説明

ビームプロファイル調整装置、レーザ加工機及びビームプロファイル調整装置の製造方法

【課題】一方ではフレキシブルなビーム成形を可能にし、他方では光伝送路を外的な影響に基づく損傷から十分に保護するビームプロファイル調整装置を提供する。
【解決手段】光伝送ケーブル2の、保護被覆7a,7bが設けられた光伝送路1内を案内されているレーザビームのビームプロファイル調整装置20であって、光伝送ケーブル2の、保護被覆により包囲されていない区分9において光伝送路1を変形させる変形装置6と、少なくとも保護被覆により包囲されていない区分9において光伝送路1を包囲するように形成されているハウジング14と、ハウジング14の互いに対向して位置する端部に設けられ、保護被覆の区分7a,7bの一端をそれぞれ固定する2つの収容部4a,4bと、を備え、収容部4a,4bは、光伝送路1を変形装置6に引き込むそれぞれ1つの開口5a,5bを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビームプロファイル調整装置、ビームプロファイル調整装置を備えるレーザ加工機及びビームプロファイル調整装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーム源から光が光伝送路の一端に入力されるとき、光伝送路の他端におけるビームプロファイルは、ビーム源よってのみならず、光伝送路の均質化特性によっても決定される。光伝送路の出射側の端部における、レーザ加工機にとって所望のニアフィールド出力分布は、(半径方向で)例えば尖った山(ビーム中央に際立った強度最大値を有する円錐頂点)としてか、又は平たんな山(柱体、すなわち略一定の強度を有するプラトー、「トップハット(top−hat)型」)として生じ得る。ビーム中央における際立った強度最大値を有するようにビームプロファイルを設定することにより、レーザ溶接プロセスにおける溶込み深さは、拡大可能である。これに対して、トップハット型のプロファイルの設定により、広幅のシーム、ひいては溶接すべき2つの被加工物間のより大きな接合幅が達成可能である。
【0003】
米国特許出願公開第20100150201号明細書は、ファイバ束のレーザ放射を光伝送ケーブルの単独のファイバに入力する構成を開示している。ファイバに入射する放射に対して相対的にファイバをより良好に配向するために、モードスクランブラが使用される。モードスクランブラは、光伝送ケーブルの湾曲あるいは曲率を変化させる装置を有している。レーザビームのエネルギ密度の均質化は、光伝送ケーブルが巻成されてループを形成することにより達成されるべきである。
【0004】
大韓民国公開特許公報第10−2010−0068694号(Kim Jom Sool)において、光伝送ケーブル内を案内されるレーザビームの均質な明るさ分布を達成するために、光伝送ケーブルの一区分を撓曲させる装置が公知となっている。この目的で光伝送ケーブルは、固定プレートに2箇所で固定され、その間に配置された運動装置は、光伝送ケーブルの湾曲あるいは曲率を調整するために、光伝送ケーブルの、両箇所間を延びる区分を変位させる。
【0005】
光伝送路を外的な影響による損傷から保護するために、光伝送路は、一般に保護チューブにより包囲されて、光伝送ケーブルを形成している。保護チューブは、光伝送ケーブルの引張り荷重、曲げ荷重及び横圧縮荷重に耐えなければならない。特に光伝送路が高出力のレーザビームの搬送のために用いられる場合、保護チューブは、光伝送路に対して、光伝送路の歪み又は変形に至らしめる力が働かないことも保証すべきである。このような保護チューブは、例えばドイツ連邦共和国実用新案第202004004817号明細書において公知となっている。この刊行物に記載された保護チューブは、高い剛性を有しているので、150mmの最小曲げ半径までしか曲げることができない。この最小曲げ半径においては、この従来技術で使用される光伝送路の直径では、有害な力が光伝送路にまだ働かない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第20100150201号明細書
【特許文献2】大韓民国公開特許公報第10−2010−0068694号
