説明

ピストンタイプアキュムレーター

【課題】
【解決手段】本発明は、ハウジングボア5内の軸方向に移動可能なピストン8と、ピストン8とハウジングボア5との間に介設され前記ハウジングボア5の内側に固定されているシール4と、ハウジングボア5を閉塞しているカバー6と、を具備する、ピストンタイプアキュムレーターに関する。ハウジングボア5は、カバー6によって閉塞されている端部において、直径の拡大された段付ボアとして形成されており、段付ボア内にシール4が固定されている、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンタイプアキュムレーター、特に、請求項1の導入部に従う車両用スリップコントロール液圧ブレーキシステムのための低圧アキュムレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第10236966A1号明細書は、スリップコントロール車両ブレーキシステム用液圧ユニットの一組のピストンタイプアキュムレーターを開示している。各ピストンは、液圧ユニットのハウジングボア内に固定されているシール内に、軸方向に移動可能に配設されている。このハウジングボアは、カバーによって閉塞されている。
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10236966A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールを固定するためにハウジングボアにおいて環状グルーブが形成されており、シールの配置の観点から組立には多大な労力が必要となる。ハウジングボアにピストンを挿入する前に、環状グルーブへのシールの正確な嵌合が確保されるように準備しなければならない。さもなければ、ピストンの嵌合によってシールが損傷され得、所定の状況下ではハウジングボアからシールがねじれ出てしまうが、これらはピストンタイプアキュムレーターのリークテストによってしか検知することができない。
【0005】
上述した観点に鑑み、本発明の目的は、上述した欠点を有さない、簡単かつ確実に作動するピストンタイプアキュムレーターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従い、この目的は、請求項1の特徴部を用いることにより、上述したタイプのピストンタイプアキュムレーターにおいて達成される。
【0007】
本発明は新しいピストンタイプアキュムレーターに関し、このピストンタイプアキュムレーターでは、ハウジングボアがめくら穴として形成されており、このハウジングボアの、ボアの底部から離間した開口端部は、ハウジングボアへのシールの最も簡単でありながら確実な収容を確保するために、外向きに拡大段付ボアとして延びている。好ましくは、2つの異なった組立方法で、即ち、ハウジングボアにピストンを挿入する前に、あるいは、好ましくはハウジングボアにピストンを挿入した後に、段付ボアへのシールの配設を実施することが可能であり、ハウジングボアにピストンを挿入した後に段付ボアにシールを配設するために、ピストン本体の端部に面取りが形成されている。
【0008】
段付ボアによって、シールが損傷されるのを防止することが可能となり、シールが既に損傷されていることを即座に検知することが可能となる。段付ボアのシールは充分に外側に配置されているため、ピストンはその作動ストローク中にハウジングボアにおいてアキュムレータフルードによって湿潤され得、ピストン本体のほぼ全長にわたって潤滑され得るという、別の効果が理解され得る。従って、驚くほど簡単な形態で、乾式の作動及び許容できないピストンの摩擦が首尾よく回避される。さらに、ハウジングボアからシールまで広い表面が湿潤されているため、ハウジングボア及びピストンの摺動面から大気中の酸素が分離されており、ハウジング壁及びピストンの外周面(摺動面)の酸化、腐食が回避され得る。
【0009】
本発明のさらなる特徴、効果、可能な応用が従属請求項から理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のさらなる特徴、効果、可能な応用が、2つの実施形態によって詳細に説明される。
【0011】
図1及び図2は、いずれも、スリップコントロール車両ブレーキシステム用低圧アキュムレーターとして機能するピストンタイプアキュムレーターを例示的に示し、このピストンタイプアキュムレーターは、ハウジングボア5内の軸方向に移動可能なピストン8と、このピストン8とハウジングボア5との間に配置され、ハウジングボア5の内側に固定されているシール4と、を有する。ハウジングボア5は、カバー6によってガス密に閉塞されている。
【0012】
本発明では、ハウジングボア5は、カバー6に閉塞されている端部において、直径が拡大された段付ボアとして形成されており、この段付ボアにおいて、シール4が特に簡単かつ確実に作動するように固定されている。
【0013】
本発明のこのような形態の両ピストンタイプアキュムレーターによって達成される効果を考察するには、明細書の前の頁を参照されたい。
【0014】
図1と図2の両実施形態において、段付ボアは、少なくとも1つの第1のボア段差1と少なくとも1つの第2のボア段差2とにさらに分割される。ピストン8を適切にガイドするために、また、第1のボア段差1でシール4を補助的に支持するために、第1のボア段差1の領域での段付ボアの直径はハウジングボア5の内径に対応している。
【0015】
第2のボア段差2の壁は、段付ボア内でシール4を軸方向に導入し、径方向に支持するために用いられ、このために、段付ボアは、第1のボア段差1と第2のボア段差2との間で拡大された内径を有し、この内径はシール4の外径に対応している。第1のボア段差1に対する第2のボア段差2の垂直方向への間隔は、シール4を挿入するのに必要な高さに対応している。
