説明

ピレスロイド耐性害虫を防除する方法

【課題】ピレスロイド耐性害虫を効果的に防除するための方法を提供すること。
【解決手段】ピレスロイド耐性害虫の防除のために、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピレスロイド耐性を獲得した害虫の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピレスロイド系薬剤は安全性と効力に優れた殺虫剤として、長年、広範の害虫の防除に使用されてきた。しかしながら、ピレスロイド系薬剤の多用によって、近年、ピレスロイド系薬剤に対する耐性を獲得した害虫、すなわち、ピレスロイド耐性害虫が出現し、その効果的な防除法の開発が求められている。たとえば、ピレスロイド耐性害虫の防除のためのアリールピロール化合物の利用が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−59807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
様々な種類のピレスロイド耐性害虫に対する対策を行うために、先に挙げた防除方法だけでなく、更に別の防除方法の出現が望まれている。
従って本発明は、ピレスロイド耐性害虫を効果的に防除するための方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、様々な薬剤の使用やそれらの組み合わせ使用に関して鋭意検討を行った。その結果、ピレスロイド耐性害虫防除のために、オキサジアジン系化合物あるいはピロール系化合物を使用する際、更に、ディートを併用することで、意外にも高い殺虫効果が得られ、効果的にピレスロイド耐性害虫が防除されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明はピレスロイド耐性害虫の防除のために、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを使用する方法である。
【0007】
上記のオキサジアジン系化合物の好適な例はインドキサカルブである。
また、上記のピロール系化合物の好適な例はクロルフェナピルである。
【0008】
また、マイクロカプセル化ディートを使用すること好ましい。
【0009】
さらに本発明は、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを同一繊維製品に適用して使用することが好ましい。また、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを同一壁面に散布して使用することが好ましい。
【0010】
或いは、本発明は、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートとを、夫々異なる繊維製品に適用して、それら繊維製品を一緒に使用することが好ましい。また、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートとを、屋内の夫々異なる壁面に散布して使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、ピレスロイド耐性害虫を効果的に防除することができる。
また、併用するディートをマイクロカプセル化して使用することにより、長期間の効果的なピレスロイド耐性害虫の防除が可能となる。
特に後述するように、本発明の害虫防除方法は、マラリア原虫を媒介する蚊やデングウイルスを媒介する蚊などのピレスロイド耐性双翅目害虫を効果的に防除することが可能となることから、これら感染症予防への貢献にも期待ができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述の通り、本発明者らは、従来の方法とは異なるピレスロイド耐性害虫の防除方法として、様々な薬剤やそれらの併用に関して種々検討を行っていた。
ディートは害虫に対して忌避作用を有する揮散性の化合物として公知の物質であるが、こうした害虫忌避性の化合物を、殺虫性のオキサジアジン系化合物あるいはピロール系化合物と同時に使用したとしても、害虫忌避性化合物自体が殺虫性能に寄与することは常識的には考えにくい。
しかしながら本発明者らは意外にも、殺虫剤であるオキサジアジン系化合物あるいはピロール系化合物と、害虫忌避性化合物であるディートとを組み合わせて使用することによって、ピレスロイド耐性害虫が効果的に防除可能であることを見出した。
なお、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物と、ディートとの組み合わせが、ピレスロイド耐性害虫に対する高い防除効果を発揮する詳細なメカニズムについては不明であるが、何らかの相乗的な殺虫効果があるものと考えられる。
【0013】
本発明において使用可能なオキサジアジン系化合物の好適な例は、インドキサカルブ(indoxacarb)の一般名で知られるメチル=(S)−7−クロロ−2,3,4a,5−テトラヒドロ−2−[メトキシカルボニル(4−トリフルオロメトキシフェニル)カルバモイル]インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a−カルボキシラートである。また、前記化合物の(RS)体や、特表平6−504777号公報に記載され、該公報に記載された方法に従って製造することができるメチル 7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[(メトキシカルボニル)[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシレート)も好適な例として挙げることができる。
