説明

ピロロベンゾジアゼピン

本発明は、式(T)の化合物[式中、R2は、CHR2Aであり、R2Aは、H、R、CO2R、COR、CHO、CO2H及びハロから独立に選択され;R6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;R7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;R8は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;Rは、場合によって置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基及びC5-20アリール基から独立に選択され;或いはこの化合物は、式(M)からなる各単量体との二量体であり、ここで、各単量体のR7基又はR8基は、一緒になって、単量体を連結する式-X-R”-X-を有する二量体架橋を形成しており;R”は、C3-12アルキレン基であり、この鎖は、一つ又は複数のヘテロ原子、例えばO、S、N(H)及び/又は芳香環、例えばベンゼン若しくはピリジンによって中断されていてよく;並びに各Xは、O、S又はN(H)から独立に選択され;或いはR6からR9までの隣接基の任意のペアが、一緒になって、基-O-(CH2)p-O-を形成しており、ここで、pは、1又は2である。]並びにその塩及び溶媒和物を含む、ある特定のピロロベンゾジアゼピン(PBD)、特にC2置換を有するピロロベンゾジアゼピン二量体並びに他のPBD化合物を調製するための中間体としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、特にC2置換を有するピロロベンゾジアゼピン二量体に関する。
【0002】
本出願は、2008年10月17日付出願のGB 0819097.7に対して優先権を主張し、この内容は、参照によって完全に本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
いくつかのピロロベンゾジアゼピン(PBD)は、DNAの特定の配列を認識してこれに結合する能力を有する。好ましい配列は、PuGPuである。最初のPBD抗腫瘍抗生物質であるアントラマイシンは、1965年に発見された(Leimgruberら、J. Am. Chem. Soc., 87, 5793-5795 (1965);Leimgruberら、J. Am. Chem. Soc., 87, 5791-5793 (1965))。それ以来、天然に存在する多くのPBDが報告されており、種々の類似体に対して10種類を超える合成経路が開発されている(Thurstonら、Chem. Rev. 1994, 433-465 (1994))。ファミリーのメンバーには、アッベイマイシン(abbeymycin)(Hochlowskiら、J. Antibiotics, 40, 145-148 (1987))、チカマイシン(Konishiら、J. Antibiotics, 37, 200-206 (1984))、DC-81(日本国特許第58-180 487号;Thurstonら、Chem. Brit., 26, 767-772 (1990);Boseら、Tetrahedron, 48, 751-758 (1992))、マゼトラマイシン(Kuminotoら、J. Antibiotics, 33, 665-667 (1980))、ネオトラマイシンA及びB(Takeuchiら、J. Antibiotics, 29, 93-96 (1976))、ポロトラマイシン(Tsunakawaら、J. Antibiotics, 41, 1366-1373 (1988))、プロトラカルシン(Shimizuら、J. Antibiotics, 29, 2492-2503 (1982);Langley及びThurston, J. Org. Chem., 52, 91-97 (1987))、シバノマイシン(sibanomicin)(DC-102)(Haraら、J. Antibiotics, 41, 702-704 (1988);Itohら、J. Antibiotics, 41, 1281-1284 (1988))、シビロマイシン(Leberら、J. Am. Chem. Soc., 110, 2992-2993 (1988))並びにトママイシン(Arimaら、J. Antibiotics, 25, 437-444 (1972))が含まれる。PBDは、一般構造:
【化1】

【0004】
を有する。
【0005】
PBDは、それらの芳香族A環及びピロロC環の両方において、置換基の数、タイプ及び位置並びにC環の飽和度が異なっている。B-環には、DNAのアルキル化に関与する求電子中心であるN10-C11位に、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))又はカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかが存在する。知られている天然物はすべて、キラルなC11a位に(S)-配置を有し、この配置がそれらに、C環からA環に向かって見た場合に右回りのねじれを与えている。これによって、B型DNAの副溝との等螺旋性(isohelicity)を得るのに適切な三次元形状が与えられ、結合部位においてぴったりと適合するようになる(Kohn, In Antibiotics III. Springer-Verlag, New York, pp. 3-11 (1975);Hurley及びNeedham-VanDevanter, Acc. Chem. Res., 19, 230-237 (1986))。副溝において付加物を形成するそれらの能力のおかげで、それらはDNAプロセシングを妨害することが可能になり、よって、それらを抗腫瘍薬として使用することが可能になる。
【0006】
二量体のピロロベンゾジアゼピンは、それらが副溝においてDNAを架橋する能力を所有し、それによって細胞毒性を増加させることができるという点において、単量体のピロロベンゾジアゼピンに対する利点を提供する。
【0007】
特に有利なピロロベンゾジアゼピン化合物は、Gregsonら(Chem. Commun. 1999, 797-798)によって、化合物1として記載されており、Gregsonら(J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174)によって、化合物4aとして記載されている。SJG-136としても知られているこの化合物を、以下に示す。
【化2】

【0008】
SJG-136はまた、本発明者らのうちの幾人かによって、WO 00/12508に記載されており、相当するビス重亜硫酸塩付加物(SJG-720など)は、本発明者らのうちの幾人かによって、WO 2005/042535に記載されている。
【化3】

【0009】
しかし、本発明者らは、上記に引用の参照において記載されているようなSJG-136の合成に伴う困難を見出している。例えば、WO 2006/111759において、合成には非常に多数のステップが含まれており、このことが、生成物を合成するという実験的な困難を増大させるだけでなく、潜在的な収率を低下させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、SJG-136及びSJG-720並びに類縁化合物を調製する方法であって、より少ないステップを有する及び/又は最終生成物の収率を増加させる改良された方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般的な態様では、本発明は、化合物(M)
【化4】

【0012】
[式中、
R2は、CHR2Aであり、R2Aは、H、R、CO2R、COR、CHO、CO2H及びハロから独立に選択され;
R6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;
R7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;
R8は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;
Rは、場合によって置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基及びC5-20アリール基から独立に選択され;
或いはこの化合物は、式(M)からなる各単量体との二量体であり、ここで、各単量体のR7基又はR8基は、一緒になって、単量体を連結する式-X-R”-X-を有する二量体架橋を形成しており;
R”は、C3-12アルキレン基であり、この鎖は、一つ又は複数のヘテロ原子、例えばO、S、N(H)及び/又は芳香環、例えばベンゼン若しくはピリジンによって中断されていてよく;
並びに各Xは、O、S又はN(H)から独立に選択され;
或いはR6からR9までの隣接基の任意のペアが、一緒になって、基-O-(CH2)p-O-を形成しており、ここで、pは、1又は2である。]並びにその塩及び溶媒和物
の調製に使用するための新規な中間体を提供する。
【0013】
好ましい実施形態では、(M)は、式(A)
【化5】

【0014】
[式中、R2’、R6’、R7’、R9’及びX’は、それぞれR2、R6、R7、R9及びXと同一の基から独立に選択される。]
の化合物である。
【0015】
一実施形態では、本発明は、SJG-136及びその前駆体の調製に使用するための新規な中間体を提供する。
【化6】

【0016】
本発明の一態様では、式(T)
【化7】

【0017】
[式中、R2、R6、R7、R8及びR9は、式(M)の化合物並びにその塩及び溶媒和物に従って、定義されている通りである。]
の化合物が提供される。(T)は、(M)を調製するための方法において、前駆体としての使用を見出している。
【0018】
好ましい実施形態では、(T)は、式(S)
【化8】

【0019】
[式中、R2’、R6’、R7’、R9’及びX’は、それぞれR2、R6、R7、R9及びXと同一の基から独立に選択される。]
の化合物である。
【0020】
一実施形態では、(T)は、化合物(8)
【化9】

【0021】
である。
【0022】
本発明の一態様では、式(O)
【化10】

【0023】
[式中、R2、R6、R7、R8及びR9は、式(M)の化合物並びにその塩及び溶媒和物に従って、定義されている通りである。]
の化合物が提供される。(O)は、(M)を調製するための、好ましくは(T)を経由した方法及び(T)を調製するための方法において、前駆体としての使用を見出している。
【0024】
好ましい実施形態では、(O)は、式(B)
【化11】

【0025】
[式中、R2’、R6’、R7’、R9’及びX’は、それぞれR2、R6、R7、R9及びXと同一の基から独立に選択される。]
の化合物である。
【0026】
一実施形態では、(O)は、化合物(7)
【化12】

【0027】
である。
【0028】
一態様では、本発明は、式(M)の化合物を調製するための方法であって、式(T)の化合物を還元剤と反応させるステップを含む方法を提供する。一実施形態では、本方法は、式(T)の化合物を還元剤と反応させ、次いで、還元生成物をシリカ又は有機酸と反応させるステップを含む。
【0029】
別の態様では、本発明は、式(T)の化合物を調製するための方法であって、(O)のアミド窒素をSEMで保護するステップを含む方法を提供する。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、化合物式(O)を調製するための方法であって、式(X)の化合物を式(N)の化合物と反応させるステップを含む方法を提供する。ここで、(X)及び(N)は、
【化13】

【0031】
であり、
R2、R6、R7、R8及びR9は、式(M)の化合物に従って、定義されている通りである。
【0032】
別の態様では、本発明は、式((T)の化合物を調製するための方法であって、(V)を基R2及び/又は基R2’を含むイリドと反応させるステップを含む方法を提供する。ここで、(V)は、
【化14】

【0033】
であり、
R6、R7、R8及びR9は、式(M)の化合物に従って、定義されている通りである。
【0034】
好ましい実施形態では、(V)は、式(W)
【化15】

【0035】
[式中、R6’、R7’、R9’及びX’は、それぞれR6、R7、R9及びXと同一の基から独立に選択される。]
の化合物である。
【0036】
本発明の一態様では、(M)を調製するための方法であって、以上に記載されているような、本発明の一つ又は複数の方法を含む方法が提供される。
【0037】
本発明の別の態様では、化合物(M)から、式(P)
【化16】

【0038】
[式中、R2、R6、R7、R8及びR9は、式(M)の化合物に従って、定義されている通りである。]
の化合物を調製するための方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、SJG-136及びその類似体を合成するための改良された方法を提供する。本発明はまた、そのような方法に使用するための新規な中間体を提供する。これらの方法によって、SJG-136の調製に関して既に記載されている方法と比較して、より高収率で且つより短時間で、この化合物を調製することが可能となる。本発明の方法はまた、SJG-136を経由してSJG-720を調製するために使用され得る。本方法は、式(M)及び(P)の化合物の調製に対して、一般的な適用性を有する。
【0040】
化合物(M)、(N)、(O)及び(X)
本発明は、式(M)の化合物及び式(O)の化合物並びに式(T)の化合物を調製するための方法を提供する。
【0041】
本発明の一実施形態では、式(M)の化合物又は式(O)の化合物を調製するための方法における、式(X)の化合物の使用が提供される。
【0042】
一実施形態では、式(M)の化合物は、化合物(N)と化合物(X)との反応によって調製される。この反応は、パートナー(X)とパートナー(N)とのカップリングと称され得る。
【0043】
本発明はまた、以下に記載されているように、化合物(T)及び(P)を調製するための方法における、化合物(X)及び(N)の使用を提供する。
【0044】
化合物(X)を使用する化合物(M)の好ましい合成を、以下のスキーム1に示す。典型的には、化合物(X)を化合物(N)とカップリングして、化合物(O)を形成する。次いで、化合物(O)のアミド窒素原子をSEM基で保護して、化合物(T)を得、次いで、これを化合物(M)に変換することができる。必要ならば、化合物(M)を重亜硫酸塩と反応させて、化合物(P)を得ることができる。
【0045】
スキーム1
【化17】

【0046】
化合物(X)は、それがPBD標的分子におけるC-環の源であるため、C-環カップリングパートナーと称され得る。化合物(N)は、それがPBD標的分子におけるA-環の源であるため、A-環カップリングパートナーと称され得る。カップリングパートナーは、少なくとも、A-環源及びC-環源を一緒に連結するためのカップリング反応に使用される化合物である。
【0047】
本発明者らは、式(M)の化合物が、当技術分野において既に記載されている方法と比較して、より卓越した収率で、より少ないステップで且つより短時間で得られ得ることを確証した。特に、本発明者らは、化合物(A)、好ましくは化合物(M)の構造が、当技術分野において既に記載されている方法と比較して、より卓越した収率で、より少ないステップで且つより短時間で得られ得ることを確証した。
【0048】
本発明者らは、プロリンベースの式(X)の化合物を、化合物(M)又は化合物(O)などのPBD構造におけるC-環の源として使用することができることを見出した。有利には、化合物(X)は、PBD標的構造のC-環におけるC2置換基を後に形成する置換基を含む。その結果として、一度A-環及びC-環がつながると、B-環が形成され、ここでの官能基が「予め導入されて」いるため、PBDのC2位において修飾を必要としない。このアプローチは、PBD合成へのコンバージェントアプローチと称され得る。
【0049】
式(M)の化合物、特に一般式(A)の化合物の合成への以前のアプローチの多くは、必要とされるC2置換基を、合成のもっと後の段階で導入していた。当技術分野において記載されている方法は、典型的には、A-環及びC-環の結合後に、別個のステップとして、B-環の形成を伴う。Gregsonら(J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174)に記載されているような、ある一つのアプローチでは、C2位に必要とされる置換基は、A-環及びC-環が結合された後に導入される。次いで、B-環が、合成のもっと後の段階で形成される。このアプローチは、一般に、線形アプローチと称され得、合成のもっと後の段階で、C2置換基の導入を必要とし、合成的に複雑になり得る。その上、コンバージェントアプローチは、線形アプローチと比較して、より高収率で化合物(M)及び(O)を調製することを可能にし得る。
【0050】
しかし、線形合成では、必要とされるC2置換基の導入とB-環の形成との間に、保護基の付加及び除去などの、多くの官能基の変換を行わなければならない。これらのステップによって、合成の全体的な複雑さ及び長さが増す。
【0051】
本発明の使用及び方法は、当技術分野において教示されていないさらなる利点を有する。本発明者らは、化合物(X)を使用して、式(O)のPBD化合物を、1ステップで調製することができることを見出した。このステップは、B-環が形成されるのと同時に、A-環及びC-環を一緒に連結する。PBD化合物のB-環の調製への以前のアプローチは、典型的には、A-環及びC-環をつなぎ、官能基の変換(保護基の除去を含む)を行った後、次いで、B-環を形成するステップを含む、より多くのステップで行われていた。それ故に、本発明は、全体的な合成の複雑さ及び長さを減じる、化合物(M)及び(O)への経路を提供する。
【0052】
化合物(O)は、化合物(M)に変換することができる。一実施形態では、化合物(O)は、化合物(T)
【化18】

