説明

ピロリン酸カルシウム粉体およびその製造方法、並びに樹脂フィルム

【課題】樹脂フィルムのフィラーとして用いたときに、良好な均一分散性を発揮することのできるピロリン酸カルシウム粉体、およびこのようなピロリン酸カルシウム粉体を製造するための有用な方法、並びにピロリン酸カルシウム粉体を均一に分散させた樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】本発明のピロリン酸カルシウム粉体は、レーザ回折式粒度分布測定装置で測定したときの累積粒径を、微細側から累積10%のときの粒径(μm)をD10、微細側から累積50%のときの粒径(μm)をD50、微細側から累積90%のときの粒径(μm)をD90と表したとき、前記D90とD10の比(D90/D10)が6以下となる粒度分布を有すると共に、D50が1〜5μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムに分散されるフィラーとして用いられるピロリン酸カルシウム粉体、およびその製造方法、並びにピロリン酸カルシウム粉体を均一に分散させた樹脂フィルム等に関するものであり、殊に樹脂フィルム中に均一に分散させ易いピロリン酸カルシウム粉体の形態、およびこうしたピロリン酸カルシウム粉体を製造するための有用な方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムには、その改質や強度付与を目的として、無機粉体を分散させることが行われている。また樹脂フィルムの中では、ポリイミドフィルムが高機能フィルムとして良く知られており、このフィルムは耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度等の点で優れた特性を発揮することから、電気絶縁フィルム、断熱フィルム、或はフレキシブルプリント配線板のベースフィルム等に適用されている。例えば、ポリイミドフィルムにおいては、無機粉体を分散させることによって、フィルムとしての基本的な特性を維持したまま、フィルム表面の摩擦係数を低減すると共に、表面粗さを制御することによって金属箔等との接着性向上を図ることが行われている。
【0003】
上記のような樹脂フィルムで、フィラーとして用いられる無機粉体としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、雲母、粘度鉱物、第二リン酸カルシウム無水物、ピロリン酸カルシウム等が用いられており、特に樹脂フィルム中にできるだけ均一に分散できる特性(以下、単に「均一分散性」と呼ぶことがある)を考慮すれば、第二リン酸カルシウム無水物粉末やピロリン酸カルシウム粉体が好ましいとされている。
【0004】
しかしながら、このうち特にピロリン酸カルシウム粉体を、樹脂フィルムのフィラーとして用いた場合であっても、良好な分散均一性が達成されないことがある。こうしたことから、樹脂フィルムにピロリン酸カルシウムをできるだけ均一に分散させる技術、或は良好な均一分散性を発揮するピロリン酸カルシウムの実現が望まれている。
【0005】
ピロリン酸カルシウム粉末を製造するための技術として、例えば特許文献1には、正リン酸と石灰の反応においてボールミルや循環ポンプ等で粒子をほぐす工程を入れた後、濾過・乾燥して得たリン酸水素カルシウム二水塩を原料として、ピロリン酸カルシウム粉体を製造する方法が提案されている。しかしながらこの方法では、粒子をほぐす工程を入れることによって、ボールミルや循環ポンプの材質が摩耗し、異物として混入する可能性が高くなっている。また、このような方法で得られたピロリン酸カルシウム粉体では、樹脂フィルムのフィラーとして用いた場合に、均一分散性が達成されないことがある。
【0006】
ポリイミドフィルムにおいて、第二リン酸カルシウム無水物粉末またはピロリン酸カルシウム粉体等のフィラーとしての効果を確認するために、粒径(平均粒径)が1〜5μmを主体とした粉体をフィルム中に分散させる技術も提案されている(例えば、特許文献2)。この技術では、ポリイミドフィルムの走行性(易滑性)を改良するため、およびフレキシブルプリント配線用銅箔とポリイミドフィルムとの接着性向上のために、フィラーの均一な分散を図るものである。しかしながら、平均粒径を規定するだけでは、良好な均一分散性が達成されているとは言えず、更なる改良の余地がある。
【0007】
