呼に対する客観的品質基準を判定することを含んでいる。品質基準は、マルチメディア信号から抽出されるパラメータまたはパラメータの表現に基づいて判定される。パラメータまたはパラメータの表現は、無線ネットワーク、転送ネットワークに関連する送信パラメータ、並びに/あるいは実際の符号化ビデオテレフォニーセッション/メディア/呼に関連する符号化パラメータを含むことができる。
【0024】
本発明は、ビデオテレフォニーセッションまたは呼から抽出される情報に基づいてビデオテレフォニーサービスに対する総合品質、ビデオ品質またはオーディオ品質のうちの1つ以上の客観的推定値を提供する。
【0025】
本発明が実現される一般的なシステムが図1に示される。図1において、本発明に従うビデオ品質評価モデルは、受信テストユニットに実現される「ビデオテレフォニー品質モデル」とラベルが付されたボックスで示される。
【0026】
ネットワークは、パケット交換(PS)または回線交換(CS)ネットワーク、あるいはそれらの2つの組み合わせであってもよい。更に、そのネットワークは、他の種類のネットワークまたはケーブル等の接続であってもよい。システムは、テストユニットが送信も受信もできる双方向システムである。
【0027】
好適な一実施形態において、送信ユニットは、CS移動ネットワークを介してビデオテレフォニーストリームまたはメディアを送信する移動デバイスまたはビデオテレフォニーサーバである。受信テストユニットは、ストリームを多重分離(デマルチプレクス:de-multiplexing)し、ストリームのオーディオメディア及びビデオメディアを復号化している。送信及び符号化情報を与えると、本発明に従う推定品質スコアが計算される。
【0028】
ネットワークは、送信ユニットがオーディオストリーム及びビデオストリームを別個に送信するPCクライアントまたは移動デバイスであってもよい、移動ネットワークまたは固定PSネットワークであると考えられる。移動クライアントまたはPCクライアントを使用するテストユニットであり得る受信機ユニットは、オーディオストリーム及びビデオストリームを復号化しており、また、転送及び符号化情報で与えられる推定品質スコアを計算する。
【0029】
他の可能なネットワークは、上述のネットワークの組み合わせを含んでいる。
【0030】
更なる一実施形態において、図2を参照すると、本発明に従うビデオテレフォニー品質モデルを含むテストユニットは、送信ユニットと受信ユニットとの間の中間ネットワークノードに配置される。これにより、ネットワークの特定の部分においてメディア品質を測定することが可能になる。しかしながら、ネットワークがPSネットワークであり、かつストリームが暗号化される場合、制限された情報がストリーム自体から受信され得る。
【0031】
図3を参照すると、本発明に従う方法の一実施形態は、ビデオテレフォニーシステムにおいてビデオテレフォニーメディアを含むマルチメディア信号を受信すること(S10)を含んでいる。次に(または同時に)、複数のパラメータは、受信したメディア信号から抽出される(S20)。最後に、ビデオテレフォニーメディアに対する客観的品質基準は、抽出されたパラメータの部分集合(サブセット)、少なくとも2つのパラメータに基づいて判定される(S30)。
【0032】
特定の一実施形態の場合、このサブセットは、受信したマルチメディア信号に対する3つのパラメータ、すなわち、ビデオコーデック、合計符号化ビットレート及びBLERを含んでいる。
【0033】
可能なパラメータまたは利用することができるパラメータの表現の一部は、以下の通りである:
無線ネットワークパラメータ:
・無線BLER(太字)
・使用される無線ベアラ
転送ネットワークパラメータ:
・パケット損失(太字)
・データスループット
・パケットジッタデータ
・パケットジッタバッファストラテジー
・IPパケットサイズ
・RTP/RTCPシグナリング
他のコーデック非依存パラメータ:
・オーディオ及びビデオ(H.223デマルチプレクサからの)に対するCRC誤りレート
・オーディオ及びビデオ(上記と同様)に対するCRC誤りの数
・合計ビットレート(太字)
・ビデオビットレート
・オーディオビットレート
・ビデオフレーム毎のビット数
・オーディオ−ビデオ同期時間差(太字)
・ターゲットビデオフレームレート(太字)
・ビデオの種類
コーデック情報:
・オーディオコーデック(例えば、AMR−NB、G.723)(太字)
・ビデオコーデック(例えば、H.263、MPEG4、H.264)(太字)
・ビデオコーデックプロファイル
・ビデオコーデックレベル
オーディオ符号化依存パラメータ:
・オーディオコーデックモード(例えば、AMRモード)(太字)
・DTXを使用するか否か
ビットストリーム中の最初の数バイトを解析することを必要とするビデオ符号化依存パラメータ:
・ピクチャ量子化器(太字)
・実際のビデオフレームレート(変動が重要である)
・フレーム毎のビデオセグメント(GOB、スライス、ビデオパケット)数
・フレーム内ピクチャまたはフレーム間ピクチャ
・使用される符号化ツール
完全なビット解析を必要とするビデオ符号化パラメータ:
・ピクチャ毎のフレーム内マクロブロック数
・フレーム内リフレッシュストラテジー(知識に基づく推測)
・差分量子化器及びピクチャ毎の平均/最小/最大量子化器
・セグメント毎のマクロブロック数
