説明

ピペラジンナトリウムおよびタゾバクタムナトリウムの注射の予備混合処方物

【課題】患者における多重微生物感染と闘うための非経口投与において使用するための予備混合されたピペラシリンの新たな液体形態を提供すること。
【解決手段】非経口投与のために適した薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、有効量のピペラシリンおよび約6.1〜約6.9の範囲に調整されたpHを有する溶液を含む。1つの実施形態において、この有効量のピペラシリンは、ピペラシリンナトリウムの形態で提供され、そしてピペラシリンの濃度は、約20〜約80mg/ml溶液の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、薬学的組成物に関し、そしてより詳細には、ピペラシリン(pipellacilin)ナトリウムおよびタゾバクタム(tazobactam)ナトリウムの液状予備混合処方物に関する。この液体予備混合処方物は、静脈投与に適切であり、そして有効な(viable)保存寿命を有する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
多重微生物(polymicrobial)感染はしばしば、βラクタマーゼ酵素を産生する病原体を含む。これらの酵素は、一般に、ペニシリンおよびセファロスポリンに対する耐性を生じる。処置がないと、これらの酵素は増幅し、そして妨害なしに増殖し、それにより、患者にとって重篤または重大な結果をまねく。
【0003】
このような感染を処置するため、ピペラシリンナトリウムおよびタゾバクタムナトリウムを8:1の比率(遊離酸として)からなる生成物が現在商標Zosyn(登録商標)で市販されている。この製品は、特許文献1(Micetichら)に開示されている。しかし、ピペラシリンは、ほとんどのペニシリン化合物と同様、室温では溶液中で本来不安定であることから、Wyeth−Ayerst Researchは、Zosyn(登録商標)を、凍結乾燥バイアル製品として開発した。ここでは、そのピペラシリンは固体状態で格納される。
【0004】
使用時には、このピペラシリン成分は、広スペクトルのβラクタム抗生物質の安全性および効力を提供する。特許文献2および特許文献3(両方ともHaeger)は、ピペラシリンの凍結乾燥形態を開示する。タゾバクタムは、βラクタマーゼを生成する細菌に対するピペラシリンの脆弱性を減少させる。基本的には、タゾバクタムは、βラクタマーゼを恒常的に不活化し、ピペラシリン成分が感受性の細菌を破壊することを可能にさせる。しかし、Zosyn(登録商標)は、凍結乾燥形態で供給され、それゆえ静脈投与の前に再構成されねばならない。
【0005】
Zosyn(登録商標)は比較的強力な抗生物質である。これは、Staphylococcus aureusに起因する院内肺炎;腹内感染(特に、虫垂炎(破裂または膿瘍を合併する)およびEscherichia coliに起因する腹膜炎);皮膚および皮膚構造感染(Staphylococcus aureusに起因する蜂巣炎(cellulitis)、皮膚の膿傷および虚血/糖尿病性足感染を含む);ならびに婦人科感染(特に、Escherichia coliに起因する分娩後子宮内膜炎または骨盤炎症疾患)のような状態において、ピペラシリン耐性で、ピペラシリン/タゾバクタム感受性の、微生物のβラクタマーゼ産生株によって生じる中程度から重篤な感染の処置のために使用される。これらの感染の深刻さは、容易に利用可能かつ信頼できる処置に対する必要性を強調する。
【0006】
凍結乾燥されたバイアル製品が要求する混合は、熟練を要する薬学的手順であり、これは、品質管理を確実にするために、無菌技術を用いて行われなければならない。この工程は、濃度および投薬量の誤計算の可能性を生じる。この工程はまた、投与のためのZosyn(登録商標)を調製するコストを増加させる。薬物を凍結乾燥および再構成するための労働集約的かつ困難な技術は、特許文献4(Trickes)において検討されている。Trickesのこの文献は、タゾバクタムの安定性の増大プロセスを教示するが、そのようなプロセスは、緩衝化されたpH溶液ではなく、結晶化によって達成されている。
【0007】
この再構成された生成物の別の欠点は、その短い冷蔵保存寿命に反映される。この再構成された生成物は、製造業者の製品表示に従って冷蔵された場合、7日間のみ安定かつ商業的に有効であるままである(非特許文献1もまた参照のこと)。その短い保存寿命およびその再構成工程はまた、使い捨ての廃棄物の増加を生じ得る。なぜなら、再構成される溶液を調製するために必要な成分(例えば、バイアル、針およびバッグ、ならびにその製品の使用しなかった部分)が適切に廃棄されねばならないからである。
【0008】
最後に、凍結乾燥された粉末バイアル製品に関する別の問題は、再構成後、それが6.5より高い酸性のpHを有することである。この酸性条件は、血液溶解の可能性、および注入の間の患者への疼痛を増加させる。