一方、特許文献3には、無機粉体の有機溶媒への分散方法が提案されている。この技術では、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機溶媒に、ポリアミック酸および/または可溶性ポリイミドを溶解させ、これに酸化チタン、リン酸水素カルシウム無水物、ピロリン酸カルシウム、二酸化ケイ素等の無機粉体を分散させたものを分散液とするものである。そして、この分散液は、樹脂や樹脂の前駆体に添加・混合することによって、無機粉体を分散した樹脂フィルムを得るものである。しかしながら、こうした技術によっても無機粉体の種類によっては、均一な分散が達成されているとは言えず、また限られた物質(例えば、酸化チタン)でしかその効果が確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭46−2410号公報
【特許文献2】特公平6−65707号公報
【特許文献3】特許第4119700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、樹脂フィルムのフィラーとして用いたときに、良好な均一分散性を発揮することのできるピロリン酸カルシウム粉体、およびこのようなピロリン酸カルシウム粉体を製造するための有用な方法、並びにピロリン酸カルシウム粉体を均一に分散させた樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成し得た本発明のピロリン酸カルシウム粉体は、レーザ回折式粒度分布測定装置で測定したときの累積粒径を、微細側から累積10%のときの粒径(μm)をD10、微細側から累積50%のときの粒径(μm)をD50、微細側から累積90%のときの粒径(μm)をD90と夫々表したとき、前記D90とD10の比(D90/D10)が6以下となる粒度分布を有すると共に、D50が1〜5μmである点に要旨を有するものである。
【0011】
上記のようなピロリン酸カルシウム粉体を製造するに当たっては、風力分級によって分級された、D50が20μm以下のリン酸水素カルシウム無水物粉末を、400〜1350℃の温度範囲で焼成した後、粉砕機で粉砕することによって、前記D50が1〜5μmとなるようにすれば良い。本発明のピロリン酸カルシウム粉体は、樹脂用フィラーとして用いたときのその効果が最も有効に発揮される。
【0012】
本発明のピロリン酸カルシウム粉体を樹脂フィルム中に分散させたものでは、均一で良好な分散状態の樹脂フィルムが得られることになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のピロリン酸カルシウム粉体では、D90とD10の比(D90/D10)が6以下となるようなシャープな粒度分布を有するので、樹脂フィルム中に均一に分散させるフィラーの素材として極めて有用である。また、このようなピロリン酸カルシウム粉体は、本発明の方法によって効率良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実験1で得られたピロリン酸カルシウム粉体における粒度分布を示す棒グラフである。
【図2】実験2で得られたピロリン酸カルシウム粉体における粒度分布を示す棒グラフである。
【図3】実験3で得られたピロリン酸カルシウム粉体における粒度分布を示す棒グラフである。
【図4】実験4で得られたピロリン酸カルシウム粉体における粒度分布を示す棒グラフである。
【図5】実験5で得られたピロリン酸カルシウム粉体における粒度分布を示す棒グラフである。
【図6】実験6で得られたリン酸水素カルシウム無水物粉体における粒度分布を示す棒グラフである。
【図7】樹脂フィルムの易滑性評価方法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々な角度から検討した。そしてまず、ピロリン酸カルシウム粉体の樹脂への均一分散性を向上させるためには、粉体の平均粒径を考慮するだけでなく、その粒度分布をシャープな状態にした方が良いとの着想が得られた。
【0016】
そして、こうした着想に基づいて、更に検討した結果、ピロリン酸カルシウム粉体の粒度分布において、レーザ回折式粒度分布測定装置で測定したときの累積粒径を、微細側から累積10%のときの粒径(μm)をD10、微細側から累積50%のときの粒径(μm)をD50、微細側から累積90%のときの粒径(μm)をD90と夫々表したとき、前記D90とD10の比(D90/D10)が6以下となる粒度分布を有すると共に、D50が1〜5μmであるものとすれば、良好な均一分散性を発揮するピロリン酸カルシウム粉体が実現でき、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