【特許文献3】ドイツ連邦共和国実用新案第202004004817号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、一方ではフレキシブルなビーム成形を可能にし、他方では光伝送路を外的な影響に基づく損傷から十分に保護するビームプロファイル調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る、光伝送ケーブルの、保護被覆が設けられた光伝送路内を案内されているレーザビームのビームプロファイル調整装置では、光伝送ケーブルの、保護被覆により包囲されていない区分において光伝送路を変形させる変形装置と、少なくとも保護被覆により包囲されていない区分において光伝送路を包囲するように形成されているハウジングと、ハウジングの互いに対向して位置する端部に設けられ、保護被覆の区分の一端をそれぞれ固定する2つの収容部と、を備え、収容部は、光伝送路を変形装置に引き込むそれぞれ1つの開口を有するようにした。
【0009】
好ましい態様において、変形装置は、収容部に対して横方向に可動な、光伝送路を通す貫通路を有する。
【0010】
好ましい態様において、変形装置は、収容部に対して相対的に、収容部内の開口により形成される引込み軸線に対してずらされた回動軸線周りに回動可能である。
【0011】
好ましい態様において、変形装置は、貫通路として偏心的な孔を有する筒体として形成されている。
【0012】
好ましい態様において、変形装置は、ハウジング内に設けられた開口を通して案内されハウジングの外部から操作可能な操作要素を有する。
【0013】
好ましい態様において、変形装置は、光伝送路を光伝送ケーブルの、保護被覆により包囲されていない区分において40mm、好ましくは25mm、特に10mmの最小の曲げ半径まで撓曲させるように形成されている。
【0014】
好ましい態様において、本発明に係るビームプロファイル調整装置は、光伝送ケーブルであって、光伝送ケーブルの光伝送路が、収容部と、収容部間に配置される変形装置とを通して案内されている光伝送ケーブルを備え、保護被覆は、変形装置外の光伝送路の一区分をそれぞれ包囲する2つの区分を有し、両区分の各々の、変形装置側の端部は、それぞれ1つの収容部内に固定されている。
【0015】
好ましい態様において、保護被覆は、撓曲時に150mmの最小曲げ半径を下回らないように形成されている。
【0016】
さらに上記課題を解決するために、本発明に係るレーザ加工機械では、上述のビームプロファイル調整装置を備えるようにした。
【0017】
さらに上記課題を解決するために、本発明に係る、上述のビームプロファイル調整装置の製造方法では、変形装置の貫通路を通して光伝送ケーブルの光伝送路を通し、ハウジングの互いに対向して位置する端部において保護被覆のそれぞれ1つの区分を光伝送路に設け、かつハウジングの互いに対向して位置する端部に形成された収容部に各区分の一端を固定する、工程を有するようにした。
【発明の効果】
【0018】
光伝送ケーブル(「LaserLichtKabel(LLK):レーザ光ケーブル」とも云う)の、保護被覆が設けられた光伝送路内を案内されているレーザビームのビームプロファイル調整装置であって、光伝送ケーブルの、保護被覆により包囲されていない区分において光伝送路を変形させる変形装置と、少なくとも保護被覆により包囲されていない区分において光伝送路を包囲するように形成されているハウジングと、ハウジングの互いに対向して位置する端部に設けられ、保護被覆の区分の一端をそれぞれ固定する2つの収容部と、を備え、収容部が、光伝送路を変形装置に引き込むそれぞれ1つの開口を有するビームプロファイル調整装置によって、一方ではフレキシブルなビーム成形を可能にし、他方では光伝送路を外的な影響に基づく損傷から十分に保護するビームプロファイル調整装置が提供される。
【0019】
