説明

ピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルム

【課題】 自動ピロー包装機適性を有するポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムを提供。
【解決手段】 ポリ乳酸系重合体を主成分とし、少なくともヒートシール層と基材層を有する積層フィルムであって、当該ヒートシール層は、L乳酸とD乳酸の割合が93:7〜89:11であるポリ乳酸系重合体と、特定の脂肪族ポリエステルとが質量比で100:0〜65:35の割合で構成される樹脂組成物に対し、平均粒径1.5〜4μmの粒子を特定量含有してなり、当該基材層は、L乳酸とD乳酸の割合が100:0〜93:7であるポリ乳酸系重合体と、特定の脂肪族ポリエステルとが質量比で90:10〜70:30の割合で構成される樹脂組成物に対し、平均粒径1.2〜4μmの粒子を特定量含有してなり、かつ、積層フィルム全層において、ポリ乳酸系重合体と特定の脂肪族ポリエステルとが質量比で92:8〜70:30である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートシールが可能でかつピロー包装可能な生分解性のポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムおよびその包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セロファンは包装用フィルムとして広く用いられ、繊維包装、菓子等の包装、薬袋等に使用され、またポリ塩化ビニリデンを表面にコートして防湿性、ヒートシール性を兼ね備えたフィルムとして使用されていた。このセロファンは、木材からとれるパルプ質を主原料としているので分解性があることが特徴であるが、パルプ質を化学処理して一旦溶解した後、製膜される流延法といわれる製造方法をとることから、生産性が低く、また廃水処理の点から設備を整える投資を必要とする。このため、今日では製造コストの低い石油由来原料からなるポリエチレン、ポリオレフィンや芳香族ポリエステルからなるフィルムにほとんどがとって代わられている。この石油由来のポリエチレン、ポリオレフィンや芳香族ポリエステルは様々な加工法により耐熱性、収縮性、ヒートシール性、印刷性、防湿性や防曇性等を付与したフィルムとして製造されており、用途も包装材に限らず、工業材としても広く用いられている。
【0003】
しかし、石油由来原料からなるフィルムは燃焼時の発熱量が多く、燃焼処理中に燃焼炉を傷める恐れがある。さらに、近年、京都議定書に基づく排出二酸化炭素の削減や循環型材料導入の機運が高まる中でこれら石油由来原料からなるフィルムを焼却することは、その課題に反するものである。これら問題への対応としては、これらプラスチック類の積極的な再利用いわゆるマテリアルリサイクルやモノマーに解重合して再使用するケミカルリサイクルなどが行われているが、前段階での製品設計や種類ごとの分別が必要であり、PETボトル以外で大きな進展が見られないのが今日の現状である。
【0004】
これに対し、今注目され開発が進められているのがポリ乳酸からなる各種プラスチック製品である。ポリ乳酸は、植物から得られるデンプンから発酵・合成される技術が確立しており、炭素源は大気中の二酸化炭素である。したがって、これらポリ乳酸からなるプラスチック製品を燃焼しても、自然環境中に還元されるものであって、大気中の二酸化炭素の増減は実質ないものとみなすことができる。さらに燃焼熱量はポリエチレンの半分以下であり、また生分解性プラスチックとして土中・水中で自然に加水分解が進行し、次いで微生物により無害な分解物となる。現在、ポリ乳酸を用いて成形物、具体的にはフィルム、シートやボトルなどの容器等を得る研究がなされている。
【0005】
ところで、ポリ乳酸の無延伸フィルムは、伸びが数%しかなく、脆い材料である。このため、無延伸の薄いフィルムは包装用として実用性はない。一方、ポリ乳酸を一軸延伸若しくは二軸延伸することにより、フィルムが配向して伸びが増大し、さらに熱処理することで熱収縮性を抑制した実用性の高いフィルムが得られることが特開平6−256480号公報(特許文献1)や特開平7−207041号公報(特許文献2)で開示されている。
【0006】
また、ポリ乳酸系重合体からなるフィルムの特徴として、セロファンと同じように香りの成分を収着しないという特徴がある。このため、従来から使用されているポリオレフィン系のヒートシーラント材に代わってポリ乳酸系フィルムを使用することが期待されている。これは、ポリオレフィン系のシーラント材は包装する対象物によってはこれら香りの成分を収着し、中身が変化する恐れがあるのに対し、安心して使用することができる点で優位であるからである。
【0007】
このような特性より、ポリ乳酸フィルムをピロー包装用として使用することが期待できる。ピロー包装とは、フィルムを筒状にして側端部(底部)のシールおよびセンターシールを行い、次いで被包装物を充填して、もう一方の側端部(上部)をシールして密封する包装方法で、食品では一般に菓子、パン、水物、漬物、乾物、麺類等に、また薬品の包装、雑貨物の包装などに利用されている。
【0008】
