説明

ピペリジル基含有重合体又は共重合体及び該(共)重合体の製造方法

【課題】耐候性導電材料、高耐候性高分子材料、プラスチック用光安定剤あるいは電池正極材料として有用なNO含有量の高いピペリジル基含有重合体及び該重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記の一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種以上から選択される化合物をパラジウム塩触媒により重合させることにより、下記の一般式(4)又は一般式(5)で表される構成単位を含有するピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体を製造する。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジル基含有(共)重合体および該重合体の製造方法に関するものであり、本発明のピペリジル基含有(共)重合体は、それ自身が導電性又は耐候性に優れるだけでなく、耐候性を付与する光安定剤、電池電極材料として優れた性能をもつものである。
【背景技術】
【0002】
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン構造を有する誘導体は、ラジカル捕捉能を有するので、有機高分子材料の耐候性付与剤又は重合禁止剤として広く用いられており、さらにN−オキシラジカルを有する誘導体は、これらの樹脂耐候性改良剤用途のほかに特異的な電気的特性も期待できる。非特許文献1、非特許文献2には、アセチレンモノマーおよびアセチレンモノマーの重合に関して記載されている。
しかしながら、重合の際ニトロキシラジカルが消費されてしまい、NO含有量の多い重合体は得られていなかった。
また、特許文献1及び特許文献2には、水酸基をもつニトロキシラジカル重合体が電池の電極活物質として有効であることが記載されている。しかしながら、これらの重合体はニトロキシラジカル含有量は低く、さらにニトロキシ含有量の高い重合体の製造方法が求められていた。
【0003】
【非特許文献1】J.S.Millerら,Chemistry of Materials,1990,2,60
【非特許文献2】L,Dulogら,Macromol Chem,Rapid Commun. 1993,14,147
【特許文献1】特開2003−132891号公報
【特許文献2】特開2004−207249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、耐候性導電材料、高耐候性高分子材料、プラスチック用光安定剤あるいは電池正極材料として有用なNO含有量の高いピペリジル基含有重合体及び該重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するアセチレンモノマー又はプロパルギルエーテルモノマーをPd塩触媒により重合することにより合成されたピペリジル基含有重合体が上記目的を達成しえることを知見した。
【0006】
即ち本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記の一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種以上から選択される化合物をパラジウム塩触媒により重合させることを特徴とする下記の一般式(4)又は一般式(5)で表される構成単位を含有するNO含有量の高いピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法を提供するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
【化5】