【0014】
本発明において使用可能なピロール系化合物の好適な例は、クロルフェナピル(chlorfenapyr)の一般名で知られる4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−1−エトキシメチル−5−トリフルオロメチルピロール−3−カルボニトリルである。
【0015】
本発明において開示するディート(DEET)は、ジエチルトルアミド(N,N−diethyl−m−toluamide)の一般名である。
【0016】
なお、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物は揮発性が低く、一方で、ディートは揮発性が高いことから、単に両者を混合或いは併用しただけでは、効果的な濃度で両者を長期間使用することはできない。
従って、揮発性の高いディートの使用量を多くする方法、あるいは、ディートのみを反復して使用(散布)することで、揮散によって低下するディート量を補う方法、あるいは、ディートをマイクロカプセル化して徐放性を与える方法などを採用することにより、ディートの揮散濃度を一定量以上に保つ必要がある。
これらの方法のうち、ディートが人体に与える悪影響を低減し、また使用時の操作性や煩雑さを考慮すると、ディートをマイクロカプセル化して使用する方法が最も望ましい。
【0017】
ディートのマイクロカプセル化は、相分離法、液中乾燥法、融解分散冷却法、スプレードライング法、パンコーティング法、気中懸濁被覆法、粉床法、界面重合法、in situ重
合法、液中硬化被覆法又は界面反応法等の既知の方法によって実施可能であり、特に好適
な方法としては、界面重合法あるいはin situ重合法が挙げられる。
マイクロカプセル膜の材質としては、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリカ系化合物、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチルセルロース又はアミノプラスト樹脂等が挙げられ、特に、メラミン樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂が好適な例として挙げられる。
また、マイクロカプセル化したディートを含む分散液を繊維に展着する場合、より強固にマイクロカプセル化ディートを展着させるためにバインダとしての樹脂(展着剤)を分散液に加えてから繊維を処理することが望ましく、この目的のための好適なバインダ樹脂の例は、アクリル樹脂、シリコン樹脂、シリコン・アクリル共重合物、エポキシシリコン樹脂、エポキシシリコン・ウレタン併用化合物もしくは共重合物、アクリル・ウレタン併用化合物もしくは共重合物である。
また、本マイクロカプセルの好ましい平均粒子径は1〜100μm、より好ましい平均粒子径は3〜50μmである。
【0018】
本発明が防除の対象とするピレスロイド耐性害虫は、ピレスロイド耐性の昆虫類やダ二類であり、具体的には以下の昆虫類やダ二類に属するものが挙げられる。
【0019】
双翅目害虫に属する、シナハマダラカ(Anopheles sinensis)、Anopheles gambiae等
のハマダラカ類、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、アカイエカ(Culex pipiens pallens)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等のイエカ類、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)等のエーデス属、ユス
リカ類、イエバエ(Musca domestica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)等のイエバエ類、クロバエ類、ニクバエ類、ヒメイエバエ類、タネバエ、タマネギバエ等のハナバエ類、ミバエ類、ショウジョウバエ類、チョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類、ハモグリバエ類等。
【0020】
ダニ目害虫に属する、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、オリゴニカス属等のハダニ類、ミカンサビダニ(Aculops pelekassi)等のフシダニ類、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)等のホコリダニ類、ヒメハ
ダニ類、ケナガハダニ類、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)、ヤマトチ
マダニ(Haemaphysalis flava)、タイワンカクマダニ(Dermacentor taiwanicus)、ヤ
マトマダニ(Ixodes ovatus)、シュルツマダニ(Ixodes persulcatus)、オウシマダニ
(Boophilus microplus)、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)等のマ
ダニ類、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)等のコナダニ類/、コナヒョウヒ
