説明

ピッキングシステム

【構成】 ピッキングシステムに、上流側から下流側へ容器を搬送する搬入コンベヤと、搬入コンベヤから容器を分岐させる複数の分岐路と、各分岐路に設けられかつ容器のIDを読み取るIDリーダと、物品をピッキングするための棚で、分岐路毎に識別自在に、前記IDリーダで読み取った容器のIDに基づいてピッキング物品の数量を表示する表示器、とを設ける。
【効果】 同じピッキングエリアで、複数の作業者が同時にピッキングを行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業者がカートなどを押しながら、マニュアルでピッキングを行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1:実開平04-125213は、ピッキングを行う棚に表示器を設け、どの棚から何個の物品をピッキングするか指示することを開示している。このため作業者は表示器の表示に従ってピッキングすれば良く、作業が簡単になる。特許文献1のピッキングシステムでは、1つのピッキングエリアで複数の作業者が同時に作業することができない。このためピッキングシステムに必要なスペースが広くなる。
【特許文献1】実開平04-125213
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、同じピッキングエリアで、複数の作業者が同時にピッキングを行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明のピッキングシステムでは、
上流側から下流側へ容器を搬送する搬入コンベヤと、
搬入コンベヤから容器を分岐させる複数の分岐路と、
各分岐路に設けられて容器のIDを読み取るIDリーダと、
物品をピッキングするための棚に、前記分岐路毎に識別自在に、前記IDリーダで読み取った容器のIDに基づいてピッキング物品の数量を表示する表示器、とを設ける。
【0005】
このようにすると、作業者は自分が担当する分岐路に対応する表示に従ってピッキングできるので、同じピッキングエリアで、複数の作業者が同時にピッキングを行える。従って、ピッキングエリアの数を減らし、ピッキングシステムのレイアウトをコンパクトにできる。
【0006】
好ましくは、前記複数の分岐路の少なくとも1つに対して、搬入コンベヤから容器を分岐させないようにするために閉鎖手段をさらに設ける。
このようにすると、ピッキングの作業量に応じて、使用する分岐路の数を増減できる。また分岐路で容器のIDを読み取って表示器で表示するので、任意の時点で閉鎖手段をセットあるいは解除しても、表示器の表示に混乱は生じない。
【0007】
特に好ましくは、着色した部品を用いる、あるいは着色した看板を設けるなどにより、複数の分岐路にを色分けすると共に、棚毎に色分けした複数の表示器を設ける。
このようにすると、作業者が担当する分岐路に応じて、色分けされた専用の表示器があるので、ピッキングエリア内の同じ棚に対して複数の作業者が同時にピッキングを行える。
【0008】
また好ましくは、分岐路に設けたIDリーダを第1のIDリーダとすると共に、前記搬入コンベヤに第2のIDリーダを設けて、搬入コンベヤ上で容器のIDを読み取るようにし、
さらに、搬入コンベヤからいずれかの分岐路へ容器を分岐させるための分岐手段と、 搬入コンベヤ上で求めた容器のIDを基に、ピッキングする物品の所在がいずれかの分岐路に偏っていることを検出するための検出手段と、
物品の所在がいずれかの分岐路に偏っていることを検出した場合に、物品が偏って所在している側の分岐路へ容器を分岐させるように、前記分岐手段を制御するための制御手段、とを設ける。
容器のIDを読み取ると、ピッキングする物品の所在が判明するので、いずれかの分岐路側に偏って分布していることも検出できる。そこでピッキングする物品の分布が偏っている場合、物品の分布に従って分岐させる分岐路を決定すると、分岐路からピッキングする物品までの距離を短くし、作業者の移動などに要する時間を短くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1〜図4に、実施例のピッキングシステム2を示す。各図において、CV1〜CV4はコンベヤであり、このうちCV1はメインの長距離コンベヤ(搬入コンベヤ)、CV2はコンベヤCV3,CV4間に設けられた正逆転自在のコンベヤである。コンベヤCV3,CV4はピッキング用の分岐路で、それぞれ原則として1人の作業者が作業を行い、コンベヤCV1,CV2は動力コンベヤとし、コンベヤCV3,CV4は動力コンベヤでも無動力のローラコンベヤでも良い。コンベヤCV3は例えば赤色に表示され、コンベヤCV4は例えば青色に表示されている。