【特許文献1】米国特許第4,562,073号明細書
【特許文献2】米国特許第4,477,452号明細書
【特許文献3】米国特許第4,534,977号明細書
【特許文献4】米国特許第5,763,603号明細書
【非特許文献1】「Physicians’Desk Reference」(52版)Medical Economics Company,Inc.,1998年、1434−37頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の処方物は、再構成された製品の欠点を克服する。なぜなら、それらは、予備混合され、そして冷蔵温度でより長く安定であるからである。さらに、夾雑物、針刺し、廃棄物の増加、および投薬量計算のミスの問題についての何らかの可能性が回避される。なぜなら、医療従事者は、本発明の処方物の調製されたバッグを単に使用するだけでよいからである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明により、以下が提供される。
(項目1) 非経口投与のために適した薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、有効量のピペラシリンおよび約6.1〜約6.9の範囲に調整されたpHを有する溶液を含む、薬学的組成物。
(項目2) 前記有効量のピペラシリンは、ピペラシリンナトリウムの形態で提供され、そしてピペラシリンの濃度は、約20〜約80mg/ml溶液の範囲内である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目3) 前記ピペラシリンの濃度は、約30〜約70mg/ml溶液の範囲内である、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目4) 前記ピペラシリンの濃度は、約38〜約62mg/ml溶液の範囲内である、項目2に記載の薬学的組成物。
(項目5) 前記pHは、約6.5に調整されている、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目6) さらに緩衝剤を含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目7) 前記緩衝剤は、クエン酸塩である、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目8) 前記緩衝剤は、クエン酸ナトリウムである、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9) 前記クエン酸ナトリウム緩衝剤の濃度は、約1〜約4mg/ml溶液の範囲内である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目10) 前記クエン酸ナトリウム緩衝剤の濃度は、好ましくは、約1.5〜約3.5mg/ml溶液の範囲内である、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目11) 前記クエン酸ナトリウム緩衝剤の濃度は、好ましくは、約1.8〜約3.2mg/ml溶液の範囲内である、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目12) さらに、有効量のタゾバクタムを含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目13) 前記有効量のタゾバクタムは、タゾバクタムナトリウムの形態で提供され、そして前記タゾバクタムの濃度は、約0.0〜約9.0mg/ml溶液の範囲内である、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目14) 前記タゾバクタムの濃度は、好ましくは、約4〜約8mg/ml溶液の範囲内である、項目13に記載の薬学的組成物。
(項目15) 前記タゾバクタムの濃度は、好ましくは、約4.8〜約7.8mg/ml溶液の範囲内である、項目13に記載の薬学的組成物。
(項目16) 前記pHは、約6.5に調整されている、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目17) さらに、緩衝剤を含む、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18) 前記緩衝剤は、クエン酸塩である、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目19) 前記緩衝剤は、クエン酸ナトリウムである、項目18に記載の薬学的組成物。
(項目20) 前記クエン酸ナトリウム緩衝剤の濃度は、約1〜約4mg/ml溶液の範囲内である、項目19に記載の薬学的組成物。
(項目21) 前記クエン酸ナトリウム緩衝剤の濃度は、好ましくは、約1.5〜約3.5mg/ml溶液の範囲内である、項目20に記載の薬学的組成物。
