説明

ピンコネクタの曲げ加工方法

【課題】ピンコネクタの軸部を外曲げ加工する折り曲げ治具金型において、ピンコネクタの軸部を、所定の角度に精度よく折り曲げることを可能とするピンコネクタの曲げ加工方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法は、延在部123と、当該延在部の先端の第一屈折点121において外側に外曲げされた外曲げ部124と、前記外曲げ部の先端の第二屈折点122において前記延在部123と平行な方向に屈曲された平行部126とを有するピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法であって、直線状のピンコネクタの軸部12に対して、前記延在部123を保持した状態で前記外曲げ部124を第一屈折点121において外曲げし、前記第二屈折点122において前記平行部126を非保持状態で前記延在部123と平行な方向に屈曲させるピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタとして使用されるコンタクトピンの曲げ加工方法に関し、さらに詳しく言えば、表示素子の電極基板に形成された電極端子と外部機器とを電気的に導通させるピンコネクタの曲げ加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示素子と外部機器とを電気的に導通させるために、ピンコネクタが使用されている。ピンコネクタは、液晶表示素子の製造過程において透明電極基板に形成された電極端子部をピンコネクタのクリップ部で挟持し、樹脂を用いて固定している。ここで、液晶表示素子を外部機器に接続する工程を詳しく述べれば、ピンコネクタの軸部をソケット等に差し込んで外部機器の回路基板に固定し、これによりピンコネクタを介して液晶表示素子と外部機器とを確実に導電接続している。
【0003】
また、外部機器に対してピンコネクタを介して液晶表示素子を取着する場合、無駄なスペースを無くし、可能な限りコンパクトなモジュールの設計を行うために、液晶表示素子を外部機器の近傍に取着し、ピンコネクタの軸部を折り曲げて使用するケースが多い。
【0004】
ここで、特許文献1には、プリント配線板の回路を他の回路に接続するためのコンタクトピンを回転治具により適度な角度に曲げる技術が提案されている。
【0005】
図4(a)は、外部電極4 に対して液晶表示素子1における液晶基板11の電極端子部に接続されたピンコネクタの軸部12を、第一屈折点121で内曲げ加工して取着した状態を示している。また、図4(b)は、外部電極4 に対して液晶表示素子1における液晶基板11の電極端子部に接続されたピンコネクタの軸部12を、第一屈折点121で外曲げ加工して取着した状態を示している。図4から明らかなように、ピンコネクタの軸部12 を折り曲げて取着することで、機器全体が非常にコンパクトとなる。ここで、ピンコネクタの曲げ加工は折り曲げ治具金型を使用して行われている。
【0006】
図6は、ピンコネクタの軸部12を内曲げ加工する折り曲げ治具金型100を示す。図6に示すように、下金型2は、液晶基板11の一端から垂直方向に延在するピンコネクタの軸部12を水平に維持する固定部21と、凹部22を有する。また、上金型3は、下金型2の固定部21に嵌合する凹部31と、下金型2の凹部22 に嵌合する凸部32を有している。このように、ピンコネクタの軸部12を下金型2に水平にセットした状態で、上金型3 を降下して先端の凸部32 にて押圧すると、図4(a)に示すように第1折り曲げ部121と第2折り曲げ部122を有する内曲げされたピンコネクタの軸部12 が出来上がる。
【0007】
ここで、ピンコネクタの軸部12が、内曲げされる原理を図6により詳述すれば、上金型3の先端の凸部32で、押されながら、下金型2の凹部22の先端に位置する部位23で曲がり始め、ピンコネクタの軸部12の第1折り曲げ部121と第2折り曲げ部122が同時に形成される。よって、スプリングバック等することなく、所定の角度に内曲げされたピンコネクタの軸部12 が出来上がる。
【0008】
次に、図7は、ピンコネクタ11の軸部12を外曲げ加工する折り曲げ治具金型101を示す。図7に示すように、下金型2は、液晶表示素子1における液晶基板11の電極端子部に接続され垂直方向に延在するピンコネクタの軸部12を、水平に維持する可動式の吸着板24と、凸部25を有する。また、上金型3は、下金型2の吸着板24に嵌合する凸部33と、下金型2の凸部25 に嵌合する凹部34を有している。このように、ピンコネクタの軸部12を下金型2に水平にセットした状態で、上金型3を降下し、下金型2の吸着板24に当接させた後、吸着板24を下降させながらピンコネクタ11を押圧し、さらに凸部25に押圧する。このようにすることで、外曲げされたピンコネクタ11 が出来上がるが、所定の角度に設計することが難しい。この折り曲げ治具金型101で外曲げされたピンコネクタの軸部12を図5(a)に示す。