ピロー包装には、自動コンベアのような運搬装置で横から充填する横ピロー包装機、また、上部から自重で被包装物を落下させて充填する縦ピロー包装機等があり、いずれも自動化されており、充填・包装を同時に行う装置が使用されている。自動ピロー包装では、包装する対象によって異なるが、1分間あたり20〜500体、通常は30〜300体が仕上がる速度で包装されている。ヒートシールの温度設定も、その速度に応じて調整される。通常、ヒートシールは、加熱バーや加熱ロールでフィルムを合掌型に挟み込み、基材層側から加熱され、ヒートシール層部同士を融着させるので、伝熱時間が必要である。製袋速度を上げれば、相対的に加熱バーもしくは加熱ロールの設定温度を上げていく必要がある。実際には、バーやロールの温度は、製袋速度に応じてヒートシール層部の融解温度よりも20〜150℃ほど高く設定される。
【0009】
ピロー包装用フィルムとして用いる場合に好ましい特性としては、(1)シール温度領域が適度であること、(2)シール時に収縮性が無い若しくは低いこと、(3)滑り性がよいこと、(4)フィルムの柔軟性に優れていること、などがあげられる。
【0010】
上記(1)について、今日広く使用されているポリエチレンからなるシーラント材と照らし合わせたときの温度域で使用できることが、従来から使用される自動ピロー包装機にそのまま流すことができ、新たに設備を導入する必要がない点で、経済的に有利となる。ポリエチレンのシール温度域は厚みにもよるが高くて130℃以上、低くても80℃以上であり、ヒートシーラント材としての目安となる。さらに、シールした後は常温で容易に剥がれることのないようにシール部には少なくとも40℃、好ましくは50℃以上の耐熱性が必要であり、かつ十分な強度が必要である。
【0011】
上記(2)について、上述した温度域でヒートシールした際にフィルムが著しく収縮しないことが要求される。フィルムの収縮性が高いと、見栄えは悪いばかりか実質的にシール強度が得がたくなる恐れがある。
【0012】
上記(3)について、ピロー包装は「フォーマー」と呼ばれる部分があり、フィルムをこのフォーマーに摺動させながら筒状に形作っている。フォーマーはメッキしたりや面を粗くした金属で作製されており、フィルムとの摩擦を軽減するように工夫されている。一方でフィルムにも、摩擦を軽減するように工夫する必要があり、滑り性に優れていることが好ましい。滑りが低いとフィルムにしわが発生する傾向にある。
【0013】
上記(4)について、フォーマーで筒状に形成される際に、フィルムがしごかれるので、(3)同様フィルムにしわが入る。特に、ポリ乳酸のみからなる2軸延伸フィルムはいわゆるデッドホールド性が高いため、一度入ったしわはほとんどなくならず、見栄えの著しく劣った包装物となる。
【0014】
ここで、特開2001−219522号公報(特許文献3)には、ヒートシール可能なポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムについて開示されており、また、特開2004−82512号公報(特許文献4)には、ポリ乳酸系重合体にTgが0℃以下の脂肪族ポリエステルと表裏層に粒子を配合して、フィルムを柔軟化し、かつ滑り性を向上させて、溶断シール製袋適性を高めることが開示されている。
【0015】
【特許文献1】特開平6−256480号公報
【特許文献2】特開平7−207041号公報
【特許文献3】特開2001−219522号公報
【特許文献4】特開2004−82512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記の特開2001−219522号公報(特許文献3)に開示されたフィルムを実際に自動ピロー包装機で製袋して包装体を得ようとした場合には、特に製袋時のしわ発生の点において、未だ不十分な場合があることがわかった。すなわち、しわにより見栄えが低下したり、しわがヒートシール部にまで発生してシール不良を引き起こす場合があった。
【0017】
また、特開2004−82512号公報(特許文献4)に開示された方法に沿って、上記公知文献からなるヒートシールフィルムの改良を試みたが、ピロー包装用フィルムは、ヒートシール層と基材層からなる2層構成であるため、配合しうる脂肪族ポリエステル量や粒子を多量に加えると透明性の低下、さらにヒートシールの仕上がりにまで低下することがあり、さらに、ヒートシール層の結晶性についても製袋性の点からも、これらについて格段の配慮が必要であることがわかった。
【0018】
そこで、本発明は、自動ピロー包装機適性を有するポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムおよび該フィルムを用いてなる包装物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)本発明のピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムは、ポリ乳酸系重合体を主成分とし、少なくともヒートシール層と基材層を有する積層フィルムであって、
当該ヒートシール層は、L乳酸とD乳酸の割合が93:7〜89:11であるポリ乳酸系重合体と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で100:0〜65:35の割合で構成される樹脂組成物100質量部に対し、平均粒径1.5〜4μmの粒子を0.07〜0.25質量部含有してなり、
