説明

ビーム整形レンズ

【課題】本発明は、半導体レーザから出射された楕円光束のアスペクト比を調節するビーム整形レンズに関し、ビーム整形レンズのアスペクト比の変動を抑制することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために本発明は、半導体レーザ8から出射された楕円光束9のアスペクト比を補正するビーム整形レンズ11において、ビーム整形レンズ11は、入射面に設けたアナモフィックレンズ13と、その周囲に設けられたコバ部15を有し、コバ部15におけるアナモフィックレンズ13の短手方向近傍に肉厚部17を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから出射された楕円光束のアスペクト比を補正するビーム整形レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のビーム整形レンズは、図6に示すように半導体レーザ1から出射される楕円光束2のアスペクト比を補正するため、ビーム整形レンズ3の入射面側と出射面側の両面に、楕円光束2に対する長手方向と短手方向で開口数が異なるアナモフィックレンズ4,5を一体に設けた構造が検討されている。
【0003】
また、最近のビーム整形レンズ3は、半導体レーザ1から出射される楕円光束2の利用効率を高めるために、入射面側の焦点距離を小さくするとともに開口数を大きくする設計が検討されている。
【0004】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−282813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ビーム整形レンズ3の焦点距離を小さくし開口数を大きくする中で、入射面側のアナモフィックレンズ4の有効径は小さくなり、これに入射される楕円光束2による発熱作用も大きくなってくる。
【0007】
そして、アナモフィックレンズ4に入射する楕円光束2の光強度分布は、図7に示すようにアナモフィックレンズ4の長手方向と短手方向ともにガウシアン分布であり、光強度の大きい部分が中心部分6に集中するため、アナモフィックレンズ4の中心部分6と外周部分7で温度差が生じる。
【0008】
特に、入射面側に設けられたアナモフィックレンズ4は、半導体レーザ1から楕円光束2を直接入射されるので光強度分布の影響を大きく受けるため、中心部分6と外周部分7の温度差が大きくなり易く、この温度差により長手方向の屈折率と短手方向の屈折率に差が生じて、結果としてビーム整形レンズ3で補正するアスペクト比が変動してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、ビーム整形レンズで補正するアスペクト比の変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するために本発明は、半導体レーザから出射された楕円光束のアスペクト比を補正するビーム整形レンズにおいて、ビーム整形レンズは、楕円光束の入射面側に設けたアナモフィックレンズと、このアナモフィックレンズの周囲に設けられたコバ部を有し、コバ部におけるアナモフィックレンズの短手方向近傍に肉厚部を設けた構造としたのである。
【発明の効果】
【0011】
この構造により本発明は、ビーム整形レンズで補正するアスペクト比の変動を抑制することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態におけるビーム整形レンズを用いた光源装置の構成を示す(a)上面模式図、(b)側面模式図
【図2】同ビーム整形レンズの入射面の正面図
【図3】同ビーム整形レンズのA−A断面図
【図4】同ビーム整形レンズの成形装置を示す図
【図5】同成形装置を構成する成形金型の加工方法を示す図
【図6】従来のビーム整形レンズを用いた光源装置の構成を示す(a)上面模式図、(b)側面模式図
【図7】同ビーム整形レンズを構成するアナモフィックレンズの光強度分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態におけるビーム整形レンズについて図を用いて説明する。
【0014】
図1は、レーザービームプロジェクタなどに用いられる光源装置を示したものであり、光源となる半導体レーザ8と、この半導体レーザ8から出射された楕円光束9のビーム形状を円光束10に補正するビーム整形レンズ11とを、基台12の主面上で一体化した構造となっている。
【0015】
なお、半導体レーザ8から出射される楕円光束9は、半導体レーザ8の接合面(特に図示せず)の平行方向と垂直方向とで広がり角が異なることに起因するもので、ビーム整形レンズ11はこの楕円光束9を円光束10に補正するため、半導体レーザ8の接合面と水平な方向と垂直な方向とで開口数を異ならせるように、図2に示すように、ビーム整形レンズ11の入射面側には半導体レーザ8の接合面と垂直な方向を長手方向とするアナモフィックレンズ13を配置し、出射面側には半導体レーザ8の接合面と水平な方向を長手方向とする破線で示すアナモフィックレンズ14を配置することで、単玉レンズでのビーム整形を実現している。