・平均、最大及び最小絶対動きベクトル
好適な一実施形態に従えば、抽出されたパラメータまたはそれらパラメータの表現は(太字)で示される上記パラメータの全てを含んでいる。この表現は、パラメータの推定値またはそれらパラメータの実際の測定値を含むことができる。好ましくは、全ての(太字)のパラメータの表現は、ビデオテレフォニーメディアに対する品質基準に含まれる。
【0034】
更なる実施形態に従えば、(太字)でないパラメータまたはそれらパラメータの表現の1つ以上が品質基準に含まれ、品質推定の正確度を更に向上する。一覧表示されたパラメータの一部は、他の更に不可欠なパラメータを推定または表現するために使用される。一例として、無線ベアラを与えると、合計ビットレートの仮定が判定され、また、抽出されたパラメータの1つとして使用される。
【0035】
ビデオテレフォニーメディアストリームがPSネットワークを介して転送される場合、転送ネットワークパラメータが含まれる。パケット損失等のネットワークパラメータの一部は、CSコアネットワークに対しても有効である。
【0036】
ビデオジッタ及びビデオジッタバッファに関し、以下に簡単な説明が開示される。PSネットワークを介して送信されるビデオパケットは、正確に到着することまたはあるレートで到着すること、あるいは正確な順番で到着することが保証されない。ジッタは、不均一な到着レートのパケットストリームに対して使用される用語である。異なるネットワークは、異なるジッタ分布及び異なるサイズのジッタスパイクを有する。バッファサイズ及びバッファストラテジーに依存して、ジッタの結果は、ネットワーク毎にまたは同一ネットワーク内であっても異なる。
【0037】
ビデオに対するジッタバッファを管理する別の方法は以下の通りである。
【0038】
・最小のバッファサイズを使用する。ビデオストリームは、到着するとすぐに再生される。その結果、大量のパケットジッタが存在する場合には不安定になる可能性がある。
【0039】
・大きなバッファサイズを使用する。ビデオストリームは、正確なレートで再生されるが、終端間の遅延はより大きくなる。リアルタイムサービスの場合、遅延は長くなりすぎることはない。このバッファサイズは、許容されるジッタと終端間の遅延との間でのトレードオフととなる。
【0040】
・適応バッファサイズを使用する。適応バッファは、ジッタの特性に依存してバッファサイズを変更する。低レベルでは、バッファは減少され、かつ高レベルでは、バッファは増加される。適応の速度は、設定するために重要なパラメータである。応用例に依存して、ジッタバッファは、遅いパケットに後続するパケットが再生される際のレートを直接選択してもよくまたは許容される遅延に回復されるまでリアルタイムより多少速いペースを選択してもよい。
【0041】
更に、パケットが全く到着しない状況を考慮する必要がある。従って、パケットを廃棄するまでに、そのパケットをどの程度待機することが許容されるかを考慮する必要がある。これは、ジッタスパイクのサイズに影響を及ぼすものである。廃棄されたビデオパケットにより、いわゆる空間アーティファクトが発生する。
【0042】
実際のビデオテレフォニーストリーム/メディア/呼に関連する符号化またはコーデックパラメータを考慮すると、それらのパラメータは、モデル要件に依存して少なくとも部分的に復号化(または解析)された受信ビデオテレフォニーメディアストリームまたは完全に復号化されたビデオテレフォニーメディアストリームから抽出可能である。
【0043】
特定の一実施形態に従えば、3つのパラメータが受信マルチメディア信号から抽出される。
【0044】
上述のパラメータの一部に基づく品質基準またはスコアQualpredの計算用の関数の可能な一実施形態は、以下のように表される。
【0045】
Qualpred=f(c,n,r) (1)
ここで、cは抽出された符号化関連パラメータの表現であり、nは抽出されたネットワーク関連パラメータの表現であり、rはビデオテレフォニーメディアのロバスト性に影響を及ぼす抽出パラメータの表現であり、そして、fは所定の選択された関数である。
【0046】
符号化パラメータは、ビデオテレフォニーメディアの誤りのない基本品質を判定することに関連する全てのパラメータを含んでいる。ネットワークにおいて誤りが導入される場合、ネットワーク関連パラメータは、メディアの品質低下を判定する。ロバスト性パラメータは、メディアの符号化において使用されるロバスト性ツールに基づいて推定される劣化を減少するために使用される。ロバスト性パラメータは、フレーム毎のビデオセグメント数、フレーム内またはフレーム間ピクチャ情報、ピクチャ毎のフレーム内マクロブロック数及びフレーム内リフレッシュストラテジーを含んでもよい。
【0047】
品質スコアの計算方法の基本原理は、クリーンな符号化メディアの計算された基本品質に基づいている。基本品質スコアは、ネットワークの劣化及び現在のメディアの使用されるロバスト性ツールを反映するように変更される。クリーンな符号化メディアという用語は、転送問題が存在しないコーデック、フレームレート、ビットレートの特定の組み合わせに対する理論上最適な可能な品質を示している。
【0048】
本発明の別の実施形態において、品質スコア関数は、特に幾何関数として記述することができる。
【0049】
Qualpred=f(c)*g(r,n) (2)