当該基材層は、L乳酸とD乳酸の割合が100:0〜93:7であるポリ乳酸系重合体と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で90:10〜70:30の割合で構成される樹脂組成物100質量部に対し、平均粒径1.2〜4μmの粒子を0.07〜0.25質量部含有してなり、
かつ、積層フィルム全層において、ポリ乳酸系重合体とガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で92:8〜70:30である。
(2)また、本発明のピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムは、ヒートシール強度が1N/15mm以上であることが好ましい。
(3)本発明の包装物は、上記(1)または(2)に記載のピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムを用いてなる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によるポリ乳酸系重合体からなるフィルムは、自動ピロー包装機適性を有するポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムおよび該フィルムを用いてなる包装体を得ることができる。また、得られる積層体は、耐水性、強度、熱成形性、強度の点で優れており、飲料、食品、薬品、電化品、文具、雑貨等の包装材等に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態を説明する。
この発明にかかるポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムは、ポリ乳酸系重合体を主成分とし、少なくともヒートシール層と基材層を有する積層フィルムである。
【0022】
(ポリ乳酸系重合体)
上記ポリ乳酸系重合体は、乳酸を主成分とするモノマーを縮重合してなる重合体である。上記乳酸には、2種類の光学異性体のL−乳酸およびD−乳酸があり、これら2種の構造単位の割合で結晶性が異なる。例えば、L−乳酸とD−乳酸の割合がおおよそ85:15〜15:85のランダム共重合体では結晶性が無く、ガラス転移点60℃付近で軟化する透明完全非結晶性ポリマーとなる。一方、L−乳酸とD−乳酸の割合がおおよそ100:0〜85:15、又は15:85〜0:100のランダム共重合体は、結晶性を有する。その結晶化度は、上記のL−乳酸とD−乳酸の割合によって定まるが、この共重合体のガラス転移点は、上記と同様に60℃程度のポリマーである。このポリマーは、溶融押出した後、ただちに急冷することで透明性の優れた非晶性の材料になり、ゆっくり冷却することにより、結晶性の材料となる。例えば、L−乳酸のみ、また、D−乳酸のみからなる単独重合体は、180℃以上の融点を有する半結晶性ポリマーである。
【0023】
この発明にかかるポリ乳酸系重合体は、D−乳酸単位とL−乳酸単位との重合体であって、少量共重合成分として他のヒドロキシカルボン酸単位を含んでもよく、また少量の鎖延長剤残基を含んでもよい。
【0024】
重合法としては、縮重合法、開環重合法等公知の方法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸又はD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮重合して、任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
【0025】
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必用に応じて重合調節剤等を用いながら、選ばれた触媒を使用してポリ乳酸を得ることができる。
【0026】
ポリ乳酸に共重合される上記の他のヒドロキシカルボン酸単位としては、乳酸の光学異性体(L−乳酸に対してはD−乳酸、D−乳酸に対してはL−乳酸)、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の2官能脂肪族ヒドロキシカルボン酸やカプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0027】
また、必要に応じ、少量共重合成分として、テレフタル酸のような非脂肪族カルボン酸及び/又はビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような非脂肪族ジオールや、乳酸及び/又は乳酸以外のヒドロキシカルボン酸を用いてもよい。
【0028】
本発明において使用されるポリ乳酸系重合体の重量平均分子量の好ましい範囲としては6万〜70万であり、より好ましくは8万〜40万、特に好ましくは10万〜30万である。分子量が小さすぎると機械物性や耐熱性等の実用物性がほとんど発現されず、大きすぎると溶融粘度が高すぎ成形加工性に劣る。
【0029】
(積層フィルムの層構成)
この発明にかかる積層フィルム中の1つの層である基材層は、ポリ乳酸系重合体を主成分として構成され、かつ結晶性であることが好ましい。これは、ヒートシール時に、この層側にヒートシールの加熱バーが接触することになり、融け出してシールバーに粘着しないような耐熱性を必要とするからである。