ダニ(Dermatophagoides farinae)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides ptrenyssnus)等のヒョウヒダニ類、ホソツメダニ(Cheyletus eruditus)、クワガタツメダニ(Cheyletus malaccensis)、ミナミツメダニ(Cheyletus moorei)等のツメダニ類、ワクモ類
等。
【0021】
ゴキブリ目害虫に属する、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、クロゴキブリ
(Periplaneta fuliginosa)、ワモンゴキブリ(Periplaneta americana)、トビイロゴ
キブリ(Periplaneta brunnea)、トウヨウゴキブリ(Blatta orientalis)等。
半翅目害虫に属する、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類、ツマグロヨコバイ、タイワンツマグロヨコバイ等のヨコバイ類、ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ等のアブラムシ類、アオクサカメムシ、ホソヘリカメムシ等のカメムシ類、オンシツコナジラミ、シルバーリーフコナジラミ等のコナジラミ類、アカマルカイガラムシ、サンホーゼカイガラムシ、シトラススノースケール、ルビーロウムシ、イセリヤカイガラムシ等のカイガラムシ類、グンバイムシ類、キジラミ類等。
【0022】
鱗翅目害虫に属する、ニカメイガ、コブノメイガ、ワタノメイガ、ノシメマダラメイガ等のメイガ類、ハスモンヨトウ、アワヨトウ、トリコプルシア属、ヘリオティス属、ヘリコベルパ属等のヤガ類、モンシロチョウ等のシロチョウ類、アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ、コドリンガ等のハマキガ類、モモシンクイガ等のシンクイガ類、リオネティア属等のハモグリガ類、リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類、コナガ等のスガ類。
【0023】
ワタアカミムシ等のキバガ類、アメリカシロヒトリ等のヒトリガ類、イガ、コイガ等のヒロズコガ類等。
【0024】
鞘翅目害虫に属する、ウエスタンコーンルームワーム、サザンコーンルートワーム等のコーンルートワーム類、ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類、メイズウィービル、イネミズゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、チャイロコメノゴミムシダマシ、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、ウリハムシ、キスジノミハムシ、コロラドハムシ等のハムシ類、シバンムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ類、ヒラタキクイムシ類、ナガシンクイムシ類、カミキリムシ類、アオバアリガタハネカクシ等。
【0025】
アザミウマ目害虫に属する、ミナミキイロアザミウマ、ネギアザミウマ等。
【0026】
膜翅目害虫に属する、ヒメアリ等のアリ類、スズメバチ類、アリガタバチ類、ニホンカブラバチ等のハバチ類等。
【0027】
直翅目害虫に属する、ケラ類、バッタ類等。
【0028】
隠翅目害虫に属する、ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ、ケオプスネズミノミ等。
【0029】
シラミ目害虫に属する、コロモジラミ、ケジラミ、ウシジラミ、ヒツジジラミ等。
【0030】
シロアリ目害虫に属する、ヤマトシロアリ、イエシロアリ等。
【0031】
本発明の害虫防除方法は上述のピレスロイド耐性の双翅目害虫の中でも、特に、シナハマダラカ(Anopheles sinensis)、Anopheles gambiae等のハマダラカ類、コガタアカイ
エカ(Culex tritaeniorhynchus)、アカイエカ(Culex pipiens pallens)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)等のイエカ類、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒ
トスジシマカ(Aedes albopictus)等のエーデス属でのピレスロイド耐性昆虫に対して、優れた防除効果を有する。従って、本発明の害虫防除方法を用いることで、マラリア原虫を媒介する蚊やデングウイルスを媒介する蚊を効果的に防除することが可能となり、これら蚊を媒介する感染症予防に有効となるため、本発明の実用性は極めて大きい。
また、本発明の害虫防除方法は、上述のピレスロイド耐性のダニ目害虫の中でも、特に、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)等のホコリダニ類、ヒメハダニ類、
ケナガハダニ類、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)、ヤマトチマダニ(Haemaphysalis flava)、タイワンカクマダニ(Dermacentor taiwanicus)、ヤマトマダニ(Ixodes ovatus)、シュルツマダニ(Ixodes persulcatus)、オウシマダニ(Boophilus
microplus)、クリイロコイタマダニ(Rhipicephalus sanguineus)等のマダニ類、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)等のコナダニ類/、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides ptrenyssnus)等のヒョウ