【0053】
[式中、R2、R6、R7、R8及びR9は、式(O)の化合物に従って、定義されている通りである。]
を経由して、化合物(M)に変換される。
【0054】
化合物(T)は、化合物(M)及び(P)を調製するための方法における、有用な前駆体として提供される。本発明はまた、(T)を調製するための方法を提供する。本発明者らは、SEM保護基を含む化合物(T)を使用して、化合物(M)に、良好な収率で且つ優れた再現性を伴って到達することができることを確証した。化合物(T)は、本明細書に記載されている線形戦略及びコンバージェント戦略における、共通の中間体としての使用も見出している。
【0055】
化合物(T)は、化合物(O)から、化合物(O)のアミド窒素原子をSEMで保護することによって調製することができる。化合物(O)は、ハロゲン化SEM、例えばSEM-Clと反応させることができる。塩基が使用され得る。塩基は、n-BuLiであってよい。
【0056】
一実施形態では、化合物(T)は、以上に記載されているような式(S)の化合物である。
【0057】
一実施形態では、化合物(S)は、以上に記載されているような化合物(8)である。
【0058】
化合物(M)は、化合物(T)から調製することができる。好ましくは、化合物(T)は、還元剤と反応させる。還元剤は、水素化ホウ素塩であってよい。好ましくは、還元剤は、水素化ホウ素リチウムである。或いは、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0059】
還元剤との処理後、還元生成物は、シリカ又はクエン酸若しくはギ酸などの有機酸で処理され得、これによって(M)を得る。
【0060】
本発明者らは、化合物(X)を使用すると、コンバージェント合成アプローチによって、化合物(M)及び(O)を調製することができ、追加的に、B-環が形成されるのと同時に、A-環及びC-環を連結することができるため、化合物(X)が、PBD化合物の合成における構成単位として特に適していることを見出した。
【0061】
C-環源を含む化合物(X)は、A-環源を含む適切に活性化されたカップリングパートナーと反応させる。適切に活性化されたカップリングパートナーは、化合物(N)である。好ましい実施形態では、化合物(N)は、化合物(C)
【化19】

【0062】
である。
【0063】
好ましい実施形態では、化合物(C)は、化合物(6)
【化20】

【0064】
である。
【0065】
本発明の他の態様では、化合物(M)又は化合物(O)を調製するための方法における、化合物(N)の使用が提供される。化合物(N)は、化合物(X)と反応させることが好ましい。
【0066】
それ故に、いくつかの態様では、本発明は、コンバージェント合成の利点と、A-環及びC-環を連結し、B-環を形成する、組み合わされた新規なステップとを兼備する。
【0067】
化合物(X)は、PBD化合物の合成における使用に関して既に報告されているプロリンベースの化合物に対する代替のプロリンベースのカップリングパートナーである。化合物(X)の使用は、それが調製するためのステップをほとんど必要としないため、特に有利である。本明細書に記載されているように、市販のBoc-保護されているtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリン(化合物(1))から、化合物(2)を経由して、2ステップのみで、化合物(X)を調製することができる。
【化21】

【0068】
化合物(2)をWittig型試薬などの適切なアルケン形成試薬で処理して、酸での後処理後に、例えば化合物(3)を含む化合物(X)を得ることができる。適したアルケン形成試薬は、当業者によく知られている。
【0069】
PBD化合物の調製における使用に関して、当技術分野において既に報告されている、プロリンベースの化合物の中には、多段階調製を必要とするものもある。例えば、WO 00/12508は、PBD化合物の合成に使用するための化合物プロリン誘導体(58)を開示している。化合物(58)が、A-環を含むパートナーとカップリングされる。
【化22】

【0070】
この化合物は、市販のtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンから、7ステップで得られる。一連の実施例では、WO 00/12508は、trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンからの化合物(58)の調製を開示している(実施例1(b)及び2(a)を参照のこと)。報告されている全収率は、12%である。これとは対照的に、本発明は、C-環カップリングパートナーを、市販の出発物質から2ステップで且つ41%の全収率で提供する。
【0071】
WO 2007/085930は、式(22)のプロリン誘導体からの、PBDベースの二量体化合物の調製を記載している。化合物(22)が、A-環を含むパートナーとカップリングされる。化合物(22)は、trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンから、5ステップで生成される(実施例13を参照のこと)。全収率は与えられていない。本発明は、WO 2007/085930において記載されている合成順序と比較して、より少ないステップで且つより短時間で、C-環カップリングパートナーを提供する。
【化23】

【0072】
一態様では、本発明は、式(O)の化合物及び式(T)の化合物を提供する。
【0073】
一実施形態では、式(M)の化合物は、(A)である。
【0074】
一実施形態では、式(N)の化合物は、(C)である。
【0075】
一実施形態では、式(O)の化合物は、(B)である。
【0076】
一実施形態では、式(T)の化合物は、(S)である。
【0077】
一実施形態では、式(X)の化合物は、(3)である。
【0078】
化合物(A)、(B)、(C)及び(Q)
本発明は、式(A)の化合物式(B)の化合物及び式(Q)の化合物を調製するための方法を提供する。
【0079】
本発明の一実施形態では、式(A)の化合物を調製するための方法における、式(X)の化合物の使用が提供される。本発明の一実施形態では、式(B)の化合物を調製するための方法における、式(X)の化合物の使用が提供される。
【0080】
一実施形態では、式(Q)の化合物を調製するための方法における、式(X)の化合物の使用が提供される。化合物(Q)は、典型的には、化合物(A)から形成される。
【0081】
好ましい実施形態では、化合物(A)は、SJG-136である。化合物(3)を使用するSJG-136の好ましい合成を、以下のスキーム2に示す。典型的には、化合物(3)を化合物(6)とカップリングして、化合物(7)を形成する。次いで、化合物(7)のアミド窒素原子をSEM基で保護して、化合物(8)を得、次いで、これを化合物SJG-136に変換することができる。必要ならば、SJG-136を重亜硫酸塩と反応させて、SJG-720を得ることができる。
【0082】
スキーム2
【化24】

【0083】
一実施形態では、式(A)の化合物は、化合物(C)と化合物(X)との反応によって調製される。この反応は、パートナー(X)とパートナー(C)とのカップリングと称され得る。
【0084】
本発明の別の態様では、式(B)の化合物が提供される。
【0085】
本発明の他の実施形態では、化合物(A)又は化合物(B)を調製するための方法における、化合物(C)の使用が提供される。化合物(C)は、化合物(X)と反応させることが好ましい。
【0086】
一実施形態では、式(A)の化合物は、SJG-136である。
【0087】
一実施形態では、式(B)の化合物は、化合物(7)である。
【0088】
一実施形態では、式(C)の化合物は、化合物(6)である。
【0089】
一実施形態では、式(X)の化合物は、化合物(3)である。
【0090】
一実施形態では、化合物(7)は、式(3)の化合物を式(6)の化合物と反応させることによって調製される。
【化25】

【0091】
化合物(V)
本発明は、式(T)の化合物及び式(M)の化合物を調製するための方法における、式(V)の化合物の使用を提供する。
【0092】
化合物(V)からの化合物(M)の合成を、以下のスキーム2aに示す。
【0093】
典型的には、化合物(V)をWittig型試薬などの適切なアルケン形成試薬で処理して、化合物(T)を得る。適したアルケン形成試薬は、当業者によく知られている。一実施形態では、アルケン形成試薬は、基R2を含むイリドである。次いで、化合物(T)を化合物(M)に変換することができる。必要ならば、化合物(M)を重亜硫酸塩と反応させて、化合物(P)を得ることができる。
【0094】
スキーム2a
【化26】

【0095】
化合物(V)は、適切なアルケン形成試薬と反応して、化合物(T)をもたらす。適したアルケン形成試薬には、Wittig型試薬(イリドなど)、Tebbe試薬及びHorner-Wadsworth-Emmons試薬が含まれる。
【0096】
一実施形態では、アルケン形成試薬は、イリドである。イリドは、ホスホニウムメチレンイリドであってよく、得られる生成物は、R2がCH2の場合、化合物(V)である。ホスホニウムメチレンイリドは、メチルトリフェニルホスホニウムハライド及びtert-ブトキシド塩などの塩基から生成され得る。好ましくは、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドが、カリウムtert-ブトキシドと組み合わせて使用される。R2がCH2以外の場合、式(V)の代替生成物は、当業者に知られているような適切なイリドの形を使用して、又は以上に論じられているものなどの代替試薬を使用して調製され得る。
【0097】
好ましくは、イリド形成ステップに使用される塩基は、新たに調製される。メチルトリフェニルホスホニウムハライドは、塩基に対して過剰である。
【0098】
反応生成物の混合物は、ホスホニウムベースのイリドの使用によって生成されるホスホニウムオキシド副生成物などの副生成物を除去するために、精製される。
【0099】
一実施形態では、式(V)の化合物は、(W)である。この実施形態では、Wは、同一であってよい基R2及び基R2’を含む。
【0100】
一実施形態では、化合物(V)は、(17)である。
【化27】

【0101】
一態様では、本発明は、式(V)の化合物は化合物(17)ではないという条件で、式(V)の化合物を提供する。一実施形態では、式(V)の化合物は化合物(17a)ではないという、さらなる条件が存在する。
【化28】

【0102】
優先選択
以下の優先選択は、以上に記載されているような、本発明のすべての態様に適用され得るか又はただ一つの態様に関連し得る。優先選択は、任意の組み合わせで、一緒に組み合わされ得る。
【0103】
R2及びR2’
R2は、CHR2Aであり、R2Aは、H、R、CO2R、COR、CHO、CO2H及びハロから独立に選択される。
【0104】
一実施形態では、R2Aは、H及びRから独立に選択される。
【0105】
一実施形態では、R2Aは、H、場合によって置換されている飽和C1-6アルキル及び場合によって置換されているC5-20アリールから独立に選択される。
【0106】
一実施形態では、R2Aは、H及び置換されていない飽和C1-6アルキルから独立に選択される。
【0107】
一実施形態では、R2Aは、H及びCH3から独立に選択される。
【0108】
一実施形態では、R2Aは、Hから独立に選択される。
【0109】
PBD化合物の内部では、基R2は、以下に示すいずれかの立体配置を有し得る。
【化29】

【0110】
一実施形態では、立体配置は、立体配置(I)である。
【0111】
化合物(X)中の基R2Aは、エキソ-二重結合についても同様に配置され得る。
【0112】
R2に関する優先選択は、R2’にも適用できる。
【0113】
一実施形態では、R2は、R2’と同一である。
【0114】
R6及びR6’
R6は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn-及びハロから独立に選択される。
【0115】
一実施形態では、R6は、H、OH、OR、SH、NH2、NO2及びハロから独立に選択される。
【0116】
一実施形態では、R6は、H及びハロから独立に選択される。
【0117】
一実施形態では、R6は、Hから独立に選択される。
【0118】
R6に関する優先選択は、R6’にも適用できる。
【0119】
一実施形態では、R6は、R6’と同一である。
【0120】
R7及びR7’
一実施形態では、R7は、独立にORである。
【0121】
一実施形態では、R7は、独立にORであり、Rは、場合によって置換されている飽和C1-6アルキルである。
【0122】
一実施形態では、R7は、独立にOMeである。
【0123】
一実施形態では、R7は、独立にOCH2Phである。
【0124】
R7に関する優先選択は、R7’にも適用できる。
【0125】
一実施形態では、R7は、R7’と同一である。
【0126】
一実施形態では、化合物は二量体であり、各単量体のR7基は、一緒になって、単量体を連結する式-X-R”-X-を有する二量体架橋を形成している。
【0127】
R8及びR8’
一実施形態では、R8は、独立にORである。
【0128】
一実施形態では、R8は、ORであり、Rは、独立に、場合によって置換されている飽和C1-6アルキルである。
【0129】
一実施形態では、R8は、独立にOMeである。
【0130】
一実施形態では、R8は、独立にOCH2Phである。
【0131】
R8に関する優先選択は、R8’にも適用できる。
【0132】
一実施形態では、R8は、R8’と同一である。
【0133】
一実施形態では、化合物は二量体であり、各単量体のR8基は、一緒になって、単量体を連結する式-X-R”-X-を有する二量体架橋を形成している。
【0134】
R9及びR9’
R9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn-及びハロから独立に選択される。
【0135】
一実施形態では、R9は、Hである。
【0136】
R9に関する優先選択は、R9’にも適用できる。
【0137】
一実施形態では、R9は、R9’と同一である。
【0138】
R”
R”は、C3-12アルキレン基であり、この鎖は、一つ又は複数のヘテロ原子、例えばO、S、N(H)及び/又は芳香環、例えばベンゼン若しくはピリジンによって中断されていてよい。
【0139】
一実施形態では、R”は、C3-12アルキレン基である。
【0140】
一実施形態では、R”は、C3、C5、C7、C9及びC11アルキレン基から選択される。
【0141】
一実施形態では、R”は、C3、C5及びC7アルキレン基から選択される。
【0142】
一実施形態では、R”は、C3及びC5アルキレン基から選択される。
【0143】
一実施形態では、R”は、C3アルキレン基である。
【0144】
一実施形態では、R”は、C5アルキレン基である。
【0145】
以上に掲載されているアルキレン基は、場合によって、一つ又は複数のヘテロ原子、例えばO、S、N(H)及び/又は芳香環、例えばベンゼン若しくはピリジンによって中断されていてよい。
【0146】
以上に掲載されているアルキレン基は、置換されていない直鎖状の脂肪族アルキレン基であり得る。
【0147】
X及びX’
Xは、O、S又はN(H)から選択される。好ましくは、XはOである。
【0148】
Xに関する優先選択は、X’にも適用できる。
【0149】
一実施形態では、X及びX’は、同一である。
【0150】
R及びR’
R及びR’は、それぞれ独立に、場合によって置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基及びC5-20アリール基から選択される。
【0151】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC1-12アルキルである。
【0152】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC1-6アルキルである。
【0153】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されている飽和C1-6アルキルである。
【0154】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されている飽和直鎖C1-6アルキルである。
【0155】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、CH3及びCH2CH3から選択される。
【0156】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、CH3である。
【0157】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC3-20ヘテロシクリルである。
【0158】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC3-7ヘテロシクリルである。
【0159】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC5-20アリール基である。
【0160】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC5-6ヘテロアリアリール基である。
【0161】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているC6-10カルボアリール基である。
【0162】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、場合によって置換されているフェニルである。
【0163】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、C1-7アルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシ、エステル、アシルオキシ、アミノ、アミド、ニトロ及びスルホから選択される一つ又は複数の基で置換されているフェニルである。
【0164】
一実施形態では、R及びR’は、それぞれ、アルコキシで置換されているフェニルである。
【0165】
一実施形態では、R及びR’は、同一である。
【0166】
一実施形態では、以上に掲載されている好ましいR及びR’基は、置換されていないことがある。
【0167】
化合物(M)及び(O)の合成の好ましい方法
化合物(M)は、化合物(X)及び化合物(N)から調製することができる。化合物(O)は、化合物(X)と化合物(N)との反応によって調製することができる。化合物(M)は、化合物(O)から調製することができる。
【0168】
化合物(M)は、化合物(O)から調製することができる。好ましくは、化合物(M)は、化合物(O)から化合物(T)を経由して調製される。
【0169】
化合物(7)と(3)との反応に関して以下に述べられている優先選択は、他に特に逆の記述がない限り、一般に、化合物(X)と化合物(N)との反応に適用できる。化合物(8)の調製に関する優先選択は、化合物(O)から化合物(T)の調製に、同様に適用できる。
【0170】
化合物(A)及び(B)の合成の好ましい方法
化合物(B)は、化合物(X)と化合物(C)との反応によって調製することができる。
【0171】
化合物(7)と(3)との反応に関して以下に述べられている優先選択は、他に特に逆の記述がない限り、一般に、化合物(X)と化合物(C)との反応に適用できる。
【0172】
特に、反応は、以下に記載されているように、高温で行われることが好ましい。
【0173】
化合物(A)は、化合物(B)から調製することができる。好ましくは、化合物(A)は、化合物(B)から化合物(S)を経由して調製される。
【0174】
化合物(7)から化合物(8)を経由したSJG-136の調製に関して以下に述べられている優先選択は、他に特に逆の記述がない限り、一般に、化合物(T)を経由した化合物(M)の調製に適用できる。
【0175】
SJG-136
本発明の一態様では、SJG-136を調製する方法が提供される。
【0176】
SJG-136は、化合物(8)から調製することができる。好ましくは、化合物(8)は、還元剤と反応させる。還元剤は、水素化ホウ素塩であってよい。好ましくは、還元剤は、水素化ホウ素リチウムである。或いは、還元剤は、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0177】
反応は、過剰の還元剤を加えることによって完了し得る。使用される還元剤の量は、3当量以上、5当量以上又は10当量以上であってよい。還元剤は、反応の間に、1バッチ分をまとめて又は分けて加えることができる。
【0178】
反応は、以下に示すSEMカルビノールアミン化合物(24)
【化30】