また、上記積層フィルムの別の1つの層であるヒートシール層は、結晶性の低いポリ乳酸系重合体を主成分として構成される。これは、製袋時のシールで、基材側に接触したシールバーからの伝熱でヒートシール層が融け出すことが必要であるためである。
【0030】
上記基材層を構成する結晶性ポリ乳酸系重合体、及び上記ヒートシール層を構成するポリ乳酸系重合体は、異なる2種類以上のポリ乳酸系重合体の混合体であってもよい。この場合、L−乳酸およびD−乳酸割合はそれぞれ2種類以上のポリ乳酸系重合体を構成するL−乳酸、D−乳酸の配合割合から算出される平均値となる。
【0031】
(基材層)
基材層を構成する主たる樹脂成分としては、L乳酸とD乳酸の割合が100:0〜93:7のポリ乳酸系重合体を使用する。L乳酸が93%を下回ると、2軸延伸後熱処理しても高温化で収縮率が高く、ヒートシール時にその部分が収縮して見栄えが悪くなるばかりか、十分な強度を得ることができない。好ましくは、99.5:0.5〜96:4であり、さらに好ましくは99.5:0.5〜97:3である。
【0032】
上記基材層には第2樹脂成分としてガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族ポリエステルを10〜30質量%混合する。10質量%以上であればフィルムの柔軟性が不足することがなく、ピロー包装機のフォーマーにおいてしわを発生させずに仕上がりの良い包装体を得ることができる。そして30質量%以下であれば、透明性において問題がなく、ヒートシール時にこの脂肪族ポリエステルがシールバーにより融け出してバーを汚したり、フィルムが粘着したりして、シール強度の低下や仕上がりの低下を起こすことがない。
【0033】
(ヒートシール層)
ヒートシール層を構成する主たる樹脂成分としては、L乳酸とD乳酸の割合が93:7〜89:11のポリ乳酸系重合体を使用する。上述したようにポリ乳酸系重合体は、その構成中でD−乳酸の割合が15%を上回ると完全非晶性となる。例えば、基材層にD−乳酸の割合が2%を下回るような高結晶性のポリ乳酸系重合体を使用し、ヒートシール層には、上記完全非晶性ポリ乳酸系重合体を用いた場合は、融解温度の差(非晶性の場合、融解温度ではなくガラス転移点であるが)は110〜120℃あり、ヒートシール条件(シールバー温度、時間)を広く調整することができるため有利である。しかしながら、ヒートシール層を完全非晶性のポリ乳酸重合体で構成すると、後述する添加粒子による自動ピロー包装機に適性があるまでの滑り性の向上につながらないことがわかった。これは、結晶性ポリ乳酸系重合体の延伸において発生する応力や分子鎖の結晶化成長のため添加粒子が外部にはじき出されて、表面が粗される効果が高いのに比して、完全非結晶性ポリ乳酸系重合体では延伸時の応力も小さく、結晶化成長もないため、表面の粗さ向上効果もないばかりか、続いて行う熱処理で添加粒子はフィルム内部に埋没してしまうことにより、十分な滑り性を得ることができないためと推測される。この発明の目的である自動ピロー包装機の製袋適性に見合う滑り性を得るためには、ヒートシール層を構成するポリ乳酸系重合体の結晶性、具体的にはD−乳酸の割合を11%以下にしておく必要がある。また、D−乳酸の割合が7%を下回ると、基材層との融解温度差は縮小されるので、自動ピロー包装機でのシール適性に見合わなくなる。
【0034】
上記ヒートシール層には第2樹脂成分としてガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族ポリエステルを0〜35質量%混合する。脂肪族ポリエステルの混合がなくてもヒートシール性は十分に有しているのであるが、脂肪族ポリエステルを混合することによりフィルム全体の柔軟性を付与することができ、さらにシール部分の耐衝撃性も向上さえることができる。ただし、35質量%を越えると、この脂肪族ポリエステルのもつ結晶がヒートシール時に融解するため、加熱バーから熱を吸熱し、シール時間が短い場合においては、シール強度を低下させてしまうといった不具合を生じる場合がある。
【0035】
なお、上記基材層とヒートシール層を含む積層フィルム全層において、ポリ乳酸系重合体とガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で92:8〜70:30であることが必要である。フィルムの透明性は、ヘーズであらわすことが出来るが、包装袋としてはヘーズで8%を越えないことが好ましい。積層フィルム全層における脂肪族ポリエステルの質量比を30質量%以下にすることで、ヘーズ値8%を下回らせることができる。より透明性を得たい場合は、フィルムの厚みおよび製袋性との兼ね合いを考慮した上で、脂肪族ポリエステル含有量は少なくする方がよい。ヘーズはより好ましくは6%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0036】
(脂肪族ポリエステル)
Tgが0℃以下である脂肪族ポリエステルの例としては、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0037】