ヒダニ類、ホソツメダニ(Cheyletus eruditus)、クワガタツメダニ(Cheyletus malaccensis)、ミナミツメダニ(Cheyletus moorei)等のツメダニ類でのピレスロイド耐性害
虫、更には、ピレスロイド耐性のゴキブリ目害虫、特に、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)、クロゴキブリ(Periplaneta fuliginosa)、ワモンゴキブリ(Periplaneta
americana)でのピレスロイド耐性害虫に対しても、優れた防除効果を有する。従って、住環境や、家畜、家禽の飼育環境での害虫防除に大きく貢献することが期待でき、本発明の実用性は極めて大きい。
【0032】
本発明の好適な実施形態、すなわち、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートの好適な併用方法としては、例えばこれらの有効成分を繊維やそれから得られる吸収体等の繊維製品に含ませて生活環境や使用環境に置く方法が挙げられる。この目的で好適に使用可能な繊維としては、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、綿、綿・ポリエステル混紡繊維、レーヨン、綿・レーヨン混紡繊維等が挙げられる。
例えば、これらの繊維(製品)に、前記の有効成分を練り込みや含浸、或いは展着によって添加したもの、より具体的には、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物を練り込んだ繊維製品に、マイクロカプセル化したディートを更に展着剤を用いて展着させる。
また、縦糸用の繊維と横糸用の繊維に別の有効成分を練り込みあるいは展着して、これらを用いて繊維製品を織り上げる方法も有用である。
そしてこうして得られる繊維製品を、蚊帳、カーテン、カーペット、マット、壁掛け、布団、毛布、シーツ、枕カバー、衣類、帽子、ターバン、靴下、テント、農業用マット等の形態として、生活環境や、農園芸実施箇所等の使用環境に置くことで、ピレスロイド耐性害虫を効果的に防除できる。
特に、蚊帳として構成されたこうした繊維製品は、LLINs、すなわち“Long−lasting insecticidal nets”として有用であり、特に、マラリア原虫を媒介する蚊の防除のために極めて有用な方法である。
上述したピレスロイド耐性害虫防除のための繊維製品における、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物の好適な使用量は繊維製品1m2当たり0.01〜20gであり
、ディートの好適な使用量は繊維製品1m2当たり1〜50gである。
【0033】
また、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートの併用方法の別の実施形態としては、これらの有効成分を含有する溶液を散布する方法である。
こうした散布液に含まれるオキサジアジン系化合物又はピロール系化合物の好適な濃度は0.001〜5%であり、ディートの好適な濃度は0.01〜20%であるが、経済性や安全性を考慮しないのであれば、より高濃度で使用することも可能である。
【0034】
また、防除対象となるピレスロイド耐性害虫が、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物と、ディートの双方に接触する方法であれば、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物と、ディートを混合して使用する必要は特にない。
例えば、寝室内に進入したピレスロイド耐性蚊に対しては、ディートを寝室内の蚊帳あるいは寝具の繊維に添加し、更に、オキサジアジン系化合物あるいはピロール系化合物を、寝室の壁面、床、天井、カーテン、カーペット、マット、壁掛け等に溶液の散布あるいは繊維に練り込む方法で添加しておくことで、効果的に防除可能となる。
【0035】
尚、本発明において、ピレスロイド耐性害虫防除のために、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートを使用する際に、こうした目的のために通常使用される他の様々な殺虫剤、防虫剤、忌避剤あるいは共力剤を混合使用あるいは併用することで、ピレスロイド耐性害虫の防除効果をより高めることが可能である。このような殺虫剤、防虫剤、忌避剤あるいは共力剤の好適な例として、以下のものが挙げられる。
【0036】
アジノフォス−エチル、アジノフォス−メチル、1−(4−クロロフェニル)−4−(O−エチル,S−プロピル)ホスホリルオキシピラゾル(TIA−230)、クロロピリフォス、テトラクロロピリフォス、クマフォス、デトメン−S−メチル、ジアジノン、ジクロルボス、ジメトエート、エトプロフォス、エトリムフォス、フェニトロチオン、ピリ
ダフェンチオン、ヘプテノフォス、パラチオン、パラチオン−メチル、プロペタンホス、フォサロン、フォキシム、ピリミフォス−エチル、ピリミフォス−メチル、プロフェノフォス、プロチオフォース、スルプロフォス、トリアゾフォス、トリクロルフォン等のリン酸エステル系化合物;
