説明

ピッキング台車およびピッキングシステム

【課題】仕分け精度および作業効率を向上させることができるピッキング台車およびピッキングシステムを提供する。
【解決手段】本発明のピッキング台車1は、下面に車輪を有する台座部2と、台座部2の上方に複数設けられ、物品を仕分けして収容するための収容箱X1〜X3が当該複数のうち少なくとも1つに割り当てられ、当該収容箱が出し入れ可能に載置される収容棚部31〜33と、少なくとも仕分けされる物品と当該物品の仕分け先となる収容棚部とを表示する表示部61と、収容箱が載置された収容棚部31〜33のそれぞれに対し、収容箱が引き出されたか否かを検知するセンサ部71〜73と、センサ部71〜73の検知結果に基づいて、収容箱が引き出された収容棚部と表示部61に表示された収容棚部とが一致しているか否かを判定する判定部62と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に物流業で用いられるピッキング台車およびピッキングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピッキング台車は、ピッキングした商品をコンテナ等の収容箱に投入して移動させる台車である。ピッキング台車には、複数の収容箱が載置され、仕分け先別になっている。例えば、特開2002−362715号公報(特許文献1)に記載されたピッキング台車は、複数の収容箱を備えている。このピッキング台車では、仕分け間口部にセンサが取り付けられており、仕分け間口部に商品が投入されたか否かを検知することができる。そして、作業者が誤って別の収容箱に商品を投入するとアラーム音などで知らせられる。これにより、仕分けミスをなくすことが可能となる。
【特許文献1】特開2002−362715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記ピッキング台車において、センサは、収容箱に投入される商品を検知する。従って、上記ピッキング台車では、商品を収容箱に投入した後でないと、仕分けの正誤を確認することができない。これにより、作業者は、商品投入後にミスに気づき、誤って投入された商品を収容箱から取り出さなければならない。収容箱内には、これまでに仕分けられた商品が収容されている。従って、一度混入してしまうと、誤って投入された商品を容易に取り出すことができない虞がある。これにより、作業効率の向上の面で問題があった。また、投入したものと異なる商品を収容箱から取り出してしまう虞もあり、仕分け精度の面でも問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、仕分け精度および作業効率を向上させることができるピッキング台車およびピッキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のピッキング台車は、下面に車輪を有する台座部と、台座部の上方に複数設けられ、物品を仕分けして収容するための収容箱が当該複数のうち少なくとも1つに割り当てられ、当該収容箱が出し入れ可能に載置される収容棚部と、少なくとも仕分けされる物品と当該物品の仕分け先となる収容棚部とを表示する表示部と、収容箱が載置された収容棚部のそれぞれに対し、収容箱が引き出されたか否かを検知するセンサ部と、センサ部の検知結果に基づいて、収容箱が引き出された収容棚部と表示部に表示された収容棚部とが一致しているか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
作業者は、表示部の表示に従って物品を選択する。作業者は、表示部の表示に従って収容箱を引き出す。そして、作業者は、引き出された収容箱に物品を投入する。
【0007】
ここで、本発明では、センサ部によって、収容棚部のそれぞれで収容箱が引き出されたか否かが検知される。判定部は、収容箱が引き出された収容棚部が表示部に表示されている収容棚部と一致しているか否かを判定する。本発明によれば、物品が収容箱に投入される前段階である収容箱を引き出した際に、表示通りの仕分けができているか否かが分かる。つまり、物品投入前に仕分けミスの有無が判定される。これにより、作業者の誤投入を防ぐことができる。本発明によれば、仕分け精度の向上、および、作業効率の向上が可能となる。
【0008】
ここで、センサ部は、各収容棚部に設けられた光学センサであってもよい。各収容棚部に光学センサをそれぞれ設けることで、引き出しの有無を容易かつ確実に検知させることができる。
【0009】
各収容棚部には、表示部が表示する収容棚部に基づいて、自身の収容箱が引き出されるべきか否かを表示する引出表示部が設けられていることが好ましい。各収容棚部に引出表示部を設けることで、作業者は、どの収容棚部の収容箱を引き出せばよいかを容易に確認することができる。これにより、誤引き出しも防ぐことができる。
【0010】
