説明

ピックル液注入方法及びその装置

【課題】ピックル液注入装置の小型化を図るとともに、原料肉塊に注入されたピックル液の均一分布化を図る。
【解決手段】原木載置台3と、該原木載置台3上の原料肉塊Mに注入針5を刺してピックル液を注入する上下動可能な注入ヘッド7と、を備えたピックル液注入装置において、前記注入ヘッド7を水平方向に移動させる注入位置変更手段と、前記注入ヘッド7の上下速度を原料肉塊Mの硬さに応じて調整する注入針送り速度調整手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、豚肉、牛肉、家禽等の食肉塊に、ピックル液や調味料等の液状物質を注入するピックル液注入方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハム、ソーセージ、ベーコン等の製品では、製品全体にわたり、均一な味であることが求められている。そこで、従来、ピックル液注入インジェクタを用いて、前記製品の原料である、豚肉、牛肉、家禽等の食肉塊に、所定量のピックル液や調味料を注入している(例えば、特許文献1、参照)。このインジェクタでは、送りコンベヤの上方に、多数の注入針を有する注入ヘッドが、原料肉塊の流れ方向に間隔をおいて複数配設され、前記送りンベヤで搬送される前記原料肉塊が前記注入ヘッドの真下に到達したときに、前記コンベヤを一時停止させると共に、前記注入ヘッドを降下させて前記注入針を前記原料肉塊に刺し込み前記ピックル液を注入している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−209693号公報
【発明の概要】
【0004】
従来例には、次の様な問題がある。
(1)注入ヘッドが、原料肉塊の流れ方向に間隔をおいて複数配設されているため、装置全体が大型になり、大きなスペースが必要となる。
【0005】
(2)前記原料肉塊には、腿側の硬い部位や肩側の柔らかい部位、脂の少ない部位等があり、必ずしも、全体にわたって均一な硬さではない。従来例では、前記各部位の硬さの違いを考慮することなく、画一的に注入ヘッドの注入針を刺し込んでピックル液を注入している。そのため、例えば、柔らかい部位では注入針が刺さりやすくて注入量が多くなり、逆に、硬い部位では注入針が刺さり難くて注入量が少なくなるので、前記原料肉塊内のピックル液は、不均一な分布状態となる。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑み、ピックル液注入装置の小型化を図ることを目的である。他の目的は、原料肉塊に注入されたピックル液の均一分布化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、原木載置台と、該原木載置台上の原料肉塊に注入針を刺してピックル液を注入する上下動可能な注入ヘッドと、を備えたピックル液注入装置において、前記注入ヘッドを水平方向に移動させる注入位置変更手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
この発明の前記注入位置変更手段は、注入ヘッドを保持するガイドレールと、前記注入ヘッドを摺動させる駆動モータと、を備えていることを特徴とする。この発明は、前記注入針の上下速度を原料肉塊の硬さに応じて調整する注入針送り速度調整手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この発明の前記注入針送り速度調整手段は、原料肉塊の硬い部位の注入針の送り速度を柔らかい部位のそれより遅くすることを特徴とする。
【0010】
この発明は、前記注入位置変更手段を備えたピックル液注入装置により、原木載置台上の原料肉塊にピックル液を注入する方法であって、前記注入位置変更手段により注入ヘッドの注入位置を移動して前記原料肉塊全体にピックル液を注入することを特徴とする。
【0011】
この発明は、前記注入位置変更手段及び前記注入針送り速度調整手段を備えたピックル液注入装置により、原木載置台上の原料肉塊にピックル液を注入する方法であって、前記注入位置変更手段により注入ヘッドの注入位置を移動して前記原料肉塊にピックル液を注入するとともに、前記注入針送り速度調整手段により原料肉塊の硬さに応じて注入針の送り速度を調整し、該原料肉塊全体にピックル液を分散させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、前記注入ヘッドを水平方向に移動させる注入位置変更手段を設けたので、原料肉塊の部位に対応させて注入ヘッドを水平移動させ、目的とする部位にピックル液を注入することができる。従って、従来例のように複数台の注入ヘッドを設ける必要がないので、小型化を図ることができる。
【0013】