【0016】
さらに、図1及び図2の段付ボアは、ハウジングボア5の「大気が作用する」外端部の手前に第3のボア段差3を有し、このボア段差3は、ハウジングボア5を形成しているハウジング素材の塑性変形によって形成され、段付ボアにおいてカバー6を固定する。
【0017】
さらに、図1及び図2に示されるように、可能な限り簡単かつ確実に作動するようにシール4を第1のボア段差1においてその軸方向位置に固定するために、第2のボア段差2と第3のボア段差3との間に保持部7が形成されている。このために、保持部7は第2のボア段差2に直接支持され、周辺のピストン面(ピストン本体)の方向へと少なくとも部分的にシール4を覆っている。保持部7の外径は常に段付ボアの外径に対応しており、また、保持部7の内径は常にハウジングボア5にガイドされるピストン8の外径に対応している。
【0018】
図1の第1実施形態では、保持部7は環状ワッシャーとして形成されており、この環状ワッシャーは、ハウジングボア5を閉塞しているカバー6のエッジ9によって、第2のボア段差2及びシール4へと軸方向に押圧されている。
【0019】
段付ボア中へと分離して配置されている環状ワッシャーとして形成されている保持部7に代わって、図2は、ハウジングボア5を閉塞しているカバー6のエッジ9によって直接形成されている保持部7を示している。このために、ほぼボウル形状のカバー6の薄肉エッジ9が、環状ワッシャーの外形をなすように、直角に即ち水平方向外向きへと屈曲されている。第2のボア段差2にカバー6を取り付けて保持部7を固定するために、屈曲されたエッジ9の外側の面は、塑性変形された、油圧ユニットのハウジング素材によって覆われている。
【0020】
図1と図2との両図において、ピストン8と同様にカバー6も、好ましくは深絞りされたボウルとして形成されており、図2の実施形態では、エッジ9の領域におけるボウルの内径は、シール4の確実な固定のために、ピストン8の外径に対して最小のクリアランスを有する。
【0021】
図2に従い、カバー6のボウル外形は、最小のクリアランスからボウルの底部の方向へと続き、部分13を有し、この部分13の内径は、ボウル中へとピストン8が充分な余裕をもって導入され得るように漏斗のように増大されている。このため、カバー6において充分な径方向スペースが利用可能となり、ピストンタイプアキュムレーターの充填段階中、即ち、ボウルの底部の下方に配置されている、ハウジングボア5のチャンバー10へとフルードが流入される際に、ピストン8とカバー6との間で圧縮されている圧縮ばね11に抗するピストン8の上方ストロークが妨害されることなく(締め付けられることなく)確保されるため、有利である。
【0022】
従って、カバー6の壁厚は、図2において、直角に屈曲されて保持部7を形成しているエッジ9の方向へと増大されており、機械的に大きな負荷のかかる、カバーのエッジの領域で特に強固な支持構造が達成されている。このため、カバー6を取り付けるために、ひずみを制限せずに(distortion−free)ハウジング素材を塑性変形させる際に発生するエッジ9におけるかしめ力を受容することが可能となる。加えて、エッジ9の強固な支持構造は、図2において保持部7の機能を同時に奏し、カバー6からの特に大きな破裂圧を許容可能である。
【0023】
図2において、薄肉で深絞りされたピストンの底部は、ハウジングボア5の底部の方向へと小面積の支持鼻部12を有し、これら鼻部によって、ピストンタイプアキュムレーターの図示されている非充填位置において、ピストン8がハウジングボア5の底部に不適切に接着状態又は粘着状態になるのが防止される。
【0024】
支持鼻部12によって、ピストンタイプアキュムレーターの充填及び排出中に、有効ピストン面がほとんど変化されずに利用可能であるため、全ての作動状況での応答作用の改良が達成される。
【0025】
図1及び図2におけるピストンタイプアキュムレーターは、ハウジングボア5の底部に挿設されている逆止弁14によって、排出作動においてABSポンプの吸引側に接続され、このABSポンプは、ポンプ収容ボア15において逆止弁14の下流に挿設されている。ピストンタイプアキュムレーターに充填するために、図示されていない追加の液圧チャンネルが、ハウジングボア5の底部へと開口し、ABS油圧ユニットのブレーキ圧減衰弁に接続されている。
【0026】
ここで説明された統合された構造手段によって、ピストン8とカバー6との間に存在する可能性がある空気の包含によりピストンタイプアキュムレーターの作動性能が影響を受けることがなく、好ましくは、通気又はブリードが省略可能である。
【0027】
ピストンタイプアキュムレーターの作動特性、特にチャンバー10の充填体積は、アキュムレーターの充填作動中にピストン8の面取りされている端部が突入されるカバー6内の様々な圧縮ばね11及び/又は深さゲージによって、好ましい方式で任意に調節可能である。
【0028】
シール4は、図1及び図2のように、好ましくは、エラストマーによって形成されているリングとして、特にO−リングとして形成されている。要請又は必要がある場合には、別の実施形態がもちろん実施可能である。本発明の思想から逸脱することなく、図示されたタイプの形態の圧縮スプリング11、カバー6、ピストン8を変形することも可能である。
【0029】
図1及び図2では、2つのワイヤーコイル端部において圧縮ばね11をセンタリングするように、ピストンの底部とカバーの底部とは凹形状を有する。この点についての変更も、要請又は必要がある場合には本発明の思想に影響を与えることなく可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態の、ABS液圧ユニットに搭載されるピストンタイプアキュムレーターの縦断面図。