【0016】
なお、ビーム整形レンズ11の入射面側において、楕円光束9のアスペクト比を補正するアナモフィックレンズ13を光学機能部とし、その周囲の領域をコバ部15とする。
【0017】
そして、このビーム整形レンズ11においては、光源側に配置されるアナモフィックレンズ13の短手方向の近傍にコバ部15の平坦領域16を部分的に盛り上げた肉厚部17を設けたことで、ビーム整形レンズ11のアスペクト比の変動を抑制している。
【0018】
すなわち、入射面側のアナモフィックレンズ13は、図7で説明したように、アナモフィックレンズ13の長手方向と短手方向での温度分布の差が、アナモフィックレンズ13のアスペクト比に影響を与えることを解消するためのもので、図2、図3に示すように、アナモフィックレンズ13における短手方向近傍のコバ部15の厚みを部分的に大きくした肉厚部17を設けている。なお、図3に示した破線は、入射面側のコバ部15における平坦領域16の表面位置を示したもので、肉厚部17の高さ18を測る際の基準面としている。
【0019】
そして、この肉厚部17が、アナモフィックレンズ13の短手方向に対するヒートシンクの役割を果たすようになり、短手方向における温度上昇を積極的に抑制でき、また、アナモフィックレンズ13の短手方向近傍におけるコバ部15の厚みを、肉厚部17により部分的に厚みが増すことで、その部分における強度、つまり、アナモフィックレンズ13の短手方向の熱膨張における形状変化に対する拘束力が増すので、短手方向の温度分布を長手方向の温度分布に整合させることができ、結果としてビーム整形レンズ11で補正するアスペクト比の変動を抑制できる。
【0020】
なお、肉厚部17は、アナモフィックレンズ13の短手方向においてアナモフィックレンズ13を挟んで対称配置することで、よりアスペクト比の変動を抑制できる。
【0021】
また、このようなビーム整形レンズ11を効率よく生産する場合、図4に示すように、成形金型19,20とこれらの摺動をガイドする胴型21とで形成されるキャビティ内に光学硝材22を配置し、成形可能温度まで加熱して加圧成形する方法が用いられる。
【0022】
なお、成形金型19,20における成形面は、タングステンカーバイトなどの超鋼母材の表面を研削加工で成形している。
【0023】
そして、上述したように、ビーム整形レンズ11のアナモフィックレンズ13の短手近傍側に肉厚部17を設けた構造としたことで、図5に示すように、アナモフィックレンズ13を整形する側の成形金型20において肉厚部17を転写する成形面23が、アナモフィックレンズ13を転写する成形面24を研削する際の、研削ツール25の逃がしとなり、成形金型20の加工性を高めることもできる。
【0024】
なお、ビーム整形レンズ11の入射面側のアナモフィックレンズ13は、上述したごとく形状が小さく、かつ、開口数が大きいため、その外周端部分がコバ部15の平坦領域16に対して急傾斜となり金型加工が難しくなることから、肉厚部17を設けることによる金型加工性の向上は有効となる。
【0025】
また、この一実施の形態においては、ビーム整形レンズ11を直に基台12に実装した構成を挙げて説明したが、特に図示はしていないが、ビーム整形レンズ11を鏡筒(図示せず)の内部に一体化し、このビーム整形レンズ11が一体化された鏡筒(図示せず)を基台12に実装するような構成であっても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ビーム整形レンズのアスペクト比の変動を抑制することが出来るという効果を有し、特に省電力化を考慮して半導体レーザから出射されるビームの利用効率を高めようとする光源ユニット用途において有効となる。
【符号の説明】
【0027】
8 半導体レーザ
9 楕円光束
11 ビーム整形レンズ
13 アナモフィックレンズ
15 コバ部
17 肉厚部
19,20 成形金型
22 光学硝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザから出射された楕円光束のアスペクト比を補正するビーム整形レンズであって、前記ビーム整形レンズは、前記楕円光束の入射面側に設けたアナモフィックレンズと、このアナモフィックレンズの周囲に設けられたコバ部を有し、前記コバ部における前記アナモフィックレンズの短手方向近傍に肉厚部を設けたことを特徴とするビーム整形レンズ。
【請求項2】
肉厚部は、アナモフィックレンズの両側に対称配置したことを特徴とする請求項1に記載のビーム整形レンズ。
【請求項3】
成形可能温度に加熱した光学硝材を成形金型で加圧成形したことを特徴とする請求項1に記載のビーム整形レンズ。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−54803(P2013−54803A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192660(P2011−192660)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】