【0012】
(式中、R又はRは、各々独立に酸素遊離基又はカルバモイルオキシ基を示し、Rは、水素原子又は水酸基を示し、Xは直接結合又は酸素原子を示し、Yは直接結合又はメチレン基を示し、nおよびmは各々1〜100の数を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明のピペリジル基含有重合体は、NO含有量が高いため、高耐候性導電性材料として使用できるほか、高分子型耐候剤として合成樹脂等に添加して光安定剤として有用なものであり、さらには電池正極材料としても有用なものと期待出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、上記要旨をもってなる本発明について詳述する。
【0015】
上記一般式(1)〜一般式(5)で表されるピペリジル基含有化合物において、R又はRで表されるカルバモイルオキシ基としては、−O−CO−NH−Rで表される基であり、Rは1価の有機基である。一般式(1)〜(3)において、R、RがOHである化合物とイソシアネート化合物とを反応させて末端をN置換カルバモイルオキシ基にした後、重合させることにより一般式(4)又は(5)で表されるカルバモイルオキシ基含有重合体を得ることが出来る。
【0016】
上記イソシアネート化合物としては、特に制限はされないが、例えば脂肪族(モノ)ジイソシアネート、芳香族(モノ)ジイソシアネート、脂環族(モノ)ジイソシアネート等があげられる。
【0017】
脂肪族モノイソシアネートとしては例えば、メチルスルホニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、イソシアン酸ヘキサデシル、オクタデシルイソシアネート等が挙げられる。また、脂肪族ジイソシアネートとしては例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0018】
芳香族モノイソシアネートとしては例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、イソシアン酸−3,4−ジクロロフェニル、m−ニトロフェニルイソシアネート、トルエンスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
脂環族モノイソシアネートとしては、例えばシクロヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0020】
上記一般式(4)又は一般式(5)で表される構成単位を含有するピペリジル基含有重合体の具体例としては、下記化合物No.1〜No.4が挙げられる。
【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
本発明の一般式(4)で表される重合体は、一般式(1)で表されるアセチレンモノマー化合物をパラジウム塩触媒で重合反応することによりピペリジル基含有重合体が得られる。
また、一般式(5)で表される重合体は、上記一般式(2)で表されるプロパルギルエーテルモノマー化合物又は上記一般式(3)で表されるアセチレンモノマーをパラジウム塩触媒で重合反応することによりピペリジル含有重合体が得られる。
【0026】
上記パラジウム塩触媒の種類としては、塩化パラジウム(PdCl)が好ましく使用されるが、その他のものとして臭化パラジウム(PdBr)、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム(Pd(acac))、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、パラジウム(II)アセテート(Pd(OAc))が挙げられる。
【0027】
本発明の重合体の製造は特に限定されないが、好ましくは有機溶媒中(又は無溶媒で)で、Pd塩触媒等を用いて容易に行うことができ、ブロック重合でもランダム重合でも、ブロック/ランダム重合でもよい。前記重合体は、該単量体のみを重合してホモポリマーにすることができる他、該単量体と従来周知の単量体とのコポリマー(共重合体)とすることができる。
【0028】
共重合される他の重合性の単量体としては、1,4−ジエチニルベンゼン、1,3−ジエチニルベンゼン、ジプロパルギルエーテル、ジプロパルギルアミン、プロパルギルプロピオネート、プロパルギルプロペノネート、プロパルギルアセテートなどがあげられ、単量体1種または2種以上と共重合してもよい。
【0029】
本発明の一般式(4)又は(5)で表される構成単位を含有する重合体は、溶媒中でも無溶媒中でも重合反応させて得ることができるが、好ましくは溶媒中で行われる。一般式(4)又は(5)で表される重合体の重合反応に使用される溶媒の種類としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル系溶媒等を例示することができ、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドが用いられる。溶媒の使用量は、原料のモノマー100質量部に対して50〜3000質量部の範囲が好ましい。
【0030】
さらに上記重合反応の反応温度は、触媒反応では20℃〜150℃の範囲で行われ、好ましくは40℃〜70℃である。また、反応時間は1時間〜7日間であり、更に好ましくは10時間〜150時間行われ、窒素雰囲気下あるいは密閉系で行われる。
【0031】
本発明の重合物における分子量は、平均分子量が400〜100000が好ましい。より好ましくは500以上がより好ましい。分子量が400以下では、保留性に劣るという問題がある。また、平均分子量100000超では粘度が高すぎて作業性に問題がある。なお、平均分子量は数平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで標準ポリスチレン換算した分子量を示す。
【0032】
さらに本発明の化合物の用途としては、高耐候性導電性材料、高分子型耐候剤として合成樹脂等に添加して光安定剤または電池正極材料として使用する用途も挙げられる。
【0033】
本発明の重合体を有機材料用安定剤として用いる場合、配合する前記合成樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィンおよびこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリラクトン(ポリ乳酸)、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物あるいはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のエラストマーであってもよい。
【0034】
本発明のピペリジル基含有重合体は、そのまま又は合成樹脂の加工の際に必要に応じて、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などを添加することにより、さらに安定化することができる。
【0035】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部が用いられる。
【0036】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部が用いられる。
【0037】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等の ジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部が用いられる。
【0038】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、0.001〜30質量部、より好ましくは、0.05〜10質量部が用いられる。
【0039】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、0.001〜30質量部、より好ましくは、0.05〜10質量部が用いられる。
【0040】
上記ピペリジル基含有重合体を含有させた合成樹脂組成物は、必要に応じてさらに、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類などの造核剤、帯電防止剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、ホスフェート系難燃剤、その他無機リン、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、充填剤、顔料、滑剤、凝集防止剤、発泡剤等を添加してもよい。
【0041】
本発明のピペリジル基含有重合体は電池電極材料としても用いることが期待できる。例えば、正極、負極及び電解質を構成要素とする二次電池において、正極と負極の少なくとも一方に本発明の重合体を含有させることにより高容量で充放電のサイクルに安定な二次電池が得られることが期待出来る。さらに正極、負極、セパレータ及び非水電解液を用いた二次電池において、電極又はセパレータに本発明の重合体を含有させることにより、過充電による発熱や発火を防ぐことが期待出来る。本発明のピペリジル基含有重合体を電池材料に添加する際の添加量としては、正極(必要に応じて負極、セパレータなど)に対して質量比で0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.05質量%〜10質量%である。0.01質量%より少ない場合は電池特性改良効果が少なく、20質量%を超えて添加すると、電池の充放電特性が不十分となる場合がある。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を合成例、実施例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0043】
(合成例1)アセチレンモノマーの合成
【0044】
【化10】