クロルピリホス、クロルピリホス−メチル、ピリミホス−メチル、ピリミホス−エチル、フェニトロチオン、プロフェノホス、スルプロホス、アセファート、メチルパラチオン、キナルホス、アジンホス−メチル、デメトン−s−メチル、ヘプテノホス、チオメトン、ピラクロホス、エトプロホス、ホスチアゼート、フェナミホス、モノクロトホス、プロフェノホス、トリアゾホス、メタミドホス、ジメトアート、ホスファミドン、マラチオン、ホサロン、テルブホス、フェンスルホチオン、ホノホス、ホラート、ホキシム、メチダチオン、フェンチオン、ジアジノン等の有機リン系化合物;
アルジカルブ、ベニオカルブ、2−(1−メチルプロピル)−フェニル−N−メチルカルバメート(BPMC)、2−(1−メチルプロピル)フェニルメチルカルバメート、ブトカルボキシム、ブトキシカルボキシム、カルバリル、カルボフラン、カルボスルファン、クロエトカルブ、イソプロカルブ、メソミル、オキサミル、ピリミカルブ、プロメカルブ、プロポクスル、トリアザマート、チオジカルブ、チオフロクス、ベンフラカルブ、フラチオカルブ、エチオフェンカルブ、フェノブカルブ等のカルバメート系化合物;
トルフェンピラド、ピリダベン、テブフェンピラド、フェンピロキシマート等のピラゾール系化合物;
ハロフェノジド、テブフェノジド、クロマフェノジド、メトキシフェノジド等のヒドラジン系化合物;
クロルジメホルム、アミトラズ等のアミジン系化合物;
N−シアノ−N’−メチル−N’−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)アセトアミジン等のN−シアノアミジン系化合物;
ジアフェンチウロン等のチオ尿素系化合物;
ベンスルタップ等のネライストキシン系化合物;
エンドスルファン、ベンゼンヘキサクロリド、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン(DDT)、ディルドリン、γ−ベンゼンヘキサクロライド(BHC)等の有機塩素系化合物;
アバメクチン、エマメクチンベンゾアート、イベルメクチン、ミルベマイシン、スピノサド、アザジラクチン等のマクロリド系化合物;
ブプロフェジン等のチアジアジン系化合物;
エトキサゾール等のオキサゾリン化合物;
デカン酸、オクタン酸等の炭素数6〜12の脂肪酸およびこれらの脂肪酸のエステル化誘導体等の脂肪酸系化合物;
トリデカノール、ヘキサデカノール等の高級アルコール系化合物;
アクリナトリン、アレトリン、アルファメトリン、イミプロトリン、エスビオスリン、エスフェンバレラート、エムペントリン、サイパーメスロン、ベータ−サイパーメスロン、α−シアノ−3−フェニル−2−メチルベンジル−2,2−ジメチル−2−(2−クロロ−2−トリフルオロメチルビニル)シクロプロパン−1−プロパンカルボキシレート、シクロプロトリン、シフルトリン、シフェノトリン、シハロトリン、λ−シハロトリン、γ−シハロトリン、シペルメトリン、ジメフルトリン、デカメトリン、テトラフルメトリン、テトラメトリン、テラレスリン、テフルトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、トランスフルトリン、バイオアレスリン、ビオレスメトリン、ビフェントリン、ピレトリン、フェノトリン、フェンプロパトリン、フェンフルトリン、フェンバレレート、フタルスリン、ブラトリン、フラメトリン、プラレトリン、プロフルスリン、ビオレスメトリン、フルシトリネート、フルムトリン、フルバリネート、プロフルトリン、ペルメトリン、5−ベンジル−3−フリルメチル−(E)−(1R,3S)−2,2−ジメチル−3−(2−オキソチオラン−3−イリデンメチル)シクロプロパンカルボキシラート、メソスリン、メトフルトリン、レスメトリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレ
スロイド系化合物及びこれらの化合物の異性体であるピレスロイド類;
イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、チアクロプリド、フロニカミド、ジオフェノラン等のネオニコチノイド系化合物;
2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、4−エチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,6,−ジメチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−n−アミルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、チモール(5−メチル−2−イソプロピルフェノール)、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、2−ベンジルフェノール等の非塩素化フェノール系化合物;
4−クロロ−3−メチルフェノール(PCMC、p−クロロ−m−クレゾール)、4−クロロ−3−エチルフェノール、2−n−アミル−4−クロロフェノール、2−n−ヘキシル−4−クロロフェノール、2−シクロヘキシル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−キシレノール(PCMX、p−クロロ−n−キシレノール)、2,4−ジクロロ−3,5−キシレノール(DCMX、ジクロロ−p−キシレノール)、4−クロロ−2−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、ベンジル−4−クロロ−m−クレゾール、4−クロロベンジルジクロロ−m−クレゾール等の非塩素化フェノール系化合物;
ホウ酸、ホウ砂等のホウ素含有化合物;