また、本発明のピッキング台車を用いたピッキングシステムも構築可能である。すなわち、本発明のピッキングシステムは、上記ピッキング台車と、物品情報および仕分けに関する指示情報が記憶されたサーバと、サーバとデータの送受信を行うクライアントコンピュータと、を備え、ピッキング台車の上記表示部は、クライアントコンピュータの表示部分であることを特徴とする。これによっても、仕分け精度および作業効率の向上が可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピッキング台車によれば、仕分け精度および作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態のピッキング台車1について図1〜図3を参照して説明する。図1は、ピッキング台車1を示す斜視図である。ただし、図1は、コンテナX1が引き出された状態を表している。図2は、ピッキング台車1を示す側面図である。図3は、ピッキング台車1の処理フローを示す図である。
【0013】
図1および図2に示すように、ピッキング台車1は、台座部2と、収容棚部31〜33と、作業台4と、スキャナ5と、クライアントコンピュータ(以下、コンピュータと略称する)6と、センサ部71〜73と、引出表示部81〜83と、ハンドル部9と、を備えている。
【0014】
台座部2は、ピッキング台車1の底部にあたる部位であり、下面に車輪が設けられている。詳しくは、台座部2は、枠状部21と、車輪取付部22とを有している。枠状部21は、略四角形の枠状であり、フレームで構成されている。車輪取付部22は、枠状部21の両サイドに連設されており、枠状部21よりも僅かに上方に位置している。車輪取付部22の下面には、車輪が取り付けられている。台座部2の前方にはバッテリが載置されている。
【0015】
収容棚部31は、台座部2の枠状部21上に設けられ、枠状に組まれたフレームにより略直方体の空間を構成している。収容棚部31の下方のサイドフレーム(枠状部21)には、断面L字形の棚板31aが両サイドに設けられている。折りたたみ式コンテナ(本発明における「収容箱」に相当する)(以下コンテナと略称する)X1は、収容棚部31内に収まり、棚板31a上に載置される。コンテナX1は、棚板31a上を前後にスライド可能(出し入れ可能)である。
【0016】
収容棚部32は、収容棚部31と同様の構成であり、収容棚部31の上方に連設されている。つまり、収容棚部32は、枠状に組まれたフレームと棚板32aとからなっている。収容棚部32の下方のサイドフレーム(収容棚部31の上方のサイドフレーム)には、断面L字形の棚板32aが両サイドに設けられている。コンテナX2は、収容棚部32内に収まり、棚板32a上に載置される。コンテナX2は、棚板32a上を前後にスライド可能(出し入れ可能)である。
【0017】
収容棚部33は、収容棚部31、32と同様の構成であり、収容棚部32の上方に連設されている。つまり、収容棚部33は、枠状に組まれたフレームと棚板33aとからなっている。収容棚部33の下方のサイドフレーム(収容棚部32の上方のサイドフレーム)には、断面L字形の棚板33aが両サイドに設けられている。コンテナX3は、収容棚部33内に収まり、棚板33a上に載置される。コンテナX3は、棚板33a上を前後にスライド可能(出し入れ可能)である。収容棚部31〜33は、下方(収容棚部31)ほどコンテナが後方(手前)に位置するよう設計されている。
【0018】
コンテナX1〜X3は、それぞれ引き出しまたは押し入れ可能である。ただし、押し入れ時、コンテナが収容棚部に収まった後は、それ以上前方にスライドできないようにフロントフレームが配置されている。また、コンテナX1〜X3には、自身のIDを示すバーコードが予め付されている。
【0019】
作業台4は、収容棚部33上に設置された四角形の平板である。作業台4上には、コンピュータ6を設置する設置台41が配置されている。
【0020】
スキャナ5は、物品に付されたバーコード(物品情報)を読み取る。また、スキャナ5は、各収容棚部31、32、33に載置されたコンテナ(X1〜X3)のバーコードを読み取る。具体的には、まず収容棚部33に載置されたコンテナのIDを読み取り、次に収容棚部32に載置されたコンテナのIDを読み取り、最後に収容棚部31に載置されたコンテナのIDを読み取る。スキャナ5は、コンピュータ6に接続されており、読み取った情報を送信する。コンピュータ6は、収容棚部31にはコンテナX1が割り当てられ、収容棚部32にはコンテナX2が割り当てられ、収容棚部33にはコンテナX3が割り当てられていることを認識する。
【0021】
スキャナ5は、収容棚部33の上方フレームに固定されたスキャナ台51に収容されている。スキャナ台51の底部中心は貫通している。スキャナ5は、スキャナ台51に収容された状態でバーコードを読み取ることができる。作業者は、スキャナ5を置いた状態で両手で作業することが可能である。また、スキャナ5は、ケーブルでコンピュータ6と接続されており、スキャナ台51から取り出して使用することもできる。
【0022】