本発明のピロリン酸カルシウム粉体では、D90とD10の比(D90/D10)が6以下となる粒度分布を有する必要がある。この比の値を6以下とすることによって、できるだけ粒径の分布(粒度分布)をシャープなものとし、その結果として樹脂フィルムへの均一分散性を発揮させるものである。この比(D90/D10)の値が6よりも大きくなると、粗粒子または微粒子が増加して、粒度分布が2山になったり(後記図4参照)、粒度分布がブロードになったりする(後記図5参照)ため、ピロリン酸カルシウム粉体の均一分散性が達成されない。この比(D90/D10)の値は、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
【0018】
但し、ピロリン酸カルシウム粉体をフィラーとして用いるときの基本的特性を満足させるためには、D50(メジアン径)で表される平均粒径が1〜5μmとする必要がある。このD50が1μm未満では、表面改質効果が薄れ、添加量の増大を招き、5μmを超えると粗大粒子が増えることとなる。D50の好ましい下限は2μm以上であり、好ましい上限は4μm以下である。
【0019】
上記のような粒度分布を有するピロリン酸カルシウム粉体を製造するに当たっては、その製造条件を厳密に制御する必要がある。原料となるリン酸水素カルシウム無水物粉末は、その後焼成されてピロリン酸カルシウム粉体とされるのであるが、その原料粉末は、まず風力分級によって分級され、平均粒径D50が20μm以下のものとする必要がある。このD50が20μmを超えると、最終的に得られるピロリン酸カルシウム粉体の粒度分布が2山になりやすい。また、この風力分級を行うことは、その後の工程で比(D90/D10)の値を6以下に制御する上で有用である。
【0020】
上記風力分級で用いる機器としては、サイクロンや、市販の気流分級機(例えば、「MDS−3」 商品名 日本ニユーマチック工業株式会社製)等、が挙げられるが、工業的スケールでの生産性を考慮すれば、サイクロンであることが好ましい。
【0021】
分級された原料粉末は、その後所定の温度範囲で焼成されてピロリン酸カルシウム粉体とされ、引き続き粉砕されて所定の粒度分布を有するものとなる。焼成時の温度は、400〜1350℃とする必要がある。この焼成温度の違いによって、得られる(転化される)ピロリン酸カルシウム粉体の種類が異なるものとなるが(α−ピロリン酸カルシウム、β−ピロリン酸カルシウム、γ−ピロリン酸カルシウム)、少なくともピロリン酸カルシウムとするためには、焼成温度は400℃以上とする必要がある。しかしながら、焼成温度が1350℃を超えると、原料粉末が溶解するばかりか、冷却に時間を要したり、多大なエネルギーが必要になったりするので好ましくない。この焼成温度の好ましい下限は450℃以上(より好ましくは500℃以上)であり、好ましい上限は1300℃以下(より好ましくは1200℃以下)である。
【0022】
上記の温度範囲で焼成されてピロリン酸カルシウムに転化された粉末は、その後粉砕されてピロリン酸カルシウム粉体となる。このときの粉砕では、D50で1〜5μmとなるように制御する必要がある。また、上記比(D90/D10)の値を6以下に制御するためには、上記のような焼成をした後に粉砕を行うことが重要な要件となる。
【0023】
リン酸水素カルシウム無水物粉末を原料として、ピロリン酸カルシウム粉体を得るためには、原料粉末であるリン酸水素カルシウム無水物粉末をまず粉砕してから、焼成してピロリン酸カルシウムに転化するのが一般的であるが、このような製造工程では、上記比(D90/D10)の値を6以下に制御することが困難になる。粉砕してから焼成すれば、焼成時にリン酸水素カルシウム無水物がピロリン酸カルシウム粉体に転化する際に、粒度分布の変動が生じやすくなると考えられる。
【0024】
これに対して、風力分級されたリン酸水素カルシウム無水物粉末を焼成してピロリン酸カルシウムに転化してから粉砕すれば、すでに生成したピロリン酸カルシウムが粉砕時において粒度分布の変動が生じにくくなるものと考えられる。尚、粉砕で用いる粉砕機は、ジェットミルやボールミル等、様々なものが挙げられるが、異物混入の可能性や生産効率を考慮すれば、ジェットミルが好ましい。