ビームプロファイルの調整は、本発明に係る装置では、光伝送路の、保護被覆により包囲されていない区分に力を加えること、例えば撓曲させることによって実施される。これにより、光伝送路が保護チューブにより包囲されている区分と比較してより小さな曲げ半径が実現可能である。同時に、保護被覆による包囲されていない区分をハウジング内に配置したことにより、光伝送路がこの領域においても外的な影響から保護されていることが保証される。変形装置外において設けられた保護被覆は、ハウジングの外側で、高出力レーザ放射の搬送を妨げる力が光伝送路に作用することを防止する。本発明に係る装置により、光伝送ケーブルの保護被覆は、収容部内に固定可能である一方、光伝送路の、保護被覆により包囲されていない区分は、変形装置に引き込まれ、そこで変形される。
【0020】
好ましくは、変形装置が、収容部に対して横方向に可動な、光伝送路を通す貫通路を有する。保護被覆を固定する収容部は、引き込まれる光伝送路の長手方向で互いに間隔を置いており、両収容部間に変形装置が配置されている。収容部は、相互の相対位置が固定されている複数の構成部材からなっていてもよい。収容部は、好ましくは1つの共通の軸線に沿って配向されている。貫通路の運動は、この場合、典型的にはこの共通の軸線に対して垂直な平面内で実施される。収容部に対して相対的に貫通路を移動させることにより、変形装置の貫通路を通して案内される光伝送路の撓曲が実現可能である。これは、収容部が互いにハウジングを介して固く結合されているからである。変形装置は、収容部に対して相対的に貫通路をリニアに移動させ、こうして光伝送路を撓曲させるように形成されていてよい。光伝送路の撓曲に対して択一的に、変形装置は、ビームプロファイルを光伝送路をねじることによってか、又は光伝送路の周面に圧力を加えることによって変更するように形成されていてもよい。
【0021】
特に好ましい態様では、変形装置が、収容部に対して相対的に、収容部内の開口により形成される引込み軸線に対してずらされた、すなわち引込み軸線に対して間隔を置いた回動軸線周りに回動可能である。特に引込み通路として形成されていてよい開口は、引込み軸線を確定する。回動軸線と引込み軸線とは、典型的には互いに平行に延びている。光伝送路の変形あるいは撓曲の度合は、この場合、変形装置の回動角を介して調整可能である。調整は、典型的には無段階に実施され、一の回動角(初期位置)において、光伝送路は、撓曲なしに変形装置を通して案内されている。良好な出力均質化(トップハット型のプロファイル)は、例えば光伝送路のU字形あるいはS字形の撓曲により達成可能である。U字形の撓曲とは、光伝送路が例えば左方から到来し、下方に曲がった後、Uターンして再び、右方へと延在する撓曲と解される。
【0022】
一態様では、変形装置が、貫通路として偏心的な孔を有する筒体あるいは中空体として形成されている。貫通路あるいは孔は、回動軸線を形成する筒体の中心軸線に対して偏心的に延びている。その結果、筒体によって偏心体の単純な形状が実現可能である。筒体は、特に、貫通路への光伝送路の導通を容易にするために、貫通路に向かって先細りする2つの孔区分を有していてよい。
【0023】
簡単かつ快適な操作を可能にするために、変形装置が、ハウジング内に設けられた開口を通して案内されハウジングの外部から操作可能な操作要素を有していると有利である。操作要素は、好ましくは固く変形装置に結合されている。その結果、操作要素の運動は、直接、変形装置の運動へと変換される。操作要素の一例はピンである。ピンは、ハウジングに設けられた開口、例えば所定の角度範囲にわたって延在する間隙として形成された開口を通して案内されており、この開口に沿ってハウジングに対して相対的に回動可能である。回動は、例えば最大180°の角度範囲にわたって実施可能である。開口あるいは間隙を周囲に対してシールするために、かつ操作要素の付加的な案内を可能にするために、例えばスリーブ状のカバーをハウジングの外側に設け、操作要素に固く結合してもよい。光伝送路の変形あるいは撓曲の度合を表示するために、ハウジングの外面及び/又はカバーに目盛り、例えば角度目盛りを設けてもよいことは自明である。
【0024】