ここで、f(c)はクリーンな符号化メディアシーケンスに対する品質スコアであり、g(r,n)は、使用されるロバスト性ツールで与えられるネットワークからの劣化を反映する0〜1の値である。
【0050】
本発明の更に別の実施形態において、品質スコア関数は、以下のように記述することができる。
【0051】
Qualpred=Qualrobust (3)
この場合、以下の通りである。
【0052】
Qualclean=f(c) (4)
Qualnetwork=g(Qualclean,n) (5)
Qualrobust=h(Qualclean,Qualnetwork,r) (6)
ここで、f、g及びhは、適切な選択された関数である。Qualcleanは、クリーンな符号化メディアの品質である。Qualnetworkは、ネットワークの劣化後のメディアの品質である。Qualrobustは使用されるロバスト性ツールに対するネットワークの劣化後のメディアの品質である。Qualcleanスコアは、Qualrobustスコアに対する入力として使用されるべきであり、品質がQualcleanより良くはならないことを保証する。しかしながら、使用されるロバスト性ツールによってはメディアに対する全体の品質を低下させる余分なオーバヘッドを与えるためにQualnetwork=Qualcleanであっても、Qualrobustは、Qualcleanより小さい可能性がある。
【0053】
更に、基本メディア品質が計算され、かつ品質を低下するネットワーク関連パラメータが値をスコアから減算し、かつロバスト性関連パラメータが別の値をスコアに加算(または減算)する解決策を考慮することができる。
【0054】
更なる実施形態に従う品質スコアは、瞬時に推定されるか、あるいは特定時間にわたる関数として推定される。品質スコアが瞬時に推定される場合、スライディングウィンドウは、知覚される品質を表さない品質スコアを与えることになるピーク値を回避するために、BLER及び実際のフレームレート等の多くのパラメータに対して使用される必要がある。スライディングウィンドウは、例えば、8秒の長さである。これは、誤って表される最大値を回避するために十分な長さであり、平坦すぎる平均化効果を回避するために十分な短さである。
【0055】
例示するために、上述のパラメータの小さなサブセットに基づく品質スコア関数は、ビデオテレフォニー品質モデルにおいてテストされている。このモデルは、テスト対象のグループが種々のビデオコーデック、対象のビデオフレームレート及び無線BLERにより符号化及び劣化した短いビデオテレフォニーシーケンスを格付けしている主観的テストの結果にマップされている。以下の関数方程式7は、そのモデルに対して使用されている。 β0+β1・BLER BLER<閾値
MOSpred={ (7)
1 BLER>閾値
ここで、0=<BLER<=1であり、かつb=(b0,b1)である。βに対する種々の値は、種々のビデオコーデックに対して使用されている。上述の例において、β0は、クリーンな符号化メディアの品質に関連するパラメータを表し、β1は、ネットワークの劣化に対応するパラメータを表している。
【0056】
更なるモデル(3つ以上のパラメータを考慮する)に従えば、上記例の関数は、以下の式8に従って改善される。
【0057】
β0+β1・(β2+β3・BLER) BLER<閾値
MOSpred={ (8)
1 BLER>閾値
上記と同一の専門用語を使用すると、βはクリーンな符号化メディアの品質を表し、BLERは、CSネットワークによって起こる品質低下を表していると言える。
【0058】
本発明は、他の客観的モデルからの結果へのマッピングを提供し、本発明のモデルを改良することができる。
【0059】
本発明のモデルは、現実の双方向ビデオテレフォニー通話の品質を監視するために使用することができる。そのモデルは、ビデオテレフォニーストリームがネットワークを介して一方向に送信される場合の品質を推定できる。これは、ネットワークにおけるビデオテレフォニーサービスをテストする場合に適している。
【0060】
このモデルは、無線ネットワーク、転送ネットワークからのパラメータ、並びにオーディオ及びビデオ符号化パラメータに基づくパラメトリックモデルである。可能なパラメータは、ブロック誤りレート(BLER)、無線ベアラ、パケット損失、使用されるオーディオ及びビデオコーデック、ビデオフレームレート、並びにビデオ量子化器を含んでいる。しかしながら、いくつかの例の場合、モデルはビットストリームモデルとみなすことができる。その相違点は、モデルが実際のメディアを(部分的にまたは完全に)復号化せずに提供されたパラメータのみを利用する、または少なくとも部分的に復号化されたメディアが利用されるかにある。
【0061】
パラメータは、リアルタイムに抽出され及び収集されるのが好ましく、品質スコアは、開示されるモデルを使用して計算される。例えば、スコアは、MOSの推定値である。このモデルは、回線交換(CS)移動ネットワークにおいて有利に使用されるが、パケット交換(PS)ネットワークまたはそれら2つの組み合わせにおいても使用可能である。
【0062】
図4(及び図1、図2)を参照して、本発明に従う方法の上述の実施形態を可能にする受信機装置を説明する。
【0063】
