説明

ファイバセンサ

【課題】投光用ファイバの透過光量を簡易な構成によってモニタできるファイバセンサを提供すること。
【解決手段】ファイバセンサ1は、投光素子13と、投光素子からの光を導き、被検出物Wに向けて光を投光する投光用ファイバ21と、被検出物からの光を受け取る受光用ファイバ23と、受光用ファイバからの光を受光する受光素子18と、受光素子の受光量に基づいて被検出物を検出する検出手段11とを備える。さらに、投光用ファイバの先端に配置され、導かれた光の一部を投光用ファイバに向けて反射し、反射しない残りの光を透過する反射手段22と、投光素子と投光用ファイバとの間に配置され、反射手段22によって反射された光を反射するビームスプリッタ15と、ビームスプリッタによって反射された光を受光可能に配置されるモニタ用受光素子16と、モニタ用受光素子の受光量に基づいて投光素子からの投光量を制御する投光量制御手段11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバセンサに関し、詳しくは、その投光量の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファイバセンサの投光素子の劣化等に伴う投光量の低減を補償するために、モニタ用受光素子を用いて投光量を制御する、いわゆるAPC(Auto Power Control)制御が広く知られている。
【0003】
しかしながら、投光素子とは別に、ファイバにおいても周囲温度等の変化に応じてその伝送特性等が変化することによって、被検出物に対する投光量に変化が生じる。場合によっては、ファイバに起因する投光量の変化も補償する必要がある。そのため、例えば特許文献1においては、ファイバに起因する投光量の変化を測定するために、専用の測定用ファイバを設ける例が示されている。そこでは、測定用ファイバを介した光をモニタ用受光素子によって受光して、投光量を所定のレベルに制御するようにしている。
【特許文献1】特開平1−283725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、測定用ファイバが投光用ファイバとは別途に設けられるため、必ずしも投光用ファイバの透過光量を正確に反映している結果が得られない虞があった。また、製造コストおよび配置空間が増加するという不具合があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、投光用ファイバの透過光量を簡易な構成によってモニタできるファイバセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明は、投光素子と、前記投光素子からの光を導き、被検出物に向けて前記光を投光する投光用ファイバと、前記被検出物からの光を受け取る受光用ファイバと、前記受光用ファイバからの光を受光する受光素子と、前記受光素子の受光量に基づいて前記被検出物を検出する検出手段とを備えたファイバセンサにおいて、前記投光用ファイバの、前記被検出物に対向する側の先端に配置され、前記導かれた光の一部を前記投光用ファイバへ向けて反射し、反射しない残りの光を透過する反射手段と、前記投光素子と前記投光用ファイバとの間に配置され、前記投光素子からの光を透過し、前記反射手段によって反射された光を反射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタによって反射された光を受光可能に配置されるモニタ用受光素子と、前記モニタ用受光素子の受光量に基づいて前記投光素子からの投光量を制御する投光量制御手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
本構成では、投光用ファイバの、被検出物に対向する側の先端に、投光用ファイバ内に導かれた光の一部を反射する反射手段が配置されている。そして、この反射手段によって反射された光はビームスプリッタによってさらに反射されて、モニタ用受光素子によって受光される。すなわち、本構成によれば、投光用ファイバおよび被検出物を検出するための検出用の光の一部を用いて、投光用ファイバを透過する光量(投光量)を検出し、その検出結果に基づいて、投光素子からの投光量を制御することができる。そのため、投光用ファイバの透過光量(投光量)を簡易な構成によってモニタできるとともに、その検出のために、製造コストおよび配置空間が増加するという不具合も生ずることはない。
【0007】
第2の発明は、第1の発明のファイバセンサにおいて、前記反射手段は、前記投光用ファイバに対して着脱可能に取り付けられてなることを特徴とする。
本構成によれば、投光用ファイバの透過光量をモニタする必要のない場合には、反射手段を取り外して、投光量の減少を伴わずに被検出物を検出することができる。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明のファイバセンサにおいて、前記投光素子は、複数の波長を含む光を投光するように構成されてなり、前記反射手段は、前記導かれた光のうちの一部の波長の光を反射し、他の波長の光を透過する第1フィルタによって構成されてなることを特徴とする。
本構成によれば、反射手段を簡易かつ好適に構成することができる。