好ましい一態様では、変形装置が、光伝送路を光伝送ケーブルの、保護被覆により包囲されていない区分において40mm、好ましくは25mm、特に好ましくは10mmの最小の曲げ半径まで撓曲させるように形成されている。こうして、ビームプロファイルを明確に変化させることが可能となる。上述の曲率半径は、典型的には、光伝送路が保護被覆により包囲されている光伝送ケーブルの撓曲によっては不可能である。これは、保護被覆が光伝送路の過度に強い撓曲をまさに阻止すべきものであるからである。理想的なビームプロファイル調整のために必要な(最小)曲げ半径は、光伝送路(例えば石英ファイバ)の直径にも依存している。上述の値は、約600μmより大きな直径にとって典型的な値である。より小さな直径(例えば約100μmより大)の場合、一般に、相応に小さな(最小)曲げ半径が使用される。
【0025】
装置の好ましい一態様は、光伝送ケーブルであって、光伝送ケーブルの光伝送路が、収容部と、収容部間に配置される変形装置とを通して案内されている光伝送ケーブルを備え、保護被覆が、変形装置外の光伝送路の一区分をそれぞれ包囲する2つの区分を有し、両区分の各々の、変形装置側の端部は、それぞれ1つの収容部内に固定されている。保護被覆の区分(部分チューブ)は、光伝送路を変形装置外の領域において損傷から保護し、収容部内に固定、例えば収容部内に差し込まれている。その結果、光伝送路からの保護被覆の滑落は防止される。変形装置内では、しかし、所望のビームプロファイル調整が、保護被覆の特性とは無関係に実施可能である。場合によっては、収容部の領域に、例えばOリングの形態のシールが取り付けられていてよい。シールは、収容部内に固定された保護被覆の周面を包囲する。保護被覆のそれぞれの区分が、入れ子になった複数の部分チューブ、例えば半径方向内側に位置する部分チューブと、この部分チューブを包囲する半径方向外側に位置する部分チューブとを有していてよいことは自明である。
【0026】
レーザ放射をレーザ源からレーザ加工機のレーザ加工ヘッドに搬送するために使用される光伝送ケーブルは、一般に、200mmより小さい曲げ半径あるいは150mmより小さい曲げ半径での光伝送路の撓曲を防止する保護被覆を有している。所望の品質のビームプロファイル調整は、このような曲げ半径では一般に不可能であるので、上述の形式の、保護被覆に対して相対的な光伝送路の撓曲が必要である。
【0027】
本発明は、上述のような装置を備えるレーザ加工機にも関する。本発明に係るレーザ加工機では、光伝送ケーブルが、典型的には、レーザ放射をレーザ源からレーザ加工ヘッドに搬送するために使用される。
【0028】
本発明の別の観点は、上述のビームプロファイル調整装置の製造方法であって、変形装置の貫通路を通して光伝送ケーブルの光伝送路を通し、ハウジングの互いに対向して位置する端部において保護被覆のそれぞれ1つの区分を光伝送路に設け、かつそれぞれの収容部に各区分の一端を固定する、工程を有する、ビームプロファイル調整装置の製造方法に関する。こうして、光伝送路が少なくとも変形装置の領域で保護被覆により包囲されていない装置が提供可能である。
【0029】
本発明のその他の利点は、明細書及び図面から看取可能である。また、上述した特徴及び後述する特徴は、単独でも、又は複数の特徴の任意の組み合わせでも使用可能である。図示し説明する実施の形態は、限定列挙と解されるべきものではなく、むしろ発明を描写する例示的な性質を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】変形装置を備えるビームプロファイル調整装置を、光伝送路が撓曲なしに変形装置の貫通路に通される第1の角度位置で示す断面図である。
【図2】変形装置を備えるビームプロファイル調整装置を、光伝送路が貫通路の領域に湾曲を有する第2の角度位置で示す断面図である。
【図3】図1及び図2に示した装置の外観図である。
【図4】図1〜図3に示したビームプロファイル調整装置を備えるレーザ加工機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び図2は、それぞれ、光伝送ケーブル2の光伝送路あるいは光導波路1内を案内されているレーザビーム(図示せず)のビームプロファイル調整装置20を、本実施の形態では光伝送路1を曲げて変形させるように形成され光伝送路1のための貫通路10を備える変形装置6の2つの異なる角度位置で示している。
【0032】