上記肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を縮合して得られる脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジオールであるエチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール等と、脂肪族ジカルボン酸であるコハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカン二酸等の中から、それぞれ1種類以上選んで縮合重合して得られる。必要に応じてイソシアネート化合物等でジャンプアップして所望のポリマーを得ることができる。具体的には、昭和高分子社製の商品名「ビオノーレ」、や三菱化学社製の商品名「GsPla」があげられる。また、耐熱性や機械強度を高めるために、ジカルボン酸成分として、50mol%以下のテレフタル酸等の芳香族モノマー成分を共重合することもできる。例えば、イーストマンケミカル社製商品名「イースターバイオ」や、BASF社製商品名「エコフレックス」が例示される。
【0038】
上記環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、環状モノマーであるε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられ、これらから1種類以上選ばれて重合される。例えば、ダイセル化学工業社製ポリカプロラクトン、商品名「セルグリーンPH」がある。
【0039】
上記合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体等が挙げられる。
【0040】
(粒子)
基材層に配合される粒子は、平均粒径で1.2〜4μmの範囲が好ましい。1.2μmを下回る粒子では、自動ピロー包装機でフィルムを繰り出させる際に、同装置内に設けられているフォーマーとの摩擦が大きく、フィルムのしわが発生しやすくなる。一方、4μmを越えると、配合量との兼ね合いでもあるがフィルムの透明性は著しく損なわれる。より好ましい範囲としては1.5〜3.5μmである。また、添加される量は樹脂組成物100質量部に対して、0.07〜0.25質量部の範囲が好ましい。0.07質量部を下回ると、ピロー包装時のしわの発生が抑制できず、また0.25質量部を上回ると透明性は低下し、先述したヘーズで8%以下を下回ることとなる。かかる範囲の中で平均粒径の小さい粒子を選択すれば、かかる範囲の中で添加量を高くすることができるし、平均粒径の大きいものを選択すれば、相対的に添加量をかかる範囲で低めることが必要である。より好ましい範囲としては0.1〜0.2質量部である。
【0041】
ヒートシール層についても、基材層と同様で、自動ピロー包装適性をもった滑り性、ならびに透明性について考慮する必要がある。ヒートシール層は、先述したように延伸、熱処理工程でのフィルム表面の粗さ向上度合いは低い。したがって、基材層と比べれば、より大きめの粒子を選択する必要がある。具体的には、平均粒径で1.5〜4μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜3.5μmの範囲内である。添加される量は樹脂組成物100質量部に対して、0.07〜0.25質量部の範囲が好ましく、より好ましい範囲としては0.1〜0.2質量部である。
【0042】
なお、添加される粒子は、上記樹脂組成物と混合し、製膜用の押出機より押出して直接フィルム状にしてもかまわないし、予め使用する樹脂に所定量を分散混合して、押出機から押出してペレット化し、次いでこれを、製膜用の押出機にて他の樹脂とともに混合しながら押出してフィルム状にしてもよい。
【0043】
使用できる粒子としては、PETやOPP等に使用されている公知の不活性粒子を使用することができる。かかる不活性粒子としては、例えば、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機粒子、あるいはアクリレート粒子、スチレン粒子等の樹脂系有機粒子等がある。後者の樹脂系有機粒子は使用可能ではあるが、自然環境との親和性という観点からは、天然にある無機粒子と比較すると大幅に劣り、しかも生分解性も十分でないので、使用の際にはこれらの点に留意が必要である。
【0044】
なお、本発明で用いられる粒子の平均粒径は、粒径・粒径分布測定装置であるコールターカウンターで測定されたものである。他の測定方法、例えば電子顕微鏡やレーザー回折式測定装置では、測定・解析方法が異なるので、異なった値を示す。一般にレーザー回折測定では、粒径の分布にもよるが、コルターカウンターよりも大きめの値となる。
【0045】
(積層フィルム)
上記ヒートシール層は、ヒートシール特性を有することから、上記積層フィルムの少なくとも一方の最外層を構成する。
これらの最終の積層フィルムにおけるヒートシール層の厚みは、2μm以上、好ましくは4μm以上、より好ましくは8μm以上であり、そして、最終の積層フィルムの厚みは、10〜100μm、好ましくは15〜80μmである。
【0046】
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で基材層/ヒートシール層間の各層の間に厚みが10μm以下、好ましくは5μm以下の接着剤層、接着用樹脂層、リサイクル樹脂層あるいは第1層と第2層の中間的な層を積層してあってもよい。