この発明は、前記注入針送り速度調整手段を備えているので、原料肉塊の硬い部位の注入針の送り速度は柔らかい部位のそれより遅くすることができる。そのため、前記ピックル液は、原料肉塊の硬い部位では柔らかい部位に比べゆっくりと長い時間注入できるので、両部位の注入量の均等化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す左側面図である。
【図4】注入ヘッドの変位を示す図である。
【図5】原料肉塊移し替えコンベヤを示す図である。
【図6】前記原料肉塊移し替えコンベヤの他の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の第1実施形態を図1〜図6により説明する。
機枠1の上部には、原木載置台3が設けられている。この原木載置台3は、原料肉塊(「原木」ともいう)Mを載置する台であり、例えば、その形状は、縦550mm、横1800mmの長方形状に形成されている。前記原木載置台3の上方には、多数の注入針5を備えた注入ヘッド7が対向して配設されている。
【0016】
前記注入ヘッド7は、前記原木載置台3と対向してガイドレール8に保持されている。該ガイドレール8には、カストリブロックの付いたテンダヘッド9も配設されている。前記ガイドレール8は、上下動可能なロッド11の上端に連結され、該ロッド11の下端は連結部材を介してクランク機構13に接続されている。前記クランク機構13は注入ヘッド上下動用モータ15の駆動により、前記注入ヘッド7及びテンダヘッド9を上下動させる。
【0017】
前記モータ15は、制御盤(図示省略)に接続された操作パネル16により操作される。前記制御盤には、注入ヘッド7の上下動の速度を規制する、送り量プログラムがインプットされている。この送りプロ量グラムは、原料肉塊Mの硬さに対応して上下速度を調整し、腿側の硬い部位M1は肩側の柔らかい部位M2よりも上下速度が遅くなるように設計されている。
【0018】
例えば、注入ヘッド7の1回当りの送り量は、前記硬い部位M1は、5mm〜30mm、前記柔らかい部位M2では、30mm〜80mmに設定される。
【0019】
この様にヘッド送り量を調整すると、ピックル液が入りにくい原料肉塊の硬い部位M1の注入流量を増やして分散をよくすることができるとともに、ピックル液の入り易い原料肉塊の部位M2の注入流量を少なくして分散させることができる。
【0020】
前記注入ヘッド7及びテンダヘッド9は、注入位置変更手段である、注入ヘッド水平移動用モータ17の駆動によりガイドレール8上を摺動する。このモータ17は機台1の支持アーム19に保持されている。前記モータ17は、前記制御盤により制御されるが、この制御盤には、水平移動プログラムがインプットされており、注入ヘッド7が予め定めた停止位置に正確に止まるように前記モータ17を駆動させる。
【0021】
機枠1の下部には、液送シリンダ21が設けられ、その一端部には吸入弁23が設けられ、その他端部には供給弁25が設けられている。前記吸入弁23は、ホース24を介してピックル液タンク(図示省略)に連結され、前記供給弁25は、ホース27を介して注入ヘッド7(注入針)に連通している。
【0022】
前記液送シリンダ21のピストンは、ピックル液給送用駆動手段(図示省略)の駆動により摺動するが、この駆動手段は、前記制御盤にインプットされたピックル液放出プログラムにより制御される。このピックル液放出プログラムは、注入ヘッド7が下降して注入針5が原料肉塊Mに近接したときにピックル液の放出を開始し、又、前記注入針が原料肉塊Mから抜けたときにその放出を停止する様に設計されている。
【0023】
なお、図において、31は移し替えコンベヤ、33はピックル液の戻し配管、37は圧力計、39は点検路、をそれぞれ示す。
【0024】
次に、本実施形態の作動について説明する。
「原料肉塊Mの硬い部位M1にピックル液を注入する場合」
原木載置台3に原料肉塊Mが載置されると、制御盤の指示によりモータ17が駆動し、注入ヘッド7及びテンダヘッド9を所定の位置まで摺動させる。このとき、注入ヘッド7は、図4に示すように、原料肉塊Mの硬い部位M1上に位置している。
【0025】
前記注入ヘッド7の位置決めが終わると、前記制御盤の指示によりモータ15、前記ピックル液給送用駆動手段が駆動するとともに、注入ヘッド7が下降し、注入針5が前記部位M1に刺さり、ピックル液が硬い部位M1に注入される。
【0026】
このとき、前記制御盤の送り量プログラムにより、注入ヘッド7の下降速度は柔らかい部位M2の上下速度よりも遅くなり、注入ヘッド7の送り量が細かくなる。そのため、前記上下速度が速い場合に比べ、ピックル液の注入流量が多くなるので、分散を良くすることができる。
【0027】
前記注入ヘッド7が所定の位置まで降下し注入を終えると、前記注入ヘッド7は上昇して元の位置に戻る。このとき、ピックル液給送用駆動手段は止められるので、注入ヘッド7へのピックル液の供給は一時停止される。