【0011】
4〜8はバーコードリーダで、バーコードリーダ4は、コンベヤCV1上で、容器25のバーコードを読み取り、コントローラ18に報告する。コントローラ18は容器25のバーコードに基づき、ダイバータ10を制御し、コンベヤCV3,CV4のいずれかでピッキングする容器を、コンベヤCV2へ移動させる。コンベヤCV2は、コントローラ18の指令により容器25の搬送方向を定め、コンベヤCV3またはコンベヤCV4のいずれかへ容器25を移動させる。作業者は例えばコンベヤCV3とコンベヤCV4とに例えば1人ずつ配置され、バーコードリーダ6,8で容器25のバーコードを読み取り、読み取ったバーコードはコントローラ18へ送信される。容器のIDは容器の固有データでも、ピッキングする物品のリストでも良い。バーコードリーダ4〜6はこの発明のIDリーダの例で、バーコードに代えてRFIDを用い、バーコードリーダ4〜8,26に代えてRFIDリーダを用いても良い。
【0012】
コンベヤCV3,CV4の各々に設けられた完了スイッチ20は、1つの容器25に対するピッキングが完了したことを入力するためのスイッチである。完了スイッチ20が押されると、コントローラ18は、次の容器に対するピッキング位置と物品の数量の表示に、後述の表示器16の表示を切り替える。また切換スイッチ22はコンベヤCV2の付近に設けられ、切換スイッチ22がオンすると、例えばコンベヤCV4をオフし、コンベヤCV2はコンベヤCV3へのみ容器25を搬送する。切換スイッチ22に代えて、コントローラ18が作業量を監視して、例えばコンベヤCV4へ容器を搬送しないようにしても良い。
【0013】
コントローラ18は、バーコードリーダ6,8で読み取ったバーコードに対して、ピッキングエリア12内の表示器16を点灯させる。表示器16は、作業者がピッキングする物品が棚番地(ロケーション)と、物品をピッキングする数量とを表示し、棚毎に表示器16を設ける場合、物品のロケーションの表示を省略しても良い。なおピッキングを終える毎に、表示器16の表示はコントローラ18からの指令で消灯される。
【0014】
ピッキングエリア12は例えば複数の棚14とその間の通路15とから成り、コンベヤCV3,CV4に配置された2人の作業者のための共通のエリアである。そして作業者はカート24にピッキングする容器25を載せて通路15に沿って移動し、表示器16の表示に従って棚14からピッキングを行い、ピッキングした物品のバーコードをバーコードリーダ26で読み取り、バーコードを読み取った物品を容器25へ収納する毎に、完了スイッチ28を入力する。これらの手順が実行されると、バーコードリーダ26で読み取った物品のIDがコントローラ18へ送信される。
【0015】
作業者は表示器16に表示された物品のピッキングを完了すると、コンベヤCV3またはコンベヤCV4へ戻り、完了スイッチ20によりピッキングを完了した旨をコントローラ18へ報告する。次いでピッキング済みの容器25をメインのコンベヤCV1へ押し出すと、容器25当たりの作業が完了する。また容器25のIDや物品のIDには、バーコードの他にRFIDなどを用いてもよく、その場合はバーコードリーダ4〜8,26に代えて、RFIDリーダなどを用いる。
【0016】
図2に棚14に設けた表示器16を示す。棚14は複数の間口(段)31を備えた棚ユニット30を配列したものである。図3に示すように、表示器16には例えば赤色表示器32と青色表示器33とがあり、赤色表示器32はコンベヤCV3に対応し、青色表示器33はコンベヤCV4に対応する。表示器32,33は例えばピッキングを行う位置と数量とを表示し、図3の場合、赤色表示器32は位置C3で2個のピッキングを行い、青色表示器33は位置C1で3個のピッキングを行うことを表示し、位置の表示は省略しても良い。色分した表示器32,33には、LEDやカラー液晶パネルなどを用いて表示自体を色分けするが、表示器32,33のカバーを色分けしても良い。表示器16は棚14の段毎に設けたが、例えば棚ユニット30毎に設けて、表示器の数を減らしても良い。さらに棚ユニット30毎に表示器を設ける代わりに、図1に鎖線で示す表示パネルのように、例えば向かい合った一対の棚14,14毎に、ピッキングする物品の位置と数量とを表示しても良い。表示パネル29の場合も、例えば赤色の表示と青色の表示との色分けで、コンベヤCV3の作業者に対する表示とコンベヤCV4の作業者に対する表示とを色分けする。