【0179】
を経由して進行すると考えられる。
【0180】
少量の化合物(24)を、生成物の混合物からクロマトグラフィー後に回収することができる。中間体(24)を単離せずに、還元ステップ後にSEM脱保護剤で処理して、イミン生成物を得る(SJG-136)ことが好ましい。好ましくは、化合物(24)は、その調製又は単離から24時間以内に使用される。最も好ましくは、中間体(24)は、その調製又は単離から4時間以内、2時間以内又は1時間以内に使用される。
【0181】
水素化ホウ素リチウムは、水素化ホウ素ナトリウムよりも強力な還元剤であるため、還元反応をより速い速度で進行させることができる。結果として、生成物は、過還元を非常に受けやすいイミン形に変換される前に、より早く単離され得る。
【0182】
還元ステップの生成物は、窒素SEM保護基を除去することができる試薬で処理され得る。シリカが使用され得る。或いは、クエン酸又はギ酸などの有機酸が使用され得る。
【0183】
化合物(8)
本発明は、SJG-136を調製するための方法に使用するための、式(8)の化合物を提供する。
【0184】
化合物(8)は、化合物(7)から、化合物(7)のアミド窒素原子をSEMで保護することによって調製することができる。化合物(7)は、塩基の存在下で、SEM-Clで処理され得る。塩基は、n-BuLiであってよい。
【0185】
化合物(7)から化合物(8)を形成するための反応は、水分感受性である。最高収率は、この反応において、乾燥溶媒及び乾燥ガラス器具類に加えて、新鮮な試薬が使用される場合に得られる。この収率は、化合物(7)が完全に乾燥される場合にも増加する。
【0186】
或いは、化合物(8)は、化合物(18)から調製することができる。化合物(18)は、メチレンイリドで処理され得る。イリドは、ホスホニウムメチレンイリドであってよい。イリドは、メチルトリフェニルホスホニウムハライド及びtert-ブトキシド塩などの塩基から生成され得る。好ましくは、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドが、カリウムtert-ブトキシドと組み合わせて使用される。
【0187】
好ましくは、イリド形成ステップに使用される塩基は、新たに調製される。メチルトリフェニルホスホニウムハライドは、塩基に対して過剰である。
【0188】
反応生成物の混合物は、ホスホニウムベースのイリドの使用によって生成されるホスホニウムオキシド副生成物などの副生成物を除去するために、精製される。
【0189】
化合物(7)
本発明は、SJG-136の調製に使用するための、式(7)の化合物を提供する。化合物(7)は、式(8)の化合物の調製における使用も見出すことができる。
【0190】
化合物(7)は、式(3)の化合物を式(6)の化合物と反応させることによって調製することができる。好ましくは、反応は、高温で行われる。反応は、50℃以上、80℃以上、100℃以上又は110℃以上で行われ得る。好ましくは、反応は、110℃以上で行われる。適した反応溶媒は、DMSOである。
【0191】
塩基が、反応に使用され得る。塩基は、DIPEAなどの有機塩基であってよい。
【0192】
反応の進行は、LC-MSによってモニターされ得る。
【0193】
本発明者らは、反応が、110℃以上の好ましい反応温度で、約30分後に完了まで進むことを見出した。
【0194】
Cooperは、代替のプロリンカップリングパートナー及び5-炭素アルキレンリンカーを有する化合物(6)の類似体を使用したカップリング反応を報告している。反応混合物は、100-120℃で4時間加熱されており、この時間は、化合物(3)及び(6)の反応に必要な時間に比べてはるかに長い。それ故に、化合物(3)及び(6)は、既に報告されているよりも短時間でプロリンを含む二量体構造をもたらすための、より好ましいカップリングパートナーである。
【0195】
最終ステップとして、反応生成物は、適切な溶媒中で粉砕することよって、さらに精製され得る。アセトニトリルが使用され得る。しかし、本発明者らが、ろ過及び洗浄された生成物を、化合物(8)の調製に直接使用することができることを見出したため、このステップは必須ではない。
【0196】
粉砕した後、生成物は洗浄され得る。ジエチルエーテルが使用され得る。
【0197】
(8)の形成が水分感受性であるため、化合物(7)は、化合物(8)の調製に使用する前に、完全に乾燥されるべきである。
【0198】
化合物(6)
本発明は、SJG-136の調製における、式(6)の化合物の使用を提供する。化合物(6)は、式(7)及び(8)の化合物の調製における使用も見出すことができる。
【0199】
化合物(6)は、化合物(5)から調製することができる。化合物(5)は、塩基の存在下で、トリホスゲンと反応させることができる。塩基は、ピリジン又はTEAであってよい。好ましくは、ピリジンが使用される。
【0200】
化合物(5)は、トリホスゲンと、還流下で反応させることができる。
【0201】
本発明者らは、化合物(5)が相対的に不溶性であるため、化合物(5)が微粉として使用される場合に、(5)とトリホスゲンとの反応が最適に行われることを見出した。典型的には、(5)は、固体を非常に細かく粉砕することによって、反応用に調製され得る。
【0202】
反応は、還流下で行われ得る。好ましくは、還流反応は、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間又は少なくとも24時間行われる。
【0203】
この反応はまた、5-炭素アルキレンリンカーを有する類縁基質に関して、Cooperによって記載されている。
【0204】
化合物(5)
本発明は、SJG-136の調製における、式(5)の化合物の使用を提供する。化合物(5)は、式(6)、(7)及び(8)の化合物の調製における使用も見出すことができる。
【化31】

【0205】
化合物(5)は、化合物(4)から調製することができる。化合物(5)は、化合物(4)のニトロ基を還元することによって調製することができる。
【0206】
化合物(4)は、水素及び金属触媒を使用して還元することができる。反応は、例えば、Parr装置を使用して、加圧下で行われ得る。触媒は、パラジウム炭素触媒であってよい。反応は、40psi以上(約275kPa以上)、好ましくは約45psi(約310kPa)で行われ得る。
【0207】
好ましくは、化合物(4)は、水素添加前に塩基水溶液で処理される。反応は、水性条件下で行われ得る。
【0208】
DMFは、反応溶媒として使用することができる。しかし、化合物(6)の調製における生成物の使用は、トリホスゲンの使用を伴い、トリホスゲンは、混入しているDMFとも反応してしまうため、この溶媒を最終生成物から除去するために注意が払われなければならない。
【0209】
反応において、水素の取込みが終わると、触媒は、ろ過によって除去することができる。次いで、ろ液を、例えばHCl水溶液で酸性にし、得られた沈殿を収集し、真空中で乾燥され得る。五酸化リンが、その間の乾燥試薬として使用され得る。
【0210】
Cooperは、化合物(4)に類似する化合物の、エタノール及び酢酸エチル中での水素添加を既に報告している(Cooperは、5-炭素アルキレンリンカーを有する化合物を記載している)。しかし、これらの条件下で、反応の収率は、わずか15%にすぎなかった。これとは対照的に、本発明の方法は、化合物(5)を、化合物(4)から定量的な収率で得ることを可能にする。
【0211】
化合物(4)
式(4)の化合物の合成は、本出願人の以前の出願であるWO 2006/111759に記載されている。その中に記載されているような化合物(4)の調製は、特に、参照によって本明細書に組み込まれる。この以前の出願における実施例1は、特に関連性がある。WO 00/012508も、化合物(4)の調製を記載しており、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0212】
手短に言うと、化合物(4)は、化合物(9)から誘導される。
【化32】

【0213】
化合物(9)を二量化して、化合物(10)を得る。
【化33】

【0214】
二量体(10)のニトロ化によって、化合物(11)を得る。
【化34】

【0215】
化合物(4)は、化合物(11)から、化合物(11)のメチルエステルの加水分解によって得られる。
【0216】
本発明の一実施形態では、化合物(4)、(8)及び(13)から(18)までのうちのいずれか一つ並びにSJG-136の調製は、以上に記載されているステップ並びにWO 2006/111759及びWO 00/012508に開示されているステップのうちのいずれか一つを含む。
【0217】
化合物(3)
本発明は、SJG-136の調製における、式(3)の化合物の使用を提供する。化合物(2)は、化合物(7)及び(8)の調製における使用も見出すことができる。
【0218】
化合物(3)は、塩として使用することができる。塩酸塩が使用され得る。
【0219】
化合物(3)は、化合物(2)から調製することができる。化合物(2)は、メチレンイリドで処理され得る。続いて、アミノ-保護基が、初めの反応の生成物から除去され得る。
【0220】
イリドは、ホスホニウムメチレンイリドであってよい。イリドは、メチルトリフェニルホスホニウムハライド及びtert-ブトキシド塩などの塩基から生成され得る。好ましくは、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドが、カリウムtert-ブトキシドと組み合わせて使用される。
【0221】
好ましくは、イリド形成ステップに使用される塩基は、新たに調製される。メチルトリフェニルホスホニウムハライドは、塩基に対して過剰である。
【0222】
反応生成物の混合物は、ホスホニウムベースのイリドの使用によって生成されるホスホニウムオキシド副生成物などの副生成物を除去するために、精製される。
【0223】
本発明者らは、イリドを生成するための、Narukawaらによって記載されているような、BuLiの使用が、反応条件に、特に水分及び温度に感受性であることを見出した。代替案として、本発明者らは、tert-ブトキシド塩が、より扱いやすく、有利なことに、より卓越した収率をもたらすことを見出した。特に、カリウムtert-ブトキシドが、イリドを生成するために使用され得る。
【0224】
反応は、以下に示すBoc-保護されている酸(23)
【化35】

【0225】
を経由して進行する。
【0226】
化合物(23)を酸で処理して、窒素保護基を除去する。塩酸が使用される場合、反応生成物は、化合物(3)の塩酸塩である。
【0227】
化合物(23)は、必要ならば、市販源から得ることができる(CAS番号84348-38-9)。
【0228】
化合物(3)は、参照によって本明細書に組み込まれるWO 95/04718にも記載されている。それ故に、化合物(3)は、19ページの実施例1に記載され、11ページに論じられているように調製することができる。
【0229】
化合物(2)
本発明は、SJG-136の調製における、式(2)の化合物の使用を提供する。化合物(2)は、化合物(3)、(7)及び(8)の調製における使用も見出すことができる。
【0230】
化合物(2)は、化合物(1)から調製することができる。化合物(2)は、化合物(1)から、化合物(1)のヒドロキシル基を酸化することによって調製することができる。化合物(1)は、酸化ルテニウム及び過ヨウ素酸塩、好ましくはメタ過ヨウ素酸塩で酸化することができる。
【0231】
化合物(1)の酸化ルテニウム及び過ヨウ素酸塩での酸化は、Narukawa Y., Tetrahedron 1997, 53, 539-556において、既に記載されている。しかし、記載されている条件下で、反応は、非常に遅い速度で進行する。本発明者らは、反応において、酸化ルテニウムの当量を増加させると、反応速度が許容レベルに増加することを見出した。それ故に、酸化ルテニウムの量は、Narukawaに記載されているような0.001当量から、0.01当量まで増加させることができる。
【0232】
疑いを避けるために、当量は、反応に使用される化合物(1)のモル量に関して表現される。
【0233】
本発明者らは、酸化反応の温度を上昇させると、反応速度が許容レベルに増加することを見出した。それ故に、反応は、Narukawaに記載されている室温反応と比較して、35℃の温度で行うことができる。
【0234】
反応生成物は、再結晶によって精製され得る。しかし、本発明者らは、例えば、化合物(3)の調製において、粉砕後に得られる粗生成物が、使用されるのに十分純粋であることを見出した。このようにして、生成物の収率(65%)は、Narukawaによって報告されているもの(同じく65%)に匹敵する。
【0235】
反応は、LC-MSによってモニターされ得る。生成物及び出発物質がUV光下で相対的に目視できないことを考慮すると、UV検出方法は、一般にここでは役に立たないが、本発明者らは、それにもかかわらず、MSによって生成されるES-トレースが、反応の進行及び反応の完了を決定する際に有用であることを見出した。
【0236】
化合物(2)の代替調製は、US 2007/185336に記載されている。特に、4ページに記載されているような、N-Boc-L-ヒドロキシプロリンからN-Boc-ケト-L-プロリンへの酸化は、特に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0237】
化合物(1)は市販されている。化合物(2)も市販源から得ることができる。
【0238】
化合物(17)
本発明は、SJG-136の調製における、式(17)の化合物の使用を提供する。化合物(17)は、化合物(8)の調製における使用も見出すことができる。
【化36】