【0028】
「原料肉塊の柔らかい部位M2にピックル液を注入する場合」
前記注入ヘッド7が元の位置に戻ると、前記制御盤の指示によりにモータ17が駆動し、注入ヘッド7及びテンダヘッド9を次の所定の位置7Aまで摺動させる。このとき、図4に示すように、注入ヘッド7Aは、原料肉塊Mの柔らかい部位M2上に位置している。
【0029】
前記注入ヘッド7Aの位置決めが終わると、前記制御盤の指示によりモータ15、前記ピックル液給送用駆動手段が駆動し、注入ヘッド7Aを下降させるので、注入針5が前記部位M2に刺さり、ピックル液が原料肉に注入される。
【0030】
このとき、前記制御盤の送り量プログラムにより、注入ヘッド7の下降速度を柔らかい部位M2に適する速度にするので、適量のピックル液を注入することができる。
【0031】
前記要領で注入ヘッド7を移動させて、柔らかい部位M2の全体にピックル液を注入することによりピックル液注入行程は終了する。
【0032】
「原木を入れ替えする場合」
前述のようにして原料肉塊Mへのピックル液注入行程が終了したら、図5に示すように、移し替えコンベヤ31に未処理の原料肉塊Mを載せ、該コンベヤ31の先端部31aで原木載置台3上の処理済の原料肉塊Mを押しながら矢印A3方向に前進させる。そうすると、該処理済の原料肉塊Mは原木載置台3から押し出され、次行程に送られるとともに、該コンベヤ31は原木載置台3上に移動する。
【0033】
次に、図6に示すように、前記コンベヤ31の後端31b側を少し揚げ、所定角度θだけ傾斜させた後、該コンベヤ31を矢印A31方向に回転させながら少しずつ後退させる。そうすると、前記未処理の原料肉塊Mは、原木載置台3上に載置される。
【0034】
この発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、原料肉塊の硬さの部位を2つに分ける代わりに、標準硬さを有する中間部位、該中間部位より硬い部位、該中間部位より柔らかい部位、の3つ又はそれ以上に部位を分けて、注入ヘッドの上下速度を調整してもよい。
【0035】
又、原木を入れ替えする場合には、移し替えコンベヤの代わりに、原木載置台をコンベヤにし、このコンベヤを正転及び回転させて原料肉の移し替えを行ってもよい。なお、前記実施例では、ピックル液の注入についてのみ説明したが、このピックル液には、ピックル液のみならず、調味料等の液状物質も含まれていることもあることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 機枠
3 原木載置台
5 注入針
7 注入ヘッド
8 ガイドレール
15 注入ヘッド上下動用モータ
16 操作パネル
17 注入ヘッド水平移動用モータ
21 液送シリンダ
31 移し替えコンベヤ
M 原料肉塊
M1 硬い部位
M2 柔らかい部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原木載置台と、該原木載置台上の原料肉塊に注入針を刺してピックル液を注入する上下動可能な注入ヘッドと、を備えたピックル液注入装置において、
前記注入ヘッドを水平方向に移動させる注入位置変更手段を設けたことを特徴とするピックル液注入装置。
【請求項2】
前記注入位置変更手段は、注入ヘッドを保持するガイドレールと、前記注入ヘッドを摺動させる駆動モータと、を備えていることを特徴とする請求項1記載のピックル液注入装置。
【請求項3】
前記注入針の上下速度を原料肉塊の硬さに応じて調整する注入針送り速度調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のピックル液注入装置。
【請求項4】
前記注入針送り速度調整手段は、原料肉塊の硬い部位の注入針の送り速度を柔らかい部位のそれより遅くすることを特徴とする請求項3記載のピックル液注入装置。
【請求項5】
前記請求項1記載のピックル液注入装置により原木載置台上の原料肉塊にピックル液を注入する方法であって、
前記注入位置変更手段により注入ヘッドの注入位置を移動して前記原料肉塊全体にピックル液を注入することを特徴とするピックル液注入方法。
【請求項6】
前記請求項3記載のピックル液注入装置により原木載置台上の原料肉塊にピックル液を注入する方法であって、
前記注入位置変更手段により注入ヘッドの注入位置を移動して前記原料肉塊にピックル液を注入するとともに、
前記注入針送り速度調整手段により原料肉塊の硬さに応じて注入針の送り速度を調整し、該原料肉塊全体にピックル液を分散させることを特徴とするピックル液注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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