【0009】
第4の発明は、第3の発明のファイバセンサにおいて、前記モニタ用受光素子には、前記第1フィルタが反射する一部の波長の光のみを透過する第2フィルタが取り付けられてなることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、被検出物が高い反射率を有して、その反射光が第1フィルタを介して投光用ファイバ内に戻される場合であっても、第2フィルタによって阻止されるため、被検出物による反射光がモニタ用受光素子によって受光されることはない。したがって、投光量制御手段によるモニタ用受光素子の受光量に基づく投光量の制御が、正確に行われる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のファイバセンサによれば、投光用ファイバの透過光量を簡易な構成によってモニタできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態>
本発明に係るのファイバセンサの一実施形態について図1〜図2を参照して説明する。
1.ファイバセンサの構成
本実施形態のファイバセンサ1は、図1に示すように、大きくはアンプ部10とファイバ部20から構成され、ワークW(本発明の「被検出物」に相当)に投光した光のワークWからの反射光の受光量に基づき、ワークWの有無や状態を検出するものである。
【0013】
アンプ部10は、制御回路11、投光回路12、投光素子13、コリメータレンズ14a、収束レンズ14b、ハーフミラー(本発明の「ビームスプリッタ」に相当する)15、モニタ用受光素子(MPD)16、受光素子18、および受光回路19等を含む。さらに、モニタ用受光素子16には、フィルタ(本発明の「第2フィルタ」に相当する)17が設けられている。ここで、フィルタ17は、モニタ用受光素子16によって受光されるモニタ用の波長(以下、「指定波長」という)を有する光Lmを透過させ、その他の検出用に使用される波長(以下「検出波長」という)を有する光Ldを反射させる特性を有する。
【0014】
「指定波長」は、ここでは、例えば、図2に示されるように、投光素子13から投光される光のスペクトル分布の内、約635nm〜約640nmの間の波長とされる。なお、「指定波長」の選定はこれに限定されず、使用する光のスペクトル分布等に応じて適宜選定されればよい。また、フィルタ17は、モニタ用受光素子16に着脱可能に取り付けられており、必要に応じて、例えば、ワークWからの反射光が無視できる場合には、取り外すことができる。なお、フィルタ17を、モニタ用受光素子16に着脱可能に取り付ける構成としては、例えば、フィルタ17を所定のホルダー内に保持し、フィルタ17が保持されたホルダーをモニタ用受光素子16の前面に取り付けたり外したりする構成とすればよい。
【0015】
ファイバ部20は、投光用ファイバ21、投光用ファイバ21の、ワークWに対向する側の先端に配置され、投光素子13から投光された光の一部を反射するフィルタ(本発明の「反射手段」、「第1フィルタ」に相当する)22、および受光用ファイバ23とを含む。ここでは、フィルタ22は、指定波長の光(投光用ファイバ21に導かれた光のうちの一部の波長の光)Lmを反射し、検出波長の光(他の波長の光)Ldを透過するように形成されている。また、フィルタ22は、投光用ファイバ21の先端部に着脱可能に取り付けられており、必要に応じて、例えば、投光用ファイバ21の透過光量をモニタする必要がない場合には、取り外すことができる。なお、フィルタ22を、投光用ファイバ21の先端部に着脱可能に取り付ける構成としては、例えば、フィルタ17の場合と同様に、フィルタ22を所定のホルダー内に保持し、フィルタ22が保持されたホルダーを投光用ファイバ21の先端部に取り付けたり外したりする構成とすればよい。
【0016】
2.ファイバセンサの作用・効果
上記のように構成れたファイバセンサ1において、作業者による、操作手段(図示せず)を介した操作指令に従って、制御回路11から所定周期の駆動信号が投光回路12に与えられると、投光回路12は、駆動信号を増幅して、増幅された駆動信号を投光素子13に供給する。投光素子13は、駆動信号に従って、当該投光素子13の前方に備えられたコリメータレンズ14a、ハーフミラー15および収束レンズ14bを介して投光用ファイバ21に所定光量の光を投光する。すると、投光用ファイバ21内に投光された光の内、指定波長の光Lmは、フィルタ22によって反射され、投光用ファイバ21内を通ってアンプ部10に戻される。一方、検出波長の光Ldはフィルタ22を通過してワークWに照射される。
【0017】
アンプ部10に戻された指定波長の光Lmは、ハーフミラー15によって反射されて、フィルタ17を介してモニタ用受光素子16によって受光される。そのモニタ受光信号は制御回路(本発明の「投光量制御手段」に相当する)11に供給され、制御回路11は、モニタ受光信号に基づいて、投光用ファイバ21内での光量変動を検出する。この光量変動は、例えば、周囲温度の変化によって、投光用ファイバ21の光透過(伝送)特性が変化することによって発生する。
【0018】