【0239】
化合物(17)は、化合物(16)を酸化することによって調製することができる。好ましくは、化合物(16)は、TEMPOで酸化される。
【0240】
TEMPOを介在させる酸化反応は、漂白剤の存在下で行うことができる。一実施形態では、漂白剤はTCCAである。
【0241】
代替の実施形態では、漂白剤は、次亜塩素酸塩であり、最も好ましくは、次亜塩素酸ナトリウムである。次亜塩素酸塩が反応混合物に加えられる場合、反応混合物の温度は、0から5℃までの範囲で行われる。
【0242】
化合物(16)は、Swern型酸化条件下で酸化され得る。それ故に、化合物(16)は、塩化オキサリルとDMSOとの混合物で処理され得る。塩化オキサリル及びDMSOは、化合物(16)を加える前に混ぜ合わせることができる。続いて、塩基を反応混合物に加えることができる。塩基は、有機塩基であってよく、最も好ましくはTEAである。
【0243】
化合物(16)
本発明は、SJG-136の調製における、式(16)の化合物の使用を提供する。化合物(16)は、化合物(8)及び(17)の調製における使用も見出すことができる。
【化37】

【0244】
化合物(16)は、化合物(15)のヒドロキシ-保護基を除去することによって調製することができる。好ましくは、化合物(15)は、TBAFで脱保護される。
【0245】
化合物(15)
本発明は、SJG-136の調製における、式(15)の化合物の使用を提供する。化合物(15)は、化合物(8)、(16)及び(17)の調製における使用も見出すことができる。
【化38】

【0246】
化合物(15)は、化合物(14)のアミド窒素原子をSEMで保護することによって調製することができる。化合物(14)は、塩基の存在下で、SEM-Clで処理され得る。塩基は、n-BuLiであってよい。化合物(14)は、最初に塩基で処理され得る。次いで、SEM-Clがその後に加えられ得る。或いは、塩基及びSEM-Clが、ほぼ同時に、化合物(14)に加えられ得る。反応は、エーテル溶媒中、好ましくはTHF中で行うことができる。
【0247】
化合物(14)
本発明は、SJG-136の調製における、式(14)の化合物の使用を提供する。化合物(14)は、化合物(8)、(15)、(16)及び(17)の調製における使用も見出すことができる。
【化39】

【0248】
化合物(14)は、化合物(13)から調製することができる。化合物(14)を調製する方法は、化合物(13)のヒドロキシ基をTBSで保護するステップを含む。好ましくは、化合物(13)は、塩基の存在下で、TBS-Clで処理される。好ましくは、塩基は有機塩基である。塩基は、イミダゾールであってよい。
【0249】
化合物(13)
本発明は、SJG-136の調製における、式(13)の化合物の使用を提供する。化合物(13)は、化合物(8)、(14)、(15)、(16)及び(17)の調製における使用も見出すことができる。
【化40】

【0250】
化合物(13)は、化合物(12)から調製することができる。化合物(13)を調製する方法は、化合物(12)を環化するステップを含む。
【0251】
本発明の好ましい実施形態では、化合物(12)は、触媒の存在下で、水素で処理され得る。触媒は、Pd/C触媒であってよい。反応は、大気圧を超える圧力で行われ得る。好ましくは、反応は、50psi(約345kPa)で行われる。Parr水素添加装置が使用され得る。
【0252】
化合物(12)は、最初に、触媒の存在下で、水素で処理され得る。続いて、ヒドラジンが加えられ得る。一実施形態では、反応混合物を精製して、触媒を除去した後に、ヒドラジンを反応物質に加える。典型的には、反応混合物は、固体触媒を除去するために、ろ過される。触媒物質の大部分を除去するために、二重ろ過が必要とされ得る。
【0253】
ヒドラジン水和物が、反応に使用され得る。反応は、還流下で行うことができる。エタノールが、反応のための溶媒として使用され得る。反応混合物の初めのろ過が、高温で行われることが好ましい。
【0254】
或いは、化合物(12)は、Raneyニッケル触媒の存在下で、ヒドラジンで処理され得る。好ましくは、反応温度は、30から85℃まで、より好ましくは、45から75℃まで、最も好ましくは、50から65℃までである。
【0255】
反応が還流下(約65℃)で行われ得る場合には、メタノールが反応中の溶媒として使用され得る。
【0256】
本発明者らは、Raneyニッケルとヒドラジンとの組合せは、Pd/C触媒を単独で用いた水素と比較して、より優れた結果をもたらすことを確証した。両方の方法は、類似したニトロ化合物についてWO 2006/111759に記載されている、亜ジチオン酸ナトリウムを介在させる反応と比較して、改良された収率をもたらす。亜ジチオン酸ナトリウムを介在させる還元は、本発明における使用を見出すことができるが、以上に記載されている方法が最も好ましい。
【0257】
既に、WO 2004/04396において、Pd/Cを水素とともに使用した後、HCl処理ステップを行う還元的環化が記載された。この方法は、化合物(12)を化合物(13)に変換するために採用され得る。しかし、この反応は、生成物のラセミ化を引き起こす恐れがあり、以上に記載されている方法が、結果として好ましい。
【0258】
化合物(12)
本発明は、SJG-136の調製における、式(12)の化合物の使用を提供する。化合物(12)は、式(8)、(13)、(14)、(15)、(16)及び(17)の化合物の調製における使用も見出すことができる。
【化41】

【0259】
化合物(12)は、化合物(4)から調製することができる。
【化42】

【0260】
化合物(12)は、化合物(4)をメチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートとカップリングすることによって調製することができる。好ましくは、カルボキシレートは、(2S,4R)-メチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートである。好ましくは、カルボキシレートの塩酸塩が使用される。パラ-トルエンスルホン酸(p-TSOH)塩も使用され得るが、これはそれほど好ましくない。
【0261】
化合物(12)は、最初に活性化剤で処理され得、相当する酸塩化化合物を得る。この化合物は、単離され、後に使用するために保存され得る。次いで、酸塩化物がメチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートに加えられ得る。
【0262】
活性化剤は、化合物(4)の活性なエステル形を生成するために加えられる。好ましくは、活性化剤は、塩化オキサリルである。
【0263】
好ましくは、カップリング反応は、塩基の存在下で行われる。塩基は、有機塩基であってよい。TEAが使用され得る。
【0264】
本発明者らは、化合物(11)からベンゾジアゼピンを含む化合物を調製する際に、化合物(12)を有利に使用することができることを確証した。化合物(12)は、化合物(14)及びその類似体を合成するための中間体として使用され得る。WO 2006/111759に開示されている経路とは対照的に、式(14)のベンゾジアゼピンを含む化合物は、化合物(12)から化合物(13)を経由して、2ステップで到達することができる。これとは対照的に、WO 2006/111759は、化合物(4)から5ステップでの、ベンゾジアゼピンを含む化合物の調製を記載している。
【0265】
SJG-720
SJG-720は、WO 2005/042535に記載されているような相互変換に対して抵抗性であるため、SJG-136の代替物としての使用を見出している。したがって、製剤に適している。
【0266】
SJG-136からのSJG-720の調製は、WO 2005/042535に詳しく記載されており、参照によって本明細書に完全に組み込まれる。特に、実施例1に言及されている。
【0267】
SJG-720の合成は、SJG-136又はそれらの類似体の溶液に、適切な重亜硫酸塩の溶液を加えた後、通常は精製ステップを伴う。
【0268】
ベンゾジアゼピン環を調製するための戦略
本発明は、式(M)の化合物、特にSJG-136を調製するための改良された方法を提供する。本発明はまた、当技術分野において既に記載されている方法と比較して、より少ないステップで、ベンゾジアゼピン環を調製することを可能にする。
【0269】
本明細書に記載されているように、PBD化合物中のベンゾジアゼピン環(B-環)の形成には、二つのアプローチが存在する。本明細書に記載されているコンバージェントアプローチにおいて、B-環は、A-環及びC-環が一緒に連結されるのと同時に形成され得る。本明細書に記載されている線形アプローチにおいて、B-環は、A-環及びC-環が一緒に連結された後に形成され得る。
【0270】
B-環を形成する両方の経路が、当技術分野において記載されている方法に対して改良されている。
【0271】
A-環及びC-環が連結された後のB-環形成
WO 2006/111759は、二量体構造におけるベンゾジアゼピン環の調製を記載している。環の初めの調製は、化合物(4)から出発し、これが化合物(18)とカップリングされて、化合物(19)を得る。
【化43】