【0009】
図5(a)に示すように、ピンコネクタの軸部12は、液晶基板11の一端から垂直方向に延在する延在部123と、延在部123の先端の第一屈折点121において外側に外曲げされた外曲げ部124と、外曲げ部124の先端の第二屈折点122において延在部123に対して内側に屈曲された屈曲部125を形成している。
【0010】
ここで、ピンコネクタの軸部12の屈曲部125が、延在部123に対して内側に屈曲される原理を図7、8、9により詳述する。図7に示すように、液晶基板11の一端から垂直方向に延在するピンコネクタの軸部12を、吸着板24と、凸部25からなる下金型2に水平に維持するように配置し、上金型3を下降させる。次に、図8に示すように、上金型3の凸部33と、下金型2の吸着板24が接触すると、上金型3の凸部33と、下金型2の吸着板24で、ピンコネクタの軸部12の接続部から所定範囲の延在部123を挟み、水平にセットした状態を維持し、上金型3 の降下に合わせて、下金型2の吸着板24のみが下降する。ここで、下金型2の凸部25は固定され、移動しない。次に、ピンコネクタの軸部12の残りの部分は、下金型2の先端の凸部25と上金型3の凹部34で、押されながら、下金型2の凸部25の先端に位置する部位26で曲がり始め、ピンコネクタの軸部12の第一屈折点121と第二屈折点122が同時に形成される。このように上金型3と下金型2が嵌合した状態を図9は示す。
【0011】
ここで、上金型3の凸部33と下金型2の吸着板24でピンコネクタの軸部12の延在部123が挟まれているため、部位26で曲がり始め、後に外曲げ部124となる部分を引っ張る力が作用する。よって、上金型3と下金型2を解除すれば、外曲げ部124には戻ろうとする力が作用し、図5(a)に示すように、第二屈折点122において延在部123に対して内側に屈曲された屈曲部125が形成される。よって、この折り曲げ治具金型101で外曲げされた液晶表示素子1を使用した場合、精度よくモジュールの設計を行うことができず、液晶表示素子1を外部機器4に接続する工程をコンパクトに設計することができなかった。
【0012】
【特許文献1】特開平11−135227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のように、下金型2が、液晶表示素子1のピンコネクタの軸部12を水平に維持する可動式の吸着板24を有し、下金型2の凸部25と、上金型3の凹部34で嵌合することにより、ピンコネクタの軸部12を外曲げ加工する折り曲げ治具金型101においては、ピンコネクタの軸部12の屈曲部125を延在部123と平行となる角度に折り曲げることができなかった。よって、精度よくモジュールの設計を行うことができず、液晶表示素子1を外部機器4に接続する工程をコンパクトに設計することができなかった。
【0014】
本発明は、このような事情を背景としてなされたものであり、本発明の目的は、
ピンコネクタの軸部を外曲げ加工する折り曲げ治具金型において、ピンコネクタの軸部を、所定の角度に精度よく折り曲げることを可能とするピンコネクタの曲げ加工方法を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るピンコネクタの外曲げ加工方法は、表示素子の一端より表示素子の基板に対して垂直方向に延在する延在部と、当該延在部の先端の第一屈折点において外側に外曲げされた外曲げ部と、前記外曲げ部の先端の第二屈折点において前記延在部と平行な方向に屈曲された平行部とを有するピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法であって、前記延在部、前記外曲げ部および前記平行部が、形成される前の直線状のピンコネクタの軸部に対して、前記延在部を保持した状態で前記外曲げ部を第一屈折点において外曲げし、前記第二屈折点において前記平行部を非保持状態で前記延在部と平行な方向に屈曲させることを特徴としている。
【0016】
このようなピンコネクタの外曲げ加工方法は、ピンコネクタの軸部を、所定の角度に精度よく折り曲げることできる。よって、精度よくモジュールの設計を行うことができ、表示素子を外部機器に接続する工程をコンパクトに設計することができる。
【0017】
また、このようなピンコネクタの外曲げ加工方法として、前記ピンコネクタの軸部の外曲げにおいて金型を用いる際、当該平行部を挟持する金型の隙間の間隔を、前記ピンコネクタの軸部の厚み寸法よりも大きくすることによって非保持状態を形成するように構成されていてもよい。このような構成により、精度よくモジュールの設計を行うことができ、表示素子を外部機器に接続する工程をコンパクトに設計することができる。