ハウジング14は、変形装置6の領域及び2つの収容部4a,4bを囲繞している。収容部4a,4bを通して光伝送路1は、変形装置6の図1に示した角度位置で第1の収容部4aに導入されることにより、変形装置6に引き込み可能である。光伝送路1は、この場合、第1の収容部4aの第1の開口5aを介して変形装置6の貫通路10に引き込まれる。光伝送路1は、第2の収容部4bに設けられた第2の開口5bを貫通し、第2の収容部4bにおいてハウジング14から導出される。収容部4a,4bの開口5a,5bと、貫通路10とは、この場合、変形装置6の図1に示した角度位置で、1つの共通の引込み軸線11に沿って配置されているので、光伝送路1を問題なく開口5a,5b及び変形装置6の貫通路10に通すことが可能である。変形装置6は、本実施の形態ではダブルホッパ形の偏心的な孔を有する円筒として形成されている。ダブルホッパの最小の直径は、貫通路10を形成している。
【0033】
光伝送ケーブル2は、本実施の形態では保護被覆7a,7bを有している。保護被覆7a,7bは、光伝送路1を環状に包囲して外的な影響、特に損傷及び過大な撓曲から保護している。保護被覆は、2つの区分7a,7bを有しており、これらの区分7a,7bは、光伝送路1を変形装置6に導入した後に、光伝送路1の端部に被嵌される。区分7a,7bの、ハウジング14側の端部は、収容部4a,4b内に固定、本実施の形態ではクランプ固定される。周囲に対してシールするために、それぞれの収容部4a,4bには、Oリングの形態のシール3a,3bが設けられている。上記区分あるいは部分チューブ7a,7bは、収容部4a,4bに接して、あるいは少なくとも部分的に収容部4a,4b内で終端しているので、光伝送ケーブル2は、収容部4aと収容部4bとの間に被覆を有しない区分9を有している。光伝送ケーブル2のこの区分9に変形装置6が設けられている。ハウジング14により、光伝送路1の被覆されていない区分9も、この被覆されていない区分9から保護被覆の上述の区分7a,7bへの移行部も、外的な影響から保護されている。
【0034】
図示の実施の形態では変形装置6に固く結合されている操作要素12を用いて、変形装置6は、回動軸線13周りに回動可能である。回動軸線13は、柱状の変形装置6及びハウジング14の対称軸線をなしている。変形装置6の回動は、別の方式で、例えばねじ又はモータによって実現されてもよい。操作要素12により変形装置6は、図2に示す第2の角度位置に回動可能である。この第2の角度位置において変形装置6は、図1に示した角度位置に対して180°回動している。貫通路10は、回動軸線13に対して偏心的に配置されているので、変形装置6の回動時、回動軸線13に対して垂直な円軌道上を運動する。貫通路10は、このとき、確かに引込み軸線11に対してなお平行に延びているものの、引込み軸線11から間隔を置いている。このことは、結果として、光伝送路1の、変形装置6の内部に存在する区分9が撓曲されることを伴う。この状態は、図2に示してある。つまり、光伝送路1は、操作要素12を操作することによって、伸展位置から屈曲位置あるいは湾曲位置へと移行可能である。この場合、光伝送路1の湾曲あるいは曲率は、引込み軸線11と貫通路10との間の間隔が増すにつれて増大する。図2に示した角度位置において、この間隔は最大である。ハウジング14の寸法、特に引込み軸線11と回動軸線13との間の間隔、及び貫通路10の長さは、この場合、この角度位置において40mm、好ましくは25mm、特に10mmの(最小)曲げ半径が達成可能であるように選択されている。
【0035】
光伝送路1の撓曲により、光伝送路1の、曲げに関して内側に位置する部分、すなわち、光伝送路1のU字形に湾曲した区分9の、図2で見て上を向いた部分には、圧縮応力が形成される一方で、U字形の区分の、曲げに関して外側に位置する反対側の部分には、引張り応力が形成される。この応力差は、例えば屈折率の変化を光伝送路1内に惹起し得るので、撓曲の度合の変化(曲率半径の変化)は、ビームプロファイルの変化を引き起こす。こうして、光伝送路1内を案内されるレーザビームのビームプロファイルは、所望の用途に合わせて調整可能である。曲げが強ければ強いほど(つまり、曲げ半径が小さければ小さいほど)、ビームプロファイルをよりトップハット型のプロファイルに近付けることが可能である。
【0036】