(項目22) 前記クエン酸ナトリウム緩衝剤の濃度は、好ましくは、約1.8〜約3.2mg/ml溶液の範囲内である、項目20に記載の薬学的組成物。
(項目23) 前記薬学的組成物を生理学的に等張性にさせるために有効量のデキストロースをさらに含む、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目24) 前記デキストロースの濃度は、約5〜約30mg/ml溶液の範囲内である、項目23に記載の薬学的組成物。
(項目25) 前記デキストロースの濃度は、好ましくは、約6〜約22mg/ml溶液の範囲内である、項目24に記載の薬学的組成物。
(項目26) ピペラシリンを含む薬学的組成物を作製するプロセスであって、該薬学的組成物は、7日を超える冷蔵保存寿命を有し、該プロセスは、以下の工程:
a)有効量のピペラシリンを適切な液体に溶解して予備混合溶液を形成する工程;
b)該予備混合溶液のpHを約6.1〜約6.9の範囲へと調整する工程;
c)該予備混合溶液を適切な容器に充填する工程;および
d)約5℃±3℃での適切な雰囲気中に該予備混合溶液の容器を格納する工程、
を包含する、プロセス。
(項目27) 有効量のタゾバクタムを前記予備混合溶液中に溶解させる工程をさらに包含する、項目26に記載のプロセス。
(項目28) 前記溶液を緩衝化する工程をさらに包含する、項目26に記載のプロセス。
(項目29) 前記適切な雰囲気が−20℃以下である、項目26に記載のプロセス。
(項目30) 前記予備混合溶液に、前記薬学的組成物を生理学的に等張性にさせる量のデキストロースを添加する工程をさらに包含する、項目26に記載のプロセス。
(項目31) 前記有効量のピペラシリンは、約20〜約80mg/mlの適切な液体の範囲内の濃度でピペラシリンナトリウムによって提供される、項目26に記載のプロセス。
(項目32) 前記ピペラシリンの濃度は、約30〜約70mg/mlの適切な液体の範囲内である、項目31に記載のプロセス。
(項目33) 前記ピペラシリンの濃度は、約38〜約62mg/mlの適切な液体の範囲内である、項目31に記載のプロセス。
(項目34) 前記有効量のタゾバクタムは、約0.0〜約9.0mg/mlの適切な液体の範囲内の濃度でタゾバクタムナトリウムによって提供される、項目27に記載のプロセス。
(項目35) 前記タゾバクタムの濃度は、約4〜約8mg/mlの適切な液体の範囲内である、項目34に記載のプロセス。
(項目36) 前記タゾバクタムの濃度は、約4.8〜約7.8mg/mlの適切な液体の範囲内である、項目34に記載のプロセス。
(項目37) 前記溶液を緩衝化する工程をさらに包含する、項目27に記載のプロセス。
(項目38) 前記予備混合溶液を緩衝化する工程は、該予備混合溶液に有効量のクエン酸塩を添加する工程を包含する、項目37に記載のプロセス。
(項目39) 前記クエン酸塩は、クエン酸ナトリウムを含み、そして約1〜約4mg/ml適切な液体の範囲内である、項目38に記載のプロセス。
(項目40) 前記クエン酸塩は、クエン酸ナトリウムを含み、そして約1.5〜約3.5mg/ml適切な液体の範囲内である、項目38に記載のプロセス。
(項目41) 前記クエン酸塩は、クエン酸ナトリウムを含み、そして約1.8〜約3.2mg/ml適切な液体の範囲内である、項目38に記載のプロセス。
(項目42) 前記予備混合溶液のpHは、約6.5である、項目26に記載のプロセス。
患者における多重微生物感染と闘うための非経口投与において使用するための予備混合されたピペラシリンの新たな液体形態が開示される。本発明の予備混合物を提供するにおいて、従来技術の多くの欠点が回避され得る。そのような欠点としては、夾雑の可能性、使い捨て廃棄物の増加、投薬量計算のミス、および薬物の不安定性などが挙げられる。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、適切な液体の溶液中で、ピペラシリンナトリウムとしてのピペラシリンが適切なpH範囲内で提供される。pH、それゆえその溶液の安定性は、クエン酸塩の適切な量を用いてその処方物を緩衝化するkとによって維持され得る。
【0012】
本発明の別の実施形態において、有効量のタゾバクタム(タゾバクタムナトリウムとして)が、緩衝化されたピペラシリン溶液とともに含まれる。この実施形態のpHもまた、特定の範囲内で維持される。
【0013】
なお別の実施形態において、任意のこれまでの実施形態は、デキストロース水和物またはデキストロース無水物の添加により生理学的に等しい浸透性(iso−osmotic)(等張性(isosmotic)ともいう)とされ得る。
【0014】
この処方物の安定性は、本発明を、−20℃以下で少なくとも9ヵ月にわたって格納することを可能とする。使用前に、その凍結された処方物を凍結すると、室温で1日にわたり有効であり続ける。あるいは、その処方物は、冷蔵温度(5℃±3℃)で、14日ほどにわたり格納され得、そして予備混合製品表示に従って有効のままである。このことは、製造者の製品表示に従って冷蔵される場合に7日間のみ有効である再構成されたバイアル製品に比較して、増強された安定性である。