【0025】
本発明の製造方法は、各工程は比較的簡略であるので、こうした方法ではピロリン酸カルシウム粉体を効率良く製造できるものとなる。
【0026】
本発明のピロリン酸カルシウム粉体を樹脂フィルム中に分散させたものでは、粉体を均一に分散した樹脂フィルムが得られる。ピロリン酸カルシウム粉体を樹脂フィルム中に分散させるための方法については、通常行われている方法に従えばよいが、粉体の分散量(添加量)は、粉体分散フィルム全体に対する割合で、0.05〜1.0質量%程度であることが好ましい。この量が、0.05質量%未満となると、樹脂フィルムを改質するためのフィラーとしての作用を発揮できず、1.0質量%超えてもその効果が飽和する。
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0028】
[実施例1]
(実験1):サイクロン(円筒直径:450mm)によって分級したリン酸水素カルシウム無水物[太平化学産業株式会社製:分級後、焼成前の平均粒径(メジアン径)が3.95μm]を、甲バチに2.5kg充填し、焼成炉にて、900℃で5時間保持の条件で焼成し、β−ピロリン酸カルシウム粉体を得た。これをカウンタージェットミルにより粉砕して平均粒径(D50)が2〜3μmの粉体とした。最終的に得られたβ−ピロリン酸カルシウム粉体の平均粒径(メジアン径)は2.64μmであった。
【0029】
(実験2):焼成温度を500℃とした以外は実験1と同じ手順によって、リン酸水素カルシウム無水物[太平化学産業株式会社製:分級後、焼成前の平均粒径(メジアン径)が4.34μm]から、γ−ピロリン酸カルシウム粉体を得た。最終的に得られたγ−ピロリン酸カルシウム粉体の平均粒径(メジアン径)は2.44μmであった。
【0030】
(実験3):焼成温度を1200℃とし、リン酸水素カルシウム無水物[太平化学産業株式会社製:分級後、焼成前の平均粒径(メジアン径)が12.0μm]から、実験1と同手順によりα−ピロリン酸カルシウム粉体を得た。最終的に得られたα−ピロリン酸カルシウム粉体の平均粒径(メジアン径)は2.26μmであった。
【0031】
(実験4):分級後(焼成前)の平均粒径(メジアン径)が33.7μmのリン酸水素カルシウム無水物(太平化学産業株式会社製)を用いた以外は実験1と同じ手順によって、β−ピロリン酸カルシウム粉体を得た。最終的に得られたβ−ピロリン酸カルシウム粉体の平均粒径(メジアン径)は2.96μmであった。
【0032】
(実験5):平均粒径(メジアン径)が30μmのリン酸水素カルシウム無水物(太平化学産業株式会社製)を粉砕後に900℃で焼成して[焼成前の平均粒径(メジアン径)は1.74μm]、β−ピロリン酸カルシウム粉体を得た。最終的に得られたβ−ピロリン酸カルシウム粉体の平均粒径(メジアン径)は4.58μmであった。
【0033】
(実験6):平均粒径(メジアン径)が30μmのリン酸水素カルシウム無水物(太平化学産業株式会社製)を、カウンタージェットミルで粉砕して、平均粒径(メジアン径)が2.75μmのリン酸水素カルシウム無水物粉体を得た。
【0034】
上記で得られた各粉体(実験1〜5のピロリン酸カルシウム粉体、実験6のリン酸水素カルシウム無水物粉体)を、レーザ回折式粒度分布測定装置(「SALD−2100」 商品名 島津製作所製)で測定したときの累積粒径[D90、D50(メジアン径)、D10]、(D90/D10)を、焼成前のリン酸水素カルシウム無水物粉体の平均粒径(メジアン径)、および焼成温度と共に、下記表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実験1〜5で得られたピロリン酸カルシウム粉体における粒度分布[粒径と相対粒子量(%:体積基準)の関係を、夫々図1〜5(棒グラフ)に示す。また実験6で得られたリン酸水素カルシウム無水物粉体における粒度分布を図6(棒グラフ)に示す。
【0037】
これらの結果から、次のように考察できる。まず実験1〜3の例は、本発明で規定する要件を満足するピロリン酸カルシウム粉体であり、粒度分布がシャープとなっている(図1〜3)。これに対して、実験4〜6の例は、本発明で規定する要件を満足しない粉体(ピロリン酸カルシウム粉体またはリン酸水素カルシウム無水物粉体)であり、その粒度分布が2山の状態(図4)またはブロードな状態(図5、6)となっていることが分かる。