また、基材層を構成する結晶性ポリ乳酸系重合体は、ヒートシール層を構成するポリ乳酸系重合体を含んだ混合体であってもよく、また、フィルム全層のリサイクルであってもよい。
【0047】
本発明で用いられる重合体には、諸物性を調整する目的で、熱安定剤、光安定剤、光吸収剤、滑剤、可塑剤、無機充填材、着色剤、顔料等を添加することもできる。
【0048】
(積層方法)
積層方法としては、通常に用いられる方法を採用することができる。例えば複数の押出機からフィードブロック式あるいはマルチマニホールド式にひとつの口金に連結するいわゆる共押出をする方法、巻き出した混合フィルムの表面上に別種のフィルムをロールやプレス板を用いて加熱圧着する方法がある。
【0049】
(製造方法)
ポリ乳酸系重合体を主成分とする2軸延伸フィルムの製造方法としては、Tダイ、Iダイ、丸ダイ等から押し出ししたシート状物又は円筒状物を冷却キャストロールや水、圧空等により急冷し非結晶に近い状態で固化させた後、ロール法、テンター法、チューブラー法等により2軸に延伸する方法が挙げられる。
【0050】
通常2軸延伸フィルムの製造においては縦延伸をロール法で、横延伸をテンター法で行う逐次2軸延伸法、また縦横同時にテンターで延伸する同時2軸延伸法が一般的である。
【0051】
延伸条件としては、延伸温度55〜90℃、好ましくは65〜80℃、縦延伸倍率1.5倍、好ましくは2〜4倍、横延伸倍率1.5〜5倍、好ましくは2〜4倍、延伸速度10〜100000%/分、好ましくは100〜10000%/分である。しかしながら、これらの適性範囲は重合体の組成や、未延伸シートの熱履歴によって異なってくるので、フィルムの強度、伸びを考慮しながら適宜決められる。
【0052】
上記延伸倍率ならびに延伸温度の範囲にない場合には、得られたフィルムの厚み精度は著しく低下したものとなり、特に延伸後熱処理されるフィルムにおいてはこの傾向が著しい。このような厚み振れは、フィルムの偏肉を引きおこし、ロール状に巻き回した後に、厚みの厚い部分がコブとなって、たるみとなり、製袋や印刷において、歩留りを著しく低下させる原因となる。
【0053】
フィルムの熱収縮を抑制する点においてはフィルムを把持した状態で熱処理する。通常テンター法では、クリップでフィルムを把持した状態で延伸されるので直ちに熱処理される。フィルムの二次加工工程において、加工中にフィルムが収縮する等の問題を生じ易い。
【0054】
(収縮率)
得られるポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムの収縮率は、温風100℃/5分間後で5%以下であることが好ましい。5%を越えると、フィルムにしわ、波打ち等の外観をひどく生じさせてしまうような要因が生じるからである。
【0055】
(ヒートシール強度)
ピロー包装には背貼り部分、折り込み部分等をヒートシールして包装が容易に解けないようにする必要がある。ヒートシール強度は、フィルム15mm幅に対して1N以上であることが好ましい。1N以上であればフィルムのシール強度は十分であり、ヒートシールして包装体にした場合に外力や衝撃などで容易に包装が解けてしまうことがなく、十分に包装体としての目的を達成できる。
【0056】
なお、本発明で得られたフィルムのヒートシール層側または基材層側、あるいは両表層に帯電防止剤や防曇剤を塗布することができる。ただし、ヒートシール性や印刷性等を阻害しないよう考慮する必要がある。
【0057】
本発明によって製造されるポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムは、柔軟で滑り性がよく、収縮性が極力抑えられ、かつヒートシール性をもったピロー包装適性をもつポリ乳酸系フィルムとなる。
本発明のフィルムは、飲料、食品、薬品、電化品、雑貨等の袋やケース等の包装材、あるいはいわゆるダイレクトメールのようなカタログ、広告雑誌等を自動包装して送付される封筒用に用いることもできる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。まず、下記に、この実施例及び比較例における物性測定方法を示す。
【0059】
(1)巻き取り性
製膜時にワインダーで巻き上げたフィルムをスリッターで所定の幅、ここでは210mm幅で巻き上げていく時のフィルムロールの外観を目視観察した。すなわち、フィルムにしわが入り、また巻き上げたフィルムロール状物に「粒跡」が見られるような場合は、劣悪な製品であり×と、フィルムにしわが入りやすいものの「粒跡」は見られない場合は△、いずれも見られない良好な場合は○と表記した。なお、△は実用範囲である。
【0060】
(2)ヘーズ
JIS K 7105に基づいて、フィルムのヘーズを3回測定し、その平均値を算出した。なお、ヘーズで8%を越えるものを×、8%以下のものを良好とし、○と表記した。
【0061】
(3)自動ピロー包装機適性(製袋性)
(株)フジキカイ製、正ピロー包装機FW3400WKα2b(横ピロー包装式)用い、幅210mmのフィルムロールサンプルを用い、間口92mm×カット長さ190mm、センターのシール部は合掌型で幅13mmに、側端部(間口)のシール部幅13mmにして被包装体を包装しながら製袋した。