コンピュータ6は、表示部61と、判定部62とを備えている。コンピュータ6は、表示部61(ディスプレイ)が前面に配置された、いわゆるパソコン端末である。コンピュータ6は、外部に備えられたサーバZと仕分けに関するデータを送受信している。サーバZには、物品(商品)情報や、仕分けに関する指示情報(ピック指示情報)が記憶されている。サーバZの情報は、随時更新されている。
【0023】
コンピュータ6は、サーバZからピック指示情報を受けて、表示部61にピック指示情報を表示する。具体的に、表示部61は、仕分けされる商品、数量、および、仕分け先の収容棚部を表示する。また、コンピュータ6は、スキャナ5およびセンサ部71〜73からの信号に基づき、ピック実績情報をサーバに送信する。ピック実績情報とは、作業者が実行したピッキング状況を示す情報である。
【0024】
判定部62は、センサ部71〜73からの信号(検知結果)に基づいて、コンテナが引き出された収容棚部と表示部61に表示された収容棚部とが一致しているか否かを判定する。例えば、表示部61の表示が収容棚部33である際、作業者が収容棚部33のコンテナX3を引き出した場合、センサ部73が引き出しを検知し、判定部62は「一致している」と判定する。一方、例えば、表示部61の表示が収容棚部33であり、センサ部72が引き出しを検知した場合、判定部62は「一致していない」と判定する。コンピュータ6は、判定部62が一致していないと判定した場合、アラーム音を発し、作業者にミスがあったことを通知する。
【0025】
判定部62は、さらに、スキャナ5で読み取られた物品情報が表示部61に表示された物品と一致しているか否かを判定する。ここでも判定部62が「一致していない」と判定した場合、アラーム音が発せられる。コンピュータ6は、判定部62により、物品、数量、および、仕分け先が正しい(一致している)と判定された場合、表示部61に次の指示情報を表示する。
【0026】
センサ部71〜73は、それぞれコンピュータ6に接続された光学センサであり、収容棚部31〜33にそれぞれ設けられている。センサ部71は、収容棚部31の下方のサイドフレーム前方側に設置されている。センサ部71は、自身の右側にコンテナX1が存在するか否かを検知している。センサ部71は、コンテナX1が後方に引き出されてセンサ部71の右側に位置しなくなると、それを検知する。つまり、センサ部71は、収容棚部31において、コンテナX1が引き出されたか否かを検知する。検知結果は、コンピュータ6に送信される。
【0027】
センサ部72は、収容棚部32の下方のサイドフレーム前方側に設置されている。センサ部72は、センサ部71と同様の機能を有し、収容棚部32においてコンテナX2が引き出されたか否かを検知する。センサ部73は、収容棚部33の下方のサイドフレーム前方側に設置されている。センサ部73は、センサ部71と同様の機能を有し、収容棚部33においてコンテナX3が引き出されたか否かを検知する。
【0028】
引出表示部81〜83は、それぞれプレートの前面にランプ設置されて構成されている。プレート部分には、表示部61の表示に合わせて収容棚部の識別記号が表記されている。例えば、収容棚部33がAで表示される場合、引出表示部83のプレートにはAが表記されている。各ランプは、コンピュータ6に接続されており、表示部61の表示に基づき点灯する。引出表示部81は、収容棚部31の左方に設けられている。引出表示部81は、作業者が目視しやすいように上方が前方に傾いている。引出表示部81のランプは、表示(指示情報)に基づき、仕分け先が収容棚部31(コンテナX1)である場合に点灯し、仕分け先が収容棚部31でない場合には消灯する。
【0029】
同様に、引出表示部82は、収容棚部32の左方に設けられている。引出表示部82は、作業者が目視しやすいように上方が前方に傾いている。引出表示部82のランプは、表示に基づき、仕分け先が収容棚部32(コンテナX2)である場合に点灯し、仕分け先が収容棚部32でない場合には消灯する。引出表示部83は、収容棚部33の左方に設けられている。引出表示部83は、作業者が目視しやすいように上方が前方に傾いている。引出表示部83のランプは、表示に基づき、仕分け先が収容棚部33(コンテナX3)である場合に点灯し、仕分け先が収容棚部33でない場合には消灯する。見やすさの観点から、引出表示部81〜83の傾きは、下方(引出表示部81)ほど大きくなっている。収容棚部31〜33にそれぞれ引出表示部81〜83が設けられることで、作業者の誤引き出しを防止することができる。ハンドル部9は、ピッキング台車1の後方のフレームに設置されている。作業者は、ハンドル部9を握り、ピッキング台車1を移動させる。
【0030】
ここで、本実施形態における処理フローについて図3を参照して説明する。まず、コンピュータ6は、サーバZからのデータに基づき、表示部61にピック指示情報を表示する(S301)。そして、コンピュータ6は、ピック指示情報に対応した何れか1つの引出表示部81〜83のランプを点灯させる(S302)。なお、作業者は、仕分けられる商品がピックできる位置にピッキング台車1を随時移動させることができる。