【0038】
[実施例2]
実施例1の実験1、2で得られた各ピロリン酸カルシウム粉体を、N,N−ジメチルホルムアミド45mLに、様々な割合(0.05〜1.0質量%:粉体分散樹脂フィルム全体に対する割合)で添加して分散させ、4,4−ジアミノジフェニルエーテル3.35gを溶解させた。この溶解液に、ピロメリット酸無水物3.65gをゆっくりと添加して30分撹拌し、ポリアミック酸溶液(固形分:14質量%)を得た。
【0039】
上記で得られた各溶液を、ポリエステルフィルム上に薄く伸ばし、熱風乾燥機を用いて70℃で乾燥させた後、350℃に加熱してイミド化し、各種ポリイミドフィルム(厚さ:25μm)を得た。
【0040】
上記で得られた各種ポリイミドフィルムを用い、下記の方法に従って易滑性を評価した。尚、易滑性評価方法は、ポリイミドフィルム中のフィラーの分散状態を評価するものであり、下記の方法によって求められる角度(傾斜角度)が小さい方が、滑り易いこと(フィラーが均一に分散されていること)を示すものである。
【0041】
(易滑性評価方法)
図7(易滑性評価方法の概要を示す説明図)に示す様に、万能試験機(「オートグラフ」:商品名 島津製作所製)のクロスヘッドと、金属板の一端を糸でつなぎ、その金属板の上に、ガラスを両面テープで固定した。このガラスの上面と、重さ10gの正方形の金属片(金属製の摺動片:20mm×20mm×3mm)の下面に、上記で得られた各種ポリイミドフィルムを両面テープで固定した。金属片をガラス上に置き、クロスヘッドを毎分50mmの速さで引き上げた。金属片が滑り落ちたときの金属板の高さ(糸でつながれた金属板の一端までの高さ)を測定し、逆三角関数を用いてそのときの角度θ(傾斜角度)を測定した。このときの傾斜角度θが、50°以下のときに合格と判断した。
【0042】
その結果を、ピロリン酸カルシウム粉体の種類および添加量(質量%)と共に、下記表2に示す。尚、下記表2には、ピロリン酸カルシウム粉体を添加していないポリイミドフィルムを用いて易滑性の評価を行ったときの結果(ブランク)についても示した。また、表2中「滑らず」とは、傾斜角度θを90°の状態にしても、滑らなかったことを意味する。
【0043】
【表2】

【0044】
この結果から明らかなように、本発明のピロリン酸カルシウム粉体は、樹脂フィルムのフィラーとして用いたときに、良好な均一分散性が達成されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ回折式粒度分布測定装置で測定したときの累積粒径を、微細側から累積10%のときの粒径(μm)をD10、微細側から累積50%のときの粒径(μm)をD50、微細側から累積90%のときの粒径(μm)をD90と夫々表したとき、前記D90とD10の比(D90/D10)が6以下となる粒度分布を有すると共に、D50が1〜5μmであることを特徴とするピロリン酸カルシウム粉体。
【請求項2】
樹脂用フィラーとして用いられるものである請求項1に記載のピロリン酸カルシウム粉体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のピロリン酸カルシウム粉体を製造するに当り、風力分級によって分級された、D50が20μm以下のリン酸水素カルシウム無水物粉末を、400〜1350℃の温度範囲で焼成した後、粉砕機で粉砕することによって、前記D50が1〜5μmとなるようにすることを特徴とするピロリン酸カルシウム粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のピロリン酸カルシウム粉体を、樹脂フィルム中に均一に分散したものである樹脂フィルム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180229(P2012−180229A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42825(P2011−42825)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(591040557)太平化学産業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】