図1及び図2に示した変形装置6により、光伝送路1は、湾曲(曲率)が2度その符号(プラス・マイナス)を変えるような形状に変形可能である。しかし、適当に形成された変形装置によって、ビームプロファイルを最適化すべく、2度より多くの変曲を生じさせる可能性も存在する。光伝送路1の撓曲に対して択一的又は付加的に、変形装置6は、光伝送路1をねじるか、又は圧力を光伝送路(非湾曲)1に加えるように形成されていてもよい。これによっても、光伝送路1の屈折率は、変形の領域において変更される。この屈折率の変更は、ビームプロファイル調整のために利用可能である。
【0037】
ここで説明した装置20が、唯一の保護被覆しか有しないか、又は2つより多くの入れ子の保護被覆を有する光伝送ケーブルとともに使用されてもよいことは自明である。この場合、収容部は、それぞれの保護被覆のために相応の数の固定装置を有していなければならない。保護被覆は、例えばドイツ連邦共和国実用新案第202004004817号明細書に記載されているように形成されていてよい。保護被覆は、機械的な安定性を形成するためだけに役立ち、ビームを案内する機能を有しない。保護被覆7a,7bにより達成可能な、光伝送路1の最小の曲げ半径は、約150mmであり、これにより、光伝送路1の、保護被覆7a,7bにより包囲されていない区分9において形成可能な曲げ半径よりも明らかに大きい。
【0038】
図3は、図1及び図2に示したビーム成形装置20の外観を示している。操作要素12は、ピンの形態で形成されている。ピンは、スリーブ15に結合されている。スリーブ15は、ハウジング14の外面に取り付けられている。その結果、変形装置6の回動は、ピン12及び/又はスリーブ15に力を加えることによって達成可能である。スリーブ15は、ハウジング14に設けられピン12を案内するスリット状の開口のためのカバーとしても役立つ(図1及び図2参照)。このスリット状の開口は、本実施の形態では180°の角度範囲にわたって延在している。再現可能なビームプロファイル調整のために、スリーブ15又はハウジング14は、(角度)目盛りを設けて、調整ホイールとして機能するようにしてもよい。
【0039】
図4は、図1〜図3に示すビームプロファイル調整装置20を備えるレーザ加工機17の一部を示している。レーザ加工機17において、レーザ放射は、レーザビーム源(図示せず)から光伝送ケーブル2により、レーザビーム18を光伝送ケーブル2外で伝搬(freie Propagation)するビームガイド19に供給される。ビームガイド19は、装置20内で所望のビームプロファイルを付与されたレーザビーム18をレーザ加工ヘッド21に供給する。装置20により、レーザビーム18の強度分布の形状は、実施すべきレーザ加工の種類に応じて調整可能である。
【0040】
全体として上述の装置20は、ビーム源とは実質的に無関係に調整可能なビームプロファイルを伴う、光伝送ケーブル2を用いたレーザ放射の高信頼性の搬送を可能にする。
【符号の説明】
【0041】
1 光伝送路、 2 光伝送ケーブル、 3a,3b シール、 4a,4b 収容部、 5a,5b 開口、 6 変形装置、 7a,7b 保護被覆、 9 被覆を有しない区分、 10 貫通路、 11 引込み軸線、 12 操作要素、 13 回動軸線、 14 ハウジング、 15 スリーブ、 17 レーザ加工機、 18 レーザビーム、 19 ビームガイド、 20 ビームプロファイル調整装置、 21 レーザ加工ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送ケーブル(2)の、保護被覆(7a,7b)が設けられた光伝送路(1)内を案内されているレーザビームのビームプロファイル調整装置(20)であって、
前記光伝送ケーブル(2)の、保護被覆により包囲されていない区分(9)において前記光伝送路(1)を変形させる変形装置(6)と、
少なくとも前記保護被覆により包囲されていない区分(9)において前記光伝送路(1)を包囲するように形成されているハウジング(14)と、
該ハウジング(14)の互いに対向して位置する端部に設けられ、前記保護被覆の区分(7a,7b)の一端をそれぞれ固定する2つの収容部(4a,4b)と、