(a)実施例中の25μm厚のフィルムについては、センターシールを行う加熱シール
ロールの設定温度を145℃、側端部のシールバーの設定温度を155℃とし、1分
間あたり100体製する条件とした。
(b)実施例中の40μm厚のフィルムについては、センターシールの設定温度を15
8℃、側端部シールの設定温度を160℃とし、これも1分間あたり100体製造す
る条件とした。
【0062】
なお、上記のように1分間あたり100体を上回る条件に設定する場合は、相対的にシール機からフィルムへの伝熱度合いが低下するので、加熱温度を高める必要がある。実際に25μmにおいては、センターシール設定温度を165℃、側端部のシール設定温度を160℃とすることで1分間あたり150体製造する条件も見出している。本発明の実施例については、最適条件とし、上記(a)および(b)で行った。
試験は、非包装体として、長さ約120mm、幅約70mm、高さ約20mmで質量約200gの角を丸めたプラスチック片を使用し、10体包装試験を行い、その仕上がりを下記の点で評価した。
(あ)しわ
しわの発生が5体以上あるものを×、しわの発生が2体以上4体以下のものを△、しわの発生が1体以下のものを○と表記した。
(い)ヒートシール強度
ヒートシール強度を測定し、センターシール部、側端シール部がともに1N/15mm以上あるものを○、少なくともどちらか一方でも1N/15mmを下回る場合は×と表記した。なお、ヒートシール強度の測定方法は、下記に示すとおりである。
(う)ヒートシール仕上り
ヒートシール部が収縮したり、シールバーに粘着したりすることによる仕上がり の悪いものを×、良好なものを○と表記した。
(ヒートシール強度の測定方法)
センターシール部および側端シール部の中央付近から幅15mmの短冊状に各3枚切り出して、T型にひろげ、インテスコ万能試験機205型を用いてチャック間40mm、引っ張り速度500mm/分で試験を行い、シール部が破断する応力(N/15mm)を読み取った。ヒートシール強度は、3回行った値の平均値とした。
【0063】
(4)総合評価
上記のヘーズ、製袋性で不具合が見られるものを×、良好なものを○とした。
【0064】
(積層体の構成樹脂)
積層体を構成するポリ乳酸重合体として、表1、表2に示す単独、または、混合物を用いた。混合体の場合のD−乳酸割合は両者の重量分率から平均値として算出した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
[実施例1]
ヒートシール層としてL−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)12.7質量%、L−乳酸:D−乳酸=88:12の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)56℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)72.3質量%、さらに脂肪族ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート/アジペート(商品名:GsPla AD92W、三菱化学(株)製)15質量%を混合し合計100質量部の樹脂成分とし、さらに乾燥した平均粒径1.8μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア320、富士シリシア化学(株) 製)0.1質量部混合して、58mmφの同方向二軸押出機にて、脱揮しながら200℃でマルチマニホールド式の口金より押出した。なお、ポリ乳酸成分中に含まれるD−乳酸構造単位の割合は、10.4%と算出される。
【0068】
また、基材層として上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つ上記ポリ乳酸重合体85質量%、脂肪族ポリエステルとして上記ポリブチレンサクシネート/アジペート15質量%混合し、合計100質量部の樹脂成分とし、さらに乾燥した平均粒径1.4μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア100、富士シリシア化学(株) 製)0.1質量部混合して混合し75mmφの同方向二軸押出機にて脱揮しながら、上記口金より200℃で押出した。
【0069】
ヒートシール層と基材層との厚み比は1:5になるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に、ロール予熱ならびに赤外線ヒーターで加熱補助しながらシート温度が約76℃になるように調整し、3倍の縦延伸を行い、次いで、幅方向にテンターで78℃の温度で3.4倍に横延伸した。テンターでの熱処理ゾーンの温度は140℃にし、熱処理したフィルムを作製した。フィルム厚みはおおよそ平均で25μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。フィルムの評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2、3及び比較例1〜8]