銅、亜鉛、ニッケル、アルミニウム、モリブデンあるいは銀をカチオン部分として有する、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、ナフテン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、オクタン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、フッ化物、塩素化物、水酸化物あるいは酸化物;
塩化物イオン、水酸化物イオン、有機酸イオンなどをアニオン部分として有する、ジデシルジメチルアンモニウム、ベンザルコニウム等のテトラアルキルアンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;
シロマジン等のトリアジン類;
フィプロニル、バニリプロール、エチプロール、アセトプロール等のフェニルピラゾール系化合物;
ヒドラメチルノン、アミドフルメト等のフッ素含有化合物;
昆虫ホルモンおよびその誘導体;
ジフルベンズロン、ノバルロン、ノビフルムロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、ビストリフルロン、フルフェノクスロン、ルフェヌロン、クロルフルアズロン、ヘキサフルムロン、スルファルアミド、ピリプロキシフェン、メトプレン、ハイドロプレン、フェノキシカルブ等のIGR(昆虫成長制御物質)又は幼若ホルモン様物質;
シトラール、シトロネラール、シトロネロール、オイゲノール、メチルオイゲノール、ゲラニオール、シンナミックアルデヒド、リナロール、ペリラアルデヒド、ネペタリック酸、メチルヘプテノン、デシルアルデヒド、ミルセン、酢酸ゲラニオール、チモール、リモネン、メントール、メントン、ユーカリプトール、シオネール、ピネン、シメン、テルピネン、サビネン、エレメン、セドレン、エレモール、ビドロール、セドロール、ヒノキチオール、ツヤプリシン、トロポロイド、ヒノキチン、ツヨプセン、ボルネオール、カンフェン、テルピネオール、テルピニルエステル、ジペンテン、ファランドレン、シネオール、カリオレフィン、バニリン、フルフラール、フルフリルアルコール、ピノカルベオール、ピノカルボン、ミルテノール、ベルベノン、カルボン、オイデスモール、ピペリトン、ツエン、ファンキルアルコール、メチルアンスラニレート、ビサボレン、ベルガプトール、ノニルアルデヒド、ノニルアルコール、ヌートカトン、オクチルアルデヒド、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ネロリドール、オシメン、アンスラニル酸メチル、インドール、ジャスモン、ニーム、ベンツアルデヒド、プレゴン、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、2−ボルナノン(樟脳)、ヒバ油、ユーカリ油、ハーブ油、リモネン、茶抽出液、竹抽
出液等の植物抽出物及びこれらの化合物の誘導体又は異性体である天然系化合物;
ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジ−n−プロピルイソシンコメロネート、p−ジクロロベンゼン、ジ−n−ブチルサクシネート、カラン−3,4−ジオール、1−メチルプロピル2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペリジンカルボキシラート、p−メンタン−3,8−ジオール、3−(N−ブチルアセトアルデヒド)プロピオン酸エチル、ピカリジン等の揮発性化合物。
ビス−(2,3,3,3−テトラクロロプロピル)エ−テル(S−421)、N−(2−エチルヘキシル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド(MGK264)、α−[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]−4,5−メチレンジオキシ−2−プロピルトルエン(PBO)等の共力剤等。
【0037】
これらの殺虫剤、防虫剤、忌避剤あるいは共力剤は、単独でも組み合わせても使用可能である。本発明において使用されるこのような殺虫剤、防虫剤、忌避剤あるいは共力剤の濃度は、これら薬剤の有する生理活性の強度応じて適宜、調整することが望ましいが、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物の使用濃度の1/1000倍から500倍の濃度範囲であることが望ましい。
【実施例】
【0038】
次に本発明のピレスロイド耐性害虫の防除方法を、調製例、製剤例および試験例によって説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、下記の例中、「%」は質量%を示す。
【0039】
実施例1:
[マイクロカプセル化ディートの製作方法]
スチレン−無水マレイン酸樹脂を少量の水酸化ナトリウムと共に溶解して調製したpH=4.5の3%水溶液(200部)中に、ディート(すなわち、ジエチルトルアミド)(135部)を加え、ウルトラホモジナイザーにてエマルジヨンの粒径が3〜12μmになるまで乳化を行った。次に、メラミン(6部)および37%ホルムアルデヒド水溶液(15部)を65部の水に加え、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH=9.5とし、80℃で15分間加熱してメラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物を調製した。該縮合物を前記乳化物に加え、液温75℃で2時間撹拌し、ディートを内包した徐放性のメラミン樹脂壁マイクロカプセル分散液を得た。芯物質量に対する壁膜量の割合は、8.6%であった。このマイクロカプセル分散液を水で希釈し、ディートとしての濃度を10%に調整した。