【0045】
上記2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン(TAA)にLiアセチリドを45℃、4.5時間の条件で付加させ、水で分解後析出する沈殿をろ過水洗し、ETAを得た。ETAをオキシ塩化リンにより脱水反応(1時間、還流)を行い、脱水中間体EEAを得た。EEAをm−CPBA(3−クロロ過安息香酸)により短時間(5℃、0.5時間)で定量的に反応が進行し、EENOが暗赤色液体として得られた。
【0046】
(合成例2)プロパルギルエーテルモノマーの合成
【0047】
【化11】

【0048】
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TMPNO)をテトラヒドロフラン中でNaHと反応させ上記のTMPNO−Naを得た。さらにプロパルギルブラマイドを反応させ、反応後酢酸エチルを加え飽和食塩水で洗浄し、PGNOを得た。さらに飽和食塩水で6回水洗し、ヘキサンより再結晶して高純度品を得た。
【0049】
(合成例3)ヒドロキシアセチレンモノマーの合成
【0050】
【化12】

【0051】
ETAをm−CPBAにより5℃、1時間の条件で酸化し、アセチレンモノマーETNOを高収率で得た。
【0052】
(実施例1)アセチレンモノマーの重合
【0053】
【化13】

【0054】
攪拌装置付き四つ口フラスコに塩化パラジウム195mg(1.1mmol)を入れて加熱減圧乾燥し、上記合成例1で得られたアセチレンモノマー(EENO)9.8g(55mmol)とN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)80mlを添加して、減圧脱気後窒素雰囲気下55℃で130時間反応させる。メタノールを3ml追加し、反応液を800mlのジエチルエーテル/ヘキサン1:2混液中に攪拌しながら徐々に滴下しポリマーを析出させる。濾過を行った後、沈殿物を減圧乾燥し、褐色ポリマー8.31g(46.8mmol)が得られた。(収率85.1%)
下記の分析により目的の重合体であることが確認できた。
【0055】
IR(cm−1):2977,2933(メチル)、1647(共役オレフィン)、1361(N−オキシル)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF,PS換算):950
NOラジカル当量:SQUID素子による高感度磁気率測定によりNOラジカル当量は181.3
【0056】
(実施例2)ピペリジル基含有共重合体
実施例1と同様にして前記アセチレンモノマー(EENO)を6.2g(35mmol)および1,4−ジエチニルベンゼン0.23g(1.8mmol)を仕込み、60℃で87時間反応させた。後処理により褐色ポリマー3.3g(19.1mmol)が得られた。(収率51.4%)
【0057】
下記の分析により、目的の共重合体であることが確認できた。
IR(cm−1):
2977、2933(メチル)、1635(共役オレフィン)、1361(N−オキシル)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF、PS換算):1100
NOラジカル当量:SQUID素子による高感度磁化率測定によりNOラジカル当量は189.6
【0058】
(実施例3)ヒドロキシアセチレンモノマーの重合
【0059】
【化14】

【0060】
実施例1と同様にしてアセチレンモノマー(EENO)の替わりに上記合成例3で得られたヒドロキシアセチレンモノマー(ETNO)10.8g(55mmol)を仕込み60℃で130時間反応させた、後処理により褐色ポリマー0.7g(3.7mmol)が得られた。(収率6.8%)
【0061】
下記の分析により目的のポリアセチレンであることが確認できた。
IR(cm−1):
2975、2935(メチル)、1624(共役オレフィン)、1363(N−オキシル)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF、PS換算):900
NOラジカル当量:SQUID素子による高感度磁化率測定によりNOラジカル当量は201.3
【0062】
(実施例4)プロパルギルエーテルモノマーの重合
【0063】
【化15】

【0064】
実施例1と同様にしてEENOの替わりに上記合成例2で得られたプロパルギルエーテルモノマー(PGNO)7.7g(37mmol)を仕込み63℃で16時間反応させた、後処理により褐色ポリマー5.7g(2.8mmol)が得られた。(収率74.4%)
【0065】
下記の分析により目的のポリアセチレンであることが確認できた。
IR(cm−1):
2974、2937(メチル)、1713、1674(共役オレフィン)、1362(N−オキシル)、1083(エーテル)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF、PS換算):1660
NOラジカル当量:SQUID素子による高感度磁化率測定によりNOラジカル当量は208.2
【0066】
(実施例5)アセチレンモノマーの重合
実施例1と同様にして重合液体を調整して80℃で24時間反応させた。後処理により褐色ポリマー47.2gが得られた。(収率85.8%)
【0067】
下記の分析により分子量の上昇したポリアセチレン重合体が得られたが、高温重合では重合時にラジカルの分解が認められた
IR(cm−1):
2975、2935(メチル)、1624(共役オレフィン)、1363(N−オキシル)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF,PS換算):1220
NOラジカル当量:SQUID素子による高感度磁化率測定によりNOラジカル当量は494.8
【0068】
(実施例6)カルバモイルオキシ基含有アセチレンモノマーの重合
【0069】
【化16】