表1に示すように、L−乳酸とD−乳酸の異なるポリ乳酸系重合体(表1に記載の各樹脂に相当する。)を各々実施例1のようにしてヒートシール層及び基材層にして所定の厚み比率になるよう押出し、2軸延伸後熱処理してフィルムを作製した。実施例3および比較例3では、脂肪族ポリエステルをポリブチレンサクシネート(商品名:GsPla AZ91T、三菱化学(株)製)に変更した。比較例5の基材層側に添加した粒子には、平均粒径1.1μmの粒状炭酸カルシウム(商品名:カルファインACE−25、(株)カルファイン製)を使用した。各フィルムの製膜条件ならびに評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例4]
ヒートシール層としてL−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)58℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4032D、米国カーギル・ダウ社製)18質量%、L−乳酸:D−乳酸=88:12の構造単位を持ち、ガラス転移点(Tg)56℃のポリ乳酸(商品名:NatureWorks4060D、米国カーギル・ダウ社製)72質量%、さらに脂肪族ポリエステルとしてポリブチレンサクシネート/アジペート(商品名:GsPla AD92W、三菱化学(株)製)10質量%を混合し合計100質量部の樹脂成分とし、さらに乾燥した平均粒径2.7μmの粒状シリカ(商品名:サイリシア550、富士シリシア化学(株) 製)0.1質量部混合して、58mmφの同方向二軸押出機にて、脱揮しながら200℃でマルチマニホールド式の口金より押出した。なお、ポリ乳酸成分中に含まれるD−乳酸構造単位の割合は、9.9%と算出される。
【0072】
また、基材層として上記L−乳酸:D−乳酸=98.5:1.5の構造単位を持つ上記ポリ乳酸重合体85質量%、脂肪族ポリエステルとして上記ポリブチレンサクシネート/アジペート15質量%混合し、合計100質量部の樹脂成分とし、さらにヒートシール層と同様の乾燥した平均粒径2.7μmの粒状シリカ0.1質量部混合して75mmφの同方向二軸押出機にて脱揮しながら、上記口金より200℃で押出した。
【0073】
ヒートシール層と基材層との厚み比は1:4になるよう溶融樹脂の吐出量を調整した。この共押出シートを約35℃のキャスティングロールにて急冷し、未延伸シートを得た。続いて長手方向に、ロール予熱ならびに赤外線ヒーターで加熱補助しながらシート温度が約75℃になるように調整し、2.8倍の縦延伸を行い、次いで、幅方向にテンターで78℃の温度で3.4倍に横延伸した。テンターでの熱処理ゾーンの温度は142℃にし、熱処理したフィルムを作製した。フィルム厚みはおおよそ平均で40μmとなるように押出機からの溶融樹脂の吐出量とライン速度を調整した。フィルムの評価結果を表2に示す。
【0074】
[実施例5〜8及び比較例9〜13]
表2に示すように、L−乳酸とD−乳酸の異なるポリ乳酸系重合体(表2に記載の各樹脂に相当する。)を各々実施例1のようにしてヒートシール層及び基材層にして所定の厚み比率になるよう押出し、2軸延伸後熱処理してフィルムを作製した。比較例10では、脂肪族ポリエステルをポリブチレンサクシネート(商品名:GsPla AZ91T、三菱化学(株)製)に変更した。比較例11のヒートシール層および基材層に添加した粒子には、平均粒径4.5μmの粒状シリカ(商品名:ミズカシルP709、水澤化学工業(株)製)を使用した。各フィルムの製膜条件ならびに評価結果を表2に示す。






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系重合体を主成分とし、少なくともヒートシール層と基材層を有する積層フィルムであって、
当該ヒートシール層は、L乳酸とD乳酸の割合が93:7〜89:11であるポリ乳酸系重合体と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で100:0〜65:35の割合で構成される樹脂組成物100質量部に対し、平均粒径1.5〜4μmの粒子を0.07〜0.25質量部含有してなり、
当該基材層は、L乳酸とD乳酸の割合が100:0〜93:7であるポリ乳酸系重合体と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で90:10〜70:30の割合で構成される樹脂組成物100質量部に対し、平均粒径1.2〜4μmの粒子を0.07〜0.25質量部含有してなり、
かつ、積層フィルム全層において、ポリ乳酸系重合体とガラス転移温度(Tg)が0℃以下である脂肪族ポリエステルとが質量比で92:8〜70:30であることを特徴とするピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルム。
【請求項2】
ヒートシール強度が1N/15mm以上である請求項1に記載のピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のピロー包装用ポリ乳酸系積層2軸延伸フィルムを用いてなる包装物。

【公開番号】特開2007−30350(P2007−30350A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−217322(P2005−217322)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】