【0040】
[繊維処理]
上記のディート濃度10%に調整したマイクロカプセル分散液5部と、アクリル樹脂バインダー(固形分40%)3部を、水92部に均一に混合して繊維加工用のディート液とした。次に、インドキサカルブ又はクロルフェナピルを練り込みによって1%で含有するポリエステルのスパンレース不織布(80g/m2)に、上記の繊維加工用のディート液
を噴霧し、180℃で1分間の熱処理を行った。
得られた不織布は、1m2当たりに、インドキサカルブ又はクロルフェナピルを0.8
g、マイクロカプセル化ディートをディートとして8g含有するものであった。
尚、対照として、インドキサカルブのみを0.8g/m2で含有する不織布、クロルフ
ェナピルのみを0.8g/m2で含有する不織布、マイクロカプセル化ディートのみをデ
ィートとして8g/m2で含有する不織布、並びにペルメトリンを練り込みによって0.
8g/m2で含有する不織布を製造した。
【0041】
実施例2:
[ピレスロイド耐性害虫の防除効果]
20メッシュのステンレス金網を張った、縦20cm、横10cm、高さ10cmの小
さなカゴの中にマウスを1匹入れ、このカゴの周りを実施例1で製造した各種不織布で1重に覆ってから、このカゴを同じメッシュの大きさのステンレス金網を張った縦40cm、横40cm、高さ40cmの大きなカゴの中に置いた。次に、この大きなカゴの中に、ピレスロイド耐性を有するコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)を50匹放ち
、4時間後の死虫数をカウントして、死虫率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

表1に示すように、インドキサカルブ又はクロルフェナピルとディートとを併用することにより、ピレスロイド耐性害虫が効果的に防除可能であることが示された。
【0043】
実施例3:
[ピレスロイド耐性害虫の防除効果]
実施例2と同様にしてセットされたマウス1匹を入れた2種類の大きさのカゴを用意し、マウスの入った小さなカゴの周りを実施例1で製造した8g/m2のマイクロカプセル
化ディートをのみを含む不織布で1重に覆った。
更に、実施例1で使用したものと同じポリエステルのスパンレース不織布に、インドキサカルブ又はクロルフェナピルを1%の濃度で含むエタノール溶液を噴霧し、60℃、30分間の乾燥でエタノールを除去することにより、該不織布にインドキサカルブ又はクロルフェナピルを添加した不織布を用意した。得られた不織布は1m2当たりにインドキサ
カルブ又はクロルフェナピルを0.8g含有するものであった。この不織布を縦40cm、横40cmに裁断したものを1枚、大きなカゴの内側壁面の一つに固定した。
そして、この大きなカゴの中に実施例2と同様にピレスロイド耐性を有するコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)を50匹放ち、4時間後の死虫数をカウントして、
死虫率を求めた。尚、対照のため、薬剤を含まない不織布をマウス側のカゴに使用した場合についても、同様の試験を行った。得られた結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

表2に示すように、インドキサカルブ又はクロルフェナピルとディートとを混合せず、双方の薬剤にコガタアカイエカが接触する方法で用いた場合にあっても、ピレスロイド耐性害虫が効果的に防除可能であることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピレスロイド耐性害虫の防除のために、オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを使用する方法。
【請求項2】
オキサジアジン系化合物が、インドキサカルブである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ピロール系化合物が、クロルフェナピルである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
マイクロカプセル化ディートを使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを同一繊維製品に適用して使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物、及びディートを同一壁面に散布して使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートとを、夫々異なる繊維製品に適用して、それら繊維製品を一緒に使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
オキサジアジン系化合物又はピロール系化合物とディートとを、屋内の夫々異なる壁面に散布して使用することを特徴とするする、請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2010−195766(P2010−195766A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218907(P2009−218907)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000127879)株式会社エス・ディー・エス バイオテック (23)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【Fターム(参考)】