【化44】

【0272】
次いで、化合物(19)のニトロ基を還元して、化合物(20)を得る。
【化45】

【0273】
次いで、化合物(20)は、シリル保護基を除去するために処理されて、化合物(21)を得る。
【化46】

【0274】
次いで、化合物(21)は、TEMPO及びBAIBでの処理によって、式(22)のベンゾジアゼピン二量体化合物に変換される。
【化47】

【0275】
化合物(22)は、C2位に一連の置換基を有するPBD化合物の調製に使用するために記載されている。
【0276】
本発明者らは、一対のベンゾジアゼピン環を含む二量体が、WO 2006/111759に記載されている方法と比較して、化合物(4)から、より卓越した収率で且つより少ないステップで調製することができることを確証した。
【0277】
それ故に、本明細書に記載されている好ましい線形方法は、式(13)のベンゾジアゼピンを含む化合物が、化合物(4)から2ステップで且つ79%の全収率で調製されることを可能にする。
【0278】
これとは対照的に、WO 2006/111759に記載されている、ベンゾジアゼピンを含む最初の化合物は化合物(22)であり、これは、化合物(4)から5ステップで且つ15%の全収率で得られている。
【0279】
A-環及びC-環が一緒に連結されると同時のB-環形成
本発明は、A-環及びC-環が一緒に連結されるのと同時に、PBD化合物中のB-環を調製するための方法を提供する。この単一ステップの収率は、本明細書に報告されているように50%である。一つの手法においてこれらのステップを組み合わせることによって、化合物(M)及び(O)の全体的な合成の複雑さが減り、これらのPBD化合物を調製するのに必要とされる全体的な時間が短縮される。
【0280】
コンバージェントアプローチ(convergent approach)
化合物(M)、(N)、(O)及び(X)(特に化合物(A)、(B)及び(C))に関して、以上に記載されているように、本発明は、PBD化合物、特にSJG-136を、PBDコア及びC-環C2置換基にコンバージェントアプローチを使用して調製するための方法を提供する。このアプローチは、標的PBD化合物を、他の経路と比較して、より短時間で且つより少ないステップでもたらすことができる。
【0281】
或いは、以下により詳しく記載されているように、SJG-136は、PBDコア及びC-環C2置換基に線形アプローチを使用して調製することができる。
【0282】
コンバージェントアプローチ及び線形アプローチは、化合物(M)を調製するために使用され得る。ここで及び以下に述べられている優先選択は、他に特に逆の記述がない限り、一般に、化合物(M)の調製に適用できる。
【0283】
線形アプローチ(linear approach)
SJG-136は、PBDコア及びC-環C2置換基に線形アプローチを使用して調製することができる。
【0284】
線形アプローチにおいてカギとなる戦略は、A-環及びC-環が連結された後及びB-環が形成される前又は後の、C2位におけるエキソ-二重結合の形成である。本発明は、必要とされるC2官能基の導入前に、B-環が形成される場合の方法を提供する。Gregsonら(J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174)に記載されているような、別のアプローチでは、C2位に必要とされる置換基は、A-環及びC-環が結合された後に導入され得る。次いで、B-環が、合成のもっと後の段階で形成される。
【0285】
線形アプローチの利点は、化合物(18)などの反応性の高い基質を調製することができ、これを、例えばWittigカップリングパートナーの適切な選択によって、一連の異なるC2官能化生成物に変換することが可能であることである。
【0286】
これとは対照的に、コンバージェントアプローチは、調製されるべきC2官能化生成物のそれぞれに対して、プロリンベースの異なる残基の調製が必要である。結果として、線形アプローチは、より拡張的な構造の領域を探究することができるが、コンバージェントアプローチは、標的とされる調製に最も適している。
【0287】
SJG-136の好ましい合成
本発明の一態様では、以上に記載されている一つ又は複数のステップを含む、SJG-136を調製する方法が提供される。好ましい実施形態では、SJG-136の調製は、以上に記載されている二つ以上のステップを含む。
【0288】
SJG-136は、複数ステップの合成で調製され得る。合成における中間体は、以上に論じられている一つ又は複数の化合物であり得る。
【0289】
SJG-136を調製する好ましい方法では、方法は、以下の方法:
(i)本明細書に記載されているように、化合物(7)のアミド窒素原子をSEMで保護することによる、化合物(8)の合成;
(ii)本明細書に記載されているように、化合物(6)を化合物(3)と反応させることによる、化合物(7)の合成;
(iii)本明細書に記載されているように、化合物(2)を反応させることによる、化合物(3)の合成;
(iv)本明細書に記載されているように、化合物(1)を酸化する、化合物(2)の合成;
(v)本明細書に記載されているように、化合物(5)を反応させることによる、化合物(6)の合成;
(vi)本明細書に記載されているように、化合物(4)のニトロ基を還元する、化合物(5)の合成;
(vii)本明細書に記載されているように、化合物(17)を反応させることによる、化合物(8)の合成;
(viii)本明細書に記載されているように、化合物(16)を酸化することによる、化合物(17)の合成;
(ix)本明細書に記載されているように、化合物(15)のヒドロキシ-保護基を除去することによる、化合物(16)の合成;
(x)本明細書に記載されているように、化合物(14)のアミド窒素原子をSEMで保護することによる、化合物(15)の合成;
(xi)本明細書に記載されているように、化合物(13)のヒドロキシ基をTBSで保護することによる、化合物(14)の合成;
(xii)本明細書に記載されているように、化合物(12)を環化することによる、化合物(13)の合成;
(xiii)本明細書に記載されているように、化合物(4)をメチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレートとカップリングすることによる、化合物(12)の合成;
(xiii)本明細書に記載されているように、化合物(8)を反応させることによる、SJG-136の合成
のうちの一つ又は複数を含む。
【0290】
一実施形態では、ステップ(i)から(vi)まで及び(xiii)は、SJG-136を調製するために組み合わせて使用され得る。この組合せは、SJG-136へのコンバージェントアプローチと称され得る。
【0291】
一実施形態では、ステップ(vii)から(xiii)までは、SJG-136を調製するために組み合わせて使用され得る。この組合せは、SJG-136への線形アプローチと称され得る。
【0292】
ステップ(i)から(vi)まで及び(xiii)が、SJG-136の調製において組み合わせて使用される場合、化合物(4)からの全収率は、当技術分野において報告されている収率と比較して、著しく増加する。コンバージェントアプローチによって、本発明は、SJG-136を、化合物(4)から5ステップで且つ23.5%の全収率で提供する。これと比較して、WO 00/12508は、化合物(4)から6ステップで且つ6.6%の全収率でのSJG-136の調製を記載している。
【0293】
ステップ(vii)から(xiii)までが、SJG-136の調製において組み合わせて使用される場合、化合物(4)からの全収率は、当技術分野において報告されている収率と比較して、著しく増加する。線形アプローチによって、本発明は、SJG-136を、化合物(4)から8ステップで且つ12.2%の全収率で提供する。これと比較して、Gregsonら(J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174)は、化合物(4)から8ステップで且つ8.6%の全収率でのSJG-136の調製を記載している。
【0294】
SJG-720の好ましい合成
本発明の一態様では、以上に記載されている一つ又は複数のステップを含む、SJG-720を調製する方法が提供される。
【0295】
SJG-720は、複数ステップの合成で調製され得る。合成における中間体は、以上に論じられている一つ又は複数の化合物であり得る。
【0296】
SJG-720を調製する好ましい方法では、方法は、以上に記載されているステップ(i)から(xiii)まで及びステップ(xiv):
(xiv)本明細書に記載されているように、SJG-136を重亜硫酸塩で処理することによる、SJG-720の合成
のうちの一つ又は複数を含む。
【0297】
一実施形態では、ステップ(i)から(vi)まで、(xiii)及び(xiv)は、SJG-720を調製するために組み合わせて使用され得る。
【0298】
一実施形態では、ステップ(vii)から(xiv)までは、SJG-720を調製するために組み合わせて使用され得る。
【0299】
以上に記載されているように、SJG-136は、当技術分野において記載されている方法と比較して、より少ないステップで且つより卓越した収率で調製することができる。SJG-720は、SJG-136から直接調製され、当技術分野において記載されている方法と比較して、同様に、より少ないステップで且つより卓越した収率で得ることができる。
【0300】
定義
本明細書において使用される「場合によって置換されている」というフレーズは、置換されていなくてもよい、又は置換されていてもよい親基に関する。
【0301】
他に特に規定がない限り、本明細書において使用される「置換されている」という用語は、一つ又は複数の置換基を有する親基に関する。「置換基」という用語は、本明細書において、従来の意味で使用され、親基に共有結合している化学部分、又は適切な場合には、縮合している化学部分を指す。幅広い種類の置換基がよく知られており、それらの形成及び種々の親基への導入のための方法もよく知られている。
【0302】
置換基の例を、以下により詳しく記載する。
【0303】
C1-7アルキル:本明細書において使用される「C1-7アルキル」という用語は、脂肪族又は脂環式であってよく、飽和又は不飽和(例えば、部分的に不飽和、完全に不飽和)であってよい、1から7個までの炭素原子を有する炭化水素化合物の1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することによって得られる1価の基に関する。それ故に、「アルキル」という用語は、以下に論じられているアルケニル、アルキニル、シクロアルキルなどのサブクラスを含む。
【0304】
飽和アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)及びヘプチル(C7)が含まれるが、これらに限定されない。
【0305】
飽和直鎖アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)及びn-ヘプチル(C7)が含まれるが、これらに限定されない。
【0306】
飽和分枝鎖アルキル基の例には、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)及びネオ-ペンチル(C5)が含まれる。
【0307】
C2-7アルケニル:本明細書において使用される「C2-7アルケニル」という用語は、一つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有するアルキル基に関する。
【0308】
不飽和アルケニル基の例には、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)及びヘキセニル(C6)が含まれるが、これらに限定されない。
【0309】
C2-7アルキニル:本明細書において使用される「C2-7アルキニル」という用語は、一つ又は複数の炭素-炭素三重結合を有するアルキル基に関する。
【0310】
不飽和アルキニル基の例には、エチニル(-C≡CH)及び2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が含まれるが、これらに限定されない。
【0311】
C3-7シクロアルキル:本明細書において使用される「C3-7シクロアルキル」という用語は、シクリル基でもあるアルキル基、すなわち、環状炭化水素(炭素環式)化合物の1個の脂環式環原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、3から7個までの環原子を含む3から7個までの炭素原子を有する1価の基に関する。
【0312】
シクロアルキル基の例には、以下から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されない。
【0313】
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)及びメチルシクロヘキサン(C7);
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)及びメチルシクロヘキセン(C7);並びに
飽和多環式炭化水素化合物:
ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)。
【0314】
C3-20ヘテロシクリル:本明細書において使用される「C3-20ヘテロシクリル」という用語は、複素環化合物の1個の環原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、3から20個までの環原子を有し、そのうちの1から10個までは環ヘテロ原子である1価の基に関する。好ましくは、それぞれの環は3から7個までの環原子を有し、そのうちの1から4個までは環ヘテロ原子である。
【0315】
この文脈において、接頭辞(例えば、C3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかにかかわらず、環原子の数又は環原子の数の範囲を意味する。例えば、本明細書において使用される「C5-6ヘテロシクリル」という用語は5又は6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。
【0316】
単環式ヘテロシクリル基の例には、以下から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されない。
【0317】
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロール又は3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)及びジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソキサゾール(C5)、ジヒドロイソキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C6)及びオキサチアン(チオキサン)(C6);並びに
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0318】
置換単環式ヘテロシクリル基の例には、環状の形の糖類、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース及びキシロフラノースなどのフラノース(C5)並びにアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース及びタロピラノースなどのピラノース(C6)から誘導されるものが含まれる。
【0319】
C5-20アリール:本明細書において使用される「C5-20アリール」という用語は、芳香族化合物の1個の芳香環原子から1個の水素原子を除去することによって得られる、3から20個までの環原子を有する1価の基に関する。好ましくは、それぞれの環は5から7個までの環原子を有する。
【0320】
この文脈において、接頭辞(例えば、C3-20、C5-7、C5-6など)は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかにかかわらず、環原子の数又は環原子の数の範囲を意味する。例えば、本明細書において使用される「C5-6アリール」という用語は、5又は6個の環原子を有するアリール基に関する。
【0321】
環原子は、「カルボアリール基」においてのように、すべて炭素原子であってよい。
【0322】
カルボアリール基の例には、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)及びピレン(C16)から誘導されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0323】
縮合環を含み、そのうちの少なくとも1個の環が芳香環であるアリール基の例には、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)及びアセアントレン(C16)から誘導される基が含まれるが、これらに限定されない。
【0324】
或いは、環原子は、「ヘテロアリール基」においてのように、一つ又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。単環式ヘテロアリール基の例には、以下から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されない。
【0325】
N1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6);
O1:フラン(オキソール)(C5);
S1:チオフェン(チオール)(C5);
N1O1:オキサゾール(C5)、イソキサゾール(C5)、イソキサジン(C6);
N2O1:オキサジアゾール(フラザン)(C5);
N3O1:オキサトリアゾール(C5);
N1S1:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5);
N2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6);
N3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6);及び
N4:テトラゾール(C5)。
【0326】
縮合環を含むヘテロアリールの例には、以下が含まれるが、それらに限定されない。
【0327】
ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、インドリジン(N1)、インドリン(N1)、イソインドリン(N1)、プリン(N4)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンズイミダゾール(N2)、インダゾール(N2)、ベンズオキサゾール(N1O1)、ベンズイソキサゾール(N1O1)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N2O1)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N1S1)、ベンゾチアジアゾール(N2S)から誘導されるC9(2個の縮合環を有する);
クロメン(O1)、イソクロメン(O1)、クロマン(O1)、イソクロマン(O1)、ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、キノリジン(N1)、ベンズオキサジン(N1O1)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)、シンノリン(N2)、フタラジン(N2)、ナフチリジン(N2)、プテリジン(N4)から誘導されるC10(2個の縮合環を有する);
ベンゾジアゼピン(N2)から誘導されるC11(2個の縮合環を有する);
カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)、カルボリン(N2)、ペリミジン(N2)、ピリドインドール(N2)から誘導されるC13(3個の縮合環を有する);及び
アクリジン(N1)、キサンテン(O1)、チオキサンテン(S1)、オキサントレン(O2)、フェノキサチイン(O1S1)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N1O1)、フェノチアジン(N1S1)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)から誘導されるC14(3個の縮合環を有する)。
【0328】
上記の基は、単独であるか他の置換基の一部であるかにかかわらず、それら自体が、それら自体及び以下に掲載されている追加の置換基から選択される一つ又は複数の基で、場合によって置換されていてよい。
【0329】
ハロ:-F、-Cl、-Br及び-I。
【0330】
ヒドロキシ:-OH。
【0331】
エーテル:-OR、ここで、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(以下に論じられているC1-7アルコキシ基とも称される)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも称される)又はC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも称される)であり、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0332】
アルコキシ:-OR、ここで、Rは、アルキル基、例えば、C1-7アルキル基である。C1-7アルコキシ基の例には、-OMe(メトキシ)、-OEt(エトキシ)、-O(nPr)(n-プロポキシ)、-O(iPr)(イソプロポキシ)、-O(nBu)(n-ブトキシ)、-O(sBu)(sec-ブトキシ)、-O(iBu)(イソブトキシ)及びO(tBu)(tert-ブトキシ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0333】
アセタール:-CH(OR1)(OR2)、ここで、R1及びR2は独立に、アセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基若しくはC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基であり、又は「環状」アセタール基の場合には、R1及びR2は、それらが結合している2個の酸素原子及びそれらが結合している炭素原子と一緒になって、4から8個までの環原子を有する複素環を形成している。アセタール基の例には、-CH(OMe)2、-CH(OEt)2及び-CH(OMe)(OEt)が含まれるが、これらに限定されない。
【0334】
ヘミアセタール:-CH(OH)(OR1)、ここで、R1は、ヘミアセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。ヘミアセタール基の例には、-CH(OH)(OMe)及び-CH(OH)(OEt)が含まれるが、これらに限定されない。
【0335】
ケタール:-CR(OR1)(OR2)、ここで、R1及びR2は、アセタールについて定義されている通りであり、Rは、水素以外のケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。ケタール基の例には、-C(Me)(OMe)2、-C(Me)(OEt)2、-C(Me)(OMe)(OEt)、-C(Et)(OMe)2、-C(Et)(OEt)2及び-C(Et)(OMe)(OEt)が含まれるが、これらに限定されない。
【0336】
ヘミケタール:-CR(OH)(OR1)、ここで、R1は、ヘミアセタールについて定義されている通りであり、Rは、水素以外のヘミケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。ヘミアセタール基の例には、-C(Me)(OH)(OMe)、-C(Et)(OH)(OMe)、-C(Me)(OH)(OEt)及び-C(Et)(OH)(OEt)が含まれるが、これらに限定されない。
【0337】
オキソ(ケト、-オン):=O。
【0338】
チオン(チオケトン):=S。
【0339】
イミノ(イミン):=NR、ここで、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、水素又はC1-7アルキル基である。エステル基の例には、=NH、=NMe、=NEt及び=NPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0340】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキシアルデヒド):-C(=O)H。
【0341】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここで、Rは、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシル又はC1-7アルカノイルとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも称される)又はC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも称される)であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例には、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(t-ブチリル)及び-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0342】
カルボキシ(カルボン酸):-C(=O)OH。
【0343】
チオカルボキシ(チオカルボン酸):-C(=S)SH。
【0344】
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):-C(=O)SH。
【0345】
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):-C(=S)OH。
【0346】
イミド酸:-C(=NH)OH。
【0347】
ヒドロキサム酸:-C(=NOH)OH。
【0348】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例には、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3及び-C(=O)OPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0349】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、ここで、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例には、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph及び-OC(=O)CH2Phが含まれるが、これらに限定されない。
【0350】
オキシカルボイルオキシ:-OC(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例には、-OC(=O)OCH3、-OC(=O)OCH2CH3、-OC(=O)OC(CH3)3及び-OC(=O)OPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0351】
アミノ:-NR1R2、ここで、R1及びR2は独立に、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノ又はジ-C1-7アルキルアミノとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基若しくはC5-20アリール基であり、好ましくは、H若しくはC1-7アルキル基であり、又は「環状」アミノ基の場合には、R1及びR2は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、4から8個までの環原子を有する複素環を形成している。アミノ基は、第一級(-NH2)、第二級(-NHR1)又は第三級(-NHR1R2)であってよく、カチオンの形において、第四級(-+NR1R2R3)であってよい。アミノ基の例には、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2及び-NHPhが含まれるが、これらに限定されない。環状アミノ基の例には、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ及びチオモルホリノが含まれるが、これらに限定されない。
【0352】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は独立に、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基である。アミド基の例には、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3及び-C(=O)N(CH2CH3)2のみならず、R1及びR2が、それらが結合している窒素原子と一緒になって、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル及びピペラジノカルボニルにおいてのような複素環構造を形成しているアミド基が含まれるが、これらに限定されない。
【0353】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2、ここで、R1及びR2は独立に、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基である。アミド基の例には、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2及び-C(=S)NHCH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0354】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、ここで、R1は、アミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、水素又はC1-7アルキル基であり、R2は、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、水素又はC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例には、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3及び-NHC(=O)Phが含まれるが、これらに限定されない。R1及びR2は一緒になって、例えばスクシンイミジル、マレイミジル及びフタルイミジル:
【化48】

【0355】
においてのように、環構造を形成していてよい。
【0356】
アミノカルボニルオキシ:-OC(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は独立に、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基である。アミノカルボニルオキシ基の例には、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NHMe、-OC(=O)NMe2及び-OC(=O)NEt2が含まれるが、これらに限定されない。
【0357】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3、ここで、R2及びR3は独立に、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基であり、R1は、ウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、水素又はC1-7アルキル基である。ウレイド基の例には、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2及び-NMeCONEt2が含まれるが、これらに限定されない。
【0358】
グアニジノ:-NH-C(=NH)NH2
【0359】
テトラゾリル:4個の窒素原子及び1個の炭素原子を有する5員芳香環、
【化49】