【0070】
アセチレンモノマーEENOを酢酸エチル溶媒中室温で0.5当量のジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)を加え0.5時間攪拌してヒドロキシルアミン体(EENOH)に還元し単離することなく1.1当量のn−ブチルイソシアネート(BuNCO)を滴下し室温で1時間反応させヘキサンより再結晶してアセチレンモノマーEEBCを得た。(収率74.1%、,純度96.0%)。
【0071】
実施例1と同様にしてEENOの替わりにEEBC15.3g(55mmol)を仕込み60℃で130時間反応させた、後処理により褐色ポリマー11.8g(3.7mmol)が得られた。(収率76.8%)
下記の分析により目的のポリアセチレンであることが確認できた。
IR(cm−1):
3387(NH)、2964、2933、2874(メチル、メチレン)、1726,1500(カルバメート)、1637(共役オレフィン)、1363(N−オキシル)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF,PS換算):1100
【0072】
(比較例1)
実施例1と同様にして塩化パラジウムの替わりに塩化タングステン(VI)436mg(1.1mmol)を使用し80℃で24時間反応させた、後処理により褐色ポリマー1.7gが得られた。(収率17.0%)
下記の分析によりポリアセチレンが得られたが、重合時にラジカルがほとんど消失した。
IR(cm−1):
2975、2935(メチル)、1624(共役オレフィン)
電子スペクトル(THF、nm):300〜600(共役オレフィン)
数平均分子量(THF、PS換算):740
ラジカル当量:3360
【0073】
(比較例2)
実施例1と同様にして塩化パラジウムの替わりに四塩化チタン−トリエチルアルミニウム(0.4M)ベンゼン溶液2.75ml(1.1mmol)、DMAcの替わりにトルエンを使用し25℃で5時間反応させたが、重合物は得られなかった。
【0074】
(評価例1)NOラジカル当量の比較
上記実施例1〜実施例5、比較例1及び比較例2で得られた重合体又は共重合体のNOラジカル当量の結果を下記表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
上記表1の結果より、本発明の製造方法によるピペリジル基含有重合体又は共重合体は、NOラジカル含有量が高く、合成樹脂等に添加した際に耐候性を付与する光安定剤として有効であることが確認できた。具体的には化合物No.1で表される重合体を合成した評価例1−1と評価比較例1−2を比較してみると、本発明の重合体のNOラジカル含有量は評価比較例の重合体に比べ約18倍以上もNOラジカルを含有していることが確認できた。また、重合の反応温度と反応時間が同条件である評価例1−5と評価比較例1−1を比較してみると、本発明の重合体の方が約6倍以上のNOラジカルを含有していることが確認できた。
また、上記表1の結果より、重合反応条件として温度は40〜70℃の範囲が好ましく、溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)が好ましいことも確認できた。
【0077】
(評価例2)酸化還元性能試験
上記実施例1で得られたPEENOのサイクリックボルタモグラム(CV)測定により酸化還元性能を評価した。図1で示すような可逆波が得られた。
(DMF:5.6mM、TBAP salt、50mV/sec、参照電極Ag/Ag、E1/2
また図2で示すように、20回繰り返しサイクル(200mV/sec)における10回、20回スキャンは一致し、繰り返し特性も良好であった。
酸化還元電位の測定結果を表1に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
上記表2の結果から環内にポリアセチレン主鎖と共役した二重結合を持ち、平面性の高いPEENOは、特異な酸化還元挙動を示し、酸化還元電位(E1/2)が高くまたピーク間の電流値が高いことが確認できた。このことより、本発明の重合体は電池電極材料として用いた際に優れた性能を持つことが期待出来る。

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は評価例2−1において測定したサイクリックボルタモグラム(CV)測定による可逆波を示す。
【図2】図2は評価例2において測定した20回繰り返しサイクル(200mV/sec)における10、20回のスキャン結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)で表される化合物の少なくとも1種以上から選択される化合物をパラジウム塩触媒により重合させることを特徴とする下記の一般式(4)又は一般式(5)で表される構成単位を含有するピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】


【化4】

【化5】

【請求項2】
上記パラジウム塩触媒が塩化パラジウム、臭化パラジウム、ビス(アセチルアセナト)パラジウム、トランス−ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、パラジウム(II)アセテートのいずれから選ばれる請求項1記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法。
【請求項3】
重合反応に使用する溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドである請求項1又は2に記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法。
【請求項4】
重合反応の温度条件が40〜70℃の範囲である請求項1〜3の何れかに記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体を含有する有機材料用安定剤。
【請求項6】
上記一般式(4)で表される構成単位を含有するピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−249375(P2006−249375A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71435(P2005−71435)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】