【図2】本発明の第2実施形態のピストンタイプアキュムレーターの縦断面図であり、ABS液圧ユニットのピストンタイプアキュムレーターにおけるシールの別の固定方法を示す。
【符号の説明】
【0031】
1…第1のボア段差、2…第2のボア段差、3…第3のボア段差、4…シール、5…ハウジングボア、6…カバー、7…保持部、8…ピストン、9…エッジ、10…チャンバー、11…圧縮ばね、12…支持鼻部、13…部分、14…逆止弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングボア内の軸方向に移動可能なピストンと、前記ピストンと前記ハウジングボアとの間に介設され前記ハウジングボアの内側に固定されているシールと、前記ハウジングボアを閉塞しているカバーと、を具備する、ピストンタイプアキュムレーター、特にスリップコントロール車両ブレーキシステムにおける低圧アキュムレーターにおいて、
前記ハウジングボア(5)は、前記カバー(6)によって閉塞されている端部において、直径の拡大された段付ボアとして形成されており、前記段付ボア内にシール(4)が固定されている、ことを特徴とするピストンタイプアキュムレーター。
【請求項2】
前記段付ボアの内側には、第1のボア段差(1)及び第2のボア段差(2)が設けられており、前記第1のボア段差(1)の領域での前記段付ボアの直径は、前記ハウジングボア(5)の内径に対応しており、前記第2のボア段差(2)の領域での前記段付ボアの内径は、前記シール(4)の外径に対応している、ことを特徴とする請求項1に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項3】
前記ハウジングボア(5)の外側エッジ(9)での前記段付ボアは、第3のボア段差(3)によって規定されており、この第3のボア段差(3)は、前記ハウジング素材の塑性変形によって形成され、前記段付ボアにおいてカバー(6)を固定している、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項4】
前記第1のボア段差(1)でシール(4)を固定するために、前記第2のボア段差(2)と前記第3のボア段差(3)との間に保持部(7)が設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項5】
前記保持部(7)は前記第2のボア段差(2)に直接当接しており、前記シール(4)は前記保持部(7)によって周辺のピストン面の方向に少なくとも部分的に覆われている、ことを特徴とする請求項4に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項6】
前記保持部(7)は、前記ハウジングボア(5)を閉塞しているカバー(6)によって前記第2のボア段差(2)と前記シール(4)とに押圧されている環状ワッシャーとして形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項7】
前記保持部(7)の外径は前記段付ボアの直径に対応しており、前記保持部(7)の内径は前記ハウジングボア(5)でガイドされるピストン(8)の外径に対応している、ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項8】
前記保持部(7)は、前記ハウジングボア(5)を閉塞している前記カバー(6)のエッジ(9)によって直接形成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項9】
ほぼボウル形状の前記カバー(6)の前記エッジ(9)は、環状ワッシャーの外形をなすように外向きに直角に屈曲され、塑性変形されたハウジング素材によって外側を覆われている、ことを特徴とする請求項8に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項10】
前記カバー(6)は、好ましくは深絞りされたボウルとして形成されており、前記エッジ(9)の領域での前記ボウルの内径は、前記シール(4)を固定するために、前記ピストン(8)の外径に対して最小のクリアランスを有する、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のピストンタイプアキュムレーター。
【請求項11】
前記ピストン(8)の作業ストローク領域では、前記ボウルは、前記ボウルの底部の方向への少なくとも1つの部分(13)を有し、この部分(13)の内径は、前記ピストンが充分に余裕をもって通過可能なように、前記ボウルの底部の方向へと漏斗のように拡大されている、ことを特徴とする請求項10に記載のピストンタイプアキュムレーター。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−513403(P2009−513403A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516113(P2006−516113)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050848
【国際公開番号】WO2004/113141
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(500030596)コンチネンタル・テベス・アーゲー・ウント・コンパニー・オーハーゲー (126)
【Fターム(参考)】