【0360】
イミノ:=NR、ここで、Rは、イミノ置換基、例えば、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはH又はC1-7アルキル基である。イミノ基の例には、=NH、=NMe及び=NEtが含まれるが、これらに限定されない。
【0361】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2、ここで、Rはそれぞれ、アミジン置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、H又はC1-7アルキル基である。アミジン基の例には、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2及び-C(=NMe)NMe2が含まれるが、これらに限定されない。
【0362】
ニトロ:-NO2
【0363】
ニトロソ:-NO。
【0364】
アジド:-N3
【0365】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0366】
イソシアノ:-NC。
【0367】
シアナート:-OCN。
【0368】
イソシアナート:-NCO。
【0369】
チオシアノ(チオシアナート):-SCN。
【0370】
イソチオシアノ(イソチオシアナート):-NCS。
【0371】
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0372】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここで、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも称される)、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例には、-SCH3及び-SCH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0373】
ジスルフィド:-SS-R、ここで、Rは、ジスルフィド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基(本明細書において、C1-7アルキルジスルフィドとも称される)である。C1-7アルキルジスルフィド基の例には、-SSCH3及び-SSCH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0374】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R、ここで、Rは、スルフィン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィン基の例には、-S(=O)CH3及び-S(=O)CH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0375】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R、ここで、Rは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基であり、例えば、フッ素化又は過フッ素化C1-7アルキル基を含む。スルホン基の例には、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3(エシル)、-S(=O)2C4F9(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2CH2CH2NH2(タウリル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4-ニトロフェニル(ノシル)、2-ナフタレンスルホネート(ナプシル)及び5-ジメチルアミノ-ナフタレン-1-イルスルホネート(ダンシル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0376】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
【0377】
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0378】
スルフィネート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR、ここで、Rは、スルフィネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィネート基の例には、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;メチルスルフィネート)及び-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;エチルスルフィネート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0379】
スルホネート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR、ここで、Rは、スルホネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホネート基の例には、-S(=O)2OCH3(メトキシスルホニル;メチルスルホネート)及び-S(=O)2OCH2CH3(エトキシスルホニル;エチルスルホネート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0380】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R、ここで、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例には、-OS(=O)CH3及び-OS(=O)CH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0381】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R、ここで、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例には、-OS(=O)2CH3(メシレート)及び-OS(=O)2CH2CH3(エシレート)が含まれるが、これらに限定されない。
【0382】
スルフェート:-OS(=O)2OR、ここで、Rは、スルフェート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフェート基の例には、-OS(=O)2OCH3及び-SO(=O)2OCH2CH3が含まれるが、これらに限定されない。
【0383】
スルファミル(スルファモイル;スルフィン酸アミド;スルフィンアミド):-S(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は独立に、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基である。スルファミル基の例には、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2及び-S(=O)NHPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0384】
スルホンアミド(スルフィナモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):-S(=O)2NR1R2、ここで、R1及びR2は独立に、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基である。スルホンアミド基の例には、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2及び-S(=O)2NHPhが含まれるが、これらに限定されない。
【0385】
スルファミノ:-NR1S(=O)2OH、ここで、R1は、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基である。スルファミノ基の例には、-NHS(=O)2OH及び-N(CH3)S(=O)2OHが含まれるが、これらに限定されない。
【0386】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここで、R1は、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基であり、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例には、-NHS(=O)2CH3及び-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれるが、これらに限定されない。
【0387】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R、ここで、R1は、アミノ基について定義されているようなアミノ置換基であり、Rは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例には、-NHS(=O)CH3及び-N(CH3)S(=O)C6H5が含まれるが、これらに限定されない。
【0388】
ホスフィノ(ホスフィン):-PR2、ここで、Rは、ホスフィノ置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、-H、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスフィノ基の例には、-PH2、-P(CH3)2、-P(CH2CH3)2、-P(t-Bu)2及び-P(Ph)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0389】
ホスホ:-P(=O)2
【0390】
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):-P(=O)R2、ここで、Rは、ホスフィニル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスフィニル基の例には、-P(=O)(CH3)2、-P(=O)(CH2CH3)2、-P(=O)(t-Bu)2及び-P(=O)(Ph)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0391】
ホスホン酸(ホスホノ):-P(=O)(OH)2
【0392】
ホスホネート(ホスホノエステル):-P(=O)(OR)2、ここで、Rは、ホスホネート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、-H、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスホネート基の例には、-P(=O)(OCH3)2、-P(=O)(OCH2CH3)2、P(=O)(O-t-Bu)2及び-P(=O)(OPh)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0393】
リン酸(ホスホノオキシ):-OP(=O)(OH)2
【0394】
ホスフェート(ホスホノオキシエステル):-OP(=O)(OR)2、ここで、Rは、ホスフェート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、-H、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスフェート基の例には、-OP(=O)(OCH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)2、-OP(=O)(O-t-Bu)2及び-OP(=O)(OPh)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0395】
亜リン酸:-OP(OH)2
【0396】
ホスファイト:-OP(OR)2、ここで、Rは、ホスファイト置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、-H、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスファイト基の例には、-OP(OCH3)2、-OP(OCH2CH3)2、-OP(O-t-Bu)2及び-OP(OPh)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0397】
ホスホルアミダイト:-OP(OR1)-NR22、ここで、R1及びR2は、ホスホルアミダイト置換基、例えば、-H、(場合によって置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、-H、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスホルアミダイト基の例には、-OP(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2及び-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0398】
ホスホルアミデート:-OP(=O)(OR1)-NR22、ここで、R1及びR2は、ホスホルアミデート置換基、例えば、-H、(場合によって置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基又はC5-20アリール基であり、好ましくは、-H、C1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスホルアミデート基の例には、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2及び-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が含まれるが、これらに限定されない。
【0399】
含まれる他の形
他に特に規定がない限り、上記に含まれているのは、これらの置換基のよく知られているイオン、塩、溶媒和物及び保護された形である。例えば、カルボン酸(-COOH)への言及には、そのアニオン(カルボキシレート)形(-COO-)、塩又は溶媒和物並びに従来の保護された形も含まれる。同様に、アミノ基への言及には、アミノ基のプロトン化形(-N+HR1R2)、塩又は溶媒和物、例えば塩酸塩、並びにアミノ基の従来の保護された形が含まれる。同様に、ヒドロキシル基への言及には、そのアニオン形(-O-)、塩又は溶媒和物並びに従来の保護された形も含まれる。
【0400】
一実施形態では、化合物(X)は、本明細書に記載されている方法において、塩として使用される。化合物(X)は、塩酸塩又はTFA塩、最も好ましくは、塩酸塩として使用され得る。
【0401】
略語
本明細書において、以下の略語が使用される。
【0402】
BAIB [ビス(アセトキシ)ヨード]ベンゼン
Bn ベンジル
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジ-イソ-プロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
IPA イソ-プロピルアルコール
SEM 2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBS tert-ブチルジメチルシリル
TCCA トリクロロイソシアヌル酸
TEMPO 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル
TEA トリエチルアミン
Tf トリフレート;トリフルオロメタンスルホニル
TLC 薄層クロマトグラフィー
TROC 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル
実験の詳細
一般的な情報
反応の進行は、アルミニウムプレート上に蛍光指示薬を含むMerck Kieselgel 60 F254シリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。TLCの可視化は、他に特に記述がない限り、UV光又はヨウ素蒸気を用いて実現した。フラッシュクロマトグラフィーは、Merck Kieselgel 60 F254シリカゲルを用いて行った。抽出及びクロマトグラフィーの溶媒は、Fisher Scientific, U.K.から購入し、さらに精製することなく使用した。すべての化学物質は、Aldrich, Lancaster又はBDHから購入した。
【0403】
1H及び13C NMRスペクトルは、Bruker Avance 400分光器を用いて得られた。結合定数は、ヘルツ(Hz)で見積もられる。化学シフトは、テトラメチルシランから低磁場方向に、100万分の1(ppm)で記録される。スピン多重度は、s(単一線)、bs(ブロード単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、p(五重線)及びm(多重線)のように記載される。IRスペクトルは、Perkin-Elmer FT/IR paragon 1000分光光度計を用い、ATR「ゴールデンゲート」システムを使用して、クロロホルムの溶液中にサンプルを適用することによって記録した。旋光度は、Bellingham and Stanley ADP 220旋光計を使用して、周囲温度で測定した。質量分析法は、Thermo ElectronからのThermoQuest Navigatorを用いて行い、エレクトロスプレー(ES)スペクトルは、20から30Vまでで得られた。精密な質量測定は、Micromass Q-TOFグローバルタンデムを使用して行った。すべてのサンプルは、溶媒として水中50%アセトニトリル及び0.1%ギ酸を使用して、エレクトロスプレーイオン化モード下で作動させた。サンプルは、FWHHにおいて、19000の典型的な分解能を与えるWモードを用いて作動させた。機器は、測定の直前に[Glu]-フィブリノペプチドBで較正した。
【0404】
LC/MS条件は、以下の通りである。HPLC(Waters Alliance 2695)は、水(A)(ギ酸0.1%)及びアセトニトリル(B)(ギ酸0.1%)の移動相を使用して作動させた。勾配:初めの組成物5%Bを1.0分間、次いで5%Bから95%Bまでを3分以内。組成物を、95%Bで0.5分間保持し、次いで0.3分で5%Bに戻した。全勾配移動時間は、5分に相当する。流速3.0mL/分、400μLがゼロデッドボリュームティーピースを通って分けられ、質量分析計に運ばれた。波長検出範囲:220から400nmまで。機能タイプ:ダイオードアレイ(535回走査)。カラム:Phenomenex(登録商標) Onyx Monolithic C18 50×4.60mm。
【0405】
化合物(2)及び(3)の調製
スキーム3
【化50】

【0406】
化合物(2)
(S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-オキソピロリジン-2-カルボン酸
方法:酢酸エチル(300mL)中Bocヒドロキシプロリン1(20g、86.4mmol)の氷冷溶液に、メタ過ヨウ素酸ナトリウムの飽和水溶液(500mL)及び酸化ルテニウム(115mg、0.864mmol)を加えた。2相性混合物を、35℃で6時間激しく撹拌し、LC/MSによってモニターした。LC/MSのES-トレース上で目視できるように、すべての出発物質が生成物に変換された時に、2相を分離させた。水層を、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。合わせた有機層を、水(200mL)及び飽和食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をジエチルエーテル中で粉砕し、ろ過によって回収し、アセトニトリル中で再結晶させて、所望の生成物2の純粋な無色結晶を得た(8.90g、45%)。
【0407】
分析データ:LC/MS 2.12分(ES-) m/z(相対強度) 228 ([M-H]-、100)。
【0408】
化合物は、知られている文献:Narukawa Y., Tetrahedron 1997, 53, 539-556に報告されている。
【0409】
化合物(3)
(S)-4-メチレンピロリジン-2-カルボン酸塩酸塩
方法:固体のカリウムtert-ブトキシド(7.26g、64.7mmol)を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(26.4g、73.9mmol)の乾燥THF(170mL)中懸濁液に、窒素下で、0℃(氷浴)にて分けて加えた。黄色混合物を2時間撹拌し、ケトン2(4.23g、18.5mmol)を固体として加えた。発熱が見られ、25分後に、LC/MS(226([M+H]-、100))の分子イオンを示す、2.58分でのES-トレースにおいてのみ目視可能)によって、反応が完了したことがわかった。反応混合物を、飽和NaHCO3水溶液(150mL)で抽出し、ジエチルエーテル(2×200mL)で洗浄した。水性抽出物を、1N HClでpH1に酸性化した。生成物をジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水及びMgSO4で乾燥させた。ジエチルエーテルを蒸発させることにより、純粋なBoc保護された酸を無色油状物として得た。この油状物を、直ちにジオキサン中HClの4N溶液(20mL)に溶かし、ヘアドライヤーで穏やかに温めた。ガスの発生が見られた後、生成物が結晶化した。ジエチルエーテル(150mL)を撹拌しながら加え、生成物3をろ過によって回収し、ジエチルエーテルで洗浄し、デシケーター中で、真空下で乾燥させた(2.75g、91%)。
【0410】
分析データ:LC/MS 0.36分(ES+) m/z(相対強度) 127.8([M+H]+、100);[α]17D=-28°(c=0.45、水);IR(ATR、ニート) 2884、1736、1597、1435、1390、1350、1211、1064、973、913、834、670cm-1; 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.2-8.8 (m, 2H, NH), 5.28-5.01 (m, 2H), 4.43 (t, 1H, J = 8.01 Hz), 3.82 (q, 2H, J = 15.31 Hz), 2.95 (m, 1H), 2.68 (m, 1H)。
【0411】
化合物(5)及び(6)の調製
スキーム4
【化51】

【0412】
化合物(5)
4,4’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(2-アミノ-5-メトキシ安息香酸)
方法:ビス-ニトロ酸4(23g、49.3mmol)を、0.5N水酸化ナトリウム水溶液(二つの水素添加フラスコ中に、2×200mL)中に一部溶解させた。固体のパラジウム炭素(10% w/w、フラスコ一つ当たり1.15g)を水中に加え、Parr装置を用い、45PSIで、反応混合物を水素添加した。水素の取り込みが終わると、Pd/Cをろ過によって除去した。LC/MSによって、反応が完了したことがわかった。ろ液のpHを、絶えず撹拌下で、1N HClで2〜3に調節し、得られた沈殿をろ過によって回収した。固体をデシケーター中で、乾燥剤である五酸化リンの存在下、真空下で乾燥させて、ビス-アントラニル酸5(20g、100%)を得た。
【0413】
分析データ:LC/MS 2.30分(ES-) m/z(相対強度) 404.92([M-H]-、100);IR(ATR、ニート) 1666、1591、1514、1462、1420、1315、1250、1222、1182、1088、1022、967、871、758cm-1
【0414】
化合物(6)
7,7’-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(6-メトキシ-1H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4-ジオン)
方法:固体のトリホスゲン(10g、33.7mmol)を、微粉化されたビスアントラニル酸5(20g、40.6mmol)の乾燥THF(100mL)中懸濁液に、速やかに分けて加えた。ピリジン(10mL、123mmol)を滴下し、反応物を加熱して還流させ、進行をLC/MSによってモニターした。1時間後に、追加のトリホスゲン(10g、33.7mmol)を加えた。3時間後に、さらなるトリホスゲン(5g、16.8mmol)及びピリジン(10mL、123mmol)を加えた。6時間後に、LC/MSによって、反応が完了したものとみなした。生成物6を過剰の氷水中で沈殿させ、ろ過によって収集し、水で洗浄し、デシケーター中で一晩乾燥させた(19.2g、85%)。
【0415】
分析データ:LC/MS 2.55分(ES-) m/z(相対強度) 457.18([M-H]-、100);IR(ATR、ニート) 1783、1713、1618、1512、1392、1339、1284、1246、1205、1139、1014、989、810、750、690、642、611cm-1
【0416】
化合物(7)及び(8)及びSJG-136の調製
スキーム5-線形アプローチ
【化52】