【0017】
図4に実施例の制御系18を示す。分岐制御部40は、バーコードリーダ4のデータにより、ダイバータ10を制御すると共に、コンベヤCV2〜CV4を制御する。また切換スイッチ22がオンしている場合、例えばコンベヤCV4は用いないものとし、コンベヤCV2へ送られた容器25は全てコンベヤCV3へ搬送する。さらに切換スイッチ22がオンしている場合、コンベヤCV4には物品が搬送されないため、青色表示器33には何も表示されない。なお後述の表示制御部42をオフし、青色表示器33を全てオフしても良い。切換スイッチ22がオンすると、1つのピッキングエリア12に対し、ピッキングする作業者は1人で、赤色表示器32のみが動作し、赤色のコンベヤCV3を用いる作業者に対する表示のみが行われる。
【0018】
表示制御部41はバーコードリーダ6のデータにより、赤色表示器32を制御する。そしてカート24に設けられた完了スイッチ28から、ピッキングの完了が報告されると、対応する赤色表示器32の表示をオフする。また赤色のコンベヤCV3に設けた完了スイッチ20から完了が報告されると、次の容器に対する表示に赤色表示器32を切り換える。表示制御部42は、青色のコンベヤCV4に搬送された容器へのピッキング指令に従って、青色表示器33を制御し、制御の内容は表示制御部41と同様である。
【0019】
43は無線あるいは有線などのLANで、44はピッキング指令ファイル、45はピッキング実績ファイルである。ピッキング指令ファイル44は、容器25のIDに対応してピッキングすべき物品の棚番地(ロケーション)と数量とを記憶し、ピッキング実績ファイル45は容器25のIDに対して、ピッキング済みの物品のIDと数量とを記憶する。ピッキング実績ファイル45のデータは、カート24に設けたバーコードリーダ26と、完了スイッチ28とに基づいて形成される。また容器毎のピッキングの実績は、コンベヤCV3,CV4に設けた完了スイッチ20からの完了報告で確定する。なお完了スイッチ20、28を設けず、バーコードリーダ6,8,28からの入力で、ピッキングが完了したものとしても良い。
【0020】
実施例の作用を示す。コンベヤCV1を搬送される容器25は、ピッキングを行うエリア12に接近すると、バーコードリーダ4でバーコードを読み取られ、ダイバータ10からコンベヤCV2を介して、コンベヤCV3またはコンベヤCV4へ搬送される。そしてバーコードリーダ6またはバーコードリーダ8で、容器25のバーコードを読み取ることにより、ピッキング指令ファイル44を参照して、赤色表示器32または青色表示器33に、ピッキングを行う位置と物品の数量とを表示する。作業者に対して赤色の表示と青色の表示が色分けして行われるので、コンベヤCV3に割り当てられた作業者は赤色表示器32のみを見れば良く、コンベヤCV4に割り当てられた作業者は青色表示器33のみを見ればよい。このため1つのピッキングエリア12に対して、複数の作業者が同時に作業でき、物理的に同じ間口の同じ場所で文字通りに同時にピッキングするような場合を除いて、同じ棚14に対して、あるいは同じ棚ユニット30に対し、同時にピッキング作業を行うことができる。従って、ピッキングシステムの所要面積を小さくできる。
【0021】
ピッキング結果はバーコードリーダ26で読み取られ、完了スイッチ28によりコントローラ18へ送信される。また完了スイッチ20からの入力で、1つの容器に対するピッキングが完了したことがコントローラ18へ送信され、作業結果はピッキング実績ファイル45に記憶される。ピッキングを完了した容器をコンベヤCV3またはコンベヤCV4上からコンベヤCV1上へ押し出すと、1つのエリア12でのピッキングが完了する。
【0022】
ピッキング作業の量が少ない場合、切換スイッチ22により、例えばコンベヤCV4側へ容器25を送らないようにして、コンベヤCV3側でのみ作業をすることができる。このため、繁忙期には1つのピッキングエリア12に対し複数の作業者が同時に作業を行い、閑散期には1つのピッキングエリア12に対して1人の作業者で作業できる。
【0023】
実施例では、赤色と青色の2色の色分けを用いたが、例えば赤、青、緑などの3色の色分けを用い、例えばコンベヤCV4の下流側に黄色に塗り分けたコンベヤなどを追加し、表示器16は赤、青、緑の3色で表示するようにしても良い。また容器25毎にピッキングを行うのではなく、コンベヤCV3に所在する複数の容器分の表示を赤色表示器32で表示してピッキングし、コンベヤCV3で容器毎に仕分けても良い。コンベヤCV4に対しても同様である。さらにコンベヤCV2を設ける代わりに、コンベヤCV3側とコンベヤCV4側とに各々ダイバータ10を設けても良い。