【0031】
そして、作業者がコンテナを引き出す。センサ部71〜73は、それぞれ自身のコンテナが引き出されたか否かを検知する(S303)。検知結果は判定部62に送られ、判定部62は、検知結果が示す収容棚部とピック指示情報とが一致しているか否かを判定する(S304)。
【0032】
一致していない場合(S304:No)、アラーム音が発せられる(S305)。アラーム音は、誤って引き出されたコンテナを元に戻すことで止む。一致している場合(S304:Yes)、アラーム音は発せられず、作業者は仕分けする商品をピックし、スキャナ5でバーコードを読み取る(S306)。
【0033】
スキャナ5の読取情報は判定部62に送られ、判定部62は、読み取られた物品情報とピック指示情報とが一致しているか否かを判定する(S307)。一致していない場合(S307:No)、アラーム音が一定時間発せられる(S308)。誤ってピックした商品は数量にカウントされずクリアされる。
【0034】
一致している場合(S307:Yes)、数量がカウントされる(S309)。そして、判定部62は、数量がピック指示情報と一致しているか否かを判定する(S310)。一致している場合(S310:Yes)、コンピュータ6は、次の指示の有無を確認する(S311)。次の指示がある場合(S311:Yes)、表示部62には次のピック指示情報が表示される(S301)。数量が一致していない場合(S310:No)、スキャナ5による次の読取を待つ。なお、S303→S304は、S306→S307の後に為されてもよい。つまり、作業者は、引き出すより前に物品情報を読み取ってもよい。
【0035】
以上、本実施形態のピッキング台車1によれば、商品が収容箱に投入される前段階で、表示通りの仕分けができているか否かが分かる。つまり、物品投入前に仕分けミスの有無が判定される。従って、作業者の誤投入は抑制される。本発明によれば、仕分け精度の向上、および、作業効率の向上が可能となる。
【0036】
なお、上記したアラーム音は、例えば「間違っています」等の音声によるものでもよい。また、コンピュータ6は、表示部61のピック指示情報を音声で作業者に通知してもよい。また、表示部61に表示される商品は、当該商品の画像により表示してもよい。また、スキャナ5は、物品やコンテナに付された固有情報を読み取るものであればよい。
【0037】
ここで、本実施形態は、一つのピッキングシステムということができる。つまり、本実施形態におけるピッキングシステム10は、ピッキング台車1と、サーバZとを備えている。このシステムによれば、仕分け精度の向上、および、作業効率の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ピッキング台車1を示す斜視図である。
【図2】ピッキング台車1を示す側面図である。
【図3】ピッキング台車1の処理フローを示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1:ピッキング台車、 10:ピッキングシステム
2:台座部、 31、32、33:収容棚部、 4:作業台、
5:スキャナ、
6:クライアントコンピュータ、 61:表示部、 62:判定部、
71、72、73:センサ部、 81、82、83:引出表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に車輪を有する台座部と、
前記台座部の上方に複数設けられ、物品を仕分けして収容するための収容箱が当該複数のうち少なくとも1つに割り当てられ、当該収容箱が出し入れ可能に載置される収容棚部と、
少なくとも仕分けされる物品と当該物品の仕分け先となる前記収容棚部とを表示する表示部と、
前記収容箱が載置された前記収容棚部のそれぞれに対し、前記収容箱が引き出されたか否かを検知するセンサ部と、
前記センサ部の検知結果に基づいて、前記収容箱が引き出された前記収容棚部と前記表示部に表示された前記収容棚部とが一致しているか否かを判定する判定部と、
を備えることを特徴とするピッキング台車。
【請求項2】
前記センサ部は、各前記収容棚部に設けられた光学センサである請求項1に記載のピッキング台車。
【請求項3】
各前記収容棚部には、前記表示部が表示する前記収容棚部に基づいて、自身の前記収容箱が引き出されるべきか否かを表示する引出指示部が設けられている請求項1または2に記載のピッキング台車。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のピッキング台車と、
物品情報および仕分けに関する指示情報が記憶されたサーバと、
前記サーバとデータの送受信を行うクライアントコンピュータと、
を備え、
前記ピッキング台車の前記表示部は、前記クライアントコンピュータの表示部分であることを特徴とするピッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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