ビデオテレフォニーシステムにおいてビデオテレフォニーメディアを含むマルチメディア信号の品質評価のための装置1は、送信ユニットからマルチメディア信号を受信するユニット10と、そのマルチメディア信号から複数のパラメータを抽出するユニット20とを含んでいる。抽出ユニットは、送信条件を示すパラメータ及び特定の符号化関連パラメータの双方を含むパラメータを抽出するように構成されている。更に、装置1は、抽出されたパラメータの一部または全ての表現に基づいてビデオテレフォニーメディアに対する客観的品質基準を判定する品質判定ユニット30を含んでいる。
【0064】
抽出ユニット20は、ビデオテレフォニーメディアの少なくとも部分的に復号化されたセグメントからパラメータを抽出するように更に構成されている、あるいはビデオテレフォニーメディアの完全に復号化されたセグメントからパラメータを抽出するように構成されている。
【0065】
更に装置は、マルチメディア信号のオーディオ/ビデオコンテンツの処理をサポートするユニット40を含んでもよい。
【0066】
要約すると、本発明は、ビデオテレフォニーストリームのメディアが完全に復号化されて、その品質を客観的(または主観的)に推定することを必要としないパラメトリックモデルを開示する。従って、アルゴリズムは計算の効率が良く、また、ハードウェアパフォーマンスに対する要求が少ないリアルタイムの使用に対して有利に実現することができる。多くの場合、これは、ビデオ画像解析に基づくアルゴリズムにとって困難なタスクである。
【0067】
このモデルはネットワーク及び符号化からの多くの重要な品質パラメータを使用できるので、品質低下の推定される原因は、高い精度で判定される。
【0068】
画像解析に基づく多くの周知のアルゴリズムは、比較する参照ビデオを必要とする。本発明は比較を行なわないため、参照とテストシーケンスとの間の厳密なフレーム同期が必要とされるという問題に直面しない。
【0069】
本発明は、品質スコアがビデオテレフォニーサービスに対するオーディオ品質、ビデオ品質及び/または総合品質に対して計算されることを開示する。これにより、ビデオ画像解析のみを使用するモデルから本発明を分離する。
【0070】
本発明によって教示されるようなパラメトリックモデルは、適切に訓練された場合、ビデオテレフォニーの全ての一般的なビデオコンテンツに対して平均スコアを与えるオプションを有する。本発明のパラメトリックモデルと異なり、ビデオ画像解析モデルは、特定のビデオコンテンツに対してスコアを常に与える。テスト状況において、移動ビデオテレフォニーユーザがその時点で受信するコンテンツの品質を体験するので、全てのコンテンツの平均は所望のものである場合が多いが、それが何のコンテンツかを正確に知る方法がない。この平均スコアは、ビデオテレフォニーのユーザの平均的な満足を与えることになる。
【0071】
添付の請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱せずに、種々の変形及び変更が本発明に対して行なわれてもよいことが当業者には理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオテレフォニーシステムで、ビデオテレフォニーメディアを備えるマルチメディア信号に対する品質を評価する方法であって、
前記マルチメディア信号を受信するステップ(S10)と、
前記マルチメディア信号の複数のパラメータを抽出するステップ(S20)と、
前記抽出された複数のパラメータの内の少なくとも2つのパラメータの表現に基づいて、前記ビデオテレフォニーメディアの客観的な品質基準を判定するステップ(S30)と
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記抽出された複数のパラメータは、送信パラメータ及び符号化パラメータの両方を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マルチメディア信号の少なくとも部分的に復号されたセグメントから前記パラメータのサブセットを抽出するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マルチメディア信号の完全に復号されたセグメントから、前記パラメータのサブセットを抽出するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記送信パラメータは、複数の無線ネットワークパラメータ及び複数の転送ネットワークパラメータの両方を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
無線BLERあるいは無線ベアラの種類のグループから、前記複数の無線ネットワークパラメータを選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
パケット損失、データスループット、パケットジッタデータ、ジッタバッファストラテジー、IPパケットサイズ、RTP/RTCPシグナリングのグループから、前記複数の転送ネットワークパラメータを選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の符号化パラメータは、コーデック情報を備える
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