【0417】
スキーム6-コンバージェントアプローチ
【化53】

【0418】
化合物(7)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-7-メトキシ-2-メチリデン-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1c]-[1,4]ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]]
方法:DIPEA(3.12mL、17.9mmol)を、微粉化されたビス-イサト酸無水物6(3.12g、6.8mmol)及びC-環塩酸塩3(2.5g、15.3mmol)のDMSO(12.5mL)中懸濁液に加えた。混合物を120℃(内部温度)に30分間加熱した。初めにガスの激しい発生が見られた後、試薬が溶解した。30分後、LC/MSモニタリングが経時的な進展を全く示さなくなり、反応混合物を冷水(200mL)中に注ぐことによって後処理した。黄褐色沈殿をろ過によって回収し、水で洗浄した。ウェットケーキを、還流アセトニトリル(75mL)中にさらに温浸することによって精製した後、室温に冷却した。淡黄褐色固体をろ過によって回収し、少量のジエチルエーテルで洗浄し、真空オーブン中で40℃にて乾燥させた(2.0g、50%)。
【0419】
分析データ:LC/MS 2.62分(ES-) m/z(相対強度) 587.27([M-H]-、100);分析的な特性は、既に公表されているもの(Gregsonら、J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174)に全く一致している。しかし、[α]D値は、より高いことがわかった:[α]21D=+398°(c=0.3、HPLC CHCl3)(文献[α]22D=+274°(c=0.06、CHCl3))。
【0420】
化合物(8)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-7-メトキシ-2-メチリデン-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1c]-[1,4]ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]]
方法A:オーブンで乾燥させた50mL丸底フラスコに、乾燥したセプタム及び窒素風船を取り付け、この中に、真空オーブン中で40℃にて乾燥させた固体のビス-ジラクタム7(100mg、0.17mmol)を入れ、無水THF(10mL)中に懸濁させた。懸濁液を-40℃(アセトニトリル/ドライアイス浴)で冷却し、n-BuLi(ヘキサン中1.6M、0.32mL、0.51mmol)をシリンジで滴下した。紫色が見られた。懸濁液を1時間撹拌した。液体SEM-Cl(0.09mL、mmol)をシリンジで滴下し、懸濁液を室温にゆっくりと温めた(浴を残したまま3時間)。反応は、この時点でのLC/MSによって、ほとんど完了したように思われ、混合物を一晩撹拌した。反応混合物をDCM(30mL)で抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。真空下で溶媒を蒸発させた後、粗残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して(溶離液100%酢酸エチル、生成物はすぐに最初の数画分中に現われた)、所望の生成物8を得た(114mg、79%)。
【0421】
方法B:カリウム-t-ブトキシドの無水THF中溶液(0.5M、4.86mL、2.34mmol、4eq)を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(0.86g、2.4mmol、4.1eq)の無水THF(10mL)中懸濁液に、窒素雰囲気下で、0℃にて滴下した。得られた黄色懸濁液を、0℃で1.5時間撹拌した。無水THF(10mL)中ビス-ケトン17(0.5g、0.59mmol、1eq)を、黄色懸濁液に滴下し、混合物を1時間かけて撹拌しながら室温に戻した。反応混合物をEtOAc/H2O(50mL/50mL)間で分配抽出し、水性部分を分離した。EtOAc部分を飽和食塩水(50mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、減圧下で蒸発させて、褐色油状物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(勾配溶出:90:10 v/v CHCl3/EtOAcから70:30 v/v n-CHCl3/EtOAcまで)によって精製することにより、ビス-メチレン化合物8を無色ガラス状物として得た(0.28g、57%)。
【0422】
分析データ:LC/MS 3.90分(ES+) m/z(相対強度) 791([M+Na]+、10);
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.333 (s, 2H), 7.327 (s, 2H), 5.48 (d, 2H, J = 10 Hz), 5.17 (s, 2H), 5.10 (s, 2H), 4.69 (d, 2H, J = 10 Hz), 4.4 - 4.14 (m, 10H), 3.89 (s, 6H), 3.8 - 3.7 (m, 2H), 3.7 - 3.6 (m, 2H), 3.45 - 3.4 (m, 2H), 2.85 - 2.75 (m, 2H), 2.43 - 2.39 (m, 2H), 0.99 - 0.93 (m, 4H), 0.005 (s, 18H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 171.08, 166.44, 152.61, 148.86, 143.26, 135.25, 123.31, 112.80, 110.20, 108.36, 79.38, 68.49, 66.86, 58.84, 57.51, 52.24, 33.68, 30.26, 19.66, 0.00。
【0423】
SJG-136
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-7-メトキシ-2-メチリデン-1,2,3,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1c]-[1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン]]
方法:固体のビス-SEM-ジラクタム8(100mg、0.12mmol)を、エタノール(3mL)及びTHF(3mL)の混合物中に溶解させた。水素化ホウ素リチウム(22mg、2.3mmol)を1回で加え、反応混合物を窒素下で、1時間撹拌した。LC/MSによって、反応の完了が明らかになった。反応混合物を水(35mL)とクロロホルム(50mL)との間で分配抽出した。有機相を水(35mL)、飽和食塩水(35mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーションによって真空下で濃縮した。残渣をクロロホルム(2mL)、エタノール(2mL)及び水(2.5mL)の混合物中に再溶解させた。シリカゲル(4g)を加え、混合物を48時間撹拌した。混合物を焼結式漏斗に通してろ過し、クロロホルム/メタノール(90:10 v/v)の混合物で洗浄した。ろ液をクロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ロータリーエバポレーションによって真空下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出:100% CHCl3から97:3 v/v CHCl3/MeOHまで)によって精製した。純粋な画分を抜き取り、溶媒をロータリーエバポレーションによって真空下で除去して、所望の生成物SJG-136を、イミン及びカルビノールアミンメチルエーテルの混合物として得た(46mg、70%)。
【0424】
分析データ:LC/MS 2.50分(ES-) m/z(相対強度) 555.06([M-H]-、100);分析的な説明は、Gregsonら、J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174によって既に公表されているものに全く一致している。しかし、[α]D値は、報告されているものに比べて高いことがわかった:[α]20D=+766°(c=0.37、HPLC CHCl3)(文献[α]20D=+358°(c=0.07、CHCl3))。旋光度の測定が、クロロホルムの純度及びイミン/カルビノールアミン付加物の比率に非常に感受性であるため、このことは予期されていた。
【0425】
化合物(9)から(11)まで及び(4)の調製
化合物(9)から式(10)及び(11)の化合物を経由してニトロ-酸(4)を合成するための方法は、WO 00/012508及びWO 2006/111759に開示されている。調製を、以下のスキーム7に説明する。
【0426】
スキーム7
【化54】

【0427】
化合物(12)から(16)までの調製
スキーム8
【化55】

【0428】
化合物(12)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(5-メトキシ-2-ニトロ-1,4-フェニレン)カルボニル]]ビス[(2S,4R)-メチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレート]。
【0429】
方法A:ニトロ-酸4(1.0g、2.15mmol)及び塩化オキサリル(0.95mL、1.36g、10.7mmol)の乾燥THF(20mL)中の撹拌溶液に、触媒量のDMF(2滴)を加えた(発泡!)。反応混合物を室温で16時間撹拌し、溶媒をエバポレーションによって真空中で除去した。得られた残渣を乾燥THF(20mL)中に再溶解させ、この酸塩化物溶液を、(2S,4R)-メチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(859mg、4.73mmol)及びTEA(6.6mL、4.79g、47.3mmol)のTHF(10mL)中の撹拌混合物に、窒素雰囲気下で、-30℃(ドライアイス/エチレングリコール)にて滴下した。反応混合物を室温に温め、さらに3時間撹拌させた後、TLC(95:5 v/v CHCl3/MeOH)及びLC/MS(2.45分(ES+) m/z(相対強度) 721([M+H]+、20))によって、生成物の形成が明らかになった。過剰のTHFをロータリーエバポレーションによって除去し、得られた残渣をDCM(50mL)中に溶解させた。有機層を1N HCl(2×15mL)、飽和NaHCO3(2×15mL)、H2O(20mL)、飽和食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。ろ過及び溶媒の蒸発により、粗生成物を濃色油状物として得た。フラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出:100% CHCl3から96:4 v/v CHCl3/MeOHまで)によって精製することにより、純粋なアミド12を橙色ガラス状物として単離した(840mg、54%)。
【0430】
方法B:塩化オキサリル(9.75mL、14.2g、111mmol)を、ニトロ-酸4(17.3g、37.1mmol)及びDMF(2mL)の無水DCM(200mL)中の撹拌懸濁液に加えた。初めの発泡後、反応懸濁液は溶液となり、混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物のサンプルをMeOHで処理し、得られたビス-メチルエステルをLC/MSによって観察することによって、酸塩化物への変換を確認した。溶媒の大部分をエバポレーションによって真空中で除去し、得られた濃縮溶液を最小量の乾燥DCM中に再溶解させ、ジエチルエーテル中で粉砕した。得られた黄色沈殿を、ろ過によって収集し、冷ジエチルエーテルで洗浄し、真空オーブン中で40℃にて1時間乾燥させた。この固体の酸塩化物を、(2S,4R)-メチル-4-ヒドロキシピロリジン-2-カルボキシレート塩酸塩(15.2g、84.0mmol)及びTEA(25.7mL、18.7g、185mmol)のDCM(150mL)中の撹拌懸濁液に、-40℃(ドライアイス/CH3CN)で25分間かけて滴下した。LC/MS(2.47分(ES+) m/z(相対強度) 721([M+H]+、100))によって判断されるように、直ちに反応が完了した。混合物をDCM(150mL)で希釈し、1N HCl(300mL)、飽和NaHCO3(300mL)、飽和食塩水(300mL)で洗浄し、ろ過し(相分離器に通して)、溶媒を真空中で蒸発させて、純粋な生成物12を橙色固体として得た(21.8g、82%)。
【0431】
分析データ:[α]22D=-46.1°(c=0.47、CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) (回転異性体) δ 7.63 (s, 2H), 6.82 (s, 2H), 4.79-4.72 (m, 2H), 4.49-4.28 (m, 6H), 3.96 (s, 6H), 3.79 (s, 6H), 3.46-3.38 (m, 2H), 3.02 (d, 2H, J = 11.1 Hz), 2.48-2.30 (m, 4H), 2.29-2.04 (m, 4H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) (回転異性体) δ 172.4, 166.7, 154.6, 148.4, 137.2, 127.0, 109.7, 108.2, 69.7, 65.1, 57.4, 57.0, 56.7, 52.4, 37.8, 29.0; IR (ATR, CHCl3) 3410 (br), 3010, 2953, 1741, 1622, 1577, 1519, 1455, 1429, 1334, 1274, 1211, 1177, 1072, 1050, 1008, 871 cm-1; MS (ES+) m/z (相対強度) 721 ([M + H]+., 47), 388 (80); HRMS [M + H]+. 理論値C31H36N4O16 m/z 721.2199, 実測値(ES+) m/z 721.2227。
【0432】
化合物(13)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)-2-(ヒドロキシ)-7-メトキシ-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]。
【0433】
方法A:10%Pd/C(7.5g、10% w/w)のDMF(40mL)中懸濁液を、ニトロ-エステル12(75g、104mmol)のDMF(360mL)中溶液に加えた。懸濁液を、Parr水素添加装置中で、8時間かけて水素添加した。水素の取り込みが止まった後、反応の進行をLC/MS(2.12分(ES+) m/z(相対強度) 597([M+H]+、100)、(ES-) m/z(相対強度) 595([M+H]+、100)によってモニターした。固体のPd/Cをろ過によって除去し、ろ液をロータリーエバポレーションによって、真空下(10mbar以下)で40℃にて濃縮して、微量のDMF及び残余の炭を含む濃色油状物を得た。残渣を、水浴(ロータリーエバポレーター浴)上40℃でEtOH(500mL)中に温浸し、得られた懸濁液をセライトに通してろ過し、エタノール(500mL)で洗浄して、透明なろ液を得た。ヒドラジン水和物(10mL、321mmol)を溶液に加え、反応混合物を加熱して還流させた。20分後、白色沈殿の形成が見られ、還流をさらに30分間継続させた。混合物を室温に冷却し、沈殿をろ過によって回収し、ジエチルエーテル(沈殿の体積の2倍量)で洗浄し、真空デシケーター中で乾燥させて、13を得た(50g、81%)。
【0434】
方法B:三つ口丸底フラスコに、Raney(商標)ニッケル(H2O中約50%スラリーを大きいスパチュラの先端に4杯)及び突沸防止顆粒を入れ、この中に、ニトロ-エステル12(6.80g、9.44mmol)のMeOH(300mL)中溶液を加えた。混合物を加熱して還流させ、次いでヒドラジン水和物(5.88mL、6.05g、188mmol)のMeOH(50mL)中溶液で滴下処理し、この時点で激しい発泡が見られた。追加が完了すると(約30分)、発泡が終わるまで、追加のRaney(商標)ニッケルを注意深く加え、反応混合物の初めの黄色を抜いた。混合物を加熱し、さらに30分間還流させ、この時点で、TLC(90:10 v/v CHCl3/MeOH)及びLC/MS(2.12分(ES+) m/z(相対強度) 597([M+H]+、100))によって、反応が完了したものとみなした。反応混合物を約40℃に冷却し、次いで過剰なニッケルを焼結式漏斗に通し、真空吸引せずにろ過することによって除去した。ろ液の体積をエバポレーションによって真空中で減らし、この時点で無色沈殿が形成され、これをろ過によって収集し、真空デシケーター中で乾燥させて、13を得た(5.40g、96%)。
【0435】
分析データ:[α]27D=+404°(c=0.10、DMF); 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 10.2 (s, 2H, NH), 7.26 (s, 2H), 6.73 (s, 2H), 5.11 (d, 2H, J = 3.98 Hz, OH), 4.32-4.27 (m, 2H), 4.19-4.07 (m, 6H), 3.78 (s, 6H), 3.62 (dd, 2H, J = 12.1, 3.60 Hz), 3.43 (dd, 2H, J = 12.0, 4.72 Hz), 2.67-2.57 (m, 2H), 2.26 (p, 2H, J = 5.90 Hz), 1.99-1.89 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ 169.1, 164.0, 149.9, 144.5, 129.8, 117.1, 111.3, 104.5, 54.8, 54.4, 53.1, 33.5, 27.5; IR (ATR, 非希釈) 3438, 1680, 1654, 1610, 1605, 1516, 1490, 1434, 1379, 1263, 1234, 1216, 1177, 1156, 1115, 1089, 1038, 1018, 952, 870 cm-1; MS (ES+) m/z (相対強度) 619 ([M + Na]+., 10), 597 ([M + H]+., 52), 445 (12), 326 (11); HRMS [M + H]+. 理論値C29H32N4O10 m/z 597.2191, 実測値(ES+) m/z 597.2205。
【0436】
化合物(14)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-7-メトキシ-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]。
【0437】
TBSCl(317mg、2.1mmol)及びイミダゾール(342mg、5.03mmol)を、テトララクタム13(250mg、0.42mmol)の無水DMF(6mL)中の混濁溶液に加えた。混合物を窒素雰囲気下で3時間撹拌した後、LC/MS(3.90分(ES+) m/z(相対強度) 825([M+H]+、100))によって判断されるように、反応が完了したものとみなした。反応混合物を氷(約25mL)上に注ぎ、撹拌しながら室温に温めた。得られた白色沈殿を、真空ろ過によって収集し、H2O、ジエチルエーテルで洗浄し、真空デシケーター中で乾燥させて、純粋な14を得た(252mg、73%)。
【0438】
分析データ:[α]23D=+234°(c=0.41、CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.65 (s, 2H, NH), 7.44 (s, 2H), 6.54 (s, 2H), 4.50 (p, 2H, J = 5.38 Hz), 4.21-4.10 (m, 6H), 3.87 (s, 6H), 3.73-3.63 (m, 4H), 2.85-2.79 (m, 2H), 2.36-2.29 (m, 2H), 2.07-1.99 (m, 2H), 0.86 (s, 18H), 0.08 (s, 12H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 170.4, 165.7, 151.4, 146.6, 129.7, 118.9, 112.8, 105.3, 69.2, 65.4, 56.3, 55.7, 54.2, 35.2, 28.7, 25.7, 18.0, -4.82及び-4.86; IR (ATR, CHCl3) 3235, 2955, 2926, 2855, 1698, 1695, 1603, 1518, 1491, 1446, 1380, 1356, 1251, 1220, 1120, 1099, 1033 cm-1; MS (ES+) m/z (相対強度) 825 ([M + H]+., 62), 721 (14), 440 (38); HRMS [M + H]+. 理論値C41H60N4O10Si2 m/z 825.3921, 実測値(ES+) m/z 825.3948。
【0439】
化合物(15)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-7-メトキシ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]。
【0440】
n-BuLi(ヘキサン中1.6M溶液4.17mL、6.67mmol)の無水THF(10mL)中溶液を、テトララクタム14(2.20g、2.67mmol)の無水THF(30mL)中の撹拌懸濁液に、窒素雰囲気下で、-30℃(ドライアイス/エチレングリコール)にて滴下した。反応混合物をこの温度で1時間撹拌し(現時点で赤橙色)、この時点で、SEMCl(1.18mL、1.11g、6.67mmol)の無水THF(10mL)中溶液を滴下した。反応混合物をゆっくりと室温に温め、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。TLC(EtOAc)及びLC/MS(4.77分(ES+) m/z(相対強度) 1085([M+H]+、100))によって判断されるように、反応が完了したものとみなした。THFをエバポレーションによって真空中で除去し、得られた残渣をEtOAc(60mL)中に溶解させ、H2O(20mL)、飽和食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、真空中で蒸発させて、粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(80:20 v/v ヘキサン/EtOAc)によって精製することにより、純粋なN10-SEM-保護されたテトララクタム15を油状物として得た(2.37g、82%)。
【0441】
分析データ:[α]23D=+163°(c=0.41、CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.33 (s, 2H), 7.22 (s, 2H), 5.47 (d, 2H, J = 9.98 Hz), 4.68 (d, 2H, J = 9.99 Hz), 4.57 (p, 2H, J = 5.77 Hz), 4.29-4.19 (m, 6H), 3.89 (s, 6H), 3.79-3.51 (m, 8H), 2.87-2.81 (m, 2H), 2.41 (p, 2H, J = 5.81 Hz), 2.03-1.90 (m, 2H), 1.02-0.81 (m, 22H), 0.09 (s, 12H), 0.01 (s, 18H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 170.0, 165.7, 151.2, 147.5, 133.8, 121.8, 111.6, 106.9, 78.1, 69.6, 67.1, 65.5, 56.6, 56.3, 53.7, 35.6, 30.0, 25.8, 18.4, 18.1, -1.24, -4.73; IR (ATR, CHCl3) 2951, 1685, 1640, 1606, 1517, 1462, 1433, 1360, 1247, 1127, 1065 cm-1; MS (ES+) m/z (相対強度) 1113 ([M + Na]+., 48), 1085 ([M + H]+., 100), 1009 (5), 813 (6); HRMS [M + H]+. 理論値C53H88N4O12Si4 m/z 1085.5548, 実測値(ES+) m/z 1085.5542。
【0442】
化合物(16)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス(11aS,2R)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]。
【0443】
TBAF(THF中1.0M溶液5.24mL、5.24mmol)の溶液を、ビス-シリルエーテル15(2.58g、2.38mmol)のTHF(40mL)中の撹拌溶液に、室温で加えた。3.5時間撹拌した後、反応混合物のTLC(95:5 v/v CHCl3/MeOH)による分析によって、反応の完了が明らかになった。反応混合物を、飽和NH4Cl(100mL)溶液中に注ぎ、EtOAc(3×30mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和食塩水(60mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、真空中で蒸発させて、粗生成物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出:100% CHCl3から96:4 v/v CHCl3/MeOHまで)によって精製することにより、純粋なテトララクタム16を白色泡状物として得た(1.78g、87%)。
【0444】
分析データ:LC/MS 3.33分(ES+) m/z(相対強度) 879([M+Na]+、100)、857([M+H]+、40);[α]23D=+202°(c=0.34、CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.28 (s, 2H), 7.20 (s, 2H), 5.44 (d, 2H, J = 10.0 Hz), 4.72 (d, 2H, J = 10.0 Hz), 4.61-4.58 (m, 2H), 4.25 (t, 4H, J = 5.83 Hz), 4.20-4.16 (m, 2H), 3.91-3.85 (m, 8H), 3.77-3.54 (m, 6H), 3.01 (br s, 2H, OH), 2.96-2.90 (m, 2H), 2.38 (p, 2H, J = 5.77 Hz), 2.11-2.05 (m, 2H), 1.00-0.91 (m, 4H), 0.00 (s, 18H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 169.5, 165.9, 151.3, 147.4, 133.7, 121.5, 111.6, 106.9, 79.4, 69.3, 67.2, 65.2, 56.5, 56.2, 54.1, 35.2, 29.1, 18.4, -1.23; IR (ATR, CHCl3) 2956, 1684, 1625, 1604, 1518, 1464, 1434, 1361, 1238, 1058, 1021 cm-1; MS (ES+) m/z (相対強度) 885 ([M + 29]+., 70), 857 ([M + H]+., 100), 711 (8), 448 (17); HRMS [M + H]+. 理論値C41H60N4O12Si2 m/z 857.3819, 実測値(ES+) m/z 857.3826。
【0445】
化合物(8)及びSJG-136の調製
スキーム9
【化56】