【0015】
本発明の他の利点および局面は、本発明の以下の詳細な説明を読めば明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(詳細な開示)
本発明は、多くの異なる形態において実施形態に受け入れられるが、この開示が本発明の原理の例示であるとみなされるべきであり、そして例示される実施形態には、本発明の広い局面が限定されることを意図しないとの理解をもって、この開示は、本発明の好ましい実施形態を詳細に記載する。
【0017】
本発明の処方物は、他の形態のピペラシリンおよびピペラシリン/タゾバクタムの投与よりも多数の利点を提供する。例えば、この予備混合溶液は、生理学的に適切なpH範囲内で調整される場合に長期の安定性および保存寿命の増強を実証する。溶液中のピペラシリンの長期の安定性は、本発明の前には知られていなかった。この処方物の長期の安定性は、クエン酸塩でその溶液を緩衝化してそのpH範囲に維持することによって達成される。
【0018】
別の例は、本発明の処方物を予備混合し、その結果、それらが融解の際に直ぐ使用するために用意ができていることである。これは、そのようなプロセスに固有の問題とともに、混合を行う要件を排除する。
【0019】
ピペラシリン遊離酸が本発明における使用のためのピペラシリンの好ましい供給源である。この遊離酸は、処方プロセスの間にナトリウム塩へと変換される。ピペラシリンナトリウムは、D(−)−α−アミノベンジルに由来する。ピペラシリンナトリウムの化学名は、(2S,5R,6R)−6−[(R)−2−(4−エチル−2,3−ジオキソ−1−ピペラジンカルボキサミド)−2−フェニルアセトアミド]−5,3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ(3.2.0)ヘプタン−2−カルボン酸ナトリウムであり、化学式は、C23265NaO7Sであり、そして分子量は539.6である。ピペラシリン遊離酸は、Wyeth−Ayerstから粉末形態で入手される。ピペラシリン遊離酸は、好ましくは、ある量の脱イオン水と混合され、そして重炭酸ナトリウムまたは他の適切な薬剤を用いて中和されて、その溶液の濃度を20〜80mg/mlの好ましい範囲内にし、より好ましくは、30〜70mg/mlの範囲に、そして最も好ましくは、38〜62mg/mlの範囲内に、またはその中の任意の組合せもしくはサブコンビネーションの範囲内にする。
【0020】
タゾバクタム遊離酸が本発明における使用のためのタゾバクタムの好ましい供給源である。この遊離酸は、その処方プロセスの間にナトリウム塩に変換される。ペニシリン核の誘導体であるタゾバクタムナトリウムは、ペニシラン酸スルホンである。その化学名は、(2S,3S,5R)−3−メチル−7−オキソ−3−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イルメチル)−4−チア−1−アザビシクロ−(3.2.0)ヘプタン−2−カルボキシレート−4,4−ジオキシドナトリウムである。タゾバクタムナトリウムについての化学式は、C10114NaO5Sであり、そしてその分子量は322.3である。タゾバクタム遊離酸は、Wyeth−Ayerstを通じて粉末形態で供給される。タゾバクタム遊離酸は、ピペラシリン溶液に添加されて、タゾバクタムナトリウムの濃度を、0.0〜9.0mg/mlの好ましい範囲内にもたらし、より好ましくは、4.0〜8.0mg/mlの範囲内にし、そして最も好ましくは4.8〜7.8mg/mlの範囲内にするか、またはこの中の任意の範囲もしくは範囲のサブコンビネーションへとする。
【0021】
溶液中のピペラシリンナトリウムおよびタゾバクタムナトリウムの総濃度は、好ましくは、20〜89mg/mlの範囲内である。より好ましくは、その総濃度は、34〜78mg/mlの範囲内であり、そして最も好ましくは、42.8〜69.8mg/mlの範囲内、または、その中の任意の範囲内もしくは範囲内のサブコンビネーションである。これらの量は、有効量のピペラシリンまたはピペラシリン/タゾバクタムが50〜250mlの共通した投薬量で送達されることを可能にする。
【0022】
次いで、得られたピペラシリンまたはピペラシリン/タゾバクタムの溶液は、6.1〜6.9の好ましいpH範囲内にもたらされ、そしてより好ましくは6.3〜6.7の範囲内にもたらされる。本発明の好ましい形態において、その溶液のpHは、約6.5である。塩酸または他の適切な酸を使用して、pHを下げる方向に調整し得、そして重炭酸ナトリウムまたは他の適切な塩基を用いてpHを上げる方向に調整し得る。
【0023】