オーディオコーデック、ビデオコーデック、ビデオコーデックプロファイル、ビデオコーデックレベルのグループから、前記コーデック情報を選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の符号化パラメータは、複数のオーディオ符号化依存パラメータを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項11】
オーディオコーデックモード、DTXの使用/未使用のグループから、前記複数のオーディオ依存パラメータを選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の符号化パラメータは、複数のビデオ符号化依存パラメータを備える
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項13】
ピクチャ量子化器、実際のビデオフレームレート、ビデオセグメント数、フレーム内ピクチャ/フレーム間ピクチャ、符号化ツールのグループから、ビデオテレフォニーセッションの部分的なビット解析を必要とする複数のビデオ符号化依存パラメータを選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ピクチャ毎のフレーム内マクロブロック数、フレーム内リフレッシュストラテジー、差分量子化器及びピクチャ毎の平均/最小/最大量子化器、セグメント毎のマクロブロック数、平均、最大及び最小絶対動きベクトルのグループから、ビデオテレフォニーセッションの完全なビット解析を必要とする複数のビデオ符号化依存パラメータを選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記複数のパラメータは、更に、複数のコーデック非依存パラメータを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
オーディオ及びビデオに対するCRC誤りレート、オーディオ及びビデオに対するCRC誤りの数、合計ビットレート、ビデオビットレート、オーディオビットレート、ビデオフレーム毎のビット数、オーディオ−ビデオ同期時間差、ターゲットビデオフレームレート、ビデオの種類のグループから、前記複数のコーデック非依存パラメータを選択するステップを更に備える
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記判定するステップは、無線BLER、パケット損失、合計ビットレート、オーディオ−ビデオ同期時間差、ターゲットビデオフレームレート、オーディオコーデック、ビデオコーデック、オーディオコーデックモード、及びビデオテレフォニーセッション用のピクチャ量子化器を備える前記抽出された複数のパラメータの表現に基づいて、前記客観的な品質基準を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記品質基準は、ビデオ品質、オーディオ品質、及び前記ビデオテレフォニーペイロード用の合計品質のグループの少なくとも1つの指示である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記品質基準は、ビデオ品質、オーディオ品質及び合計品質のそれぞれの指示を提供する
ことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ビデオテレフォニーシステムにおけるビデオテレフォニーメディアを備えるマルチメディア信号の品質を評価するための装置であって、
前記マルチメディア信号を受信する手段(10)と、
前記マルチメディア信号の複数のパラメータを抽出する手段(20)と、
前記抽出された複数のパラメータの少なくとも2つの表現に基づいて、前記ビデオテレフォニーメディアの客観的な品質基準を判定する手段(30)と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項21】
前記抽出する手段(20)は、前記ビデオテレフォニーメディアの少なくとも部分的に復号されたセグメントから前記複数のパラメータを抽出するように構成されている
ことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記抽出する手段(20)は、前記ビデオテレフォニーメディアの完全に復号されたセグメントから前記複数のパラメータを抽出するように構成されている
ことを特徴とする請求項21に記載の装置。
【請求項23】
オーディオコンテンツ及びビデオコンテンツを含む信号の処理をサポートする手段(40)を更に備える
ことを特徴とする請求項20に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−518682(P2010−518682A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548192(P2009−548192)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/SE2007/051015
【国際公開番号】WO2008/094092
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】