を備え、該収容部(4a,4b)は、前記光伝送路(1)を前記変形装置(6)に引き込むそれぞれ1つの開口(5a,5b)を有する、
ことを特徴とする、ビームプロファイル調整装置。
【請求項2】
前記変形装置(6)は、前記収容部(4a,4b)に対して横方向に可動な、光伝送路(1)を通す貫通路(10)を有する、請求項1記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項3】
前記変形装置(6)は、前記収容部(4a,4b)に対して相対的に、前記収容部(4a,4b)内の前記開口(5a,5b)により形成される引込み軸線(11)に対してずらされた回動軸線(13)周りに回動可能である、請求項2記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項4】
前記変形装置(6)は、貫通路(10)として偏心的な孔を有する筒体として形成されている、請求項3記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項5】
前記変形装置(6)は、前記ハウジング(14)内に設けられた開口を通して案内され該ハウジング(14)の外部から操作可能な操作要素(12)を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項6】
前記変形装置(6)は、前記光伝送路(1)を前記光伝送ケーブル(2)の、前記保護被覆により包囲されていない区分(9)において40mm、好ましくは25mm、特に10mmの最小の曲げ半径まで撓曲させるように形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項7】
光伝送ケーブル(2)であって、該光伝送ケーブル(2)の光伝送路(1)が、前記収容部(4a,4b)と、該収容部(4a,4b)間に配置される前記変形装置(6)とを通して案内されている光伝送ケーブル(2)を備え、
前記保護被覆は、前記変形装置(6)外の前記光伝送路(1)の一区分をそれぞれ包囲する2つの区分(7a,7b)を有し、
両区分(7a,7b)の各々の、前記変形装置(6)側の端部は、それぞれ1つの前記収容部(4a,4b)内に固定されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項8】
前記保護被覆(7a,7b)は、撓曲時に150mmの最小曲げ半径を下回らないように形成されている、請求項7記載のビームプロファイル調整装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載のビームプロファイル調整装置(20)を備えるレーザ加工機。
【請求項10】
請求項7又は8記載のビームプロファイル調整装置の製造方法であって、
前記変形装置(6)の前記貫通路(10)を通して前記光伝送ケーブル(2)の前記光伝送路(1)を通し、
前記ハウジング(14)の互いに対向して位置する端部において前記保護被覆のそれぞれ1つの区分(7a,7b)を前記光伝送路(1)に設け、かつ
前記ハウジング(14)の互いに対向して位置する端部に形成された収容部(4a,4b)に各区分(7a,7b)の一端を固定する、
工程を有することを特徴とする、ビームプロファイル調整装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−101341(P2013−101341A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−244811(P2012−244811)
【出願日】平成24年11月6日(2012.11.6)
【出願人】(504035571)トルンプフ レーザー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (11)
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser GmbH + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Aichhalder Strasse 39, D−78713 Schramberg, Germany
【Fターム(参考)】