【0018】
さらに、このようなピンコネクタの外曲げ加工方法として、前記隙間の間隔を、前記平行部が前記延在部に対して平行になるように調整することができる構成にしてもよい。このような構成により、精度よくモジュールの設計を行うことができ、表示素子を外部機器に接続する工程をコンパクトに設計することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ピンコネクタの軸部を外曲げ加工する折り曲げ治具金型において、ピンコネクタの軸部を、所定の角度に精度よく折り曲げることを可能とするピンコネクタの曲げ加工方法を、提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の実施の形態.
本発明の実施の形態に係るピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型10により、ピンコネクタを外曲げ加工する方法について、図1、図2および図3に基づいて説明する。また図5(b)は、折り曲げ治具金型10で、外曲げ加工されたピンコネクタの軸部を示す。
【0021】
ここで、液晶表示素子1は、配向処理された一対の透明液晶基板11がシール材(不図示)を介して貼り合わされており、透明液晶基板11間に液晶(不図示)が封入されている。ここで、一対の透明液晶基板11のうち下側の透明液晶基板の端部は、上側の透明液晶基板よりも外側に延出されており、その上面に複数の電極端子を有する電極端子部(不図示)が形成されている。この電極端子部には、断面略コの字形状の弾性部(不図示)を有するピンコネクタがはめ込まれて電極端子と電気的に接続され、紫外線硬化樹脂やエポキシ樹脂などの固定用樹脂によりピンコネクタが固定されている。
【0022】
また、折り曲げ治具金型10は、ポンチとダイスの役割を担う上金型3と下金型2より構成され、超鋼などの高剛性の金属でできている。また、ピンコネクタの軸部12は電気導通性の良い銅でできている。さらに、軸部12は、断面矩形状であり、例えば、幅5mm、厚み3mmの棒状である。
【0023】
本発明の実施の形態に係るピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法は、図1に示されるように、液晶基板11の一端から垂直方向に延在するピンコネクタの軸部12を、吸着板24と、凸部25からなる下金型2に水平に維持するように先ず配置する。次に、上金型3を下降させる。
【0024】
次に、図2に示すように、上金型3の凸部33と、下金型2の吸着板24が接触すると、上金型3の凸部33と、下金型2の吸着板24で、ピンコネクタの軸部12の接続部から所定範囲の延在部123を挟み、水平にセットした状態を維持する。
【0025】
ここで、電極端子部とピンコネクタは、前述の通り紫外線硬化樹脂やエポキシ樹脂などの固定用樹脂により固定されているので、樹脂の固定が剥がれる場合がある。剥がれることによりピンコネクタの固定力が弱くなってしまと、外部機器等との電気的導通を維持できず、本来の機能を果たせなくなるため、ピンコネクタの軸部12の接続部から所定範囲の延在部123を挟み、液晶基板11とピンコネクタの軸部12を垂直方向に維持するようにセットしている。
【0026】
次に、上金型3の降下に合わせて、下金型2の吸着板24が下降する。次に、ピンコネクタの軸部12の延在部123以外の部分は、下金型2の凸部25と上金型3の調整部35で押されながら、下金型2の凸部25の先端に位置する部位26で曲がり始め、ピンコネクタの軸部12の第一屈折点121と第二屈折点122が同時に形成される。このように上金型3の凸部33と下金型2が嵌合した状態を図3は示す。
【0027】
ここで、上金型3の凸部33と下金型2の吸着板24でピンコネクタの軸部12の延在部123が挟まれているため、部位26で曲がり始め、後に外曲げ部124となる部分を引っ張る力が作用する。しかしながら、上金型3の調整部35と下金型2の凸部25との間隔には、ピンコネクタの軸部12の厚み寸法よりも大きい隙間を空けている。このように隙間を空けることにより、外曲げ部124の先端の第二屈折点122より先端であって、後に平行部126となる部位は、金型に対して非保持状態となっているので、先述の外曲げ部124となる部分を引っ張る力に伴い移動する。よって、上金型3と下金型2を解除すれば、外曲げ部124に戻ろうとする力は作用せず、図5(b)に示すように、第二屈折点122において延在部123に対して内側に屈曲されていない平行部126が形成される。
【0028】
また、上金型3の調整部35と下金型2の凸部25との間隔は、ピンコネクタの軸部12の延在部123と平行な方向に屈曲された平行部126を形成するために、上金型3の調整部35により、下金型2の凸部25との間隔を調整できるように構成されている。