【0024】
カート24にバーコードリーダ26や完了スイッチ28を設ける代わりにず、表示器32,33に完了スイッチを設け、カート24には容器25をセットせずにピッキングしても良い。この場合、物品をピッキングする毎に表示器32または33の完了スイッチをオンし、ピッキングが終わるとカート24をコンベヤCV3またはコンベヤCV4へ戻し、バーコードリーダ6,8でピッキングした物品のバーコードを読みながら容器25にセットしても良い。この場合例えば、コントローラ18で読み取り結果とピッキング指令ファイル44とを照合し、不一致で有れば完了スイッチ20を点滅させるなどでその旨を表示し、表示器32,33あるいはコンベヤCV3,CV4に設けた表示器で、不足物品の数量と所在及び棚に戻すべき物品の数量と戻すべき位置等を表示する。
【0025】
表示器16を表示器32,33で色分けする代わりに、作業者が赤あるいは青などのボタンを押すことにより、コンベヤCV3に対する表示と、コンベヤCV4とに対する表示とに、単一の表示器の表示を切り換えても良い。この場合に、作業者あるいはカート24にRFIDを取り付けて、棚14に設けたRFIDリーダで読み取ると、赤や青のボタンを不要にできる。
【0026】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 同じ棚14で二人の作業者が同時に作業できる。
(2) ピッキングの指示は、赤色表示器32と青色表示器33とで、作業者毎に与えられる。
(3) スイッチ22により、閑散期にはピッキングエリア12毎の作業者を1人にでき、かつスイッチ22の切換に伴うデータ上の混乱も生じない。

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例のピッキングシステムのレイアウトを示す要部平面図
【図2】実施例での棚の要部正面図
【図3】実施例での表示器の正面図
【図4】実施例での制御系を示すブロック図
【符号の説明】
【0028】
2 ピッキングシステム
4〜8,26 バーコードリーダ
10 ダイバータ
12 ピッキングエリア
14 棚
15 通路
16 表示器
18 コントローラ
20,28 完了スイッチ
22 切換スイッチ
24 カート
25 容器
29 表示パネル
30 棚ユニット
31 間口
32 赤色表示器
33 青色表示器
40 分岐制御部
41,42 表示制御部
43 LAN
44 ピッキング指令ファイル
45 ピッキング実績ファイル
CV1〜CV4 コンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側へ容器を搬送する搬入コンベヤと、
搬入コンベヤから容器を分岐させる複数の分岐路と、
各分岐路に設けられかつ容器のIDを読み取るIDリーダと、
物品をピッキングするための棚に、前記分岐路毎に識別自在に、前記IDリーダで読み取った容器のIDに基づいてピッキング物品の数量を表示する表示器、とを設けたピッキングシステム。
【請求項2】
前記複数の分岐路の少なくとも1つに対して、搬入コンベヤから容器を分岐させないようにするために閉鎖手段をさらに設けたことを特徴とする、請求項1のピッキングシステム。
【請求項3】
前記複数の分岐路を色分けすると共に、前記棚毎に色分けした複数の表示器を設けたことを特徴とする、請求項1または2のピッキングシステム。
【請求項4】
分岐路に設けたIDリーダを第1のIDリーダとすると共に、前記搬入コンベヤに第2のIDリーダを設けて、搬入コンベヤ上で容器のIDを読み取るようにし、
さらに、搬入コンベヤからいずれかの分岐路へ容器を分岐させるための分岐手段と、 搬入コンベヤ上で求めた容器のIDを基に、ピッキングする物品の所在がいずれかの分岐路に偏っていることを検出するための検出手段と、
物品の所在がいずれかの分岐路に偏っていることを検出した場合に、物品が偏って所在している側の分岐路へ容器を分岐させるように、前記分岐手段を制御するための制御手段、とを設けたことを特徴とする、請求項1のピッキングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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