【0446】
化合物(17)
1,1’-[[(プロパン-1,3-ジイル)ジオキシ]ビス[(11aS)-7-メトキシ-2-オキソ-10-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)1,2,3,10,11,11a-ヘキサヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11-ジオン]]。
【0447】
方法A:固体のTCCA(10.6g、45.6mmol)を、アルコール16(18.05g、21.1mmol)及びTEMPO(123mg、0.78mmol)の無水DCM(700mL)中の撹拌溶液に、0℃(氷/アセトン)で滴下した。反応混合物を窒素雰囲気下で、0℃にて15分間撹拌した後、TLC(EtOAc)及びLC/MS[3.57分(ES+) m/z(相対強度) 875([M+Na]+、50)]によって、反応の完了が明らかになった。反応混合物をセライトに通してろ過し、ろ液を飽和NaHCO3水溶液(400mL)、飽和食塩水(400mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、真空中で蒸発させて、粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20 v/v EtOAc/ヘキサン)によって精製することにより、ビス-ケトン17を泡状物として得た(11.7g、65%)。
【0448】
方法B:無水DMSO(0.72mL、0.84g、10.5mmol)の乾燥DCM(18mL)中溶液を、塩化オキサリル(DCM中2.0M溶液2.63mL、5.26mmol)の撹拌溶液に、窒素雰囲気下で、-60℃(液体N2/CHCl3)にて25分間かけて滴下した。-55℃で20分間撹拌した後、基質16(1.5g、1.75mmol)の乾燥DCM(36mL)中スラリーを、30分間かけて反応混合物に滴下した。-55℃でさらに50分間撹拌した後、TEA(3.42mL、2.49g;24.6mmol)の乾燥DCM(18mL)中溶液を、20分間かけて反応混合物に滴下した。撹拌反応混合物を室温に温め(約1.5時間)、次いでDCM(50mL)で希釈した。有機溶液を1N HCl(2×25mL)、H2O(30mL)、飽和食塩水(30mL)で洗浄し、乾燥させた(MgSO4)。ろ過及び真空中での溶媒の蒸発により、粗生成物を得、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(80:20 v/v EtOAc/ヘキサン)によって精製して、ビス-ケトン17を泡状物として得た(835mg、56%)。
【0449】
分析データ:LC/MS 3.55分(ES+) m/z(相対強度) 875([M+Na]+、50);[α]20D=+291°(c=0.26、CHCl3); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.32 (s, 2H), 7.25 (s, 2H), 5.50 (d, 2H, J = 10.1 Hz), 4.75 (d, 2H, J = 10.1 Hz), 4.60 (dd, 2H, J = 9.85, 3.07 Hz), 4.31-4.18 (m, 6H), 3.89-3.84 (m, 8H), 3.78-3.62 (m, 4H), 3.55 (dd, 2H, J = 19.2, 2.85 Hz), 2.76 (dd, 2H, J = 19.2, 9.90 Hz), 2.42 (p, 2H, J = 5.77 Hz), 0.98-0.91 (m, 4H), 0.00 (s, 18H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 206.8, 168.8, 165.9, 151.8, 148.0, 133.9, 120.9, 111.6, 107.2, 78.2, 67.3, 65.6, 56.3, 54.9, 52.4, 37.4, 29.0, 18.4, -1.24; IR (ATR, CHCl3) 2957, 1763, 1685, 1644, 1606, 1516, 1457, 1434, 1360, 1247, 1209, 1098, 1066, 1023 cm-1; MS (ES+) m/z (相対強度) 881 ([M + 29]+., 38), 853 ([M + H]+., 100), 707 (8), 542 (12); HRMS [M + H]+. 理論値C41H56N4O12Si2 m/z 853.3506, 実測値(ES+) m/z 853.3502。
【0450】
参考文献:
下記の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0451】
WO 95/04718
WO 00/12508
WO 2004/043963
WO 2005/042535
WO 2005/085251
WO 2006/111759
WO 2007/085930
JP 58-180 487
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(S)
【化1】

[式中、
R2は、CHR2Aであり、R2Aは、H、R、CO2R、COR、CHO、CO2H及びハロから独立に選択され;
R6及びR9は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;
R7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、NO2、Me3Sn及びハロから独立に選択され;
或いは隣接基R6及びR7は、一緒になって、基-O-(CH2)p-O-を形成しており、ここで、pは、1又は2であり;
Rは、場合によって置換されているC1-12アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基及びC5-20アリール基から独立に選択され;
R”は、C3-12アルキレン基であり、この鎖は、一つ又は複数のヘテロ原子及び/又は芳香環によって中断されていてよく;
各Xは、O、S又はN(H)から独立に選択され;
R2’、R6’、R7’、R9’及びX’は、それぞれR2、R6、R7、R9及びXと同一の基から独立に選択される。]
の化合物。
【請求項2】
R2Aが、H及びRから独立に選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2Aが、独立にHである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R7及びR7’が、それぞれ独立にORである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R7及びR7’が、それぞれ独立にOMeである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R6及びR6’が、それぞれ独立にHである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R9及びR9’が、それぞれ独立にHである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
X及びX’が、それぞれ独立にOである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R”が、C3-12アルキレン基である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R”が、C3アルキレン基及びC5アルキレン基から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R”が、C3アルキレン基である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
式(8)
【化2】

の請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
式(A)の化合物を調製するための方法であって、式(S)の化合物を還元剤と反応させるステップを含み、(S)は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の通りであり、(A)は、化合物
【化3】

であり、
R2’、R6’、R7’、R9’、X’、R”、R2、R6、R7、R9及びXは、式(S)の化合物に関する記載の通りである方法。
【請求項14】
還元剤が、水素化ホウ素塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(S)の化合物を調製するための方法であって、(B)のアミド窒素をSEMで保護するステップを含み、(S)は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の通りであり、Bは、化合物
【化4】

であり、
R2’、R6’、R7’、R9’、X’、R”、R2、R6、R7、R9及びXは、式(S)の化合物に関する記載の通りである方法。
【請求項16】
(B)がSEM-Clと反応し、それによって(S)を形成する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式(B)の化合物を調製するための方法であって、式(X)の化合物を式(C)の化合物と反応させるステップを含み、(B)は、請求項15に記載の通りであり、(X)及び(C)は、
【化5】

であり、
R6’、R7’、R9’、X’、R”、R2、R6、R7、R9及びXは、式(B)の化合物に関する記載の通りである方法。
【請求項18】
(C)が、化合物(6)
【化6】

である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(X)が、化合物(3)
【化7】

である、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の、式(B)の化合物を調製する前記ステップをさらに含む、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項21】
請求項15又は請求項16に記載の、式(S)の化合物を調製する前記ステップをさらに含み、場合によって、請求項17〜19のいずれか一項に記載の、式(B)の化合物を調製する前記ステップをさらに含む、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項22】
式(S)の化合物を調製するための方法であって、基R2を含むアルケン形成試薬と(W)を反応させるステップを含み、(S)は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の通りであり、(W)は、化合物
【化8】

であり、
R2、R6’、R7’、R9’、X’、R”、R6、R7、R9及びXは、式(S)の化合物に関する記載の通りである方法。
【請求項23】
アルケン形成試薬が、ホスホニウムメチレンイリドであり、R2及びR2’が、それぞれHである、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2012−505870(P2012−505870A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531557(P2011−531557)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002495
【国際公開番号】WO2010/043877
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(505171975)スピロゲン リミティッド (8)
【Fターム(参考)】