【0029】
尚、延在部123に対して内側に屈曲する平行部126を形成したい場合は、上金型3の調整部35と下金型2の凸部25との間隔を短くし、外曲げ部124となる部分を引っ張る力を作用させることによって加工することもできる。
【0030】
本発明の実施の形態によれば、ピンコネクタの軸部12の平行部126を延在部123と平行となる角度に折り曲げることができ、ピンコネクタの軸部12を、所定の角度に精度よく折り曲げることができる。よって、精度よくモジュールの設計を行うことができ、表示素子を外部機器4に接続する工程をコンパクトに設計することができる。なお、本実施の形態において、表示素子の一端にピンコネクタを配設したが、表示素子の両端にピンコネクタを配設してもよい。また、表示素子としては、有機EL表示素子、プラズマ表示素子を例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型10の工程を説明する図である。
【図2】本発明に係るピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型10の工程を説明する図である。
【図3】本発明に係るピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型10の工程を説明する図である。
【図4】ピンコネクタの軸部と外部電極との接続を示す図である。
【図5】従来の外曲げ加工方法でできたピンコネクタの軸部と本発明に係る外曲げ加工方法でできたピンコネクタの軸部の違いを説明する図である。
【図6】ピンコネクタの軸部の内曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型100の工程を説明する図である。
【図7】従来のピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型101の工程を説明する図である。
【図8】従来のピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型101の工程を説明する図である。
【図9】従来のピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法に使用する折り曲げ治具金型101の工程を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 液晶表示素子
2 下金型
3 上金型
4 外部電極
11 液晶基板
12 ピンコネクタの軸部
21 固定部
22 凹部
23 部位
24 吸着板
25 凸部
26 部位
31 凹部
32 凸部
33 凸部
34 凹部
35 調整部
121 第一屈折点
122 第二屈折点
123 延在部
124 外曲げ部
125 屈曲部
126 平行部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子の一端より表示素子の基板に対して垂直方向に延在する延在部と、
当該延在部の先端の第一屈折点において外側に外曲げされた外曲げ部と、
前記外曲げ部の先端の第二屈折点において前記延在部と平行な方向に屈曲された平行部と、を有するピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法であって、
前記延在部、前記外曲げ部および前記平行部が、形成される前の直線状のピンコネクタの軸部に対して、前記延在部を保持した状態で前記外曲げ部を第一屈折点において外曲げし、前記第二屈折点において前記平行部を非保持状態で前記延在部と平行な方向に屈曲させるピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法。
【請求項2】
前記ピンコネクタの軸部の外曲げにおいて金型を用いる際、当該平行部を挟持する金型の隙間の間隔を、前記ピンコネクタの軸部の厚み寸法よりも大きくすることによって非保持状態を形成することを特徴とする請求項1に記載のピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法。
【請求項3】
前記隙間の間隔を、前記平行部が前記延在部に対して平行になるように調整することを特徴とする請求項2に記載のピンコネクタの軸部の外曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−166014(P2008−166014A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351295(P2006−351295)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】