pHを好ましい範囲内に維持するために、その溶液は、クエン酸塩または他の適切な緩衝剤を用いて緩衝化される。クエン酸塩が好ましい緩衝剤である。なぜなら、クエン酸塩は、溶液のpHを、有意な薬物分解を伴わずに維持し得るからである。リン酸塩のような緩衝剤を用いる場合、pHを凍結状態に維持することができない(「Effect Of Freezing On The pH And Composition Of Sodium And Potassium Phosphate Solutions:The reciprocal system KH2PO4−Na2HPO4−H2O」、L.Van den Berg and D.Rose,Arch.Biochem.Biophys.,81,319頁(1959)を参照のこと)。緩衝剤の添加は、安定性を増強するようにpHを制御するために所望される。その処方物を緩衝化するために使用される適切な量のクエン酸ナトリウムは、その薬物を有意に触媒も分解もせず、または注射の際に患者に疼痛を生じさせずに、最大の安定性のためにpHを制御する。[臨床試験を行って、患者の疼痛が注射の際にないことを確認した。]。
【0024】
クエン酸ナトリウム二水和物が本発明において使用される緩衝剤のために好ましい形態である。クエン酸ナトリウム二水和物の量は、好ましくは、1〜4mg/mlの範囲内であり、より好ましくは1.5〜3.5mg/mlの範囲内であり、そして最も好ましくは、1.8〜3.2mg/mlの範囲内またはその中の任意の範囲内もしくは範囲内のサブコンビネーションである。
【0025】
その溶液にデキストロースを添加してその溶液を生理学的に等張性(約300mOsmol/kg)とすることもまた所望され得る。デキストロース水和物または無水物が本発明において使用され得る。このデキストロース水和物の濃度は、5〜30mg/mlの好ましい範囲内であり、そしてより好ましくは6〜22mg/mlの範囲内またはその中の任意の組合せもしくはサブコンビネーションもしくは範囲である。
【0026】
処方および混合を完了した後、予備混合されたピペラシリンまたはピペラシリン/タゾバクタムの溶液を、適切な投薬容器に入れる。適切な溶液には、Baxterにより商標GALAXY(登録商標)として販売されるものが含まれる。次いで、その容器を、−20℃以下でフリーザーに格納する。研究によって、本発明の処方物は、凍結状態では少なくとも9ヵ月にわたり有効であるままであることが示された。
【0027】
使用する前に、凍結された容器は、簡便な様式で融解されるべきである。その処方物は、フリーザーから取り出した後室温で1日間有効であるままである。あるいは、その容器は、約5℃±3℃で14日ほど冷蔵され得る。
【0028】
注意深い研究によって、長期間の凍結保存および短期間の融解保存の間の異なる処方物の安定性が評価された。種々の処方物を評価してどの成分の組合せが長期間の安定性を有したかを確認した。評価したパラメータとしては、薬物濃度、不純物、溶液のpH、溶液の色、視覚的外観、重量オスモル濃度、クエン酸塩濃度、および粒子化の様式が挙げられる。処方物は、緩衝化されていないかまたはクエン酸ナトリウム二水和物を用いて緩衝化されるかのいずれかであった。種々の溶液pHもまた評価した。好ましい処方物は、凍結状態で9ヵ月間まで保存した。
【0029】
例示的で非限定的な本発明の処方物の実施例を以下の表1に示す。本明細書に含まれる案内原理および教示に鑑み多数の他の実施例が容易に意図され得る。例えば、その溶液のpHは、変動し得るが、所望の長期の薬物安定期間のゾーンで維持され得る;このデキストロース濃度は、わずかに変動し得るが、なおもその処方物を等張性になし得;そしてそのクエン酸塩緩衝剤濃度は変動し得るが、注射の際に疼痛を生じさせない十分な緩衝能力を維持し得る。本明細書中に与えられる実施例は、本発明を例示することを意図し、そして本発明が実施され得る様式を限定することは決してない。
【0030】
【表1】

特定の実施形態を例示しそして記載してきたが、多数の改変が、本発明の趣旨から逸脱することなく可能であり、そして保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口投与のために適した薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、有効量のピペラシリンおよび約6.1〜約6.9の範囲に調整されたpHを有する溶液を含む、薬学的組成物。

【公開番号】特開2006−316075(P2006−316075A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239375(P2006−239375)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【分割の表示】特願2000−600646(P2000−600646)の分割
【原出願日】平成12年1月21日(2000.1.21)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】