そして、光量変動が検出された場合には、例えば投光量に所定の補正を行うために、投光回路12への駆動信号を変更する。なお、投光用ファイバ21内での光量変動(実際には、指定波長の光Lmの光量変動)に対応した投光素子13からの投光量の補正量は、例えば、実験等によって事前に決定され、参照テーブルとして制御回路11内のメモリに格納されているものとする。
【0019】
このように、本実施形態においては、投光用ファイバ21内での透過光量の変動を検出するために、検出用のファイバを別途に設ける必要がなく、既存の投光用ファイバ21を利用してその検出が行われる。そのため、部品数を増加させることなく、従来とほぼ同一の大きさのファイバセンサにおいて、投光用ファイバ21に起因する投光量の変動を検出し、投光量を補正することができる。
【0020】
一方、フィルタ22を通過してワークWに照射された検出波長の光Ldは、ワークWによって反射され、受光用ファイバ23を介して、受光素子18によって受光され受光信号に変換される。受光信号は受光回路19によって所定の大きさに増幅され、制御回路11に供給される。なお、ワークWの反射率が大きい場合には、ワークWによって反射された検出波長の光Ldの一部が、再び投光用ファイバ21内に戻され、ハーフミラー15によって反射されて、モニタ用受光素子16に向かう。しかしながら、上記したように、検出波長の光Ldは、フィルタ17によって反射されるため、モニタ用受光素子16内には入らない。そのため、指定波長の光Lmの検出に対する検出波長の光Ldによる影響は、抑制される。
【0021】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0022】
(1)上記実施形態では、投光用ファイバ21を単芯ファイバとする構成を示したがこれに限定されない、投光用ファイバは、例えば、図3に示すような多芯ファイバ21Aであってもよい。その際、好ましくは、反射手段22は多芯ファイバ21Aの内の少なくとも1つ(図3では2つ)のファイバの先端に配置される。また、その際の反射手段は、1つの投光用ファイバに導かれた光の全てを同ファイバに向けて反射するものであってもよい。
【0023】
(2)上記実施形態では、投光用ファイバ21の先端に配置される反射手段をフィルタ22で構成する例を示したが、これに限定されない。反射手段として、例えば、指定波長の光Lmを反射し、検出波長の光Ldを透過するように形成されたミラーあるいはスプリッタ等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるファイバセンサに係る一実施形態を示す概略的な構成図
【図2】指定波長を説明するグラフ
【図3】投光用ファイバの別の例を示す図
【符号の説明】
【0025】
1…ファイバセンサ
11…制御回路(検出手段、投光量制御手段)
13…投光素子
15…ハーフミラー(ビームスプリッタ)
17…フィルタ(第2フィルタ)
18…受光素子
21…投光用ファイバ
22…フィルタ(反射手段、第1フィルタ)
23…受光用ファイバ
W…被検出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光素子と、
前記投光素子からの光を導き、被検出物に向けて前記光を投光する投光用ファイバと、
前記被検出物からの光を受け取る受光用ファイバと、
前記受光用ファイバからの光を受光する受光素子と、
前記受光素子の受光量に基づいて前記被検出物を検出する検出手段とを備えたファイバセンサにおいて、
前記投光用ファイバの、前記被検出物に対向する側の先端に配置され、前記導かれた光の一部を前記投光用ファイバへ向けて反射し、反射しない残りの光を透過する反射手段と、
前記投光素子と前記投光用ファイバとの間に配置され、前記投光素子からの光を透過し、前記反射手段によって反射された光を反射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって反射された光を受光可能に配置されるモニタ用受光素子と、
前記モニタ用受光素子の受光量に基づいて前記投光素子からの投光量を制御する投光量制御手段と
を備えることを特徴とするファイバセンサ。
【請求項2】
前記反射手段は、前記投光用ファイバに対して着脱可能に取り付けられてなることを特徴とする請求項1に記載のファイバセンサ。
【請求項3】
前記投光素子は、複数の波長を含む光を投光するように構成されてなり、
前記反射手段は、前記導かれた光のうちの一部の波長の光を反射し、他の波長の光を透過する第1フィルタによって構成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のファイバセンサ。
【請求項4】
前記モニタ用受光素子には、前記第1フィルタが反射する一部の波長の光のみを透過する第2フィルタが取り付けられてなることを特徴とする請求項3に記載のファイバセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−210294(P2009−210294A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51061(P2008−51061)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000106221)サンクス株式会社 (578)
【Fターム(参考)】